(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】成膜装置、および、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20221014BHJP
C23C 14/00 20060101ALI20221014BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C23C14/34 E
C23C14/00 B
H05H1/46 A
(21)【出願番号】P 2018143588
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【氏名又は名称】森廣 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏治
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0211352(US,A1)
【文献】特開平06-192833(JP,A)
【文献】特表2015-519477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C23C 14/00
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象物および円筒形のターゲットが内部に配置されるチャンバと、
前記ターゲットの内部に設けられ、前記ターゲットの外周面から漏洩する磁場を生成する磁場発生手段と、
前記ターゲットを回転駆動するターゲット駆動手段と、を備えた成膜装置であって、
前記磁場発生手段と前記ターゲットの内周面との間に移動可能に設けられる磁気遮蔽部材と、
該磁気遮蔽部材を駆動する遮蔽部材駆動手段と、
前記遮蔽部材駆動手段によって前記磁気遮蔽部材を移動させることで、前記成膜対象物に成膜する本スパッタモードと、前記ターゲットの表面をクリーニングするプリスパッタモードと、を切り替える制御手段と、を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材駆動手段は、前記磁気遮蔽部材を前記ターゲットと同軸に回転移動させる手段であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記磁気遮蔽部材は、アーチ状の板状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記磁気遮蔽部材は、前記ターゲットの長手方向と直交する断面形状が円弧状の板状部材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記磁気遮蔽部材は、半円筒状の板状部材であることを特徴とする請求項3または4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記磁場発生手段は、前記成膜対象物に向かう方向と、前記成膜対象物から離れる方向と、の両方に磁場を発生させる手段であることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一
項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記磁場発生手段は、前記成膜対象物に向かう方向に磁場を発生させる第1磁石ユニットと、前記成膜対象物から離れる方向に磁場を発生させる第2磁石ユニットと、を備えることを特徴とする請求項
7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記チャンバの内部を、前記成膜対象物に成膜するための第1の領域と、前記第1の領域と異なる第2の領域と、に仕切るための仕切り部材をさらに有することを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記磁場発生手段は、前記ターゲットの内部で密閉されたケース内に収納されており、前記磁気遮蔽部材は前記ケース内に装着されている請求項1から
9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記磁場発生手段と、前記磁気遮蔽部材と、を有し、前記ターゲットが、前記磁場発生手段および前記磁気遮蔽部材がその内部に配置されるようにそれぞれ配置されるカソードユニットを、前記チャンバ内に複数有することを特徴とする請求項1から
10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項12】
成膜対象物および円筒形のターゲットが内部に配置されるチャンバと、
前記ターゲットの内部に設けられ、前記ターゲットの外周面から漏洩する磁場を生成する磁場発生手段と、
前記ターゲットを回転駆動するターゲット駆動手段と、を備えた成膜装置であって、
前記磁場発生手段と前記ターゲットの内周面との間に、前記ターゲットと同軸に回転可能に設けられる磁気遮蔽部材と、
該磁気遮蔽部材を回転駆動する遮蔽部材駆動手段と、
前記遮蔽部材駆動手段によって前記磁気遮蔽部材を移動させることで、前記成膜対象物に成膜する本スパッタモードと、前記ターゲットの表面をクリーニングするプリスパッタモードと、を切り替える制御手段と、を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
成膜対象物および円筒形のターゲットが内部に配置されるチャンバと、
前記ターゲットの内部に設けられ、前記ターゲットの外周面から漏洩する磁場を生成する磁場発生手段と、
前記ターゲットを回転駆動するターゲット駆動手段と、を備え、前記チャンバ内の成膜エリアに配置される前記成膜対象物に成膜する成膜装置であって、
前記磁場発生手段と前記ターゲットの内周面との間に移動可能に設けられる磁気遮蔽部材を有し、
前記磁場発生手段が前記磁気遮蔽部材と前記成膜エリアとの間に配置された状態で放電を行う第1の動作モードと、
前記磁気遮蔽部材が前記磁場発生手段と前記成膜エリアとの間に配置された状態で放電を行う第2の動作モードと、
を切り替え可能に有することを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
前記磁気遮蔽部材を駆動する遮蔽部材駆動手段を有し、
前記遮蔽部材駆動手段によって前記磁気遮蔽部材を移動させることで、前記第1の動作モードと、前記第2の動作モードと、を切り替えることを特徴とする請求項
13の記載の成膜装置。
【請求項15】
成膜対象物をチャンバ内に配置し、前記成膜対象物と対向して配置された円筒形のターゲットから飛翔するスパッタ粒子を堆積させて成膜するスパッタ成膜工程を含む電子デバ
イスの製造方法であって、
前記ターゲットの内部に配置された磁場発生手段によって、前記磁場発生手段から前記成膜対象物に向かう第1の方向と、前記成膜対象物から離れる第2の方向と、の両方に磁場を発生させ、
前記第1の方向に発生した磁場を遮蔽した状態で、前記ターゲットを回転させつつ放電するプリスパッタ工程と、
前記第2の方向に発生した磁場を遮蔽した状態で、前記ターゲットを回転させつつ放電する本スパッタ工程と、
を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記プリスパッタ工程は、前記ターゲットの外表面を清浄にする工程であることを特徴とする請求項
15に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記本スパッタ工程は、表面が清浄になった前記ターゲットをスパッタして、前記成膜対象物に前記スパッタ粒子を堆積させる工程であることを特徴とする請求項
16に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、および、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板や基板上に形成された積層体などの成膜対象物に、金属や金属酸化物などの材料からなる薄膜を形成する方法として、スパッタ法が広く知られている。スパッタ法によって成膜を行うスパッタ装置は、真空チャンバ内において、成膜材料からなるターゲットと成膜対象物とを対向させて配置した構成を有している。ターゲットに負の電圧を印加するとターゲットの近傍にプラズマが発生して電離した不活性ガス元素によってターゲット表面がスパッタされ、放出されたスパッタ粒子が成膜対象物に堆積して成膜される。また、ターゲットの背面(円筒形のターゲットの場合にはターゲットの内側)にマグネットを配置し、発生する磁場によってカソード近傍の電子密度を高くしてスパッタする、マグネトロンスパッタ法も知られている。
【0003】
従来のこの種の成膜装置においては、例えば、ターゲットを交換した後や、チャンバ内を大気開放した後、あるいは成膜処理を連続して行わずターゲットがプラズマに曝されない期間が長い場合などには、ターゲットの表面が酸化あるいは変質している場合がある。このようにターゲットの表面が酸化あるいは変質した場合や、ターゲット表面に異物が付着した場合などには、成膜対象物に対してスパッタする前に、成膜対象物以外に対してスパッタを行い、ターゲットの表面を清浄にするプリスパッタが行われている(特許文献1)。
【0004】
ターゲットを回転させながらスパッタを行うロータリーカソードRC;回転カソード、ローテータブルカソードとも称する)におけるプリスパッタとしては、例えば、特許文献2に記載のような方法がある。
特許文献2に記載のスパッタ装置では、RCの内部に設けられたマグネット(磁石アセンブリ)を回転させることで、次の3つの状態をとることができる。
(1)プラズマが基板(成膜対象物)の反対側を向いている状態
(2)プラズマが横(基板の成膜面に水平な方向)を向いている状態
(3)プラズマが基板を向いている状態
【0005】
すなわち、(1)の状態でプラズマを発生させて(1)または(2)の状態で維持することで基板にスパッタすることなくプリスパッタを行うことができる。プリスパッタが完了した後には、マグネットを回転させて(3)の状態にすれば、基板やRCを移動させることなく、プリスパッタから本スパッタに移行することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-204705号公報
【文献】特表2015-519477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のようにマグネットを回転させる方法では、成膜対象物が大型化してRCが長尺になった場合に、マグネットが重くなり、回転させることが困難になる。
【0008】
その他の方法として、RC全体をプリスパッタのための位置まで移動させてプリスパッタする方法も考えられるが、移動距離が長くなり、生産性が低下してしまう。
【0009】
本発明の目的は、プリスパッタを生産性良く、簡便に行うことができる成膜装置および電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての成膜装置は、成膜対象物および円筒形のターゲットが内部に配置されるチャンバと、前記ターゲットの内部に設けられ、前記ターゲットの外周面から漏洩する磁場を生成する磁場発生手段と、前記ターゲットを回転駆動するターゲット駆動手段と、を備えた成膜装置であって、前記磁場発生手段と前記ターゲットの内周面との間に移動可能に設けられる磁気遮蔽部材と、該磁気遮蔽部材を駆動する遮蔽部材駆動手段と、前記遮蔽部材駆動手段によって前記磁気遮蔽部材を移動させることで、前記成膜対象物に成膜する本スパッタモードと、前記ターゲットの表面をクリーニングするプリスパッタモードと、を切り替える制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の一側面としての成膜装置は、成膜対象物および円筒形のターゲットが内部に配置されるチャンバと、前記ターゲットの内部に設けられ、前記ターゲットの外周面から漏洩する磁場を生成する磁場発生手段と、前記ターゲットを回転駆動するターゲット駆動手段と、を備えた成膜装置であって、前記磁場発生手段と前記ターゲットの内周面との間に、前記ターゲットと同軸に回転可能に設けられる磁気遮蔽部材と、該磁気遮蔽部材を回転駆動する遮蔽部材駆動手段と、前記遮蔽部材駆動手段によって前記磁気遮蔽部材を移動させることで、前記成膜対象物に成膜する本スパッタモードと、前記ターゲットの表面をクリーニングするプリスパッタモードと、を切り替える制御手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のさらに別の一側面としての成膜装置は、成膜対象物および円筒形のターゲットが内部に配置されるチャンバと、前記ターゲットの内部に設けられ、前記ターゲットの外周面から漏洩する磁場を生成する磁場発生手段と、前記ターゲットを回転駆動するターゲット駆動手段と、を備え、前記チャンバ内の成膜エリアに配置される前記成膜対象物に成膜する成膜装置であって、前記磁場発生手段と前記ターゲットの内周面との間に移動可能に設けられる磁気遮蔽部材を有し、前記磁場発生手段が前記磁気遮蔽部材と前記成膜エリアとの間に配置された状態で放電を行う第1の動作モードと、前記磁気遮蔽部材が前記磁場発生手段と前記成膜エリアとの間に配置された状態で放電を行う第2の動作モードと、を切り替え可能に有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の別の一側面としての電子デバイスの製造方法は、成膜対象物をチャンバ内に配置し、前記成膜対象物と対向して配置された円筒形のターゲットから飛翔するスパッタ粒子を堆積させて成膜するスパッタ成膜工程を含む電子デバイスの製造方法であって、前記ターゲットの内部に配置された磁場発生手段によって、前記磁場発生手段から前記成膜対象物に向かう第1の方向と、前記成膜対象物から離れる第2の方向と、の両方に向かって磁場を発生させ、前記第1の方向に発生した磁場を遮蔽した状態で、前記ターゲットを回転させつつ放電するプリスパッタ工程と、前記第2の方向に発生した磁場を遮蔽した状態で、前記ターゲットを回転させつつ放電する本スパッタ工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリスパッタを生産性良く、簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は実施形態1の成膜装置の構成を示す模式図、(B)は実施形態1の磁気遮蔽板の斜視図。
【
図2】(A)は本スパッタモードの状態の実施形態1の成膜装置の構成を示す模式図、(B)は実施形態の成膜装置の側面図。
【
図4】(A)は駆動機構の一例を示す斜視図、(B)は駆動機構の一例を示す断面図。
【
図5】(A)は駆動機構の他の例を示す斜視図、(B)は駆動機構の他の例を示す断面図。
【
図7】(A)は実施形態3の成膜装置の構成を示す模式図、(B)は実施形態3の仕切板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
[実施形態1]
まず、
図1(A)および
図2(A)を参照して、実施形態1の成膜装置1の基本的な構成について説明する。
図1(A)はプリスパッタモードの状態の成膜装置1の構成、
図2(A)は本スパッタモードの状態の成膜装置1の構成を示している。
【0018】
本実施形態に係る成膜装置1は、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造において基板(基板上に積層体が形成されているものも含む)上に薄膜を堆積形成するために用いられる。より具体的には、成膜装置1は、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどの電子デバイスの製造において好ましく用いられる。中でも、本実施形態に係る成膜装置1は、有機EL(ErectroLuminescence)素子などの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造において特に好ましく適用可能である。なお、本発明における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0019】
図8は、有機EL素子の一般的な層構成を模式的に示している。
図8に示すとおり、有機EL素子は、基板に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極の順番に成膜される構成が一般的である。本実施形態に係る成膜装置1は、有機膜上に、スパッタリングによって、電子注入層や電極(陰極)に用いられる金属や金属酸化物等の積層被膜を成膜する際に好適に用いられる。また、有機膜上への成膜に限定されず、金属材料や酸化物材料等のスパッタで成膜可能な材料の組み合わせであれば、多様な面に積層成膜が可能である。
【0020】
成膜装置1は、ガス導入口7および不図示の排気口を備え、内部を真空に維持することができるチャンバ10を有する。チャンバ10の内部には、ガス導入口7を介して不図示のガス導入手段によってアルゴン等の不活性ガスや反応性ガスが供給され、チャンバ10の内部からは、不図示の排気口を介して不図示の排気手段によって真空排気が行われる。
【0021】
チャンバ10内には、成膜装置1によって成膜処理を行う対象である成膜対象物6と、成膜対象物6と対向して円筒形のターゲット2と、が配置される。チャンバ10内にターゲット2が配置された状態で、成膜対象物6が不図示の搬送手段によってターゲット2と対向するチャンバ10内の領域である成膜エリアA0に搬送され、成膜処理が行われてもよい。成膜対象物6は、成膜エリアA0内で成膜対象物6の成膜面に平行な方向に不図示
の成膜対象物駆動手段によって移動させられつつ、成膜処理が行われてもよい。ターゲット2の内部には、磁場発生手段としての磁石ユニット3が設けられる。ターゲット2は、駆動手段としてのターゲット駆動装置11によって、ターゲット2の円筒中心軸を回転の軸として回転駆動される。磁石ユニット3は密閉されたケース4内に装着され、ターゲット2と共にロータリーカソード8を構成している。
【0022】
ターゲット2は、成膜対象物6に成膜を行う成膜材料の供給源として機能する。ターゲット2の材質は特に限定はされないが、例えば、Cu、Al、Ti、Mo、Cr、Ag、Au、Niなどの金属ターゲットとその合金材が挙げられる。ターゲット2は、これらの成膜材料が形成された層の内側に、バッキングチューブのような別の材料からなる層が形成されていてもよい。また、ターゲット2は円筒形のターゲットであるが、ここで言う「円筒形」は数学的に厳密な円筒形のみを意味するのではなく、母線が直線ではなく曲線であるものや、中心軸に垂直な断面が数学的に厳密な「円」ではないものも含む。すなわち、本発明におけるターゲット2は、中心軸を軸に回転可能な円筒状のものであればよい。
【0023】
磁石ユニット3は、ターゲット2と成膜エリアA0に配置される成膜対象物6との間の領域である第1の領域A1と、成膜対象物から離れる方向の第2の領域A2において、ターゲット2の外周近傍にプラズマPを集中させる磁場を発生させる構成となっている。さらに、ターゲット2の内部には、ターゲット2の内周と磁石ユニット3との間に、磁場を遮蔽する磁気遮蔽板5が移動可能に配置されている。なお、ここでいう「遮蔽」とは、磁気遮蔽板5を通過する磁場を100%遮断することのみを意味するのではなく、磁気遮蔽板5を通過する磁場を低減させることを含む。
【0024】
磁気遮蔽板5は、第1の領域A1における磁場の生成を遮蔽して第2の領域A2における磁場の生成を許容する第1遮蔽位置(I)と(
図1(A)参照)、第2の領域A2における磁場の生成を遮蔽して第1の領域A1における磁場の生成を許容する第2遮蔽位置(II)(
図2(A)参照)と、の間を移動可能となっており、遮蔽板駆動装置12によって駆動される。
【0025】
ターゲット2にはバイアス電圧を印加する電源13が接続される。なお、チャンバ10は接地されている。成膜装置1は、制御装置14によって、遮蔽板駆動装置12、ターゲット駆動装置11および電源13を制御することによって、成膜対象物6に成膜する本スパッタの前に、ターゲット2の表面をクリーニングするプリスパッタを行う。プリスパッタは、磁気遮蔽板5を第1遮蔽位置(I)に移動させ(
図1(A)参照)、第2の領域A2でターゲット2のスパッタを行い、ターゲット2表面の酸化物や変質した部分、付着した異物等を除去するモードである。その後、磁気遮蔽板5を第2遮蔽位置(II)に移動させ、プリスパッタモードで清浄となったターゲット2のスパッタを行う本スパッタを行うように制御される。
【0026】
成膜対象物6は、図示例では、チャンバ10の天井側に、ロータリーカソード8の回転軸と平行、すなわち水平に配置され、両側縁が不図示の基板ホルダによって保持されている。成膜対象物6は、例えば、チャンバ10の側壁に設けられた不図示の入口ゲートから搬入され、成膜エリアA0内の成膜位置まで移動して成膜され、成膜後、不図示の出口ゲートから排出される。成膜装置1は、上述のように、成膜対象物6の成膜面が重力方向下方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆるデポアップの構成であってもよい。ただし、これに限定はされず、成膜対象物6がチャンバ10の底面側に配置されてその上方にロータリーカソード8が配置され、成膜対象物6の成膜面が重力方向上方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆるデポダウンの構成であってもよい。あるいは、成膜対象物6が垂直に立てられた状態、すなわち、成膜対象物6の成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0027】
ロータリーカソード8は、
図2(B)に示すように、チャンバ10の上下方向ほぼ中央に配置され、両端がサポートブロック300とエンドブロック200を介して回転自在に支持されている。
【0028】
(磁石ユニット30の配置構成)
磁石ユニット30は、成膜対象物6に向かう方向(第1の方向)に磁場を形成する第1磁石ユニット3Aと、成膜対象物2とは離れる方向、すなわち第1の方向とは逆の方向である第2の方向に磁場を形成する第2磁石ユニット3Bによって構成されている。第1磁石ユニット3Aと第2磁石ユニット3Bは背面合わせで重ねられており、磁力の強さは同じに設定されている。なお、第1磁石ユニット3Aと第2磁石ユニット3Bとの間には空間が設けられていてもよい。第1磁石ユニット3Aと第2磁石ユニット3Bは、基本的に同じ構成であり、第1磁石ユニット3Aを例にとって、その構成を説明する。
【0029】
第1磁石ユニット3Aは、
図3に示すように、ロータリーカソード8の回転軸と平行方向に延びる中心磁石31と、中心磁石31を取り囲む中心磁石31とは異極の周辺磁石32と、ヨーク板33とを備えている。周辺磁石32は、中心磁石31と平行に延びる一対の直線部32a,32bと、直線部32a,32bの両端を連結する転回部32c、32cとによって構成されている。第2磁石ユニット3Bも同一の構成である。
【0030】
磁石ユニット30によって形成される磁場は、中心磁石31の磁極から、周辺磁石32の直線部32a,32aへ向けてループ状に戻る磁力線を有している。これにより、ターゲット2の表面近傍には、ターゲット2の長手方向に延びたトロイダル型の磁場のトンネルが形成される。この磁場によって、電子が捕捉され、ターゲット2の表面近傍にプラズマを集中させ、スパッタリングの効率が高められている。
【0031】
(ケースの構成)
ケース4は円筒形状の密閉されたボックスで、磁石ユニット30がケース4内に配置される。ケース4の中心軸線とターゲットの中心軸はロータリーカソード8の中心軸線Nと同軸的に組付けられている。また、磁石ユニット3のヨーク板33は、中心軸線Nを通る水平面上に位置し、第1磁石ユニット3Aと第2磁石ユニット3Bの中心磁石31、31の中心を通る垂直面が、中心軸線を通るように配置されている。
【0032】
一方、磁気遮蔽板5は、
図1(A),(B)に示すように、円筒状のケース4の内周に沿ったアーチ状の板状部材で、ケース4の内周に固定されている。図示例では、磁気遮蔽板5は、ケース4の半周分を覆う構成となっており、半円筒形状を有している。磁気遮蔽板5の固定は、ケース4の内周に張り付けてもよいし、ねじ等の締結部材によって固定してもよいし、場合によっては、ケース4自体の材質を、該当部分について磁性部材によって構成してもよい。
【0033】
磁気遮蔽板5の材質は磁束を吸収して内部に集中しやすい材料、すなわち、高い比透磁率を有する材料であれば特に限定はされない。磁気遮蔽板5を構成する材料の比透磁率は500以上であることが好ましく、1000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましい。なお、磁気遮蔽板5を構成する材料の比透磁率の上限は特に限定はされず、例えば、10000000以下であってもよいし、1000000以下であってもよい。より具体的には、磁気遮蔽板5を構成する材料としては、強磁性体であることが好ましく、例えば、Fe、Co、Niやその合金、パーマロイやミューメタル等を用いることができる。
【0034】
(ターゲットの駆動機構および遮蔽板の駆動機構)
図4(A)は、ターゲット駆動機構11および遮蔽板駆動機構12の一例を示す概略斜視図であり、
図4(B)はロータ
リーカソード8の回転軸に沿った断面図である。
【0035】
ロータリーカソード8は、上記したとおり、長手方向両端部がエンドブロック200とサポートブロック300に回転自在に支持される。この例では、円筒状のケース4の内周に磁気遮蔽板5が固定され、ケース4の回転によって中央の磁石ユニット3の周りを回転移動するようになっている。磁石ユニット3は固定軸35によって回転方向には固定されている。
【0036】
エンドブロック200は、チャンバ10の壁に固定され、外部空間に通じた中空のボックス形状を有する。ターゲット2に動力を伝達する動力伝達軸21およびケース4に動力を伝達する動力伝達軸41は、エンドブロック200の中空内部に突出している。そして、それぞれの動力伝達軸21,41は、それぞれ、駆動伝達機構としてのベルト伝達機構110,120を介して駆動源であるモータ130に接続され、回転駆動力が伝達されるようになっている。ベルト伝達機構110,120は、図示例では、ベルトおよびプーリは、歯付きタイプのものが使用されているが、これに限定されない。
【0037】
この例では、ターゲット駆動装置11と、遮蔽板駆動装置12は、同一のモータ130を利用している。すなわち、モータ130に直結される出力軸131の途中に、ベルト伝達機構110の駆動側プーリ111が固定され、出力軸131の端部が電磁クラッチ125を介して磁性板駆動装置12の駆動側プーリ121に接続されている。また、磁性板駆動装置12の従動側プーリ122には、電磁ブレーキ126が設けられ、停止位置で保持されるようになっている。
【0038】
ターゲット2の動力伝達軸21は円筒状の中空軸で、中空穴を通じてケース4の動力伝達軸41がターゲット2の動力伝達軸21から突出している。ケース4の動力伝達軸41も中空軸で、中空穴を通じて磁石ユニット3を固定する固定軸35がエンドブロック200側に突出している。ターゲット2の動力伝達軸21は、ターゲット2の端部に固定される端板22の中央に突設され、ケース4の動力伝達軸41は、ケース4の端板42の中央に突設されている。
【0039】
一方、サポートブロック300はチャンバ10内に配置されており、ターゲット2およびケース4の端部に設けられた従動側回転軸24,44が、サポートブロック300に回転自在に支持されている。エンドブロック側と異なり、互いに回転自在に支持されればよいので、ターゲット2の従動側回転軸24をケース4の従動側回転軸44が貫通しなくもよいし、また、ケース4の従動側回転軸44を固定軸35が貫通する必要はない。
【0040】
なお、ここではサポートブロック300はチャンバ10の内部に配置され、エンドブロック200はチャンバ10の外部に配置されるものとしたが、これに限定はされず、エンドブロック200もチャンバ10の内部に配置されてもよい。この場合、モータ130等もエンドブロック200の内部に配置されてもよい。エンドブロック200およびサポートブロック300をチャンバ10の内部に配置して、ロータリーカソード8と共に成膜対象物6の成膜面に対して平行に移動可能な構成としてもよい。この構成にすれば、ロータリーカソード8を回転駆動させつつ、ロータリーカソード8を成膜対象物6の成膜面に対して平行に駆動させることができる。
【0041】
図4(B)は、
図4(A)のより具体的な構成を示すものである。
エンドブロック200はチャンバ10外なので、真空のチャンバ10内の雰囲気と外気とのシールをする必要があり、回転部分の軸受とシールを中心に説明するものとする。
【0042】
(エンドブロック側の構成)
固定軸35とケース4の動力伝達軸41との間には、一対の軸受Bが設けられ、固定軸35に対してケース4の動力伝達軸41が回転自在となっており、固定軸35とケース4の動力伝達軸41との環状隙間に真空シールに適した密封装置270が装着されている。この密封装置270は、固定軸35とケース4の動力伝達軸41との相対的な回転を可能としつつ、環状隙間を封止する機能を有している。磁石ユニット3と固定軸35は連結されており、ケース4が回転しても磁石ユニット3は回転することはない。
【0043】
ケース4の動力伝達軸41とターゲット2の動力伝達軸21との間にも、一対の軸受Bが設けられ、ケース4の動力伝達軸41に対してターゲット2の動力伝達軸21が回転自在となっており、ケース4の動力伝達軸41とターゲット2の動力伝達軸21との環状隙間が密封装置270によってシールされている。
【0044】
次に、ターゲット2の動力伝達軸21と、エンドブロック200に設けられた円形の開口部201との間にも軸受Bが設けられ、エンドブロック200に対してターゲット2の動力伝達軸が回転自在となっており、さらに、ターゲット2の動力伝達軸21と開口部201との環状隙間が密封装置270によってシールされている。
【0045】
なお、図示例では、駆動力伝達軸21は、ターゲット2の開口端を塞ぐ端板22に設けられた構成で、ターゲット2は、クランプなどの締結部材290によって外周側の端部が締結され、ターゲット2の内周と端板22との嵌合部はガスケットGによって封止されている。これにより、ケース4内を低圧力状態に維持している。
【0046】
(サポートブロック300側の構成)
ターゲット2の従動側回転軸24は中空ではなく、動力伝達軸21と同軸的に設けられ、サポートブロック300に設けられた軸穴301に軸受Bを介して回転自在に支持されている。この軸受部には特に密封装置は不要である。従動側回転軸24は、ターゲット2の開口端を塞ぐ端板25に設けられた構成で、端板25の内側の端面には未貫通の軸受穴26が設けられており、この軸受穴26にケース4の従動側回転軸44が、軸受Bを介して回転自在に支持されている。さらに、ケース4の従動側回転軸44も未貫通の軸受穴46が設けられ、駆動側の固定軸35と同軸的に固定軸36が相対回転自在に嵌合している。
【0047】
なお、ターゲット2のサポートブロック300側の端部も、クランプなどの締結部材290によって外周側の端部が締結され、ターゲット2の内周と端板との嵌合部はガスケットGによって封止され、ターゲット2の内部空間を低圧力状態に維持している。
【0048】
以上のように構成されるロータリーカソード8によれば、モータ130の回転駆動力が、ベルト伝達機構110、動力伝達軸21を介してターゲット2に伝達され、回転駆動される。
【0049】
また、ケース4には、モータ130の回転駆動力が、電磁クラッチ125を介してケース4側のベルト伝達機構110および動力伝達軸41を介してケース4に伝達され、ケース4が回転駆動される。すなわち、電磁クラッチ125がオン状態のときに、ケース4と共に磁気遮蔽板5が回転し、オフになるとケース4が停止する。また、停止位置では、電磁ブレーキ126によって、停止位置で保持される。これにより、本スパッタ工程とプリスパッタ工程を、電磁クラッチ125のオンオフのタイミングによって切り替えることができる。
【0050】
次に、成膜装置1の作用について説明する。
【0051】
成膜装置1は、制御部14によって駆動源のモータ130、ターゲット駆動機構11、遮蔽部材駆動機構12の電磁クラッチ125、電磁ブレーキ126を制御して、磁気遮蔽板5を回転させて磁気遮蔽板5の位置を変えることができる。これにより、成膜装置1は、成膜対象物6に成膜する本スパッタモードと、ターゲット2の表面をクリーニングするプリスパッタモードと、を切り替え制御する。換言すれば、成膜装置1は、プリスパッタモードに相当する第1の動作モードと、本スパッタモードに相当する第2の動作モードと、を切り替え可能に有する。ここで、第1の動作モードは、磁気遮蔽板5が成膜エリアA0とは反対側に配置された状態、すなわち、磁石ユニット3が、磁気遮蔽板5と成膜エリアA0(または成膜対象物6)との間に配置された状態で放電を行う動作モードである。また、第2の動作モードは、磁気遮蔽板5が成膜エリアA0側に配置された状態、すなわち、磁気遮蔽板5が、磁石ユニット3と成膜エリアA0(または成膜対象物6)との間に配置された状態で放電を行う動作モードである。
【0052】
プリスパッタモードは、第1の領域A1の磁場の生成を遮蔽し、かつ、第2の領域A2に磁場を生成してターゲット2の表面を清浄にする工程である。本スパッタモードは、第2の領域A2の磁場の生成を遮蔽し、かつ、第1の領域A1に磁場を生成し、ターゲット2をスパッタして成膜対象物6にターゲット粒子を堆積させる工程である。
【0053】
(プリスパッタ工程)
プリスパッタ工程では、モータ130を回転させると共に、電磁クラッチ125をオンしてケース駆動機構12のベルト伝達機構120を駆動し、ケース4と共に磁気遮蔽板5を回転させ、本スパッタ用の第1磁石ユニット3Aを覆う第1遮蔽位置(I)まで移動さ
せる。この間、モータ130によって、ターゲット駆動機構11のベルト伝達機構110も駆動しており、ターゲットは回転し続けている。磁気遮蔽板5が第1遮蔽位置(I)に
到達すると、電磁クラッチ125がオフされ、同時に電磁ブレーキ126がオンとなって停止位置を保持し、電源からバイアス電圧を印加する。バイアス電圧を印加すると、磁気遮蔽板5によって、第1の領域A1の磁場の生成は遮蔽され、第2磁石ユニット3Bによる第2の領域A2の磁場が生成されているので、この第2磁石ユニット3B側のターゲット表面近傍にプラズマPが集中して生成され、プラズマ状態のガスイオンがターゲット2に衝突し、ターゲット表面の酸化物等が飛散し、ターゲット2の表面がクリーニングされる。所定時間、プリスパッタを行い、ターゲット2の表面がクリーニングされた後、本スパッタに移行する。
【0054】
(本スパッタ工程)
本スパッタ工程では、モータ130を回転させると共に、電磁ブレーキ126を解放し、電磁クラッチ125をオンとしてケース駆動機構12のベルト伝達機構120を駆動し、ケース4と共に磁気遮蔽板5を回転させ、プリスパッタ用の第2磁石ユニット3Bを覆う第2遮蔽位置(II)まで移動させる。この間、モータ130によって、ターゲット駆動機構11のベルト駆動機構110も駆動しており、ターゲット2は回転し続けている。磁気遮蔽板5が第2遮蔽位置(II)に到達すると、電磁クラッチ125をオフにし、同時に電磁ブレーキ126で停止位置を保持し、電源13からバイアス電圧を印加する。
【0055】
バイアス電位が印加されると、磁気遮蔽板5によって、第2の領域A2の磁場の生成は遮蔽され、第1磁石ユニット3Aによる第1の領域A1の磁場が生成されているので、この第1磁石ユニット側のターゲット表面近傍にプラズマPが集中して生成され、プラズマ状態のガスイオンがターゲット2をスパッタし、飛散したスパッタ粒子が成膜対象物6に堆積して成膜される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、磁石ユニット3を回転させたりロータリー
カソード8を退避させたりしなくても、比較的軽量で駆動が容易な磁気遮蔽板5を移動させることのみでプリスパッタを行うことができるため、プリスパッタを生産性良く、簡便に行うことができる。
【0057】
(ターゲットの駆動機構および遮蔽板の駆動機構の他の構成例)
図5は、ターゲット駆動機構11および遮蔽板駆動機構12の他の構成例を示す概略斜視図である。基本的には、
図4に示した構成と同一なので、主として異なる点についてのみ説明し、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
上記構成では、磁気遮蔽板5がケース4に固定され、ケース4と共に磁気遮蔽板5が回転するようになっていたが、この例は、磁気遮蔽板5がケース4内に配置され、ターゲット2やケース4とは、独立して回転させるように構成されている。
【0059】
すなわち、ターゲット2の動力伝達軸21は円筒状の中空軸で、中空穴を通じてケース4の固定軸401がターゲット2の動力伝達軸21からエンドブロック200側に突出している。ケース4の固定軸401も中空軸で、中空穴を通じて磁気遮蔽板5の動力伝達軸501がエンドブロック200側に突出している。ターゲット2の動力伝達軸21は、ターゲット2の端部に固定される端板22の中央に突設され、ケース4の固定軸401は、ケース4の端板42の中央に突設されている。また、磁気遮蔽板5の動力伝達軸501は、磁気遮蔽板5の円形の端板502の中央に連結されている。
【0060】
一方、サポートブロック300側については、上記形態と異なり、前記ターゲット2および磁気遮蔽板5の端部に設けられた従動側回転軸24,504が、サポートブロック300に回転自在に支持されている。ターゲット2の従動側回転軸24を磁気遮蔽板5の従動側回転軸504が貫通しなくもよいし、また、ケース4の固定軸401を磁気遮蔽板5の従動側回転軸504が貫通しなくてもよい。
【0061】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。以下の説明では実施形態1と、主として異なる点についてのみ説明し、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
[実施形態2]
図6は、本発明の実施形態2に係る成膜装置101を示している。実施形態2に係る成膜装置101は、ロータリーカソード8内の磁石ユニット3の磁力が、成膜対象物6に対向する表側の第1磁石ユニット3Aの磁力が、成膜対象物6と反対側の第2磁石ユニット3Bの磁力より強く設定したものである。
【0063】
このようにすることで、プリスパッタモードにおいてターゲット2の表面近傍に形成されるプラズマの密度を、本スパッタモードにおいてターゲット2の表面近傍に形成されるプラズマの密度よりも小さくすることができる。そのため、本実施形態によれば、実施形態1の効果に加えて、プリスパッタ時の過剰な材料消費を抑制することができる。
【0064】
[実施形態3]
図7は、本発明の実施形態3に係る成膜装置102を示している。実施形態3に係る成膜装置102では、チャンバ10の内部を、成膜対象物6に成膜するための第1の領域A1と、第1の領域A1と異なる第2の領域A2と、に仕切るための仕切り部材400を設けたものである。
【0065】
第1の領域A1は本スパッタの際のプラズマが生成される領域であり、第2の領域A2はプリスパッタの際にプラズマが生成される領域である。成膜装置102は、第1の領域
A1にガスを導入するための第1のガス導入口71と、第2の領域A2にガスを導入するための第2のガス導入口72と、を有しており、それぞれのガス導入口71,72は別のガス供給源に接続されていてもよい。それぞれのガス導入口71,72からは別種のガスが供給されてもよい。
【0066】
仕切り部材は、ロータリーカソードの中心軸を通る水平面に沿って、ロータリーカソードの左右に一対の水平板部401と、水平板部401を支持する垂直方向に延びる支持板部402とを備えたL字形状に屈曲した板材によって構成される。支持板部402はチャンバ10の内壁面に固定され、水平板部401のロータリーカソード8側の端部が、ターゲットの側面に対して微小な隙間を介して対向するように構成される。なお、水平板部401が直接チャンバ10の壁に固定された構成でもよい。
【0067】
このように第1の領域A1と第2の領域A2を仕切ることで、プリスパッタ時の酸化物等の飛散粒子が成膜対象物側に付着する等の影響を抑制することできる。
【0068】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の構成を採用することができる。
【0069】
例えば、磁気遮蔽板を磁石ユニットと共にケース内に配置した場合について説明したが、ケース外周とターゲット内周の間の隙間に配置する構成としてもよい。
【0070】
また、磁気遮蔽板のサイズとしては、上記実施形態ではほぼ断面半円形状となっており、円筒状のターゲットの180°の範囲を覆うサイズとなっているが、180°に限定されるものではない。円筒状のターゲットの90°以上270°以下の範囲を覆うサイズとすることが好ましく、150°以上210°以下の範囲を覆うサイズとすることがより好ましい。
【0071】
また、上記実施形態では、磁気遮蔽板を磁性板一枚で構成しているが、2枚重ねた構成としてもよいし、1枚には限定されない。
【0072】
さらに、磁石ユニット3は、成膜対象物6と対向する第1磁石ユニット3Aに対して、180°反対側にプリスパッタ用の第2磁石ユニット3Bを一つだけ配置しているが、プリスパッタ用の第2磁石ユニット3Bを複数設けてもよい。この場合は、複数設ける第2の磁石ユニット3Bは異なる方向を向いて配置されてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、ロータリーカソード8が1つの場合を例示したが、ロータリーカソード8がチャンバ10の内部に複数配置された成膜装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 成膜装置
2 ターゲット
3 磁石ユニット(磁場発生手段)
5 磁気遮蔽板
6 成膜対象物
10 チャンバ
11 ターゲット駆動装置(ターゲット駆動手段)
12 遮蔽板駆動装置(遮蔽板駆動手段)