IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】異物除去装置を備えたポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/70 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
F04D29/70 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019058460
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159261
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】内田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】江藤 文宣
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】越智 雅規
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158135(JP,A)
【文献】特開平07-233800(JP,A)
【文献】特開平10-077984(JP,A)
【文献】特開昭63-283712(JP,A)
【文献】特開2013-217217(JP,A)
【文献】特開2010-249120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/70
F04D 29/66
F04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込水槽内の液体を汲み上げるポンプにおいて、
主軸と、
前記主軸に固定された羽根車と、
内部に前記主軸および前記羽根車が配置された流路構造体と、
前記流路構造体の外側に配置されたポンプ運転補助装置と、
前記ポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成された異物除去装置とを備え、
前記ポンプ運転補助装置は、
前記流路構造体の外周面との間に隙間が存在した状態で、前記流路構造体に固定された縦棒と、
前記縦棒を前記流路構造体に連結する縦棒用ブラケットとを備え、
前記縦棒は、前記液体の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、
前記異物除去装置は、水平方向に延びる前記縦棒用ブラケットに回転可能に取り付けられている、ポンプ。
【請求項2】
吸込水槽内の液体を汲み上げるポンプにおいて、
主軸と、
前記主軸に固定された羽根車と、
内部に前記主軸および前記羽根車が配置された流路構造体と、
前記流路構造体の外側に配置されたポンプ運転補助装置と、
前記ポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成された異物除去装置とを備え、
前記流路構造体は、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングを備え、
前記ポンプ運転補助装置は、
前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定された半円筒体と、
前記半円筒体を前記ポンプケーシングに連結する半円筒体用ブラケットとを備え、
前記半円筒体は、前記液体の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、
前記半円筒体は、前記主軸と平行に延びる内周面を有しており、
前記異物除去装置は、前記半円筒体用ブラケットに取り付けられており、
前記異物除去装置は、前記半円筒体用ブラケットを囲むように配置されている、ポンプ。
【請求項3】
吸込水槽内の液体を汲み上げるポンプにおいて、
主軸と、
前記主軸に固定された羽根車と、
内部に前記主軸および前記羽根車が配置された流路構造体と、
前記流路構造体の外側に配置されたポンプ運転補助装置と、
前記ポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成された異物除去装置とを備え、
前記流路構造体は、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングを備え、
前記ポンプ運転補助装置は、
前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定された半円筒体と、
前記半円筒体を前記ポンプケーシングに連結する半円筒体用ブラケットと、
前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定された円弧部材と、
前記円弧部材を前記ポンプケーシングに連結する円弧部材用ブラケットとを備え、
前記半円筒体は、前記液体の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、
前記半円筒体は、前記主軸と平行に延びる内周面を有しており、
前記円弧部材は、前記ポンプケーシングの外周面の周方向に沿って湾曲しており、
前記円弧部材は、前記半円筒体の上方に配置されており、
前記異物除去装置は、前記半円筒体用ブラケット、前記円弧部材用ブラケット、および前記円弧部材のうちの少なくとも1つに取り付けられており、
前記異物除去装置は、前記半円筒体用ブラケット、前記円弧部材用ブラケット、および前記円弧部材のうちの少なくとも1つを囲むように配置されている、ポンプ。
【請求項4】
吸込水槽内の液体を汲み上げるポンプにおいて、
主軸と、
前記主軸に固定された羽根車と、
内部に前記主軸および前記羽根車が配置された流路構造体と、
前記流路構造体の外側に配置されたポンプ運転補助装置と、
前記ポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成された異物除去装置とを備え、
前記流路構造体は、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングを備え、
前記ポンプ運転補助装置は、前記羽根車の下方で前記ポンプケーシングの内部に連通する空気流入管を備え、
前記異物除去装置は、前記空気流入管の、前記ポンプケーシングから横に延びる第1流入管に取り付けられており、
前記異物除去装置は、前記第1流入管を囲むように配置されている、ポンプ。
【請求項5】
吸込水槽内の液体を汲み上げるポンプにおいて、
主軸と、
前記主軸に固定された羽根車と、
内部に前記主軸および前記羽根車が配置された流路構造体と、
前記流路構造体の外側に配置されたポンプ運転補助装置と、
前記ポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成された異物除去装置とを備え、
前記流路構造体は、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングを備え、
前記ポンプ運転補助装置は、
前記羽根車の下方で前記ポンプケーシングの内部に連通する空気流入管と、
前記空気流入管を前記流路構造体に連結する空気流入管用ブラケットとを備え、
前記異物除去装置は、水平方向に延びる前記空気流入管用ブラケットに取り付けられており、
前記異物除去装置は、前記空気流入管用ブラケットを囲むように配置されている、ポンプ。
【請求項6】
吸込水槽内の液体を汲み上げるポンプにおいて、
主軸と、
前記主軸に固定された羽根車と、
内部に前記主軸および前記羽根車が配置された流路構造体と、
前記流路構造体の外側に配置されたポンプ運転補助装置と、
前記ポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成された異物除去装置とを備え、
前記流路構造体は、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングを備え、
前記ポンプケーシングは、下方に開口した吸込口を有する吸込ベルマウスを備え、
前記ポンプ運転補助装置は、前記吸込ベルマウスから下方に向かって突出した水中渦抑制板を備え、
前記水中渦抑制板は、横スリットと、前記横スリット内に配置された横棒を備え、
前記異物除去装置は、前記横棒に取り付けられており、
前記異物除去装置は、前記横棒を囲むように配置されている、ポンプ。
【請求項7】
前記異物除去装置は、前記ポンプ運転補助装置の一部に回転可能に取り付けられた筒体を備えている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項8】
前記異物除去装置は、前記筒体の外周面に固定された複数の突起をさらに備えている、請求項に記載のポンプ。
【請求項9】
前記筒体は、その軸心を中心に回転可能であり、
前記複数の突起は、前記軸心に沿って千鳥配列されている、請求項に記載のポンプ。
【請求項10】
前記筒体の外周面は、丸みのある頂点を有する多角形状の断面を有している、請求項に記載のポンプ。
【請求項11】
前記筒体の外周面は、楕円形の断面を有している、請求項に記載のポンプ。
【請求項12】
前記異物除去装置は、前記ポンプ運転補助装置の一部に連結された支持棒と、
前記支持棒に接続されたアーチ部材とを備え、
前記アーチ状部材は、前記支持棒を中心に回転可能に構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項13】
前記異物除去装置は、前記縦棒用ブラケットおよび前記縦棒に取り付けられている、請求項1に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込水槽内の水を揚水する用途に使用されるポンプに関し、特に異物除去装置を備えたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
河川の水などを排水するポンプ設備が設置される河川排水機場は、内水河川と本川との合流点に設置されることが多く、その結果、内水河川中のゴミ等の異物が排水機場に流入することがある。同様に、下水雨水排水機場は、雨水幹線など排水路の末端に設置されるため、排水路内の異物が排水機場に流入することがある。一般に、このような異物によってポンプ運転に支障を来さないよう、除塵設備としてのスクリーンがポンプの上流側に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-155898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一部の異物はスクリーンを通り抜けてポンプまで到達することがある。ポンプ設備の吸込水槽内に発生する有害な空気吸込渦や水中渦を抑制するための渦抑制装置が吸込水槽内に設置されている場合、スクリーンを通り抜けた異物が渦抑制装置に絡みつくことがある。これにより、渦抑制効果が十分に得られず、ポンプの排水性能を低下させ、ポンプ運転を不安定にするおそれがある。
【0005】
また、先行待機型ポンプにおいても、吸込水槽内に設けられた空気流入管にスクリーンを通り抜けた異物が絡みつき、円滑な液体の流れを阻害し、ポンプの排水性能を低下させるおそれがある。
【0006】
また、渦抑制装置や空気流入管は吸込水槽内に設置されているため、異物を取り除くための清掃が困難であり、維持管理性にも問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、ポンプ運転補助装置への異物の絡みつきを防止することによって、安定したポンプ運転を可能にし、維持管理性を向上させることができるポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、吸込水槽内の液体を汲み上げるポンプにおいて、主軸と、前記主軸に固定された羽根車と、内部に前記主軸および前記羽根車が配置された流路構造体と、前記流路構造体の外側に配置されたポンプ運転補助装置と、前記ポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成された異物除去装置とを備え、前記流路構造体は、内部に前記羽根車を収容するポンプケーシングを備え、前記異物除去装置は、前記ポンプ運転補助装置の一部を囲むように配置されている、ポンプが提供される。
【0009】
一態様では、前記異物除去装置は、前記ポンプ運転補助装置の一部に回転可能に取り付けられた筒体を備えている。
一態様では、前記異物除去装置は、前記筒体の外周面に固定された複数の突起をさらに備えている。
一態様では、前記筒体は、その軸心を中心に回転可能であり、前記複数の突起は、前記軸心に沿って千鳥配列されている。
一態様では、前記筒体の外周面は、丸みのある頂点を有する多角形状の断面を有している。
一態様では、前記筒体の外周面は、楕円形の断面を有している。
一態様では、前記異物除去装置は、前記ポンプ運転補助装置の一部に連結された支持棒と、前記支持棒に接続されたアーチ部材とを備え、前記アーチ状部材は、前記支持棒を中心に回転可能に構成されている。
一態様では、前記ポンプ運転補助装置は、前記流路構造体の外周面との間に隙間が存在した状態で、前記流路構造体に固定された縦棒と、前記縦棒を前記流路構造体に連結する縦棒用ブラケットとを備え、前記縦棒は、前記液体の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、前記異物除去装置は、前記縦棒用ブラケットおよび前記縦棒のうちの少なくとも1つに取り付けられている。
一態様では、前記ポンプ運転補助装置は、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定された半円筒体と、前記半円筒体を前記ポンプケーシングに連結する半円筒体用ブラケットとを備え、前記半円筒体は、前記液体の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、前記半円筒体は、前記主軸と平行に延びる内周面を有しており、前記異物除去装置は、前記半円筒体用ブラケットに取り付けられている。
一態様では、前記ポンプ運転補助装置は、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定された半円筒体と、前記半円筒体を前記ポンプケーシングに連結する半円筒体用ブラケットと、前記ポンプケーシングの外周面との間に隙間が存在した状態で、前記ポンプケーシングに固定された円弧部材と、前記円弧部材を前記ポンプケーシングに連結する円弧部材用ブラケットとを備え、前記半円筒体は、前記液体の流れ方向に関して前記主軸の下流側に配置されており、前記半円筒体は、前記主軸と平行に延びる内周面を有しており、前記円弧部材は、前記ポンプケーシングの外周面の周方向に沿って湾曲しており、前記円弧部材は、前記半円筒体の上方に配置されており、前記異物除去装置は、前記半円筒体用ブラケット、前記円弧部材用ブラケット、および前記円弧部材のうちの少なくとも1つに取り付けられている。
一態様では、前記ポンプ運転補助装置は、前記羽根車の下方で前記ポンプケーシングの内部に連通する空気流入管を備え、前記異物除去装置は、前記空気流入管に取り付けられている。
一態様では、前記ポンプ運転補助装置は、前記羽根車の下方で前記ポンプケーシングの内部に連通する空気流入管と、前記空気流入管を前記流路構造体に連結する空気流入管用ブラケットとを備え、前記異物除去装置は、前記空気流入管用ブラケットおよび空気流入管のうちの少なくとも1つに取り付けられている。
一態様では、前記ポンプケーシングは、下方に開口した吸込口を有する吸込ベルマウスを備え、前記ポンプ運転補助装置は、前記吸込ベルマウスから下方に向かって突出した水中渦抑制板を備え、前記異物除去装置は、前記水中渦抑制板に取り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
異物除去装置は、渦抑制装置や空気流入管等のポンプ運転補助装置に対して回転可能に構成されているため、異物除去装置が回転することにより、異物除去装置に付着した異物を除去することができる。結果として、ポンプ運転補助装置への異物の絡みつきを防止し、安定したポンプ運転を可能とすることができる。また、異物を取り除くための清掃に対する負担を軽減させ、維持管理性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】異物除去装置を備えたポンプの一実施形態を示す模式図である。
図2】揚水管の下流側に発生するカルマン渦を示す図である。
図3】ポンプ口径に関連付けられた各寸法の例を示す図である。
図4図3に示すポンプと吸込水槽を上から見た図である。
図5】ポンプ運転補助装置を示す側面図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7】ポンプケーシングまたは揚水管によって分流された液体の流れを示す図である。
図8】カルマン渦から吸込口へ向かう流れを示す図である。
図9図9(a)および図9(b)は、半円筒体の断面形状の変形例を示す模式図である。
図10】複数の異物除去装置の1つを示す模式図である。
図11図10のB-B線断面図である。
図12図12(a)は、異物が異物除去装置に付着した状態を示す模式図であり、図12(b)は、異物が異物除去装置から滑り落ちた状態を示す模式図である。
図13】異物除去装置の他の実施形態を示す模式図である。
図14】異物除去装置の他の実施形態を示す模式図である。
図15】異物除去装置の他の実施形態を示す模式図である。
図16】異物除去装置の他の実施形態を示す模式図である。
図17図16のC-C線断面図である。
図18図1に示す複数の水中渦抑制板を下から見た図である。
図19図18のD-D線断面図である。
図20】ポンプの他の実施形態を示す側面図である。
図21図20のE-E線断面図である。
図22】ポンプのさらに他の実施形態を示す上面図である。
図23】ポンプのさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は立軸ポンプに関するものであるが、本発明はこれらの実施形態に限らず、横軸ポンプにも使用することができる。さらに本発明は、コラムパイプ式の水中ポンプにも使用することができる。図1は、異物除去装置を備えたポンプの一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、ポンプ20は、鉛直方向に延びる主軸32と、主軸32に固定された羽根車31と、内部に主軸32および羽根車31が配置された流路構造体53とを備えている。
【0013】
流路構造体53は、内部に羽根車31を収容するポンプケーシング27と、ポンプケーシング27の上端に接続された揚水管28と、揚水管28の上端に接続された吊り下げ管33と、吊り下げ管33の上端に接続された吐出し曲管30とを備えている。ポンプケーシング27は、揚水管28によって吸込水槽1内に吊り下げられている。ポンプケーシング27は、吸込ベルマウス22と、インペラケーシング21と、吐出しボウル24とを備えている。吐出しボウル24の上端は、揚水管28の下端に接続されている。吸込ベルマウス22は、下方に開口した吸込口22aを有している。吸込ベルマウス22の上端はインペラケーシング21の下端に接続されている。羽根車31は、インペラケーシング21および吐出しボウル24内に収容されている。
【0014】
揚水管28は、吸込水槽1の上壁を構成するポンプ据付床2に形成されたポンプ開口5を通して下方に延びている。吊り下げ管33は、ポンプ据付床2に設置されたポンプベース35に固定されている。揚水管28は、吊り下げ管33およびポンプベース35を介してポンプ据付床2に固定されている。主軸32は、吐出し曲管30、揚水管28、およびポンプケーシング27を通って鉛直方向に延びており、その下端は、ポンプケーシング27内に位置している。
【0015】
主軸32は、外軸受45および水中軸受41によって回転可能に支持されている。外軸受45は、吐出し曲管30の上部に固定され、主軸32の上部を支持している。水中軸受41は、吐出しボウル24内に収容され、主軸32の下部を支持している。吐出しボウル24の内部には内側ボウル25が配置されており、内側ボウル25は、複数のガイドベーン37によって吐出しボウル24に連結されている。水中軸受41は、支持部材41aを介して内側ボウル25の内周面に固定されている。
【0016】
主軸32は吐出し曲管30から上方に突出して、図示しない原動機(例えばモータ)に連結されている。この原動機により主軸32および羽根車31が回転するように構成されている。複数のガイドベーン37は、羽根車31の上方(吐出側)に配置されている。吐出しボウル24の内周面と内側ボウル25の外周面との間には液体の流路が形成されている。羽根車31が回転すると、吸込水槽1内の液体(例えば水)が吸込ベルマウス22の吸込口22aから吸い込まれる。液体は、羽根車31の回転により、吐出しボウル24、揚水管28、吊り下げ管33、吐出し曲管30を通って図示しない吐出配管に移送される。このように、吸込水槽1内の液体がポンプ20によって汲み上げられる。
【0017】
吸込水槽1の水位(吸込水槽1内の液体の液面の高さ)の低下に伴い、吸込水槽1内の液体の自由表面に渦が発生することがある。その渦がポンプ20に引き込まれると、空気吸込渦となり、ポンプ20内部に空気が侵入することとなる。特に、水面(液面)から吸込口22aまで連続的に延びる連続渦は、ポンプ20の異常振動を引き起こす有害な空気吸込渦である。このような有害な空気吸込渦が発生すると、ポンプ20が故障するおそれがある。また、ポンプ20の揚水能力の向上に伴い、吸込水槽1の液体の流速が高くなり、結果として吸込水槽1の底面から水中渦が発生し易くなる。そこで、本実施形態のポンプ20は、渦抑制装置としてのポンプ運転補助装置51をさらに備えている。
【0018】
ポンプ運転補助装置51は、流路構造体53の外側に配置されている。そのため、ポンプ20は、ポンプ運転補助装置51への吸込水槽1内のゴミ等の異物の絡みつきを防止するための複数の異物除去装置55をさらに備えている。複数の異物除去装置55は、ポンプ運転補助装置51の一部に取り付けられている。
【0019】
ポンプ運転補助装置51は、空気吸込渦の発生を抑制する第1の空気吸込渦抑制装置としての複数の縦棒61および複数の縦リブ62と、複数の縦棒61を流路構造体53に連結する複数の縦棒用ブラケット65と、第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71と、半円筒体71をポンプケーシング27に連結する複数の半円筒体用ブラケット75と、水中渦を抑制する水中渦抑制装置としての複数の水中渦抑制板49を備えている。水中渦抑制板49は平板状の部材である。図1では、複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および複数の半円筒体用ブラケット75のうちのそれぞれ1つずつが図示されている。
【0020】
より具体的には、複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、ポンプケーシング27の外側に配置されている。主軸32の軸方向から見たときに、複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、ポンプ開口5の内側に位置している。したがって、ポンプ20のメンテナンスまたは修理を行うときに、ポンプ20の全体をポンプ開口5を通じて引き上げることができる。複数の縦棒61、複数の縦リブ62、および半円筒体71は、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されている。
【0021】
縦棒61は、一般に円形の断面形状を有し、主軸32の軸方向に延びている。各縦棒61は、流路構造体53の外周面との間に隙間が存在した状態で流路構造体53に固定されている。より具体的には、各縦棒61は、複数の縦棒用ブラケット65によってポンプケーシング27の外周面に連結されている。一実施形態では、縦棒61は、揚水管28や吊り下げ管33に固定されてもよい。
【0022】
各縦棒61は全体として主軸32に沿って延びている。同様に、各縦リブ62は全体として主軸32に沿って延びている。縦棒61および縦リブ62は、全体として鉛直方向に延びている。本実施形態では、縦棒61は、主軸32と平行に延びる直線形状を有しているが、縦棒61の形状はこの実施形態に限定されない。一実施形態では、縦棒61の一部が湾曲していてもよい。
【0023】
縦リブ62は、流路構造体53の外周面に固定されている。本実施形態では、縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面に沿って湾曲した形状を有し、主軸32の軸方向に延びている。より具体的には、縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面に固定されており、ポンプケーシング27の外周面からポンプケーシング27の径方向外側に突出している。一実施形態では、縦リブ62の上部は、揚水管28の外周面に固定されてもよい。さらに一実施形態では、縦リブ62は、ポンプケーシング27および/または揚水管28と一体に形成されてもよい。
【0024】
第2の空気吸込渦抑制装置としての半円筒体71は、縦棒61と縦リブ62の下方に配置されている。半円筒体71は、ポンプケーシング27の外周面との間に隙間が存在した状態で、ポンプケーシング27に固定されている。より具体的には、半円筒体71は、複数のブラケット75によって吸込ベルマウス22に固定されている。一実施形態では、半円筒体71は吐出しボウル24に固定されてもよい。半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。
【0025】
図2に示すように、空気吸込渦は、自由表面を形成する液体の流れが揚水管28または吐出しボウル24によって分流されるときに生じるカルマン渦7が発達して生じる。したがって、カルマン渦7は、揚水管28または吐出しボウル24の下流側に発生する。また、カルマン渦7は、液体の流れによって下流側に流される。したがって、縦棒61、縦リブ62、および半円筒体71は、主軸32の下流側に配置される。
【0026】
図3は、ポンプ口径に関連付けられた各寸法の例を示す図であり、図4は、図3に示すポンプ20と吸込水槽1を上から見た図である。図3に示すように、ポンプ口径(本実施形態ではポンプケーシング27の吐出し側の口径)をdとすると、吸込ベルマウス22の下端(すなわちポンプケーシング27の下端)から吸込水槽1の底面までの距離は、一般に0.5d以上であり、一例として0.75d~1.0dの範囲内である。ポンプ20の中心(主軸32の軸心O)から吸込水槽1の後壁までの距離は1.5d以下である。ポンプ開口5の直径は、ポンプ口径dによって概ね決まる値であるが、一実施形態では1.6d~2.1dの範囲内である。図4に示すように、吸込水槽1の水路幅は3.0d程度である。これらの寸法で設計した場合、ポンプ20が運転可能な吸込水槽1の最低水位LWLは、従来のポンプに比べて、0.5d~0.9d程度低くすることができる。
【0027】
上述のように、吸込水槽1の水位(吸込水槽1内の液体の液面の高さ)の低下に伴い、吸込水槽1内の液体の自由表面にカルマン渦7(図2参照)が発生することがある。カルマン渦7の発生を抑制するためには、縦棒61の上端は、カルマン渦7が発生するときの吸込水槽1の水位よりも上に位置する必要がある。吸込水槽1の水路幅が3.0d程度かつポンプ20の中心(主軸32の軸心O)から吸込水槽1の後壁までの距離が1.5d以下の場合等において、従来のポンプの最低水位は、一般に2.5d以上の水位である。この従来のポンプの最低水位より高い水位では、一般にカルマン渦7は発生しないが、吸込水槽1の形状によってはカルマン渦7が発生する可能性がある。
【0028】
図3に示す各寸法の例に従えば、本実施形態のポンプ20は従来のポンプの最低水位より低い水位でも運転するため、縦棒61の上端は、従来のポンプの最低水位以下の位置となる。これは、ポンプ20の運転開始後に吸込水槽1の水位が低下したときにカルマン渦7の発生を抑制するためである。図3によれば、吸込ベルマウス22の下端から吸込水槽1の底面までの距離は、0.75d~1.0dの範囲内であるため、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端から0.8d以上、かつ運転開始水位以下の範囲内に位置する。図3に示す各寸法の例に従えば、縦棒61の上端は、吸込ベルマウス22の下端から0.8d~1.75dの範囲内に位置している。縦棒61の下端は、羽根車31の上端よりも下方に位置している。
【0029】
図5は、ポンプ運転補助装置51を示す側面図であり、図6は、図5のA-A線断面図である。図5では、複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。本実施形態では、2つの縦棒61と、2つの縦リブ62が設けられているが、縦棒61および縦リブ62の数は本実施形態に限定されない。
【0030】
図6に示すように、2つの縦棒61は、2つの縦リブ62にそれぞれ隣接して配置されている。各縦棒61は、隣接する縦リブ62よりも主軸32の軸心Oから離れた位置にある。すなわち、主軸32の軸心Oと縦棒61との距離は、主軸32の軸心Oと縦リブ62との距離よりも長い。縦棒61と同様に、縦リブ62の上端は、カルマン渦7が発生するときの吸込水槽1の水位よりも上に位置する必要がある。図5に示す実施形態では、縦リブ62は、縦棒61よりも短いが、一実施形態では、縦リブ62は、縦棒61と同じ長さでもよく、または縦棒61より長くてもよい。
【0031】
図6に示すように、2つの縦棒61は、吸込水槽1(図1参照)内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に位置しており、主軸32の軸心Oを通る液体の流れ方向と平行な直線RLに関して対称に配置されている。同様に、2つの縦リブ62は、液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に位置しており、主軸32の軸心Oを通る液体の流れ方向と平行な直線RLに関して対称に配置されている。本実施形態では、2つの縦棒61および2つの縦リブ62は、ポンプケーシング27の外周面上の液体の流れの剥離点よりも下流側に配置されている。
【0032】
吸込水槽1の水位が高いときは、吸込水槽1内の液体の流速は低く、吸込水槽1の水位が低くなると、吸込水槽1内の液体の流速が高くなる。カルマン渦7(図2参照)の発生個所は、吸込水槽1の水位、および吸込水槽1内の液体を汲み上げる時の吸込水槽1内の液体の流速によって変化する。カルマン渦7は、吸込水槽1内の液体の流速が低いとき、ポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近に発生し易い。
【0033】
図7は、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流された液体の流れを示す図である。図7では、複数の異物除去装置55の図示は省略されている。図7の矢印に示すように、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流されたポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近の液体は、縦リブ62に衝突することによってその流れを乱される。結果として、縦リブ62は、ポンプケーシング27または揚水管28の外周面付近におけるカルマン渦7の発生を抑制することができる。
【0034】
縦リブ62は、吸込水槽1の水位が高いとき(吸込水槽1内の液体の流速が低いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。一例として、縦リブ62は、その高さ(ポンプケーシング27の径方向の長さ)が0.1d程度であり、かつその幅(ポンプケーシング27の周方向の長さ)が0.1d程度であるとき、カルマン渦7の発生を効果的に抑制できる。
【0035】
縦リブ62に衝突してその流れを乱された液体は、ポンプケーシング27の外側に流され、ポンプケーシング27から離れた位置にカルマン渦7を発生させることがある。また、吸込水槽1の水位が比較的低いとき(吸込水槽1内の液体の流速が高いとき)、ポンプケーシング27から離れた位置にカルマン渦7が発生し易いことが知られている。そこで、このようなカルマン渦7の発生を抑制するために、本実施形態では、縦棒61は、縦リブ62よりも半径方向において外側に配置されている。図7の矢印に示すように、縦リブ62に衝突してポンプケーシング27の外側に流された液体や、ポンプケーシング27または揚水管28によって分流された液体の一部は、縦棒61に衝突し、縦棒61と縦リブ62の間を流れ、あるいは縦棒61の周りを流れるため、その流れが乱される。結果として、縦棒61は、ポンプケーシング27から離れた位置におけるカルマン渦7の発生を抑制することができる。
【0036】
縦棒61は、縦リブ62が空気吸込渦の発生を抑制することができる吸込水槽1の水位範囲から吸込水槽1の水位がさらに低下したとき(すなわち、吸込水槽1内の液体の流速が高いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。また、縦リブ62に衝突してポンプケーシング27の外側に流された水によって発生するカルマン渦7は、縦リブ62よりも下流側に発生する。そのため、縦棒61は、主軸32の軸心Oと縦リブ62とを結ぶ線の延長線よりも下流側(図6参照)に配置されている。一実施形態では、縦棒61は、上記延長線上に配置されてもよい。
【0037】
図6に示すように、主軸32の軸心Oと2つの縦リブ62とを結ぶ2つの線がなす角度θ0は、主軸32の軸心Oと2つの縦棒61とを結ぶ2つの線がなす角度θ1よりも大きいか、あるいは等しい(θ0≧θ1)。本実施形態では、角度θ0は、角度θ1よりも大きい。θ0およびθ1の値が30°~120°程度のとき、縦リブ62と縦棒61との組み合わせは、カルマン渦7の発生を効果的に抑制できる。
【0038】
一実施形態では、縦棒61の断面形状は、四角形、L字型などの多角形であってもよい。上述した各実施形態の縦リブ62は四角形の断面形状を有しているが、縦リブ62の断面形状はこの形状に限定されない。一実施形態では、縦リブ62の断面形状は三角形または円形であってもよい。
【0039】
上述した各実施形態における第1の空気吸込渦抑制装置を構成する複数の縦棒61と複数の縦リブ62との組み合わせは、吸込水槽1の幅広い水位および幅広い流速において、カルマン渦7の発生を抑制し、空気吸込渦の発生を抑制することができる。
【0040】
図5および図6に示すように、半円筒体71は、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されているが、半円筒体71の構成は、この実施形態に限定されない。例えば、半円筒体71は、その下端が吸込ベルマウス22の下端よりも下に位置するように配置されてもよく、その下端が吸込ベルマウス22の下端と同じ高さに位置するように配置されてもよい。
【0041】
カルマン渦7が発生すると、吸込水槽1内の液体を汲み上げる際に、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの強い流れが発生し、空気吸込渦に発達する。図8は、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう流れを示す図である。図8では、縦棒61、縦棒用ブラケット65、縦リブ62、異物除去装置55、および複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。図8に示すように、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの流れF1は、半円筒体71によって内側の流れF2と外側の流れF3に分流される。内側の流れF2は、半円筒体71と吸込ベルマウス22の間に引き込まれる。半円筒体71は、内側の流れF2が外側の流れF3よりも強くなる位置に配置されている。
【0042】
空気吸込渦に発達しうる下向きの強い流れF1は、半円筒体71によって2つの流れF2,F3に分解される。さらに、半円筒体71と吸込ベルマウス22の間に引き込まれた内側の流れF2は、上流側から半円筒体71と吸込ベルマウス22との間の隙間に引き込まれた液体の流れF4などによって乱される。このようにして勢いを失った内側の流れF2は、吸込口22aから吸い込まれる際に、吸込ベルマウス22の下端のエッジ部に衝突し、さらに乱される。
【0043】
このようにして、半円筒体71は、カルマン渦7から空気吸込渦に発達する過程の下向きの強い流れを破壊することができる。結果として、半円筒体71は、空気吸込渦の発生を抑制することができる。上述のように、半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。このような内周面71aは、上流側から流れてくる水を、半円筒体71と吸込ベルマウス22との間の隙間に引き込む効果を助長する。一例として、半円筒体71は、その高さ(主軸32と平行な方向の長さ)が0.2d~0.4d程度のとき、空気吸込渦の発生を効果的に抑制できる。
【0044】
本実施形態では、図6に示すように、主軸32の軸心Oと半円筒体71の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度θ2は180°であるが、この角度θ2は180°に限定されず、120°~180°の範囲内で選択してもよい。図9(a)および図9(b)に示すように、半円筒体71は、その上端および下端から半径方向内側または半径方向外側に延びるフランジ71bを有してもよい。図9(a)および図9(b)では、異物除去装置55の図示は省略されている。この場合も、半円筒体71は、主軸32と平行に延びる内周面71aを有している。
【0045】
図10は、複数の異物除去装置55の1つを示す模式図であり、図11は、図10のB-B線断面図である。図10および図11では、複数の縦棒用ブラケット65に取り付けられた複数の異物除去装置55の1つを示す。異物除去装置55は、ポンプ運転補助装置51の一部を囲むように配置されており、ポンプ運転補助装置51に対して回転可能に構成されている。図10および図11に示す実施形態では、異物除去装置55は、縦棒用ブラケット65を囲むように配置されており、縦棒用ブラケット65に対して図11の矢印の方向に回転可能に構成されている。
【0046】
異物除去装置55は、ポンプ運転補助装置51の一部(図10および図11では、縦棒用ブラケット65)に回転可能に取り付けられた筒体80と、筒体80の外周面に固定された複数の突起81を備えている。本実施形態では、複数の突起81は、筒体80と一体に形成されている。一実施形態では、異物除去装置55は、突起81を備えていなくてもよい。
【0047】
本実施形態では、筒体80の外周面は、円形の断面を有している。筒体80は、筒体80の軸心Pを中心に図11矢印の方向に回転可能である。軸心Pは、ポンプ運転補助装置51の一部(図10および図11では、縦棒用ブラケット65)の断面の中心を通りかつ、ポンプ運転補助装置51の一部(図10および図11では、縦棒用ブラケット65)の長手方向に沿って延びる直線である。
【0048】
吸込水槽1内の液体を汲み上げる際の液体の流れによって、図12(a)に示すように、吸込水槽1内のゴミ等の異物が異物除去装置55に接触することがある。流された異物は異物除去装置55に付着するが、異物除去装置55が液体の流れや自重で回転することによって、付着した異物は異物除去装置55から滑り落ちる(図12(b)参照)。異物除去装置55は、複数の突起81を備えていることにより、液体の流れによって回転し易くなっている。また、異物が突起81に引っ掛かることによって異物除去装置55の重量バランスが崩れて、異物除去装置55が回転し易くなる。一例として、異物除去装置55全体の断面の幅は、0.05d~0.15dである。
【0049】
図13乃至図15は、異物除去装置55の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図10乃至図12を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。一実施形態では、図13に示すように、複数の突起81は、筒体80の軸心Pに沿って千鳥配列されていてもよい。さらに一実施形態では、図14に示すように、筒体80の外周面は、楕円形の断面を有していてもよく、図15に示すように、筒体80の外周面は、丸みのある頂点を有する多角形状の断面を有していてもよい。図14および図15に示す実施形態では、異物除去装置55は、突起81を備えていないが、一実施形態では、図14および図15に示す異物除去装置55は突起81を備えていてもよい。
【0050】
一例として、図14を参照して説明した異物除去装置55全体の断面の長手方向の幅は、0.1d~0.2dであり、短手方向の幅は、0.04d~0.12dである。一例として、図15を参照して説明した異物除去装置55全体の断面の幅は0.05d~0.1dである。
【0051】
図16は、異物除去装置55の他の実施形態を示す模式図であり、図17は、図16のC-C線断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図10乃至図12を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の異物除去装置55は、ポンプ運転補助装置51の一部(図16および図17では、縦棒用ブラケット65)に連結された支持棒83と、支持棒83に接続されたアーチ部材85と、支持棒83をポンプ運転補助装置51の一部(図16および図17では、縦棒用ブラケット65)に連結する複数の支持棒用ブラケット87とを備えている。
【0052】
支持棒83は、ポンプ運転補助装置51の一部(図16および図17では、縦棒用ブラケット65)に沿って延びており、支持棒83は、複数の支持棒用ブラケット87を介してポンプ運転補助装置51の一部(図16および図17では、縦棒用ブラケット65)に固定されている。
【0053】
アーチ部材85は、半円筒形状を有しており、ポンプ運転補助装置51の一部(図16および図17では、縦棒用ブラケット65)を囲むように配置されている。アーチ部材85は、ポンプ運転補助装置51(図16および図17では、縦棒用ブラケット65)に対して回転可能に構成されている。支持棒83は、アーチ部材85を長手方向に貫通して延びており、アーチ部材85は、支持棒83を中心に回転可能に構成されている。より具体的には、アーチ部材85は、支持棒83を中心に揺動可能に構成されている。
【0054】
本実施形態においても異物除去装置55が液体の流れや自重で回転することによって、異物除去装置55に付着した異物は異物除去装置55から滑り落ちる。一例として、本実施形態の異物除去装置55全体の断面の幅は、0.05d~0.15dであり、縦棒用ブラケット65の外周面の最下点から支持棒用ブラケット87の端部までの長さは、0.1d~0.2dである。
【0055】
図18は、図1に示す複数の水中渦抑制板49を下から見た図である。図18に示すように、本実施形態では、4つの水中渦抑制板49が吸込ベルマウス22の下部に固定されている。4つの水中渦抑制板49のうち2つは吸込水槽1内の液体の流れ方向と平行に配置され、他の2つは吸込水槽1内の液体の流れ方向と垂直に配置されている。ただし、水中渦抑制板49の数は本実施形態に限定されない。
【0056】
複数の水中渦抑制板49の一端は、主軸32の軸心Oの延長線上で、互いに固定されており、複数の水中渦抑制板49のそれぞれの他端は、吸込ベルマウス22の内周面に固定されている。図1に示すように、水中渦抑制板49は、吸込ベルマウス22の下端から下方に突出している。水中渦抑制板49の上端は、吸込ベルマウス22の下端よりも高い位置にあり、かつ羽根車31よりも低い位置にある。
【0057】
このような水中渦抑制板49によれば、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間に発生する水中渦を抑制することができる。この水中渦は、吸込ベルマウス22と吸込水槽1の底面との間の旋回流が発達して形成されるものであり、吸込ベルマウス22が吸込水槽1の底面の近くに位置しているときに発生しやすい。本実施形態のポンプ20は、水中渦の原因となる旋回流を水中渦抑制板49で消滅させることにより、水中渦の発生を効果的に抑制することができる。したがって、従来の構造よりも吸込ベルマウス22を低い位置に配置することができ、低水位での揚水が可能となる。本実施形態の水中渦抑制板49はポンプ20に取り付けることができるので、土木躯体である吸込水槽1への固定は不要であり、低コストかつ信頼性の高いポンプを提供することができる。
【0058】
図19は、図18のD-D線断面図である。複数の水中渦抑制板49のそれぞれは、複数の横スリット90と、複数の横スリット90内に配置された複数の横棒91とを備えている。本実施形態では、複数の横棒91は、水中渦抑制板49と一体に形成されている。複数の異物除去装置55が複数の水中渦抑制板49のそれぞれに回転可能に取り付けられている。複数の異物除去装置55は、ポンプ運転補助装置51の一部(図19では、水中渦抑制板49の一部)を囲むように配置されており、ポンプ運転補助装置51(水中渦抑制板49)に対して回転可能に構成されている。より具体的には、異物除去装置55は、横棒91を囲むように配置されており、横棒91に対して図19の矢印の方向に回転可能に構成されている。
【0059】
水中渦抑制板49に取り付けられた異物除去装置55の詳細は、特に説明しない限り図10乃至図12を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の異物除去装置55は、ポンプ運転補助装置51の一部(横棒91)に回転可能に取り付けられた筒体80を備えているが、複数の突起81は備えていない。
【0060】
本実施形態では、筒体80の外周面は、円形の断面を有している。筒体80は、筒体80の軸心Pを中心に図19矢印の方向に回転可能である。軸心Pは、横棒91の断面の中心を通りかつ、水中渦抑制板49の横方向に沿って延びる直線である。
【0061】
一実施形態では、筒体80は、図14および図15を参照して説明した各実施形態の構成が適用されてもよい。さらに一実施形態では、異物除去装置55は、図10乃至図13を参照して説明した各実施形態の複数の突起81を備えていてもよい。
【0062】
ポンプ20は、複数の異物除去装置55を備えている。複数の異物除去装置55は、複数の縦棒用ブラケット65、複数の半円筒体用ブラケット75、および複数の水中渦抑制板49に取り付けられている。一実施形態では、複数の異物除去装置55は、複数の縦棒61にさらに取り付けられてもよい。さらに一実施形態では、異物除去装置55は、複数の縦棒用ブラケット65、複数の半円筒体用ブラケット75、複数の水中渦抑制板49、複数の縦棒61のうちの少なくとも1つに取り付けられてもよい。
【0063】
上述した各実施形態の異物除去装置55の材質の一例として、テフロン(登録商標)等の樹脂が挙げられるが、異物除去装置55の材質は樹脂に限定されない。一実施形態では、異物除去装置55の材質は鋼製であってもよい。上述した各実施形態の筒体80の一例として、滑り軸受が挙げられる。
【0064】
一例として、縦棒用ブラケット65および半円筒体用ブラケット75の直径は、0.03d~0.1dである。本実施形態では、縦棒用ブラケット65、半円筒体用ブラケット75、および横棒91の断面形状は円形であるが、一実施形態では、縦棒用ブラケット65、半円筒体用ブラケット75、および横棒91の断面形状は四角形であってもよい。縦棒用ブラケット65、半円筒体用ブラケット75、および横棒91の断面形状が四角形の場合でも、筒体80は、縦棒用ブラケット65、半円筒体用ブラケット75、および横棒91に対して回転可能に構成される。
【0065】
図20は、ポンプ20の他の実施形態を示す側面図であり、図21は、図20のE-E線断面図である。特に説明しない本実施形態に関する構成は、図1乃至図19を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図20では、複数の水中渦抑制板49の図示は省略されている。図20および図21に示すように、本実施形態のポンプ運転補助装置51は、円弧部材76と、円弧部材76をポンプケーシング27に連結する複数の円弧部材用ブラケット77とをさらに備えている。本実施形態では、第2の空気吸込渦抑制装置は、半円筒体71および円弧部材76から構成される。円弧部材76は、半円筒体71の上方に配置され、かつ縦リブ62および縦棒61の下方に配置されている。一実施形態では、縦棒61の下端は、円弧部材76と接触していてもよい。さらに一実施形態では、縦棒61は円弧部材76に固定、連結されていてもよい。円弧部材76は、ポンプケーシング27の外周面の周方向に沿って湾曲している。本実施形態では、円弧部材76は、半円環状である。円弧部材76は、ポンプケーシング27の外周面と円弧部材76との間に隙間が存在した状態で、複数の円弧部材用ブラケット77によりポンプケーシング27に固定されている。
【0066】
円弧部材76は、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されており、ポンプケーシング27の外周面の一部を囲むように配置されている。図21に示すように、円弧部材76は、主軸32の軸方向から見たときに、その全体がポンプ開口5の内側に位置している。円弧部材76は、流れF1の進路を妨害する位置に配置されている。流れF1は、半円筒体71により分流される前に、円弧部材76に衝突することによって複数の流れF5に分流され、半円筒体71に入る流れが弱められる。結果として、空気吸込渦を生じる下向きの強い流れを弱めることができる。このように、円弧部材76と半円筒体71との組み合わせは、空気吸込渦の発生をより効果的に抑制することができる。
【0067】
図21に示すように、本実施形態では、主軸32の軸心Oと円弧部材76の両側縁とを結ぶ2つの線がなす角度θ3は180°であるが、この角度θ3は180°に限定されず、120°~180°の範囲内で選択してもよい。円弧部材76の断面形状は、円形、四角形、L字型などの多角形であってもよい。
【0068】
本実施形態では、図10乃至図12を参照して説明した複数の異物除去装置55が複数の円弧部材用ブラケット77に取り付けられている。一実施形態では、図13乃至図17を参照して説明した複数の異物除去装置55が複数の円弧部材用ブラケット77に取り付けられてもよい。さらに一実施形態では、異物除去装置55は、複数の縦棒用ブラケット、複数の半円筒体用ブラケット75、複数の水中渦抑制板49、複数の縦棒61、円弧部材76、および複数の円弧部材用ブラケット77のうちの少なくとも1つに取り付けられてもよい。
【0069】
一実施形態では、図22に示すように、円弧部材76は、互いに離間した第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bから構成されてもよい。特に説明しない本実施形態に関する構成は、図20および図21を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の円弧部材76A,76Bの周方向の長さは、図20および図21を参照して説明した円弧部材76の周方向の長さよりも短い。
【0070】
第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、液体の流れ方向に関して主軸32の下流側で、主軸32の軸心Oを通る液体の流れ方向と平行な直線RL’に関して対称に配置されている。具体的には、第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、直線L1,L2上に配置されている。直線L1,L2は、直線RL’に対して45°程度の角度にあり、かつ主軸32の軸心Oを通る直線である。
【0071】
カルマン渦7は、直線L1,L2よりも吸込水槽1内の液体の流れ方向の下流側に発生することが多い。そのため、カルマン渦7から吸込口22aへ向かう下向きの流れF1の進路を妨害するために、第1の円弧部材76Aおよび第2の円弧部材76Bは、直線L1,L2上に配置されている。本実施形態の円弧部材76A,76Bと半円筒体71との組み合わせは、コンパクトな構成で空気吸込渦の発生を抑制することができる。
【0072】
半円筒体71または、半円筒体71と円弧部材76との組み合わせは、縦棒61と縦リブ62との組み合わせが空気吸込渦の発生を抑制することができる吸込水槽1の水位範囲から吸込水槽1の水位がさらに低下したとき(すなわち、吸込水槽1内の液体の流速が高いとき)に、空気吸込渦の発生を効果的に抑制することができる。したがって、半円筒体71および円弧部材76を、縦棒61および縦リブ62と組み合わせることによって、吸込水槽1のより幅広い水位およびより幅広い流速において、カルマン渦7の発生を抑制し、有害な空気吸込渦の発生を防止することができる。
【0073】
一実施形態では、ポンプ運転補助装置51は、空気吸込渦抑制装置として、縦棒61と縦リブ62との組み合わせのみを備えていてもよい。さらに、一実施形態では、ポンプ運転補助装置51は、空気吸込渦抑制装置として、半円筒体71のみ、または半円筒体71と円弧部材76との組み合わせのみを備えていてもよい。
【0074】
上述した各実施形態によれば、吸込ベルマウス22の吸込口22aに向かう液体の流れを阻害するものは実質的に無く、吸い込み損失がほぼ無いため、上述した各実施形態の第1の空気吸込渦抑制装置(縦棒61および縦リブ62)および/または第2の空気吸込渦抑制装置(半円筒体71および/または円弧部材76)を備えたポンプ20は、揚水能力を低下させることなく、有害な空気吸込渦の発生を防止することができる。
【0075】
図23は、ポンプ20のさらに他の実施形態を示す模式図である。本実施形態のポンプ20は、先行待機型ポンプである。特に説明しない本実施形態の詳細は図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態のポンプ運転補助装置51は、羽根車31の下方でポンプケーシング27の内部に連通する空気流入管95と、空気流入管95を流路構造体53に連結する空気流入管用ブラケット99とを備えている。
【0076】
本実施形態の吸込ベルマウス22には、羽根車31よりも低い位置に貫通孔98aが形成されており、貫通孔98aには、空気流入管95が接続されている。空気流入管95は、ポンプケーシング27から横に延びる第1流入管97と、第1流入管97から縦に延びる第2流入管98とを備えている。第2流入管98は、ポンプ20の運転最高水位(HWL)よりも高い位置まで延びており、当該運転最高水位よりも高い位置で大気中に開口している。
【0077】
本実施形態のポンプ20は、吸込水槽1内の水位が低い状態で、あるいは吸込水槽1内に液体が無い状態で、羽根車31を回転させて待機運転を開始する。待機運転の開始時では、ポンプ20は、揚水しない状態で羽根車31が回転する気中運転状態で運転される。液体が吸込水槽1内に流入することにより水位が上昇して気水混合運転水位(例えば、羽根車31の最下端位置:WLS)に達すると、羽根車31による揚水作用が生じて、吸込ベルマウス22から吸いこまれる液体と空気流入管95から流れ込む空気とを同時に吸い上げる気水混合運転状態となる。気水混合運転状態になった後は、水位が上昇するにつれて、空気流入管95からの空気吸込量が減少し、排水流量が増加していく。水位が吸込水槽1の最低水位LWLに達すると、空気流入管95からの空気の流入が停止され、液体のみが吐き出される通常排水運転に移行する。
【0078】
本実施形態では、空気流入管95は、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の下流側に配置されているが、一実施形態では、ポンプ運転補助装置51は、複数の空気流入管95を備えていてもよく、複数の空気流入管95のうちの少なくとも1つは、吸込水槽1内の液体の流れ方向に関して主軸32の上流側に配置されていてもよい。
【0079】
本実施形態では、図10乃至図12を参照して説明した異物除去装置55がポンプ運転補助装置51の一部に取り付けられている。より具体的には、異物除去装置55は、空気流入管95(第1流入管97)に取り付けられている。一実施形態では、図13乃至図17を参照して説明した異物除去装置55がポンプ運転補助装置51の一部(第1流入管97)に取り付けられてもよい。さらに一実施形態では、異物除去装置55は、空気流入管用ブラケット99および空気流入管95(第1流入管97および/または第2流入管98)のうちの少なくとも1つに取り付けられてもよい。
【0080】
上述した各実施形態の異物除去装置55は、渦抑制装置や空気流入管95等のポンプ運転補助装置51に対して回転可能に構成されているため、異物除去装置55が回転することにより、異物除去装置55に付着した異物を除去することができる。結果として、ポンプ運転補助装置51への異物の絡みつきを防止し、安定したポンプ運転を可能とすることができる。また、異物を取り除くための清掃に対する負担を軽減させ、維持管理性を向上させることができる。
【0081】
上述した各実施形態の異物除去装置55は、特開昭54-7601号公報に示すようなリング状部材に取り付けられてもよい。上述した各実施形態は、特開2007-285253号公報に示すような羽根車の下方に水中軸受が配置されたポンプに適用してもよい。
【0082】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 吸込水槽
2 ポンプ据付床
5 ポンプ開口
7 カルマン渦
20 ポンプ
21 インペラケーシング
22 吸込ベルマウス
22a 吸込口
24 吐出しボウル
25 内側ボウル
27 ポンプケーシング
28 揚水管
30 吐出し曲管
31 羽根車
32 主軸
33 吊り下げ管
35 ポンプベース
37 ガイドベーン
41 水中軸受
41a 支持部材
45 外軸受
49 水中渦抑制板
51 ポンプ運転補助装置
53 流路構造体
55 異物除去装置
61 縦棒
62 縦リブ
65 縦棒用ブラケット
71 半円筒体
75 半円筒体用ブラケット
76 円弧部材
77 円弧部材用ブラケット
80 筒体
81 突起
83 支持棒
85 アーチ部材
87 支持棒用ブラケット
90 横スリット
91 横棒
95 空気流入管
97 第1流入管
98 第2流入管
99 空気流入管用ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23