(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
H01L21/304 644C
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2018233019
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】魚住 修司
(72)【発明者】
【氏名】本島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 徹
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301079(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178301(WO,A1)
【文献】特表2007-509749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を洗浄するための洗浄部材を回転可能に保持する軸受部を有する保持部と、
少なくとも一部が前記保持部の内部に設けられ、前記保持部の内部を通過して前記洗浄部材内に第一液体を供給する第一供給部と、
前記軸受部に第二液体を供給する第二供給部と、
前記軸受部の外方に設けられた外側部材と、
を備え
、
前記外側部材は、上面に前記第二供給部から供給される第二液体を前記外側部材の内部に流入させる流入口と、下面に前記第二液体を前記外側部材の外部に排出するための排出口と、を有し、前記第二供給部から供給される第二液体は、前記流入口から前記軸受部を通過して前記排出口から排出される構成となっている、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記軸受部は軸方向に設けられた2つ以上の軸受部材を有し、
前記第二供給部は前記軸受部材の軸方向の間に第二液体を供給する、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
保持部は前記第二液体を貯留するための貯留部を有する、請求項1又は2のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記保持部には前記第二液体を排出するための排出口を有する排出部が設けられ、
前記排出口の高さ位置が前記保持部の内周底面の最下面よりも高くなり、前記内周底面の最下面と前記排出口との高さ方向の間で前記貯留部が形成される、請求項3に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記第二供給部は流量を調整するための調整部を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
基板を洗浄するための洗浄部材を回転可能に保持する軸受部を有する保持部と、
少なくとも一部が前記保持部の内部に設けられ、前記保持部の内部を通過して前記洗浄部材内に第一液体を供給する第一供給部と、
前記軸受部に第二液体を供給する第二供給部と、
を備え、
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転する回転部と、前記軸受部に対向して設けられた密閉部と、を有し、
前記軸受部の外周は前記回転部に当接する、基板洗浄装置。
【請求項7】
前記軸受部は軸受玉を有し、
軸方向を法線とする面内において、前記密閉部の周縁外方端部は前記軸受玉の周縁外方端部よりも周縁外方に位置する、請求項6に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
基板を洗浄するための洗浄部材を回転可能に保持する軸受部を有する保持部と、
少なくとも一部が前記保持部の内部に設けられ、前記保持部の内部を通過して前記洗浄部材内に第一液体を供給する第一供給部と、
前記軸受部に第二液体を供給する第二供給部と、
を備え、
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転する回転部と、前記軸受部に対向して設けられた密閉部と、を有し、
前記密閉部は、第一切欠きが設けられた第一密閉部と、第二切欠きが設けられた第二密閉部とを有し、
前記第一切欠きと前記第二切欠きとは軸方向で見たときに重複しない
、基板洗浄装置。
【請求項9】
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転する回転部を有し、
前記第一供給部は前記第一液体を前記洗浄部材内に供給する第一供給管を有し、
前記第一供給管は、前記軸受部と前記回転部との間の間隙で切断されることなく、前記回転部内まで延びる、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
前記第一供給部が前記第一液体を前記洗浄部材内に供給していないときにも、前記第二供給部が前記第二液体を前記軸受部に供給する、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転し、前記第二液体を前記軸受部に供給するための一つ以上の孔部が設けられた回転部を有する、請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄部材を回転可能に保持する軸受部を有する基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロール等の洗浄部材を軸受部で受け、当該軸受部に洗浄液を供給することが知られている。特許文献1では、基板を回転させつつ保持する基板保持部と、基板の被洗浄面をスクラブ洗浄する洗浄具と、洗浄具をその軸線まわりに回転可能に保持する洗浄具保持部とを有している基板洗浄装置が開示されている。この基板洗浄装置では、洗浄具が、軸体と、その周囲に取り付けられた洗浄液流通性を有する洗浄部材とを有している。そして、軸体には、軸方向に延びる軸孔と軸孔より径方向に貫通する洗浄液噴射口とが形成され、軸体と洗浄具保持部の間の一方の端部に、洗浄液を潤滑流体とする流体潤滑軸受が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された態様のように洗浄液の一部を軸受の潤滑に用いている場合には、基板に提供される洗浄液の量が定量的でなく、また軸受に供給される洗浄液が漏れることによる問題もあった。
【0005】
本発明は、基板に提供される液体の量を制御しやすく、かつ軸受部に供給される液体による悪影響が基板に出にくい基板洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による基板洗浄装置は、
基板を洗浄するための洗浄部材を回転可能に保持する軸受部を有する保持部と、
少なくとも一部が前記保持部の内部に設けられ、前記保持部の内部を通過して前記洗浄部材内に第一液体を供給する第一供給部と、
前記軸受部に第二液体を供給する第二供給部と、
を備えてもよい。
【0007】
本発明による基板洗浄装置において、
前記軸受部は軸方向に設けられた2つ以上の軸受部材を有し、
前記第二供給部は前記軸受部材の軸方向の間に第二液体を供給してもよい。
【0008】
本発明による基板洗浄装置において、
保持部は前記第二液体を貯留するための貯留部を有してもよい。
【0009】
本発明による基板洗浄装置において、
前記保持部には前記第二液体を排出するための排出口を有する排出部が設けられ、
前記排出口の高さ位置が前記保持部の内周底面の最下面よりも高くなり、前記内周底面の最下面と前記排出口との高さ方向の間で前記貯留部が形成されてもよい。
【0010】
本発明による基板洗浄装置において、
前記第二供給部は流量を調整するための調整部を有してもよい。
【0011】
本発明による基板洗浄装置において、
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転する回転部と、前記軸受部に対向して設けられた密閉部と、を有し、
前記軸受部の外周は前記回転部に当接し、
前記軸受部は軸受玉を有し、
軸方向を法線とする面内において、前記密閉部の周縁外方端部は前記軸受玉の周縁外方端部よりも周縁外方に位置してもよい。
【0012】
本発明による基板洗浄装置において、
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転する回転部と、前記軸受部に対向して設けられた密閉部と、を有し、
前記密閉部は、第一切欠きが設けられた第一密閉部と、第二切欠きが設けられた第二密閉部とを有し、
前記第一切欠きと前記第二切欠きとは軸方向で見たときに重複しなくてもよい。
【0013】
本発明による基板洗浄装置において、
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転する回転部を有し、
前記第一供給部は前記第一液体を前記洗浄部材内に供給する第一供給管を有し、
前記第一供給管は、前記軸受部と前記回転部との間の間隙で切断されることなく、前記回転部内まで延びてもよい。
【0014】
本発明による基板洗浄装置において、
前記第一供給部が前記第一液体を前記洗浄部材内に供給していないときにも、前記第二供給部が前記第二液体を前記軸受部に供給してもよい。
【0015】
本発明による基板洗浄装置において、
前記保持部は、前記洗浄部材とともに回転し、前記第二液体を前記軸受部に供給するための一つ以上の孔部が設けられた回転部を有してもよい。
【本発明の効果】
【0016】
洗浄部材内に第一液体を供給する第一供給部と、軸受部に第二液体を供給する第二供給部とを有する態様を採用した場合には、第一液体を一定の量で供給しつつ、第二液体によって軸受部を潤滑させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態で用いられうる基板洗浄装置の構成を示した概略側方断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態で用いられうる保持部の別の例を示した側方断面図であり、第一液体及び第二液体の流れを示した側方断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態で用いられうる保持部を洗浄部材とは反対側の斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態で用いられうる保持部を洗浄部材側の斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態で用いられうる保持部の側方断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態で用いられうる回転部の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態で用いられうる筐体の斜視図である。
【
図8】
図8(a)は本発明の実施の形態で用いられうる第一密閉部を洗浄部材の軸方向に沿って見た図であり、
図8(b)は本発明の実施の形態で用いられうる第二密閉部を洗浄部材の軸方向に沿って見た図であり、
図8(c)は本発明の実施の形態で用いられうる第一密閉部及び第二密閉部を重ね合わせた状態で洗浄部材の軸方向に沿って見た図である。
【
図9】
図9(a)は本発明の実施の形態で用いられうる軸受部を洗浄部材の軸方向に沿って見た図であり、
図9(b)は本発明の実施の形態で用いられうる軸受部と、第一密閉部及び第二密閉部とを重ね合わせた状態で洗浄部材の軸方向に沿って見た図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態による基板処理装置を含む処理装置の全体構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態
《構成》
基板洗浄装置等を含む基板処理装置の実施の形態について説明する。
【0019】
図10に示すように、本実施の形態の基板処理装置は、略矩形状のハウジング310と、多数の基板Wをストックする基板カセットが載置されるロードポート312と、を有している。ロードポート312は、ハウジング310に隣接して配置されている。ロードポート312には、オープンカセット、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、又はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIFポッド、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。基板Wとしては、例えば半導体ウェハ等を挙げることができる。
【0020】
ハウジング310の内部には、複数(
図10に示す態様では4つ)の研磨ユニット314a~314dと、研磨後の基板Wを洗浄する第1洗浄ユニット316及び第2洗浄ユニット318と、洗浄後の基板Wを乾燥させる乾燥ユニット320とが収容されている。研磨ユニット314a~314dは、基板処理装置の長手方向に沿って配列され、洗浄ユニット316、318及び乾燥ユニット320も基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。本実施の形態の基板処理装置によれば、直径300mm又は450mmの半導体ウェハ、フラットパネル、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)における磁性膜の製造工程において、種々の基板Wを、研磨処理することができる。なお、別の実施の形態の基板処理装置としては、ハウジング310内に基板Wを研磨する研磨ユニットを設けず、基板Wの洗浄処理及び乾燥処理を行う装置としてもよい。
【0021】
ロードポート312、ロードポート312側に位置する研磨ユニット314a及び乾燥ユニット320に囲まれた領域には、第1搬送ロボット322が配置されている。また、研磨ユニット314a~314d並びに洗浄ユニット316、318及び乾燥ユニット320と平行に、搬送ユニット324が配置されている。第1搬送ロボット322は、研磨前の基板Wをロードポート312から受け取って搬送ユニット324に受け渡したり、乾燥ユニット320から取り出された乾燥後の基板Wを搬送ユニット324から受け取ったりする。
【0022】
第1洗浄ユニット316と第2洗浄ユニット318との間に、これら第1洗浄ユニット316と第2洗浄ユニット318の間で基板Wの受け渡しを行う第2搬送ロボット326が配置され、第2洗浄ユニット318と乾燥ユニット320との間に、これら第2洗浄ユニット318と乾燥ユニット320の間で基板Wの受け渡しを行う第3搬送ロボット328が配置されている。さらに、ハウジング310の内部には、基板処理装置の各機器の動きを制御する制御部に含まれる全体制御部350が配置されている。本実施の形態では、ハウジング310の内部に全体制御部350が配置されている態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、ハウジング310の外部に全体制御部350が配置されてもよいし、全体制御部350は遠隔地に設けられてもよい。
【0023】
第1洗浄ユニット316として、洗浄液の存在下で、基板Wの直径のほぼ全長にわたって直線状に延びるロール洗浄部材を接触させ、基板Wに平行な中心軸周りに自転させながら基板Wの表面をスクラブ洗浄するロール洗浄装置が使用されてもよい。例えば、水平又は垂直に基板Wを保持してこれを回転させながらロール洗浄部材を基板Wに接触させて洗浄処理してもよい。また、第2洗浄ユニット318として、洗浄液の存在下で、鉛直方向に延びる円柱状のペンシル洗浄部材の接触面を接触させ、ペンシル洗浄部材を自転させながら一方向に向けて移動させて、基板Wの表面をスクラブ洗浄するペンシル洗浄装置が使用されてもよい。また、乾燥ユニット320として、水平に保持しつつ回転する基板Wに向けて、移動する噴射ノズルからIPA蒸気を噴出して基板Wを乾燥させ、さらに基板Wを高速で回転させて遠心力によって基板Wを乾燥させるスピン乾燥ユニットが使用されてもよい。
【0024】
なお、第1洗浄ユニット316としてロール洗浄装置ではなく、第2洗浄ユニット318と同様のペンシル洗浄装置を使用したり、二流体ジェットにより基板Wの表面を洗浄する二流体ジェット洗浄装置を使用したりしてもよい。また、第2洗浄ユニット318としてペンシル洗浄装置ではなく、第1洗浄ユニット316と同様のロール洗浄装置を使用したり、二流体ジェットにより基板Wの表面を洗浄する二流体ジェット洗浄装置を使用したりしてもよい。
【0025】
本実施の形態の洗浄液には、純水(DIW)等のリンス液と、アンモニア過酸化水素(SC1)、塩酸過酸化水素(SC2)、硫酸過酸化水素(SPM)、硫酸加水、フッ酸等の薬液が含まれている。本実施の形態で特に断りのない限り、洗浄液は、リンス液、薬液、又は、リンス液及び薬液の両方を意味している。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態の基板処理装置は、基板Wを洗浄するための洗浄部材200を回転可能に保持する軸受部40を有する保持部100と、洗浄部材200内に第一液体を供給する第一供給部110と、軸受部40に第二液体を供給する第二供給部120と、を有してもよい。第一液体は典型的にはインナーリンス液であり、例えば純水である。第二液体は典型的にはベアリングの潤滑のために利用されるベアリング潤滑液体であり、例えば純水である。第一液体と第二液体とは同じ液体であってもよいし、異なる液体であってもよい。なお、第一液体としては薬液を利用することもでき、第二液体としても薬液を利用することもできる。以下では、洗浄部材200として、ロール洗浄部材を用いて説明するが、これに限られることはなく、ペンシル洗浄部材に本実施の形態の態様を採用することもできる。
【0027】
ロール洗浄部材からなる洗浄部材200の一端部は保持部100によって従動的に保持され、他端部はモータを有する駆動部(図示せず)によって駆動されてもよい。この駆動部のモータを冷却するためのDIW等からなる液体を第二液体として利用してもよい。この場合には液体を供給する機構を別途設ける必要がない点で有益である。駆動部は基板Wを処理する空間とは隔離された密閉空間内に設けられ、油等も供給される空間となってもよい。駆動部側の軸受部は金属等から構成されてもよい。
【0028】
図1に示す従動側の軸受部40は軸方向に設けられた2つ以上の軸受部材41(
図9参照)を有してもよい。第二供給部120は軸受部材41の軸方向の間に第二液体を供給してもよい。第二供給部120は第二液体が流れる第二供給管121を有してもよい。なお、特に断らない限り、本願における「軸方向」は洗浄部材200の軸方向を意味し、
図2及び
図5の左右方向を意味している。
【0029】
図3及び
図4に示すように、第二液体を回転部30の上方で一時的に保留する一時保留部11が設けられてもよい。この一時保留部11は後述する外側部材10(の内部)に設けられてもよい。外側部材10に形成された連通空間である一時保留部11を通じて第二供給管121の出口と供給孔11aがつながっている。
【0030】
図1に示すように、保持部100は、洗浄部材200とともに回転する回転部30(
図6参照)と、回転部30の外周に設けられた外側部材10とを有してもよい。軸受部40の外周面は回転部30の内周面に当接してもよい。回転部30の端部は洗浄部材200に挿入されて固定されてもよい。軸受部40の内周面は内側部材20に当接しており、軸受部40は回転部30を内側部材20に対して回転可能に軸支してもよい。内側部材20と回転部30との間の間隙を0.25mm程度にし、かなり狭くしてもよい。このように内側部材20と回転部30との間の間隙を小さくすることで、軸受部40から第二液体が漏れ出て、基板Wに接触するリスクを低減できる点で有益である。但し、これに限られることはなく、内側部材20と回転部30との間の間隙を1.00mm程度としてもよい。
【0031】
第一供給部110は第一液体を洗浄部材200内に供給する第一供給管111を有してもよい。この第一供給管111は、外側部材10及び内側部材20を通過するようにして設けられ、軸受部40と回転部30との間で切れ目等が設けられることなく、回転部30内まで延び、洗浄部材200の端部まで達してもよい。なお、
図1では「固定箇所」を斜線で示し、「回転箇所」を白抜きで示しており、両者を分けて示している。但し、
図1において第一供給部110、第二供給部120、第一供給管111、第二供給管121及び後述する調整部125は「白抜き」で示されているが、これらは固定されており回転はしない。
【0032】
第一供給部110が第一液体を洗浄部材200内に供給していないときにも、第二供給部120が第二液体を軸受部40に供給する態様となってもよい。このような制御は全体制御部350等の制御部で行われてもよい。
【0033】
図6に示すように、回転部30には、洗浄部材200とともに回転し、第二液体を軸受部40に供給するための一つ以上の孔部31が設けられてもよい。孔部31は1つだけ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。孔部31の全部は軸方向において軸受部材41の間に位置してもよい(
図5参照)。孔部31の大きさは軸受部材41の間の間隙に対応して設けられてもよい。ここで孔部31の大きさが軸受部材41の間の間隙に対応するというのは、孔部31の直径Rが軸受部材41の間の間隙Dの90%以上100%以下であることを意味し、D×0.9≦R≦Dであることを意味する。孔部31が軸方向において軸受部材41の間に設けられることで、孔部31から落ちる第二液体が回転する軸受部材41によって跳ねて基板W側に漏れ出すことを防止できる。つまり、孔部31が軸方向において軸受部材41と重複する位置に設けられると、軸受部材41に落ちた第二液体が回転する軸受部材41で跳ねる等して基板W側に漏れ出す可能性があるが、本態様によれば、そのような可能性を低減できる。
【0034】
外側部材10の外方には筐体80が設けられてもよい。この筐体80と外側部材10との間には空間が設けられ、筐体80と外側部材10との間の上方側(
図5の上方側)の間隙と比べ下方側(
図5の下方側)の間隙が大きくなってもよい。筐体80には外側部材10を固定するための固定棒のような固定部95が設けられてもよい。筐体80と外側部材10との間にはバネのような弾性部材96が設けられ、洗浄部材200を保持部100に取り付ける際に、保持部100が軸方向に移動可能となってもよい。
【0035】
筐体80の基板W側には堰81が設けられ、この堰81が外側部材10の洗浄部材200側の面(
図5の右側の面)と対向するようにして設けられてもよい。この場合には、堰81によって第二液体が基板W側に誤って漏れ出すことを防止することができる。
【0036】
図5に示すように、保持部100は第二液体を貯留するための貯留部83を有してもよい。貯留部83は筐体80の底面に設けられてもよい。
図7に示すように、保持部100の筐体80には箱部85が設けられ、箱部85に第二液体を排出するための排出口91(
図1参照)を有する排出管等からなる排出部90が設けられてもよい。この場合には、筐体80の底面の高さ位置と箱部85の高さ位置とが高さ方向でずれることで筐体80の底面に貯留部83が形成されることとなる(
図5参照)。なお、このような態様に限られることはなく、筐体80の底面に排出管等からなる排出部90が設けられてもよい。
【0037】
筐体80の下部に、堰81とは別に2重の堰を設けたり、筐体80の下部に傾斜部をさらに設けたりして、洗浄部材側(
図5の右側)に第2液体が流れることをより防止してもよい。
【0038】
図1に示すように、第二供給部120は流量を調整するためのオリフィス等の調整部125を有してもよい。調整部125による調整は、洗浄部材200の回転速度に応じて変更されてもよい。洗浄部材200の回転速度が速くなると第二液体の供給量が多くなり、第一回転速度の場合の第二液体の供給量は第二回転速度(第一回転速度>第二回転速度)の場合の第二液体の供給量よりも多くなってもよい。また、第二液体の供給量Q=A×洗浄部材200の回転速度R+B(「A」及び「B」は所定の定数である。)となり、第二液体の供給量Qと洗浄部材200の回転速度Rとが一次関数的な関係となってもよい。第二液体の供給量は例えば10~50mm/分となってもよい。
【0039】
図5に示すように、第一液体を供給する第一供給管111を取り囲む内側部材20の外周の一部又は全部を取り囲むようにして密閉部50が設けられてもよい。この密閉部50は軸受部40に対向して配置されてもよい。密閉部50と軸受部40との間には部材が設けられなくてもよい。
【0040】
図8に示すように、密閉部50は、第一切欠き52が設けられた第一密閉部51と、第二切欠き57が設けられた第二密閉部56とを有してもよい。第二密閉部56は第一密閉部51に対して隣接して設けられ、これらは面で接触してもよい。
図5に示す態様では、第二密閉部56が第一密閉部51に対して洗浄部材200側(
図5の右側)で隣接して設けられている。第一切欠き52と第二切欠き57とは洗浄部材200の軸方向(
図5の左右方向)に沿って見たときに重複しない態様となってもよく、
図8(c)に示すように、第一切欠き52と第二切欠き57は洗浄部材200の軸に対して点対象となってもよい。
【0041】
図9(a)に示すように、軸受部40は、軸受固定部46と、軸受固定部46の周縁外方に設けられた軸受回転部47と、軸受固定部46と軸受回転部47との間に設けられた軸受玉48とを有してもよい。
図9(b)に示すように、軸方向を法線とする面内において(
図9(b)の紙面内において)、密閉部50の周縁外方端部は、軸受玉48の周縁外方端部よりも周縁外方に位置してもよい。但し、このような態様に限られることはなく、密閉部50の周縁外方端部は軸受玉48の周縁外方端部と同じ位置又は軸受玉48の周縁外方端部よりも周縁内方に位置してもよい。軸受部材41及び軸受玉48の材料は例えばSiCであってもよい。このように軸受部40がSiCからなる場合には、第二液体のような液体で表面が濡れることで膜が形成され、潤滑剤としての機能を発揮し、低摩擦機能を発揮することができる。
【0042】
洗浄部材200は水平方向に延在して設けられてもよいが、これに限られることはなく、洗浄部材200は鉛直方向に延在して設けられてもよいし、水平方向と鉛直方向の間の斜め方向に延在して設けられてもよい。
【0043】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果であって、未だ説明していないものを中心に説明する。「構成」で記載されていない場合であっても、「効果」で説明するあらゆる構成を本件発明において採用することができる。
【0044】
図1等で示すように、洗浄部材200内に第一液体を供給する第一供給部110と、軸受部40に第二液体を供給する第二供給部120と、を有する態様を採用した場合には、第一液体を一定の量で供給しつつ、第二液体によって軸受部40を潤滑させることができる。つまり、第一液体と第二液体を分けることなく基板Wに供給される液体を用いて軸受部40を潤滑させる場合には、軸受部40を潤滑させるために利用される液体の量の影響を受け、基板Wに供給される液体の量が変動してしまう可能性があるが、本実施の形態によれば、そのような可能性を極力低減できる。特に全体制御部350のような制御部が第一液体の供給量を制御する態様を採用する場合には、基板Wに供給される第一液体の量を正確な値に制御することができ、ひいてはウェハ等からなる基板Wへ悪影響が出ることを防止できる。
【0045】
特許文献1に開示された態様のように洗浄液の一部を軸受部の潤滑に用いている場合には、隙間から流出する洗浄液の量が基板に供給される洗浄液の量の2倍近くになることもあり、基板へ供給される洗浄液の量を制御できない問題がある。一例として、450mm/分で洗浄液が供給される場合には、150mm/分だけが基板の洗浄に利用され、300mm/分が軸受部の潤滑に利用されることがあり、基板へ供給される洗浄液の量を制御できない。なお、第一液体の供給量としては450mm/分というのは一例であり、例えば600mm/分や800mm/分といったより多い量であってもよいし、逆に450mm/分よりも少ない量であってもよい。
【0046】
また、保持部を構成する各部材の個体差があることから、特許文献1に開示された態様のように洗浄液の一部を軸受部の潤滑に用いている場合には、その意味でも基板へ供給される洗浄液の量を制御できない問題がある。これに対して、洗浄部材200内に第一液体を供給する第一供給部110と、軸受部40に第二液体を供給する第二供給部120とを有する態様を採用した場合には、このような問題を解決することができる。
【0047】
図5に示すように軸受部40が軸方向に設けられた2つ以上の軸受部材41を有し、第二供給部120が軸受部材41の軸方向の間に第二液体を供給する態様を採用した場合には、軸受部材41の間に第二液体を供給し、軸方向の両方向位置する軸受部材41の各々に第二液体を供給することができる。
【0048】
保持部100が第二液体を貯留するための貯留部83を有する態様を採用した場合には(
図5参照)、貯留した第二液体によってSiC等からなる軸受部40に湿気を供給できる。つまり、保持部100が第二液体を貯留することで、上方から供給される第二液体に加え、貯留された第二液体が揮発することによる湿気を軸受部40に供給でき、効果的に軸受部40を潤滑させることができる。また、このような貯留部83が設けられることで、第二液体が貯留部83側に流れやすくなり、第二液体が保持部100から基板W側に漏れ出すことを防止できる。
【0049】
保持部100の筐体80に第二液体を排出するための排出口91を有する排出部90が設けられ、排出口91の高さ位置が筐体80の内周底面の最下面よりも高くなり、当該内周底面の最下面と排出口91との高さ方向の間で貯留部83が形成される態様を採用した場合には、排出口91から排出される高さまで第二液体を保持部100の内周底面で貯留することができる。
【0050】
外側部材10の外方の筐体80と外側部材10との間の空間に関し、筐体80と外側部材10との間の上方側の間隙と比べ下方側の間隙が大きくなっている態様を採用した場合には、第二液体に加わる圧力の関係から第二液体を下方側へ導きやすくなり、第二液体が想定外の箇所を流れることを防止でき、ひいては、第二液体が保持部100から漏れ出して、基板Wにかかってしまうことを防止できる。
【0051】
図1に示すように第二供給部120が流量を調整するための調整部125を有する態様を採用した場合には、軸受部40に供給される第二液体の量を全体制御部350のような制御部によって制御することができる。なお、第一液体と第二液体とは同じタイミングで供給されてもよいが、これらは異なるタイミングで供給されてもよい。例えば、第一供給部110が第一液体を洗浄部材200内に供給していないときにも、第二供給部120が第二液体を軸受部40に供給するようにしてもよい。この場合には、第二液体が連続的に供給されて軸受部40を常に湿らせるのに対して、例えば、基板洗浄時等の基板Wに対する処理を行うときにだけ、及び/又は洗浄部材200を洗浄するときにだけ第一液体を供給することもでき、基板W及び/又は洗浄部材200の洗浄と軸受部40の潤滑の各々を効率よく行うことができる。
【0052】
図9(b)に示すように密閉部50の周縁外方端部が軸受玉48の周縁外方端部よりも周縁外方に位置する態様を採用した場合には、軸受部40に供給された第二液体が軸受玉48を介して基板W側に流れることを防止できる。軸受部材41の間に第二液体を供給する場合には、
図5に示すように、洗浄部材200側の軸受部材41と洗浄部材200との間に密閉部50が設けられ、洗浄部材200と反対側の軸受部材41に対する密閉部50は設けられなくてもよい。
【0053】
図8に示すように、密閉部50が、第一切欠き52が設けられた第一密閉部51と、第二切欠き57が設けられた第二密閉部56とを有する態様を採用した場合には、これらの取り付けを容易に行うことができる。第一密閉部51に関しては第一切欠き52の間隙を広げることで、内側部材20の周縁外方に第一密閉部51を容易に取り付けることができる。また第二密閉部56に関しては第二切欠き57の間隙を広げることで、内側部材20の周縁外方に第二密閉部56を容易に取り付けることができる。
【0054】
図8(c)にしめすように第一切欠き52と第二切欠き57を軸方向で見たときに重複しないように位置付けることで、第一切欠き52及び第二切欠き57を通過して第二液体が基板W側に流れ出すことを防止できる。典型的には、第一切欠き52と第二切欠き57との位置が軸方向に沿って見たときに180度異なるようにしてもよい。この場合には、第一切欠き52及び第二切欠き57を介して第二液体が保持部100の外部に流れ出ることをより確実に防止できる。なお、密閉部50は薬液に耐えるために弾性部材96ではなく樹脂部材で構成されてもよい。このような樹脂部材で構成する場合には、密閉部50を取り付けることが極めて困難になることから、本態様のように切欠きを有する密閉部50を採用することは有益である。
【0055】
図2に示すように第一供給管111が軸受部40と回転部30との間で切れ目等が設けられることなく回転部30内まで延びる態様を採用した場合には、第一液体の供給量が途中で減ることなく、洗浄部材200に対して第一液体を供給できる。この結果、基板Wに対して所定量の第一液体を供給でき、基板Wの洗浄等の基板処理を精度よく行うことができる。
【0056】
また、
図3及び
図4で示すように外周部材10の下部が回転部30の孔部31を覆わずに開放している態様を採用した場合には、第二液体に圧力が加わることを防止し、当該第二液体をスムーズに排出口91へと導くことができる。
【0057】
図6に示すように回転部30が第二液体を軸受部40に供給するための一つ以上の孔部31を有する場合には、回転部30が回転することで孔部31を介して第二液体を軸受部40に供給できる。孔部31は複数設けられてもよく、均等な間隔で設けられてもよい。このような態様によれば、軸受部40に対して満遍なく第二液体を供給することができ、軸受部40の潤滑を効率よく行うことができる。孔部31の数は例えば8~16個であり、典型的には12個である。孔部31の直径は3mm程度である。孔部31の数が多くなれば第二液体を短い間隔で軸受部40に提供できるが、孔部31の数が多すぎると回転部30の強度が弱くなる。これらの観点からすると、孔部31の数は8~16個であることが有益である。
【0058】
図2等に示すように筐体80に外側部材10を固定するための固定棒のような固定部95が設けられている場合には、回転部30の回転で外側部材10が振動し、その結果として、第一供給管111が摩耗することを防止できる。
【0059】
洗浄部材200は複数設けられ、各洗浄部材200に保持部100が設けられてもよい。例えば、基板Wの上側と下側の両方(基板Wのおもて面と裏面の両方)に洗浄部材200が設けられ、各洗浄部材200に対して保持部100が設けられる態様となってもよい。
【0060】
上述した実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・外側部材、11・・・一時保留部、30・・・回転部、31・・・孔部、40・・・軸受部、41・・・軸受部材、48・・・軸受玉、50・・・密閉部、83・・・貯留部、90・・・排出部、91・・・排出口、51・・・第一密閉部、52・・・第一切欠き、56・・・第二密閉部、57・・・第二切欠き、100・・・保持部、110・・・第一供給部、111・・・第一供給管、120・・・第二供給部、125・・・調整部、200・・・洗浄部材、W・・・基板