(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ポリアミドに接着するための熱可塑性ポリウレタンエラストマー
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20221014BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20221014BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L53/02
C08K5/10
(21)【出願番号】P 2019570117
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2018066401
(87)【国際公開番号】W WO2018234377
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 航士
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104177813(CN,A)
【文献】特開2009-209273(JP,A)
【文献】特開2003-119343(JP,A)
【文献】特開2000-351850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/04
C08L 53/02
C08K 5/10
C08L 91/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が
38から68質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
エラストマー組成物の100質量部に対して、1質量部から5質量部の範囲内の潤滑剤(E)をさらに含む、
エラストマー組成物。
【請求項2】
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から
68質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、請求項1に記載のエラストマー組成物
。
【請求項3】
SBS(B)のSEBS(C)に対する質量百分率が30%から70%の範囲内である、請求項
1又は2に記載のエラストマー組成物。
【請求項4】
熱可塑性ポリウレタン(A)のSBS(B)およびSEBS(C)の合計に対する質量比が、45:55から65:35の範囲内である、請求項1から
3のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項5】
熱可塑性ポリウレタン(A)が、少なくとも1種のポリエステルポリオールと2個以上のイソシアネート基を有する少なくとも1種のイソシアネートとの反応の生成物である、請求項1から
4のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項6】
ポリエステルポリオールが、以下の式(I):
【化1】
(式中、
Rは、2から6個の炭素原子を有するアルキレングリコールの残基であり、
R’は、2から12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、または8から14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸の残基であり、
nは1から3の範囲内である)
により表される、請求項
5に記載のエラストマー組成物。
【請求項7】
熱可塑性ポリウレタンが、70から90の範囲内のショアA硬度を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項8】
SBS(B)が0.1g/10分から3.0g/10分の範囲内のMFRを有
し、このMFR値が、ISO1133に従って、方法Aに基づいて、200℃でSBSに5kgの荷重をかけて測定される、請求項1から
7のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項9】
SEBS(C)が、2.0g/10分超~15g/10分の範囲内のMFRを有
し、このMFR値が、ISO1133に従って、方法Aに基づいて、200℃でSEBSに5kgの荷重をかけて測定される、請求項1から
8のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項10】
可塑剤(D)が、
フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリエステルアジペートおよびトリメリット酸エステルからなる群から選択される、請求項1から
9のいずれか一項に記載のエラストマー組成物
。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載のエラストマー組成物を含む、成形品。
【請求項12】
ポリアミドで作製された電動工具を少なくとも部分的に覆う部材として、請求項
11に記載の成形品を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドで作製された物品に対する優れた接着力を有する、熱可塑性ポリウレタン、SBSおよびSEBSを主成分として含むエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性の材料または組成物は、広く異なった範囲の物理的性質を有し、特別の用途のために、材料の性質を考慮に入れて選択される。ポリアミド(PA6およびPA66など)はまた、電気ドリル、電気鋸および釘打ち機などの電動工具の本体として頑丈な部材/品目を製造するために広く使用される。これは、成形されたポリアミドが、剛性の点で優れ、耐熱性、耐化学薬品性、および耐衝撃性であるからである。
【0003】
他方、ポリアミドの工具は、重い工具の振動下におけるドリリング、鋸引きおよび釘打ちを含む機械的作業の間、長時間持ち続けるには、剛直すぎる。
【0004】
柔らかい感触またはクッション性を、工具、特に工具の握り部分に付与するために、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)または熱可塑性スチレンエラストマー(TPS)を、例えば、シートの形態で含む熱可塑性エラストマー(TPE)が、工具またはその握りに被せられる。言い換えれば、TPOまたはTPSは、ポリアミド(例えばPA6)に対するこれらのエラストマーの優れた接着性に基づいて別の層として握り部分に適用される。
【0005】
上記の用途において、TPSは、優れた接着性(結合強度)を有する。しかしながら、TPSは、摩擦に対して十分耐久性でないので、比較的短い使用の期間中に摩耗するか、または損傷する傾向がある。TPOについては、実用的使用については通常十分耐久性であるが、TPOは、しばしば、凸状のおよび/または凹上の部分を含む複雑な形状を有する特にポリアミドの基材に対して優れた結合強度を示さない。TPO層は、ある特定の使用期間中にそのような基材か徐々に剥がれ落ちる。
【0006】
そのうえ、TPOおよびTPSは両方とも、感触(感じ)に関して、電動工具の使用者、例えば、長期間にわたって、工具を毎日使用する職人にとっては、まだ完全に心地よくはない。熱可塑性組成物の接着性および感触(柔らかさ)などの性質を改善するために、特許第5203985号は、従来の可塑剤、シクロヘキサンジカルボン酸アルキルエステルが添加された、スチレンとジエンモノマーのブロックコポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンを含むブレンドを開示している。しかしながら、特許第5203985号における熱可塑性組成物は、硬化された後で、繰り返される使用に対して十分耐久性でなく、容易に摩耗する傾向を示す。
【0007】
ポリアミド物質上の層のための材料として使用され得る他の組成物が、米国特許第8,193,273号で開示されている。米国特許第8,193,273号における組成物は、2種類のエラストマーポリマーを含み、妥当な接着性を示す。しかしながら、この組成物は、配合のために多量の成分および添加剤が必要であり、複雑なブレンドの手順も必要なため、組成物の製造が困難である。さらに、米国特許第8,193,273号の組成物は、流動性が小さいために、使用することができる目的が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5203985号
【文献】米国特許第8,193,273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、本発明の目的は、エラストマー組成物で覆われる品目(「基材」とも称される)に関して、特に、ポリアミドまたはポリアミドをベースとする品目に関して、硬化された後で柔らかいまたは心地よい感触および優れた耐久性を付与するが機械的性質および流動性を付与することがない、改善された結合強度を有するエラストマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らにより、本発明の上記の目的は、
- 熱可塑性ポリウレタン(A)、
- SBS(B)、
- SEBS(C)、および
- 可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、エラストマー組成物によって達成されることが見出された。
【0011】
本発明のエラストマー組成物は、
- 成分(A)として熱可塑性ポリウレタン、
- 成分(B)としてブロックコポリマーSBS、
- 成分(C)としてブロックコポリマーSEBS、および
- 成分(D)として可塑剤
を含み、各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が、1質量部から8質量部の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例で実施された試験を説明するための、試料ドライバーの握り部分にエラストマー組成物を含むドライバーの透視図である。
【
図2】実施例における試験で、握りがどのように把持されたかを示すための、
図1のドライバーの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
さらなる実施形態により、本発明はまた、
- 成分(A)として熱可塑性ポリウレタン、
- 成分(B)としてブロックコポリマーSBS、
- 成分(C)としてブロックコポリマーSEBS、および
- 成分(D)として可塑剤
を含む本発明のエラストマー組成物であって、各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が、38から69質量部の範囲内、好ましくは40から69質量部の範囲内、または38から68質量部の範囲内、好ましくは40から68質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、エラストマー組成物を対象とする。
【0014】
本発明のエラストマー組成物は、エラストマー組成物の100質量部に対して1質量部から5質量部の範囲内の潤滑剤(E)をさらに含むこともできる。
【0015】
本発明による熱可塑性ポリウレタン(A)は、構造成分、例えば、ポリオール、およびイソシアネートから製造された、好ましくは、軟質セグメントおよび硬質セグメントを有する、熱可塑性エラストマーポリウレタン(TPU)である。
【0016】
上記の構造成分は、触媒および/または必要な添加剤の添加により互いに反応させられる。
【0017】
本明細書において、熱可塑性ポリウレタン(A)中の「硬質セグメント」とは:
- 1種または複数のイソシアネート、すなわち、例えば2個以上のイソシアネート基(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-イソシアネート)を有する脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および/または芳香族イソシアネート、より好ましくはジイソシアネート(2個のイソシアネート基を有するイソシアネート)、例えば、オクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、およびブチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)を含む脂肪族ジイソシアネート;1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ならびに/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-および/もしくは2,6-ジイソシアネート、ならびに/またはジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)を含む脂環式イソシアネートに由来する部分;
- ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-、および/もしくは4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-および/もしくは2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニル3,3’-ジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、ならびに/またはフェニレンジイソシアネートを含む芳香族ジイソシアネート;あるいは
- 上記の任意の1種または複数のイソシアネートと鎖延長剤との反応から誘導される部分
を指す。
【0018】
(a)ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)の混合物、ならびに/またはジフェニルメタン4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジイソシアネート(MDI)の混合物からのイソシアネートの選択が好ましく、特にジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0019】
熱可塑性ポリウレタン(A)中の「軟質セグメント」は、平均1.8から2.3個、好ましくは1.9から2.2個、特に2個の官能基を有する以下のポリオールの少なくとも1種に由来する部分を含む。ポリオールが第一級ヒドロキシ基のみを有することがさらに好ましい。
【0020】
ポリオールの特定の例は以下の:
- 直鎖状または分岐状アルキレン鎖を有するポリオール、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、もしくはヘキサンジオールなど、あるいはそれらの混合物;
- ブタンジオール、ペンタンジオール、もしくはヘキサンジオールまたはそれらの混合物、好ましくは、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、またはそれらの混合物をベースとする、ポリカーボネートジオール(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-オール、好ましくはジ-またはトリ-オール、特にジオール);
- ブタンジオールおよびヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオール、およびそれらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物;
- エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコールをベースとするポリエーテルポリオール(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-オール、好ましくはジ-またはトリ-オール、特にジオール);
- (ポリカルボキシレート)をベースとするポリエステルポリオール(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-オール、好ましくはジ-またはトリ-オール、特にジオール)であり、必要であればアルキレン鎖、特に以下の式(I):
【化1】
(式中、
Rは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、特にエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、またはヘキシレングリコールからなる群から選択されるものを含む2から6個の炭素原子を有するアルキレングリコールの残基であり、式(I)中の複数のRは互いに同じであることも異なることもでき;
R’は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカ二酸、ドデカ二酸からなる群から選択されるものを含む2から12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、または、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸からなる群から選択されるものを含む、8から14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸、特にコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびフタル酸の残基であり、
nは、1から3、好ましくは2または3の範囲内である)
により表されるアルキレン鎖と組み合わされる。
【0021】
本発明で使用するための熱可塑性ポリウレタン(A)は、好ましくは、ショアA硬度が、95未満、好ましくは70から95ショアA、より好ましくは75から94ショアAで、分子量(Mw)が700から2500の範囲内、好ましくは、1000から2000の範囲内のものである。
【0022】
本発明で使用するための熱可塑性ポリウレタン(A)の好ましい例は、少なくとも1種のポリエステルポリオールと2個以上のイソシアネート基を有する少なくとも1種のイソシアネートとの反応により得られた生成物、より好ましくはヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-、および2,2’-ジイソシアネートの混合物(H12MDI)、ならびに/またはジフェニルメタン4,4’-、2,4’-および2,2’-ジイソシアネート(MDI)の混合物と式(I)の上記のポリエステルジオールから得られた反応生成物としての熱可塑性エラストマーポリウレタンである。ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)とポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ(エチレンブチレンアジペート)ジオール、およびポリ(ヘキシレンブチレンアジペート)ジオールとの反応により得られた生成物、特にMDIおよびポリ(ブタンアジペート)ジオールから得られた生成物が好ましい。上のポリオールは、800から3000の範囲内に数平均分子量Mnを有するものであってもよい。
【0023】
熱可塑性ポリウレタン(A)は、市販の材料、特に式(I)のポリオールの使用により誘導されたポリウレタン、例えば、BASF SE製のElastollan(商標)シリーズ、例えば、Elastollan S80A、S85A、S90A、C70A,C75A、C80A、C85A,C90A、ET580、ET590、ET680、ET685、ET690などであってもよい。
【0024】
例として、ポリウレタン(A)の合成のための出発原料は、ポリオール成分(例えば式(I)の化合物)およびイソシアネート成分(例えば、2個以上のイソシアネート基を有する上記のイソシアネート)ならびに、好ましくは0.05×103g/molから0.499×103g/molの分子質量を有する鎖延長剤である。触媒および/または補助剤を反応混合物に添加することも可能である。
【0025】
熱可塑性ポリウレタン(A)の製造において、イソシアネート成分のNCO基のポリオール成分の全ヒドロキシル基に対する当量比は、0.95から1.10:1、好ましくは0.97から1.08:1、および特に0.98から1.05:1である。
【0026】
好ましい一実施形態において、イソシアネート、好ましくは上で好ましいと言及したイソシアネートの1種が存在し;別の好ましい実施形態では、複数のイソシアネートが合成のために使用される。
【0027】
熱可塑性ポリウレタン(A)を合成するために好ましい鎖延長剤は、分子質量が50g/molから499g/molで、官能基とも記載される好ましくはイソシアネートに対して2結合系の反応性を有する脂肪族、芳香族、および/または脂環式化合物である。好ましい鎖延長剤は、ジアミンおよび/またはアルカンジオールであり、2から10個の炭素原子を有する、好ましくはアルキレン部分に3から8個の炭素原子を有するアルカンジオール、すなわちジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-、および/またはデカアルキレングリコールがさらに好ましく、第一級ヒドロキシ基のみを有するものがさらに好ましい。エチレン1,2-グリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールが特に好ましく;1,4-ブタンジオールがさらに好ましい。これらの鎖延長剤は、単独でまたは互いに組み合わせて使用することができる。
【0028】
イソシアネート成分のNCO基とポリオール成分中のヒドロキシ基との間の反応を加速する、熱可塑性ポリウレタン(A)を合成するための好ましい触媒は、有機金属化合物、例えば、チタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネート、スズ化合物、好ましくは、カルボン酸の金属化合物、特に好ましくは、スズジアセテート、スズジオクテート、スズジラウレート、またはジアルキルスズ塩などであり、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、またはカルボン酸のビスマス塩、好ましくはビスマスデカノエートおよび/またはビスマス(III)ネオデカノエートがさらに好ましい。
【0029】
特に好ましい触媒は:スズジオクタノエートおよび/またはビスマス(III)ネオデカノエートであり、これらは、個々でも好ましく使用される。
【0030】
触媒の使用に適用され得る好ましい量は、熱可塑性ポリウレタン(A)の製造中のポリオール成分の100質量部当たり0.0001から0.1質量部である。
【0031】
可塑剤(D)および潤滑剤(E)の他に、補助剤または添加剤として挙げることができる例は、表面活性物質、充填剤、難燃剤、核剤、および離型剤、染料および顔料、任意で安定剤、好ましくは、加水分解、光、熱、酸化、もしくは変色に関係して、無機および/もしくは有機充填剤、ならびにポリマー、好ましくはポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、および/もしくはスチレンコポリマー、ならびに/または強化剤である。
【0032】
熱可塑性ポリウレタン(A)は、例えば、反応性押出機を使用して公知の方法により、または、「ワンショット」法もしくはプレポリマー法を使用して、好ましくは「ワンショット」法を使用してベルトプロセスにより、バッチ方式でまたは連続的に好ましくは製造される。「ワンショット」法では、イソシアネート成分およびポリオール成分、ならびに、存在すれば、鎖延長剤、触媒、および/または他の出発原料、追加の物質および/または補助物質が、逐次または同時に互いに混合されて、その後重合反応が直ちに開始する。
【0033】
押出機法でも、イソシアネート成分およびポリオール成分が、押出機中に個別にまたは混合物として導入されて、好ましくは150℃から240℃の温度で反応させられる。その結果生じた熱可塑性ポリウレタンは、押し出され、冷却されてペレット化される。2軸スクリュー押出機を使用することも可能であり、その理由は、2軸スクリュー押出機は、実用的に圧上昇なしに作動して、したがって押出機温度のより精密な調節を可能にするからである。
【0034】
好ましい方法では、主として熱可塑性ポリウレタン(A)の製造のために必要な全ての出発原料は、第1の工程で互いに反応させられて、第2の工程で抗酸化剤などの他の出発原料が製造物と混合される。
【0035】
記載された方法により得られた熱可塑性ポリウレタン(A)は冷却されて、次の作業、例えば、エラストマー組成物を製造するための押出への補完、または射出成形を容易にするために、ペレット化される。
【0036】
本発明のエラストマー組成物は、熱可塑性成分としてSBS(B)およびSEBS(C)を含む。
【0037】
本発明において、SBSは、モノマー(例えばスチレンおよびブタジエン)の二重結合が残存するブロックコポリマーであり、SEBSは、その二重結合が完全に水素化されたコポリマーである。
【0038】
部分的に水素化され得るブタジエン含有率が、20から60質量%、好ましくは30から50質量%であるスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)(B)を使用することが好ましい。これらは、例えば、Asaprene(登録商標)T432,Asaprene(登録商標)T437、Styroflex(登録商標)2G66、Styrolux(登録商標)3G55、Styroclear(登録商標)GH62、Kraton(登録商標)D1101、Kraton(登録商標)G1650、Kraton(登録商標)D1155、Tuftec(登録商標)H1043またはEuropren(登録商標)SOL6414の商品名で市販されている。
【0039】
ブタジエンブロックが完全に水素化されているスチレン-エチレン-ブチレンブロック(SEBS)(C)については、Kraton(登録商標)G grades、Tuftec(登録商標)H1041、Tuftec(登録商標)H1052の商品名で入手可能である。
【0040】
本発明で使用するためのSBSおよびSEBSは、コポリマーであり、それは、(i)Sブロック(単数または複数)を作製するための少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、および(ii)Bブロック(単数または複数)を作製するための少なくとも1種の共役ジエンモノマーを使用することにより製造することができる。SブロックおよびBブロックの各々のためのモノマー(単数または複数)は、1種類のモノマーまたはモノマーの組み合わせであることができる。
【0041】
ビニル芳香族モノマーに由来するSブロックおよび共役ジエンモノマーに由来するBブロックの合計量がコポリマー全体の質量に対して70質量%以上であるSBSおよびSEBSコポリマーが好ましい。
【0042】
SBSコポリマーでは、共役ジエンモノマーに由来するBブロックは、部分的に水素化されて、例えば、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンコポリマー(それはSBBSと称され得る)を生じる。
【0043】
SEBSコポリマーでは、共役ジエンモノマーに由来するBブロックが完全に水素化されると、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマーを生じる。
【0044】
本明細書では、SBSに関する「部分的に水素化される」は、共役ジエンモノマーに由来するブロックが、共役ジエンモノマーに由来するブロックの合計質量に対して少なくとも3質量%および97%未満水素化されていることを意味する。
【0045】
本明細書では、SBSに関する「完全に水素化される」は、共役ジエンモノマーに由来するブロックが、共役ジエンモノマーに由来するブロック(単数または複数)の合計質量に対して、少なくとも97%水素化されていることを意味する。
【0046】
水素化度は、例えば核磁気共鳴(NMR)装置を使用することにより、水素化前および後のブロックコポリマーのNMRスペクトルを比較することにより決定することができる。
【0047】
コポリマーのSブロックを製造するためのビニル芳香族モノマーの例としては、ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノ-エチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニル-ナフタレンおよび/またはビニルアントラセンなどが挙げられる。これらの中で、その結果生じたコポリマーのコストおよび機械的強度の観点からスチレンが好ましい。
【0048】
Bブロック(単数または複数)を製造するためのジエンモノマーの例は、共役ジエンであり、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2,4-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、2,4-オクタジエン、3,5-オクタジエン、1,3-ノナジエン、2,4-ノナジエン、3,5-ノナジエン、1,3-デカジエン、2,4-デカジエン、3,5-デカジエン、および/または1,3-シクロヘキサジエンが挙げられる。そのようなジエンは、単独でまたは2種以上の組み合わせで使用されることもある。これらの中で、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、その理由は、これらのモノマーが、その結果生じたコポリマーの加工性および機械的強度に関して優れているからである。
【0049】
エラストマー組成物について、1種または複数のSBS、および1種または複数のSEBSが使用される。
【0050】
本発明では、SBSおよびSEBSは、直線状または放射状形状のブロックコポリマーの形態で使用され得る。
【0051】
SBSおよびSEBSの直線状のブロックコポリマーは、互いに連結されて直線状の分子配置を形成しているSブロックおよびBブロックで構成されており、それは、従来使用されている方法によって製造することができる。
【0052】
放射状形状のSBSおよびSEBSブロックコポリマーは、中心部分としてカップリング剤を有して、中心部分から広がる多数の直線状ブロックのSBSおよびSEBSコポリマーとカップリングした分岐ブロックポリマーである。
【0053】
上で説明したように、直線状または放射状形状のSBSブロックコポリマーにおいても、共役ジエンモノマーに由来するBブロックが部分的に水素化され、およびSEBSコポリマーでは、共役ジエンモノマーに由来するBブロックが完全に水素化されている。
【0054】
本発明では、直線状形状のブロックコポリマーは、好ましくは、SBSおよびSEBSの各々のために使用される。しかしながら、直線状形状のブロックコポリマーを使用する代わりに、放射状形状のSBSを使用すること、または放射状および直線状形状のSBSおよびSEBSの両方を組み合わせて使用することが可能である。
【0055】
直線状形状のブロックコポリマーのための市販のSBSおよびSEBSの例は、以下のとおりである:
旭化成株式会社により製作されたAsaprene T439(商品名)、Asaprene T436(商品名)およびAsaprene T432(商品名);JSR株式会社により製作されたTR2600(商品名);Kraton Polymers Inc.により製作されたClayton D1118(商品名);Enichem Company (Ltd.)により製作されたSOl T166(商品名);日本ゼオン株式会社により製作されたQuintac 3433N(商品名)およびQuintac 3421(商品名)。
【0056】
これらを、単独でまたは互いに組み合わせ使用することができる。
【0057】
放射状形状のSBSまたはSEBSブロックコポリマーは、以下の式(II)により表される:
(S-B)nY(II)
上の式中、
Nは、2以上の整数、好ましくは3または4であり;
Sは、ビニル芳香族モノマーに由来するSブロックであり;
Bは、共役ジエンモノマーに由来するBブロックであり;および
Yは、カップリング剤である。
【0058】
nが3である式(II)の放射状形状のコポリマーは、3-分岐タイプと称され(カップリング剤から放射状に広がる3個の直線状コポリマーを有する)、およびnが4であるコポリマーは、4-分岐タイプと称される(カップリング剤から放射状に広がる4個の直線状コポリマーを有する)。放射状形状のSBSまたはSEBSコポリマーについては、ブタジエンまたはイソプレンが、Bブロックを製造するためのモノマーとして好ましい。
【0059】
上記のカップリング剤は、多官能性化合物であり、それは、放射状に配置されるように直線状SBSまたはSEBSコポリマーとカップリングさせる。放射状形状のブロックコポリマーを製造するためのカップリング剤に関して特別の制限はない。
【0060】
カップリング剤の例は:
- ハロゲン化されたシランを含むシラン化合物、例えば、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、トリブロモシランおよびテトラブロモシランなど;およびメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランを含むアルコキシシラン;
- テトラクロロスズなどのハロゲン化されたスズを含むスズ化合物;
- アジピン酸ジエチルなどのカルボン酸エステル;およびポリカルボキシレート;
- エポキシ化されたダイズ油などのエポキシ化合物;
- ペンタエリトリトールテトラアクリレートなどのアクリレート;および
- エポキシシランまたはジビニルベンゼンなどのジビニル化合物を含むさらなる化合物
である。
【0061】
放射状形状のコポリマーの例は、旭化成株式会社から入手できるHJ10、HJ12、HJ13、HJ15である。
【0062】
SBS(B)は、0.1g/10分から3.0g/10分、好ましくは0.5から2.5g/10分の溶融流比(MFR)を有すること、およびSEBS(C)は、2.0g/10分から15g/10分、好ましくは3.0g/10分から8g/10分の溶融流比(MFR)を有することが好ましい。
【0063】
上記のMFR値は、ISO1133に従って、方法Aに基づいて、200℃で検体(SBSまたはSEBS)に5kgの荷重をかけて測定される。
【0064】
さらに、本発明のエラストマー組成物は、第1にエラストマー組成物(硬化された後で)に柔軟性、柔らかいおよび心地よい感触を付与するために、および第2に硬化される前の組成物の流動性を制御するために、例えば、射出成形手順のために十分な流動性を獲得するために、可塑剤(D)および潤滑剤(E)を含む。
【0065】
可塑剤(E)は、配合に応じて省くことができる。しかしながら、本発明のエラストマー組成物、特に硬化された組成物のテキスチャーの快適性を改善するために、可塑剤(D)および潤滑剤(E)の両方を添加することが通常勧められる(主として、SBS(B)およびSEBS(C)の柔軟性を向上させるために使用される)。
【0066】
本発明では、可塑剤は、主として熱可塑性ポリウレタン(A)の柔軟性を向上させるための添加剤であり、潤滑剤(E)は、主としてSBS(B)およびSEBS(C)の柔軟性を向上させるための添加剤である。
【0067】
可塑剤(D)の例としては、任意の公知の物質が挙げられるが、しかしながら、一般的に本発明では、直鎖状もしくは分岐状炭化水素をベースとするエステルおよび/もしくはエーテル構造、ならびに/または1個もしくは複数の芳香族基を有する可塑剤が推薦できる。可塑剤は、直鎖状または分岐状炭化水素をベースとするエステル、エーテル、およびエーテルエステル、ならびに芳香族炭化水素をベースとするエステルおよびエーテルからなる群から選択することができる。
【0068】
特定の例は、フタル酸エステル、例えば、ジイソデシルフタレート、2-ブトキシエチルフタレート、2-エチルヘキシルフタレートおよびジイソノニルフタレートなど;アジピン酸エステル、例えば、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(2-ブトキシエチル)アジペート、ジ-n-アルキルアジペートなど、エーテル部分を含むアジピン酸エステル(アジピン酸エーテルエステル)、例えば、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)]アジペート;ポリエステルアジペート;トリメリット酸エステル、例えば、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテートなど、安息香酸グリコールエステル、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエートおよびジプロピレングリコールジベンゾエートなど、好ましくは上記のフタル酸エステル、およびアジピン酸エーテルエステルである。
【0069】
エラストマーポリウレタン(A)の硬度を低下させることで硬化されたエラストマー組成物の柔らかさを改善するであろう、エラストマーポリウレタン(A)に対する優れた含浸比を有する可塑剤を使用することがよいと考えられる。
【0070】
熱可塑性ポリウレタン(A)に関して、可塑剤の高含浸比を達成するために、およびそれ故、適切な柔軟性および柔らかさを改善するために、フタル酸エステルおよびアジピン酸エーテルエステルは特に重要である。
【0071】
潤滑剤(E)の例は、パラフィン油またはナフテン系油として、エーテル、例えば、ジベンジルエーテル、チオエーテルなど;エステル、例えば、フタレート、アジペート、セバケート、ホスフェート、またはチオエステル、フタル酸もしくはアジピン酸およびプロパンジオールおよび/もしくはブタンジオールをベースとするポリエステルなど、または塩素化されたパラフィン、最も好ましくはパラフィン油を含む鉱物油および合成油である。
【0072】
10から30mm2/秒の範囲内の動的粘度を有する潤滑剤(E)を使用することが好ましい。
【0073】
パラフィン油、例えば、日本サン石油株式会社からの「SUNPURE LW1500」は、本発明で好ましく使用される。
【0074】
熱可塑性ポリウレタン(A)の量は、エラストマー組成物の100質量部(合計質量)に対して、40から70質量部の範囲内、好ましくは40から65質量部の範囲内、より好ましくは50から60質量部の範囲内である。
【0075】
熱可塑性ポリウレタン(A)の上記の質量比は、基材に関して組成物の適切な結合強度を有するのに適しており、組成物が柔軟性を有することを可能にする。
【0076】
SBS(B)およびSEBS(C)の合計量は、エラストマー組成物の100質量部に対して、30から50質量部の範囲内、好ましくは35から45質量部の範囲内である。
【0077】
さらに、SBS(B)のSEBS(C)に対する質量百分率は、30%から70%の範囲内、より好ましくは40%から60%の範囲内、最も好ましくは45から55%である。すなわち、SBS(B)のSEBS(C)に対する質量百分率は、30質量%から70質量%の範囲内、より好ましくは40質量%から60質量%の範囲内、最も好ましくは45質量%から55質量%である。その妥当性が組成物中の材料の選択に依存して変化するこれらの比は、エラストマー組成物の硬度、引っ張りモジュラス、弾性、柔軟性および/または密度の適切なバランスにより、特に硬度と100%引っ張りモジュラスとの間の優れたバランスにより達成することができる十分な接着力および心地よい感触を得るために好ましい。
【0078】
熱可塑性ポリウレタン(A)とSBS(B)との質量比を、2から6:1(A:B)の範囲内であるように選択することがさらに好ましい。
【0079】
さらに、硬度ショアAなどの機械的強度またはその結果生じるエラストマー組成物および材料の流動性のバランスを考慮に入れて、エラストマー組成物は、熱可塑性ポリウレタン(A)のSBS(B)およびSEBS(C)の合計に対する質量比が、45:55から65:35、好ましくは50:50から65:35の範囲内であってもよい。
【0080】
ショア硬度値は、本発明における熱可塑性ポリウレタン(A)およびそれを含むエラストマー組成物の両方に関して、DIN 53503に従って決定される。
【0081】
上のことに加えて、可塑剤(D)および潤滑剤(E)(存在する場合)の合計量は、エラストマー組成物から得られる金型に十分な柔軟性および柔らかい感触を付与するために、エラストマー組成物の合計質量に対して、1質量部から8質量部の範囲内、好ましくは2から12質量部の範囲内、およびより好ましくは5から10質量部の範囲内である。別の実施形態によれば、可塑剤(D)および潤滑剤(E)の合計量は、エラストマー組成物の合計質量に対して、1質量部から13質量部の範囲内である。
【0082】
成分(A)から(E)に加えて、本発明のエラストマー組成物は、配合に応じて、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、Rubber、4.Chemicals and Additives、3.Antidegradants、4.4 pigments、5.Plasticizers、6.processingadditives、17~28頁および41~51頁、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co KGaA、Weinheim、2007年で教示されているもののようなさらなる添加剤を含有することもできる。
【0083】
さらなるプロセシング添加剤、例えば、2,2’-ジベンゾアミドジフェニルジスルフィドまたは亜鉛石鹸などのペプタイザー、ホモジナイザーおよび分散剤、例えば、脂肪酸エステル、金属石鹸、脂肪アルコールもしくは脂肪酸など、粘着性付与剤、例えば、フェノール性樹脂もしくは炭化水素樹脂など、または離型剤、例えば、ポリエステル、ポリエーテルもしくはシリコーン油系エマルションが添加されてもよい。劣化防止剤として一般的に知られているゴム組成物のための劣化防止剤は、抗酸化剤として適用することができる;例えば、窒素で置換されたフェニレンジアミンなど、ジアリールアミン、N,N-ジ-ナフチル-フェニレンジアミン、スチレン化されたフェノール、2,4,6置換モノフェノール、二官能性フェノールまたはワックスなど。
【0084】
熱可塑性エラストマー(A)、SBS(B)、SEBS(C)、および可塑剤(D)ならびに、適用可能である場合には、潤滑油(E)は、配合に応じて必要な場合には添加剤を添加して、装置、例えば、押出成形用の装置中で、熱および/もしくは圧力を適用して、混合装置を使用して、互いに、全て一緒に、別個に分けて、または逐次的に混合され、溶融物として均質化され、固化ペレット、粒子、粉末、顆粒状に成形され、または凝集塊および他の状態、例えば、団粒の形態であってもよい。
【0085】
このように配合された本発明の組成物は、所望の物理的性質を獲得するために、例えば、1から20時間の熟成を含む後処理にかけることができる。
【0086】
本発明によるエラストマー組成物は、コーティング、制動要素、折りたたみ蛇腹、フォイル、繊維、鋳物、建築および輸送のための床板、不織布、ガスケット、ロール、靴底、ホース、ケーブル、ケーブルの差し込み、ケーブルの鎧装、クッション、ラミネート、プロファイル、ベルト、サドル、配合物の追加の発泡からの発泡体、プラグコネクター、ドラッグケーブル、ソーラーモジュール、自動車の外装材、ワイパーブレード、熱可塑性材料の改質剤、すなわち別の材料の性質に影響する物質として使用されるように、押し出されおよび/または射出成形され得ることが好ましい。これらの使用の各々は、それ自体、用途ともいわれる好ましい実施形態である。用途の好ましい群は、フィルム、シート、ボード、コーティングまたはポリウレタンをベースとする材料以外のプラスチック、特にポリアミドで作製された製品に適用された層(外部製品)である。
【0087】
成形部品は、好ましくは、射出成形、トラスファー成形、押出、またはキャスティングにより、好ましくは、押出および射出成形により製造される。
【0088】
本発明の基材またはエラストマー組成物で覆われるべき品目(例えば、フィルム、シート、ボード、コーティングまたは層の形態で)として使用されるポリアミドは、以下の材料を含む公知のポリアミドである:
PA26(エチレンジアミン、アジピン酸)、
PA210(エチレンジアミン、セバシン酸)、
PA46(テトラメチレンジアミン、アジピン酸)、
PA66(ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸)、
PA69(ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸)、
PA610(ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸)、
PA612(ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸)、
PA613(ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸)、
PA1212(1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸)、
PA1313(1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸)、
PA MXD6(m-キシリレンジアミン、アジピン酸)、
PA TMDT(トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸)、
PA4(ピロリドン)、
PA6(ε-カプロラクタム)、
PA7(エタノラクタム)、
PA8(カプリルラクタム)、
PA9(9-アミノノナン酸)、および
ポリ(p-フェニレンジアミンテレフタルアミド)(フェニレンジアミン、テレフタル酸)および混合物(上のものの相互の混合物、または上のものと他のポリマーとの混合物)、ならびにモノマーとして上のものを含むコポリマー。
【0089】
上記のポリアミドは、ポリアミドで作製された基材を構築するために、単独または他のプラスチック材料、充填剤(例えば、無機(ガラス繊維等)もしくは有機充填剤)、または添加剤との組み合わせで、使用することができる。
【0090】
基材は、フィルム、シート、または層の形態である、本発明によるエラストマー組成物から成形された品目(例えば、押し出されたフィルム)を上に重ねることができる。組成物の成形された品目は、基材が組成物で覆われる状態を有するように、例えば、160から210℃の範囲内の熱および50から100MPaの範囲内の圧の、それらへの適用により基材に接着することができる。基材を、エラストマー組成物の溶融物で、特に射出成形法によって、市販の射出成形機の使用により、例えば、直接基材を覆うことも可能である。
【0091】
エラストマー組成物は、基材(例えばポリアミド基材)に関して、優れた結合強度を示して、容易に剥がれ落ちない。成形されたまたは基材に接着された後のエラストマー組成物は、心地よい柔らかさ、柔軟性も有し、エラストマー組成物は、複雑な凹凸部分でさえ基材の形状に完全に沿って、基材と組成物との間にいかなる空間も気泡も生じない。
【0092】
前に論じたように、本発明によるエラストマー組成物は、電気器具、例えば握りもしくはその近傍を覆うように、または自動車の内部のための材料として、基材、特に握りを有する電気器具の本体(ケーシング)、例えば、電気ドリル、インパクトドライバー(電気ネジ回し)、電気鋸および釘打ち機を含む、ポリアミドで作製された電動工具の本体などに適用することができる。
【0093】
本発明は、それぞれの従属および後方参照により示される以下の実施形態および実施形態の組み合わせによりさらに例示される。特に、実施形態の範囲が言及される各実例において、例えば、「実施形態1から4のいずれか一つに記載の~」などの文脈で、この範囲中のあらゆる実施形態は、当業者のために明示的に開示されていることが意味されることに留意されたい。すなわちこの用語の用語法は、「実施形態1、2、3、および4のいずれか一つに記載の~」と同義であると、当業者により理解されるべきである。
【0094】
1.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、エラストマー組成物。
【0095】
2.各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、実施形態1に記載のエラストマー組成物。
【0096】
3.各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が38から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、実施形態1に記載のエラストマー組成物。
【0097】
4.エラストマー組成物の100質量部に対して、1質量部から5質量部の範囲内の潤滑剤(E)をさらに含む、実施形態1から3のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0098】
5.SBS(B)のSEBS(C)に対する質量百分率が30%から70%の範囲内である、実施形態1から4のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0099】
6.熱可塑性ポリウレタン(A)のSBS(B)およびSEBS(C)の合計に対する質量比が、45:55から65:35の範囲内である、実施形態1から5のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0100】
7.熱可塑性ポリウレタン(A)が、少なくとも1種のポリエステルポリオールと2個以上のイソシアネート基を有する少なくとも1種のイソシアネートとの反応の生成物である、実施形態1から6のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0101】
8.ポリエステルポリオールが、以下の式(I):
【化2】
(式中、
Rは、2から6個の炭素原子を有するアルキレングリコールの残基であり、
R’は、2から12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、または8から14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸の残基であり、
nは、1から3の範囲内である)
により表される、実施形態7に記載のエラストマー組成物。
【0102】
9.熱可塑性ポリウレタンが、70から90の範囲内のショアA硬度を有する、実施形態1から8のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0103】
10.SBS(B)が0.1g/10分から3.0g/10分の範囲内のMFRを有する、実施形態1から9のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0104】
11.SEBS(C)が、2.0g/10分超~15g/10分の範囲内のMFRを有する、実施形態1から10のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0105】
12.可塑剤(D)が、直鎖状もしくは分岐状炭化水素をベースとするエステルおよび/もしくはエーテル構造、ならびに/または1個もしくは複数の芳香族基を有する、実施形態1から11のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0106】
13.可塑剤が、直鎖状または分岐状炭化水素をベースとするエステル、エーテル、およびエーテルエステル、ならびに芳香族炭化水素をベースとするエステルおよびエーテルからなる群から選択される、実施形態1から12のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0107】
14.実施形態1から13のいずれか一つに記載のエラストマー組成物を含む、成形品。
【0108】
15.ポリアミドで作製されている電動工具を少なくとも部分的に覆う部材として、実施形態14に記載の成形品を使用する方法。
【0109】
16.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、エラストマー組成物。
【0110】
17.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が38から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、エラストマー組成物。
【0111】
18.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
エラストマー組成物の100質量部に対して、1質量部から5質量部の範囲内の潤滑剤(E)をさらに含む、
エラストマー組成物。
【0112】
19.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
エラストマー組成物の100質量部に対して、1質量部から5質量部の範囲内の潤滑剤(E)をさらに含む、
エラストマー組成物。
【0113】
20.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が38から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
エラストマー組成物の100質量部に対して、1質量部から5質量部の範囲内の潤滑剤(E)をさらに含む、
エラストマー組成物。
【0114】
21.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
熱可塑性ポリウレタン(A)のSBS(B)およびSEBS(C)の合計に対する質量比が、45:55から65:35の範囲内である、
エラストマー組成物。
【0115】
22.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
可塑剤(D)が、直鎖状もしくは分岐状炭化水素をベースとするエステルおよび/もしくはエーテル構造、ならびに/または1個もしくは複数の芳香族基を有する、
エラストマー組成物。
【0116】
23.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
可塑剤が、直鎖状または分岐状炭化水素をベースとするエステル、エーテル、およびエーテルエステル、ならびに芳香族炭化水素をベースとするエステルおよびエーテルからなる群から選択される、
エラストマー組成物。
【0117】
24.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
熱可塑性ポリウレタン(A)のSBS(B)およびSEBS(C)の合計に対する質量比が、45:55から65:35の範囲内である、
エラストマー組成物。
【0118】
25.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
可塑剤(D)が、直鎖状もしくは分岐状炭化水素をベースとするエステルおよび/もしくはエーテル構造、ならびに/または1個もしくは複数の芳香族基を有する、
エラストマー組成物。
【0119】
26.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
可塑剤が、直鎖状または分岐状炭化水素をベースとするエステル、エーテル、およびエーテルエステル、ならびに芳香族炭化水素をベースとするエステルおよびエーテルからなる群から選択される、
エラストマー組成物。
【0120】
27.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が38から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
熱可塑性ポリウレタン(A)のSBS(B)およびSEBS(C)の合計に対する質量比が、45:55から65:35の範囲内である、
エラストマー組成物。
【0121】
28.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が38から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
可塑剤(D)が、直鎖状もしくは分岐状炭化水素をベースとするエステルおよび/もしくはエーテル構造、ならびに/または1個もしくは複数の芳香族基を有する、
エラストマー組成物。
【0122】
29.熱可塑性ポリウレタン(A)、
ブロックコポリマーSBS(B)、
ブロックコポリマーSEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、
各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が38から69質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内であり、
可塑剤が、直鎖状または分岐状炭化水素をベースとするエステル、エーテル、およびエーテルエステル、ならびに芳香族炭化水素をベースとするエステルおよびエーテルからなる群から選択される、
エラストマー組成物。
【0123】
30.実施形態16から29のいずれか一つに記載のエラストマー組成物を含む成形品。
【0124】
31.実施形態30に記載の成形品を、ポリアミドで作製された電動工具を少なくとも部分的に覆う部材として使用する方法。
【0125】
32.熱可塑性ポリウレタン(A)、
SBS(B)、
SEBS(C)、および
可塑剤(D)
を含むエラストマー組成物であって、各々、エラストマー組成物の100質量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(A)の量が40から70質量部の範囲内であり、SBS(B)およびSEBS(C)の合計量が30から50質量部の範囲内であり、可塑剤(D)の量が1質量部から8質量部の範囲内である、エラストマー組成物。
【0126】
33.エラストマー組成物の100質量部に対して、1質量部から5質量部の範囲内の潤滑剤(E)をさらに含む、実施形態32に記載のエラストマー組成物。
【0127】
34.SBS(B)のSEBS(C)に対する質量百分率が、30%から70%の範囲内である、実施形態32または33に記載のエラストマー組成物。
【0128】
35.熱可塑性ポリウレタン(A)のSBS(B)およびSEBS(C)の合計に対する質量比が、45:55から65:35の範囲内である、実施形態32から34のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0129】
36.熱可塑性ポリウレタン(A)が、少なくとも1種のポリエステルポリオールと2個以上のイソシアネート基を有する少なくとも1種のイソシアネートとの反応の生成物である、実施形態32から35のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0130】
37.ポリエステルポリオールが、以下の式(I):
【化3】
(式中、
Rは、2から6個の炭素原子を有するアルキレングリコールの残基であり、
R’は、2から12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、または8から14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸の残基であり、
nは1から3の範囲内である)
により表される、実施形態36に記載のエラストマー組成物。
【0131】
38.熱可塑性ポリウレタンが、70から90の範囲内のショアA硬度を有する、実施形態32から37のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0132】
39.SBS(B)が、0.1g/10分から3.0g/10分の範囲内のMFRを有する、実施形態32から38のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0133】
40.SEBS(C)が、2.0g/10分超~15g/10分の範囲内のMFRを有する、実施形態32から39のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0134】
41.可塑剤(D)が、直鎖状もしくは分岐状炭化水素をベースとするエステルおよび/もしくはエーテル構造、ならびに/または1個もしくは複数の芳香族基を有する、実施形態32から40のいずれか一つに記載のエラストマー組成物。
【0135】
42.実施形態32から41のいずれか一つに記載のエラストマー組成物を含む、成形品。
【0136】
43.実施形態42に記載の成形品を、ポリアミドで作製された電動工具を少なくとも部分的に覆う部材として使用する方法。
【0137】
本発明の他の特徴は、本発明の例示のために示され、本発明を限定することは意図されない典型的実施形態の以下の記載の過程で理解されるであろう。
【実施例】
【0138】
1.実施例1
イソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリブチレンアジペートジオール(Mw=1500)TPU(A)(BASFジャパン株式会社により製作された「Elastollan」(商品名)ET680-50」)、20質量部のスチレン-ブタジエン-スチレンゴム(SBS)(B)(旭化成株式会社により製作された「Asaprene T432」)、および20質量部の完全に水素化されたスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンゴム(SEBS)(C)(旭化成株式会社により製作された「Taftec H1041」)から製造された60質量部のポリウレタンを、乾燥状態でブレンドして2軸押出機(スクリュー直径30mm)(lkegai Koki co.,Ltd.により製作された)中に装填して、次に円筒中210℃、150rpmのスクリュー回転速度で加工処理した。
【0139】
その後、6質量部のビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート(D)(株式会社アデカからの「ADK CIZER RS-107」)および4質量部の潤滑油(E)(日本サン石油株式会社からの「SUNPURE LW1500」)を、ポンプにより直接押出機に注入した。上の方法から生じた塊の形態の組成物を、ペレタイザーを使用することにより破砕して、こうしてペレットに成形されたエラストマー組成物が得られた。
【0140】
2.実施例2から7、および比較例1から5
成分(A)から(E)の量を、表1aおよび1bに示したように変化させたこと以外は、実施例1における上記の手順を繰り返して、本発明のエラストマー組成物(実施例2から7)および比較エラストマー組成物(比較例1から5)を製造した。
【0141】
実施例1から7および比較例1から5からのペレット化された組成物を、100℃で15時間熟成させた後、以下の評価にかけた。
【0142】
3.ショアA硬度の評価
エラストマー組成物のペレットを、東洋機械金属株式会社からのホッパー射出成形機(「PLASTAR TM-130F2」)に装填して、円筒中200℃で溶融加工処理した。内部温度が50℃の金型中に、組成物を射出して、ボードの形状にした。
【0143】
ボードを、室温に冷却した後、60mm*100mm*2mmのサイズを有する試験片に切断した。試験片のショアA硬度を、DIN 53505に従って測定し、結果を表1aおよび1bに示した。
【0144】
4.結合強度の評価
基材を提供するために、ポリアミドをベースとする材料(BASF SEからの「Ultramid B3EG6」:30%ガラス繊維で強化された射出成形PA6」)を、射出成形法により厚さ2mmのプレートに成形した。
【0145】
ペレット化された組成物を、ホッパー射出成形機(東洋工機金属株式会社からの「PLASTAR TM-130F2」)中に装填して、円筒中200℃で溶融加工処理して、射出成形機から、金型中に位置付けられたポリアミド基材に直接射出した。このようにして、金型中でポリアミドを厚さ4mmのエラストマー組成物で覆った。
【0146】
このように製造されて、成形された組成物が基材上に重ねられた試験片を金型から離型して室温に冷却し、試験片の結合強度を、JIS K6854-2に従って、23℃×50%RHに制御された環境条件下で測定した。結果を表1aおよび1bに示した。
【0147】
5.流動性
スパイラルフロー金型すなわち、螺旋形状を有する金型(幅:5mm、厚さ:3mm;最大流長さ:750mm)を使用して、エラストマー組成物の流動性を測定した。
【0148】
ペレット化された組成物を、ホッパー射出成形機(東洋工機金属株式会社からの「PLASTAR TM-130F2」)中に装填して、円筒中200℃で溶融加工処理した。成形機から試料を、温度が30℃のスパイラルフロー金型に、3cm3/秒の射出速度、射出圧80MPa、および射出時間5秒の条件で射出した。試料を35秒間放冷した後、硬化された試料を金型から離型して、成形された螺旋の長さ、すなわち、金型中における試料流動の長さを測定した。
【0149】
螺旋の長さが長いほど、溶融した試料の流動性がよい。結果を表1aおよび1bに示した。
【0150】
6.引っ張り強度
エラストマー組成物の100%の引っ張り応力を測定した。
【0151】
ペレット化された組成物を、ホッパー射出成形機(東洋工機金属株式会社からの「PLASTAR TM-130F2」)中に装填して、円筒中200℃で溶融加工処理した。成形機から、試料を射出して試験片を製造し、引っ張り強度をDIN 53504に従って測定したが、その場合、試験片を伸長試験にかけて、破断における引っ張り応力(100%モジュラス)を、下の方程式:
引っ張り強度(MPa)=FB/A
(式中、
Aは、伸長試験前の試験片の断面積(cm2)を表し、
FB(N)は、試験片にかけられた最大荷重を表す)
に基づいて得た。
【0152】
結果を表1aおよび1bに示した。
【0153】
【0154】
【0155】
本発明のエラストマー組成物から得られた試料は、製作を行うために、特に円滑に射出成形を実施するために優れた流動性を有することが表1から見て取れる。さらに、本発明のエラストマー組成物について、結合強度、硬度、および100%モジュラスの優れたバランスを見ることができて、それは、製品の耐久性および心地よさの両方ならびに製品を使用するための容易さを達成するのに重要である。
【0156】
7.感覚的性質の試験(感覚の評価)
7.1試料ドライバー(電気ネジ回し)の製造:
インパクトドライバーTD136D(株式会社マキタにより製作された充電式タイプ、本体のケーシングは:BASF SE製の「Ultramid B3EG6」、すなわち、30%ガラス繊維で強化された射出成形物PA6で作製されている)を、評価されるべき試験試料のための基材として使用した。
【0157】
図1に示したように、インパクトドライバー1の握り部分2を、実施例1のエラストマー組成物(厚さが1から2mmのシート)で覆い、試料ドライバー1を得た。同様に、比較例3のエラストマー組成物を、ドライバー1の握り部分2に適用した。
【0158】
「結合強度の評価」に関して、各エラストマーを、上で記載した射出成形法に従って握りの円周全体に適用した。
【0159】
7.2モニタリング試験:
20代から50台の健常男性および女性で構成される10名の被験者が、試料ドライバーを把持することにより、その感触(感じ/心地よさ)を評価した。
【0160】
被験者の各々が、ひとりひとり、25℃の温度および50%RHの湿度を有するように制御されたテキストルームに導かれた。
【0161】
被験者は、新品の試料ドライバーの各々を
図2に示された様式で把持するように指示された。
【0162】
試料ドライバーを把持した後ただちに、被験者は、試料を把持している間に受けたテキスチャーまたは感触を、以下の5つの基準に基づいて評価した。評価は、考慮に入れた以下の点に基づいて行われた。
【0163】
握り部分が手に心地よく合うか、
握り部分が適切に加湿されているか(かさかさまたはねちねちしないか)
5:優秀
4:良好
3:普通
2:不良
1:極端に不良
【0164】
10名の被験者(被験者1から被験者10)による評価を以下の表2に示す。
【0165】
【0166】
好みまたは知覚は、被験者に依存して異なり得るが、実施例1からのエラストマー材料を有する試料は、比較例3よりもはるかによい評価を得た。
【符号の説明】
【0167】
1 試料ドライバー
2 握り部分
3 エラストマー組成物(シートの形態)
【0168】
引用文献
特許第5203985号
特許第5203985号
米国特許第8,193,273号
米国特許第8,193,273号
米国特許第8,193,273号
Ullmann’s Encyclopedia of IndustrialChemistry、Rubber、4.Chemicals and Additives、3.Antidegradants、4.4 pigments、5.Plasticizers、6.processing additives、17~28頁および41~51頁、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co KGaA、Weinheim、2007年