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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ホログラム記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 20/14 20060101AFI20221013BHJP
   G03H 1/26 20060101ALI20221013BHJP
   G11B 7/0065 20060101ALI20221013BHJP
   G11B 7/135 20120101ALI20221013BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G11B20/14 341Z
G03H1/26
G11B7/0065
G11B7/135
G11B20/10 301Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018197129
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020064697
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】片野 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】室井 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 延博
(72)【発明者】
【氏名】石井 紀彦
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-026386(JP,A)
【文献】特開2006-259816(JP,A)
【文献】特開2013-104975(JP,A)
【文献】特開2010-015635(JP,A)
【文献】特開2010-020813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 20/14
G03H 1/26
G11B 7/0065
G11B 7/135
G11B 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の信号の変調パターンを複数個配列してなるページデータを記録するホログラム記録再生装置において、
複数個の該変調パターン同士は、互いに同一数の画素を同一形状に配列したものからなるとともに、該同一数の画素中に所定の同一数の輝点を設けてなり、任意の2つの該変調パターンにおける該輝点同士の座標位置の距離をdとし、当該任意の2つの変調パターンにおける当該輝点同士の輝度レベルの差をiとし、
該任意の2つの変調パターンにおける当該輝点同士の座標位置の距離dと、当該任意の2つの変調パターンにおける当該輝点同士の輝度レベルの差iと、装置光学系の光学特性によって決定される、当該輝点同士の輝度レベルの差iに対する当該輝点同士の座標位置の距離dの重み係数αと、を変数として用いた下記条件式(1)で表される総和をSとし、当該任意の2つの変調パターンにおける前記輝点同士の該総和Sを各々足し合わせて得られた合計総和をSとしたとき、該合計総和Sの大きさに基づき、該変調パターン同士が復調時に互いに誤りとなる確率を最も小さくし得るように、所望の数の前記変調パターンを選択して、生成する変調パターン生成手段を備えたことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項2】
前記変調パターン生成手段による前記変調パターンを選択する処理は、
前記複数個の変調パターンの中から順次選ばれた1つの変調パターンと、その余の各変調パターンとの組み合わせによる前記合計総和Sを、全て足し合わせて合計総和総計値Sを算出し、この合計総和総計値Sが大きい方から所望の数の前記変調パターンを選択する処理であることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録再生装置。
【請求項3】
前記変調パターン生成手段による前記変調パターンを選択する処理は、
全ての前記2つの変調パターンの組み合わせ各々に係る前記合計総和Sの中で、最小となる該合計総和Sに係る前記2つの変調パターンの組み合わせを判別し、判別された組み合わせに係る前記2つの変調パターンをいずれも除外する処理を繰り返して、所望の数の前記変調パターンを選択する処理であることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元画像シンボルとして変調されホログラム記録されたデータを、ビット列データに復調するホログラム記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量かつ高速の情報記録再生システムとしてホログラム記録再生装置が注目されている。ホログラム記録は、参照光・信号光と称される同一光源からの2つのコヒーレント光を干渉させ、生じた干渉縞を記録媒体に屈折率変化として記録・保持する。信号光は「ページデータ」と称される2次元画像データにより空間的に変調され、レンズを介して記録媒体へ照射される。
また再生時には、記録したときと同一条件の参照光を、好ましくは記録時の参照光照射方向とは逆側から記録媒体へ照射する(位相共役再生)と、記録媒体の内部のホログラムにより光が回折し、再生光が得られる。これを撮像素子等で撮像し、読み取られた2次元画像データを復調することで元の情報を読み出すことが可能である。
【0003】
ところで、上述したように、記録すべき信号は、2次元画像データにより空間的に変調される。この時の変調時に、ページデータを分割したある一定の範囲中で輝点と暗点の判定を行う、例えば下記特許文献1に記載された手法が知られている。これは、再生時の諸条件やレーザ光の面内方向の輝度ムラ等によって、ページデータの周辺部と中心部で、再生されたページデータの輝度条件が異なるために行うものである。
この手法において使用される変調コードの例としては、隣り合うピクセルの回折光強度の引き算を行い、その結果がマイナスであれば“0”、プラスであれば“1”にそれぞれ対応付ける差分コードや、図4(a)に示す5:9変調方式等がある。
【0004】
ここで、5:9変調方式とは、5ビット(25=32とおり)のデータを、輝点2シンボルと暗点7シンボルで構成した3×3の9シンボルで表現する方式である。記録するデータを5ビット区切りで変調し、3×3の変調ブロックを敷き詰めて並べることでページデータを形成する。例えば、1,740画素×1,044画素のページデータであれば、1740×1044÷(3×3)=201,840個の変調ブロックが並べられていることになる(図4(b)を参照)。
【0005】
このような変調方式とされているので、復調時に各シンボルの輝度値を計測し、輝点と暗点の判定を行うことで、データを再生することが可能となる。一般的な、データの復調手法としては、各シンボルの輝度を相対的に比較し、輝度レベルが高い順にシンボルとして判定する硬判定が一般的である。例えば、5:9変調方式の場合には、輝点が2つ含まれることから、9つのシンボルの輝度を測定し、最も輝度が高い2点を輝点とみなして復調する(図4(c)を参照)。
【0006】
上記変調コードにおける各パターンは任意に作成することができる。例えば、5:9変調方式の場合、9つのシンボルから2つの輝点を選ぶため、パターンの候補は9C2=36通り存在し、その中から任意の5ビット、すなわち32通りを選択することになる。その際、例えば輝点の位置が互いに類似するパターン同士では、復調誤りが生じやすくなってしまうため、復調誤りが生じやすい順に4つのパターンを選び、この4つのパターンを避けるようにして32パターンを選択する。
パターンの組み合わせが最適となるように選択する手法としては、例えば、本願発明者等が提案した手法が知られている(非特許文献1)。この手法は、全ての変調パターンについてユークリッド距離和を計算し、相互距離が短いパターンを不採用とし、ビット間の距離との組み合わせからパターンを選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3209493号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】石井紀彦等,“ホログラムメモリーにおける差分コード最適化”,2016年映像情報メディア学会年次大会講演予稿集,34D-2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、さらなる情報の高密度記録化の要請に応え得るホログラム記録再生装置を構成しようとした場合、ページデータは多値記録フォーマットとすることが肝要である。
このような多値記録フォーマットとしては、復調誤りが生じやすくなるのを避けることができるとともに、誤りが生じ難い変調パターンを効率よく高速で選択することができる手法を構築する必要がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高密度記録化が可能な多値記録フォーマットを採用しつつ、変調パターンを復調誤りが生じ難いものとすることができ、復調誤りが生じ難い変調パターンの選択を効率よく迅速に行い得るホログラム記録再生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のホログラム記録再生装置は、
所望の信号の変調パターンを複数個配列してなるページデータを記録するホログラム記録再生装置において、
複数個の該変調パターン同士は、互いに同一数の画素を同一形状に配列したものからなるとともに、該同一数の画素中に所定の同一数の輝点を設けてなり、任意の2つの該変調パターンにおける該輝点同士の座標位置の距離をdとし、当該任意の2つの変調パターンにおける当該輝点同士の輝度レベルの差をiとし、
該任意の2つの変調パターンにおける当該輝点同士の座標位置の距離dと、当該任意の2つの変調パターンにおける当該輝点同士の輝度レベルの差iと、装置光学系の光学特性によって決定される、当該輝点同士の輝度レベルの差iに対する当該輝点同士の座標位置の距離dの重み係数αと、を変数として用いた下記条件式(1)で表される総和をSとし、当該任意の2つの変調パターンにおける前記輝点同士の該総和Sを各々足し合わせて得られた合計総和をSとしたとき、該合計総和Sの大きさに基づき、該変調パターン同士が復調時に互いに誤りとなる確率を最も小さくし得るように、所望の数の前記変調パターンを選択して、生成する変調パターン生成手段を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
また、前記変調パターン生成手段による前記変調パターンを選択する処理は、
前記複数個の変調パターンの中から順次選ばれた1つの変調パターンと、その余の各変調パターンとの組み合わせによる前記合計総和Sを、全て足し合わせて合計総和総計値Sを算出し、この合計総和総計値Sが大きい方から所望の数の前記変調パターンを選択する処理とすることができる。
【0013】
また、前記変調パターン生成手段による前記変調パターンを選択する処理は、
全ての前記2つの変調パターンの組み合わせ各々に係る前記合計総和Sの中で、最小となる該合計総和Sに係る前記2つの変調パターンの組み合わせを判別し、判別された組み合わせに係る前記2つの変調パターンをいずれも除外する処理を繰り返して、所望の数の前記変調パターンを選択する処理とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のホログラム記録再生装置によれば、輝点位置と輝度レベルの各要素に基づいて変調パターンを形成し、多値記録フォーマットを形成しているので、容易に高密度記録化を図ることができる。
【0015】
また、輝点位置の相互距離dと、輝度レベルの相互距離iと、該iに対する該dの重み係数αを用いて定義される
の値である総和Sを当該任意の2つの変調パターンにおける各輝点同士について求め、これら各輝点同士の総和Sを足し合わせて当該任意の変調パターンにおける合計総和Sを求め、この合計総和Sに基づき、所望の数の変調パターンの組み合わせを選択、生成するようにしているので、輝点同士の座標位置及び輝度レベルの双方についてのユークリッド距離和の相互距離が短い変調パターンが排除された、復調誤りが生じ難い変調パターンの選択を効率よく迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るホログラム記録再生装置の光学系等を説明するための概略図である。
図2】本実施形態で用いられる変調パターンにおいて、説明の簡単化を図るために挙げた、輝点数2、輝度レベル数3で構成された簡単な変調パターンを示すものであり、(a)は変調パターン間の相互距離計算を説明するための概略図であり、(b)は総和Sおよび合計総和Sの計算例を示すものである。
図3】実施形態に示す処理により生成された変調パターン((A)~(F))の例を示すものである。
図4】本発明の実施形態に係るホログラム記録再生装置において用いられる5:9変調の変調処理及び復調処理を説明するための概略図であり、(a)は32個のコード例(♯1~♯32)、(b)は変調手順、(c)は復調手順を各々示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るホログラム記録再生装置を、図面を参照しながら説明する。このホログラム記録再生装置は、信号読み取りの誤り率低下の処理が施された変調パターンにより構成されるページデータを記録し、再生するホログラム記録再生装置である。
【0018】
すなわち、本実施形態に係るホログラム記録再生装置は、所望の信号の変調パターンを複数個配列してなるページデータを記録するものであり、このように記録に資する複数個の変調パターンについて、複数個の輝点位置と、複数個の輝点レベルの要素を採用することにより、高密度記録が可能な多値記録を実現している。
【0019】
また、復調時の誤り率が小さくなるよう所望の数の変調パターンを選択生成する際に、物理的に成立し得る変調パターン候補の中から順次選択された各々について、信号読み取りの誤り率を推定し得る所定の評価値を演算し、この評価値に基づき、信号読み取りの誤り率が少ないと推定される順に、必要な数の変調パターンを選択生成しているので、変調パターンを復調誤りが生じ難いものとすることができ、復調誤りが生じ難い変調パターンの選択を効率よく迅速に行うことができる。
【0020】
<ホログラム記録再生装置>
まず、本実施形態のホログラム記録再生装置について、その光学系を中心とした構成を図1を用いて説明する。
【0021】
この実施形態に係るホログラム記録再生装置101は、ホログラムの記録機能および再生機能を備えた記録再生装置として構成されている。
なお、ホログラム記録媒体110はフォトポリマーで構成され、位相共役型に対応した構成とされている。
【0022】
図1に示すように、記録時において、光源であるレーザ111から出射されたコヒーレントなレーザ光束は、図示されないシャッタを通過し、発散レンズ112およびコリメートレンズ113からなるビームエキスパンダ(空間フィルタ109を含む)により光束径を拡大され、半波長板114を通過し、ミラー115により直角に偏向され、偏光ビームスプリッタ(PBS:以下単にPBSと称する)116により2系の光束に分岐される。
【0023】
PBS116から図中左方に向かう光束(信号搬送用光:p偏光)は、PBS117を透過してSLM160に照射され、該SLM160により空間的に変調されて、デジタル画像からなるページデータ情報を担持した信号光とされる。なお、このSLM160に表示されたページデータは、上述した変調パターン生成手段10により生成された変調パターンを配列して構成されている。
ここで、記録する信号データ列を5ビット区切りで変調し、3×3の変調ブロックを敷き詰めて並べることでページデータを形成した場合には、例えば、1,740画素×1,044画素のページデータであれば、1740×1044÷(3×3)=201,840個の変調ブロックが配列されることになる。
【0024】
また、SLM160から出射(反射)されたp偏光である信号光は、ページデータに依存して入射した状態とは偏光状態が変化してs偏光となり、PBS117において図中下方に反射され、レンズ(FTL)118によって光学的にフーリエ変換されてホログラム記録媒体110に照射される。
【0025】
一方、PBS116から図中下方に向かう光束(s偏光)は、参照光(記録時参照光)とされ、半波長板122(半波長板122の光学軸が入射光の偏光方位に合致するように調整しておく)を通過し、ミラー123により直角に偏向されるが、s偏光とされているためPBS124により反射され、PBS124から図中下方に向かうことになる。この光束はガルバノミラー125により角度制御され、リレーレンズ126を介して記録媒体110中の信号光が照射される場所へ、信号光とは別角度で照射され、これにより、記録媒体110の記録材料中に干渉縞模様の光の強弱に応じた屈折率変化が誘起され、これがホログラム情報として保持される。
【0026】
なお、本実施形態装置においては、角度多重記録が前提とされているので、ページデータを上記SLMに表示させ、逐次、上記SLMへのページデータの表示を更新しつつ、この更新毎に、参照光の記録媒体への入射角度をガルバノミラー125によって少しずつ変化させることにより、互いに異なるページデータを記録媒体中の同一位置へ多重記録することが可能となり、高密度な情報格納が可能となっている。
【0027】
次に、本実施形態のホログラム記録再生装置101の再生機能について説明する。
図1に示すように、ホログラム記録媒体110に記録されたページデータ情報を再生する場合には、半波長板122の光軸に対する角度を調整することで、参照光の偏光方向を(s偏光からp偏光に)変換する。この参照光は、ミラー123で反射された後、PBS124に到達するが、半波長板122によってp偏光とされているので、このPBS124を直進することになる。
【0028】
PBS124を直進した参照光は、ミラー132により反射されて、ガルバノミラー150で角度制御され、レンズ136を介してホログラム記録媒体110に入射される。
このように、記録媒体110へ入射された再生用の参照光は、記録媒体110中の信号光が照射された場所へ、その裏面側から記録用参照光の入射方向とは対向するような方向から照射される。
【0029】
このように、s偏光の再生用参照光の照射によって、ホログラム記録媒体110から所定の上記変調パターンを配列してなるページデータ情報を担持した再生光が射出される。
射出された再生光は、レンズ118を介してPBS117に照射される。このとき再生光はp偏光とされているのでPBS117を透過し、再生光に担持されたページデータ情報はカメラ120に入射して撮像される。
【0030】
<変調パターンの生成手法>
ところで、上述したSLM160に入射されるページデータを構成する変調パターンとしては、例えばM:N変調方式と称される種々の方式を採用し得る。ここで、M:N変調方式とはM個のビット列をN個の画素からなるシンボルに変調する方式である。例えば、5:9変調方式とは、一般に、5ビット(32個)のデータを3×3の9画素で表す変調方式である。
【0031】
以下、本実施形態において5:9変調方式を採用した場合の変調パターンの生成手法について説明する。
5:9変調方式を採用する場合、9つのシンボルから2つの輝点を選択するため、変調パターンの候補は、=36通り存在し、その中から任意の5ビット、すなわち32個の変調パターンを選択することになる。その際、例えば輝点の位置が互いに類似するパターン同士では、復調誤りが生じやすくなってしまうため、復調誤りが生じやすい順に4つのパターンを選択し、この4つのパターンを避けるようにして32パターンを選択する。あるいは、復調誤りが生じにくい順に32個のパターンを選択する。
【0032】
ところで、さらに高密度記録が可能なホログラムメモリー装置を構成しようとした場合、ページデータは多値記録フォーマットとすることが考えられる。例えば、10ビットのデータを3×3シンボル中の3つの輝点及び3種類の輝度レベルで表現する10:9変調方式の場合、=84通りの輝点位置と3=27通りの輝度レベルの組み合わせによる2,268通りのパターンから、1,024通り(10ビット)のパターンを選択する。その際、前述したユークリッド距離を用いてパターンを選択する場合、輝点の位置方向だけではなく、輝度レベルについても計算することが高密度記録を図る上で有利である。
【0033】
このような場合、復調時において、輝点位置の判定に比べて輝度レベル判定がシビアであることも考慮して、重み付けを行う必要がある。重みは、SLMで表示するシンボル(画素)のサイズや、カメラの階調や画素サイズ等、さらには、装置のシステム構成によっても異なることとなる。
【0034】
ここで、本実施形態における、上述した順番の判定に係るアルゴリズムについて説明する。
すなわち、任意の2つの変調パターンにおける輝点同士の座標位置の距離(以下、輝点位置の相互距離とも称する)をdとし、当該任意の2つの変調パターンにおける輝点同士の輝度レベルの差(以下、輝点レベルの相互距離とも称する)をiとする。
また、装置光学系の光学特性に基づき決定される、輝度レベルの差iに対する座標位置の距離dの重み係数をαとする。この重み係数αを用い、任意の2つの変調パターンにおける重みづけした輝点同士の座標位置の距離dと輝度レベルの差iの2乗和平方根である総和Sを下記数式(1)で表し、これを計算して得られた当該任意の2つの変調パターンにおける各輝点同士の総和Sを足し合わせて得られた合計総和Sの大きさに基づいて、復調誤りが生じやすい順番、あるいは復調誤りが生じにくい順番を判定している。
【0035】
このことを、図2に示す例を用いて具体的に説明する。なお、以下の説明に用いられる変調パターンは、輝点数2、輝度レベル数3で構成された簡単な変調パターンであり、ここでの説明をわかり易くするために敢えて簡単な変調パターンとしたものであるが、その他の複雑な構成の変調パターンにおいても、基本的には以下の説明と同様に扱うことができる。
すなわち、輝点同士の座標位置の距離dは、図2(a)の左側の図(輝点位置の相互距離)に示すように、2つの変調パターンA、Bを重ね合わせたとき、各輝点の座標位置(各変調パターンA、Bの原点を左下のシンボル中心位置にとり、横方向にX座標、縦方向にY座標をとり、横方向に隣接するシンボル同士はX座標の差が1、縦方向に隣接するシンボル同士はY座標の差が1とする)は、次のようになる。すなわち、左側の変調パターンAの2つの輝点の座標は、(0、2)および(1、1)となり、右側の変調パターンBの2つの輝点の座標は、(0、0)および(2、2)となるから、これら2つの変調パターンA、Bの輝点位置の相互距離dは、それぞれ2、2、21/2、21/2となる。
【0036】
一方、輝点同士の輝度レベルの差iは、図2(a)の右側の図(輝点レベルの相互距離)に示すように、2つの変調パターンA、Cを重ね合わせたとき、各輝点のレベル(3段階の輝点レベルのうち、最大の明るさレベルを3、中程度の明るさレベルを2、最小の明るさレベルを1とする)は、次のようになる。すなわち、左側の変調パターンAの2つの輝点の明るさレベルは3と2であり、右側の変調パターンCの2つの輝点の明るさレベルは3と1となるから、これら2つの変調パターンにおける輝点レベルの相互距離iは、それぞれ2、1、1、0となる。
この後、輝点位置の相互距離dを変調パターンAと変調パターンCの輝点同士についても上記と同様にして計算するとともに、輝点レベルの相互距離iを変調パターンAと変調パターンBの輝点同士についても上記と同様にして計算する。
【0037】
このようにして得られた、輝点位置の相互距離d、輝点レベルの相互距離i、および該iに対する該dの重み係数αを用いて算出した総和Sの値(重み係数αが2の場合と1.5の場合について)および変調パターンの輝点の各組合せについての該総和Sを互いに足し合わせた合計総和Sを、図2(b)に示す。この図2(b)に示す表において、上段がパターンAとパターンBの輝点同士の対応数値を示すものであり、下段がパターンAとパターンCの輝点同士の対応数値を示すものである。
この例によれば、重み係数αが2の場合には、パターンAとパターンB間における合計総和Sが13.9となり、パターンAとパターンC間における合計総和Sが13.7となる。したがって、αが2の場合には、パターンAとパターンC間における合計総和Sの方が小さい値となるので、パターンBよりもパターンCの方がパターンAに対して、復調する際に誤りやすい組み合わせとなる。
【0038】
一方、重み係数αが1.5の場合には、パターンAとパターンB間における合計総和Sが10.5となり、パターンAとパターンC間における合計総和Sが10.8となる。したがって、αが1.5の場合には、パターンAとパターンB間における合計総和Sの方が小さい値となるので、パターンCよりもパターンBの方がパターンAに対して復調する際に誤りやすい組み合わせとなる。
このように重み係数αの値によっても合計総和Sの大小が変わってくるので、重み係数αとして最適なものを選択することが肝要である。
【0039】
この後、例えば、10:9変調方式の場合には、このような合計総和Sの計算を2,268通りのパターンの組み合わせについて計算し、その中で最小となる合計総和Sをとる組み合わせを順に除外していき、合計総和Sが大きい順に1,024の組み合わせを選ぶことになる。
【0040】
具体的に、10:9変調方式の場合について説明すると、例えば、下記表1(実際にはメモリー上の所定のテーブル領域)に示すように計算された合計総和Sが、対応する欄に記録される。例えば、変調パターン1(♯1)と変調パターン2(♯2)の組み合わせに係る合計総和Sは10.2となる。
【0041】
次に、縦の列の各変調パターンについて、その変調パターンの横欄の数字を総計した、合計総和Sの総計が最も右の欄に記載される。例えば、下記表1では、変調パターン1(♯1)についての合計総和総計値Sは11056.3となる。
【0042】
最も右の欄に記載された、各変調パターンについての合計総和総計値Sの中から小さい順に、該当する変調パターンを除外する。例えば、下記表1では、変調パターン2266(♯2266)、変調パターン3(♯3)、変調パターン2268(♯2268)の順に小さい、と判定されたとすると、これらの変調パターンの順で除外されていくことになる。
このような変調パターンの除外処理を繰り返して、残っている変調パターンが1024個となった時点で、除外処理を終了する。
【0043】
【表1】
【0044】
本実施形態においては、変調パターン間における輝点位置の距離と輝点レベル差を利用して復調誤りが生じにくい変調パターン自体を生成するということに加え、光学的なノイズによるデータのゆがみを考慮することでノイズ耐性のある変調パターンを生成できるという、従来技術にはない発想により、信号読取りの誤り率を低減することができる。その際、特許第4863913号に示される手法のように、事前にSLM160に全画素輝点のページデータを表示させて記録し、再生されたページデータをカメラ120で撮影しておく。再生されたページデータには、光学系に存在するモアレやほこり等のノイズ成分が重畳されており、これにより記録する変調パターンに重畳されるノイズ成分の座標位置およびノイズ量を取得することができる。これを変調パターン生成手段10にフィードバックし、生成した変調パターンにノイズを付加した後に図2に示す相互距離計算と変調パターンの除外処理を繰り返すことで、光学的なノイズによるゆがみを考慮した上で誤りが生じにくい変調パターンを生成できる。これにより生成されたパターンの例を図3(A)~(F)に示す。
【0045】
なお、本発明のホログラム記録再生装置としては上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の変更の態様をとることが可能である。
例えば、上記実施形態では10:9変調により変調パターンを選択する例を挙げているが、4×4画素でシンボルを構成する12:16変調等の他の変調手法によっても同様の効果を奏することができる。
【0046】
また、上述した実施形態においては、変調パターンの選択処理に関し、合計総和Sの総計値である合計総和総計値Sの大きさの順に基づき、表1を用いて変調パターンを選択する処理について具体的に説明しているが、本発明のホログラム記録再生装置としては、上記合計総和Sの大きさに基づき、その他の手法を用いて変調パターンの選択処理を行うことも可能である。
【0047】
例えば、下記表2を用いた手法により変調パターンの選択処理を行うようにしてもよい。すなわち、この手法を、上記表1の手法と同様に10:9変調方式を用いて説明する。なお、表2各欄の数値データは表1各欄の数値データと同じものを使用している。
【0048】
まず、合計総和Sの大きさが、最も小さいものとなる変調パターンの組み合せを判定する。例えば、表2において、変調パターン3(♯3)と変調パターン2267(♯2267)の組み合わせに係る合計総和Sが4.7のものが、表2中で最も小さい値であると判断された場合、この記合計総和Sに係る2つの変調パターンである、変調パターン3(♯3)と変調パターン2267(♯2267)をまず、除外する。
【0049】
次に、表2中の残りの変調パターンの中で、変調パターン1(♯1)と変調パターン2266(♯2266)の組み合わせに係る合計総和Sが5.7のものが最も小さい値であると判断された場合、この合計総和Sに係る2つの変調パターンである、変調パターン1(♯1)と変調パターン2266(♯2266)を除外する。
【0050】
このようにして、最小の合計総和Sに係る2つの変調パターンの除外処理を繰り返して、残っている変調パターンが1024個となった時点で、除外処理を終了する。
【0051】
【表2】
なお、変調パターンの選択処理に関しては、上記表1、2によって説明した手法以外にも、上記合計総和Sの大きさに基づいて選択する種々の手法を採用し得る。
【符号の説明】
【0052】
10 変調パターン生成手段
101 ホログラム記録再生装置
109 空間フィルタ
110 記録媒体
111 レーザ
112 発散レンズ
113 コリメートレンズ
114、122 半波長板
115、123、132 ミラー
116、117、124 偏光ビームスプリッタ(PBS)
118、126、136 レンズ
120 カメラ
125、150 ガルバノミラー
160 SLM(空間光変調器)
図1
図2
図3
図4