(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】電子線検査装置の二次光学系を評価する方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/26 20060101AFI20221013BHJP
H01J 37/29 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
H01J37/26
H01J37/29
(21)【出願番号】P 2019116821
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】林 丈英
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-312485(JP,A)
【文献】特開2001-006605(JP,A)
【文献】特開2003-179113(JP,A)
【文献】特開2005-174591(JP,A)
【文献】特開2006-344444(JP,A)
【文献】特開2009-004114(JP,A)
【文献】特許第4131051(JP,B2)
【文献】国際公開第2011/070890(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/168482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/26
H01J 37/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源から放出された電子線を観察対象位置に配置された試料に照射させる一次光学系と、前記試料から放出される電子線または前記試料を透過した電子線の拡大像を検出器に結像させる二次光学系と、を備えた電子線検査装置の前記二次光学系を評価する方法であって、
前記観察対象位置に光電面を配置し、前記光電面にレーザー光を照射し、前記光電面から放出される電子線の拡大像を前記二次光学系によって前記検出器に結像させ、前記検出器にて得られる電子線像に基づいて前記二次光学系を評価する、方法
において、
前記レーザー光は、前記一次光学系の鏡筒が前記二次光学系の鏡筒から分離された状態で、前記光電面に照射される、方法。
【請求項2】
前記光電面には予め定められたパターンが形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次光学系は、対物レンズと、前記対物レンズと前記検出器との間に配置される結像レンズと、を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザー光は、前記光電面に対して前記対物レンズの位置とは反対側から照射される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザー光は、チャンバの外部に配置されたレーザー源から放出され、前記チャンバに設けられたビューポートを透過して、前記チャンバ内に配置された前記光電面に照射される、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1~
5の方法に用いられる二次光学系評価用キットであって、
前記二次光学系に気密に接続されるチャンバと、
前記チャンバ内の前記観察対象位置に配置された光電面と、
前記光電面にレーザー光を照射するレーザー源と、
を備えた二次光学系評価用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線検査装置の二次光学系を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査するために、電子ビーム(電子線)を利用した電子線検査装置が用いられている。ここで試料とは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(およびテンプレート)、半導体ウエハ、光学素子用基板、光回路用基板などである。これらは、パターンを有するものとパターンが無いものとがある。パターンが有るものは、凹凸の有るものと無いものとがある。凹凸の無いパターンは、異なった材料によるパターン形成がなされている。パターンが無いものには、酸化膜がコーティングされているものと、酸化膜がコーティングされていないものとがある。
【0003】
電子線検査装置では、電子源から放出された電子線が、一次光学系(照射光学系ともいう)を通過して、試料の表面に照射され、試料の表面から発生した電子線または試料を透過した電子線が、二次光学系(結像光学系ともいう)を透過して、検出器に結像される。
【0004】
ここで、電子線検査装置の開発にあたり、二次光学系の評価を行うためには、試料の表面から発生した電子線または試料を透過した電子線が必要となるが、一次光学系が完成していないと、電子源から放出された電子線が試料の表面に適切に照射されず、これにより、試料の表面から発生した電子線または試料を透過した電子線を適切に用意することができなくなる。したがって、従来の電子線検査装置では、一次光学系が完成するまでは、二次光学系の評価を行うことができず、開発のスピードが遅れるという問題があった。
【0005】
特許文献1では、試料の位置に、自己発光する冷陰極(電子放出素子)を配置し、冷陰極から放出される電子線を用いて二次光学系を単体で調整する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、複雑な積層構造を有する冷陰極(電子放出素子)を用いることから、コストが高いという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、電子線検査装置の二次光学系を単体で低コストで評価できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る方法は、
電子源から放出された電子線を観察対象位置に配置された試料に照射させる一次光学系と、前記試料から放出される電子線または前記試料を透過した電子線の拡大像を検出器に結像させる二次光学系と、を備えた電子線検査装置の前記二次光学系を評価する方法であって、
前記観察対象位置に光電面を配置し、前記光電面にレーザー光を照射し、前記光電面から放出される電子線の拡大像を前記二次光学系によって前記検出器に結像させ、前記検出器にて得られる電子線像に基づいて前記二次光学系を評価する。
【0010】
このような態様によれば、観察対象位置に光電面が配置され、この光電面から放出される電子線を用いることで、二次光学系を単体で評価できる。また、光電面は冷陰極(電子放出素子)に比べて構成が単純であるから、低コストで利用できる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る方法は、第1の態様に係る方法であって、
前記光電面には予め定められたパターンが形成されている。
【0012】
このような態様によれば、検出器にて得られる電子線像のパターンを、光電面に予め形成されたパターンと比較して、その歪みを計測することで、二次光学系を精度よく評価することができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る方法は、第1または2の態様に係る方法であって、
前記二次光学系は、対物レンズと、前記対物レンズと前記検出器との間に配置される結像レンズと、を有する。
【0014】
本発明の第4の態様に係る方法は、第3の態様に係る方法であって、
前記レーザー光は、前記光電面に対して前記対物レンズの位置とは反対側から照射される。
【0015】
このような態様によれば、対物レンズに遮られることなく、光電面にレーザー光を容易に照射することができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る方法は、第1~4のいずれかの態様に係る方法であって、
前記レーザー光は、前記一次光学系の鏡筒が前記二次光学系の鏡筒から分離された状態で、前記チャンバ内に配置された前記光電面に照射される。
【0017】
このような態様によれば、二次光学系の評価を行うにあたり、一次光学系の鏡筒内を真空引きする必要がなくなるから、真空引きに要する時間を短縮することができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る方法は、第1~5のいずれかの態様に係る方法であって、
前記レーザー光は、チャンバの外部に配置されたレーザー源から放出され、前記チャンバに設けられたビューポートを透過して、前記チャンバ内に配置された前記光電面に照射される。
【0019】
このような態様によれば、レーザー源がチャンバの外部に配置されるため、レーザー源を容易に冷却することが可能であり、レーザー源が発熱により高温になることを防止できる。また、レーザー源がチャンバの外部に配置されることで、小型のチャンバを利用することが可能となり、低コストである。また、小型のチャンバを利用することで、チャンバ内の真空引きに要する時間を短縮することができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係る二次光学系評価用キットは、
第1~5のいずれかの態様に係る方法に用いられる二次光学系評価用キットであって、
前記二次光学系に気密に接続されるチャンバと、
前記チャンバ内の前記観察対象位置に配置された光電面と、
前記光電面にレーザー光を照射するレーザー源と、
を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子線検査装置の二次光学系を単体で低コストで評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電子線検査装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る二次光学系評価用キットの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電子線検査装置の二次光学系を評価する方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の一変形例に係る二次光学系を評価する方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る電子線検査装置の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る電子線検査装置の二次光学系を評価する方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第3の実施形態に係る電子線検査装置の概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係る電子線検査装置の二次光学系を評価する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、同一に構成され得る部分について、同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子線検査装置10の概略構成を示す図である。
【0025】
図1に示すように、第1の実施形態に係る電子線検査装置10は、透過型電子線検査装置であり、検査対象である試料Wを収容するチャンバ12と、一次光学系10a(照射光学系ともいう)と、二次光学系10b(結像光学系ともいう)とを有している。
【0026】
このうちチャンバ12内には、観察対象位置に試料Wを保持するステージ15が配置されている。検査対象である試料Wは、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、または金属膜を有する基板などであってもよい。
【0027】
一次光学系10aは、鏡筒11と、電子源14と、照射系レンズ171とを有している。電子源14と照射系レンズ171とは、鏡筒11内に配置されている。
【0028】
一次光学系10aの鏡筒11は、円筒形状を有しており、一端がチャンバ12に気密に接続されている。電子源14は、鏡筒11の他端に設けられている。
【0029】
電子源14としては、たとえばLaB6などの電子銃が用いられる。照射系レンズ171は、電子源14から放出された電子線E1の進行方向下流側に配置されており、電子源14から放出された電子線E1を、チャンバ12内の観察対象位置に配置された試料Wに照射させる。
【0030】
二次光学系10bは、鏡筒13と、対物レンズ172と、中間レンズ173と、結像レンズ174と、検出器16とを有している。対物レンズ172と中間レンズ173と結像レンズ174と検出器16とは、鏡筒13内に配置されている。
【0031】
二次光学系10bの鏡筒13は、円筒形状を有しており、一端がチャンバ12のうち一次光学系10aの鏡筒11とは逆側に気密に接続されている。検出器16は、鏡筒13の他端に設けられている。
【0032】
対物レンズ172と、中間レンズ173と、結像レンズ174とは、チャンバ12内の試料Wと検出器16との間にこの順に並んで配置されており、試料Wを透過した電子線E2の拡大像を検出器16に結像させる。
【0033】
検出器16は、結像レンズ174により導かれた信号電子を検出するカメラであり、その表面に複数のピクセルを有している。検出器16としては、さまざまな二次元型センサを用いることができる。たとえば、検出器16には、CCD(Charge Coupled Device)やTDI(Time Delay Integration)-CCDが用いられてもよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサであり、光電変換やシンチレータを用いて電子が光に変換されたのち、光の像情報が光を検知するTDIに伝達されて検出される。検出器16からの画像信号は、不図示の画像処理装置へと送られ、画像処理により試料Wの表面の欠陥検出または欠陥判定が行われる。
【0034】
次に、
図2を参照し、二次光学系評価用キット20について説明する。
図2は、二次光学系評価用キット20の概略構成を示す図である。
【0035】
図2に示すように、二次光学系評価用キット20は、チャンバ21と、チャンバ21内の観察対象位置に配位された光電面22と、レーザー源24と、レーザー源24から放出されたレーザー光を光電面22に導くレンズ251、252およびミラー253とを有している。
【0036】
光電面22は、光を受けて電子を放出する部材であり、たとえばガラスなどの基板上に、仕事関数の小さいアルカリ金属を含む光電子放出材料をコーティングして作成され得る。光電面22には、予め定められたパターン(たとえば格子状に形成された目印)が形成されていてもよい。この場合、光電面22にレーザー光が照射されると、レーザー光が照射された範囲において、予め定められたパターン形状にて電子が放出される。」
【0037】
レーザー源24とレンズ251、252とミラー253とは、チャンバ21の外部に配置されている。チャンバ21には、レーザー源24から放出され、レンズ251、252とミラー253により導かれたレーザー光を透過するビューポート23が設けられており、ビューポート23を透過したレーザー光が光電面22に照射される。レーザー源24とビューポート23との間のレーザー光の光路上には、ガウス分布のレーザー光を均一分布のレーザー光に変換(強度分布変換)するホモジナイザー(不図示)が配置されていてもよい。
【0038】
チャンバ21のうちビューポート23が設けられた部分とは逆側には、上述した二次光学系10bの鏡筒13が気密に接続可能となっている(
図3参照)。
【0039】
次に、
図3を参照し、電子線検査装置10の二次光学系10bを評価する方法について説明する。
【0040】
まず、
図3に示すように、電子線検査装置10の二次光学系10bの鏡筒13が、二次光学系評価用キット20のチャンバ21に気密に接続され、鏡筒13とチャンバ21の内部が真空排気される。
【0041】
次いで、チャンバ21内の観察対象位置に光電面22が配置され、光電面22に所定の電圧が印加される。
【0042】
そして、レーザー源24からレーザー光が放出される。レーザー源24から放出されたレーザー光は、チャンバ21に設けられたビューポート23を透過して、光電面22に照射される。
図3に示す例では、レーザー光は、光電面22に対して対物レンズ172の位置とは反対側から照射される。これにより、レーザー光が対物レンズ172により遮られることが防止される。
【0043】
レーザー光が照射された光電面22からは光電子からなる電子線E3が放出される。二次光学系10bの対物レンズ172と中間レンズ173と結像レンズ174とは、光電面22から発生した電子線E3の拡大像を検出器16に結像させる。
【0044】
検出器16からの画像信号は、不図示の画像処理装置へと送られ、画像処理により二次光学系10bが評価される。すなわち、不図示の画像処理装置では、検出器16にて得られる電子線像に基づいて、二次光学系10bが製品として使えるか否か(仕様を満たしているか否か)評価される。具体的には、たとえば、検出器16にて得られる電子線像のパターンが、光電面22に予め形成されたパターンと比較され、その歪みが計測されることで、歪みの計測結果に基いて二次光学系10bが評価される。
【0045】
ところで、背景技術の欄でも言及したように、従来、電子線検査装置10の開発にあたり、二次光学系10bの評価を行うためには、試料Wの表面から発生した電子線または試料Wを透過した電子線E2が必要となるが、一次光学系10aが完成していないと、電子源14から放出された電子線E1が試料Wの表面に適切に照射されず、これにより、試料Wの表面から発生した電子線または試料Wを透過した電子線E2を適切に用意することができなくなる。したがって、従来の電子線検査装置10では、一次光学系10aが完成するまでは、二次光学系10bの評価を行うことができず、開発のスピードが遅れるという問題があった。
【0046】
これに対し、本実施の形態によれば、二次光学系10bの評価を行う際に、観察対象位置に光電面22が配置され、この光電面22から放出された電子線E3を用いることで、二次光学系10bを単体で評価できる。これにより、一次光学系10aの開発と二次光学系10bの開発とを並列的に進めることが可能となり、開発スピードが向上する。また、光電面22は冷陰極(電子放出素子)に比べて構成が単純であるから、低コストで利用できる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、光電面22には予め定められたパターンが形成されているため、検出器16にて得られる電子線像のパターンを、光電面22に予め形成されたパターンと比較して、その歪みを計測することで、二次光学系10bを精度よく評価することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、レーザー源24から放出されたレーザー光が、光電面22に対して対物レンズ172の位置とは反対側から照射されるため、対物レンズ172に遮られることなく、光電面22にレーザー光を容易に照射することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、レーザー源24がチャンバ21の外部に配置されるため、レーザー源24を容易に冷却することが可能であり、レーザー源24が発熱により高温になることを防止できる。また、レーザー源24がチャンバ21の外部に配置されることで、小型のチャンバ21を利用することが可能となり、低コストである。また、小型のチャンバ21を利用することで、チャンバ21内の真空引きに要する時間を短縮することができる。
【0050】
なお、上述した実施の形態では、
図3に示すように、二次光学系評価用キット20が、二次光学系10bの上部に配置されて使用されたが、これに限定されず、
図4に示すように、二次光学系10bが上下反転され、二次光学系評価用キット20が二次光学系10bの下部に配置されて使用されてもよい。
【0051】
以上、第1の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した第1の実施形態に限定されるものではなく、上述した第1の実施形態に対して様々な変形を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0052】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る電子線検査装置30の概略構成を示す図である。
【0053】
図5に示すように、第2の実施形態に係る電子線検査装置30は、写像投影型電子線検査装置であり、検査対象である試料Wを収容するチャンバ32と、一次光学系30a(照射光学系ともいう)と、二次光学系30b(結像光学系ともいう)とを有している。
【0054】
このうちチャンバ32内には、観察対象位置に試料Wを保持するステージ35が配置されている。検査対象である試料Wは、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、または金属膜を有する基板などであってもよい。
【0055】
一次光学系30aは、鏡筒31と、電子源34と、照射系レンズ371とを有している。電子源34と照射系レンズ371とは、鏡筒11内に配置されている。
【0056】
一次光学系30aの鏡筒31は、円筒形状を有しており、一端が二次光学系30bの鏡筒33に気密に接続されている。電子源34は、鏡筒31の他端に設けられている。
【0057】
電子源34としては、たとえばLaB6などの電子銃が用いられる。照射系レンズ371は、電子源34から放出された電子線E1の進行方向下流側に配置されており、電子源34から放出された電子線E1を、チャンバ32内の観察対象位置に配置された試料Wに照射させる。
【0058】
二次光学系30bは、鏡筒33と、ウィーンフィルタ38と、中間レンズ372と、対物レンズ373と、結像レンズ374、375と、検出器36とを有している。ウィーンフィルタ38と対物レンズ373と中間レンズ372と結像レンズ374、375と検出器36とは、鏡筒33内に配置されている。
【0059】
二次光学系30bの鏡筒33は、円筒形状を有しており、一端がチャンバ32に気密に接続されている。検出器36は、鏡筒33の他端に設けられている。
【0060】
対物レンズ373と、中間レンズ372と、ウィーンフィルタ38と、結像レンズ374、375とは、チャンバ32内の試料Wと検出器36との間にこの順に並んで配置されており、試料Wから放出される二次電子や反射電子(ミラー電子ともいう)からなる電子線E2の拡大像を検出器36に結像させる。なお、ウィーンフィルタ38は、ビーム分離器であり、照射系レンズ37を通過して斜め上方から入射する電子線E1を、ステージ35上の試料Wに対してほぼ垂直に入射するように通過させるとともに、試料Wから放出された電子線E2を、入射電子線E1とは異なる角度に偏向して結像レンズ374へと導く。
【0061】
検出器36は、結像レンズ374、375により導かれた信号電子を検出するカメラであり、その表面に複数のピクセルを有している。検出器36の構成は、上述した第1の実施形態における検出器16の構成と同様であり、説明を省略する。検出器36からの画像信号は、不図示の画像処理装置へと送られ、画像処理により試料Wの表面の欠陥検出または欠陥判定が行われる。
【0062】
次に、
図6を参照し、電子線検査装置30の二次光学系30bを評価する方法について説明する。
【0063】
まず、
図6に示すように、電子線検査装置30の一次光学系30aの鏡筒31が二次光学系30bの鏡筒33から分離され、その接続部分が閉止蓋29により気密に封止される。この状態で、二次光学系30bの鏡筒33が、二次光学系評価用キット20のチャンバ21に気密に接続され、鏡筒33とチャンバ21の内部が真空排気される。ここで、一次光学系30aの鏡筒31が二次光学系30bの鏡筒33から分離され、その接続部分が閉止蓋29により気密に封止されており、一次光学系30aの鏡筒31内を真空引きする必要がなくなるから、真空引きに要する時間を短縮することができる。
【0064】
次いで、チャンバ21内の観察対象位置に光電面22が配置され、光電面22に所定の電圧が印加される。
【0065】
そして、レーザー源24からレーザー光が放出される。レーザー源24から放出されたレーザー光は、チャンバ21に設けられたビューポート23を透過して、光電面22に照射される。
図6に示す例では、レーザー光は、光電面22に対して対物レンズ373の位置とは反対側から照射される。これにより、レーザー光が対物レンズ373により遮られることが防止される。
【0066】
レーザー光が照射された光電面22からは光電子からなる電子線E3が放出される。二次光学系30bの対物レンズ373と中間レンズ372とウィーンフィルタ38と結像レンズ374、375とは、光電面22から放出された電子線E3の拡大像を検出器36に結像させる。
【0067】
検出器36からの画像信号は、不図示の画像処理装置へと送られ、画像処理により二次光学系30bが評価される。すなわち、不図示の画像処理装置では、検出器36にて得られる電子線像に基づいて、二次光学系30bが製品として使えるか否か(仕様を満たしているか否か)評価される。具体的には、たとえば、検出器36にて得られる電子線像のパターンが、光電面22に予め形成されたパターンと比較され、その歪みが計測されることで、歪みの計測結果に基いて二次光学系30bが評価される。
【0068】
以上のような第2の実施形態によっても、上述した第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0069】
また、第2の実施形態によれば、一次光学系30aの鏡筒31が二次光学系30bの鏡筒33から分離された状態で、レーザー光が、チャンバ21内に配置された光電面22に照射されるため、二次光学系30bの評価を行うにあたり、一次光学系30aの鏡筒31内を真空引きする必要がなくなり、真空引きに要する時間を短縮することができる。
【0070】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る電子線検査装置40の概略構成を示す図である。
【0071】
図7に示すように、第3の実施形態に係る電子線検査装置40は、マルチビーム走査型電子線検査装置であり、検査対象である試料Wを収容するチャンバ42と、一次光学系40a(照射光学系ともいう)と、二次光学系40b(結像光学系ともいう)とを有している。
【0072】
このうちチャンバ42内には、観察対象位置に試料Wを保持するステージ45が配置されている。検査対象である試料Wは、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、または金属膜を有する基板などであってもよい。
【0073】
一次光学系40aは、鏡筒41と、マルチ電子源44と、照射系レンズ471とを有している。マルチ電子源44と照射系レンズ471とは、鏡筒41内に配置されている。
【0074】
一次光学系40aの鏡筒41は、円筒形状を有しており、一端が二次光学系40bの鏡筒43に気密に接続されている。マルチ電子源44は、鏡筒41の他端に設けられている。
【0075】
マルチ電子源44としては、たとえば複数のLaB6などの電子銃が用いられる。照射系レンズ471は、マルチ電子源44から放出された複数の電子線(マルチビーム)E1の進行方向下流側に配置されており、マルチ電子源44から放出された複数の電子線(マルチビーム)E1を、チャンバ42内の観察対象位置に配置された試料Wに照射させる。
【0076】
二次光学系40bは、鏡筒43と、ウィーンフィルタ48と、中間レンズ472と、対物レンズ473と、結像レンズ474、475と、検出器46とを有している。ウィーンフィルタ48と対物レンズ473と中間レンズ472と結像レンズ474、475と検出器46とは、鏡筒43内に配置されている。
【0077】
二次光学系40bの鏡筒43は、円筒形状を有しており、一端がチャンバ42に気密に接続されている。検出器46は、鏡筒43の他端に設けられている。
【0078】
対物レンズ473と、中間レンズ472と、ウィーンフィルタ48と、結像レンズ474、475とは、チャンバ42内の試料Wと検出器46との間にこの順に並んで配置されており、試料Wから放出される二次電子や反射電子(ミラー電子ともいう)からなる電子線E2の拡大像を検出器46に結像させる。なお、ウィーンフィルタ48は、ビーム分離器であり、照射系レンズ47を通過して斜め上方から入射する複数の電子線(マルチビーム)E1を、ステージ45上の試料Wに対してほぼ垂直に入射するように通過させるとともに、試料Wから放出された電子線E2を、入射電子線E1とは異なる角度に偏向して結像レンズ474へと導く。
【0079】
検出器46は、結像レンズ474、475により導かれた信号電子を検出するカメラであり、その表面に複数のピクセルを有している。検出器46の構成は、上述した第1の実施形態における検出器16の構成と同様であり、説明を省略する。検出器46からの画像信号は、不図示の画像処理装置へと送られ、画像処理により試料Wの表面の欠陥検出または欠陥判定が行われる。
【0080】
次に、
図8を参照し、電子線検査装置40の二次光学系40bを評価する方法について説明する。
【0081】
まず、
図8に示すように、電子線検査装置40の一次光学系40aの鏡筒41が二次光学系40bの鏡筒43から分離され、その接続部分が閉止蓋29により気密に封止される。この状態で、二次光学系40bの鏡筒43が、二次光学系評価用キット20のチャンバ21に気密に接続され、鏡筒43とチャンバ21の内部が真空排気される。ここで、一次光学系40aの鏡筒41が二次光学系40bの鏡筒43から分離され、その接続部分が閉止蓋29により気密に封止されており、一次光学系40aの鏡筒41内を真空引きする必要がなくなるから、真空引きに要する時間を短縮することができる。
【0082】
次いで、チャンバ21内の観察対象位置に光電面22が配置され、光電面22に所定の電圧が印加される。
【0083】
そして、レーザー源24からレーザー光が放出される。レーザー源24から放出されたレーザー光は、チャンバ21に設けられたビューポート23を透過して、光電面22に照射される。
図8に示す例では、レーザー光は、光電面22に対して対物レンズ473の位置とは反対側から照射される。これにより、レーザー光が対物レンズ473により遮られることが防止される。
【0084】
レーザー光が照射された光電面22からは光電子からなる電子線E3が放出される。二次光学系40bの対物レンズ473と中間レンズ472とウィーンフィルタ48と結像レンズ474、475とは、光電面22から放出された電子線E3の拡大像を検出器46に結像させる。
【0085】
検出器46からの画像信号は、不図示の画像処理装置へと送られ、画像処理により二次光学系40bが評価される。すなわち、不図示の画像処理装置では、検出器46にて得られる電子線像に基づいて、二次光学系40bが製品として使えるか否か(仕様を満たしているか否か)評価される。具体的には、たとえば、検出器46にて得られる電子線像のパターンが、光電面22に予め形成されたパターンと比較され、その歪みが計測されることで、歪みの計測結果に基いて二次光学系40bが評価される。
【0086】
以上のような第3の実施形態によっても、上述した第2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 電子線検査装置
10a 一次光学系
10b 二次光学系
11 一次光学系鏡筒
12 チャンバ
13 二次光学系鏡筒
14 電子源
15 ステージ
16 検出器
171 照射系レンズ
172 対物レンズ
173 中間レンズ
174 結像レンズ
20 二次光学系評価用キット
21 チャンバ
22 光電面
23 ビューポート
24 レーザー源
251 レンズ
252 レンズ
253 ミラー
29 閉止蓋
30 電子線検査装置
30a 一次光学系
30b 二次光学系
31 一次光学系鏡筒
32 チャンバ
33 二次光学系鏡筒
34 電子源
35 ステージ
36 検出器
371 照射系レンズ
372 中間レンズ
373 対物レンズ
374 結像レンズ
375 結像レンズ
38 ウィーンフィルタ
40 電子線検査装置
40a 一次光学系
40b 二次光学系
41 一次光学系鏡筒
42 チャンバ
43 二次光学系鏡筒
44 マルチ電子源
45 ステージ
46 検出器
471 照射系レンズ
472 中間レンズ
473 対物レンズ
474 結像レンズ
475 結像レンズ
48 ウィーンフィルタ
W 試料