IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許7158361塗料添加剤、塗料組成物、及びコーティング層
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】塗料添加剤、塗料組成物、及びコーティング層
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20221014BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221014BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20221014BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/65
C09D5/16
C08L83/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019196466
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070719
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智幸
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080275(JP,A)
【文献】特表2010-525131(JP,A)
【文献】特開2010-013591(JP,A)
【文献】特開平06-322294(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029966(WO,A1)
【文献】特開2001-039819(JP,A)
【文献】特開2017-088808(JP,A)
【文献】特開2004-250699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 7/65
C09D 5/16
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均組成式(1)R SiO(4―a―b―c)/2で表され、重量平均分子量が500~100,000であるシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンを含むものであることを特徴とする塗料添加剤。
((1)式中のRは炭素数1~30のアルキル基、アリール基、アラルキル基あるいは一般式(2)-C2m-O-(CO)(CO)で表される有機基から選択される同種または異種の有機基であり、Rは一般式(3)-C2m-O-(CO)f(CO)-Rで表される基であり、Rは下記一般式(4)
【化1】
で表されるオルガノシロキサンであって、Rは炭素数4~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは水素原子若しくは炭素数1~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは炭素数1~30の炭化水素基であり、前記一般式(4)中のRは前記式(1)中のRと同じである。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5であり、d、eはそれぞれ0≦d≦50、0≦e≦50の整数であり、f、gはそれぞれ2≦f≦200、0≦g≦200、かつf+gが3~200の整数である。また、mは0≦m≦10の整数、hは0≦h≦500の整数であり、nは1≦n≦5の整数である。)
【請求項2】
さらに溶剤を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の塗料添加剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の塗料添加剤を含むものであることを特徴とする塗料組成物。
【請求項4】
ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアルキレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルならびに上記樹脂のアロイからなる群から選択される樹脂を含むものであることを特徴とする請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記樹脂がウレタン樹脂またはアクリル樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の塗料組成物。
【請求項6】
防汚塗料用であることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の塗料組成物から形成されたものであることを特徴とするコーティング層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンを含む塗料添加剤に関する。また、該塗料添加剤を含んだ塗料組成物およびコーティング層に関し、更に詳述すると、汚れ防止性能をもった塗料組成物およびコーティング層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話、パソコン、テレビ、プラズマディスプレイ等の電化製品、自動車、電車等の輸送機器、また各種日常品に至るまで、様々な用途において汚れの防止を目的に塗料によるコーティングがなされている。
【0003】
汚れ防止性に優れた塗料としては、一般的に分子中にフッ素を含む添加剤を用いた組成物(特許文献1)が知られているが、材料が高価である上に、環境問題の観点からフッ素不含有の添加剤が求められている。
【0004】
フッ素不含有の塗料添加剤としては、ポリエーテル変性シリコーンが表面のレベリング性や消泡性等を目的に、塗料添加剤として広く用いられている(特許文献2)。しかしながら、優れた汚れ防止性能を付与するポリエーテル変性シリコーンは知られていない。
【0005】
一方、乳化特性の向上を目的とした化粧料用のポリエーテル変性シリコーンとして、ポリオキシアルキレン化合物とシリコーン化合物をオルガノハイドロジェンポリシロキサンに付加反応させたシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(特許文献3)が知られているが、塗料への応用については全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-070683号公報
【文献】特開2013-166830号公報
【文献】特開2001-039819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、環境負荷が少なく、優れた防汚性能を付与する塗料添加剤ならびに塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明では、平均組成式(1)R SiO(4―a―b―c)/2で表され、重量平均分子量が500~100,000であるシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンを含むものである塗料添加剤を提供する。
((1)式中のRは炭素数1~30のアルキル基、アリール基、アラルキル基あるいは一般式(2)-C2m-O-(CO)(CO)で表される有機基から選択される同種または異種の有機基であり、Rは一般式(3)-C2m-O-(CO)f(CO)-Rで表される基であり、Rは下記一般式(4)
【化1】
で表されるオルガノシロキサンであって、Rは炭素数4~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは水素原子若しくは炭素数1~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは炭素数1~30の炭化水素基であり、前記一般式(4)中のRは前記式(1)中のRと同じである。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5であり、d、eはそれぞれ0≦d≦50、0≦e≦50の整数であり、f、gはそれぞれ2≦f≦200、0≦g≦200、かつf+gが3~200の整数である。また、mは0≦m≦10の整数、hは0≦h≦500の整数であり、nは1≦n≦5の整数である。)
【0009】
このようなものであれば環境負荷が少なく、優れた防汚性能を付与する塗料添加剤とすることができる。
【0010】
また、さらに溶剤を含むものであることが好ましい。
【0011】
このようなものであれば、より作業性に優れた塗料添加剤とすることができる。
【0012】
また、本発明では、上記の塗料添加剤を含むものである塗料組成物を提供する。
【0013】
このようなものであれば環境負荷が少なく、優れた防汚性能を付与する塗料添加剤を含む塗料組成物とすることができる。
【0014】
また、本発明の塗料組成物は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアルキレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルならびに上記樹脂のアロイからなる群から選択される樹脂を含むものであることが好ましい。
【0015】
本発明の塗料組成物には、このように種々の樹脂を適用することができる。
【0016】
このとき、前記樹脂がウレタン樹脂またはアクリル樹脂であることが好ましい。
【0017】
これらの樹脂は、シロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンを含む塗料添加剤との相溶性が良いため好ましい。
【0018】
また、本発明の塗料組成物は、防汚塗料用とすることが好ましい。
【0019】
本発明の塗料組成物は、消泡性やレベリング性等の種々の塗料性能を損なうことなく、良好な防汚性を発揮することができる。
【0020】
また、本発明では、上記の塗料組成物から形成されたものであるコーティング層を提供する。
【0021】
本発明のコーティング層は、種々の基材に適用することができ、良好な防汚性を発揮する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンを含む塗料添加剤を用いることで、環境負荷が少なく、防汚性に優れた塗料組成物ならびにコーティング層を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述のように、環境負荷が少なく、優れた防汚性能を付与する塗料添加剤ならびに塗料組成物の開発が求められていた。
【0024】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、シロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンが優れた防汚性能を塗料に付与することを見出し、本発明を完成した。
【0025】
即ち、本発明は、平均組成式(1)R SiO(4―a―b―c)/2で表され、重量平均分子量が500~100,000であるシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンを含むものである塗料添加剤である。
((1)式中のRは炭素数1~30のアルキル基、アリール基、アラルキル基あるいは一般式(2)-C2m-O-(CO)(CO)で表される有機基から選択される同種または異種の有機基であり、Rは一般式(3)-C2m-O-(CO)f(CO)-Rで表される基であり、Rは下記一般式(4)
【化2】
で表されるオルガノシロキサンであって、Rは炭素数4~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは水素原子若しくは炭素数1~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは炭素数1~30の炭化水素基であり、前記一般式(4)中のRは前記式(1)中のRと同じである。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5であり、d、eはそれぞれ0≦d≦50、0≦e≦50の整数であり、f、gはそれぞれ2≦f≦200、0≦g≦200、かつf+gが3~200の整数である。また、mは0≦m≦10の整数、hは0≦h≦500の整数であり、nは1≦n≦5の整数である。)
【0026】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
<塗料添加剤>
本発明の塗料添加剤に含まれるシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは、平均組成式(1)R SiO(4―a―b―c)/2で表される。
((1)式中のRは炭素数1~30のアルキル基、アリール基、アラルキル基あるいは一般式(2)-C2m-O-(CO)(CO)で表される有機基から選択される同種または異種の有機基であり、Rは一般式(3)-C2m-O-(CO)f(CO)-Rで表される基であり、Rは下記一般式(4)
【化3】
で表されるオルガノシロキサンであって、Rは炭素数4~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは水素原子若しくは炭素数1~30の炭化水素基又はR-(CO)-で示される有機基、Rは炭素数1~30の炭化水素基であり、前記一般式(4)中のRは前記式(1)中のRと同じである。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5であり、d、eはそれぞれ0≦d≦50、0≦e≦50の整数であり、f、gはそれぞれ2≦f≦200、0≦g≦200、かつf+gが3~200の整数である。また、mは0≦m≦10の整数、hは0≦h≦500の整数であり、nは1≦n≦5の整数である。)
【0028】
上記式中のRは炭素数1~30のアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、好ましくは1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、フェニル基ならびに2-フェニルプロピル基であり、80%以上がメチル基であることが好ましい。
【0029】
また、Rは更に一般式(2)-C2m-O-(CO)(CO)-Rで表されるアルコキシ基、エステル基、アルケニルエーテル残基あるいはアルケニルエステル残基でも良い。ここで式(2)中のRは炭素数4~30の一価炭化水素基、またはR-(CO)-で示される有機基であり、好ましくは入手のし易さから炭素数4~10の一価炭化水素基またはR-(CO)-で示される有機基であり、Rは炭素数1~30、好ましくは入手のし易さから炭素数1~10の炭化水素基である。
【0030】
d、eおよびmはそれぞれ0≦d≦50の整数、0≦e≦50の整数、0≦m≦10の整数であり、好ましくは入手のし易さから0≦d≦30、0≦e≦30、2≦m≦5の整数である。尚、式(2)中のポリオキシアルキレン部分がエチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位の両方からなる場合には、これら両単位のブロック重合体、及びランダム重合体のいずれでもよい。
【0031】
は一般式(3)-C2m-O-(CO)f(CO)-Rで表される基である。ここで式(3)のRは水素原子若しくは炭素数1~30の一価炭化水素基またはR-(CO)-で示される有機基であり、好ましくは入手のし易さから炭素数1~10の炭化水素基、水素原子またはR-(CO)-で示される有機基であり、Rは前述と同様である。
【0032】
f及びgはそれぞれ2≦f≦200の整数、0≦g≦200の整数、好ましくは入手のし易さから2≦f≦50、0≦g≦50の整数であり、かつf+gが3~200の整数、好ましくは5~100の整数である。f+gが3よりも小さいと防汚性が低下し、200よりも大きいと合成が難しくなる。mは前述と同様である。
【0033】
尚、式(2)と同様に、式(3)中のポリオキシアルキレン部分がエチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位の両方からなる場合には、これら両単位のブロック重合体、及びランダム重合体のいずれでもよい。
【0034】
は下記一般式(4)
【化4】
で表されるオルガノシロキサンであり、Rは前述と同様であり、hは0≦h≦500の整数、好ましくは1≦h≦100の整数であり、nは1≦n≦5の整数、好ましくは入手のし易さから2である。hが500よりも大きいと合成が難しく、また塗料組成物にした際に樹脂との相溶性に問題を生じる場合がある。
【0035】
a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、好ましくは1.0≦a≦2.3であり、0.001≦b≦1.5、好ましくは0.05≦b≦1.0であり、0.001≦c≦1.5、好ましくは0.01≦c≦1.0である。a、bが上記範囲から外れると塗料組成物にした際の相溶性が不安定となる。また、塗料組成物にした際に、cが0.001を下回ると防汚特性が低下し、1.5を上回ると塗料組成物にした際の相溶性が不安定となる。
【0036】
更に、式(1)で表されるシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンのGPCにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量は500~100,000であり、好ましく1,000~80,000であり、特に好ましくは1,500~40,000である。重量平均分子量が500未満であると防汚性が低下し、また100,000より上であると高粘度で取扱い性が悪いだけでなく、塗料組成物にした際に樹脂との相溶性に問題を生じる場合がある。
【0037】
本発明の塗料添加剤に含まれるシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは、公知の方法で得られ、例えば特許文献3(特開2001-039819号公報)に記載されるようにオルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基含有オルガノシロキサン、及びアルケニル基含有ポリオキシアルキレン化合物を白金触媒又はロジウム触媒の存在下に付加反応させることにより容易に合成することができる。
【0038】
また、本発明の塗料添加剤は、上述のシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーン単独からなるものとしてもよいし、上述のシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンに加え、さらに溶剤を含むものであってもよい。溶剤を含むものであれば、本発明の塗料添加剤を塗料組成物に添加する際、撹拌して均一化するのがより容易になる。また、必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。
【0039】
本発明の塗料添加剤に配合できる溶剤としては、例えば、後述の塗料組成物のところで説明するものを使用することができるが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルアセテートが好ましい。また溶剤を含むものである場合、本発明の塗料添加剤は、例えば、上述のシロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンの10~90%溶液、好ましくは10~50%溶液、さらに好ましくは15~30%溶液とすることができる。
【0040】
<塗料組成物>
また、本発明は上述の塗料添加剤を含む塗料組成物、特には防汚塗料用である塗料組成物を提供する。
【0041】
上記シロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(即ち、本発明の塗料添加剤中に含まれる有効成分)の添加量は上記塗料組成物100質量部中0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部である。添加量がこの範囲内であれば、添加量に見合うだけの汚れ防止性が確実に得られるため、コスト的にも有利である。
【0042】
本発明の塗料組成物は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂は特に限定されないが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアルキレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルならびに上記樹脂のアロイからなる群から選択され、シロキサン分岐型ポリエーテル変性シリコーンを含む塗料添加剤との相溶性からウレタン樹脂またはアクリル樹脂が好ましい。
【0043】
上記樹脂の添加量は、本発明の塗料組成物100質量部中10~99.5質量部、好ましくは25~90質量部である。樹脂分が10質量部以上であれば、機械強度が低下するおそれがない。
【0044】
また、本発明の塗料組成物には、必要に応じて硬化剤、希釈溶剤、紫外線吸収剤、重合開始剤、重合禁止剤、中和剤、安定剤(耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤)、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、粘度調整剤、沈降防止剤、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤、ゴム類などの当該業界でよく知られている他の成分を適宜配合しても良い。
【0045】
硬化剤としては、例えば脂肪族ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)(Covestro社製、DESMODUR N 3390 BA/SN)、などが挙げられる。硬化剤の量は特に制限されるものでないが、本発明の塗料組成物100質量部中1~30質量部、好ましくは3~15質量部である。
【0046】
希釈溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルアセテート、エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルコールなどが挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルアセテートが好ましい。希釈溶剤の量は特に制限されるものでないが本発明の塗料組成物100質量部中10~90質量部、好ましくは20~70質量部である。
【0047】
本発明の塗料組成物の粘度(25℃、B型粘度計)は、塗工性・膜厚などを考慮すると、例えば、1~10,000mPa・s、好ましくは10~5,000mPa・sである。
【0048】
<コーティング層>
更に、本発明は上記塗料組成物を用いたコーティング層に関する。
【0049】
本発明のコーティング層を得るための塗料組成物の塗装方法は、一般の塗料に適用される種々の方法が使用できる。すなわち、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、カーテンコート、刷毛塗り、静電塗装、アニオン、カチオン電着塗装、ディッピング等が例示できる。また、塗装後の硬化方法は特に限定されないが、特には0~200℃、より好ましくは40~180℃下での(加熱)硬化が挙げられる。
【0050】
また、上記コーティング層を適用できる基材(被塗物)としては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン樹脂(ABS)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ノリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、およびこれらやポリオレフィン、フィラー、ガラスや炭素繊維などの補強材等のブレンド物(アロイ)等のプラスチック類、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、ガラス、モルタル、石綿セメントスレート、岩石等の無機物、鉄(および合金)、銅(および合金)、アルミニウム(および合金)、マグネシウム(および合金)等の金属類、紙、ビニールクロス等の可燃物等を例示することができる。
【実施例
【0051】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の構造式中において、括弧で示されている繰り返し単位が複数ある場合には、これらの単位はランダムに配列されているものとする。
【0052】
[合成例1]
反応器に、下記構造式(ア)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン250g、下記構造式(あ)のオルガノシロキサンを87g、およびイソプロピルアルコール150gを混合し、塩化白金酸3質量%のイソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて、80℃下にて4時間反応させた。
【化5】
【化6】
【0053】
その後、下記構造式(a)のポリオキシアルキレン化合物110gを添加して、更に3時間反応を継続させた。
【化7】
【0054】
反応終了後、得られた溶液を減圧下で加熱して溶剤を溜去させた後、下記構造式で示さられるオルガノポリシロキサンの化合物(A)を収率95%で得た。得られた化合物(A)の重量平均分子量は6,200であった。
【化8】
【化9】
【化10】
【0055】
[合成例2]
合成例1において、構造式(ア)の代わりに下記構造式(イ)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン250gを用い、上記構造式(あ)のオルガノシロキサンの添加量を62g、上記構造式(a)のポリオキシアルキレン化合物の添加量を125gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして、下記式の化合物(B)を収率95%で得た。得られた化合物(B)の重量平均分子量は8,500であった。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0056】
[実施例1]
ヒドロキシ官能性アクリル樹脂60%溶液(Allnex社製、MACRYNAL SM 510n/60LG)20g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gおよびブチルアセテート10gに、塗料添加剤として合成例1で得た化合物(A)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液0.4gを加えた後、更に硬化剤として脂肪族ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)(Covestro社製、DESMODUR N 3390 BA/SN)4.0gを加え、ディスパーを用いて均一になるまで混合して塗料組成物を作製した。30分間静置させた後、得られた塗料組成物を厚みが30μmになるようにアプリケーターを用いてガラス上にコートし、80℃×40分間にて加熱硬化させることによりコーティング層(1)を形成した。得られたコーティング層(1)については、下記に従って種々の評価を実施した。
【0057】
・消泡性 … ディスパーで塗料組成物を均一混合し、10分間静置した後の塗料組成物の状態を観察した。
○:泡なし。
△:若干細かい泡あり。
×:多量の泡あり。
【0058】
・レベリング性 … ガラス上のコーティング層の表面状態を目視により観察した。
○:平滑な表面状態。
△:表面の所々に細かい痘痕あり。
×:表面に大きな痘痕やうねりあり。
【0059】
・防汚性 … ガラス上のコーティング層にマジックで線を引き、ティッシュで拭き取った際の線の消えやすさを評価した。
○:線が容易に消える。
△:力を入れて繰り返して拭くことにより、線が消える。
×:線が消えない。
【0060】
[実施例2]
実施例1において、化合物(A)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液代わりに、化合物(B)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてコーティング層(2)を形成し、各種特性を評価した。
【0061】
[比較例1]
実施例1において、化合物(A)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を加えなかった以外は実施例1と同様にしてコーティング層(3)を形成し、各種特性を評価した。
【0062】
[比較例2]
実施例1において、化合物(A)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液代わりに、下記式の化合物(C)(重量平均分子量が6,100)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてコーティング層(4)を形成し、各種特性を評価した。
【化15】
【0063】
[比較例3]
実施例1において、化合物(A)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液代わりに、下記式の化合物(D)(重量平均分子量が8,300)の25%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてコーティング層(5)を形成し、各種特性を評価した。
【化16】
【0064】
実施例1、2ならびに比較例1、2、3の結果を下記表1に示す。
【表1】
【0065】
表1に示す通り、本発明の塗料添加剤を用いた塗料組成物から形成されたコーティング層(1)および(2)は消泡性、レベリング性を損なうことなく、良好な防汚性が発現していることが明らかとなった。
【0066】
一方、添加剤を含まない塗料組成物を用いた比較例1では、消泡性、レベリング性、防汚性のいずれにおいても良好な結果を得られなかった。また、比較例2、3においては、ポリエーテル変性シリコーンを含む添加剤を用いた塗料組成物によりコーティング層を形成した。しかし、これらの添加剤は、本発明の塗料添加剤とは異なり上記一般式(4)の構造を有していないことから、なおも良好な防汚性を得ることはできなかった。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。