(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラム、および、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20221014BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20221014BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20221014BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C23C16/44 J
H01L21/31 B
C23C16/52
C23C16/54
(21)【出願番号】P 2020156802
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹林 基成
(72)【発明者】
【氏名】中條 博史
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-251867(JP,A)
【文献】特開2012-234860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/26-21/268
H01L 21/31
H01L 21/322-21/326
H01L 21/42-21/428
H01L 21/477-21/479
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する反応容器と、
前記反応容器内の雰囲気を排気する排気管と、
前記基板に
原料ガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部に連通し、前記
原料ガスを
前記反応容器に供給する
複数の配管で構成されるガス供給管と、前記
複数の配管の間に設けられる複数のバルブと、前記複数のバルブの間
であって、前記複数の配管のそれぞれに
少なくとも1つ以上設けられた複数の圧力測定部と、を有する
流量調整ユニットと、
前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記
配管の閉塞レベルを判定可能に構成された制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記閉塞レベルに応じて、対処プログラムを実行するように前記
流量調整ユニットを制御可能に構成される、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記対処プログラムが複数記録された記憶部を有し、
前記制御部は、前記複数の対処プログラムから、前記閉塞レベルに対応する対処プログラムを選択して実行可能に構成される、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部に接続された表示部を有し、
前記制御部は、前記閉塞レベルに応じて、前記表示部に前記対処プログラムに関する情報を表示可能に構成される、
請求項2又は3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記
流量調整ユニットは、前記圧力測定部に対応し、前記ガス供給管を加熱する複数のガス管加熱部を有し、
前記制御部は、前記閉塞レベルに応じて、前記ガス管加熱部の温度を制御可能に構成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数の圧力測定部の内、閉塞していると判定した圧力測定部を含む前記ガス供給管の下流側に位置するガス管加熱部の温度を上昇させるよう前記ガス管加熱部を制御可能に構成される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記流量調整ユニットは、前記圧力測定部に対応し、前記ガス供給管を加熱する複数のガス管加熱部を有し、
前記制御部は、前記ガス管加熱部の温度を上昇させる際に、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部に対応するガス管加熱部の温度と、それよりも下流側に配置されたガス管加熱部の温度を略一定の温度に上昇させるように前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記流量調整ユニットは、前記圧力測定部に対応し、前記ガス供給管を加熱する複数のガス管加熱部を有し、
前記制御部は、前記ガス管加熱部の温度を上昇させる際に、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部に対応するガス管加熱部から、
前記ガス
供給管の下流に向かって、加熱温度を上昇させる様に前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ガス管加熱部の温度を上昇させる際に、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部よりも下流側に位置するバルブをフルオープンにするよう前記複数のバルブを制御可能に構成される、
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記
流量調整ユニットは、前記ガス供給管内を排気する排気部を有し、
前記制御部は、前記ガス供給管を加熱している間、前記ガス供給管内を排気するよう前記排気部を制御可能に構成される、
請求項5乃至9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記
流量調整ユニットは、前記ガス供給管内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を有し、
前記制御部は、前記ガス供給管を加熱している間、前記ガス供給管内に前記不活性ガスの供給と前記ガス
供給管内の排気を繰り返すように前記不活性ガス供給部と前記排気部とを制御可能に構成される、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部に接続された表示部を有し、
前記制御部は、前記ガス供給管の内、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部が設けられた部分の配管を交換する旨の情報を前記表示部と上位装置の少なくとも1つに報知可能に構成される、
請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記
流量調整ユニットは、前記ガス供給管内を排気する排気部を有し、
前記制御部は、前記複数の
配管の内、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部が属する前記
配管の上流側の
配管と下流側の
配管を排気するよう前記排気部を制御可能に構成される、
請求項5または12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記
流量調整ユニットは、前記ガス供給管内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を有し、
前記制御部は、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部が属する前記
配管の上流側の
配管と下流側の
配管に前記不活性ガスを供給するよう前記不活性ガス供給部を制御可能に構成される、
請求項5、12,13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記流量調整ユニットは、前記ガス供給管内を排気する排気部を有し、
前記制御部は、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部が属する前記
配管の上流側の
配管と下流側の
配管の排気と不活性ガス供給とを交互に行わせる様に前記排気部と前記不活性ガス供給部とを制御可能に構成される、
請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記流量調整ユニットは、前記圧力測定部に対応し、前記ガス供給管を加熱する複数のガス管加熱部を有し、
前記制御部は、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部が属する前記
配管の上流側と下流側に設けられたガス管加熱部の温度を維持しつつ、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部が属する
配管に設けられたガス管加熱部の温度を低下させるよう前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、
請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記制御部は、
前記閉塞レベルに応じて、前記閉塞
レベルを判定した圧力測定部が属する
配管に設けられたガス管加熱部の温度は、前記ガス
供給管内の排気と前記ガス
供給管内への不活性ガスの供給処理が終わった後、低下させるよう前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、
請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記流量調整ユニットは、前記圧力測定部に対応し、前記ガス供給管を加熱する複数のガス管加熱部を有し、
前記制御部は、前記
複数のガス管加熱部の内、
交換する部分の圧力測定部が属する
配管側の温度を、他の部分の温度よりも低くなるように前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、
請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記交換する部分の配管の位置を前記表示部に報知する、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記
流量調整ユニットは、塩素含有ガスを検知するガス検知器を少なくとも1つ以上有し、
前記制御部は、前記配管を交換する際に、前記検知器が測定した値によって、アラームを報知するよう前記表示部を制御可能に構成される、
請求項19に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記制御部は、前記交換
する部分の配管が交換されたことを検出後、前記
流量調整ユニットの状態復旧処理を実行させる様に、前記
流量調整ユニットを制御可能に構成される、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項22】
基板を収容する反応容器と、
前記基板に
原料ガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部に
連通し、前記原料ガスを前記反応容器に供給する複数の配管で構成されるガス供給管と
、前記
複数の配管の間に設けられる複数のバルブと
、前記複数のバルブの間
であって、前記複数の配管のそれぞれに
少なくとも1つ以上設けられた複数の圧力測定部と
、を有する
流量調整ユニットと、を有する基板処理装置の前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記ガス供給管の閉塞レベルを判定する工程と、
前記閉塞レベルに基づいて、前記ガス供給管の閉塞を解消させる工程と、
前記
反応容器内へ前記基板を搬入する工程と、
前記
流量調整ユニットの前記ガス供給管から前記ガス供給部を介して前記基板に前記
原料ガスを供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項23】
基板を収容する反応容器と、
前記基板に
原料ガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部に
連通し、前記原料ガスを前記反応容器に供給する複数の配管で構成されるガス供給管と
、前記
複数の配管の間に設けられる複数のバルブと
、前記複数のバルブの間
であって、前記複数の配管のそれぞれに
少なくとも1つ以上設けられた複数の圧力測定部と
、を有する
流量調整ユニットと、を有する基板処理装置の前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記ガス供給管の閉塞レベルを判定する手順と、
前記閉塞レベルに基づいて、前記ガス供給管の閉塞を解消させる手順と、
前記
反応容器内へ前記基板を搬入する手順と、
前記
流量調整ユニットの前記ガス供給管から前記ガス供給部を介して前記基板に前記
原料ガスを供給する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項24】
基板を収容する反応容器と、前記基板に原料ガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部に連通し、前記原料ガスを前記反応容器に供給する複数の配管で構成されるガス供給管と、前記複数の配管の間に設けられる複数のバルブと、前記複数のバルブの間であって、前記複数の配管のそれぞれに少なくとも1つ以上設けられた複数の圧力測定部と、を有する流量調整ユニットと、を有する基板処理装置の前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記ガス供給管の閉塞レベルを判定する工程と、
前記閉塞レベルに基づいて、前記ガス供給管の閉塞を解消させる工程と、
前記反応容器内へ前記基板を搬入する工程と、
前記流量調整ユニットの前記ガス供給管から前記ガス供給部を介して前記基板に前記原料ガスを供給する工程と、
を有する基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に膜を形成する基板処理装置において、ガス配管内に液体又は固体が堆積し、配管やバルブ等が詰まり、定期的にメンテナンスが必要であることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス供給管は、ヒータなどによって加熱し、ガス供給管に原料が固体化して付着しない様に構成されている。しかしながら、ガス供給管に原料が固体化して付着し、ガス供給管が閉塞される場合がある。この場合、ガス供給管のどの部分で閉塞されているかの閉塞箇所の特定を行うことになる。どこで閉塞しているか特定できない様な場合には、ガス供給管の内、閉塞が考えられるガス供給管を交換する交換作業が必要となる。閉塞箇所の特定や交換作業の時間が長くなると、ガス供給管の閉塞を解消するための解消時間が長くなり、基板処理装置の停止時間(ダウンタイム)が長くなり、結果的に、基板処理装置の製造スループットが低下する。
【0005】
本開示の課題は、ガス供給管の閉塞の解消時間を短縮し、基板処理装置の製造スループットを向上させる技術を提供することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0007】
すなわち、反応室内の基板に処理ガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部に接続されたガス供給管と、前記ガス供給管に設けられる複数のバルブと、前記複数のバルブの間に設けられた複数の圧力測定部と、を有するガス供給システムと、前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記ガス供給管の閉塞レベルを判定可能に構成された制御部と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記技術によれば、ガス供給管の閉塞の解消時間を短縮し、基板処理装置の製造スループットを向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の斜透視図である。
【
図3】
図3は本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は本開示の一実施形態における基板処理工程を示す図である。
【
図5】
図5は
図4の基板処理工程におけるMo含有膜形成工程を示す図である。
【
図6】
図6は本開示の一実施形態で好適に用いられる原料供給ユニットおよび流量制御ユニットを示す図である。
【
図7】
図7は比較例に係るガス供給システムの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は記憶装置に格納されたテーブルであり、閉塞レベルと対処プログラムとのテーブルを示す図である。
【
図9】
図9はコントローラの入出力装置(表示部)の表示状態を説明する図である。
【
図12】
図12はガス管加熱部の温度制御の例を説明する図である。
【
図13】
図13はガス管加熱部の温度制御の他の例を説明する図である。
【
図14】
図14はガス管加熱部の温度制御のさらに他の例を説明する図である。
【
図15】
図15はコントローラの入出力装置(表示部)の表示状態を説明する図である。
【
図16】
図16はガス管加熱部(HTP2、HTP4)の低温部分を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
(実施態様)
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0012】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0013】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室(反応室)201が形成されている。
【0014】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0015】
処理室201内には、ノズル410,420がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0016】
ガス供給管310,320には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320には、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522及び開閉弁であるバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0017】
ガス供給管310,320の先端部にはノズル410,420がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0018】
ノズル410,420は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420aが設けられている。これにより、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0019】
ノズル410,420のガス供給孔410a,420aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0020】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、原料ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。原料ガスとしては、モリブデン(Mo)と酸素(O)を含むモリブデン(Mo)含有ガスを用いることができる。Mo含有ガスとしては、例えば二酸化二塩化モリブデン(MoO2Cl2)ガスや、四塩化酸化モリブデン(MoOCl4)を用いることができる。なお、この原料は、常温常圧で、固体の状態の原料である。
【0021】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、還元ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。還元ガスとしては、例えば水素(H)含有ガスである水素(H2)ガスを用いることができる。
【0022】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、希ガスである例えばアルゴン(Ar)ガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。以下、不活性ガスとしてArガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、Arガス以外に、例えば、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0023】
主に、ガス供給管310,320、MFC312,322、バルブ314,324、ノズル410,420により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310からMo含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314によりMo含有ガス供給系が構成されるが、ノズル410をMo含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により還元ガス供給系が構成されるが、ノズル420を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522、バルブ514,524により不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系は希ガス供給系と称してもよい。
【0024】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0025】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間からなる排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0026】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0027】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0028】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送系)として構成されている。
【0029】
一次納品基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0030】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0031】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル付の液晶表示装置等の表示部として構成された入出力装置122が接続されている。
【0032】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,512,522、バルブ314,324,514,524、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、後述の加熱部HTP,LTP、バルブAV05,AV06,AV08,AV09,AV10、圧力センサP2,P3,P4,P5、ガス検知器M2,M3,M4,M5等に接続可能に構成されている。なお、ここで接続とは、物理的に接続されていることを意味するだけでなく、直接または間接的に電気信号・情報等を通信可能に構成されていることも意味する。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,512,522による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,514,524の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作、加熱部HTP,LTPによるガス供給管310の加熱制御、等を制御するように構成されている。
【0035】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
(2)基板処理工程
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、例えば3DNANDのコントロールゲート電極として用いられるモリブデン(Mo)を含有するMo含有膜を形成する工程の一例について、
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、本開示の一実施形態における基板処理工程を示す図である。
図5は、
図4の基板処理工程におけるMo含有膜形成工程を示す図である。Mo含有膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0037】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)ウエハ200を処理容器内である処理室201に収容する工程と、
(b)ウエハ200を所定の温度に調整する工程と、
(c)ウエハ200に対してMo含有ガスを供給する工程と、
(d)ウエハ200に対して還元ガスを第1の時間供給する工程と、
(e)(b)の後、(c)と(d)とを1回以上行うことにより、ウエハ200上にMo含有膜を形成する工程と、を有する。
【0038】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0039】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、処理室201内に搬入(ボートロード)され、処理容器に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0040】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0041】
また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われるが、後述するMo含有膜形成工程が終了するまでの間は、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、所定の温度である400℃以上550℃以下の範囲内の温度となるような温度に調整して行われる。
【0042】
[Mo含有膜形成工程]
(Mo含有ガス供給、ステップS11)
バルブ314を開き、ガス供給管310内に原料ガスであるMo含有ガスを流す。Mo含有ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してMo含有ガスが供給される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にArガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管510内を流れたArガスは、MFC512により流量調整され、Mo含有ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル420内へのMo含有ガスの侵入を防止するために、バルブ524を開き、ガス供給管520内にArガスを流す。Arガスは、ガス供給管320、ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。なお、Mo含有ガスは、例えば、Moと酸素(O)を含むガスである。Mo含有ガスとしては、具体的には、MoO2Cl2やMoOCl4等がある。
【0043】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力であって、例えば1000Paとする。MFC312で制御するMo含有ガスの供給流量は、例えば0.1~1.0slm、好ましくは0.1~0.3slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれていることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは、「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0044】
このとき処理室201内に流しているガスはMo含有ガスとArガスのみである。Mo含有ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上にMo含有層が形成される。なお、Mo含有ガスとして、上述のガスを用いた場合、Mo含有層は、ClやOを含むMo層であってもよいし、MoO2Cl2(又はMoOCl4)の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0045】
(残留ガス除去、ステップS12)
Mo含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば36秒後に、ガス供給管310のバルブ314を閉じて、Mo含有ガスの供給を停止する。つまり、Mo含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば36秒とする。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはMo含有層形成に寄与した後のMo含有ガスを処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする。このときバルブ514,524は開いたままとして、Arガスの処理室201内への供給を維持する。Arガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくはMo含有層形成に寄与した後のMo含有ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0046】
(還元ガス供給、ステップS13)
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、還元ガスを流す。還元ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、還元ガスが供給される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にArガスを流す。ガス供給管520内を流れたArガスは、MFC522により流量調整される。Arガスは還元ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内への還元ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内にArガスを流す。Arガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0047】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力であって、例えば2000Paとする。MFC322で制御する還元ガスの供給流量は、例えば1~50slm、好ましくは15~30slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。このとき還元ガスをウエハ200に対して供給する時間は、10分以上30分以下の範囲内の時間であって、例えば20分とする。還元ガスをウエハ200に対して供給する時間を10分以上とすることによりウエハ200に吸着したMo含有ガスを還元することができ、30分以下とすることによりスループットを向上させ、生産性を確保することができる。
【0048】
このとき処理室201内に流しているガスは、還元ガスとArガスのみである。還元ガスは、ステップS11でウエハ200上に形成されたMo含有層の少なくとも一部と置換反応する。すなわち、Mo含有層中のOや塩素(Cl)が、還元ガスと反応し、Mo層から脱離して、水蒸気(H2O)、塩化水素(HCl)、塩素(Cl2)、等の反応副生成物として処理室201内から排出される。そして、ウエハ200上にMoを含みClとOを実質的に含まないMo含有層が形成される。ここで、還元ガスとして、水素(H2)ガス,ホスフィン(PH3)ガス、モノシラン(SiH4)ガス、ボラン(BH3)ガス、ジボラン(B2H6)ガス等を用いることができる。
【0049】
(残留ガス除去、ステップS14)
Mo含有層を形成した後、バルブ324を閉じて、還元ガスの供給を停止する。そして、上述したステップS12と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはMo含有層の形成に寄与した後の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする。
【0050】
(所定回数実施)
上記したステップS11~ステップS14を順に行うサイクルを少なくとも1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さのMo含有膜を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0051】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510,520のそれぞれからArガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Arガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0052】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0053】
(3)ガス供給システム
次に、
図6を用いて、Mo含有ガスを処理室201内のノズル(ガス供給部)410へ供給するガス供給システムの構成例を説明する。
図6は、本開示の一実施形態で好適に用いられるガス供給システムの構成例を示す図である。ガス供給システムGSSは、
図6に示す様に、原料供給ユニット130および流量制御ユニット140により構成されている。原料供給ユニット130はMo含有ガスを生成する生成部であり、流量制御ユニット140は原料供給ユニット130から供給されたMo含有ガスの流量を制御して、処理室201内のノズル(ガス供給部)410へ供給する。
【0054】
原料供給ユニット130は、固体原料132が充填されている原料容器131と、原料容器131を加熱するヒータ133と、複数のバルブAV05、AV06、AV08、AV09、AV10と、複数のガス供給管310d、310c、310b、310e、310fと、圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサP2と、点線で示す加熱部HTPと、を含む。
【0055】
バルブAV10はガス供給管310dとガス供給管310eとの間に設けられる。バルブAV09はガス供給管310dとガス供給管310cとの間に設けられる。バルブAV08はガス供給管310fとガス供給管310cとの間に設けられる。バルブAV05はガス供給管310cとガス供給管310bとの間に設けられる。バルブAV06はガス供給管310cに設けられ、バルブAV06はガス供給管310cの排気を可能にする排気部(Exhaust1)に接続される。圧力センサP2はガス供給管310cに設けられ、ガス供給管310cの圧力を測定可能である。
【0056】
加熱部HTPは、点線で示す様に、複数のバルブAV05、AV06、AV08、AV09と、複数のガス供給管310c、310b、310fと、を加熱することができる。複数のバルブAV05、AV06、AV08、AV09、AV10の開閉状態は、コントローラ121によって制御されるように構成されている。また、圧力センサP2の圧力計測値は、コントローラ121へ供給されるように構成されている。加熱部HTPの加熱状態は、コントローラ121によって制御されるように構成されている。ここで、加熱部HTPの加熱温度の下限は、原料の気化温度等を基に設定され、加熱温度の上限は、固体原料の特性が変化しない温度や各部の耐熱温度を基に設定されうる。固体原料として、MoO2Cl2を用いる場合は、例えば、50℃~250℃の温度範囲の温度に設定される。好ましくは、100℃~200℃の温度範囲に設定される。ここで、固体原料の特性が変化しない温度とは、例えば、固体原料が分解しない温度である。また、各部とは、バルブAV05,AV06,AV08,AV09と、複数のガス供給管310c,310b,310f、等である。
【0057】
固体原料132は、金属含有原料または遷移金属含有原料であり、この例では、Mo含有原料を用いることができる。原料容器131をヒータ133で加熱し、窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス等の不活性ガスをガス供給管310fへ供給し、開状態のバルブAV08およびガス供給管310eを介して原料容器131に供給して、原料容器131を不活性ガスで撹拌することでMo含有ガスを発生させることができる。発生したMo含有ガスは、ガス供給管310f、開状態のバルブAV08を介してガス供給管310cへ供給することができる。ガス供給管310cへ供給されたMo含有ガスは、開状態のバルブAV05を介してガス供給管310bへ供給される。
【0058】
流量制御ユニット140は、複数のバルブAV04、AV03、314、AV01、AV11と、MFC312と、複数のガス供給管310b、310a、310、310i、310j、310kと、複数の圧力センサP5、P4、P3と、加熱部HTPと、を含む。
【0059】
バルブAV04はガス供給管310bとガス供給管310aとの間に設けられ、ガス供給管310bには圧力センサP5が設けられ、ガス管310aには圧力センサP4が設けられている。バルブAV03はガス供給管310aとガス供給管310との間に設けられ、MFC312はガス供給管310とガス供給管310iとの間に設けられる。バルブ314はガス供給管310iとガス供給管310jとの間に設けられ、ガス供給管310jには圧力センサP3が設けられている。バルブAV01はガス供給管310jとガス供給管310kとの間に設けられ、バルブAV11はガス供給管310jに設けられ、バルブAV11はガス供給管310jの排気を可能にする排気部(Exhaust2)に接続される。圧力センサP5、P4、P3は、ガス供給管310b、310a、310jの圧力をそれぞれ測定可能である。
【0060】
加熱部HTPは、点線で示す様に、複数のバルブAV04、AV03、314、AV01、AV11と、MFC312と、複数のガス供給管310b、310a、310、310i、310j、310kと、を加熱することができる。
【0061】
複数のバルブAV04、AV03、314、AV01、AV11の開閉状態は、コントローラ121によって制御されるように構成されている。また、圧力センサP5、P4、P3の圧力計測値は、コントローラ121へ供給されるように構成されている。加熱部HTPの加熱状態は、コントローラ121によって制御されるように構成されている。
【0062】
例えば、ガス供給管310bの途中の箇所Aでモリブデン(Mo)が固体化して付着し、ガス供給管310bに閉塞が発生した場合を検討する。圧力センサP5、P4、P3により、各ガス供給管310b、310a、310jの圧力値の変化はコントローラ121によって確認することができる。そのため、閉塞箇所Aでの閉塞した状況は、圧力センサP5の測定したガス供給管301bの圧力値の変化によって確認可能である。そのため、閉塞した箇所Aを含むバルブAV04とバルブAV05の間のガス供給管301bが交換対象であり、少ないガス供給管の交換範囲とすることができる。
【0063】
図7は、比較例に係るガス供給システムの構成例を示す図である。
図7が
図6と異なる点は、
図7のガス供給システムGSSrにおいて、圧力センサP5、P4、P3、バルブAV11が削除されている点である。
図7のその他の構成は、
図6と同じであるので、重複する説明は省略する。
【0064】
ガス供給管310bの途中の箇所Aでモリブデン(Mo)が固体化して付着し、ガス供給管310bに閉塞が発生した場合を検討する。ガス供給管310bの箇所Aに閉塞が起きると、バルブAV01、314、AV03、AV04、AV05、AV08を開状態とし、MFC312により流量制御を行っても、Mo含有ガスが閉塞箇所Aから処理室201に流れず、基板処理が実施できない状態となってしまう。
【0065】
この場合、基板処理の不成立やMFC312の流量異常検知機能により、ガス供給管内の閉塞が考えられ閉塞箇所の特定を行うことになる。閉塞箇所AはバルブAV01、314、AV03、AV04、AV05、AV08の開閉情報と圧力センサP1、P2の数値変化で特定するが、ガス供給管310b、310a、310jには圧力センサが設けられていないため、ガス供給管310b、310a、310jの圧力値の変化を確認することができない。圧力値の変化を確認できないガス供給管は、ガス供給管のどこで閉塞しているか特定できない。したがって、バルブAV05からノズル201の前までの範囲にあるガス供給管(301b、310a、310、310i、310j、310k)までの交換が必要となってしまうことになる。
【0066】
閉塞箇所が特定できなければ、閉塞が考えられるガス供給管の経路全てを交換することになり、多大な費用と労力が必要となる。したがって、閉塞箇所の特定や交換作業の時間が長くなり、ガス供給管の閉塞を解消するための解消時間が長くなる。このため、基板処理装置の停止時間(ダウンタイム)が長くなり、結果的に、基板処理装置の製造スループットが低下する。
【0067】
一方、
図6では、圧力センサ245、P2、P3、P4、P5の計測した圧力計測値は基板処理装置10のコントローラ121にて数値の変化を計測、チェックできるので、ガス供給管の閉塞の解消時間を短縮し、基板処理装置の製造スループットを向上させる技術を提供することにある。
【0068】
(4)ガス供給管の閉塞レベルの判定
図6では、ガス供給管310bに閉塞が発生した場合に、閉塞箇所Aを含むガス供給管310bを交換することにより、ガス供給管の閉塞を解決する方法を説明したが、これに限定されるものではなく、ガス供給管の閉塞レベルを判定することにより、適切な閉塞の解消の対応策を選択して行うことも可能である。すなわち、圧力センサ245、P2、P3、P4、P5の計測した圧力計測値は基板処理装置10のコントローラ121にて数値の変化を計測、チェックできるので、コントローラ121の記憶装置121c内に、閉塞レベルを判定する閉塞レベル判定プログラムを格納し、制御部としてコントローラ121に閉塞レベル判定プログラムを実行させ、センサ245、P2、P3、P4、P5の計測した圧力計測値に基づいて閉塞レベルを判定させることができる。閉塞レベル判定プログラムによる閉塞レベルの判定では、
図8に示す様に、3つの閉塞レベル1、2、3を判定可能にすることができる。閉塞レベルの判定は、具体的には、計測された圧力が、所定範囲から外れているか否かで判定される。ここで、所定範囲は、閉塞レベル毎に設定されている。所定範囲から、高い圧力が測定された場合は、その高い圧力が測定された圧力センサよりも下流側で閉塞が発生していることが判別できる。また、所定範囲よりも低い圧力が測定された場合は、その低い圧力が測定された圧力センサよりも上流側で閉塞が発生していることが判別できる。
【0069】
図8は、記憶装置に格納されたテーブルであり、閉塞レベルと対処プログラムとのテーブルを示す図である。コントローラ121の記憶装置121c内には、閉塞レベルごとの対処プログラムも、コントローラ121が読み出し、および、実行可能に格納されている。
図8に示すテーブルの一例では、閉塞レベル1の対処プログラムPAはアラームの報知を指示するプログラムとされ、閉塞レベル2の対処プログラムPBはガス供給管の加熱を指示するプログラムとされ、閉塞レベル3の対処プログラムPCはガス供給管の交換準備を指示するプログラムとされている。閉塞レベル判定プログラムによる閉塞レベルの判定結果が閉塞レベル1の時は、対処プログラムPAが選択されて実行される。閉塞レベル判定プログラムによる閉塞レベルの判定結果が閉塞レベル2の時は、対処プログラムPBが選択されて実行される。閉塞レベル判定プログラムによる閉塞レベルの判定結果が閉塞レベル3の時は、対処プログラムPCが選択されて実行される。
【0070】
閉塞レベル、および、プログラム概要は、たとえば、以下の意味を有するように構成することができる。
【0071】
1)閉塞レベル1:軽度の閉塞。
プログラムPAのプログラム概要:「もうすぐで閉塞する可能性がある。」旨のアラームメッセージをコントローラ121の入出力装置(表示部)122と上位装置(HOST装置)の少なくともいずれか一方、または、両方に報知する。
【0072】
2)閉塞レベル2:中度の閉塞。ガス供給管は完全に閉塞しておらず、適切な対処を行えば、ガス供給管の交換無しで、ガス供給管の圧力を復帰させることができる閉塞を意味する。
プログラムPBのプログラム概要:閉塞レベルの判定された圧力センサ以降(下流側)のガス供給管の加熱部HTPの温度を上昇させる。
【0073】
3)閉塞レベル3:重度の閉塞。ガス供給管が完全に閉塞して、ガス供給管の交換を必要とする状態を意味する。
プログラムPCのプログラム概要:ガス供給管の交換を必要とするので、以下のサブ対処プログラムの少なくとも1つ以上を実行可能に構成することができる。
C1)供給管交換の準備プログラム
C2)交換サポートプログラム
C3)交換後実行の復帰動作プログラム
このプログラムC1,C2,C3については後述する。
【0074】
この様に、ガス配管内の閉塞レベルを判定することにより、適切な閉塞解消対応を選択して行うことが可能となり、基板処理装置のダウンタイムを低減することができる。即ち、基板処理装置10による生産スループットを向上させることができる。
【0075】
対処プログラムは、報知、圧力復帰処理等を行わせるプログラムである。ここで、圧力復帰処理とは、閉塞を解消させる処理を意味する。対処プログラム(たとえば、閉塞レベル3のプログラムPC)では、複数の処理(3つのサブ対処プログラムC1,C2,C3)を行っても良い。ガス供給管内の圧力は、所定値、ピンポイントの圧力でも良いし、所定の圧力範囲内の圧力でも良い。また、閉塞レベル1,2,3に応じて、対応する対処プログラムPA、PB、PCを実行することにより、基板処理装置10のダウンタイムを低減することができる。
【0076】
また、対処プログラムを複数用意しておき、閉塞レベルに対応する対処プログラムを予め設定しておくことで、閉塞レベル判定から、対処プログラム設定までの作業者の検討負荷や、作業者のレベルによる、対処プログラムの選択ミスを低減することができる。これらの低減により、基板処理装置10のダウンタイムを低減することができる。
【0077】
図9は、コントローラの入出力装置(表示部)の表示状態を説明する図である。コントローラ121が閉塞レベル判定プログラムを実行し、閉塞レベルの判定を行うと、
図9に示す様に、たとえば、コントローラ121の入出力装置(表示部)122には、判定された閉塞レベルと、判定された閉塞レベルによって選択された対処プログラムと、を表示させることができる。
図9では、一例として、判定された閉塞レベルとして閉塞レベル1と、対処プログラムPA(アラーム報知)とが入出力装置(表示部)122に表示された状態が描かれている。
【0078】
この様に、対処プログラムを入出力装置(表示部)122に表示させることにより、作業者が実行前および実行中の対処プログラムを把握することが可能となる。
【0079】
(加熱部HTPの構成例)
図10は、
図6の加熱部HTPの構成例を説明する図である。
図11は、
図10の1つのサブ加熱部の構成を説明する図である。加熱部HTPは、ガス供給管310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310kのおのおのに対応する様に設けられた複数のサブ加熱部HTP1~HTP8を含むように構成されている。
図10には、加熱部HTPによって加熱可能とされているバルブAV05、AV06、AV08、AV09、AV04、AV03、314、AV01、AV11、および、MFC312は、図面の簡素化のため、省略されている。サブ加熱部HTP1~HTP8のおのおのは、
図11に示す様に、複数の発熱素子HT1~HTnを含むように構成され、発熱素子HT1~HTnのおのおのは、コントローラ121によってその温度が制御可能に構成されている。コントローラ121は、発熱素子HT1~HTnのおのおのに供給する電流量を制御して、発熱素子HT1~HTnの発熱量を制御する。
図11において、各発熱素子HT1~HTnを次のように温度制御することが可能である。
温度制御1:各発熱素子HT1~HTnの電流量を一定とする。これにより、対応するサブ加熱部の温度をサブ加熱部の全域において一定の所望の温度とすることができる。
温度制御2:各発熱素子HT1~HTnの電流量のおのおのを発熱素子HT1から発熱素子HTnに向かって徐々に多くするように個別に制御する。これにより、対応するサブ加熱部の温度を徐々に所望の第1温度から、第1温度と異なる所望の第2温度となる様に制御できる。
温度制御3:各発熱素子HT1~HTnの電流量の内、所望の1または複数の発熱素子の電流量が、他の残りの発熱素子の電流量と比較して、少なくなる様に個別に制御する。これにより、たとえば、対応するサブ加熱部において、一部分の領域が低温とされ、残りの部分の領域が高温となる様に制御できる。
【0080】
図10において、たとえば、閉塞箇所Aがガス供給管310cに発生した場合を想定する。この場合、この明細書では、閉塞箇所Aから見てノズル410の側を「下流側」と定義し、閉塞箇所Aから見て原料容器131の側は「上流側」と定義こととする。
【0081】
(ガス管加熱部の温度制御)
対処プログラムとして、プログラムPBが選択された場合のガス管加熱部HTPの温度制御について以下説明する。
【0082】
閉塞箇所Aがガス供給管310cに発生した場合、コントローラ121は、閉塞レベルに応じて、ガス管加熱部HTPのサブ加熱部HTP1~HTP8の温度を制御可能に構成されている。より具体的には、コントローラ121は、複数の圧力センサP2,P5,P4,P3の内、閉塞していると判定した圧力センサ(P5)を含むガス供給管(310b)のガス管加熱部HTP3およびガス供給管(310b)の下流側に位置するすべてのガス管加熱部(HTP4-HTP8)の温度を上昇させるようガス管加熱部HTPの温度を制御可能に構成される。
【0083】
この様な温度制御により、閉塞しているゾーンのガス供給管(310b)と、それよりも下流側のゾーンのガス供給管(310a、310、310i、310j、310k)の温度を上昇させることにより、新たな固化の発生を抑制することができる。
【0084】
図12は、ガス管加熱部の温度制御の例を説明する図である。
図12には、ガス供給管の温度と閉塞判定位置との関係が示されており、縦軸はガス供給管の温度であり、横軸は原料容器131からノズル410の間のガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)を示している。閉塞判定位置は、この例では、閉塞箇所Aであり、ガス供給管(310b)の区間(ゾーン)としている。
【0085】
図12の例では、閉塞箇所A以降の全ての区間で、閉塞箇所Aからノズル410側に向かってガス供給管(310b、310a、310、310i、310j、310k)を略一定の温度T1に上昇させる様に、ガス管加熱部HTPの温度がコントローラ121により制御される。一定の温度T1は、例えば、ノズル410が設けられる処理室201の最大温度に上昇させる。
【0086】
図12において、点線で示す温度制御(ノズル410が設けられる処理室201側に向かうにつれ上昇させる)は次に示す理由により行われている。ガス管加熱部HTPの温度制御上、温度がふらつくことがある。温度低下のオーバーシュート発生により、固体化して付着したモリブデン(Mo)の気化温度以下になってしまうことを抑制する必要がある。例えば、基板200の処理中は、Mo含有ガスなどの原料ガスが大量に流れるため、ガス供給管の温度が低下する。この時に、ガス管加熱部HTPの温度制御が間に合わず、ガス供給管の温度が一時的に低下し気化温度に近づき、そして、さらに、気化温度よりも低い温度になる場合がある。このため、気化温度よりも高い温度となる様に高めの温度に設定するのがよい。また、固体原料132の場合、一度気化したガス(たとえば、Mo含有ガス)が、その加熱された温度よりも低くなった時に、固体に戻る性質がある。各バルブや、流量制御部(マスフローコントローラ312、オリフィス等)の前(上流側)では、ガス供給管内の圧力が高い状態となっている。特に、流量制御部(マスフローコントローラ312)の上流側は、ガス供給管内の圧力が高い状態になる。このように、圧力が上昇した場合、原料の蒸気圧の関係から、固化が発生し易い環境となってしまうため、ガス供給管内の圧力上昇に合わせて、点線で示すように、温度を段階的(徐々)に上げる様に温度制御するのが良い。なお、
図12~
図14の点線で示す温度帯は、例えば、固体原料として、Mo含有原料を用いる場合は、120℃~170℃の温度帯である。原料容器131付近は120℃に設定され、MFC312付近は150℃に設定される。ガス供給管310k付近は、170℃に設定される。この様な温度設定とすることで、原料の固化の発生を抑制することができる。
【0087】
図12に示す様に、ガス管加熱部HTPの温度を制御して、閉塞しているゾーン(ここでは、ガス供給管310bのゾーン)と、それよりも下流側のゾーン(ここでは、ガス供給管310a、310、310i、310j、310kの各ゾーン)のガス供給管の温度を略一定の温度T1に上昇させることにより、新たな固化の発生を抑制することができる。昇温させる際に、一定の温度T1(例えば、処理室201側に一番近い側の温度)に昇温させることにより、ガス供給管の温度履歴の変化を抑制することができる。例えば、処理室201側に一番近い側は、温度変化が少なく、処理室201側に一番近い側の温度履歴の変化を抑制できる。これにより、処理室201側に一番近い側のガス供給管(310k)内の雰囲気の変化を抑制することができる。基板200に供給される処理ガス(Mo含有原料)の状態が変化しないので、対処プログラムPBの実行前と実行後とで、基板200に形成されるMo膜の特性が変化することが無い。
【0088】
一方、処理室201側に一番近い側のガス供給管内の雰囲気が変化することで、対処プログラムPBを実行する前と実行した後で、基板200に供給される処理ガス(Mo含有ガス)の状態が変化してしまい、対処プログラムPBの実行前と実行後とで、基板200に形成されるMo膜の特性が変化する可能性がある。ここで、膜特性とは、膜厚、抵抗率、組成比、結晶性、ラフネス、等を意味する。
【0089】
図13は、ガス管加熱部の温度制御の他の例を説明する図である。
図13には、
図12と同様に、ガス供給管の温度と閉塞判定位置との関係が示されており、縦軸はガス供給管の温度であり、横軸は原料容器131からノズル410の間のガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)を示している。閉塞判定位置は、この例では、閉塞箇所Aであり、ガス供給管(310b)の区間(ゾーン)としている。
【0090】
図13では、閉塞箇所Aからノズル410側に向かってガス供給管(310b、310a、310、310i、310j、310k)の温度を徐々に上昇させるように、ガス管加熱部HTPの温度がコントローラ121により制御される温度制御の例を示している。
【0091】
ガス供給管(310b)の下流側に向かって、ガス供給管の加熱温度を上昇させる様に構成することで、ガス供給管(310b、310a、310、310i、310j、310k)内での、たとえば、モリブデン(Mo)原料の再固化の発生を抑制させることができる。この温度制御により、一時的に、ガス供給管の温度が低下しても、たとえば、モリブデン(Mo)原料の再固化する温度に陥ることを抑制することができる。
【0092】
図14は、ガス管加熱部の温度制御のさらに他の例を説明する図である。
図14には、
図12と同様に、ガス供給管の温度と閉塞判定位置との関係が示されており、縦軸はガス供給管の温度であり、横軸は原料容器131からノズル410の間のガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)を示している。閉塞判定位置は、この例では、閉塞箇所Aであり、ガス供給管(310b)の区間(ゾーン)としている。
【0093】
図14では、閉塞箇所Aからノズル410側に向かってガス供給管(310b、310a、310、310i、310j、310k)の温度を段階的に上昇させるように、ガス管加熱部HTPの温度がコントローラ121により制御される温度制御の例を示している。これにより、
図13に示した温度制御と同様な効果を得ることができる。
【0094】
プログラムPBが選択された場合において、ガス管加熱部HTPの温度を上昇させる際には、閉塞判定した圧力測定部(圧力センサP5)よりも下流側に位置する複数のバルブ(AV04、AV03,314、AV01)をフルオープン(全開状態)にするよう複数のバルブの開閉制御をコントローラ121により行うのが好ましい。これにより、閉塞判定位置Aの領域部分にあった、固化した原料が、各バルブ(AV04、AV03,314、AV01)の内部の部分で再固化することを抑制することができる。各バルブ(AV04、AV03,314、AV01)がフルオープンで無い場合、各バルブ(AV04、AV03,314、AV01)の前のガス供給管内の圧力が上昇する可能性がある。圧力上昇した場合、蒸気圧の関係から、気化した原料が再固化してしまう可能性が有る。複数のバルブ(AV04、AV03,314、AV01)をフルオープンにとして、ガス供給管内の圧力が上昇しない環境にすることで、気化した原料が再固化することを抑制できる。
【0095】
図6に示すように、ガス供給システムGSSは、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内を、バルブAV11を介して排気する排気部(Exhaust2)を有している。コントローラ121は、
図12~
図14で説明した様にガス供給管を加熱している間、バルブAV11を開状態として、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内を排気するよう排気部(Exhaust2)を制御可能に構成されている。
【0096】
これにより、ガス供給管内を排気し、ガス供給管内の圧力を下げることにより、固化した原料が気化し易い状態とすることができ、ガス供給管内における固化した原料による閉塞を解消させる時間を短縮させることができる。つまり、蒸気圧の関係から、ガス供給管内の圧力が低い方が、固化した原料は気化し易い状態となる。
【0097】
図6に示すように、ガス供給システムGSSは、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部(310d、AV09)を有している。不活性ガスは窒素(N
2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスなどであり、不活性ガス供給部(310d、AV09)は、ガス供給管310dとVAバルブAV09とから構成される。VAバルブAV09を開状態として、ガス供給管310dから不活性ガスをガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内に供給する。
【0098】
コントローラ121は、
図12~
図14で説明した様にガス供給管を加熱している間、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内への不活性ガスの供給とガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内の排気とを繰り返すように、不活性ガス供給部(310d、AV09)と排気部(Exhaust1、Exhaust2)とを制御可能に構成されている。
【0099】
これにより、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内に、不活性ガスの供給状態と真空排気の状態を交互に行わせることにより、圧力の低い雰囲気に不活性ガスが勢い良く流れる。これにより、不活性ガスの勢いにより、固化した原料を排気部(Exhaust1、Exhaust2)側に飛ばすことができる。
【0100】
(供給管交換の準備プログラムC1)
次に、対処プログラムとして、ガス供給管の交換が選択された場合の供給管交換の準備プログラムC1について説明する。
【0101】
図15は、コントローラの入出力装置(表示部)の表示状態を説明する図である。コントローラ121は、入出力装置(表示部)122に、コントローラ121が閉塞レベル判定プログラムを実行し、閉塞レベル3の判定を行うと、判定された閉塞レベル3と、判定された閉塞レベルによって選択された対処プログラムPCと、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内の閉塞判定した圧力センサP5と、閉塞判定した圧力センサP5が設けられたガス供給管310bを交換対象ガス供給管として表示することができる。コントローラ121は、ガス供給管を交換する旨の情報を、入出力装置(表示部)122と上位装置(HOST装置)の少なくともいずれか一方、または、両方に報知することが可能である。また、
図6に示すガス供給システムGSSの様な配管模式図を、表示部に表示させて、交換対象のガス供給管310やバルブ、圧力センサ、等の色を変更させる等して報知しても良い。
【0102】
図6に示す様に、ガス供給システムGSSは、ガス供給管内を排気する排気部(Exhaust1、Exhaust2)を有している。コントローラ121は、複数のガス供給管((310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)の内、前記閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310bの上流側のガス供給管310cと下流側のガス供給管(310a、310、310i、310j)を排気するように、排気部(Exhaust1、Exhaust2)を制御可能に構成されている。
【0103】
この様に、交換対象ガス供給管の上流側のガス供給管内と下流側のガス供給管内に存在する処理ガス(Mo含有ガス)を排気しておくことで、ガス供給管交換時の処理ガス漏れを抑制することができる。
【0104】
また、
図6に示す様に、ガス供給システムGSSは、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部(310d、AV09)を有している。コントローラ121は、閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310bの上流側のガス供給管310cと下流側のガス供給管(310a、310、310i、310j)とに不活性ガスを供給するよう不活性ガス供給部(310d、AV09)を制御可能に構成されている。この様に、上流側のガス供給管310cと下流側のガス供給管(310a、310、310i、310j)と不活性ガスを供給することによって、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内の残留ガスの押し出し、および、ガス置換が可能になる。
【0105】
また、コントローラ121は、閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310bの上流側のガス供給管310cと下流側のガス供給管(310a、310、310i、310j)の排気と不活性ガス供給(310d、AV09)とを交互に行わせる様に、排気部(Exhaust1、Exhaust2)と不活性ガス供給部とを制御可能に構成されている。この様に、不活性ガス供給と排気とを交互に実行することで、ガス供給管(310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k)内の残留ガスを低減することができる。
【0106】
また、コントローラ121は、閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310bの上流側と下流側に設けられたサブガス管加熱部(HTP2、HTP4-HTP7)の温度を維持しつつ、閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310bに設けられたサブガス管加熱部HTP3の温度を低下させるよう、複数のサブガス管加熱部(HTP1-HTP8)を制御可能に構成されている。この様に、交換対象では無い上流側のガス供給管310cと下流側のガス供給管(310a、310、310i、310j)の温度を維持しつつ、交換対象のガス供給管310bの温度を低下させることで、交換時の作業容易性を向上させることができる。
【0107】
また、コントローラ121は、閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310bに設けられたサブガス管加熱部HTP3の温度は、ガス供給管内の排気とガス供給管内への不活性ガスの供給の処理が終わった後、低下させるよう、複数のサブガス管加熱部(HTP1-HTP8)を制御可能に構成されている。この様に、交換対象のガス供給管310bを加熱した状態で、ガス供給管の排気および不活性ガス供給を行うことにより、ガス供給管内に残留する原料(固体)を除去することができる。また、ガス供給管内を不活性ガス雰囲気とした状態で、交換対象のガス供給管310bの温度を低下させることにより、ガス供給管310bの温度の自然冷却時間を短縮させることができる。
【0108】
また、コントローラ121は、閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310bの上流側のガス供給管310cと下流側のガス供給管(310a)に設けられたガス管加熱部(HTP2、HTP4)の内、閉塞判定した圧力センサP5が属するガス供給管310b側の部分の温度が、ガス管加熱部(HTP2、HTP4)の他の部分の温度よりも低くなるように、複数のサブガス管加熱部(HTP1-HTP8)を制御可能に構成されている。
【0109】
図16は、ガス管加熱部(HTP2、HTP4)の低温部分を説明する図である。
図16において、ガス供給管310cはガス管加熱部HTP2により加熱可能とされており、ガス供給管310aはガス管加熱部HTP4により加熱可能とされている。ここで、ガス管加熱部HTP2のガス供給管310b側の部分LTP2の温度が、ガス管加熱部HTP2の他の部分の温度よりも低くなるように、制御される。同様に、ガス管加熱部HTP4のガス供給管310b側の部分LTP1の温度が、ガス管加熱部HTP4の他の部分の温度よりも低くなるように、制御される。
【0110】
ガス管加熱部(HTP2、HTP4)において、交換対象範囲のガス供給管310bに近い部分(LTP2、LTP1)側の温度を下げることにより、ガス供給管310bの交換作業の容易性を向上させることができる。つまり、交換対象範囲のガス供給管310bに近い部分(LTP2、LTP1)の温度が熱いままでは、交換作業自体が難しい。また、交換対象範囲のガス供給管310bに近い部分(LTP2、LTP1)に原料(固体)が残留している場合において、原料(固体)と大気との反応性を低減させることができる。
【0111】
(交換サポートプログラムC2)
次に、対処プログラムとして、配管交換が選択された場合の、実際の交換作業の交換サポートプログラムC2について説明する。
【0112】
コントローラ121は、入出力装置(表示部)122に、交換する部分のガス供給管310bの位置に報知(表示)することができる。これにより、ガス供給管310bの交換作業時の作業ミスを低減することができる。また、交換作業を行っていることを、作業員以外の他の人員へ明確化することができる。これは、一般的に、基板処理装置10のガス供給管の配管場所は、基板処理装置10の背面側に配置されている場合が多く、基板処理装置10の前面側からは、作業中であること自体が分かりにくい状態となっているからである。
【0113】
ガス供給システムGSSは、塩素含有ガスを検知するガス検知器Mを少なくとも1つ以上有し、コントローラ121は、ガス供給管310bを交換する際に、ガス検知器が測定した値によって、アラームを報知するよう入出力装置(表示部)122を制御可能に構成しても良い。
図6では、ガス検知器M2,M2,M3,M4,M5の様に4つ設けた例を示している。好適には、配管の接続箇所や、バルブ接続箇所の付近に設けられる。
【0114】
これにより、配管内に上述のMo含有ガスが残留していた場合、Mo含有ガスと、空気中のH2O(水)とが、反応し、塩素含有ガスとして、塩化水素(HCl)を生じる恐れがある。HClがガス検知器で検出された場合、入出力装置(表示部)122にアラームを報知することで、HClの発生状況を作業者に知らせることができる。
【0115】
(交換後実行の復帰動作プログラムC3)
次に、対処プログラムとして、配管交換が選択され、配管交換作業後に実行される復帰動作プログラムC3について説明する。
【0116】
コントローラ121は、交換対象のガス供給管310bが交換されたことを検出した後、ガス供給システムGSSの状態復旧処理を実行させる様に、ガス供給システムGSSを制御可能に構成されている。ガス供給システムGSSの状態復旧処理を行うことで、ガス供給管の交換前と、ガス供給管の交換後のガスの流れ特性の差異を低減することができる。
【0117】
ガス供給システムGSSの状態復旧処理は、以下S1~S5を順に実施することで行われる。なお、この状態復旧処理に、以下のS6も含めても良い。
【0118】
S1:交換後のガス供給管全体のリークチェック
S2:ガス供給管全体のガス置換(大気排気⇒N2置換)
S3:ガス供給管全体の温度復帰動作
S4:Mo含有ガスの供給
S5:流量チェック(閉塞前の流量と交換前の流量との差異チェック)
・MFC312の流量をチェック
・圧力センサP2-P5,245の圧力測定値をチェック
・閉塞前後の圧力と閉塞前後の流量の関係を比較
S6:上記S1~S5の結果を、ガス供給管の交換履歴として、記憶部121cに記録する。
【0119】
以下、本開示の特徴点を付記する。
【0120】
(付記1)
基板を収容する反応容器と、
前記反応容器内の雰囲気を排気する排気管と、
前記基板に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部に連通し、前記処理ガスを供給するガス供給管と、前記ガス供給管に設けられる複数のバルブと、前記複数のバルブの間に設けられた複数の圧力測定部と、を有するガス供給システムと、
前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記ガス供給管の閉塞レベルを判定可能に構成された制御部と、
を有する基板処理装置。
【0121】
(付記2)
前記制御部は、前記閉塞レベルに応じて、対処プログラムを実行するように前記ガス供給システムを制御可能に構成される、付記1に記載の基板処理装置。
【0122】
(付記3)
前記対処プログラムが複数記録された記憶部を有し、
前記制御部は、前記複数の対処プログラムから、前記閉塞レベルに対応する対処プログラムを選択して実行可能に構成される、付記2に記載の基板処理装置。
【0123】
(付記4)
前記制御部に接続された表示部を有し、
前記制御部は、前記閉塞レベルに応じて、前記表示部に前記対処プログラムに関する情報を表示可能に構成される、付記2または3に記載の基板処理装置。
【0124】
(付記5)
前記ガス供給システムは、前記圧力測定部に対応し、前記ガス供給管を加熱する複数のガス管加熱部を有し、
前記制御部は、前記閉塞レベルに応じて、前記ガス管加熱部の温度を制御可能に構成される、付記1乃至4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0125】
(付記6)
前記制御部は、前記複数の圧力測定部の内、閉塞していると判定した圧力測定部を含む前記ガス供給管の下流側に位置するガス管加熱部の温度を上昇させるよう前記ガス管加熱部を制御可能に構成される、付記1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0126】
(付記7)
前記制御部は、前記ガス管加熱部の温度を上昇させる際に、前記閉塞判定した圧力測定部に対応するガス管加熱部の温度と、それよりも下流側に配置されたガス管加熱部の温度を略一定の温度に上昇させるように前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、付記1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0127】
(付記8)
前記制御部は、前記ガス管加熱部の温度を上昇させる際に、前記閉塞判定した圧力測定部に対応するガス管加熱部から、ガス管の下流に向かって、加熱温度を上昇させる様に前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、付記1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0128】
(付記9)
前記制御部は、前記ガス管加熱部の温度を上昇させる際に、前記閉塞判定した圧力測定部よりも下流側に位置するバルブをフルオープンにするよう前記複数のバルブを制御可能に構成される、付記6乃至8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0129】
(付記10)
前記ガス供給システムは、前記ガス供給管内を排気する排気部を有し、
前記制御部は、前記ガス供給管を加熱している間、前記ガス供給管内を排気するよう前記排気部を制御可能に構成される、付記5乃至9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0130】
(付記11)
前記ガス供給システムは、前記ガス供給管内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を有し、
前記制御部は、前記ガス供給管を加熱している間、前記ガス供給管内に前記不活性ガスの供給と前記ガス管内の排気を繰り返すように前記不活性ガス供給部と前記排気部とを制御可能に構成される、付記10に記載の基板処理装置。
【0131】
(付記12)
前記制御部は、前記ガス供給管の内、前記閉塞判定した圧力測定部が設けられた部分の配管を交換する旨の情報を前記表示部と上位装置の少なくとも1つに報知可能に構成される、付記2乃至5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0132】
(付記13)
前記ガス供給システムは、前記ガス供給管内を排気する排気部を有し、
前記制御部は、前記複数のガス供給管の内、前記閉塞判定した圧力測定部が属する前記ガス管の上流側のガス管と下流側のガス管を排気するよう前記排気部を制御可能に構成される、付記5または12に記載の基板処理装置。
【0133】
(付記14)
前記ガス供給システムは、前記ガス供給管内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を有し、
前記制御部は、前記閉塞判定した圧力測定部が属する前記ガス管の上流側のガス管と下流側のガス管に前記不活性ガスを供給するよう前記不活性ガス供給部を制御可能に構成される、付記5、12,13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0134】
(付記15)
前記制御部は、前記閉塞判定した圧力測定部が属する前記ガス管の上流側のガス管と下流側のガス管の排気と不活性ガス供給とを交互に行わせる様に前記排気部と前記不活性ガス供給部とを制御可能に構成される、付記14に記載の基板処理装置。
【0135】
(付記16)
前記制御部は、前記閉塞判定した圧力測定部が属する前記ガス管の上流側と下流側に設けられたガス管加熱部の温度を維持しつつ、前記閉塞判定した圧力測定部が属するガス管に設けられたガス管加熱部の温度を低下させるよう前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、付記12または13に記載の基板処理装置。
【0136】
(付記17)
前記制御部は、前記閉塞判定した圧力測定部が属するガス管に設けられたガス管加熱部の温度は、前記ガス管内の排気と前記ガス管内への不活性ガスの供給処理が終わった後、低下させるよう前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、付記16に記載の基板処理装置。
【0137】
(付記18)
前記制御部は、前記上流側と前記下流側に設けられたガス管加熱部の内、前記閉塞判定した圧力測定部が属するガス管側の温度を、他の部分の温度よりも低くなるように前記複数のガス管加熱部を制御可能に構成される、付記12、16、17のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0138】
(付記19)
前記制御部は、前記交換する部分の配管の位置を前記表示部に報知する、付記12に記載の基板処理装置。
【0139】
(付記20)
前記ガス供給システムは、塩素含有ガスを検知するガス検知器を少なくとも1つ以上有し、
前記制御部は、前記配管を交換する際に、前記検知器が測定した値によって、アラームを報知するよう前記表示部を制御可能に構成される、付記19に記載の基板処理装置。
【0140】
(付記21)
前記制御部は、前記交換対象の配管が交換されたことを検出後、前記ガス供給システムの状態復旧処理を実行させる様に、前記ガス供給システムを制御可能に構成される、付記12に記載の基板処理装置。
【0141】
(付記22)
基板を収容する反応容器と、前記反応容器内の雰囲気を排気する排気管と、前記基板に処理ガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部に接続されたガス供給管と前記ガス供給管に設けられる複数のバルブと前記複数のバルブの間に設けられた複数の圧力測定部とを有するガス供給システムと、を有する基板処理装置の前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記ガス供給管の閉塞レベルを判定する工程と、
前記閉塞レベルに基づいて、前記ガス供給管の閉塞を解消させる工程と、
前記処理室内へ前記基板を搬入する工程と、
前記ガス供給システムの前記ガス供給管から前記ガス供給部を介して前記基板に前記処理ガスを供給する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【0142】
(付記23)
基板を収容する反応容器と、前記反応容器内の雰囲気を排気する排気管と、前記基板に処理ガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部に接続されたガス供給管と前記ガス供給管に設けられる複数のバルブと前記複数のバルブの間に設けられた複数の圧力測定部とを有するガス供給システムと、を有する基板処理装置の前記圧力測定部の測定結果の内、少なくとも1つ以上の圧力を基に、前記ガス供給管の閉塞レベルを判定する手順と、
前記閉塞レベルに基づいて、前記ガス供給管の閉塞を解消させる手順と、
前記処理室内へ前記基板を搬入する手順と、
前記ガス供給システムの前記ガス供給管から前記ガス供給部を介して前記基板に前記処理ガスを供給する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【0143】
以上、本開示者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0144】
例えば、本開示では、基板処理装置として、基板を複数枚処理可能な縦型装置を例に説明したが、本開示の技術は、基板を一枚ずつ処理する枚葉型の装置に適用することも可能である。枚葉型装置の場合、ガス供給部はシャワーヘッドで構成すれば良い。
【0145】
また、本開示では、固体原料として、Moを含む原料を例に説明したが、Moに限るものでは、無く、アルミニウム(Al),チタニウム(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf),ルテニウム(Ru)、等の少なくともいずれかと、ハロゲン元素を含む固体原料等を用いることができる。
【符号の説明】
【0146】
10:基板処理装置
121:コントローラ
200:ウエハ(基板)
201:処理室
310f、310c、310b、310a、310、310i、310j、310k:ガス供給管
AV05、AV06、AV08、AV09、AV04、AV03、314、AV01、AV11、AV10:バルブ
245、P2,P3,P4,P5:圧力センサ
GSS:ガス供給システム