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特許7157583のびるデザート食品、のびるデザート食品の製造方法、及びのびるデザート食品用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】のびるデザート食品、のびるデザート食品の製造方法、及びのびるデザート食品用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 9/00 20160101AFI20221013BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20221013BHJP
【FI】
A23L9/00
A23L29/219
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018143877
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020018203
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 春香
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056444(WO,A1)
【文献】特開平08-205793(JP,A)
【文献】特開平11-018681(JP,A)
【文献】食感改良でん粉特集Innovation Inspired vol.II,2017年,イングレディオン・ジャパン株式会社
【文献】月刊フードケミカル,2017年9月,pp.1
【文献】Golden Fish Roll with Mochi,Mintel GNPD, [online],ID#:5289205 ,2017年12月,[Retrieved on 19-04-2022], Retrieved from the internet: <URL: https://portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23G
Mintel GNPD
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、アセチル化澱粉、及び架橋澱粉を含むのびるデザート食品であって、
前記アセチル化澱粉、及び前記架橋澱粉の合計の含有量が、前記のびるデザート食品の総質量に基づいて3.4~8.0質量%であり、
前記アセチル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲であることを特徴とするのびるデザート食品。
【請求項2】
前記架橋澱粉が、架橋処理以外の加工処理が施されていない架橋澱粉、又はアセチル化架橋澱粉である請求項1ののびるデザート食品。
【請求項3】
糸引き性と弾力性を有する請求項1又は2に記載ののびるデザート食品。
【請求項4】
前記アセチル化澱粉が、アセチル化タピオカ澱粉である請求項1~3のいずれか1項に記載ののびるデザート食品。
【請求項5】
前記架橋澱粉が、架橋タピオカ澱粉である請求項1~のいずれか1項に記載ののびるデザート食品。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載ののびるデザート食品を製造する方法であって、
水、アセチル化澱粉、及び架橋澱粉を含む材料を混合する工程を含み、
前記アセチル化澱粉、及び前記架橋澱粉の合計の含有量が、前記のびるデザート食品の総質量に基づいて3.4~8.0質量%であり、
前記アセチル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲であるのびるデザート食品の製造方法。
【請求項7】
請求項に記載ののびるデザート食品の製造方法に用いるのびるデザート食品用組成物であって、
アセチル化澱粉、及び架橋澱粉を含み、
前記アセチル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲であるのびるデザート食品用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリン、杏仁豆腐等のデザート食品に関し、特に糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有するザート食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリン、杏仁豆腐、ババロア、ヨーグルト、ゼリー等のデザート食品は、飲食店や菓子専門店で提供される他、コンビニエンスストアーやスーパーマーケット等のデザートコーナーで販売される人気のデザート食品である。一般に、このようなデザート食品は、スプーンで容易に小片化してすくい易い物性を有する。近年、消費者のニーズの多様化によって、新しい物性や食感を有するデザート食品が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、外観的にはゼリー状を呈し、弾力があってスライム性をもつこれまでにない食感を有するデザート類のような食品類を提供することを目的として、澱粉類をゲル状化材とし、本質的に澱粉類よりなるゼリー状であるにも拘わらずスライム性であって、外的な力を加えても容易に崩壊せず、レオメーターで測定する時に降伏値を持たない物理的特性としたことを特徴とする新規な食感を有する食品類が開示されている。また、特許文献2には、プリンとしてのゲル化性や保形性を有しつつ、もちのような伸びる物性が付与され、新規な食感を有するプリンを提供することを目的とし、乳タンパク質、油脂及びゲル化剤を含有し、ゲル化剤としてサイリウムシードガムを含むことを特徴とするプリンが開示されている。さらに、特許文献3には、口溶け性を備えつつ曳糸性(伸展性)を有し、曳糸性(伸展性)を有しつつもスプーンで容易に掬うことができ、好ましくは、喫食時のスプーン等の撹拌により、その曳糸性(伸展性)がより増加しうる新規な物性を有するデザート食品を提供することを目的とし、酵素処理澱粉を含むデザート食品であって、前記酵素処理澱粉は、澱粉粒を澱粉加水分解酵素又は糖転移酵素を用いて処理したものである、デザート食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-42727号公報
【文献】特開2010-220543号公報
【文献】特開2017-79672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、種々の新たな物性を有するデザート食品が開発されているが、消費者のニーズの多様性に応えるため、さらに新しい物性や食感を有するデザート食品が求められている。したがって、本発明の目的は、従来と比較して新しい物性や食感を有するデザート食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来技術のデザート食品においても注目されている、スプーンですくい上げた時に伸びて糸を引く性質(本発明において、「糸引き性」と称する)に着目し、種々の材料について検討した結果、特定の複数種の澱粉を所定の含有量で配合することで、糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有するデザート食品が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、上記目的は、水、アセチル化澱粉、及び架橋澱粉を含むのびるデザート食品であって、前記アセチル化澱粉、及び前記架橋澱粉の合計の含有量が、前記のびるデザート食品の総質量に基づいて3.4~8.0質量%であり、前記アセチル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲であることを特徴とするのびるデザート食品によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有するのびるデザート食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[のびるデザート食品]
本発明ののびるデザート食品は、水、アセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、並びに架橋澱粉を含み、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉、並びに前記架橋澱粉の合計の含有量が、前記のびるデザート食品の総質量に基づいて3.4~8.0質量%であり、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲であることを特徴とする。これにより、糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有するのびるデザート食品が得られる。本発明において、「弾力性」とは、スプーンを挿入してすくい上げる際に、のびるデザート食品が元の形に戻ろうとする性質を意味し、「糸引き性と弾力性を有する」とは、スプーンを挿入してすくい上げる際に、のびるデザート食品に糸引き性と弾力性が同時に認められることを意味する。また、「スプーンですくい易い」とは、のびるデザート食品をスプーンですくい上げた際、伸びて糸を引くが、ある程度伸びると糸が切れてスプーンにのり易いことを意味する。
【0010】
従来から澱粉は、デザート食品に利用されている。例えば、特許文献1では澱粉をゲル化剤として用いてスライム性を付与している。特許文献1には「スライム性」は、「粘性を示し、ぶよぶよした液体でも固体でもない不定形のゼリー状の塊を示し、第三者へ付着後はがす時にその一部が残らずはがせることができる性質」を意味すると記載されている(特許文献1段落[0009])。したがって、本願の「糸引き性と弾力性を有する」性質は、「スライム性」とは全く異なる物性である。また、特許文献3では、澱粉粒を澱粉加水分解酵素、又は糖転移酵素を用いて処理した酵素処理澱粉を使用することで、曳糸性(伸展性)を付与している。しかしながら、特許文献3においては、デザート食品の物性は、「弾力のある食感ではない」ことが記載されており(特許文献3段落[0012])、本発明ののびるデザート食品の物性とは明らかに異なるものである。
【0011】
本発明においては、澱粉としてアセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、並びに架橋澱粉を組合せて用い、両者の合計の含有量、及び質量比を、上記の範囲とすることで、糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有するのびるデザート食品とすることができることが見出されている。後述する実施例に示す通り、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉、並びに前記架橋澱粉の合計の含有量が、上記範囲より少ない場合、糸引き性と弾力性が低下し、上記範囲より多い場合、スプーンですくい難くなる。また、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉の前記架橋澱粉に対する比率が上記範囲より高くなると、弾力性が低下し、すくい易さが悪化し、前記比率が上記範囲より低くなると、糸引き性、弾力性が低下する。本発明において、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉、並びに前記架橋澱粉の合計の含有量は、前記のびるデザート食品の総質量に基づいて3.4~6.0質量%であることが好ましく、4.0~5.0質量%がさらに好ましい。また、前記アセチル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉:架橋澱粉)は、7:3~3:7が好ましく、6:4~3:7がより好ましく、6:4~4:6がさらに好ましい。
【0012】
本発明において、アセチル化澱粉は、澱粉原料に無水酢酸、酢酸ビニル等を作用させてアセチル基を付加させた加工澱粉を意味する。また、エーテル化澱粉は、澱粉原料にプロピレンオキサイド等を作用させてヒドロキシプロピル基等のエーテル基を付加させた加工澱粉を意味する。本発明においては、ヒドロキシプロピル基を付加させたヒドロキシプロピル化澱粉が好ましい。前記アセチル化澱粉及び又はエーテル化澱粉は、少なくとも架橋処理はされていない加工澱粉であるが、それ以外の加工処理、例えば、焙焼;α化;酸処理;酸化処理;アルカリ処理等の物理的又は化学的加工処理については、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、アセチル化又はエーテル化と組合せて施されていてもよい。本発明において、アセチル化澱粉は、アセチル化以外の化学的処理がされていない加工澱粉が好ましく、エーテル化澱粉は、エーテル化以外の化学的処理がされていない加工澱粉が好ましい。また、架橋澱粉は、澱粉原料に従来公知の架橋剤、例えば、トリメタリン酸塩、オキシ塩化リン、アジピン酸等を作用させて分子間、及び/又は分子内に官能基をブリッジ状に導入させた加工澱粉を意味する。前記架橋澱粉は、トリメタリン酸塩、オキシ塩化リン等を用いてリン酸基がブリッジ状に導入されたリン酸架橋澱粉が特に好ましい。また、前記架橋澱粉は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、架橋処理以外の加工処理、例えば、焙焼;α化;酸処理;酸化処理;アルカリ処理;アセチル化等のエステル化処理、ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理等の物理的又は化学的加工処理が、架橋処理と組合せて施されていてもよい。澱粉原料としては、植物から抽出した澱粉であれば特に制限はなく、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等が挙げられる。本発明において、アセチル化澱粉は、タピオカ澱粉を澱粉原料とするアセチル化タピオカ澱粉が好ましい。エーテル化澱粉は、タピオカ澱粉を澱粉原料とするエーテル化タピオカ澱粉が好ましく、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉がさらに好ましい。また、架橋澱粉は、タピオカ澱粉を澱粉原料とする架橋タピオカ澱粉が好ましい。アセチル化澱粉、エーテル化澱粉及び架橋澱粉としては、市販品を適宜使用することができる。
【0013】
本発明ののびるデザート食品において、水の含有量は、特に制限はなく、本発明の効果が得られる範囲に適宜調整することができる。本発明において、水の一部又は全部を、炭酸水、牛乳、豆乳、卵液、ジュース類等の水分を多く含む材料と置き換えてもよい。
【0014】
本発明ののびるデザート食品は、上述の材料の他、一般に、デザート食品の種類に応じて含有されるその他の材料を、適宜含むことができる。例えば、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化糖、麦芽糖、水あめ等の糖類;ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール;バター、脱脂粉乳、生クリーム、ヨーグルト等の乳製品;食用油脂;イチゴ、オレンジ、マンゴー等の果肉等;ココア;抹茶;きな粉;ごま;乳化剤;着色料;香料;酸味料;安定剤;増粘剤等が挙げられる。本発明において、のびるデザート食品としては、特に制限はなく、例えば、プリン、杏仁豆腐、ババロア、ムース、ヨーグルト、ゼリー、パンナコッタ、わらび餅、水ようかん等が挙げられる。
【0015】
[のびるデザート食品の製造方法]
本発明ののびるデザート食品を製造する方法は、水、アセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、並びに架橋澱粉を含む材料を混合する工程を含み、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉、並びに前記架橋澱粉の合計の含有量が、前記のびるデザート食品の総質量に基づいて3.4~8.0質量%であり、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲である。上述の通り、澱粉としてアセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、並びに架橋澱粉を組合せて用い、両者の合計の含有量、及び質量比を、上記の範囲とすることで、糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有する本発明ののびるデザート食品を製造することができる。本発明の製造方法は、常法に従って実施することができる。例えば、上記材料を適切な配合でニーダー等の混合機で混合して、均一な懸濁液を調製する。懸濁液を撹拌しながら加熱して澱粉材料を糊化させ、さらに混練した後、カップ等の容器に充填して冷却することで実施することができる。なお、上記混合工程は、各材料を、別々に混合機に投入して混合してもよく、後述するように予め粉体材料を混合したのびるデザート食品用組成物を、液体材料等と混合してもよい。本発明の製造方法の好ましい態様は、上述ののびるデザート食品の好ましい態様と同様である。
【0016】
[のびるデザート食品用組成物]
本発明ののびるデザート食品用組成物は、本発明の製造方法に用いる組成物であって、アセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉、並びに架橋澱粉を含み、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉及び/又はエーテル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲である。本発明の組成物を用いることで、容易に本発明の製造方法を実施することができる。本発明の組成物は、前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉、並びに前記架橋澱粉の他、上記のその他の材料を適宜含有させることができる。本発明の組成物は、上述の本発明の製造方法において、前記のびるデザート食品における前記アセチル化澱粉及び/又は前記エーテル化澱粉、並びに前記架橋澱粉の合計の含有量が、上記の範囲になるように、液体材料等と混合して用いることができる。本発明の組成物の好ましい態様は、上述ののびるデザート食品の好ましい態様と同様である。
【実施例
【0017】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.澱粉材料について
実施例及び比較例に使用した澱粉材料を、表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
2.杏仁プリンの調製方法
のびるデザート食品として杏仁プリンを選択し、表2~5に示した各実施例、比較例の配合で、杏仁プリンを調製した。具体的には、各材料を混合して均一な懸濁液を調製し、懸濁液を混合しながら加熱して糊化させ、さらに混練した(品温85℃)。得られた生地を95mlのプラスチックカップに流し入れ、冷蔵庫(約5℃)で約20時間冷却して杏仁プリンを調製した。
【0020】
3.杏仁プリンの評価
上記方法で得られた杏仁プリンについて、10名の専門パネラーにて、以下の評価基準で、スプーンですくった際の糸引き性、弾力性、すくい易さについて評価を行なった。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表2~4に示す。
(1)糸引き性
4:非常によく伸びる
3:よく伸びる
2:やや伸びる
1:伸びない
(2)弾力性
4:スプーンを挿入してすくい上げる際に、デザート食品が元の形に戻ろうとする力が強い
3:スプーンを挿入してすくい上げる際に、デザート食品が元の形に戻ろうとする力がやや強い
2:スプーンを挿入してすくい上げる際に、デザート食品が元の形に戻ろうとする力がやや弱い
1:スプーンを挿入してすくい上げる際に、デザート食品が元の形に戻ろうとする力が弱い
(3)すくい易さ
4:デザート食品がスプーンに十分にのり、非常にすくい易い
3:デザート食品がスプーンのり、すくい易い
2:デザート食品がスプーンにあまりのらず、ややすくい難い
1:デザート食品がスプーンにのらず、すくい難い
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
表2~5に示した通り、アセチル化澱粉又はヒドロキシプロピル化澱粉(エーテル化澱粉)、及び架橋澱粉の合計の含有量が、杏仁プリンの総質量に基づいて3.4~8.0質量%であり、前記アセチル化澱粉又はヒドロキシプロピル化澱粉と前記架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉又はヒドロキシプロピル化澱粉:架橋澱粉)が、8:2~3:7の範囲である実施例1~7、参考例8~12、実施例13~15の杏仁プリンは、糸引き性、弾力性、すくい易さの評価がそれぞれ2.5以上であった。一方、アセチル化澱粉のみを含有する比較例1及び比較例2の杏仁プリンでは、糸引き性又は弾力性のいずれかの評価が悪く、すくい易さの評価もやや悪かった。また、ヒドロキシプロピル化澱粉のみを含有する比較例3及び比較例4は非常に良く伸びるが、すくい難かった。さらに、架橋澱粉のみを含有する比較例5及び比較例6では、糸引き性が全く得られなかった。
【0026】
アセチル化澱粉又はヒドロキシプロピル化澱粉、及び架橋澱粉の合計の含有量が、杏仁プリンの総質量に基づいて3.0質量%の比較例7では、糸引き性、弾力性が認められず、9.0質量%の比較例8では、すくい易さの評価が悪かった。したがって、アセチル化澱粉及び/又はヒドロキシプロピル化澱粉、及び架橋澱粉の合計の含有量は、杏仁プリンの総質量に基づいて3.4~8.0質量%であることが必須であることが示唆された。
【0027】
アセチル化澱粉と架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉:架橋澱粉)が、9:1の比較例9では、弾力性、すくい易さの評価がやや悪く、2:8の比較例10では、糸引き性、弾力性の評価がやや悪かった。したがって、アセチル化澱粉及び/又はヒドロキシプロピル化澱粉と架橋澱粉の質量比(アセチル化澱粉及び/又はヒドロキシプロピル化澱粉:架橋澱粉)は8:2~3:7の範囲であることが必須であることが示唆された。
【0028】
以上の実施例の結果から、本発明によって、糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有するのびるデザート食品が得られることが示された。
【0029】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、糸引き性と弾力性を有しつつも、スプーンですくい易い新規な物性を有するのびるデザート食品を、容易に提供することができる。