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特許7158126粘着剤付き樹脂フィルム及びそれを含む光学積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】粘着剤付き樹脂フィルム及びそれを含む光学積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20221014BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221014BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221014BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221014BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221014BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/38
C09J11/06
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
G02B5/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016220947
(22)【出願日】2016-11-11
(65)【公開番号】P2017095700
(43)【公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2015225021
(32)【優先日】2015-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】佐▲瀬▼ 光敬
(72)【発明者】
【氏名】森岡 公平
(72)【発明者】
【氏名】鄭 宰旭
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078252(JP,A)
【文献】特開2014-114334(JP,A)
【文献】特開2011-037930(JP,A)
【文献】特開2014-095731(JP,A)
【文献】特開2015-022200(JP,A)
【文献】特開2014-081598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 27/00
B32B 27/18
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層とを有する粘着剤付き樹脂フィルムであって、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル樹脂、下式(I):
【化1】
[式中、RはH又は炭素数1~3の直鎖アルキル基、Rは炭素数5~14の直鎖アルキル基又は炭素数7~13のアラルキル基である。]
により表されるピリジニウム塩であるイオン性化合物、架橋剤及びシラン系化合物を含有する粘着剤から構成され、
前記樹脂フィルムを、23℃55%RHの大気雰囲気下で、50質量%ヨウ化カリウム水溶液に4.5時間浸漬し、15秒間の水洗を行い、暗所にて15時間乾燥させる処理後の、波長355~365nmの光の吸光量の、該処理前に対する最大変化量が5%以上である、粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤は、前記樹脂100質量部に対し、0.05~8質量部の前記イオン性化合物を含有する、請求項に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの厚みは10~200μmである、請求項1または2に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム、及び前記粘着剤層側に積層されるガラス基板を含む光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層が形成された樹脂フィルム、即ち粘着剤付き樹脂フィルムに関するものである。本発明はまた、この粘着剤層が形成された樹脂フィルムを用いた液晶表示用の光学積層体にも関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、静電気が帯電すると、その表示機能に不具合が生じることがある。そのため、液晶表示装置を構成する偏光板等の部材は帯電防止機能を有することが望まれている。例えば、樹脂フィルムの一種である保護フィルムは、偏光フィルムの一方又は両方の側に積層され偏光板を形成するが、粘着剤層に帯電防止機能を付与することがある。なお、偏光板は一般に、該保護フィルムの少なくとも一方の表面にかかる粘着剤層が形成されて、その粘着剤層の上に剥離フィルムが貼着された状態で流通している。
【0003】
粘着剤への帯電防止性の付与の方法として、粘着剤中への帯電防止剤を配合する手法が知られている。特許文献1には、室温(25℃)において固体になる特定のイオン性化合物を粘着剤に含有させることで、粘着剤を塗工した偏光板を長時間放置しても、経時変化を起こさず、帯電防止性及び耐久性に優れた粘着剤付き樹脂フィルムが得られることが記載されている。
【0004】
しかし、粘着剤の被着体である樹脂フィルムの中には、イオン透過性が高くイオン性化合物を容易に透過、移行させる性質を有するものがある。こうした被着体に対しては、前記の特許文献に記載のイオン性化合物を粘着剤中に添加した場合においても、所望の帯電防止性を長期間にわたって維持できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-79205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、粘着剤の被着体としてイオン透過性の高い樹脂フィルムを用いた粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、長期間に亘り安定した帯電防止性を維持可能な粘着剤付き樹脂フィルム、さらにはその粘着剤付き樹脂フィルムを、液晶セルを代表例とするガラス基板に貼合した光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、イオン透過性の高い樹脂フィルムを粘着剤の被着体である透明保護フィルムに用いる偏光板に対し、かかる課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、特定のイオン性化合物を帯電防止剤として粘着剤中に含有させることで、帯電防止性を長期間安定に維持可能な粘着剤付き樹脂フィルムを得ることが可能になることを見出した。
さらに、本発明で得られた粘着剤付き樹脂フィルムは、ガラスに貼合して光学積層体を得た際に、優れた耐久性及びリワーク性を具備することも見出した。
【0008】
本発明は、以下の好適な態様[1]~[6]を提供するものである。
[1]樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層とを有する粘着剤付き樹脂フィルムであって、
前記粘着剤層は、樹脂、及び60℃の水に対する溶解度が0.4g/100g以下であるイオン性化合物を含有する粘着剤から構成され、
前記樹脂フィルムを、23℃55%RHの大気雰囲気下で、50質量%ヨウ化カリウム水溶液に4.5時間浸漬し、15秒間の水洗を行い、暗所にて15時間乾燥させる処理後の、波長355~365nmの光の吸光量の、該処理前に対する最大変化量が5%以上である、粘着剤付き樹脂フィルム。
[2]樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層とを有する粘着剤付き樹脂フィルムであって、
前記粘着剤層は、樹脂及び下式(I):
【化1】
[式中、RはH又は炭素数1~3の直鎖アルキル基、Rは炭素数5~14の直鎖アルキル基又は炭素数7~13のアラルキル基である。]
により表されるピリジニウム塩であるイオン性化合物を含有する粘着剤から構成され、
前記樹脂フィルムを、23℃55%RHの大気雰囲気下で、50質量%ヨウ化カリウム水溶液に4.5時間浸漬し、15秒間の水洗を行い、暗所にて15時間乾燥させる処理後の、波長355~365nmの光の吸光量の、該処理前に対する最大変化量が5%以上である、粘着剤付き樹脂フィルム。
[3]前記粘着剤は、前記樹脂100質量部に対し、0.05~8質量部の前記イオン性化合物を含有する、前記[1]又は[2]に記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
[4]前記樹脂は(メタ)アクリル樹脂である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
[5]前記樹脂フィルムの厚みは10~200μmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤付き樹脂フィルム、及び前記粘着剤層側に積層されるガラス基板を含む光学積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、イオン透過性が高い樹脂フィルムを粘着剤の被着体として使用した場合であっても、長期間にわたり安定した帯電防止性を発揮することが可能となる。さらに、本発明の粘着剤付き樹脂フィルムはガラスに貼合して光学積層体は、優れた耐久性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施態様である光学積層体の層構造の例を示す断面模式図である。
図2】本発明の一実施態様である光学積層体の層構造の例を示す断面模式図である。
図3】本発明の一実施態様である光学積層体の層構造の例を示す断面模式図である。
図4】本発明の一実施態様である光学積層体の層構造の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の側に粘着剤層を含有するものであり、その粘着剤層は、樹脂、及び特定のイオン性化合物を含有する粘着剤から構成されているものである。
【0012】
<粘着剤層>
本発明において粘着剤層は、樹脂フィルムの少なくとも一方の側に設けられ、粘着剤から構成されるものである。粘着剤は、樹脂及び上記イオン性化合物を含有する。以下、本発明における粘着剤を構成する各成分を説明する。
【0013】
[樹脂]
本発明においては、粘着剤に含まれる樹脂の種類は特に限定されるものではなく、例えば(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、及びゴムなどを挙げることができる。前記樹脂は、単独又は組み合わせて用いることができる。このうち、樹脂に導入する単量体の種類を選択することにより粘着剤に容易に機能性を付与できるという点で、前記樹脂として(メタ)アクリル樹脂(A)を採用することが好適である。この(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する構造単位も限定されるものではない。(メタ)アクリル樹脂(A)としては、例えば下式(II)で示される(メタ)アクリル酸エステル(以下、「単量体(II)」とも称する)に由来する構造単位を主成分とする重合体が挙げられる。なお、本発明において、「単量体(II)に由来する構造単位を主成分とする重合体」とは、単量体(II)に由来する構造単位を、重合体を構成する全構造単位に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、例えば80質量%以上含有することを意味する。この場合、単量体(II)に由来する構造単位を、重合体を構成する全構造単位に対して、通常100質量%以下、好ましくは90質量%以下含有する。
【0014】
【化2】
【0015】
式(II)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは通常炭素数14以下、好ましくは10以下のアルキル基又はアラルキル基である。
【0016】
本発明の一実施態様において、(メタ)アクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位に加えて、さらに他の構造単位、特に極性官能基を有する単量体に由来する構造単位、好ましくは極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を含有してもよい。極性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びエポキシ環をはじめとする複素環基などを挙げることができる。極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びアクリル酸グリシジル等が挙げられる。さらには、(メタ)アクリル樹脂(A)は、極性官能基を有しない単量体(II)以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。好適に用いられうる構造単位(単量体)として、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する単量体に由来する構造単位、好ましくは芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物に由来する構造単位を挙げることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、他に、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
【0017】
単量体(II)のうち、Rがアルキル基であるものとしてより具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-オクチル、及びアクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、及びメタクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;並びに、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のメタクリル酸アルキルエステルが例示される。
【0018】
これらのなかでもアクリル酸n-ブチルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する全構造単位(単量体)のうち、アクリル酸n-ブチルが50質量%以上となり、かつ前記した単量体(II)に関する規定を満たすことが好ましい。
【0019】
単量体(II)のうち、Rがアラルキル基であるものとして、具体的にはアクリル酸ベンジルやメタクリル酸ベンジルなどが例示される。
【0020】
これらの単量体(II)は、それぞれ単独又は組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記式(II)におけるRを構成するアルキル基又はアラルキル基は、その水素原子が基-O-(CO)-Rで置換されているものであってもよい。
【0022】
前記式(II)におけるRを構成するアルキル基又はアラルキル基の水素原子が基-O-(CO)-Rで置換されている場合、nは0又は1~4の整数が好ましく、0、1又は2であることがより好ましい。また、Rは炭素数12以下のアルキル基又はアリール基であり、アルキル基の炭素数が3以上であれば、直鎖でも分岐していてもよい。Rを構成するアリール基の例を挙げると、フェニルやナフチルのほか、トリルやキシリル、エチルフェニルなどを包含する核アルキル置換フェニル、ビフェニリル(又はフェニルフェニル)などがある。Rは、特にこれらのアリール基であることが好ましい。
【0023】
式(II)におけるRがアルキル基又はアラルキル基であり、かつRのアルキル基又はアラルキル基の水素原子が基-O-(C24O)n-Rで置換されている(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、アクリル酸2-(2-フェノキシエトキシ)エチル、及びアクリル酸2-(o-フェニルフェノキシ)エチルの如き、アクリル酸のアルコキシアルキル-、アリールオキシアルキル-又はアリールオキシエトキシアルキル-エステル;メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2-フェノキシエチル、メタクリル酸2-(2-フェノキシエトキシ)エチル、及びメタクリル酸2-(o-フェニルフェノキシ)エチルの如き、メタクリル酸のアルコキシアルキル-、アリールオキシアルキル-又はアリールオキシエトキシアルキル-エステルなどが例示される。
【0024】
本発明における(メタ)アクリル樹脂(A)は、極性官能基を有しない単量体(II)以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。極性官能基を有しない単量体(II)以外の単量体としては、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、スチレン系単量体、ビニル系単量体、(メタ)アクリルアミド誘導体、及び分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体などが挙げられる。
【0025】
分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体について説明する。脂環式構造とは、炭素数が、通常5以上、好ましくは5~7程度のシクロパラフィン構造である。脂環式構造を有するアクリル酸エステル単量体の具体例を挙げると、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、α-エトキシアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニルなどがある。また、脂環式構造を有するメタクリル酸エステル単量体の具体例を挙げると、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルフェニルなどがある。
【0026】
スチレン系単量体の例を挙げると、スチレンのほか、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、及びオクチルスチレンの如きアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、及びヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン;さらに、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどがある。
【0027】
ビニル系単量体の例を挙げると、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、及びラウリン酸ビニルの如き脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニルや臭化ビニルの如きハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンの如きハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、及びビニルカルバゾールの如き含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンの如き共役ジエン単量体;さらには、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがある。
【0028】
(メタ)アクリルアミド誘導体の例を挙げると、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(5-ヒドロキシペンチル)(メタ)アクリルアミド、N-(6-ヒドロキシヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N-(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N-〔2-(2-オキソ-1-イミダゾリジニル)エチル〕(メタ)アクリルアミド、2-アクリロイルアミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸などがある。
【0029】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の例を挙げると、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの如き、分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの如き、分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体などがある。
【0030】
(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する単量体は、以上説明した式(II)で示される(メタ)アクリル酸エステル、及び/又は極性官能基を有する単量体、極性官能基を有しない単量体(II)以外の単量体を2種類以上混合したものであってもよい。
【0031】
粘着剤に含有される樹脂のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwについても特に限定されるものではないが、Mwが50万~200万の範囲にあるものが好ましく、50万~180万の範囲にあるものがより好ましい。標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が50万以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性も向上する傾向にあることから好ましい。また、この重量平均分子量が200万以下であると、その粘着剤層に貼合される樹脂フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白ヌケや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnで表される分子量分布は、特に限定されないが、例えば、3~15程度の範囲にあることが好ましい。
【0032】
粘着剤に含有される樹脂は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法など、公知の各種方法によって製造することができる。樹脂の製造においては重合開始剤を用いてもよくその添加量は樹脂の製造に用いられる全ての単量体の合計100質量部に対して、0.001~5質量部程度使用される。
【0033】
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤などが用いられる。光重合開始剤として、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトンなどを挙げることができる。熱重合開始剤として、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、及び2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)の如きアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、及び(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドの如き有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過酸化水素の如き無機過酸化物などを挙げることができる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども、重合開始剤として使用しうる。
【0034】
(メタ)アクリル樹脂(A)の製造方法としては、上に示した方法の中でも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法の具体例を挙げて説明すると、所望の単量体及び有機溶媒を混合し、窒素雰囲気下にて、熱重合開始剤を添加して、40~90℃程度、好ましくは50~80℃程度にて3~15時間程度撹拌する方法を挙げることができる。また、反応を制御するために、単量体や熱重合開始剤を重合中に連続的又は間歇的に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエンやキシレンの如き芳香族炭化水素類;酢酸エチルや酢酸ブチルの如きエステル類;プロピルアルコールやイソプロピルアルコールの如き脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンの如きケトン類などを用いることができる。
【0035】
[イオン性化合物]
本発明における粘着剤付き樹脂フィルムを構成する粘着剤は、粘着剤層に帯電防止性を付与するための帯電防止剤であるイオン性化合物を含有する。
【0036】
本発明の一実施態様において、かかるイオン性化合物は、60℃の水に対する溶解度が0.4g/100g以下、好ましくは0.35g/100g以下、さらに好ましくは0.32g/100g以下であり、通常は0.001g/100g以上である。粘着剤層に含有されるイオン性化合物の60℃の水に対する溶解度が上記上限値以下であると、粘着剤の帯電防止機能を高めることができる。このようなイオン性化合物としては、例えば式(I)で示されるピリジニウム塩が挙げられる。本発明において溶解度とは、60℃の水100gに対するイオン性化合物の溶解度(g)を意味する。
なお、本発明の別の実施態様においては、樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層とを有する粘着剤付き樹脂フィルムであって、上記粘着剤層は、樹脂及び下式(I)により表されるピリジニウム塩であるイオン性化合物を含有する粘着剤であって、上記樹脂フィルムが特定の最大変化量を有する粘着剤付き樹脂フィルムも提供される。
【0037】
式(I)で示されるピリジニウム塩は化学的に安定な塩である。高い帯電防止性が得られる観点から、前記ピリジニウム塩の融点が30℃以上であることが好ましい。一方で、樹脂との相溶性が良好である観点から、ピリジニウム塩は、好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは50℃以下、さらにより好ましくは50℃未満の融点を有する。
【0038】
また前記式(I)で示されるピリジニウム塩のカチオン成分であるピリジニウムカチオンは、粘着剤層を介してガラスに貼合された場合の耐久性及び粘着剤中での相溶性の観点から、式(I)中のRが炭素数5~14の直鎖アルキル基又は炭素数7~13のアラルキル基、例えば炭素数7~10の直鎖アルキル基又は炭素数7~10のアラルキル基であるものを用いる。このカチオン成分の例として、具体的には以下に掲げるものが挙げられる。
【0039】
N-ペンチルピリジニウムイオン
N-ヘキシルピリジニウムイオン
N-ヘプチルピリジニウムイオン
N-オクチルピリジニウムイオン
N-ノニルピリジニウムイオン
N-デシルピリジニウムイオン
N-ドデシルピリジニウムイオン
N-トリデシルピリジニウムイオン
N-テトラデシルピリジニウムイオン
N-オクチル-2-メチルピリジニウムイオン
N-オクチル-3-メチルピリジニウムイオン
N-オクチル-4-メチルピリジニウムイオン
N-ノニル-4-メチルピリジニウムイオン
N-デシル-4-メチルピリジニウムイオン
N-ドデシル-4-メチルピリジニウムイオン
N-トリデシル-4-メチルピリジニウムイオン
N-テトラデシル-4-メチルピリジニウムイオン
N-ベンジルピリジニウムイオン
N-フェネチルピリジニウムイオン
N-ベンジル-2-メチルピリジニウムイオン
N-ベンジル-2-メチルピリジニウムイオン
N-ベンジル-3-メチルピリジニウムイオン
N-ベンジル-4-メチルピリジニウムイオン
【0040】
式(I)で示されるピリジニウム塩のRの炭素数が4以下であると、粘着剤の被着体として用いられるイオン透過性の高い樹脂フィルム(例えば、トリアセチルセルロース基材)へのピリジニウム塩の移行が起こり、長期間にわたり安定した帯電防止性を維持することが困難となる。また、Rの炭素数が15以上になると、ピリジニウム塩の結晶性が増大し、粘着剤中でのピリジニウム塩の相溶性が低下する。
【0041】
式(I)で示されるピリジニウム塩には、上記のカチオン成分及びアニオン成分であるビス(フルオロスルホニル)イミドイオンの組合せから、適宜選択して用いることができる。その組合せの具体例として、次のようなものが挙げられる。
【0042】
N-ペンチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ヘプチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-オクチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ノニルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ドデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-テトラデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ドデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-テトラデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ベンジルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ベンジル-2-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ベンジル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
【0043】
式(I)より表されるピリジニウム塩は、公知の製法で得ることができる。例えば、下式(III)により表されるアルキルピリジニウムブロマイド(式中、R及びRは先に式(I)で定義したとおりである)と、リチウム塩Li(FSO22Nとをイオン交換反応させ、次に水洗することにより、生成した臭化リチウムを水相に移し、有機相を回収する方法によって、式(I)により表されるピリジニウム塩を製造することができる。式(I)で示されるピリジニウム塩は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記ピリジニウム塩の例は、もちろん上に列挙した化合物に限られるものではない。
【0044】
【化3】
【0045】
本発明において、粘着剤は、粘着剤に含まれる樹脂100質量部に対し、イオン性化合物(例えば、式(I)により表されるピリジニウム塩)を、好ましくは0.05~8質量部、より好ましくは0.1~7質量部、さらに好ましくは0.3~6質量部含有する。本発明において、粘着剤における上記イオン性化合物の含有量が上記下限値以上であると、帯電防止性をさらに向上させることができる。粘着剤における上記イオン性化合物の含有量が上記上限値以下であると、耐久性を保つのが容易であり、またその含有量に応じた帯電防止機能を得ることができるため、経済的に有利であり、さらに過剰の上記イオン性化合物が存在することによる光学フィルムの光学性能の低下を抑制できる。
【0046】
[添加剤]
本発明における粘着剤付き樹脂フィルム中の粘着剤層を構成する粘着剤は、樹脂及び上記イオン性化合物、例えば式(1)により表されるピリジニウム塩の他に、他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、例えば、架橋剤、シラン系化合物、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、有機酸、及び有機酸金属塩などが挙げられる。
【0047】
さらに、この粘着剤に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層の形成後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とするのも有用である。
【0048】
(架橋剤)
粘着剤に含まれ得る架橋剤は、粘着剤に含まれる樹脂を架橋し得る官能基を分子内に少なくとも2個有する化合物である。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、及びアジリジン系化合物などが例示される。
【0049】
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート系化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンの如きポリオールを反応せしめたアダクト体や、イソシアネート系化合物を二量体、三量体等にしたものも、粘着剤に用いられる架橋剤となりうる。2種以上のイソシアネート系化合物を混合して用いることもできる。
【0050】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンなどが挙げられる。2種以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
【0051】
金属キレート系化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムの如き多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物などが挙げられる。
【0052】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子からなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン トリス-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン トリス-β-アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0053】
これらの架橋剤の中でも、イソシアネート系化合物、とりわけ、トリレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、トリレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、キシレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、水添キシリレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、イソホロンジイソシアネート、及び/又はイソホロンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体にしたもの、これらのイソシアネート系化合物の混合物などが、好ましく用いられる。
【0054】
粘着剤における上記架橋剤の含有量は、粘着剤に含まれる樹脂100質量部に対して、通常0.01~5質量部程度であり、好ましくは0.03~2質量部、さらに好ましくは0.1~1.5質量部である。
【0055】
(シラン系化合物)
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを構成する粘着剤は、粘着剤付き樹脂フィルム又は粘着剤付き偏光板を形成した後に、それをガラス基板に貼り合わせる場合において、ガラス基板との密着性を向上させる観点から、シラン系化合物を含有することが好ましい。とりわけ、架橋剤を配合する前の樹脂にシラン系化合物を含有させることが好ましい。
【0056】
シラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。2種以上のシラン系化合物を使用してもよい。
【0057】
シラン系化合物は、シリコーンオリゴマータイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(モノマー)-(モノマー)コポリマーの形式で示すと、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0058】
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーの如き、メルカプトプロピル基含有のコポリマー;
【0059】
メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及びメルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーの如き、メルカプトメチル基含有のコポリマー;
【0060】
3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーの如き、メタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0061】
3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーの如き、アクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0062】
ビニルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及びビニルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーの如き、ビニル基含有のコポリマーなど。
【0063】
これらのシラン系化合物は、多くの場合液体である。粘着剤におけるシラン系化合物の含有量は、粘着剤に含まれる樹脂100質量部に対して、通常0.01~10質量部程度であり、好ましくは0.03~2質量部、さらに好ましくは0.03~1質量部である。
【0064】
<樹脂フィルム>
粘着剤付き樹脂フィルムにおいては、粘着剤層と樹脂フィルムとが直接接触している。すなわち、粘着剤層と樹脂フィルムとが積層されている。
【0065】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを構成する樹脂フィルムは、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレンのようなフッ素化ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体のようなポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6のようなポリアミド;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンのようなビニル重合体;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハンのようなセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル系樹脂;その他、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミドなどから構成される樹脂フィルムが挙げられる。
【0066】
本発明において、樹脂フィルムは各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、可塑剤、滑剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。樹脂フィルムは、公知の方法で製膜及び延伸して製造することができる。
【0067】
本発明において、樹脂フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。樹脂フィルムの厚みが上記下限値以上であると、イオン性化合物を基材中に吸収又は吸着する総量が多くなるために、本発明におけるイオン性化合物、例えばピリジニウム塩を選択する効果が大きくなる。樹脂フィルムの厚みが上記上限値以下であると、樹脂フィルムの粘着剤層と接触する面と反対側の面に偏光子を組み合わせた場合において、樹脂フィルムに移行した場合にイオン性化合物が樹脂フィルムを経由して偏光子まで到達する総量が増えるため、イオン性化合物による偏光子の劣化が発生しやすくなり、本発明によるイオン性化合物の移行抑制の効果が大きくなる。
【0068】
本発明において、樹脂フィルムを、23℃55%RHの大気雰囲気下で、50質量%ヨウ化カリウム水溶液に4.5時間浸漬し、15秒間の水洗を行い、23℃55%RHの暗所にて大気雰囲気下で15時間乾燥させる処理後の、波長355~365nmの光の吸光量の、該処理前に対する最大変化量Dが5%以上、好ましくは8%以上である。上記最大変化量Dが上記下限値以上であると当該樹脂フィルムのイオン透過性が高くなり、種々のイオン性化合物が透過し易くなるものの、本発明におけるイオン性化合物、特にピリジニウム塩のイオン透過性が非常に低いため、帯電防止機能を維持することができ、さらに光学フィルムの光学性能(例えば、偏光性能)に悪影響を与えにくい。なお、上記最大変化量Dは後述する式(3)で定義され、通常50%以下、例えば25%以下である。また、Dは吸光度からも算出できる。
【0069】
このような樹脂フィルムは、一般的なイオン性化合物であるヨウ化カリウムを基材中へ浸透させる能力が高く、同様に、本発明におけるイオン性化合物、例えばピリジニウム塩も基材中に容易に浸透させる。
【0070】
前記方法により定義された、イオン透過性が高い樹脂フィルムの例としては、それぞれ商品名で、富士フイルム(株)製の商品名“ZRD40”や、“ZRE34”が挙げられる。なお、イオン透過性の低い樹脂フィルムの例として、富士フイルム(株)製の商品名“フジタックTD”、“Z-TAC”や“KC4ZDW”、コニカミノルタオプト(株)製の商品名“コニカミノルタTACフィルムKC”や“ゼロタック”などがある。
【0071】
本発明で対象とする樹脂フィルムとして、例えば、偏光フィルム、保護フィルム及び/又は位相差フィルムを含む光学フィルムや、この光学フィルムの粘着剤層とは反対側の面に貼合され、使用時までその表面を保護する表面保護フィルムを挙げることができる。
樹脂フィルムが表面保護フィルムである場合、本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを光学フィルムの表面に貼合し、使用時までその表面を保護する表面保護フィルムとすることができる。この場合、優れた帯電防止機能を発揮し、例えば、光学フィルムを表面保護フィルムとは反対側の粘着剤層を介して液晶セルに貼合した後、その表面保護フィルムを剥がしたときに、発生する静電気を少なくすることができる。
【0072】
<粘着剤の調製及び粘着剤層の形成>
粘着剤を構成する上記の各成分は、溶剤に溶かした状態で混合され、溶液状態とした後、適当な基材上に塗布し、乾燥させて粘着剤層シートとされる。ここで用いる基材は、プラスチックフィルムであるのが一般的であり、その典型的な例として、離型処理が施された剥離フィルムを挙げることができる。剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の各種樹脂からなるフィルムの粘着剤層シートが形成される面に、シリコーン処理の如き離型処理が施されたものなどであることができる。また、樹脂フィルム上に粘着剤を直接塗布し、乾燥させることによって、粘着剤層を形成することもできる。
【0073】
<粘着剤付き樹脂フィルム及び粘着剤付き偏光板>
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方の側に、以上のような粘着剤から構成される粘着剤層シートを設けたものである。こうして粘着剤層シートが樹脂フィルムに貼合された粘着剤付き樹脂フィルムが形成される。本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層とか構成される。また、被着体として用いる樹脂フィルムが偏光フィルムと積層されている場合には、粘着剤付き偏光板が形成される。なお、当該粘着剤層シートを、本明細書では単に「粘着剤層」と称することもある。
【0074】
粘着剤付き偏光板に用いる偏光フィルムとは、偏光子の一方又は両方の側に透明保護フィルム(透明樹脂フィルム)が積層されたものを指す。ここで偏光フィルムの具体例としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性色素が吸着配向しているものが挙げられる。偏光フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常0.5~35μmであるものが使用される。加えて、ここで用いられる樹脂フィルムはゼロ位相差フィルムであっても位相差フィルムであってもよい。なお、ゼロ位相差フィルムとは、正面レタデーションReと厚み方向のレタデーションRthが、ともに-15~15nmと小さく、光学的に等方なフィルムをいい、IPSモードの液晶表示装置に好適に用いられる。位相差フィルムとは、正面レタデーションRと厚み方向のレタデーションRthの、少なくとも一方の位相差値が-15~15nmであるものを指す。
【0075】
なお、正面レタデーションR及び厚み方向のレタデーションRthは下式(1)及び(2)で定義される。
th=〔(nx+ny)/2-nz〕×d (1)
e =(nx-ny)×d (2)
【0076】
式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向(x軸方向)の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向(面内でx軸に直交するy軸方向)の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向(フィルム面に垂直なz軸方向)の屈折率であり、そしてdはフィルムの厚みである。
【0077】
ここで、レタデーション値は、可視光の中心付近である500~650nm程度の範囲で任意の波長における値でありうるが、本明細書では波長590nmにおけるレタデーション値を標準とする。厚み方向のレタデーションRth及び面内のレタデーションReは、市販の各種位相差計を用いて測定することができる。
【0078】
また、本発明においては、粘着剤を、偏光フィルムと樹脂フィルムとの積層体である偏光板上に直接塗布し、乾燥させて粘着剤付き偏光板を提供することもできる。
【0079】
なお、本発明の別の実施態様においては、上記樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の側に設けられた上記粘着剤層とを有する粘着剤付き樹脂フィルムであって、上記粘着剤層は、上記樹脂、及び上記式(1)により表されるピリジニウム塩であるイオン性化合物を含有する粘着剤から構成され、上記樹脂フィルムを、23℃55%RHの大気雰囲気下で、50質量%ヨウ化カリウム水溶液に4.5時間浸漬し、15秒間の水洗を行い、暗所にて15時間乾燥させる処理後の、波長355~365nmの光の吸光量の、該処理前に対する最大変化量が5%以上である、粘着剤付き樹脂フィルムも提供される。
【0080】
<光学積層体>
本発明において、上記の粘着剤付き樹脂フィルム又は粘着剤付き偏光板の粘着剤層側をガラス基板に積層することによって、光学積層体(以下、「本発明の光学積層体」ともいう)を形成することができる。すなわち、本発明の光学積層体は、上記粘着剤付き樹脂フィルム、及び上記粘着剤層側に積層されるガラス基板を含んでなる。粘着剤付き樹脂フィルム又は粘着剤付き偏光板をガラス基板に積層して光学積層体とするには、例えば、上記のようにして得られる粘着剤付き樹脂フィルムから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層面をガラス基板の表面に貼り合わせればよい。ガラス基板としては、例えば、液晶セルのガラス基板、防眩用ガラス、サングラス用ガラスなどを挙げることができる。中でも、液晶セルの前面側(視認側)のガラス基板に粘着剤付き偏光板(上偏光板)を積層し、液晶セルの背面側のガラス基板にもう一つの粘着剤付き偏光板(下偏光板)を積層してなる光学積層体は、液晶表示装置のためのパネル(液晶パネル)として使用できることから好ましい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどがあるが、液晶セルには無アルカリガラスが好適に用いられる。
【0081】
本発明の光学積層体は、湿熱条件下、光学フィルム及びガラス基板の寸法変化に起因する応力を粘着剤層が吸収・緩和するため、局部的な応力集中が軽減され、ガラス基板に対する粘着剤層の浮きや剥れなどを抑制することができる。また、不均一な応力分布に起因する光学的欠陥が防止されることから、白ヌケを抑制することができる。さらに、本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを一度ガラス基板に積層した後に、不具合を解消するために再度剥離する場合、樹脂フィルムを粘着剤とともにガラス基板から剥離しても、剥離後のガラス基板の表面に糊残りや曇りが発生することが少なく、再び、ガラス基板として用いることができ、リワーク性に優れるものとなる。
【0082】
本発明の光学積層体について、いくつかの好適な層構造の例を図1~4に断面模式図で示した。図1に示す例では、樹脂フィルム3の一方の面に粘着剤層20が形成され、粘着剤付き樹脂フィルム5が構成されている。そして、その粘着剤層20の樹脂フィルム3とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0083】
図2に示す例では、偏光子1の一方の面に、表面処理層2を有する第一の樹脂フィルム4をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光子1の他面には、第二の樹脂フィルム3を貼着して、偏光板10が構成されている。偏光板10を構成する第二の樹脂フィルム3の外側には、粘着剤層20を設けて、粘着剤付き偏光板15が構成されている。そして、その粘着剤層20の偏光板10とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0084】
図3に示す例では、偏光子1の一方の面に、表面処理層2を有する樹脂フィルム4をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光子1の樹脂フィルム4と反対側の面には、層間粘着剤6を介して樹脂フィルム7を貼着し、偏光板10が構成されている。偏光板10を構成する樹脂フィルム7の外側には、粘着剤層20を設けて、粘着剤付き偏光板15が構成されている。そして、その粘着剤層20の樹脂フィルム7とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0085】
また、図4に示す例では、偏光子1の一方の面に、表面処理層2を有する第一の樹脂フィルム4をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光子1の他面には、第二の樹脂フィルム3を貼着し、さらに第二の樹脂フィルム3の外側には、層間粘着剤6を介して樹脂フィルム7を貼着し、偏光板10が構成されている。偏光板10を構成する樹脂フィルム7の外側には、粘着剤層20を設けて、粘着剤付き偏光板15が構成されている。そして、その粘着剤層20の樹脂フィルム7とは反対側の面を、ガラス基板である液晶セル30に貼合して、光学積層体40が構成されている。
【0086】
これらの例において、第一の樹脂フィルム4及び第二の樹脂フィルム3は、トリアセチルセルロースフィルムで構成するのが一般的であるが、その他、先に述べた各種透明樹脂フィルムで構成することもできる。また、第一の樹脂フィルム4の表面に形成される表面処理層は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層などであることができる。
これらのうち複数の層を設けることも可能である。
【0087】
図3及び4に示す例のように、偏光板10中に樹脂フィルム7を積層する場合、中小型の液晶表示装置であれば、この樹脂フィルム7の好適な例として、1/4波長板を挙げることができる。この場合は、偏光子1の吸収軸と1/4波長板である樹脂フィルム7の遅相軸とがほぼ45度で交差するように配置するのが一般的であるが、液晶セル30の特性に応じてその角度を45度からある程度ずらすこともある。一方、テレビなどの大型液晶表示装置であれば、液晶セル30の位相差補償や視野角補償を目的に、当該液晶セル30の特性に合わせて各種の位相差値を有する位相差フィルムが用いられる。この場合は、偏光子1の吸収軸と樹脂フィルム7の遅相軸とがほぼ直交又はほぼ平行の関係となるように配置するのが一般的である。樹脂フィルム7を1/4波長板で構成する場合は、一軸又は二軸の延伸フィルムが好適に用いられる。また、樹脂フィルム7を液晶セル30の位相差補償や視野角補償の目的で設ける場合には、一軸又は二軸延伸フィルムのほか、一軸又は二軸延伸に加えて厚み方向にも配向させたフィルム、支持フィルム上に液晶等の位相差発現物質を塗布して配向固定させたフィルムなど、光学補償フィルムと呼ばれるものを、樹脂フィルム7として用いることもできる。
【0088】
同じく図3及び4に示す例のように、偏光板10の構成中で樹脂フィルム7を、層間粘着剤6を介して貼合する場合、その層間粘着剤6には、一般的なアクリル系粘着剤を用いるのが通例であるが、ここに本発明で規定する粘着剤層シートを用いることも、もちろん可能である。先に述べた大型液晶表示装置のように、偏光子1の吸収軸と樹脂フィルム7の遅相軸とがほぼ直交又はほぼ平行の関係となるように配置する場合、偏光板10作製時に偏光子1と樹脂フィルム7とを層間粘着剤6を介して貼合する際にはロール・ツウ・ロール貼合することができる。また、両者の間の再剥離性が要求されない用途においては、図3及び4に示す層間粘着剤6に代えて、一旦接着したら強固に接合し、剥離できなくなる接着剤を用いることも可能である。このような接着剤としては、例えば、水溶液又は水分散液で構成され、溶剤である水を蒸発させることによって接着力を発現する水系接着剤、紫外線照射によって硬化し、接着力を発現する紫外線硬化型接着剤などを挙げることができる。
【0089】
なお、図3及び4に示した、樹脂フィルム7に粘着剤層20が形成されたもの自体も、それ自身で流通させることができ、本発明でいう粘着剤付き樹脂フィルムとなりうる。粘着剤層を位相差フィルム上に形成した粘着剤付き樹脂フィルムは、その粘着剤層をガラス基板である液晶セルに貼合して光学積層体とできるほか、その位相差フィルム側に偏光板を貼合して、別の粘着剤付き樹脂フィルムとすることもできる。
【0090】
図1~4には、粘着剤付き樹脂フィルム5又は粘着剤付き偏光板15を液晶セル30の視認側に配置する場合の例を示すが、本発明に係る粘着剤付き樹脂フィルムは、液晶セルの背面側、すなわちバックライト側に配置することもできる。本発明の粘着剤付き樹脂フィルムを液晶セルの背面側に配置する場合は、図1~4に示した表面処理層2を有する樹脂フィルム4の代わりに、表面処理層を有しない樹脂フィルムを採用し、他は図1~4と同様に構成することができ、粘着剤層20を介して液晶セル30に貼合することができる。この場合、偏光板を構成する樹脂フィルムの外側に、輝度向上フィルム、集光フィルム、拡散フィルムなど、液晶セルの背面側に配置されることが知られている各種光学フィルムを設けることも可能である。
【0091】
以上説明したように、本発明の粘着剤付き樹脂フィルム及び光学積層体は、有機EL表示装置、液晶表示装置に好適に用いることができる。本発明の粘着剤付き樹脂フィルム及び光学積層体から形成される液晶表示装置は、例えば、ノート型、デスクトップ型、PDA(Personal Digital Assistant)などを包含するパーソナルコンピュータ用液晶ディスプレイ、テレビ、車載用ディスプレイ、電子辞書、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子卓上計算機、時計などに用いることができる。
【実施例
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量又は含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0093】
以下の例において、重量平均分子量は、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の“TSKgel XL”を4本と、昭和電工(株)製の“Shodex GPC KF-802”を1本、計5本を直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて、試料濃度5mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した値である。
【0094】
「溶解度」は、60℃の水100gに対するイオン性化合物の溶解度(g)である。当該溶解度は、次の手順に従って求めた。まず、精秤したイオン性化合物300mgと純水2mLとを混合した後、撹拌下に温度60℃で24時間保管した。入手したイオン性化合物が溶媒を含む場合には、減圧蒸留により溶剤を除去して乾固したイオン性化合物を得、これを精秤した。次いで水層の一部(精秤量)をサンプリングし、これをアセトニトリルで適度に希釈した後、得られた測定サンプルに溶解しているイオン性化合物の質量濃度を液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)の絶対検量線法によって定量した。LC/MSの測定条件は次のとおりである。定量結果に基づき、イオン性化合物の溶解度を求めた。なお定量はそれぞれ2回実施し、その平均値を該イオン性化合物の溶解度とした。
【0095】
分析装置 :Agilent Technologies LC/MS装置
1260型/6130型
分離カラム :Kinetex 2.6u C18 100A(3.0×100mm,2.7μm)
移動相 :0.05% TFA添加 水/アセトニトリルの混合溶媒のグラジエント法
移動相の流量 :0.5mL/min.
サンプル注入量 :2.5μL
オーブン温度 :40℃
UV検出波長 :254nm
MS検出条件 :エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
Positive
【0096】
[粘着剤の調製]
以下の各成分を用いて粘着剤を調製した。各成分について説明する。
【0097】
<アクリル樹脂>
[重合例1]
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、溶媒としての酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル69.4部、アクリル酸メチル20.0部、アクリル酸2-(2-フェノキシエトキシ)エチル8.0部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸0.6部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素を追い出しながら、内温を55℃に上げた。その後、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.15部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後に、生成するアクリル樹脂の濃度が30%になるよう、添加速度17.3部/hrで酢酸エチルを連続的に反応容器内へ加えながら、内温54~56℃で12時間保温した。
最後に、アクリル樹脂の濃度が20%となるように酢酸エチルを反応容器に加えた。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが135万、Mw/Mnが5.5であった。このアクリル樹脂は、以下において「アクリル樹脂A」と記載する。
【0098】
<イオン性化合物>
イオン性化合物1: N-ベンジルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(30℃において粉末状)
【0099】
【化4】
【0100】
イオン性化合物2: N-デシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(30℃において粉末状)
【0101】
【化5】
【0102】
イオン性化合物3: N-ノニル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート(30℃において粉末状)
【0103】
【化6】
【0104】
イオン性化合物4: N-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(30℃において粉末状)
【0105】
【化7】
【0106】
イオン性化合物5: N-プロピルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(25℃において液状)
【0107】
【化8】
【0108】
<架橋剤>
コロネート L: トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(樹脂濃度75%)、東ソー(株)製。
【0109】
<シラン系化合物>
KBM-403: グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(液体)、信越化学工業(株)製。
【0110】
重合例1で製造したアクリル樹脂A100部に対し、上記架橋剤を0.5部、シラン系化合物1.5部を混合し、さらに表1に示すイオン性化合物をそれぞれ表1に示す量混合し、樹脂濃度が14%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤をそれぞれ得た。
【0111】
【表1】
【0112】
[実施例1及び2並びに比較例1、2、4及び5]
表1記載の各粘着剤を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“PET 3811”、リンテック(株)製、セパレーターと呼ぶ)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して、シート状の粘着剤層を形成した。次いで、ヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光フィルムの一方の側に、紫外線吸収剤を含む厚み80μmのアクリル系樹脂フィルム[商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製]を、もう一方の面に厚み32μmのトリアセチルセルロース系透明樹脂フィルム(富士フイルム(株)社製、商品名「ZRE34」)を透明樹脂フィルムとして用い貼合した3層構造の偏光板(P1)の、トリアセチルセルロースフィルム面に、上で得たシート状の粘着剤層のセパレーターと反対側の面(粘着剤層面)をラミネーターにより貼り合わせることで、粘着剤付き偏光板を得た。
【0113】
[実施例3及び比較例3]
上記の粘着剤に代えて表1記載の各粘着剤を用いたこと、及びヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光フィルムの一方の側に、紫外線吸収剤を含む厚み80μmのアクリル系樹脂からなるフィルム[商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製]を、もう一方の面に厚み42μmのトリアセチルセルロース系透明樹脂フィルム(富士フイルム(株)社製、商品名「ZRD40」)を透明樹脂フィルムとして用い貼合した3層構造の偏光板(P2)を偏光板(P1)に代えて使用したこと以外は、実施例1と同一の方法により粘着剤付き偏光板を得た。
【0114】
[参考例1及び2]
上記の粘着剤に代えて表1記載の各粘着剤を用いたこと、及びヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光フィルムの一方の側に、紫外線吸収剤を含む厚み80μmのアクリル系樹脂からなるフィルム[商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製]を、もう一方の面に厚み41μmのトリアセチルセルロース系透明樹脂フィルム(コニカミノルタ(株)社製、商品名「KC4CR」)を透明樹脂フィルムとして用い貼合した3層構造の偏光板(P3)を偏光板(P1)に代えて使用したこと以外は、実施例1と同一の方法により粘着剤付き偏光板を得た。
【0115】
[参考例3]
上記の粘着剤に代えて表1記載の各粘着剤を用いたこと、及びヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光フィルムの一方の側に、紫外線吸収剤を含む厚み80μmのアクリル系樹脂からなるフィルム[商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製]を、もう一方の面に厚み53μmのシクロオレフィン系透明樹脂フィルム(日本ゼオン(株)社製、商品名「ZEONOR」)を透明樹脂フィルムとして用い貼合した3層構造の偏光板(P4)を偏光板(P1)に代えて使用したこと以外は、実施例1と同一の方法により粘着剤付き偏光板を得た。
【0116】
[透明樹脂フィルムのイオン透過性評価]
上記粘着剤付き偏光板の作製に使用した粘着剤の被着体である各透明樹脂フィルムのイオン透過性を次の手順で評価した。
【0117】
透明樹脂フィルムを4cm×4cmの正方形状に切り出して、紫外可視分光光度計(島津製作所(株)製、UV-2450)を用いて透過率測定を実施した。この際の波長355~365nmにおける透過率の最小値をA[%]とした。測定後の透明樹脂フィルム片を、23℃55%RHの大気雰囲気下で、50質量%ヨウ化カリウム水溶液に4.5時間浸漬した後取り出し、流水で15秒水洗したのちに15時間暗室で風乾させ、紫外可視分光光度計を用いて測定した。この際の波長355~365nmにおける透過率の最小値をA4.5[%]とした。
【0118】
透明樹脂フィルムのイオン透過性を示す指標として、フィルムをヨウ化カリウム水溶液に浸漬させる前後での吸光量の最大変化量(D)を下式(3)の通り定義した。
吸光量の最大変化量D[%]=A-A4.5 (3)
本検討で使用したZRE34はD=22%、ZRD40はD=15%であった。これに対して、KC4CR及びZEONORはD<5%であった。
【0119】
[粘着剤付き偏光板の帯電防止性評価]
各実施例、比較例及び参考例において得られた粘着剤付き偏光板のセパレーターをそれぞれ剥離し、粘着剤の表面抵抗値を表面固有抵抗測定装置〔三菱化学(株)製の“Hirest-up MCP-HT450”(商品名)〕にて測定し、帯電防止性を評価した。
評価は粘着剤付き偏光板作製後、温度23℃、相対湿度65%の条件での養生1日後及び14日後に実施した。良好な帯電防止性を長期間にわたり持続させるためには、養生1日後の表面抵抗値(Rs)と養生14日後の表面抵抗値(Rs14)との差が小さいことが好ましい。具体的には、帯電防止性の長期安定性の指標として養生14日後の表面抵抗値に対する養生1日後の表面抵抗値の比を表面抵抗値変化率(E)として下式(4)の通り規定した。
表面抵抗値変化率E[%]=Rs14/Rs×100 (4)
結果を表2にまとめた。
【0120】
【表2】
【0121】
[光学積層体の作製及び耐熱耐久性試験]
作製した粘着剤付き偏光板からセパレーターを剥がした後、その粘着剤層側を液晶セル用ガラス基板〔コーニング社製の“Eagle XG”(商品名)〕の一方の側に貼着して光学積層体をそれぞれ作製した。この光学積層体に対し、温度80℃の乾燥条件下で500時間保管する耐熱耐久性試験を行い、試験後の光学積層体を目視で観察した。試験後に光学積層体のガラス基板からの浮き及び剥がれの程度、すなわち光学積層体の端部から光学積層体の剥離が生じた位置までの距離を、ルーペを用いて計測した。
【0122】
その結果、実施例1~3、比較例1~5及び参考例1~2で得られた粘着剤付き偏光板を用いて作製した光学積層体では、浮き、剥がれ及び発泡等の外観変化が観察されなかった。一方、参考例3においては、浮き、剥がれ及び発泡等の外観変化がやや目立った。
【0123】
上記より明らかな通り、本発明で規定するイオン性化合物(イオン性化合物1及び2)を含有する粘着剤を用いた実施例1及び2は、イオン性化合物の60℃の水に対する溶解度が本発明において規定する範囲外であるイオン性化合物3~5を配合した比較例1、2、4及び5に比べ、Dが5%以上でイオン透過性が高いトリアセチルセルロース基材を被着体とした場合においてEの値が小さく、安定した帯電防止性を長期に亘り発現可能であることが分かる。
【0124】
また、実施例3及び比較例3の比較から、DがZRE34よりも小さいZRD40においても、本発明において規定するイオン性化合物を含有する粘着剤を使用した場合においてE値を低く抑えることが可能であり、イオン透過性がさらに高い樹脂フィルムを被着体として用いた場合であっても、帯電防止性を長期間維持可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の粘着剤付き樹脂フィルムは、イオン透過性が高い樹脂フィルムを被着体とした場合であっても長期間にわたり安定した帯電防止性が付与される。さらに、粘着剤層を介してガラスに貼合された場合においても優れた耐久性を有する。この粘着剤付き樹脂フィルム及び粘着剤付き偏光板は、ガラス基材への貼着により液晶表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0126】
1 偏光子
2 表面処理層
3 (第二の)樹脂フィルム
4 第一の樹脂フィルム
5 粘着剤付き樹脂フィルム
6 層間粘着剤
7 樹脂フィルム
10 偏光板
15 粘着剤付き偏光板
20 粘着剤層
30 液晶セル(ガラス基板)
40 光学積層体
図1
図2
図3
図4