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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】焼結磁石の製造方法および焼結磁石
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/20 20060101AFI20221017BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20221017BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20221017BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20221017BHJP
   B22F 3/04 20060101ALI20221017BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20221017BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20221017BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20221017BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20221017BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B22F9/20 A
C22C38/00 303D
C22C28/00 A
B22F9/04 E
B22F3/04 Z
B22F1/00 Y
B22F1/00 R
H01F41/02 G
H01F1/057 170
B22F3/00 F
C22C33/02 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021531588
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2020012913
(87)【国際公開番号】W WO2021060849
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0118839
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0122724
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ナクホン・スン
(72)【発明者】
【氏名】インギュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジェ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジンヒョク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンス・ウ
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/070827(WO,A1)
【文献】特開平04-293708(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107929(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/161355(WO,A1)
【文献】特開2014-057075(JP,A)
【文献】特表2020-521316(JP,A)
【文献】特開平04-221805(JP,A)
【文献】特開2014-017480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元-拡散法でR-Fe-B系磁石粉末を製造する段階、
前記R-Fe-B系磁石粉末に焼結剤としてR-Al-Cu粉末を添加して混合粉末を形成する段階、および
前記混合粉末を焼結して焼結磁石を形成する段階を含み、
前記R-Al-Cu粉末は、R、AlおよびCuの合金であり、前記Rは、Nd、Pr、Dy、TbまたはCeであり、
前記焼結剤としてR-Al-Cu粉末を形成する段階をさらに含み、
前記R-Al-Cu粉末を形成する段階は、
RH 粉末、Al粉末、およびCu粉末を混合して焼結前駆体を形成する段階、
前記焼結前駆体を凝集させる段階、
前記凝集された焼結前駆体を昇温して金属合金を形成する段階、および
前記金属合金を粉砕して前記焼結剤を形成する段階を含む、焼結磁石の製造方法。
【請求項2】
前記凝集された焼結前駆体を昇温する時、前記焼結前駆体を金属箔で包む段階をさらに含む、請求項に記載の焼結磁石の製造方法。
【請求項3】
前記焼結前駆体を形成する段階は、液状のGaを混合する段階をさらに含む、請求項に記載の焼結磁石の製造方法。
【請求項4】
前記金属箔は、MoまたはTaである、請求項またはに記載の焼結磁石の製造方法。
【請求項5】
前記凝集された焼結前駆体を前記金属箔で包んで昇温する時、アルゴンガス雰囲気下で昇温する、請求項に記載の焼結磁石の製造方法。
【請求項6】
前記金属合金を形成する段階は、前記凝集された焼結前駆体を金属箔で包んで摂氏900度~摂氏1050度まで昇温させた後、追加熱処理する段階をさらに含む、請求項に記載の焼結磁石の製造方法。
【請求項7】
前記焼結前駆体を凝集させる段階は、油圧プレス、タッピングおよび冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)のうちのいずれか一つの加圧法を使用する、請求項からのいずれか一項に記載の焼結磁石の製造方法。
【請求項8】
前記焼結剤として、前記R-Al-Cu粉末にNdH粉末を追加する段階をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の焼結磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、2019年9月26日付韓国特許出願第10-2019-0118839号および2020年9月23日付韓国特許出願第10-2020-0122724号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、焼結磁石の製造方法および焼結磁石に関する。より具体的に、焼結剤を使用して磁石特性を向上させる焼結磁石の製造方法およびこのような方法で製造された焼結磁石に関する。
【背景技術】
【0003】
NdFeB系磁石は、希土類元素であるNdおよび鉄、ホウ素(B)の化合物であるNdFe14Bの組成を有する永久磁石であり、1983年に開発されて以来、30年間汎用の永久磁石として使用されてきている。このようなNdFeB系磁石は、電子情報、自動車工業、医療機器、エネルギー、交通などの多様な分野で使用されている。特に最近では、軽量、小型化傾向に合わせて工作機器、電子情報機器、家電用電子製品、携帯電話、ロボット用モータ、風力発電機、自動車用小型モータおよび駆動モータなどの製品に使用されている。
【0004】
NdFeB系磁石の一般的な製造は、金属粉末冶金法に基づいたストリップ(Strip)/モールドキャスティング(mold casting)またはメルトスピニング(melt spinning)方法が知られている。まず、ストリップ(Strip)/モールドキャスティング(mold casting)方法の場合、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)などの金属を加熱を通じて溶融させてインゴットを製造し、結晶粒子を粗粉砕し、微細化工程を通じてマイクロ粒子を製造する工程である。これを繰り返して、粉末を得て、磁場下でプレシング(pressing)および焼結(sintering)過程を経て異方性焼結磁石を製造するようになる。
【0005】
また、メルトスピニング(melt spinning)方法は、金属元素を溶融させた後、速い速度で回転するホイール(wheel)に注いで急冷し、ジェットミル粉砕後、高分子とブレンディングしてボンド磁石として形成したり、プレシングして磁石として製造する。
【0006】
しかし、このような方法は、全て粉砕過程が本質的に要求され、粉砕過程に長時間がかかり、粉砕後粉末の表面をコーティングする工程が要求されるという問題点がある。また既存のNdFe14Bマイクロ粒子は、原材料を溶融(1500-2000℃)および急冷させて得た塊を粗粉砕および水素粉砕/ジェットミルの多段階処理をして製造するため、粒子形状が不規則であり、粒子微細化に限界がある。
【0007】
最近では、磁石粉末を還元-拡散方法で製造する方法が注目されている。例えば、Nd、Fe、Bを混合し、Caなどで還元する還元-拡散工程を通じて均一なNdFeB微細粒子を製造することができる。しかし、このような方法で還元時に使用されるCaなどの還元剤と還元副産物を除去する過程で酸化膜が生成されることがある。このような酸化膜は、磁石粉末の焼結を困難にし、高い酸素含有量は柱状磁石粒子の分解を促進して、前記磁石粉末を焼結して得られた焼結磁石の特性を低下させることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、前記のような問題点を解決するためのものであって、磁石粉末焼結時に粒界に分布する相を調節して焼結磁石の特性を向上させる焼結磁石の製造方法およびこのような方法で製造された焼結磁石を提供することにある。
【0009】
しかし、本発明の実施形態が解決しようとする課題は、前述した課題に限定されず、本発明に含まれている技術的な思想の範囲で多様に拡張され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による焼結磁石の製造方法は、還元-拡散法でR-Fe-B系磁石粉末を製造する段階、前記R-Fe-B系磁石粉末に焼結剤としてR-Al-Cu粉末を添加して混合粉末を形成する段階、および前記混合粉末を焼結して焼結磁石を形成する段階を含み、前記R-Al-Cu粉末は、R、AlおよびCuの合金であり、前記Rは、Nd、Pr、Dy、TbまたはCeである。
【0011】
前記焼結磁石の製造方法は、前記焼結剤としてR-Al-Cu粉末を形成する段階をさらに含み、前記R-Al-Cu粉末を形成する段階は、RH粉末、Al粉末、およびCu粉末を混合して焼結前駆体を形成する段階、前記焼結前駆体を凝集させる段階、前記凝集された焼結前駆体を昇温して金属合金を形成する段階、および前記金属合金を粉砕して前記焼結剤を形成する段階を含むことができる。
【0012】
前記焼結磁石の製造方法は、前記凝集された焼結前駆体を昇温する時、前記焼結前駆体を金属箔で包む段階をさらに含むことができる。
【0013】
前記焼結前駆体を形成する段階は、液状のGaを混合する段階をさらに含むことができる。
前記金属箔は、MoまたはTaであり得る。
【0014】
前記凝集された焼結前駆体を前記金属箔で包んで昇温する時、アルゴンガス雰囲気下で昇温することができる。
【0015】
前記金属合金を形成する段階は、前記凝集された焼結前駆体を前記金属箔で包んで摂氏900度~摂氏1050度まで昇温させた後、追加熱処理する段階をさらに含むことができる。
【0016】
前記焼結前駆体を凝集させる段階は、油圧プレス、タッピングおよび冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)のうちのいずれか一つの加圧法を使用することができる。
【0017】
本発明の他の一実施形態による焼結磁石は、前述した焼結磁石の製造方法によって製造される。
【発明の効果】
【0018】
実施形態によれば、従来のように磁石粉末を製造する時に発生する酸化膜により発生する焼結磁石の特性低下を防止するために、金属合金の粉末を焼結剤として使用することによって溶融温度を下げながら焼結磁石特性低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例による焼結磁石の製造方法でR-Al-Cu金属合金粉末を製造する段階を示す図面である。
図2】本発明の比較例および実施例により製造された焼結磁石で測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すBHグラフである。
図3図2の焼結前磁石粉末の組成を変形した場合に、本発明の比較例および実施例により製造された焼結磁石で測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すBHグラフである。
図4】本発明の一実施例による金属合金の粉末を焼結剤として使用時、金属合金に含まれている希土類金属種類を変化させることによって製造された焼結磁石で測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すBHグラフである。
図5】焼結磁石に溶浸処理のための助剤として4相金属合金粉末の使用前後に測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すグラフである。
図6】焼結磁石に溶浸処理のための助剤として4相金属合金粉末の使用前後に測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して本発明の多様な実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0021】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外せず、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0022】
本実施形態によれば、費用が安価な希土類系酸化物を利用して還元-拡散工程を通じて磁石粉末を製造することができる。このような方法で還元時に使用されるCaなどの還元剤と還元副産物を除去する過程で酸化膜が生成されることがある。このような酸化膜が磁石粉末の焼結を困難にして焼結磁石特性を阻害することがあるが、これを補完するために本実施形態では金属合金の粉末を焼結剤として使用することによって溶融温度を下げながら焼結磁石特性低下を防止することができる。
【0023】
焼結時に磁石粉末内部の酸素含有量が高くなれば磁石特性が低下するため、高純度金属合金を使用しなければならないが、このような合金を製造するためには、通常金属塊をアークメルティングやインダクションメルトして高温で溶融することが要求される。例えば、アークメルティング方法の場合、高圧および高電流を通じたアーク(Arc)発生によりほぼ摂氏2000度~摂氏3000度で金属塊を真空雰囲気下で共に溶かし、溶けた金属塊を数回ひっくり返して再び溶かすことを繰り返すことができる。しかし、アークメルティング機の空間制約と均一なメルティングのために試料の最大量に制約があり、少量でのみ製作が可能である。これだけでなく、アークメルティング工程時に正確な温度制御が難しく、アルミニウムの場合、真空状態で蒸気圧(vapor pressure)のため、溶ける過程で気化されて損失が発生するため、正確な比率を添加し難い。
【0024】
これに対し、本実施形態によれば、焼結剤として使用する金属合金の生産時に溶融温度を下げながら費用を節減することができる。具体的に、本実施形態によれば、RH粉末とそれぞれの金属粉末を使用して摂氏1050度以下で焼結剤を製造するため、工程段階で経済性を高めることができる。また、Gaのように常温で液状である金属物質の場合、アークメルティングを使用すると、アーク生成時に飛散されて合金を作ることが技術的に難しい反面、本実施形態によれば、正確な比率を添加することができる。
【0025】
本実施形態で焼結剤として金属合金は、1)合金をなすそれぞれの元素に該当する金属粉末のそれぞれを焼結剤として含めた場合であるか、2)合金をなすそれぞれの元素に該当する物質を焼結前に前駆体として準備して金属合金粉末を焼結剤として含めた場合に該当する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態による焼結磁石の製造方法でR-Al-Cu金属合金粉末を製造する段階を示す図面である。
【0027】
前記2)に該当する本発明の一実施形態によれば、R-Fe-B系磁石粉末に焼結剤としてR-Al-Cu金属合金粉末を添加して混合粉末を形成する段階を含む。具体的に、前記R-Al-Cu粉末を形成する段階は、RH粉末、Al粉末、およびCu粉末を混合して焼結前駆体を形成する段階、前記焼結前駆体を凝集させる段階、前記凝集された焼結前駆体を金属箔で包んで昇温して金属合金を形成する段階、および前記金属合金を粉砕して前記焼結剤を形成する段階を含む。前記焼結前駆体を形成する段階は、液状のGaを混合する段階をさらに含むことができる。また、前記金属箔は、MoまたはTaを含むことができる。
【0028】
図1を参照すると、RH粉末、Al粉末、およびCu粉末が混合された焼結前駆体を冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)などで圧縮してその塊りをMoやTaの金属箔で包むことができる。金属箔に包まれた塊300をアルミナルツボ100に入れてアルゴン(Ar)雰囲気下のチューブファーネス200でほぼ摂氏1050度程度に加熱して高純度の合金を得ることができる。この時、チューブファーネス200は、アルミナ、SUSなどの材質で形成され得る。
【0029】
本実施形態によれば、空間の制約なしに多量の金属合金を製造することに有利であり、アルミニウムのように気化が簡単に行われる物質も高温で気化されて損失が発生する部分を最小化して工程進行時に正確な添加比率の調節が可能である。また、工程時に正確な温度調節が可能であり、ガス雰囲気を制御できるチューブファーネスのような電気炉を利用するため、相対的に安価の装備を使用することができる。これだけでなく、アルミニウムのように気化が良好に行われる元素だけでなく、Gaのように常温で液状である金属物質の場合も、正確な比率で添加することができる。追加的に、真空状態を使用する必要がなく、常圧で簡単に金属合金を製造することができる。
【0030】
前記凝集された焼結前駆体を前記金属箔で包んで昇温する時、アルゴンガス雰囲気下で昇温することができる。
【0031】
前記金属合金を形成する段階は、前記凝集された焼結前駆体を前記金属箔で包んで摂氏900度~摂氏1050度まで昇温させた後、追加熱処理する段階をさらに含むことができる。ここで、追加熱処理は、すでに合成された合金を相対的に低い温度で熱処理することであり、このようなアニーリングを通じてより均一な相を得ることができる。
【0032】
前記焼結前駆体を凝集させる段階は、油圧プレス、タッピングおよび冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)のうちのいずれか一つの加圧法を使用することができる。
【0033】
前記焼結剤として、前記R-Al-Cu粉末にNdH粉末を追加する段階をさらに含むことができる。焼結剤に含まれるNdH粉末は、磁石粉末自体は焼結が不可能であるため、若干のNdH粉末が混合されることによって磁石粉末焼結が可能となる。
【0034】
0.7Al0.2Cu0.1の組成は、一般的にR(希土類)とCuがほぼ7:3の比率で混合されている時に最も低い溶融点を有するため、Rは0.7に設定することが好ましい。本実施形態によれば、Al 100%とCu 0%の組成からAl 50%とCu 50%の組成まで摂氏800度未満で互いに溶融されて合金を作るが、AlがCuより多い組成で製造することができる。AlとCuが焼結剤として多く入れば磁束密度が低くなり得るため、焼結時、Al 0.17wt%とCu 0.2wt%を添加し、追加的にNdHを入れて基準値に合わせた後に焼結することができる。
【0035】
以下、本発明の一実施形態による焼結磁石の製造方法についてより具体的に説明する。しかし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示に該当し、このような実施形態に限定されるのではない。
【0036】
比較例1
Nd2.4Fe12.8BCu0.05の組成で合成された磁石粉末と焼結剤を乳鉢で混合し、所望する形状の磁石を得るための型枠としてモリブデン(Mo)ルツボ(crucible)またはカーボン(C)ルツボに入れる。その後、ほぼ10-6Torr以下の超高真空状態で昇温速度摂氏300度/時間で摂氏850度に上げた後、30分程度維持することができる。再び同じ昇温速度で摂氏1070度に昇温して2時間維持した後、常温で自然冷却して焼結体(焼結以降の物質)を得ることができる。焼結する過程で焼結剤として、NdHを6wt%添加した。すべての作業はアルゴン(Ar)雰囲気下で進行した。
【0037】
実施例1
比較例1と大部分同一の条件で焼結したが、焼結する過程で焼結剤として、NdH粉末6wt%、Al粉末0.17wt%およびCu粉末0.2wt%添加した。
【0038】
実施例2
実施例1と大部分同一の条件で焼結したが、焼結する過程で焼結剤として、NdHとNd0.7Al0.2Cu0.1の金属合金粉末を実施例1と同量になるように添加した。言い換えると、実施例1、2で磁石粉末と焼結剤の混合物を焼結時、追加した各金属元素の原子量比率が磁石粉末質量に対して同一であり得る。
【0039】
NdHとNd0.7Al0.2Cu0.1の金属合金粉末を製造するために、次のような焼結剤製造方法を使用した。NdH粉末、Al粉末、およびCu粉末を混合し、冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)で前記混合物を凝集させる。その後、Mo金属箔やTa金属箔に凝集された混合物を包んでアルゴン(Ar)ガス雰囲気下で時間当たり摂氏300度に昇温して摂氏900度~摂氏1050度で追加1時間加熱する。製造された金属合金を粉砕して粉末の形態で得る。
【0040】
比較例2
比較例1と大部分同一の条件で焼結したが、Nd2.4Fe12.8BCu0.05の組成で合成された磁石粉末の代わりにNd2.4Fe12Co0.8BCu0.05の組成で合成された磁石粉末を使用した。また、焼結剤として、NdHを10wt%添加した。
【0041】
実施例3
比較例2と大部分同一の条件で焼結したが、焼結する過程で焼結剤として、NdH粉末10wt%、Al粉末0.17wt%およびCu粉末0.2wt%添加した。
【0042】
実施例4
実施例3と大部分同一の条件で焼結したが、焼結する過程で焼結剤として、NdHとNd0.7Al0.2Cu0.1の合金粉末を実施例3と同量になるように添加した。NdHとNd0.7Al0.2Cu0.1の金属合金粉末を製造するために、次のような焼結剤製造方法を使用した。NdH粉末、Al粉末、およびCu粉末を混合し、冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)で前記混合物を凝集させる。その後、Mo金属箔やTa金属箔に凝集された混合物を囲んでアルゴン(Ar)ガス雰囲気で時間当たり摂氏300度に昇温して摂氏900度~摂氏1050度で追加1時間加熱する。製造された金属合金を粉砕して粉末の形態で得る。
【0043】
実施例5
実施例4と大部分同一の条件で焼結したが、焼結剤としてNdHとNd0.7Al0.2Cu0.1の合金粉末の代わりにNdHとDy0.7Al0.2Cu0.1の合金粉末を使用した。
【0044】
実施例6
実施例4と大部分同一の条件で焼結したが、焼結剤としてNdHとNd0.7Al0.2Cu0.1の合金粉末の代わりにNdHとPr0.7Al0.2Cu0.1の合金粉末を使用した。
【0045】
図2は、本発明の比較例および実施例により製造された焼結磁石で測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すBHグラフである。
図2は、比較例1、実施例1および実施例2でそれぞれ測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示す。図2を参照すると、比較例1に比べて実施例1、2で焼結磁石特性が向上することを確認できる。また、金属合金の粉末を焼結剤として使用して焼結した場合(実施例2)が、それぞれの焼結成分元素に該当する物質の粉末を混合して焼結した場合(実施例1)より焼結磁石特性が向上することを確認できる。実施例1に比べて実施例2の保磁力増加量を百分率で換算すればほぼ10~20%程度向上することを確認できる。言い換えると、焼結剤の形態変更により保磁力の有意義な増加量を得ることができる。
【0046】
図3は、図2の焼結前磁石粉末の組成を変形した場合に、本発明の比較例および実施例により製造された焼結磁石で測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すBHグラフである。
【0047】
図3は、比較例2、実施例3および実施例4でそれぞれ測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示す。図3を参照すると、比較例2に比べて実施例3、4で焼結磁石特性が向上することを確認できる。また、金属合金の粉末を焼結剤として使用して焼結した場合(実施例4)が、それぞれの焼結成分元素に該当する物質の粉末を混合して焼結した場合(実施例3)より焼結磁石特性が向上することを確認できる。
【0048】
図4は、本発明の一実施例による金属合金の粉末を焼結剤として使用時、金属合金に含まれている希土類金属の種類を変化させることによって製造された焼結磁石で測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すBHグラフである。
【0049】
図4は、比較例2、実施例4、実施例5、および実施例6でそれぞれ測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示す。図4を参照すると、比較例2に比べて実施例4、5、6で焼結磁石特性が向上することを確認できる。また、金属合金の粉末を焼結剤として使用して焼結する時、金属合金に含まれている希土類金属種類が変わっても焼結磁石特性が向上することを確認できる。特に、金属合金に含まれている希土類金属のうち、Dyである場合に最も焼結磁石特性が向上することを確認できる。これだけでなく、本実施例では3相の金属合金、つまり、R-Al-Cu(Rは、Nd、Pr、Dy、TbまたはCe)金属合金の焼結剤について説明したが、Gaなどの他の金属を添加して4相金属合金も変形実施例として適用可能である。
【0050】
以下、本発明の一実施例による焼結磁石の製造方法のうち、4相金属合金を形成する場合について説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を説明するための例示に該当し、このような実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例7
比較例1と大部分同一の条件で焼結して焼結磁石を形成し、その後、Pr0.7Al0.2Cu0.1Ga0.1の金属合金粉末を溶浸処理(infiltration)のための助剤として使用した。
【0052】
Pr0.7Al0.2Cu0.1Ga0.1の金属合金粉末を製造するために、次のような焼結剤製造方法を使用した。Pr粉末、Al粉末、Cu粉末および液状のGaを混合し、冷間静水圧成形法(Cold Isostatic Pressing、CIP)で前記混合物を凝集させる。その後、Mo金属箔やTa金属箔に凝集された混合物を包んでアルゴン(Ar)ガス雰囲気下で時間当たり摂氏300度に昇温して摂氏900度~摂氏1050度で追加1時間加熱する。製造された金属合金を粉砕して粉末の形態で得る。
【0053】
実施例8
実施例7と大部分同一の条件で焼結したが、Pr0.7Al0.2Cu0.1Ga0.1の合金粉末の代わりにDy0.7Al0.2Cu0.1Ga0.1の合金粉末を溶浸処理のための助剤として使用した。
図5および図6は、焼結磁石に溶浸処理のための助剤として4相金属合金粉末の使用前後に測定した保磁力(X軸)による磁束密度(Y軸)を示すグラフである。図5で、実施例7のPr0.7Al0.2Cu0.1Ga0.1の金属合金粉末を使用して溶浸処理した磁石に対する保磁力水準を確認するために、焼結磁石に対して2wt%のPr0.7Al0.2Cu0.1Ga0.1の合金粉末を焼結磁石に付着した状態で、高真空下で摂氏900度でほぼ10時間溶浸(infiltration)を行い、ほぼ摂氏520度で後熱処理を行った結果前後の保磁力を示す。図6では、実施例8のDy0.7Al0.2Cu0.1Ga0.1の金属合金粉末を使用して溶浸処理した磁石に対する保磁力水準を示す。
【0054】
図5および図6を参照する時、4相金属合金粉末を溶浸処理のための助剤として使用する場合に保磁力が向上することを確認できる。
【0055】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0056】
100:ルツボ
200:チューブファーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6