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特許7158904治療方針決定支援装置、治療方針決定支援装置の作動方法、および治療方針決定支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】治療方針決定支援装置、治療方針決定支援装置の作動方法、および治療方針決定支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221017BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20221017BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20221017BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20221017BHJP
【FI】
A61B6/03 360Z
A61B6/03 360D
A61B5/055 380
A61B34/10
G06Q50/22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018113771
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019213784
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501389729
【氏名又は名称】社会福祉法人 恩賜財団済生会熊本病院
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 徹
(72)【発明者】
【氏名】米原 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小妻 幸男
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 貞登
(72)【発明者】
【氏名】李 元中
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-164560(JP,A)
【文献】特開2005-095340(JP,A)
【文献】特開2011-092685(JP,A)
【文献】特開2013-198763(JP,A)
【文献】特表2014-520142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0058408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の脳を含む脳画像を取得する画像取得部と、
前記脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出する疾病領域抽出部と、
前記脳画像において前記脳内の血管が支配する支配領域を特定する支配領域特定部と、
前記支配領域における前記疾病領域の程度を表す指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値、前記被検体のバイタルデータ、および前記特定された支配領域に基づいて治療方針を決定する決定部とを備えた治療方針決定支援装置。
【請求項2】
前記決定部は、さらに前記被検体に症状が現れてからの経過時間に基づいて、前記治療方針を決定する請求項1記載の治療方針決定支援装置。
【請求項3】
被検体の脳を含む脳画像を取得する画像取得部と、
前記脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出する疾病領域抽出部と、
前記脳画像において前記脳内の血管が支配する支配領域を特定する支配領域特定部と、
前記支配領域における前記疾病領域の程度を表す指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値、前記被検体に症状が現れてからの経過時間および前記特定された支配領域に基づいて治療方針を決定する決定部とを備えた治療方針決定支援装置。
【請求項4】
前記疾病領域は、梗塞領域である請求項1から3のいずれか1項に記載の治療方針決定支援装置。
【請求項5】
前記指標値算出部は、前記疾病領域の体積を前記指標値として算出する請求項1から4のいずれか1項に記載の治療方針決定支援装置。
【請求項6】
前記指標値算出部は、前記支配領域における前記疾病領域が占める体積の割合を前記指標値として算出する請求項1から5のいずれか1項に記載の治療方針決定支援装置。
【請求項7】
前記画像取得部は、前記被検体の対象となる脳画像を第1の脳画像として取得し、該第1の脳画像よりも撮影日が過去の脳画像を第2の脳画像として取得し、
前記第1の脳画像および前記第2の脳画像に基づいて、前記疾病領域の変化の情報を取得する変化情報取得部をさらに備え、
前記決定部は、さらに前記変化の情報にも基づいて、前記治療方針を決定する請求項1から6のいずれか1項に記載の治療方針決定支援装置。
【請求項8】
前記決定された治療方針を表示部に表示する表示制御部をさらに備えた請求項1から7のいずれか1項に記載の治療方針決定支援装置。
【請求項9】
前記疾病領域抽出部は、前記脳画像における解剖学的な位置に基づいて、前記脳画像からアーチファクトを除去し、該アーチファクトが除去された脳画像から前記疾病領域を抽出する請求項1から8のいずれか1項に記載の治療方針決定支援装置。
【請求項10】
画像取得部が、被検体の脳を含む脳画像を取得し、
疾病領域抽出部が、前記脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出し、
支配領域特定部が、前記脳画像において前記脳内の血管が支配する支配領域を特定し、
指標値算出部が、前記支配領域における前記疾病領域の程度を表す指標値を算出し、
決定部が、前記指標値、前記被検体のバイタルデータ、および前記特定された支配領域に基づいて治療方針を決定する治療方針決定支援装置の作動方法。
【請求項11】
画像取得部が、被検体の脳を含む脳画像を取得し、
疾病領域抽出部が、前記脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出し、
支配領域特定部が、前記脳画像において前記脳内の血管が支配する支配領域を特定し、
指標値算出部が、前記支配領域における前記疾病領域の程度を表す指標値を算出し、
決定部が、前記指標値、前記被検体に症状が現れてからの経過時間および前記特定された支配領域に基づいて治療方針を決定する治療方針決定支援装置の作動方法。
【請求項12】
被検体の脳を含む脳画像を取得する手順と、
前記脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出する手順と、
前記脳画像において前記脳内の血管が支配する支配領域を特定する手順と、
前記支配領域における前記疾病領域の程度を表す指標値を算出する手順と、
前記指標値、前記被検体のバイタルデータ、および前記特定された支配領域に基づいて治療方針を決定する手順とをコンピュータに実行させる治療方針決定支援プログラム。
【請求項13】
被検体の脳を含む脳画像を取得する手順と、
前記脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出する手順と、
前記脳画像において前記脳内の血管が支配する支配領域を特定する手順と、
前記支配領域における前記疾病領域の程度を表す指標値を算出する手順と、
前記指標値、前記被検体に症状が現れてからの経過時間および前記特定された支配領域に基づいて治療方針を決定する手順とをコンピュータに実行させる治療方針決定支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳の疾病に対する治療方針の決定を支援する治療方針決定支援装置、治療方針決定支援装置の作動方法、および治療方針決定支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CT(Computed Tomography)装置およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医療機器の進歩により、より質の高い高解像度の医用画像を用いての画像診断が可能となってきている。とくに、対象部位を脳とした場合において、CT画像およびMRI画像等を用いた画像診断により、脳梗塞および脳出血等の脳の血管障害を起こしている領域を特定することができるため、特定した結果に基づく適切な治療が行われるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、脳のCT画像を脳機能毎の領域に分割し、それぞれの領域から脳血管領域を抽出し、脳血管における異常部位を検出し、異常部位による将来の発症傾向を予測する手法が提案されている。また、特許文献2においては、脳を複数の領域に分割し、分割された領域ごとにテクスチャー解析を行い、テクスチャー解析の解析結果を用いて、複数の領域のそれぞれに対して、疾患の好発程度を表す注目度を設定する手法が提案されている。また、特許文献3においては、脳の画像である脳画像において頭骨の内側領域を区分し、区分した領域の中から出血部位が含まれる可能性のある領域を区分し、区分した出血部位が含まれる可能性のある領域の中から出血部位を判定する手法が提案されている。医師はこれらの手法により特定された、脳内における障害を起こしている領域(以下、疾病領域とする)を確認して、治療方針を決定している。
【0004】
一方、脳の血管障害を起こした患者に対して治療を施す際には、脳における血管により支配される支配領域を特定することが重要であり、支配領域の情報を加味して、治療方針を決定することが望ましい。このため、支配領域を決定するための各種手法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献4においては、脳のCT画像を脳の機能を司る支配領域毎に分割し、どの支配領域がどの脳機能(運動、言語、知覚、記憶、視覚、および聴覚等)を司っているかを示す手法が提案されている。また、特許文献4においては、虚血領域を特定し、分割した支配領域に虚血領域がどれくらい含まれるかを特定する手法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-29735号公報
【文献】特開2017-51598号公報
【文献】特表2009-539510号公報
【文献】特開2011-10828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献4に記載された手法を用いて虚血領域を確認すれば、その虚血領域に影響される脳機能賦活領域を特定することができる。しかしながら、支配領域を特定したとしても、支配領域における疾病領域(梗塞領域および出血領域)の程度に応じて、適切な治療方針は異なるため、脳の専門医であってもどのような治療を行うべきかの判断が難しい場合がある。とくに、脳の疾患の患者は病院に救急搬送されることが多く、当直医等の脳の専門医ではない医師が最初に診断に当たるケースが多い。このような場合、治療方針を決定することはさらに困難なものとなり、最適ではない治療が行われてしまう可能性もある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、脳画像を用いて、支配領域および支配領域内の疾病領域の程度に応じて、適切な治療方針を決定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による治療方針決定支援装置は、被検体の脳を含む脳画像を取得する画像取得部と、
脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出する疾病領域抽出部と、
脳画像において脳内の血管が支配する支配領域を特定する支配領域特定部と、
支配領域における疾病領域の程度を表す指標値を算出する指標値算出部と、
指標値に基づいて治療方針を決定する決定部とを備える。
【0010】
「疾病領域の程度を表す指標値」としては、疾病領域の体積、および支配領域に占める疾病領域の体積の割合等を用いることができる。
【0011】
なお、本発明による治療方針決定支援装置においては、疾病領域は梗塞領域であってもよい。
【0012】
また、本発明による治療方針決定支援装置においては、指標値算出部は、疾病領域の体積を指標値として算出するものであってもよい。
【0013】
また、本発明による治療方針決定支援装置においては、指標値算出部は、支配領域における疾病領域が占める体積の割合を指標値として算出するものであってもよい。
【0014】
また、本発明による治療方針決定支援装置においては、決定部は、さらに被検体のバイタルデータに基づいて、治療方針を決定するものであってもよい。
【0015】
また、本発明による治療方針決定支援装置においては、決定部は、さらに被検体に症状が現れてからの経過時間に基づいて、治療方針を決定するものであってもよい。
【0016】
また、本発明による治療方針決定支援装置においては、画像取得部は、被検体の対象となる脳画像を第1の脳画像として取得し、第1の脳画像よりも撮影日が過去の脳画像を第2の脳画像として取得し、
第1の脳画像および第2の脳画像に基づいて、疾病領域の変化の情報を取得する変化情報取得部をさらに備え、
決定部は、さらに変化の情報にも基づいて、治療方針を決定するものであってもよい。
【0017】
また、本発明による治療方針決定支援装置においては、決定された治療方針を表示部に表示する表示制御部をさらに備えるものであってもよい。
【0018】
また、本発明による治療方針決定支援装置においては、疾病領域抽出部は、脳画像における解剖学的な位置に基づいて、脳画像からアーチファクトを除去し、アーチファクトが除去された脳画像から疾病領域を抽出するものであってもよい。
【0019】
本発明による治療方針決定支援装置の作動方法は、画像取得部が、被検体の脳を含む脳画像を取得し、
疾病領域抽出部が、脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出し、
支配領域特定部が、脳画像において血管が支配する支配領域を特定し、
指標値算出部が、支配領域における疾病領域の程度を表す指標値を算出し、
決定部が、指標値に基づいて治療方針を決定する。
【0020】
本発明による治療方針決定支援プログラムは、被検体の脳を含む脳画像を取得する手順と、
脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出する手順と、
脳画像において脳内の血管が支配する支配領域を特定する手順と、
支配領域における疾病領域の程度を表す指標値を算出する手順と、
指標値に基づいて治療方針を決定する手順とをコンピュータに実行させる。
【0021】
本発明による他の治療方針決定支援装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、
被検体の脳を含む脳画像を取得し、
脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出し、
脳画像において脳内の血管が支配する支配領域を特定し、
支配領域における疾病領域の程度を表す指標値を算出し、
指標値に基づいて治療方針を決定する処理を実行する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、脳画像から疾病が存在する疾病領域が抽出され、脳画像において脳内の血管が支配する支配領域が特定される。さらに、支配領域における疾病領域の程度を表す指標値が算出され、指標値に基づいて治療方針が決定される。このため、支配領域に含まれる疾病領域の程度を表す指標値に応じて、適切な治療方針を決定することができる。したがって、決定された治療方針に従うことにより、被検体である患者に適切な治療を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態による治療方針決定支援装置を適用した、診断支援システムの概要を示すハードウェア構成図
図2】第1の実施形態による治療方針決定支援装置の概略構成を示す図
図3】脳画像を示す図
図4】梗塞領域を抽出する際のしきい値の決定を説明するための図
図5】脳における動脈および支配領域を説明するための図
図6】標準脳画像における支配領域を示す図
図7】脳画像における支配領域を示す図
図8】指標値の算出結果を示す図
図9】データベースの登録内容を示す図
図10】データベースの登録内容を示す図
図11】ディスプレイに表示された治療方針を示す図
図12】第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
図13】第2の実施形態による治療方針決定支援装置の概略構成を示す図
図14】変化情報の取得を説明するための図
図15】データベースの登録内容を示す図
図16】脳画像におけるアーチファクトの発生を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による治療方針決定支援装置を適用した、診断支援システムの概要を示すハードウェア構成図である。図1に示すように、診断支援システムでは、第1の実施形態による治療方針決定支援装置1、3次元画像撮影装置2、および画像保管サーバ3が、ネットワーク4を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0025】
3次元画像撮影装置2は、被検体の診断対象となる部位を撮影することにより、その部位を表す3次元画像を生成する装置であり、具体的には、CT装置、MRI装置、およびPET(Positron Emission Tomography)装置等である。この3次元画像撮影装置2により生成された3次元画像は画像保管サーバ3に送信され、保存される。なお、本実施形態においては、被検体である患者の診断対象部位は脳であり、3次元画像撮影装置2はMRI装置であり、被検体の脳を含む3次元のMRI画像を脳画像B0として生成する。また、本実施形態においては、後述するように脳画像における梗塞領域を特定する。ここで、MRI画像のうちの拡散強調画像(DWI:Diffusion Weighted Image)においては梗塞領域が他の領域とは異なる画素値を有するものとなる。とくに急性期の脳梗塞の領域は、拡散強調画像においては他の領域との画素値の相違が顕著となる。このため、本実施形態においては、脳画像として、MRIの拡散強調画像を使用するものとする。
【0026】
画像保管サーバ3は、各種データを保存して管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置およびデータベース管理用ソフトウェアを備えている。画像保管サーバ3は、有線あるいは無線のネットワーク4を介して他の装置と通信を行い、画像データ等を送受信する。具体的には3次元画像撮影装置2で生成された脳画像の画像データを含む各種データをネットワーク経由で取得し、大容量外部記憶装置等の記録媒体に保存して管理する。なお、画像データの格納形式およびネットワーク4経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0027】
治療方針決定支援装置1は、1台のコンピュータに、本発明の治療方針決定支援プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションまたはパーソナルコンピュータでもよく、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。治療方針決定支援プログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。または、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、もしくはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0028】
図2は、コンピュータに治療方針決定支援プログラムをインストールすることにより実現される、第1の実施形態による治療方針決定支援装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、治療方針決定支援装置1は、標準的なワークステーションの構成として、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12およびストレージ13を備えている。また、治療方針決定支援装置1には、ディスプレイ14、並びにキーボードおよびマウス等の入力部15が接続されている。なお、ディスプレイ14が表示部に対応する。
【0029】
ストレージ13は、ハードディスクドライブ等からなり、ネットワーク4を経由して画像保管サーバ3から取得した、被検体の医用画像、並びに処理に必要な情報を含む各種情報が記憶されている。
【0030】
また、メモリ12には、治療方針決定支援プログラムが記憶されている。治療方針決定支援プログラムは、CPU11に実行させる処理として、被検体の脳を含む脳画像を取得する画像取得処理、脳画像から疾病が存在する疾病領域を抽出する疾病領域抽出処理、脳画像において脳内の血管が支配する支配領域を特定する支配領域特定処理、支配領域における疾病領域の程度を表す指標値を算出する指標値算出処理、指標値に基づいて治療方針を決定する決定処理、および決定された治療方針をディスプレイ14に表示する表示制御処理を規定する。
【0031】
そして、CPU11がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、コンピュータは、画像取得部21、疾病領域抽出部22、支配領域特定部23、指標値算出部24、決定部25および表示制御部26として機能する。なお、本実施形態においては、CPU11が治療方針決定支援プログラムによって、各部の機能を実行するようにしたが、ソフトウェアを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサとしては、CPU11の他、FPGA (Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)を用いることができる。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等により、各部の処理を実行するようにしてもよい。
【0032】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、またはCPUとFPGAの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上を用いて構成される。
【0033】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0034】
画像取得部21は、被検体の脳の脳画像B0を画像保管サーバ3から取得する。なお、脳画像B0が既にストレージ13に記憶されている場合には、画像取得部21は、ストレージ13から脳画像を取得するようにしてもよい。
【0035】
疾病領域抽出部22は、脳画像B0から疾病が存在する疾病領域を抽出する。本実施形態においては、疾病領域抽出部22は、脳内において梗塞を起こしている梗塞領域を疾病領域として抽出する。ここで、脳内における梗塞領域は、脳画像B0において周囲の組織と明らかに異なる画素値を有する。例えば、MRIの拡散強調画像においては、梗塞領域内の画素(ボクセル)は、脳実質と比較すると大きい画素値を有するものとなる。図3は脳梗塞を発症している患者の脳画像を示す図である。なお、図3においては3次元画像の脳画像B0における1つの断層面のスライス画像S0を示している。図3に示すように、拡散強調画像である脳画像B0においては、大きい画素値を有する領域40が脳梗塞を発症している梗塞領域となる。このため、疾病領域抽出部22は、脳画像B0に対してしきい値Th1を用いたしきい値処理を行い、脳画像B0から梗塞領域を疾病領域として抽出する。具体的には、脳画像B0における画素値がしきい値Th1を超えるボクセルからなる領域を疾病領域として抽出する。
【0036】
なお、しきい値Th1は以下のようにして決定する。図4は梗塞領域を抽出する際のしきい値の決定を説明するための図である。図4に示すように、疾病領域抽出部22は、脳画像B0の頻度分布を表すヒストグラムH0を生成する。なお、ヒストグラムH0においては、脳の背景の画素値の頻度が高く、かつ脳実質の画素値の頻度にピークを有するものとなる。疾病領域抽出部22は、脳実質の画素値の頻度のピークをガウス分布で近似し、近似したガウス分布におけるピークに対して+3σとなる画素値をしきい値Th1に決定する。
【0037】
支配領域特定部23は、脳画像B0における血管が支配する支配領域を特定する。図5は脳における動脈および支配領域を説明するための図である。なお、図5には脳のある断層面におけるスライス画像S1を示す。図5に示すように、脳には、前大脳動脈41、中大脳動脈42および後大脳動脈43が含まれている。脳は、前大脳動脈41、中大脳動脈42および後大脳動脈43のそれぞれにより支配される、左右の前大脳動脈支配領域51L,51R、中大脳動脈支配領域52L,52Rおよび後大脳動脈支配領域53L,53Rに分割される。なお、図5においては向かって右側が脳における左側の領域となっている。
【0038】
支配領域特定部23は、脳画像B0における支配領域を特定するために標準脳画像Bsを用いる。ここで、標準脳画像Bsとは、標準的な形状および大きさ、並びに標準的な画素値を有する脳、すなわち標準脳を表す3次元の脳画像である。標準脳画像Bsは、複数の健常者の頭部を3次元画像撮影装置により取得した複数の脳画像から脳を抽出し、抽出した複数の脳を平均することにより生成することができる。また、標準脳画像Bsは、コンピュータグラフィックス等により作成されたものであってもよい。また、一人の健常者の脳画像を標準脳画像Bsとして用いてもよい。
【0039】
本実施形態においては、標準脳画像Bsは支配領域に分割されている。図6は標準脳画像Bsの例を示す図である。なお、図6には標準脳画像Bsのある断層面におけるスライス画像Ss1を示す。図6に示すように、標準脳画像Bsは、左右の前大脳動脈支配領域61L,61R、中大脳動脈支配領域62L,62Rおよび後大脳動脈支配領域63L,63Rに分割されている。
【0040】
支配領域特定部23は、脳画像B0における支配領域を特定するために、脳画像B0と標準脳画像Bsとの位置合わせを行う。位置合わせの手法としては、まず、標準脳画像Bsおよび脳画像B0間でのランドマークを用いた第1の位置合わせを行う。そして、第1の位置合わせを行った後に、標準脳画像Bsおよび脳画像B0間での全領域を用いた第2の位置合わせを行う。ランドマークとしては、脳に含まれる脳溝および脳室等の特徴的な領域の少なくとも1つを用いることができる。
【0041】
支配領域特定部23は、標準脳画像Bsおよび脳画像B0間において、対応するランドマークを一致させるように第1の位置合わせを行う。本実施形態において、第1の位置合わせは相似変換による位置合わせである。具体的には、脳画像B0を平行移動、回転および相似に拡大縮小することによる位置合わせである。支配領域特定部23は、標準脳画像Bsに含まれるランドマークと、脳画像B0に含まれる標準脳画像Bsのランドマークに対応するランドマークとの相関が最大となるように、脳画像B0を相似変換して、第1の位置合わせを行う。
【0042】
支配領域特定部23は、このようにランドマークを用いた第1の位置合わせを行った後、標準脳画像Bsおよび脳画像B0間での全領域を用いた第2の位置合わせを行う。本実施形態において、第2の位置合わせは非線形変換による位置合わせである。非線形変換による位置合わせとしては、例えばBスプラインおよびシンプレートスプライン(Thin Plate Spline)等の関数を用いて画素位置を非線形に変換することによる位置合わせが挙げられる。支配領域特定部23は、第1の位置合わせ後の脳画像B0の各画素位置を、標準脳画像Bsに含まれる対応する画素位置に非線形変換することにより、第2の位置合わせを行う。
【0043】
支配領域特定部23は、このようにして標準脳画像Bsと脳画像B0とを位置合わせし、標準脳画像Bsにおける支配領域の境界を脳画像B0に適用することにより、図7に示すように、脳画像B0において支配領域、すなわち左右の前大脳動脈支配領域51L,51R、中大脳動脈支配領域52L,52Rおよび後大脳動脈支配領域53L,53Rを特定する。
【0044】
指標値算出部24は、支配領域特定部23が特定した支配領域において、疾病領域の程度を表す指標値を算出する。本実施形態においては、疾病領域の体積、および支配領域に占める疾病領域の体積の割合を指標値として算出する。なお、疾病領域が複数の支配領域に跨がる場合には、支配領域毎に指標値を算出する。例えば、図7に示す脳画像B0においては、梗塞領域40が右の中大脳動脈支配領域52Rおよび右の後大脳動脈支配領域53Rに跨がっている、このため、指標値算出部24は、右の中大脳動脈支配領域52Rおよび右の後大脳動脈支配領域53Rのそれぞれについて指標値を算出する。なお、体積は脳画像B0におけるボクセルの数に1ボクセル当たりの体積を乗算することにより算出することができる。支配領域に対する疾病領域の体積の割合は、算出した体積を支配領域の体積により除算することにより算出することができる。
【0045】
図8は指標値の算出結果を示す図である。なお、図8には、各支配領域、すなわち左右の前大脳動脈支配領域、中大脳動脈支配領域および後大脳動脈支配領域のそれぞれに対する疾病領域の体積の比率(%)、疾病領域の体積(ml)および支配領域の体積(ml)が示されている。
【0046】
決定部25は、指標値算出部24が算出した指標値に基づいて治療方針を決定する。本実施形態においては、指標値に加えて、被検体に症状が現れてからの経過時間および被検体のバイタルデータにも基づいて、治療方針を決定する。バイタルデータとしては、血圧、心拍数、呼吸数および体温等を用いることができる。バイタルデータおよび被検体に症状が現れてからの経過時間は、入力部15からの操作者の入力により取得される。なお、バイタルデータは、画像保管サーバ3に保存されている患者である被検体の診断情報から取得してもよい。
【0047】
本実施形態においては、各種支配領域、各種指標値、各種経過時間および各種バイタルデータと、各種治療方針とを対応づけて登録したデータベースがストレージ13に保存されている。図9および図10はデータベースの登録内容を示す図である。例えば、脳梗塞患者に対しては、血栓溶解療法、抗血小板薬を使った治療(抗血小板薬投与)、抗脳浮腫療法、および脳保護療法等の治療方針がある。ここで、支配領域における梗塞領域の割合が一定値以下の場合には、血栓溶解療法が望まれる。しかしながら、梗塞を発症してからの経過時間が予め定められた時間(例えば4.5時間)以上経過している場合、梗塞した先の血管が脆くなっている可能性がある。この場合は、血栓溶解療法ではなく、抗脳浮腫療法または抗血小板薬投与等の治療が望まれる。また、支配領域における梗塞領域の割合が一定値を超える場合においても、梗塞を発症してからの経過時間に応じて治療方針が異なる。
【0048】
したがって、図9に示すデータベースDB1には、支配領域A1,A2に対して、指標値として、梗塞領域の割合が一定値D0以下であり、経過時間が4.5時間未満の場合には、治療方針として血栓溶解療法が登録されている。また、梗塞領域の割合が一定値D0を超え、経過時間が4.5時間未満の場合には、治療方針として脳保護療法が登録されている。また、梗塞領域の割合が一定値D0以下であり、経過時間が4.5時間以上の場合は、治療方針として、抗脳浮腫療法および抗血小板薬投与がそれぞれ登録されている。また、梗塞領域の割合が一定値D0を超え、経過時間が4.5時間以上の場合は、治療方針として、抗脳浮腫療法および抗凝固薬投与がそれぞれ登録されている。なお、支配領域A1,A2は、支配領域特定部23が特定した脳の支配領域のいずれかである。また、図9においては、説明のために、2つの支配領域A1,A2のみがデータベースDB1に登録されているが、実際には、脳における複数の支配領域のすべてまたはその一部が登録されている。
【0049】
また、脳梗塞の治療に有用とされているtPA静注療法は禁忌事項があり、高血圧患者には使用しない。具体的には、収縮期血圧が185mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上の患者には使用しない。このため、図10に示すデータベースDB2には、支配領域A1,A2に対して、指標値として、梗塞領域の割合がD0を超え、バイタルデータとして、収縮期血圧が185mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上の場合は、治療方針としてtPA静注療法は禁忌であることが登録されている。
【0050】
決定部25は、上記データベースDB1,DB2を参照して、治療方針を決定する。例えば、支配領域がA1であり、指標値として梗塞領域の割合がD0以下であり、発症からの経過時間が4.5時間以上の場合、治療方針を抗脳浮腫療法または抗血小板薬投与に決定する。なお、この際に、被検体の脳画像B0と、画像保管サーバ3に保管されている他の患者の脳画像および治療結果を参照して、症状が類似する他の患者の脳画像を検索し、検索した脳画像に対応づけられている治療結果を参照して、治療実績が良好であった治療方針に決定することが好ましい。例えば、抗脳浮腫療法または血小板薬投与が治療方針に決定される場合、症例が類似する患者において、抗脳浮腫療法の治療実績が良好な場合には、抗脳浮腫療法を治療方針に決定することが好ましい。
【0051】
なお、データベースDB1,DB2に登録された事項を1つのデータベースに纏めるようにしてもよい。この場合、データベースには、支配領域に対して、指標値、経過時間、バイタルデータおよび治療方針が登録されることとなる。
【0052】
表示制御部26は、決定部25が決定した治療方針をディスプレイ14に表示する。図11はディスプレイに表示された治療方針を示す図である。図11に示すように、ディスプレイ14には脳画像B0および治療方針70(抗脳浮腫療法)が表示されている。なお、脳画像B0は、支配領域特定部23が特定した支配領域に分割されており、梗塞領域40も示されている。このように治療方針70をディスプレイ14に表示することにより、医師は決定された治療方針を容易に認識することができる。
【0053】
次いで、第1の実施形態において行われる処理について説明する。図12は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が、被検体の脳画像B0を取得し(ステップST1)、疾病領域抽出部22が、脳画像B0から疾病が存在する疾病領域を抽出する(ステップST2)。そして、支配領域特定部23が、脳画像B0における血管が支配する支配領域を特定する(ステップST3)。なお、ステップST2の処理とステップST3の処理を並列に行ってもよく、ステップST3の処理をステップST2の処理よりも先に行ってもよい。さらに、指標値算出部24が、支配領域における疾病領域の程度を表す指標値を算出し(ステップST4)、決定部25が、指標値に基づいて治療方針を決定する(ステップST5)。そして、表示制御部26が、決定された治療方針をディスプレイ14に表示し(ステップST6)、処理を終了する。
【0054】
このように、本実施形態においては、脳画像から疾病領域を抽出し、脳画像において脳内の血管が支配する支配領域を特定し、支配領域における疾病領域の程度を表す指標値を算出し、指標値に基づいて治療方針を決定するようにした。このため、支配領域に含まれる疾病領域の程度を表す指標値に応じて、適切な治療方針を決定することができる。したがって、決定された治療方針に従うことにより、被検体である患者に適切な治療を施すことができる。
【0055】
なお、上記第1の実施形態においては、被検体である患者の過去画像を用いて治療方針を決定してもよい。以下、これを第2の実施形態として説明する。図13は、第2の実施形態による治療方針決定支援装置の概略構成を示す図である。なお、図13において、図2と同一の構成については同一の参照番号を付与し、ここでは詳細な説明は省略する。第2の実施形態による治療方針決定支援装置は、画像取得部21が、被検体の対象となる脳画像を第1の脳画像B1として取得し、第1の脳画像B1よりも撮影日が過去の脳画像を第2の脳画像B2として取得し、第1の脳画像B1および第2の脳画像B2に基づいて、疾病領域の変化を、変化情報として取得する変化情報取得部27をさらに備え、決定部25が、さらに変化情報にも基づいて治療方針を決定するようにした点が第1の実施形態と異なる。
【0056】
第2の実施形態においては、画像取得部21は、第1および第2の脳画像B1,B2を画像保管サーバ3から取得する。なお、第1および第2の脳画像B1,B2が既にストレージ13に記憶されている場合には、画像取得部21は、ストレージ13から第1および第2の脳画像B1,B2を取得するようにしてもよい。
【0057】
変化情報取得部27は、第1の脳画像B1および第2の脳画像B2に基づいて、疾病領域の変化の情報を変化情報として取得する。例えば、図14に示すように、第2の脳画像B2において梗塞領域80が見られたが、第1の脳画像B1においては、梗塞領域80よりも大きい梗塞領域81が見られるようになった場合を考える。この場合、変化情報取得部27は、第1の脳画像B1と第2の脳画像B2とのそれぞれにおいて、画素値がしきい値Th1を超えるボクセルからなる領域のサイズを算出する。そして、変化情報取得部27は、第1の脳画像B1において算出した領域のサイズが第2の脳画像B2において算出した領域のサイズよりも大きい場合に、梗塞領域が増加したことを変化情報として取得する。
【0058】
決定部25は、変化情報取得部27が取得した変化情報にも基づいて治療方針を決定する。第2の実施形態においては、各種変化情報と各種治療方針とを対応づけて登録したデータベースがストレージ13に保存されている。図15は第2の実施形態におけるデータベースの登録内容を示す図である。ここで、梗塞領域の割合がD0以下の場合には、血栓溶解療法による治療が行われるが、血栓溶解療法の治療の効果が見られない場合、血管内治療が必要である。このため、図15に示すように、データベースDB3には、支配領域A1,A2に対して、指標値として、梗塞領域の割合がD0以下であり、変化情報として梗塞領域増加および梗塞領域変化なしの場合は、治療方針として、血管内療法が登録されている。一方、脳梗塞の治療の効果が認められた場合には、脳梗塞の再発を予防するための治療が必要である。このため、梗塞領域の割合がD0以下であり、変化情報が梗塞領域減少の場合は、治療方針として、抗血小板薬投与が登録されている。また、梗塞領域の割合がD0を超え、変化情報が梗塞領域減少の場合は、治療方針として、抗凝固薬投与が登録されている。
【0059】
このように、第2の実施形態においては、疾病領域の変化の情報を用いているため、疾病領域の変化に応じた適切な治療方針を決定することができる。
【0060】
一方、脳画像B0が拡散強調画像である場合、脳における鼻の近傍領域等、空気と接触する領域において、脳実質の領域よりも大きい画素値を有するアーチファクトが発生する場合がある。例えば図16に示す脳画像B10においては鼻の近傍の領域にアーチファクト90が発生している。また、脳においても梗塞領域91が存在している。このような脳画像B10を用いて疾病領域を抽出すると、梗塞領域91のみならず、アーチファクト90の領域も疾病領域として抽出してしまう。このため、疾病領域抽出部22が疾病領域を抽出する際に、標準脳画像Bsと脳画像B10との位置合わせを行い、標準脳画像Bsにおけるアーチファクトが発生しやすい領域に対応する脳画像B10の領域を疾病領域の抽出から除外してもよい。また、疾病領域が抽出された後に、抽出された疾病領域が、標準脳画像Bsにおけるアーチファクトが発生しやすい領域に対応する脳画像B10の領域に存在する場合には、抽出した支配領域からその疾病領域を除外してもよい。これにより、アーチファクト90の影響を低減して、精度よく指標値を算出することができる。
【0061】
ところで、脳卒中が疑われる救急患者が病院に搬送された場合、脳の専門医が不在の場合がある。このような状況に対応するために、図1に示す治療方針決定支援システムに対して外部からアクセス可能とし、例えば脳の専門医が所有する端末において、図11に示すように治療方針を表示可能としてもよい。これにより、病院にいる脳の専門医でない医師は、脳の専門医の判断を仰ぐことができるため、適切な治療を行うことができることとなる。
【0062】
なお、上記各実施形態においては、被検体である患者に対してリスクがある治療方針を決定してもよい。この場合、データベースDB1~DB3に対して患者に対してリスクがある治療方針を登録しておけばよい。なお、リスクを伴う治療方針を決定した場合、表示制御部26は、表示された治療方針がリスクを伴うものであることを報知することが好ましい。報知の態様としては、リスクを伴う治療方針であることを示すテキストまたはアイコンを表示すること、ディスプレイ14に表示される脳画像の背景の色を変えること、または音声により出力すること等が挙げられる。
【0063】
また、上記各実施形態においては、疾病領域として梗塞領域を用いているが、出血領域を疾病領域として用いてもよい。ここで、脳における出血領域はCT画像において確認がし易い。一方、梗塞領域はMRI画像の方がCT画像よりも確認がし易い。このため、疾病領域として出血領域も使用する場合には、脳画像B0としてCT画像およびMRI画像の双方を取得するようにし、出血領域はCT画像から抽出し、梗塞領域はMRI画像から抽出するようにしてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態においては、支配領域特定部23において、標準脳画像Bsを用いて脳画像B0における血管の支配領域を特定しているが、標準脳画像Bsを用いることなく、脳画像B0における支配領域を特定してもよい。例えば、脳における血管の支配領域は、脳の内部において、頭蓋骨を基準とした絶対的な位置がほぼ決まっている。このため、頭蓋骨を基準とした支配領域の絶対的な位置の情報を用いて、脳画像B0における血管の支配領域を特定してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 治療方針決定支援装置
2 3次元画像撮影装置
3 画像保管サーバ
4 ネットワーク
11 CPU
12 メモリ
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力部
21 画像取得部
22 疾病領域抽出部
23 支配領域特定部
24 指標値算出部
25 決定部
26 表示制御部
27 変化情報取得部
40,80,81 梗塞領域
41 前大脳動脈
42 中大脳動脈
43 後大脳動脈
51L,51R,61L,61R 前大脳動脈支配領域
52L,52R,62L,62R 中大脳動脈支配領域
53L,53R,63L,63R 後大脳動脈支配領域
60 領域
70 治療方針
90 アーチファクト
91 梗塞領域
A1,A2 支配領域
B0,B1,B2,B10 脳画像
Bs 標準脳画像
DB1~DB3 データベース
S0,S1,Ss1 スライス画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16