(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】非水系電解液及び非水系電解液電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20221013BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221013BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20221013BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/054
(21)【出願番号】P 2018197119
(22)【出願日】2018-10-19
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 藍子
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-359001(JP,A)
【文献】特開2017-168347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 10/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒を含み、かつ下記式(1)で表される化合物及び(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む非水系電解液。
【化1】
(上記式(1)中、R
1~R
3のうち少なくとも一つがハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基であり、R
4は水素原子
、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアシル基である。上記式(2)中、R
5~R
7のうち少なくとも一つがハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基であり、R
8は水素原子
、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアシル基である。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物を含み、かつ前記式(1)で表される化合物におけるR
1~R
3がハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基である、請求
項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物を含み、かつ前記式(1)で表される化合物として、(
メチルチオ)トリフェニルシラン、(フェニルチオ)トリフェニルシラン及びS-(トリ
フェニルシリル)チオベンゾエイトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求
項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記式(2)で表される化合物を含み、かつ前記式(2)で表される化合物におけるR
5~R
7がハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基である、請求
項1乃至3のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
前記式(2)で表される化合物を含み、かつ前記式(2)で表される化合物として、(
メチルスルフォニル)トリフェニルシラン及び(フェニルスルフォニル)トリフェニルシ
ランからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記
載の非水系電解液。
【請求項6】
前記式(1)で表される化合物を含み、かつその含有量が0.01質量%以上20質量
%以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項7】
前記式(2)で表される化合物を含み、かつその含有量が0.01質量%以上20質量
%以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項8】
金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極及び正極と、非水系電解液とを備える非水系電解
液二次電池であって、該非水系電解液が請求項1乃至7のいずれか1項に記載の非水系電
解液である非水系電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液に関する。より具体的には、本発明は、充放電による内部抵抗
と膨れの増加を抑制し、容量維持率に優れる非水系電解液、これを用いた非水系電解液電
池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等の電源から自動車用等の駆動用車載電源や定置用大型電源
等の広範な用途において、リチウム二次電池等の非水系電解液二次電池が実用化されてい
る。しかしながら、近年の非水系電解液二次電池に対する高性能化の要求はますます高く
なっており、電池特性、例えば入出力特性、サイクル特性、保存特性、連続充電特性、安
全性等の諸特性を高い水準で達成することが求められている。
【0003】
これまで、非水系電解液二次電池のサイクル特性などの電池特性を改善するために、非
水系電解液の添加剤を用いることが先に提案されている。例えば、特許文献1には、非水
系電解液にジスルフィド誘導体を含有することにより、サイクル特性等を向上できる技術
が開示されている。また、特許文献2には、非水系電解液にシロキサン誘導体を含有する
ことにより、低温放電特性等を向上できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-52735号公報
【文献】特開2006-93064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2では添加剤による内部抵抗や膨れの増加については十分に検討され
ていなかった。本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、容量維持率に優
れながらも、充放電による内部抵抗と膨れの増加を抑制する非水系電解液及び非水系電解
液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、非水系電解液二次電池に
用いられる非水系電解液において、該非水系電解液として、Si-Sの部分構造を有する
化合物を含むことで、上記課題を解決し得ることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下
に示す通りである。
【0007】
[1]非水溶媒を含み、かつ下記式(1)で表される化合物及び(2)で表される化合物
のうちの少なくとも一方を含む非水系電解液。
【化1】
(上記式(1)中、R
1~R
3のうち少なくとも一つがハロゲン原子を有していてもよい
炭素数の6~10のアリール基であり、R
4は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を
有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数の
6~10のアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアシル基である。上記式(2
)中、R
5~R
7のうち少なくとも一つがハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~
10のアリール基であり、R
8は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していても
よい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のア
リール基又はハロゲン原子を有していてもよいアシル基である。)
【0008】
[2]前記式(1)で表される化合物を含み、かつ前記式(1)で表される化合物におけ
るR1~R3がハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基である、
[1]に記載の非水系電解液。
[3]前記式(1)で表される化合物を含み、かつ前記式(1)で表される化合物として
、(メチルチオ)トリフェニルシラン、(フェニルチオ)トリフェニルシラン及びS-(
トリフェニルシリル)チオベンゾエイトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
[1]又は[2]に記載の非水系電解液。
【0009】
[4]前記式(2)で表される化合物を含み、かつ前記式(2)で表される化合物におけ
るR5~R7がハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基である、
[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の非水系電解液。
[5]前記式(2)で表される化合物を含み、かつ前記式(2)で表される化合物として
、(メチルスルフォニル)トリフェニルシラン及び(フェニルスルフォニル)トリフェニ
ルシランからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、[1]乃至[4]のいずれか一
つに記載の非水系電解液。
【0010】
[6]前記式(1)で表される化合物を含み、かつその含有量が0.01質量%以上20
質量%以下である、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の非水系電解液。
[7]前記式(2)で表される化合物を含み、かつその含有量が0.01質量%以上20
質量%以下である、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【0011】
[8]金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極及び正極と、非水系電解液とを備える非水系
電解液二次電池であって、該非水系電解液が[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の非
水系電解液である非水系電解液二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容量維持率に優れながらも、充放電による内部抵抗と膨れの増加を抑
制することのできる非水系電解液、及びこれを用いた非水系電解液二次電池を提供するこ
とができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の一例(代表例)であり
、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範
囲内で任意に変更して実施することができる。
【0014】
〔非水系電解液〕
本発明の非水系電解液は、非水溶媒を含み、かつ下記式(1)で表される化合物及び(
2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含むものである。なお、以下において、
式(1)で表される化合物を「化合物(1)」、式(2)で表される化合物を「化合物(
2)」と称することがある。
【0015】
【0016】
(式(1)中、R1~R3のうち少なくとも一つがハロゲン原子を有していてもよい炭素
数の6~10のアリール基であり、R4は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有し
ていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~
10のアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアシル基である。)
【0017】
(式(2)中、R5~R7のうち少なくとも一つがハロゲン原子を有していてもよい炭素
数の6~10のアリール基であり、R8は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有し
ていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~
10のアリール基又はハロゲン原子を有していてもよいアシル基である。)
【0018】
本発明の非水系電解液は、容量維持率に優れながらも、充放電による内部抵抗と膨れの
増加を抑制することができるという効果を奏する。本発明がこのような効果を奏する理由
は定かではないが、次の理由によるものと推定される。即ち、化合物(1)及び化合物(
2)はいずれも、一定の電位の下で反応することにより、正極上でそれぞれ化合物(1)
又は化合物(2)由来の被膜を形成し、電解液の酸化分解を抑制すると推定される。通常
、非水系電解液二次電池では、充放電の繰り返しにより電解液が酸化分解されるが、この
副反応が、容量維持率の低下及び内部抵抗の増加、電池膨れ等の劣化の一因であった。正
極上で化合物(1)又は化合物(2)由来の良好な被膜が形成されることで、電解液の酸
化分解が抑制され、酸化分解由来の前記劣化を抑制するものと推定される。
【0019】
<1.化合物(1)>
本発明の非水系電解液は、前記式(1)及び(2)で表される化合物のうち少なくとも
一方を含有する。前記式(1)において、R1~R3のうち少なくとも一つがハロゲン原
子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基であり、R1~R3がハロゲン原子
を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基であることが好ましく、フェニル基又
は一部の水素がフッ素で置換されたフェニル基であるものが特に好ましい。R4は水素原
子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲ
ン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基又はハロゲン原子を有していて
もよいアシル基であり、メチル基、アシル基、フェニル基又は一部の水素がフッ素で置換
されたフェニル基であるものが好ましい。
【0020】
より具体的には、前記式(1)で表される化合物の中でも、(メチルチオ)トリフェニ
ルシラン、(フェニルチオ)トリフェニルシラン及びS-(トリフェニルシリル)チオベ
ンゾエイトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0021】
式(1)で表される化合物の非水系電解液中の含有量は、本発明の効果を著しく損なわ
ない限り、特に限定されない。具体的には、非水系電解液中のこの化合物の含有量の下限
値としては、0.001質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であるこ
とがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限値として
は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、
5質量%以下であることがさらに好ましい。この化合物の濃度が上記の好ましい範囲内で
あると、他の電池性能を損なうことなく、内部抵抗と膨れ増加の抑制効果がさらに発現し
易くなる。
【0022】
<2.化合物(2)>
本発明の非水系電解液は、前記式(1)及び(2)で表される化合物のうち少なくとも
一方を含有する。前記式(2)において、R5~R7のうち少なくとも一つがハロゲン原
子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基であり、R5~R7がハロゲン原子
を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基であることが好ましく、フェニル基又
は一部の水素がフッ素で置換されたフェニル基であるものが特に好ましい。また、R8は
水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、
ハロゲン原子を有していてもよい炭素数の6~10のアリール基又はハロゲン原子を有し
ていてもよいアシル基であり、メチル基、アシル基、フェニル基又は一部の水素がフッ素
で置換されたフェニル基であることが好ましい。
【0023】
より具体的には、前記式(2)で表される化合物の中でも、(メチルスルフォニル)ト
リフェニルシラン及び(フェニルスルフォニル)トリフェニルシランからなる群より選ば
れる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0024】
式(2)で表される化合物の非水系電解液中の含有量は、本発明の効果を著しく損なわ
ない限り、特に限定されない。具体的には、非水系電解液中のこの化合物の含有量の下限
値としては、0.001質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であるこ
とがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限値として
は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、
5質量%以下であることがさらに好ましい。この化合物の濃度が上記の好ましい範囲内で
あると、他の電池性能を損なうことなく、内部抵抗と膨れ増加の抑制効果がさらに発現し
易くなる。
【0025】
<3.非水溶媒>
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、後
術する電解質を溶解する非水溶媒を含有する。ここで用いる非水溶媒について特に制限は
なく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、好ましくは、飽和環状
カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、
エーテル系化合物、及びスルホン系化合物から選ばれる少なくとも1つが挙げられるが、
これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いる
ことができる。
【0026】
<3-1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられ
る。具体的には、炭素数2~4の飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート
、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカ
ーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性
向上の点から好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上
を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0027】
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない
限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水溶媒100体積%中
、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電
解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、蓄電デバイスの大電流放電特
性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また上限は、通常
90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。こ
の範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制
し、ひいては蓄電デバイスの入出力特性を更に向上させたり、サイクル特性や保存特性と
いった耐久性が更に向上させたりできるために好ましい。
【0028】
<3-2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素数3~7のものが好ましい。具体的には、炭素数3~
7の鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n
-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカー
ボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチル
メチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、
エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチル
カーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ジメチ
ルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピ
ルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、
メチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネートが特に好ましい。
【0029】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」
と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有
するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好まし
くは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それら
は互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化
鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチ
ルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0030】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。
【0031】
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常15
体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上である。
また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下
である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度
を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては蓄電デバイスの入出力特性や
充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。また、非水系電解液の誘電率の低下に由
来する電気伝導率の低下を回避し、蓄電デバイスの入出力特性や充放電レート特性を良好
な範囲としやすくなる。
【0032】
<3-3.鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素数が3~7のものが挙げられ
る。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢
酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン
酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸-n
-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸-t-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチ
ル、酪酸-n-プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪
酸-n-プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸メチル
、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオ
ン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪
酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上、及びサイクルや保存といった耐久試
験時の電池膨れの抑制の観点から好ましい。
【0033】
<3-4.環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3~12のものが挙
げられる。具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラ
クトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、ガンマブチロラク
トンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0034】
<3-5.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3~10の鎖状エーテル、及び炭素数3~6の環状
エーテルが好ましい。
【0035】
炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル
)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロ
エチル)エーテル、エチル(2-フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリ
フルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル
、(2-フルオロエチル)(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオ
ロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフ
ルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロ
ピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-
トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n
-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)
エーテル、2-フルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-
フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオ
ロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオ
ロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフ
ルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエー
テル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、
(2,2,2-トリフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エー
テル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プ
ロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタ
フルオロ-n-プロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロ
ピルエーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピ
ル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ
-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,
3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチ
ル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピ
ルエーテル、(n-プロピル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピ
ル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2
,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,
3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)
エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル
)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-
プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフ
ルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エー
テル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ
-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3
,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフル
オロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(
2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,
3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメ
タン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(
2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロ
エトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エト
キシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラ
フルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキ
シ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1
,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メ
タン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキ
シ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン
、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,
2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエ
トキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキ
シ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフ
ルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ
)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,
2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エ
タン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキ
シ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコー
ルジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレン
グリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0036】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メ
チルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-
メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙
げられる。これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメ
タン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチ
ルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力
が高く、リチウムイオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く
、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシ
メトキシメタンである。
【0037】
<3-6.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3~6の環状スルホン、及び炭素数2~6の鎖状ス
ルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
【0038】
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメ
チレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジ
スルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる
。これらの中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレン
ジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく
、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0039】
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも
含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体として
は、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアル
キル基で置換されたものが好ましい。
【0040】
これらの中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホ
ラン、3-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロス
ルホラン、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジ
フルオロスルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチル
スルホラン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラ
ン、4-フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-
フルオロ-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロ
メチルスルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、
3-ジフルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオ
ロメチルスルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フル
オロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチ
ル)スルホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導
度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0041】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルス
ルホン、n-プロピルメチルスルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピル
スルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピル
スルホン、n-ブチルメチルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、t-ブチルメチルス
ルホン、t-ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメ
チルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルス
ルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタ
フルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロ
メチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホ
ン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(ト
リフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プ
ロピルスルホン、ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-
プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピ
ルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロ
ピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-
プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-
n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル
-n-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-t-ブチルスルホン等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-
プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、t
-ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチル
スルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジ
フルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエ
チルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスル
ホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチル
ペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフル
オロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフル
オロエチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフル
オロメチル-t-ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0043】
<4.電解質>
本発明の非水系電解液は通常、電解質が含まれる。特に、本発明の非水系電解液をリチ
ウムイオン二次電池である場合には、通常リチウム塩が含まれる。
【0044】
本発明の非水系電解液に用いることができるリチウム塩としては、例えば、LiClO
4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiTaF6、LiCF3SO3、LiC
4F9SO3、Li(FSO2)2N、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO
2)2N、Li(CF3)SO2)3C、LiBF3(C2F5)、LiB(C2O4)
2、LiB(C6F5)4、LiPF3(C2F5)3等が挙げられる。これらのうち、
好ましいものは、LiPF6、LiBF4、LiClO4、Li(FSO2)2N及びL
i(CF3SO2)2Nから選ばれる少なくとも1つであり、より好ましいものはLiP
F6、LiBF4、Li(FSO2)2N及びLi(CF3SO2)2Nから選ばれる少
なくとも1つであり、更に好ましいのは、LiPF6及びLi(CF3SO2)2Nのう
ちの少なくとも一方であり、特に好ましいものはLiPF6である。以上に挙げたリチウ
ム塩は1種類のみで用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明の非水系電解液の最終的な組成中におけるリチウム塩等の電解質の濃度は、本発
明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.5mol/L以上であり
、より好ましくは0.6mol/L以上であり、更に好ましくは0.7mol/L以上で
あり、一方、好ましくは3mol/L以下であり、より好ましくは2mol/L以下であ
り、更に好ましくは1.8mol/L以下である。リチウム塩の含有量が上記範囲内であ
ることによりイオン電導度を適切に高めることができる。
【0046】
なお、以上に挙げたリチウム塩の含有量を測定する方法としては特に制限はなく、公知
の方法を任意に用いることができる。このような方法としては例えば、イオンクロマトグ
ラフィー、F磁気共鳴分光法等が挙げられる。
【0047】
<5.その他の添加剤>
本発明の非水系電解液は、以上に挙げた各種化合物の他に、マロノニトリル、スクシノ
ニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼ
ラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のシアノ基
を有する化合物、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(
イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-
フェニレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-
ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン等
のイソシアナト化合物、アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルア
クリル酸無水物、安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水
物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,
5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、無
水コハク酸、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物化合物、ビニレンカーボネート、ビニ
ルエチレンカーボネート等の不飽和結合を有する環状カーボネート、1,3-プロパンス
ルトン等のスルホン酸エステル化合物、ジフルオロリン酸リチウムのようなリン酸塩やフ
ルオロスルホン酸リチウムのようなスルホン酸塩等が添加されていてもよい。ただし、こ
こで挙げたジフルオロリン酸リチウムやフルオロスルホン酸リチウムはリチウム塩に該当
するものであるが、非水系電解液に使用される非水溶媒に対する電離度の観点から電解質
として扱わず、添加剤と位置付けるものとする。また、過充電防止剤として、シクロヘキ
シルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ビフェニル、アルキルビフェ
ニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラ
ン等の各種添加剤を本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することができる。これ
らの化合物は適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、容量維持率の観点から、
ビニレンカーボネート、ジフルオロリン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウムが特に
好ましく、特にはこれらを組み合わせて用いることが好ましい。
【0048】
〔非水系電解液電池〕
本発明の非水系電解液、正極及び負極を用いて非水系電解液電池(以下、「本発明の非
水系電解液電池」と称することがある。)とすることができる。非水系電解液電池として
は例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池等が挙げられるが、好ま
しいのはリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池は通常、本発明の非水
系電解液と、集電体及び該集電体上に設けられた正極活物質層を有し、リチウムイオンを
吸蔵、放出し得る正極と、集電体及び該集電体上に設けられた負極活物質層を有し、リチ
ウムイオンを吸蔵、放出し得る負極とを備えるものである。
【0049】
<1.正極>
本発明の非水系二次電池の正極の活物質となる正極材料としては、例えば、基本組成が
LiCoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO2で表されるリチウム
ニッケル複合酸化物、LiMnO2及びLiMn2O4で表されるリチウムマンガン複合
酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物、並びにこ
れらの複合酸化物混合物等を用いればよい。更にはTiS2、FeS2、Nb3S4、M
o3S4、CoS2、V2O5、CrO3、V3O3、FeO2、GeO2及びLi(N
i1/3Mn1/3Co1/3)O2、LiFePO4等を用いればよく、容量密度の観
点から、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.2C
o0.3)O2、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.8Mn
0.1Co0.1)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2等が特に好
ましい。
【0050】
<2.負極>
負極は、通常、集電体上に負極活物質層を有するものであり、負極活物質層は負極活物
質を含有する。以下、負極活物質について述べる。
【0051】
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン
、マグネシウムイオンなどのs-ブロック金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、
特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、金属化合物系材料やそれらの酸化物
、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等が挙げられる。これらは1種を単独で用い
てもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0052】
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、特に限定されないが、例えば、黒鉛
、非晶質炭素、黒鉛化度の小さい炭素質物が挙げられる。黒鉛の種類としては、天然黒鉛
、人造黒鉛等が挙げられる。また、これらを炭素質物、例えば非晶質炭素や黒鉛化物で被
覆したものを用いてもよい。非晶質炭素としては、例えば、バルクメソフェーズを焼成し
た粒子や、炭素前駆体を不融化処理し、焼成した粒子が挙げられる。 黒鉛化度の小さい
炭素質物粒子としては、有機物を通常2500℃未満の温度で焼成したものが挙げられる
。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよ
い。
【0053】
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、特に限定されないが、例えば
、Ag、Al、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、S
r、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。これらの中でも、ケイ素及び/又はス
ズの単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、Si単体及びSiOx(
0.5≦O≦1.6)が単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
【0054】
<3.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この
場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0055】
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない
限り、公知のものを任意に採用することができる。これらの中でも、本発明の非水系電解
液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優
れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0056】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン
等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィ
ルター等を用いることができる。これらの中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレ
フィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用
いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0057】
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく
、10μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好まし
く、30μm以下がより好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機
械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性
能が低下する場合があるばかりでなく、蓄電デバイス全体としてのエネルギー密度が低下
する場合がある。
【0058】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパ
レータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%
以上がより好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下
がより好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特
性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が
低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0059】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm
以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると
、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低
下する場合がある。
【0060】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化ア
ルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ
、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0061】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄
膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。
前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複
合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる
。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤
として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0062】
<4.導電材>
上述の正極及び負極は、導電性の向上のために、導電材を含むことがある。導電材とし
ては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金
属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボ
ンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、こ
れらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても
よい。
【0063】
導電材は、正極材若しくは負極材の100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好
ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、また、通常50質量部以下、
好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下含有するように用いられる。
含有量が上記範囲よりも下回ると、導電性が不十分となる場合がある。また、上記範囲よ
りも上回ると、電池容量が低下する場合がある。
【0064】
<5.結着剤>
上述の正極及び負極は、結着性の向上のために、結着剤を含むことがある。結着剤は、
非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
【0065】
塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれ
ばよいが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の
樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタ
ジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴ
ム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添
加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・
ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又は
その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリ
ブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフ
ィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフ
ルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレ
ン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝
導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いて
もよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0066】
結着剤の割合は、正極材若しくは負極材の100質量部に対し、通常0.1質量部以上
であり、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、また、通常50質量部
以下であり、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下
がさらに好ましい。結着剤の割合が、上記範囲内であると電極の結着性を十分保持でき電
極の機械的強度が保たれ、サイクル特性、電池容量及び導電性の点から好ましい。
【0067】
<6.液体媒体>
スラリーを形成するための液体媒体としては、活物質、導電材、結着剤、並びに必要に
応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に
制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0068】
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機
系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、
メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセト
ン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチ
ル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等の
アミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N-メチ
ルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を
挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意
の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0069】
<7.増粘剤>
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン
・ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘
剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
【0070】
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カ
ルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセ
ルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれ
らの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ
及び比率で併用してもよい。
【0071】
さらに増粘剤を使用する場合には、正極材若しくは負極材の100質量部に対し、通常
0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、ま
た、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下が望まし
い。上記範囲を下回ると著しく塗布性が低下する場合があり、また上記範囲を上回ると、
活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や活物質間の抵抗が
増大する場合がある。
【0072】
<8.集電体>
集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体
例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル、銅等の
金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。これらの中
でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0073】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金
属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場
合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。
なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
【0074】
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm
以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μ
m以下がより好ましい。薄膜が、上記範囲内であると集電体として必要な強度が保たれ、
また取り扱い性の点からも好ましい。
【0075】
<9.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、
及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもの
のいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称す
る。)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり
、80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる
。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材
が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池として
の充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に
逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0076】
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による放電特性の向
上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが
好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は
特に良好に発揮される。
【0077】
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形
成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大
きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電
極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端
子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0078】
[外装ケース]
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定され
るものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアル
ミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(
ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム
合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0079】
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属
同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属
類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケ
ースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。
シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異な
る樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする
場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極
性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0080】
[保護素子]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Po
sitive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サ
ーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流
を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動し
ない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常
発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0081】
[外装体]
本発明の蓄電デバイスは、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外
装体内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわな
い限り公知のものを任意に採用することができる。
【0082】
具体的には、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄
、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
【0083】
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大
型等のいずれであってもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要
旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
[負極の作製]
炭素質材料98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロース
ナトリウムが1質量部となるように水性ディスパージョンを加え、さらにスチレン-ブタ
ジエンゴムが1質量部となるように水性ディスパージョンを加え、ディスパーザーで混合
してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス
機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅32mm、長さ42mm、及び幅5mm
、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出して負極とした。
【0086】
[正極の作製]
正極活物質としてLi(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O285質量部と、導電材
としてのカーボンブラック10質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVd
F)5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られた
スラリーを、厚さ15μmのアルミ箔の片面に塗布して、乾燥し、プレス機にてロールプ
レスしたものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長
さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出して正極とした。
【0087】
[電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DM
C)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比30:30:40)に乾
燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように溶解して電解液を調整し、基本電解
液とした。この基本電解液にS-(トリフェニルシリル)チオベンゾエイトを濃度が0.
3質量%となるように混合して、実施例1の電解液を調製した。
【0088】
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の
順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面
を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させなが
ら挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、4.2Vで満充電状態とな
る実施例1のシート状電池を作製した。
【0089】
[サイクル特性の評価]
充放電サイクルを経ていない新たな電池に対して、25℃で電圧範囲4.2V~2.5
V、電流値1/6C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1
Cとする。以下同様。)にて1回充放電を行った後、4.1Vまで充電し、60℃で12
時間加熱処理を行い、電池を安定化させた。その後、25℃で電圧範囲4.2V~2.5
V、電流値1/6Cにて1回充放電させ、この放電容量を初期放電容量とした。その後、
60℃で電圧範囲4.2V~2.5V、電流値1Cでの充放電を100回繰り返した。そ
の後、25℃で電圧範囲4.2V~2.5V、電流値1/6Cにて1回充放電させ、この
放電容量を100サイクル後の放電容量とした。[(100サイクル後の放電容量)/(
初期放電容量)]×100からサイクル容量維持率(%)を求めた。その結果を表1に示
す。
【0090】
[サイクル後-30℃抵抗特性の評価]
100サイクル充放電試験の前後において、電池を、25℃にて、1/6Cの定電流で
初期放電容量の半分の容量となるように充電した。これを-30℃において各々0.25
C、0.5C、0.75C、1.0C、1.5C、2Cで放電させ、その2秒時の電圧を
測定した。電流-電圧直線の傾きから抵抗値(Ω)を求め、[(100サイクル試験後抵
抗値)/(100サイクル試験前抵抗値)]から内部抵抗増加倍率を求めた。その結果を
表1に示す。
【0091】
[サイクル後体積変化の評価]
100サイクル充放電試験の前後において、電池を、エタノールに沈ませた状態で質量
を観測し、実質量との差から浮力を求め、エタノールの密度で割ることで、電池の体積を
測定した。[(100サイクル試験後体積)/(100サイクル試験前体積)]から体積
増加倍率を求めた。その結果を表1に示す。
【0092】
(実施例2)
実施例1のS-(トリフェニルシリル)チオベンゾエイトの代わりに、(メチルスルフ
ォニル)トリフェニルシランを0.35質量%となるように用いた以外は、実施例1と同
様にして電解液を調製してシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表
1に示す。
【0093】
(実施例3)
実施例1のS-(トリフェニルシリル)チオベンゾエイトの代わりに、(メチルチオ)
トリフェニルシランを0.5質量%となるように混合し、その飽和溶液を用いた以外は、
実施例1と同様にして電解液を調製してシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行っ
た。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例1)
S-(トリフェニルシリル)チオベンゾエイトを用いなかったこと以外は実施例1と同
様にして電解液を調製してシート状リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表
1に示す。
【0095】
【0096】
上記の表1から明らかなように、本発明における化合物(1)及び化合物(2)のうち
の少なくとも一方を添加した非水系電解液を用いたリチウム二次電池は、容量維持率が高
く、抵抗値増加倍率が低く、さらに体積増加倍率が低い。なお、以上の表1に示した各実
施例・比較例におけるサイクル試験期間はモデル的に比較的短期間として行なっているが
、有意な差が確認されている。実際の非水電解液二次電池の使用は数年に及ぶ場合もある
ため、これら結果の差は長期間の使用を想定した場合、更に顕著な差になると理解するこ
とができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の非水系電解液は、充放電による内部抵抗と膨れの増加を抑制し、容量維持率に
優れた非水系二次電池を提供することができる。このため、本発明の非水系電解液及びこ
れを用いて得られる非水系二次電池は、公知の各種の用途に用いることが可能である。具
体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブ
ックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォ
ンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミ
ニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー
、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照
明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用バックアップ電
源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、リチウム
イオンキャパシタ等が挙げられる。