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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】光学部材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221014BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20221014BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20221014BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G02B5/30
B08B7/00
B26D3/00 601B
B26D7/18 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020101089
(22)【出願日】2020-06-10
(62)【分割の表示】P 2018174974の分割
【原出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020166288
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2017195222
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】芦田 丈行
(72)【発明者】
【氏名】西 幸二朗
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155941(JP,A)
【文献】特開2014-217941(JP,A)
【文献】特開2009-291678(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104102(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102127457(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102792191(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108196327(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B08B 7/00
B26D 3/00
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルム、及び、前記光学フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層を有し、その端面に粉体が付着している積層体を準備する、工程と、
前記積層体の前記端面にドライアイス粒子を衝突させて前記端面から前記粉体を除去する工程と、を含み、
前記積層体は、前記光学フィルム及び前記粘着剤層の厚み方向に貫通するホールを有し、
前記端面が、前記ホールの内壁である、光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記ドライアイス粒子の平均粒径は100~1000μmである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記準備する工程では、前記光学フィルム、及び、前記粘着剤層を有する積層体にドリルを用いて前記ホールを設けることで、前記端面に前記粉体が付着している前記積層体を準備する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記衝突させる工程では、前記積層体を複数積層した積層構造体の端面に前記ドライアイス粒子を衝突させる、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記端面の一部に前記ドライアイス粒子を衝突させると同時に、前記積層体の前記端面の他の部分に対して切断、切削、及び研磨からなる群から選択される少なくとも一つを行う、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記準備する工程で前記端面に対して切断、切削、及び研磨からなる群から選択される少なくとも一つを行い、前記端面の一部に前記ドライアイス粒子を衝突させる際に、前記端面に対して前記群から選択されるいずれも行わない、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
前記光学フィルムは、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、ウィンドウフィルム、及び、タッチセンサからなる群から選択される少なくとも一つである、前記群から選択される少なくとも1種を2つ以上含む積層フィルムである、又は、前記群から選択される少なくとも2種を含む積層フィルムである、請求項1~のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記端面に前記ドライアイス粒子を衝突させる工程における雰囲気の相対湿度が30~75%である、請求項1~のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
光学フィルム、及び、前記光学フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層を有する積層体の端面を切断、切削、又は、研磨する端面加工部と、
前記積層体における前記端面加工部に加工された部分にドライアイス粒子を衝突させるドライアイス粒子供給部と、を備え、
前記積層体は、前記光学フィルム及び前記粘着剤層の厚み方向に貫通するホールを有し、
前記端面が、前記ホールの内壁である、光学部材の製造装置。
【請求項10】
前記端面加工部が、ドリルを有し、
前記ホールが、前記ドリルにより設けられたものである、請求項9記載の光学部材の製造装置。
【請求項11】
前記端面加工部と前記ドライアイス粒子供給部との間で、前記積層体を移動させる搬送部を更に備える、請求項9又は10記載の光学部材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、偏光子などの光学フィルム及び粘着剤層を備える光学部材が知られている。
所望のサイズの光学部材を得る方法として、光学フィルム及び粘着剤層を有する原反積層体をレーザや刃で切断することが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2014/189078号公報
【文献】特開2009-86675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では光学フィルム及び粘着剤層を用いた光学部材に対する寸法精度の要求が厳しくなってきている。したがって、原反積層体を切断しただけでは所望の寸法精度を得ることが困難である。そこで、切断後の積層体の端面を研削及び研磨などの加工をすることがある。
【0005】
しかしながら、積層体の端面に研磨などの加工を行うと、研磨屑などの粉体が積層体の端面に付着してしまうことがあった。粉体が積層体に残ると、積層体を含む最終製品のコンタミなどが起こって好ましくない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、研磨屑などの粉体の付着が少ない光学部材の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に掛かる光学部材の製造方法は、光学フィルム、及び、前記光学フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層を有し、その端面に粉体が付着している積層体を準備する、工程(準備工程)と、前記積層体の前記端面にドライアイス粒子を衝突させることで前記端面から前記粉体を除去する工程(衝突工程)と、を含む。
【0008】
本発明によれば、ドライアイス粒子により、積層体(光学部材)の端面から切断屑、切削屑、研磨屑などの粉体が好適に除去される。
【0009】
ここで、前記ドライアイス粒子の平均粒径が100~1000μmであることができる。
【0010】
これにより、研削屑などの粉体を好適に除去しつつも、端面における粘着剤の欠けが抑制される。
【0011】
また、前記衝突工程では、前記積層体を複数積層した積層構造体の端面に前記ドライアイス粒子を衝突させることができる。
【0012】
これによれば、積層体の大量処理が可能となる。
【0013】
また、前記端面の一部に前記ドライアイス粒子を衝突させると同時に、前記積層体の前記端面の他の部分に対して切断、切削、及び研磨からなる群から選択される少なくとも一つを行うことができる。
【0014】
これによれば、複数の工程を同時並行で行って、工程時間の短縮が可能となる。
【0015】
また、前記準備工程で前記端面に対して切断、切削、及び研磨からなる群から選択される少なくとも一つの処理を行い、前記端面の一部に前記ドライアイス粒子を衝突させる際に、前記端面に対して前記群から選択されるいずれの処理も行わないことができる。
【0016】
これによれば、ドライアイス粒子の衝突により粉体を除去する雰囲気(空間)と、粉体が生じる加工する雰囲気(空間)とを分けることができるので、端面の加工により生じた粉体によって、ドライアイスを衝突させた部分がコンタミすることの抑制が可能である。
【0017】
前記光学フィルムは、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、ウィンドウフィルム、タッチセンサからなる群から選択される少なくとも一つ、前記群から選択される少なくとも1種を2つ以上含む積層フィルムである、又は、前記群から選択される少なくとも2種を含む積層フィルムであることができる。
【0018】
前記衝突工程における雰囲気の相対湿度が30~75%であることができる。
【0019】
本発明に掛かる光学部材の製造装置は、光学フィルム、及び、前記光学フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層を有する積層体の端面を切断、切削、又は、研磨する端面加工部と、前記積層体における前記端面加工部に加工された部分にドライアイス粒子を衝突させるドライアイス粒子供給部と、を備える。
【0020】
上記の光学部材の製造装置は、前記端面加工部と、前記ドライアイス粒子供給部との間で、前記積層体を移動させる搬送部を更に備えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、研磨屑などの粉体の付着が少ない光学部材の製造方法及び製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1の(a)及び(b)は、本発明の1実施形態にかかる積層体100の断面図である。
図2図2の(a)及び(b)は、それぞれ、積層体の他の例の断面図である。
図3図3は、ドライアイス粒子供給部の概略構成図である。
図4図4は、複数の積層体100を備える積層構造体120の端面にドライアイス粒子を衝突させる態様を示す概念図である。
図5図5は、本発明の1実施形態にかかる光学部材の製造装置の斜視図である。
図6図6は、図5における端面加工部の他の例を示す斜視図である。
図7図7は、貫通孔H’を備える積層構造体120の内側の端面にドライアイス粒子を衝突させる態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照しながら、本発明の実施形態に掛かる光学部材の製造方法及び製造装置について説明する。
【0024】
(端面に粉体が付着した積層体の準備)
まず、図1の(a)に示すように、光学フィルム50、及び、光学フィルム50の一方の面に設けられた粘着剤層80を有し、その端面Eに粉体fが付着した積層体100を準備する。なお、端面Eは積層体100の外側の端面に限定されない。例えば、図1の(b)に示すように、積層体100が積層方向に貫通するホールHを有する場合には、ホールHの内壁すなわち積層体100の内側の端面Eにも穴開け屑などの粉体fが付着していることがある。
【0025】
(光学フィルム)
光学フィルム50とは、可視光の少なくとも一部を透過させるフィルムである。
光学フィルム50の例は、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、ウィンドウフィルム、タッチセンサであり、光学フィルム50は、これらのフィルムの単一種を複数有する積層構造を有しても良く、これらのフィルムの複数種を有する積層構造を有してもよい。
【0026】
(偏光子)
偏光子とは、直線偏光の透過率が面内の直交2方向において互いに異なるフィルムである。偏光子の材料としては、従来から偏光子の製造に使用されている公知の材料を用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。なかでもポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。これらの樹脂フィルムを延伸処理した後、ヨウ素又は二色性染料による染色及びホウ酸処理を施すことによりフィルム状の偏光子(フィルム型偏光子)を得ることができる。
【0027】
フィルム型偏光子の厚さは、例えば、1~75μmであることができる。
【0028】
また、前記偏光子の他の一例としては、液晶性化合物から形成される液晶塗布型偏光子であってもよい。この液晶塗布型偏光子は例えば、適当な基材を用い、この基材上に液晶偏光組成物を塗布することで製造できる。この基材には、液晶偏光組成物を塗布する前に、配向膜が形成されていてもよい。前記液晶偏光組成物は、液晶性化合物及び二色性色素化合物を含むことができる。前記液晶性化合物としては、液晶状態を示す性質を有していればよく、特にスメクチック相等の高次の液晶状態を有していることが、得られる液晶塗布型偏光子が、高い偏光性能を発揮することができるため好ましい。また、前記液晶性化合物が、重合性官能基を有していることも好ましい。前記二色性色素化合物は、前記液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であって、二色性色素自身が液晶性を有していてもよいし、重合性官能基を有していることもできる。液晶偏光組成物に含まれる、いずれかの化合物は重合性官能基を有していることが好ましい。前記液晶偏光組成物はさらに、開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
【0029】
ここでは、基材上に配向膜を形成し、配向膜が形成された基材上に液晶偏光組成物を塗布することで、液晶塗布型偏光子を製造する方法の典型例を示す。
この方法で製造される液晶塗布光型偏光子は、前記フィルム型偏光子に比べて厚さを薄くすることができる。前記液晶塗布光型偏光子の厚さは、0.5~10μm、好ましくは1~5μmである。
【0030】
前記配向膜は、例えば基材上に配向膜形成組成物を塗布して形成した塗布膜に、ラビング、偏光照射等により、配向性を付与することで、前記基材上に配向膜を形成することができる。前記配向膜形成組成物は、配向剤を含むものであり、配向剤の他に溶剤、架橋剤、開始剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。前記配向剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリレート類、ポリアミック酸類、ポリイミド類が挙げられる。前記配向性を付与する方法として光配向を適用する場合には、シンナメート基を含む配向剤が好ましい。
【0031】
前記配向剤は高分子であってもよい。高分子の配向剤は、その重量平均分子量が10,000~1000,000程度のものである。前記基材上に形成した前記配向膜の厚さは、5nm~10000nmが好ましく、特に10~500nmであれば、十分な配向規制力が発現されるため好ましい。
【0032】
配向膜を形成した基材上に、液晶偏光組成物を塗工し、必要により乾燥させることで、液晶偏光組成物の塗布膜を形成し、この液晶偏光組成物の塗布膜から、液晶塗布型偏光子を製造する。
このようにして製造した前記液晶偏光子は基材から剥離してもよい。液晶塗布型偏光子を、基材から剥離する方法としては例えば、第2の基材を液晶塗布型偏光子の基材が積層していない面に貼り合わせてから、基材を剥離することで、液晶塗布型偏光子―第2の基材からなる積層体を得る方法を用いることで、液晶塗布型偏光子を第2の基材に転写することもできるし、第2の基材に転写することなく、前記基材に積層されたままとすることもできる。前記基材あるいは前記第2の基材が、保護フィルムや位相差板、ウィンドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0033】
(保護フィルム)
保護フィルムは、偏光子等の他の光学フィルム、及び/又は、積層体100がその後貼り付けられる光学デバイス(液晶セルなど)の傷つき等の破損を防止する透明フィルムである。保護フィルムは、各種の透明樹脂フィルムであることができる。
【0034】
ここでは偏光子を保護する保護フィルムについて記す。この保護フィルムを形成する樹脂の例は、
トリアセチルセルロースを代表例とするセルロース系樹脂;
ポリプロピレン系樹脂を代表例とするポリオレフィン系樹脂;
ノルボルネン系樹脂を代表例とする環状オレフィン系樹脂;
ポリメチルメタクリレート系樹脂を代表例とするアクリル系樹脂;及び
ポリエチレンテレフタレート系樹脂を代表例とするポリエステル系樹脂である。これらの中でも、セルロース系樹脂が代表的である。
保護フィルムの厚さは、例えば、5~90μmであることができる。
【0035】
前記保護フィルムは、必要により可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。
【0036】
前記保護フィルムの少なくとも一面に、前記保護フィルム表面の耐擦傷性を上げるために、ハードコート層が設けられていてもよい。ハードコート層の厚さは通常、2~100μmの範囲内である。前記ハードコート層の厚さが2μm未満の場合、十分な耐擦傷性を確保することが難しく、100μmを超えると、耐屈曲性が低下し、保護フィルムを偏光子等に張り合わせたときに、硬化収縮によるカール発生の問題が発生することがある。
【0037】
前記ハードコート層は、活性エネルギー線或いは熱エネルギー線を照射して架橋構造を形成する反応性材料を含むハードコート組成物により形成することができる。これらの中でも、活性エネルギー線照射により得られるハードコート層が好ましい。活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることができるエネルギー線と定義される。活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線等を挙げることができる。これらの中でも、紫外線が特に好ましい。前記ハードコート組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。これらラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物が部分的に重合したオリゴマーが、ハードコート組成物に含まれていてもよい。
【0038】
まず、ラジカル重合性化合物について説明する。
前記ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、炭素‐炭素不飽和二重結合を含む基等が挙げられ、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が例示される。なお、前記ラジカル重合性化合物が、1分子中に2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記ラジカル重合性化合物が、1分子中に、2個以上のラジカル重合性基を有する場合、得られるハードコート層の硬度が向上する傾向がある。前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、1分子中に2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物や、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有し、分子量が数百から数千のオリゴマーが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートから選択された1種以上が好ましい。
【0039】
次に、カチオン重合性化合物について説明する。
前記カチオン重合性化合物とは、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物の1分子中に有するカチオン重合性基の数は、得られるハードコート層の硬度を向上する観点から、2つ以上であることが好ましく、3つ以上であることがさらに好ましい。また、前記カチオン重合性化合物としては、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種のカチオン重合性基を有する化合物が好ましい。エポキシ基やオキセタニル基の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという利点がある。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が、市場から容易に入手し易く、得られるハードコート層の耐久性に悪影響を与え難い。ハードコート組成物が、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物を併用したものである場合、エポキシ基を有する化合物は、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高くなり易く、低毒性であり、得られるハードコート層のカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
【0040】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、
脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル;
シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;
脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;
脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル;
グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル;
及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0041】
前記ハードコート組成物には、重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては、ハードコート組成物に含まれる重合性化合物の種類に応じて、適切なもの(ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、)を選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生して、ラジカル重合やカチオン重合を進行させるものである。
【0042】
ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。例えば、熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化水素、過安息香酸等の有機過酸化物、アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物等があげられる。
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、分子の分解でラジカルが生成されるType1型ラジカル重合開始剤と、3級アミンと共存して水素引き抜き型反応でラジカルを生成するType2型ラジカル重合開始剤があり、これらは、単独でまたは併用して使用することもできる。
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、シクロペンタジエニル鉄(II)錯体等が使用できる。これらは、構造の違いによって活性エネルギー線照射または加熱のいずれかまたはいずれでもカチオン重合を開始することができる。
【0043】
前記重合開始剤は、前記ハードコート組成物全体重量に対して、0.1~10重量%を含むことができる。前記重合開始剤の含量が0.1重量%未満の場合、硬化を十分に進行させることができず、最終的に得られたハードコート層の機械的物性が低下したり、ハードコート層及び保護フィルムの密着力を具現することが難しくなったり、し易い。10重量%を超える場合、ハードコート層の形成時の硬化収縮による接着力不良や割れ現象、及びカール現象が発生することがある。
【0044】
前記ハードコート組成物はさらに溶剤、添加剤からなる群から選択される一つ以上をさらに含んでいてもよい。
前記溶剤は、前記重合性化合物および重合開始剤を溶解または分散させることができるもので、本技術分野のハードコート組成物の溶剤として知られているものなら制限なく使用することができる。
前記添加剤は、無機粒子、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤等である。
【0045】
続いて、保護フィルムを偏光子に貼り合わせる場合の方法について説明する。
偏光子の保護フィルムは、偏光子に接着剤を介して貼り付けられることが好適である。この接着剤としては、
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤;
重合性化合物及び光重合開始剤を含む硬化性組成物、光反応性樹脂を含む硬化性組成物、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含む硬化性組成物等を用いた活性エネルギー線硬化型接着剤等
が挙げられる。
【0046】
接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂水溶液に含まれるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体等がある。このような水系接着剤にはさらに、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物等が、添加剤として添加されてもよい。
【0047】
また、接着剤として用いる活性エネルギー線硬化型接着剤としては、上述のハードコート組成物の1つとして例示した、活性エネルギー線を照射して架橋構造を形成する反応性材料を含むものと同じものを挙げることができる。
【0048】
以上、樹脂フィルムを保護フィルム(またはハードコート層を有する保護フィルム)として用い、これを偏光子に貼り合わせる方法について説明したが、前記樹脂フィルムの代わりに、より薄い保護層を偏光子に直接積層して保護フィルムとすることもできる。
より薄い保護層を偏光子に直接積層する方法としては例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗膜を偏光子の表面に形成し、活性エネルギー線(UVなど)の照射により、塗膜を硬化すると、従来の保護フィルムよりも薄い保護フィルムを偏光子の表面に直接形成することができる。この活性エネルギー線硬化性樹脂としては、上述のハードコート組成物の1つとして例示した、活性エネルギー線を照射して架橋構造を形成する反応性材料を含むものを挙げることができる。
【0049】
(ウィンドウフィルム)
一方、積層体100がその後貼り付けられる光学デバイス(液晶セルなど)の傷つき等の破損を防止する透明な保護フィルムは、ウィンドウフィルムとも呼称される。ウィンドウフィルムは、例えば、光学フィルム50が複数のフィルムを有する積層構造を有する場合、複数のフィルムにおいて粘着剤層80が設けられる面と反対側の最外面に配置される。
【0050】
ウィンドウフィルムは、フレキシブル画像表示装置の視認側に配置され、その他の構成要素を外部からの衝撃または温湿度等の環境変化から保護する役割を担っている。従来このような保護層としてはガラスが使用されてきたが、フレキシブル画像表示装置におけるウィンドウフィルムはガラスのようにリジッドで堅いものではなく、フレキシブルな特性を有する。前記ウィンドウフィルムは、フレキシブルな透明基材からなり、少なくとも一面にハードコート層を含んでいてもよい。
【0051】
(透明基材)
ウィンドウフィルムとして使用可能な透明基材について説明する。
透明基材は、可視光線の透過率が70%以上、好ましくは80%以上である。前記透明基材は、透明性のある高分子フィルムなら、どのようなものでも使用可能である。具体的には、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ノルボルネンまたはシクロオレフィンを含む単量体の単位を有するシクロオレフィン系誘導体等のポリオレフィン類;
ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース等の(変性)セルロース類;
メチルメタクリレート(共)重合体等のアクリル類;
スチレン(共)重合体等のポリスチレン類;
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体類、アクリロニトリル・スチレン共重合体類;
エチレン‐酢酸ビニル共重合体類;
ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル類;
ナイロン等のポリアミド類;
ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリエーテルイミド類;
ポリエーテルサルフォン類、ポリサルフォン類;
ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセタール類;
ポリウレタン類;
エポキシ樹脂類
等の高分子で形成されたフィルムであってもよく、これらの高分子はそれぞれ単独または2種以上混合して形成したフィルムであってもよい。また、このフィルムは、未延伸、1軸または2軸延伸フィルムを使用することもできる。好ましくは、例示した高分子の透明基材の中でも透明性及び耐熱性に優れたポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムまたはポリイミドフィルム、ポリエステル系フィルム、オレフィン系フィルム、アクリルフィルム、セルロース系フィルムが好ましい。また、前記透明基材の中には、シリカ等の無機粒子や有機微粒子、ゴム粒子等を分散させることも好ましい。さらに、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤を含有させてもよい。前記透明基材の厚さは5~200μm、好ましくは、20~100μmである。
【0052】
(ハードコート)
前記透明基材の少なくとも一面にハードコート層が設けたものをウィンドウフィルムとすることもできる。ハードコート層としては、上述の保護フィルムのハードコート層と同様のものを用いることができる。
【0053】
(位相差フィルム)
位相差フィルムは、屈折率が面内の直交2方向において互いに異なる透明フィルムであり、透過する光に位相差を与えるものである。
位相差フィルムの材料の例は、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリサルフォン系樹脂フィルム、ポリエーテルサルフォン系樹脂フィルム、ポリアリレート系樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルムである。
これらの樹脂フィルムは、延伸することにより、所望の位相差を与えることができる。
また、市場から容易に入手できる位相差フィルムを用いることもできる。
【0054】
位相差フィルムの厚さは、例えば、0.5~80μmであることができる。
【0055】
(輝度向上フィルム)
輝度向上フィルムは、面内の第1方向に平行な偏光光を透過し、面内の第1方向に直交する第2方向に平行な偏光光を反射するフィルムである。本発明に用いる光学フィルムが、偏光子を有するものである場合には、第1方向を偏光子の透過軸と一致させることが好適である。
【0056】
輝度向上フィルムは、複屈折を有する層と、複屈折を実質的に有さない層とが交互に積層された多層積層体であることができる。複屈折を有する層の材料の例は、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート及びアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)であり、複屈折を実質的に有さない層の例は、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルである。
【0057】
輝度向上フィルムの厚さは、例えば、10~50μmであることができる。
【0058】
上述で例示した光学フィルムを構成する各フィルムは、複数の機能を有していてもよい。例えば、保護フィルムは、位相差フィルムや輝度向上フィルムといった光学機能を併せもつフィルムであってもよい。
【0059】
(光学フィルム内での接着)
光学フィルム50が複数のフィルムを含む積層構造を有する場合、これらのフィルム間は接着剤を介して接着されていてもよい。接着剤は特に限定されないが、上述の水系接着剤や活性エネルギー線硬化型接着剤のいずれでもよい。
また、接着剤として粘着剤を用いることもできる。この粘着剤については、後に説明する。
接着剤の厚みは1~200μmとすることができる。
【0060】
(積層体の場合の光学フィルムの厚み)
光学フィルム50が複数のフィルムを含む積層構造を有する場合の光学フィルム50の全体の厚みは、10~1200μmとすることができる。
【0061】
(粘着剤層)
前記のように、本発明に用いる積層体は、光学フィルムとその一方の面に設けられた粘着剤層を有するものである。この粘着剤層は粘着剤により形成されるものをいう。ここで、粘着剤について説明する。
粘着剤とは、感圧性接着剤であり、室温付近(例えば25℃)の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料を言う。ここでいう粘着剤は、「C.A.Dahlquist,Adhesion:FundamentalandPractice”,McLaren & Sons,(1966),P.143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。ここに開示される技術における粘着剤は、粘着剤組成物の固形分(不揮発分)または粘着剤層の構成成分としても把握され得る。
【0062】
粘着剤の例は、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂等をベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物等の架橋剤を加えた組成物である。この明細書において、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマーの主成分をいう。上記ゴム状ポリマーとは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0063】
粘着剤の厚さは、1~40μmとすることができる。
【0064】
(積層体の場合の光学フィルムの厚み)
光学フィルム50が複数のフィルムを含む積層構造を有する場合の光学フィルム50の全体の厚みは、10~1200μmとすることができる。
【0065】
粘着剤層80は光学フィルム(単一層構造又は積層構造)50の少なくとも一方の面に設けられている。
粘着剤としては、前述のものを使用することができる。
【0066】
(セパレータフィルム)
積層体100は、粘着剤層80における光学フィルム50と接触する面とは反対側の面に、セパレータフィルム90を有することができる。
【0067】
セパレータフィルム90とは、光学フィルム50に比べて、粘着剤層80との接着性が弱いフィルムである。光学フィルム50を、粘着剤層80を介して光学デバイス(液晶セル)などの他の部材に貼り付ける前の積層体100の輸送時や保管時に、セパレータフィルム90は、粘着剤層80の表面を保護する。粘着剤層80を他の部材に貼り付ける際に、セパレータフィルム90は容易に粘着剤層80から剥離される。
【0068】
セパレータフィルムは透明である必要は無いが、透明であることが好ましい。セパレータフィルムの材料の例は、ポリエチレンテレフタレートである。セパレータフィルムの厚さは、1~40μmとすることができる。
【0069】
(プロテクトフィルム)
また、積層体100は、光学フィルム50において粘着剤層80が設けられる面と反対側の外面に配置されたプロテクトフィルム70を有することができる。
プロテクトフィルム70は、積層体100の加工中、又は、積層体100を光学デバイス(液晶セルなど)に貼り付ける際、あるいは、積層体100が貼り付けられた光学デバイスの搬送中等における、光学デバイス、及び/又は、光学フィルム50のキズつきを抑制する機能を有する。
【0070】
このようなプロテクトフィルムの材料の例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等である。プロテクトフィルム70は透明である必要は無いが、透明であることが好ましい。プロテクトフィルムの厚さは、1~40μmとすることができる。
【0071】
このプロテクトフィルム70は、光学フィルム50を用いた製品の使用時まで、光学フィルム50を保護するフィルムで有ることもできる。この場合、光学フィルム50を、粘着剤層80を介して光学デバイス(液晶セルなど)に貼り付けた後も、プロテクトフィルム70は光学フィルム50から剥離されない。
【0072】
プロテクトフィルム70は、粘着剤層を介して、または静電吸着による自己粘着により光学フィルム50に貼り付けられていることができる。
【0073】
積層体100の積層構造の具体例を図2の(a)及び(b)に示す。
図2の(a)の積層体100では、プロテクトフィルム70、保護フィルム2、偏光子3、保護フィルム2、及び、粘着剤層80、セパレータフィルム90が、この順に積層される。保護フィルム2、偏光子3、及び、保護フィルム2が、光学フィルム50を構成している。
【0074】
図2の(b)の積層体100では、プロテクトフィルム70、保護フィルム2、及び、偏光子3、粘着剤層80、及び、セパレータフィルム90が、この順に積層されている。保護フィルム2、及び、偏光子3が、光学フィルム50を構成している。そして、図示はしないが、いずれの例においても、各光学フィルム50内のフィルム間は接着剤または粘着剤で接着されていることができる。
【0075】
(フレキシブル画像表示装置用積層体)
本発明に用いる光学フィルム50は、折り曲げ等が可能なフレキシブル画像表示装置に用いられるフレキシブル画像表示装置用積層体でもよい。
このフレキシブル画像表示装置は、フレキシブル画像表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとを有する画像表示装置が典型例である。この典型例では通常、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル画像表示装置用積層体が配置されており、フレキシブル画像表示装置は折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル画像表示装置用積層体としては、ウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサを含有していてもよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウィンドウフィルム、円偏光板及びタッチセンサの積層順またはウィンドウフィルム、タッチセンサ及び円偏光板の積層順に構成されていることが好ましい。タッチセンサの視認側に円偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、前記ウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0076】
(円偏光板)
円偏光板は、直線偏光板に、位相差フィルムであるλ/4位相差板を積層することにより右若しくは左円偏光成分のみを透過させる機能を有する機能を有する機能フィルムである。表示装置に侵入してきた外光が、視認側に配置されている円偏光板を通過すると、右円偏光に変換されて有機ELパネル側に出射される。この右円偏光が、有機ELパネルの金属電極により反射される(反射光)と、この反射光は左円偏光となる。この左円偏光は円偏光板を透過することができないので、結果として、この反射光は表示装置の外に出射されることはない。このような機能により、表示装置の表示パネルにおいて視認されるのは、有機ELの発光成分のみになり、この発光成分のみを透過させることで反射光の影響を防止して画像を見やすくすることができる。
【0077】
円偏光機能を達成するためには、直線偏光板の吸収軸とλ/4位相差板の遅相軸は理論上45°である必要があるが、実用的には45±10°である。直線偏光板と、λ/4位相差板とは必ずしも隣接して積層される必要はなく、吸収軸と遅相軸の関係が前述の範囲を満足していればよい。全波長において完全な円偏光を達成することが好ましいが、実用上は必ずしもその必要はないので本発明における円偏光板は楕円偏光板をも包含する。直線偏光板の視認側に、さらにλ/4位相差板を積層して、出射光を円偏光とすることで偏光サングラスをかけた状態での視認性を向上させることも好ましい。
【0078】
直線偏光板とは、透過軸方向に振動している光は通すが、それとは垂直な振動成分の偏光を遮断する機能を有する機能層である。前記直線偏光板は通常、偏光子及びその少なくとも一面に貼り付けられた保護フィルムを備えた構成である。この偏光子は、前述のフィルム型偏光子または液晶塗布型偏光子のいずれでもよい。保護フィルムもすでに説明したものが用いることができる。円偏光板を構成する直線偏光板の厚さは、200μm以下が好ましく、0.5μm~100μmがさらに好ましい。この厚さが200μmを超えると、フレキシブル画像表示装置用積層体に適用可能な柔軟性(フレキシブル性)が低下することがある。前述の偏光子及び保護フィルムの厚さを適宜調節することで、好適な直線偏光板の厚さを調節することができる。
【0079】
位相差フィルムである前記λ/4位相差板とは、1/4波長板とも呼称されるものであり、入射光の偏光面にπ/2(=λ/4)の位相差を与えるものである。このような性能である位相差フィルムを前述の位相差フィルムの中から選択し、λ/4位相差板を準備することもできるが、他の一例として、液晶組成物を塗布して形成する液晶塗布型位相差板を、λ/4位相差板とすることもできる。この液晶組成物を塗布して形成する液晶塗布型位相差板は、後述のように、極めて厚さが薄いλ/4位相差板を得ることができる。そのため、この液晶塗布型位相差板は、フレキシブル画像表示装置用積層体の円偏光板を構成するλ/4位相差板として特に好ましい。
【0080】
ここで、前記λ/4位相差板を形成する液晶組成物について説明する。
前記液晶組成物は、ネマチック、コレステリック、スメクチック等の液晶状態を示す性質を有する液晶性化合物を含む。前記液晶性化合物は重合性官能基を有している。前記液晶組成物には、複数種の液晶化合物を含んでいてもよく、複数種の液晶化合物を含む場合は、その中の少なくとも1種の液晶化合物は、重合性官能基を有するものである。前記液晶組成物はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤等を含むことができる。前記液晶塗布型位相差板は、前記液晶偏光子の製造方法で説明したことと同様に、予め配向膜を形成した基材の配向膜上に液晶組成物を塗布・硬化することにより、配向膜上に液晶位相差層を形成することで製造することができる。液晶塗布型位相差板は、延伸型位相差板に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは0.5~10μm、好ましくは1~5μmである。前記液晶塗布型位相差板は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板の透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0081】
位相差フィルムを構成する一般的な材料には、短波長ほど複屈折が大きく長波長になるほど小さな複屈折を示すものが多い。この場合には全可視光領域でλ/4の位相差を達成することはできないので、視感度の高い560nm付近に対してλ/4となるような面内位相差100~180nm、好ましくは130~150nmとなるように設計されることが多い。通常とは逆の複屈折率波長分散特性を有する材料を用いた逆分散λ/4位相差板を用いることは視認性をよくすることができるので好ましい。このような材料としては延伸型位相差板の場合は特開2007‐232873号公報等、液晶塗布型位相差板の場合には特開2010‐30979号公報記載されているものを用いることも好ましい。
【0082】
また、円偏光板を構成する、好ましい位相差フィルムを形成する他の方法としては、λ/2位相差板と組み合わせることで広帯域λ/4位相差板を得る技術も知られている(特開平10-90521号公報)。λ/2位相差板もλ/4位相差板と同様の材料方法で製造される。延伸型位相差板と液晶塗布型位相差板の組み合わせは任意であるが、どちらも液晶塗布型位相差板を用いることは、フィルムの厚さを薄くすることができるので好ましい。
【0083】
前記円偏光板には斜め方向の視認性を高めるために、正のCプレートを積層する方法も知られている(特開2014-224837号公報)。この正のCプレートも液晶塗布型位相差板であっても延伸型位相差板であってもよい。この正のCプレートの厚さ方向の位相差は-200~-20nm好ましくは-140~-40nmである。
【0084】
(タッチセンサ)
タッチセンサは入力手段として用いられる。タッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が提案されており、いずれの方式でも構わない。これらの中でも静電容量方式が好ましい。
【0085】
静電容量方式タッチセンサは、表示パネル面からみて、活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。
タッチセンサは、フレキシブルな特性を有する基板と;前記基板の活性領域に形成された感知パターンと;前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記ウィンドウフィルムの透明基板と同様の材料から形成された基板が使用できる。タッチセンサの基板は、その靱性が2,000MPa%以上のものが、タッチセンサのクラック抑制の面から好ましい。より好ましくは靱性が2,000MPa%~30,000MPa%であってもよい。
【0086】
前記感知パターンは、第1方向に形成された第1パターン及び第2方向に形成された第2パターンを備えることができる。第1パターンと第2パターンは互いに異なる方向に配置される。第1パターン及び第2パターンは、同一層に形成され、タッチされる地点を感知するためには、それぞれのパターンが電気的に接続されなければならない。第1パターンは、各単位パターンが継ぎ手を介して互いに接続された形態であるが、第2パターンは、各単位パターンがアイランド形態に互いに分離された構造になっているので、第2パターンを電気的に接続するためには別途のブリッジ電極が必要である。感知パターンは、周知の透明電極素材から形成される。この透明電極素材としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム亜鉛スズ酸化物(IZTO)、カドミウムスズ酸化物(CTO)、PEDOT(poly(3,4―ethylenedioxythiophene))、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン、金属ワイヤ(金属ワイヤに使用される金属は特に限定されず、例えば、銀、金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、テレニウム、クロムなどを挙げることができる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。)等を挙げることができ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。好ましくは、ITOである。ブリッジ電極は感知パターン上部に絶縁層を介して前記絶縁層上部に形成することができ、基板上にブリッジ電極が形成されており、その上に絶縁層及び感知パターンを形成することができる。前記ブリッジ電極は感知パターンと同じ素材で形成することもでき、モリブデン、銀、アルミニウム、銅、パラジウム、金、白金、亜鉛、スズ、チタンまたはこれらのうちの2種以上の合金などの金属で形成することもできる。第1パターンと第2パターンは電気的に絶縁されなければならないので、感知パターンとブリッジ電極の間には絶縁層が形成される。絶縁層は第1パターンの継ぎ手とブリッジ電極の間にのみ形成することもでき、感知パターンを覆う層の構造に形成することもできる。後者の場合は、ブリッジ電極は絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して第2パターンを接続することができる。前記タッチセンサはパターンが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域間の透過率の差、具体的には、これらの領域における屈折率の差によって誘発される光透過率の差を適切に補償するための手段として基板と電極の間に光学調節層をさらに含むことができる。前記光学調節層は無機絶縁物質または有機絶縁物質を含むことができる。光学調節層は光硬化性有機バインダー及び溶剤を含む光硬化組成物を基板上にコーティングして形成することができる。前記光硬化組成物は無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子によって光学調節層の屈折率が上昇することができる。
前記光硬化性有機バインダーは、例えば、アクリレート系単量体、スチレン系単量体、カルボン酸系単量体などの各単量体の共重合体を含むことができる。前記光硬化性有機バインダーは、例えば、エポキシ基含有繰り返し単位、アクリレート繰り返し単位、カルボン酸繰り返し単位などの互いに異なる各繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
前記無機粒子は、例えば、ジルコニア粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などを含むことができる。
前記光硬化組成物は、光重合開始剤、重合性モノマー、硬化補助剤などの各添加剤をさらに含むこともできる。
【0087】
前記フレキシブル画像表示装置用積層体を形成する各層(ウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサ)は、接着剤によって形成することができる。接着剤としては、すでに説明した水系接着剤や活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤がよく用いられる。
【0088】
(遮光パターン)
前記遮光パターンは、前記フレキシブル画像表示装置のベゼルまたはハウジングの少なくとも一部として適用することができる。遮光パターンによって前記フレキシブル画像表示装置の辺縁部に配置される配線が隠されて視認されにくくすることで、画像の視認性が向上する。前記遮光パターンは単層または複層の形態であってもよい。遮光パターンのカラーは特に制限されることはなく、黒色、白色、金属色などの多様なカラーであってもよい。遮光パターンは、カラーを具現するための顔料と、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂等の高分子で形成することができる。これらの単独または2種類以上の混合物で使用することもできる。前記遮光パターンは、印刷、リソグラフィ、インクジェット等各種の方法にて形成することができる。遮光パターンの厚さは1μm~100μmであってもよく、好ましくは2μm~50μmである。また、遮光パターンの厚み方向に傾斜等の形状を付与していてもよい。
【0089】
以上、本発明の製造方法に用いる積層体に含まれる、光学フィルム及び粘着剤について説明した。続いて、本発明の製造方法について説明する。
【0090】
(粉体)
再び、図1の(a)及び(b)を参照して、本発明の製造方法について説明する。
光学フィルム50の端面Eに付着した粉体fは、積層体100の端面の加工によって端面に付着する。通常、積層体100の原反から、所望のサイズの積層体100を得るために積層体100の端面が加工される。加工の例は、切断、切削、研磨である。ここで、切削とは、穴開けを含む概念である。したがって、上述したように、積層体100の端面とは、図1の(a)に示すような積層体100の外側の端面Eだけでなく、積層体100のホール(開口部)Hの内壁を形成する内側の端面Eも含む。
【0091】
切断とは、刃の挿入、レーザによる除去等により、積層体の表面から裏面にわたる切れ目を入れる工程であり、これにより、積層体の概形を定めることができる。
【0092】
切削とは、相対的に運動するバイト(刃)を積層体の端部に接触させることにより、端部の一部を削って、新たな端面を形成する工程である。また、この切削とは上記のとおり、穴開け加工を含む。穴開け加工とは例えば、図1の(b)に示すように、積層体100にドリル等を用いて、所望の位置にホールHを設ける加工である。このような穴開け加工では、ホールHの内壁を形成する内側の端面Eに粉体f(穴開け加工屑)が付着することがある。
【0093】
研磨とは、相対的に運動する砥粒(固定砥粒でも遊離砥粒でも良い)を積層体の端面に接触させて、端面の一部を削る工程である。研磨は、研削と呼ばれる工程も含む。
【0094】
例えば、積層体100の原反を刃やレーザによって所望の大きさより少し大きな平面形状に切断した後、切断した積層体の端面の研削及び/又は研磨により、積層体の平面形状をあらかじめ定められた寸法にすることができ、さらに、端面の直角度や平面性を高めることができる。
【0095】
積層体の平面形状(厚み方向から見た形状)に特に限定はない。たとえば、正方形、矩形、円形、等とすることができる。
【0096】
積層体の端面に対するこれらの加工により、積層体100を構成している材料の粉体が発生し、その一部が積層体100の端面Eに付着する。したがって、前記積層体にこれらの加工を行うことが、本発明の製造方法における準備工程の一実施態様である。端面Eとは、積層体100の2つの主面間を接続する面であることができる。
【0097】
粉体の平均粒径は、例えば、10~3000μmであることができる。この粒径は、レーザ回折法による重量基準の粒度分布のD50である。
【0098】
(衝突工程(ドライアイス粒子の衝突による粉体の除去工程))
続いて、積層体100の端面Eに、ドライアイス粒子を衝突させて、端面上の粉体fを端面から除去する。
【0099】
具体的には、ドライアイス粒子をガスで搬送して積層体100の端面Eに衝突させることが好適である。
【0100】
衝突させるドライアイス粒子の平均粒径は特に限定されないが、粉体を効率よく除去する観点から100μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層がドライアイスの衝突により欠けることを抑制する観点から、1000μm以下であることが好ましい。
【0101】
ドライアイス粒子の平均粒径は、レーザドップラ流速計により測定できる。
【0102】
衝突させるドライアイス粒子の速度は、5m/sec~100m/secとすることができる。
【0103】
ドライアイスの搬送ガスは特に限定されず、例えば、窒素、空気、炭酸ガスとすることができる。
【0104】
具体的には、図3のようなドライアイス粒子供給部(装置)300を使用することができる。
【0105】
この装置は、液体二酸化炭素源310、ノズル320、搬送ガス源330、液体二酸化炭素源310及びノズル320を接続するラインL1、及び、搬送ガス源330及びノズル320を接続するラインL2を備える。
【0106】
ラインL1には、バルブ340及びオリフィス350が、ラインL2には、バルブ360が設けられている。
【0107】
バルブ340を開けて液体二酸化炭素源310の液体をオリフィス350で断熱膨張させてドライアイス粒子(ドライアイススノー)を生成し、ノズル320に送る。バルブ360を開けて、搬送ガス源330からガスをノズル320に供給して、ノズル320からドライアイス粒子dをガスで吹き出させて、積層体100の端面Eに供給する。
【0108】
ドライアイス粒子dの粒径は、オリフィス350で断熱膨張させてからノズル320で吹き出すまでの距離(断熱膨張距離)や、ノズル320とドライアイス粒子の供給対象との距離(噴射距離)により調節できる。また、ドライアイス粒子供給部(装置)を用いた適当な予備実験を行って、粉体fの除去度合いを確認し、断熱膨張距離や噴射距離を調整することもできる。
【0109】
ノズル320と積層体100の端面Eとの距離(噴射距離)は、20mm未満とすることが好適である。また、断熱膨張距離は、例えば、10~500mmとすることができる。
【0110】
搬送部400により、積層体100とノズル320との位置を相対移動させて、ドライアイス粒子dが衝突する部分を端面E上において走査させることが好適である。例えば、図3において、搬送部400をもちいて、ドライアイス粒子dの吹き出し方向(横方向)と直交する面内において、端面Eにおけるドライアイス粒子dの衝突部が移動するように、積層体100を走査させることができる。
端面E上におけるドライアイス粒子dの衝突部の走査の速度は、1~100m/secとすることができる。
【0111】
(作用)
本実施形態によれば、積層体100の端面Eにドライアイス粒子dが吹きつけられるので、端面上から切断屑、切削屑、穴開け加工屑、研磨屑などの粉体が好適に除去される。これにより、後工程での粉体による汚染が低減されて好ましい。また、テープの貼り付け及び剥離などの方法に比べて、粉体の除去に掛かる時間も短くなる。
また、衝突させるドライアイス粒子の粒径を100~1000μmとすると、粉体の除去率を高くしつつ、端面における粘着剤層の欠けを抑制できて好ましく、200~700μmとするとより好ましい。
【0112】
(複数の積層体を積層した積層構造体に対する粉体の除去)
上述では、一つの積層体100に対してドライアイス粒子を衝突させているが、図4に示すように、複数の積層体100を厚み方向に積層した積層構造体120の端面Eにドライアイスを衝突させることも好適である。これによれば、積層体100の大量処理が可能となる。
【0113】
(端面の加工と、粉体の除去との順番)
積層体100の端面の一部の加工(切断、切削、及び研磨)が終了した後、積層体100の端面の他の部分の加工をしている間に、同時並行で、端面における加工が終了した部分に対してドライアイス粒子を吹き付けて粉体の除去をしてもよい。これにより、工程時間の短縮が可能となる。
【0114】
反対に、積層体の端面に対する切断、切削、研磨など加工を全部終了した後に、積層体100の端面にドライアイス粒子を衝突させて端面の粉体をクリーニングし、端面にドライアイス粒子を衝突させる際に、積層体の端面の他の部分の加工を行なわないこともできる。この場合、ドライアイス粒子の衝突により粉体を除去する雰囲気(空間)と、端面を加工する雰囲気(空間)とを分けることができるので、加工により生じた粉体による端面のコンタミの防止も可能となる。
【0115】
(衝突工程(粉体の除去工程)時の雰囲気)
ドライアイス粒子による積層体および積層構造体の端面の粉体の除去工程時の積層体及び積層構造体のまわりの雰囲気は、空気雰囲気であることができるが、必要に応じ窒素、炭酸ガス等の雰囲気でもよい。また、雰囲気の温度は、通常20~30℃であり、20~27℃が好ましい。雰囲気の相対湿度は、通常80%未満であり、30~75%が好ましく、40~70%がより好ましい。雰囲気の相対湿度が、80%以上となると、積層体や積層構造体の冷却により結露が生じ、積層体のうちの吸水性の高いフィルム(例えば偏光子)などが吸水して膨潤などし、積層体や積層構造体の外観や光学特性に不具合を生じることがある。
【0116】
(光学部材の製造装置)
続いて、図5を参照して、上記の方法の実施に好適な光学部材の製造装置1000について説明する。
【0117】
この製造装置1000は、積層体100又は積層構造体120の端面を切断、切削、又は研磨等の加工をする端面加工部200と、積層体100における端面加工部200に加工された部分にドライアイス粒子を衝突させるドライアイス粒子供給部300と、積層体100を搬送する搬送部400とを備える。
【0118】
図5において、端面加工部200として、切削装置を描いている。この切削装置は、水平方向に伸びる回転軸210、回転軸に取り付けられた円盤220、及び、円盤220に取り付けられたバイト230を備える。バイト230の回転により、積層体等の端面の切削が可能である。
【0119】
ドライアイス粒子供給部300においては、簡単のため、ノズル320のみを記載している。
【0120】
搬送部400は、積層体100又は積層構造体120を厚み方向に挟んで支持する一対の上治具420及び下治具422と、上治具420を上記厚み方向(下方向)にプレスするシリンダー430、下治具422に連結されて上治具420及び下治具422を鉛直軸(Z軸)周りに回転させる回転機構410、及び、上治具420及び下治具422を水平方向(X方向)に移動させる移動機構440を有している。
【0121】
次に、この装置を用いた光学部材の製造方法を説明する。まず、上治具420及び下治具422間に積層体100又は積層構造体120を挟む。次に、シリンダー430により、上治具420を下治具422に向かってプレスして、積層体100又は積層構造体120を固定する。本実施形態では、積層体100又は積層構造体120は上から見て矩形であって4つの端面を有する。したがって、2つの端面EがX軸に平行に向くように、回転機構410で積層体100又は積層構造体120の回転位置を調節する。
【0122】
続いて、端面加工部200を起動する。具体的には、円盤220を回転させる。次に、移動機構440により、積層体100及び積層構造体120をX方向に移動させて端面加工部200のバイト230と端面Eとを接触させる。これにより、積層体100及び積層構造体120の互いに対向する一対の端面Eがバイト230により切削される。このときに、端面Eには切削屑が付着する。
【0123】
続いて、搬送部400により、積層体100及び積層構造体120を-X方向に移動すると共に、ドライアイス粒子供給部300のノズル320からドライアイス粒子を供給する。これにより、積層体100及び積層構造体120の切削済みの端面Eに対してドライアイス粒子が衝突し、端面Eの粉体が除去される。
【0124】
続いて、積層体100及び積層構造体120を搬送部400により更に-方向に移動し、回転機構410により、残りの2つの端面がX方向と平行となるように、積層体100及び積層構造体120を回転させる。その後、先ほどと同様に、残りの2つの端面の加工、及び、その後のドライアイス粒子による粉体の除去を順に行えばよい。
【0125】
端面加工部200は、加工の態様に応じて様々な形態とすることができる。例えば、図6に示すように、鉛直軸周りに回転する円柱体240と、円柱体240の外周面上に軸方向に伸びるように設けられた長刃250とを有するカンナ型の回転刃で切削を行ってもよい。
【0126】
また、バイト230の代わりに、円盤の表面に多数の砥粒が設けられた研磨板を使用することにより、研磨を行うこともできる。
【0127】
また、切削及び研磨を必要としない場合には、切断装置とすることもできる。
【0128】
最後に、積層体100に設けられたホールHの端面Eに付着した粉体f(穴開け加工屑)を除去する方法の一例について、図7を参照して説明する。
【0129】
まず、積層体100にそれぞれ穴開け加工を行って、ホールHの内側の端面Eに粉体(穴開け加工屑)fが付着している複数の積層体100を準備する。図1の(b)に示すように、各積層体100は、穴開け加工により所定の位置に設けられたホールHを有している。次に、各積層体100のホールHの位置が一つの軸(厚み方向に伸びる軸)上に並ぶようにこれらの積層体100を積層して積層構造体120を得る。そうすると、積層されている各積層体100の各ホールH同士が連結して、当該積層構造体120に積層構造体120の厚み方向に貫通する貫通孔H’が形成される。
【0130】
この積層構造体120を厚み方向にプレスする一対の上治具420及び下治具422において、一方の治具にドライアイス粒子供給口420aを、他方の治具にドライアイス粒子回収口422bをあらかじめ設けておく。貫通孔H’が、ドライアイス粒子供給口420a、及び、ドライアイス粒子回収口422bと連通するように、上治具420及び下治具422を配置して、この積層構造体120を厚み方向にプレスする。これにより、ドライアイス衝突工程前の準備工程が終了する。
【0131】
次に、ドライアイス粒子供給口420aを介して貫通孔H’内にノズル320からドライアイス粒子を供給する(衝突工程)。ノズル320から噴射されたドライアイス粒子は進むに従って幅方向に広がり、積層構造体120の貫通孔H’の端面Eに衝突し、粉体fと共にドライアイス粒子回収口422bから排出される。このような装置を用いれば、穴開け加工により、ホールHの内壁である端面Eに粉体fが付着している積層体100から、粉体fを効率的に除去することができる。
【実施例
【0132】
(積層体原反)
プロテクトフィルム(PET(ポリエチレンテレフタレート)製:53μm)/保護フィルム(TAC(トリアセチルセルロース)製:32μm)/偏光子(PVA(ヨウ素吸着ポリビニルアルコール):12μm)/保護フィルム(COP(環状オレフィン系樹脂)製:23μm)/粘着剤層(アクリル系粘着剤:20μm)/セパレータフィルム(PET:38μm)という層構成を有する原反積層体を得た。
保護フィルムと偏光子とは水系接着剤により接着した。積層体の厚みは178μmとなった。
【0133】
(積層体の端面の加工)
原反積層体を、トムソン刃により、140×65mmのサイズの矩形の形状に打ち抜いて積層体を得た。
【0134】
次に、積層体を50枚重ねて積層構造体を得た。積層構造体の各端面を、切削装置により切削した。その後、積層構造体の各端面を研磨装置により研磨した。
【0135】
(積層体の端面の粉体の除去)
各実施例及び比較例に対して、以下の条件で積層体の端面の粉体の除去を行った。
【0136】
(実施例1)
ドライアイス粒子供給装置:炭酸ガス式ドライアイスブラスト
CO圧力:5MPa(なお、CO圧力とはオリフィスへの供給圧力である。)
空気圧力:0.5MPa
ノズル先端と端面との距離:約50mm
ノズルの走査速度:50mm/5秒
ノズルの中心位置及びノズル走査方向:ノズルは積層構造体の端面における厚み方向の中央に向かせ、ノズルを積層構造体の端面の厚みと直交する方向に走査した。
ドライアイス粒子の平均粒径:1~100μm
雰囲気温度:24℃~26℃、雰囲気の相対湿度:45%~65%
【0137】
(実施例2)
ドライアイス粒子供給装置:炭酸ガス式ドライアイスブラスト
CO圧力:7MPa
空気圧力:0.5MPa
ノズル先端と端面との距離:約50mm
ノズルの走査速度:50mm/5秒
ノズルの中心位置及びノズル走査方向:ノズルは積層構造体の端面における厚み方向の中央に向かせ、ノズルを積層構造体の端面の厚みと直交する方向に走査した。
ドライアイス粒子の平均粒径:200~700μm以下
雰囲気温度:24℃~26℃、雰囲気の相対湿度:45%~65%
【0138】
(実施例3)
ドライアイス粒子供給装置:ペレット式ドライアイスブラスト
ペレット径:φ3mm
空気圧力:0.5MPa
ノズル先端と端面との距離:約50mm
ノズルの走査速度:50mm/5秒
ノズルの中心位置及びノズル走査方向:ノズルは積層構造体の端面における厚み方向の中央に向かせ、ノズルを積層構造体の端面の厚みと直交する方向に走査した。
ドライアイス粒子の平均粒径:1000μm以上
雰囲気温度:24℃~26℃、雰囲気の相対湿度:45%~65%
【0139】
(実施例4)
雰囲気温度を26℃とし、雰囲気の相対湿度を80~90%とした以外は、実施例2と同じ条件で、積層体の端面の粉体の除去を行った。
なお、除去時にドライアイス粒子と接触することにより積層体が冷却され、積層体に結露が発生した。結露が発生した部分を確認すると、研磨屑や欠けの発生は無かったが、積層体の端部に膨潤が生じていた。
【0140】
(比較例1)
エタノールを含浸させたクリーンルーム用ワイパー(クラレクラフレックス製)で、積層構造体の端面をこすった。
【0141】
(比較例2)
OLFA製カッターナイフを積層構造体の端面に沿って移動させた。
【0142】
(比較例3)
粘着テープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標))を積層構造体の端面に貼り付けた後、粘着テープを端面から剥離した。
【0143】
(比較例4)
液体二酸化炭素を供給しない以外は、実施例1と同様にして、空気流を積層構造体の端面に吹き付けた。
【0144】
(評価)
顕微鏡にて端面を観察し、端面の粉体残りの状態、及び、端面の粘着剤層の欠けの有無を調べた。
【0145】
結果を表1に示す。
【表1】
【0146】
なお、「端面の粉体残り」の○とは、厚みと直交する方向における30mmの長さ(以下単に長さと呼ぶ)の視野において粉体が観察されないことを示し、△とは、30mmの長さの視野において1~2個の粉体が観察されたこと、×とは30mmの長さの視野において3個以上の粉体が観察されたことをしめす。
【0147】
また、「端面の粘着剤層の欠け」の○とは、厚みと直交する方向における30mmの長さ(以下単に長さと呼ぶ)の視野において欠けが観察されないことを示し、△とは、30mmの長さの視野において1~2箇所の欠けが観察されたこと、×とは30mmの長さの視野において3個以上箇所の欠けが観察されたことをしめす。
【符号の説明】
【0148】
50…光学フィルム、80…粘着剤層、100…積層体、120…積層構造体、200…端面加工部、300…ドライアイス粒子供給部、400…搬送部、1000…光学部材の製造装置、f…粉体、E…端面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7