(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】積層基板及び積層基板製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20221017BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20221017BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H01L23/12 N
H01L23/12 Q
H05K3/46 T
H05K1/02 J
H05K3/46 B
(21)【出願番号】P 2019002179
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 美沙紀
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 克哉
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0188458(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106952885(CN,A)
【文献】特開2018-17987(JP,A)
【文献】特開2006-93465(JP,A)
【文献】特開2005-322659(JP,A)
【文献】特開2013-229525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H05K 3/46
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上面に設けられ、貫通部を備えた導体層と、
前記導体層を被覆し、前記第1絶縁層の上面に積層された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上面から前記第2絶縁層を貫通し
て前記第1絶縁層の内部に達し、且つ、前記導体層の貫通部を含むように設けられたビアホールと、
前記ビアホールに充填され
、前記ビアホール内に露出する前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に直接接触する絶縁部材と、
前記第2絶縁層の上面に積層され、前記絶縁部材と一体に形成された第3絶縁層と、
を有し、
前記導体層の一部は、前記ビアホール内に露出し、
前記絶縁部材は、前記ビアホール内に露出する前記導体層の上面を
直接被覆し、且つ、前記導体層の貫通部を介して前記ビアホール内に露出する前記導体層の下面を
直接被覆する
ことを特徴とする積層基板。
【請求項2】
前記導体層はグランドプレーン又は電源プレーンであることを特徴とする請求項1に記載の積層基板。
【請求項3】
前記貫通部は、導体層の内側に形成された貫通孔又は導体層の外周に形成された切り欠きを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層基板。
【請求項4】
前記貫通部は、複数の前記貫通孔を有し、
前記ビアホールは、前記複数の貫通孔の全てを内包する
ことを特徴とする請求項3に記載の積層基板。
【請求項5】
前記第1絶縁層の上面に設けられ、電気的接続に用いる導体パッドと、
記第2絶縁層を貫通し、前記導体パッドに接続された導通部材と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の積層基板。
【請求項6】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上面に設けられ、電気的接続に用いる導体パッドと、
前記導体パッドを被覆し、前記第1絶縁層の上面に積層された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層を貫通し、前記導体パッドに接続された導通部材と、
前記第2絶縁層の上面から前記第2絶縁層を貫通し
て前記第1絶縁層の内部に達し、且つ、前記第2絶縁層における形状が前記導通部材と同じ形状であるビアホールと、
前記ビアホール内に充填され
、前記ビアホール内に露出する前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に直接接触する絶縁部材と、
前記第2絶縁層の上面に積層され、前記絶縁部材と一体に形成された第3絶縁層と、
を備えたことを特徴とする積層基板。
【請求項7】
第1絶縁層上に、貫通部を備えた導体層を形成する工程と、
前記導体層を被覆するように前記第1絶縁層上に第2絶縁層を積層する工程と、
前記第2絶縁層の上面から前記第2絶縁層を厚み方向に貫通して前記第1絶縁層の内部に達し、且つ、前記導体層の貫通部を含むようにビアホールを形成する工程と、
前記ビアホール内
に露出する前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に直接接触する絶縁部材により
前記ビアホールを充填するとともに、前記第2絶縁層上に第3絶縁層を積層する工程と、
を有し、
前記ビアホールを絶縁部材により充填する工程において、前記ビアホール内の前記導体層の上面側を
直接被覆するとともに、前記導体層の貫通部を介して前記導体層の下面側を
直接被覆するように絶縁部材を充填する
ことを特徴とする積層基板製造方法。
【請求項8】
第1絶縁層上に電気的接続に用いる導体パッドを形成する工程と、
前記導体パッドを被覆するように前記第1絶縁層上に第2絶縁層を積層する工程と、
前記第2絶縁層の上面から前記第2絶縁層を厚み方向に貫通して前記導体パッド上に第1ビアホールを形成する工程と、
前記第2絶縁層の上面から前記第2絶縁層を厚み方向に貫通して前記第1絶縁層の内部に達し、前記第1ビアホールと同形状の第2ビアホールを形成する工程と、
前記第2ビアホールをマスクで覆い、前記第1ビアホールに導通部材を形成する工程と、
前記第2ビアホール
内に露出する前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に直接接触する絶縁部材
により前記第2ビアホールを充填するとともに、前記第2絶縁層上に第3絶縁層を積層する工程と、
を備えたことを特徴とする積層基板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層基板及び積層基板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は高性能化の一途を辿っている。電子機器の高性能化に伴い、各種の電子部品を搭載する配線基板は、高密度実装化が進み、配線を複数層に渡って形成した積層基板が一般的となっている。
【0003】
積層基板は、一般にコア基板の上下に積層された複数の絶縁層及び配線層と、配線層間を互いに接続するビアとを含む、多層配線基板である。このような積層基板は、例えばビルドアップ法により形成され、ビルドアップ基板とも呼ばれる。
【0004】
絶縁材料層と銅で形成された導体層とを順次積み上げて形成される積層基板においては、一般的には以下の3つの界面が存在する。第1の界面は、絶縁材料層の表面上に別の絶縁材料層が直接積層された状態の界面である。第2の界面は、絶縁材料層の表面上に導体層がめっきされた状態の界面である。第3の界面は、表面粗化処理又は密着層が形成された導体層の表面上に絶縁材料層が積層された状態の界面である。さらに、絶縁材料層を貫通して導体層と接続する導体ビアが形成されている場合、導体層上に導体ビアがめっきされた状態の界面が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積層基板には製造工程及び電子部品搭載工程などにおいて、熱が加えられる様々な処理が施される。このような処理における各種熱履歴により各々の界面に発生した応力が、界面の密着力よりも大きくなると、界面の剥離が生じる。以下では、界面の剥離をデラミ(delamination)と呼ぶ。
【0007】
前述の第1の界面である絶縁材料層表面上に別の絶縁材料層が直接積層された界面ではデラミの発生及び他の界面で発生したデラミの伝搬が危惧される。
【0008】
さらに、金属と樹脂とが接する界面は樹脂と樹脂とが接する界面よりも密着力が弱い。そのため、前述の第2及び第3の界面においては、導体層表面に密着力を高めるための粗化処理や密着層の形成などが行われる。しかし、ダミーパターン、グランドプレーン又は電源プレーンのように広い面積を有する導体層と絶縁材料層とが接する界面の場合には、密着力が弱い界面が連続してしまうため、デラミの発生やデラミが伝搬するリスクが高まる。
【0009】
そして、デラミが発生すると、その部分に水分が溜まり易くなり、後工程の熱履歴においてデラミにより形成された空間の膨れが生じるおそれがある。そして、デラミにより形成された空間の膨れは新たなデラミの発生に繋がるおそれがある。さらに、デラミが導体層と導体ビアとにより形成される界面に達すると、導体層間の電気的な導通が切断されることになり、電気的接続信頼性が低下するおそれがある。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、デラミの発生及び伝搬を低減する積層基板及び積層基板製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する積層基板及び積層基板製造方法の一つの態様において、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上面 に設けられ、貫通部 を備えた導体層と、前記導体層を被覆し、前記第1絶縁層の上面に積層された第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上面から前記第2絶縁層を貫通して少なくとも前記第1絶縁層の内部に達し、且つ、前記導体層の貫通部を含むように設けられたビアホールと、前記ビアホールに充填された絶縁部材と、前記第2絶縁層の上面に積層され、前記絶縁部材と一体に形成された第3絶縁層とを有する。前記導体層の一部は、前記ビアホール内に露出する。前記絶縁部材は、前記ビアホール内に露出する前記導体層の上面を被覆し、且つ、前記導体層の貫通部を介して前記ビアホール内に露出する前記導体層の下面を被覆する。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、本発明は、デラミの発生及び伝搬を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例に係るビルドアップ基板の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1における樹脂ビアが貫通する導体層のII-II断面図である。
【
図3】
図3は、
図1における樹脂ビアが貫通する導体層のIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、
図1における樹脂ビア103のIV-IV断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5C】
図5Cは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5D】
図5Dは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5E】
図5Eは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5F】
図5Fは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5G】
図5Gは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5H】
図5Hは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図5I】
図5Iは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、デガスホールを介したレーザーによるアブレーションについて説明するための図である。
【
図6B】
図6Bは、デガスホールを貫通するビアの他の形状を表す図である。
【
図8】
図8は、外周部の切り欠きと貫通孔を有する導体層の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する積層基板及び積層基板製造方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する積層基板及び積層基板製造方法が限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
図1は、実施例に係るビルドアップ基板の概略断面図である。ビルドアップ基板5は、複数の層を有する板であり、一層毎に絶縁材料の積層、穴あけ加工、配線形成などを繰り返すことによって多層構造のプリント基板を作製するビルドアップ工法を用いて作成された基板である。
【0016】
ビルドアップ基板5は、
図1に示すように、少なくとも絶縁材料層1~3を有する構成である。ここで、
図1では3層の絶縁材料層1~3を記載したが、積層される層の数に制限はない。また、
図1で最下層となる絶縁材料層1は、ビルドアップ基板5を構成するコア層であってもよい。絶縁材料層1~3は、例えば、20μm~50μmの厚さを有する。また、絶縁材料層1~3が、「第1絶縁層」、「第2絶縁層」及び「第3絶縁層」の一例にあたる。
【0017】
なお、
図1では絶縁材料層3の積層が完了した工程までのビルドアップ基板5の構成を示した。本実施例では省略したが、実際には、
図1の状態以降の工程についてはビルドアップ法を用いることで、ビルドアップ基板5が完成する。
【0018】
以下の説明では、絶縁材料層1~3が有する面のうち、新たに絶縁材料層が積層される側の面、すなわち、
図1の紙面に向かって上側の面を「上面」という。例えば、絶縁材料層1の絶縁材料層2側の面が絶縁材料層1の上面である。また、絶縁材料層2の絶縁材料層3側の面が絶縁材料層2の上面である。また、上面に対して反対側の面、すなわち、
図1の紙面に向かって下側の面を「下面」という。例えば、絶縁材料層2の絶縁材料層1側の面が絶縁材料層2の下面である。
【0019】
絶縁材料層1の下面側に、導体層401~403が配設される。導体層401~403は、銅を材料とする部材である。
【0020】
絶縁材料層1と絶縁材料層2との間には導体層201及び202が配設される。導体層201及び202は、銅を材料とする部材である。導体層201及び202は、ビルドアップ基板5の積層方向と直交する方向へ延びる板状の部材である。以下の説明では、積層方向に直交する方向を平面方向と言う。導体層201及び202についても、絶縁材料層2側の面、すなわち
図1の紙面に向かって上側の面を「上面」といい、絶縁材料層1側の面、すなわち
図1の紙面に向かって下側の面を「下面」という。
【0021】
図2は、
図1における樹脂ビアが貫通する導体層のII-II断面図である。導体層201は、
図2に示すように、中央に貫通孔210を有する。ここで、
図2では、貫通孔210の形状を円形としたが、貫通孔210の形状はこれに限らず、例えば四角形や三角形でもよい。
【0022】
図3は、
図1における樹脂ビアが貫通する導体層のIII-III断面図である。導体層202は、
図3に示すように、小さい孔である貫通孔220が密集するように配置される。貫通孔220は、例えば、デガスホールである。デガスホールは、ダミーパターン、グランドプレーン及び電源プレーンに設けられるガス抜き用の孔である。ここで、
図2では、貫通孔220の形状を四角形としたが、貫通孔220の形状はこれに限らず、例えば円形や三角形でもよい。また、本実施例では、貫通孔220としてデガスホールを使用したが、これに限らず、例えば、デガスホールが存在しない場所であっても、樹脂ビアのために導体層202に小さい孔である貫通孔220を密集させて開けてもよい。または、メッシュ状に形成されたダミーパターン、グランドプレーン及び電源プレーンの複数の孔を貫通孔220として用いてもよい。
【0023】
絶縁材料層1には、導通ビア301が配設される。導通ビア301は、絶縁材料層1を貫通するビアに導体が充填され、導体層403に接合された部材である。導通ビア301は、絶縁材料層1を挟む導体層同士を導通させる。
【0024】
また、絶縁材料層2には、導通ビア302が配設される。導通ビア302は、絶縁材料層2を貫通するビアに導体が充填され、絶縁材料層2を挟む導体層に接合された部材を指す。導通ビア302は、絶縁材料層2を挟む導体層同士を導通させる。この導通ビア302が、「導通部材」の一例にあたる。
【0025】
また、ビルドアップ基板5は、樹脂ビア101~103を有する。樹脂ビア101~103は、絶縁材料層3の形成時に、絶縁材料層2を貫通して絶縁材料層1に達する穴に絶縁材料が充填されて形成される、絶縁材料層3と一体の部材である。樹脂ビア101~103は、例えば、直径50μm~100μmである。この樹脂ビア101~103が「絶縁部材」の一例にあたり、樹脂ビア101~103を形成する穴が「ビアホール」の一例にあたる。
【0026】
絶縁材料層1~3及び樹脂ビア101~103は、密着性に優れた材料を用いられることが好ましい。例えば、絶縁材料層1~3及び樹脂ビア101~103は、フィラーが多く収縮量が小さい材料を用いられる。また、例えば、絶縁材料層1~3は、電気特性の高い樹脂が用いられる。例えば、絶縁材料層1~3及び樹脂ビア101~103として、エポキシ系の樹脂が用いられる。
【0027】
樹脂ビア101~103は、絶縁材料層1及び2が積層された状態で且つ絶縁材料層3が積層されるのと同時に、絶縁材料層2の上面から絶縁材料層1に向かって積層方向に開けられたビアホールに、絶縁材料を充填することで形成される。本実施例では、樹脂ビア101~103は、絶縁材料層3の一部として形成される。樹脂ビア101~103が絶縁材料層3の一部として形成された状態が、「第3絶縁層と絶縁部材とは一体の部材」の状態である。
【0028】
また、本実施例では、樹脂ビア101~103は、絶縁材料層2内における形状が、導通ビア302と同じ形状を有する。例えば、樹脂ビア101~103及び導通ビア302の絶縁材料層2内の形状は、絶縁材料層2の上面から下面に向かって縮径するテーパー形状である。ただし、樹脂ビア101~103及び導通ビア302の絶縁材料層2内の形状は他の形状でもよく、例えば、平面方向に対して垂直な形でもよい。
【0029】
樹脂ビア101は、絶縁材料層2を貫通し絶縁材料層1の内部に達する。樹脂ビア101は、例えば、絶縁材料層1の3分の1まで達する。また、樹脂ビア101は、導体層201の貫通孔210を介して導体層201を挟むように設けられる。すなわち、樹脂ビア101は、絶縁材料層2側から絶縁材料層1の方向に向けて充填され、貫通孔210を介して導体層201の絶縁材料層1側の面へ回り込み導体層201の下面を覆うように形成される。また、
図2に示すように、樹脂ビア101は、導体層201の貫通孔210及び絶縁材料層1に開けられた穴を埋める。
【0030】
樹脂ビア102は、絶縁材料層2を貫通し絶縁材料層1の内部に達する。樹脂ビア102は、例えば、絶縁材料層1の3分の1まで達する。また、樹脂ビア102は、導体層202の各貫通孔220を介して導体層202を挟むように設けられる。すなわち、樹脂ビア102は、絶縁材料層2側から絶縁材料層1の方向に向けて充填され、各貫通孔220を介して導体層202の絶縁材料層1側の面へ回り込み導体層202の下面を覆うように形成される。また、
図3に示すように、樹脂ビア102は、導体層202の各貫通孔220及び絶縁材料層1に開けられた穴を埋める。
【0031】
樹脂ビア103は、絶縁材料層2を貫通し絶縁材料層1の内部に達する。樹脂ビア103は、例えば、絶縁材料層1の3分の1まで達する。
図4は、
図1における樹脂ビア103のIV-IV断面図である。
図4に示すように、樹脂ビア103は、絶縁材料層2と絶縁材料層1との界面を跨ぎ、且つ、絶縁材料層1に開けられた穴を埋める。
【0032】
樹脂ビア101~103は、絶縁材料層1及び2と接合される。樹脂ビア101~103が絶縁材料層1及び2と接合することで、絶縁材料層3の密着する領域が増え、密着力が向上する。樹脂ビア101~103は、密着力を高めるために、整列して並べられることが好ましい。
【0033】
樹脂ビア101及び102は、それぞれ導体層201及び202を挟むように設けられるため、アンカー効果により導体層201及び202と絶縁材料層3との密着力が向上する。また、樹脂ビア101及び102は絶縁材料層3と一体に形成されるため、前述のアンカー効果により、絶縁材料層2と絶縁材料層3との間の密着力も向上する。
【0034】
ここで、
図1では、絶縁材料層1~3を分かり易くするために各層の間に隙間を空けたが、実際には絶縁材料層1~3はそれぞれが接合され密着する。
【0035】
次に、
図5A~5Iを参照して、実施例に係るビルドアップ基板5の製造方法について説明する。
図5A~5Iは、実施例に係るビルドアップ基板の製造方法を示す図である。
【0036】
図5Aに示すように、絶縁材料層1が配置される。絶縁材料層1は、図では省略しているが、ビルドアップ基板5の製造に用いられる支持体やビルドアップ基板5を構成するコア層もしくは他の絶縁材料層の上に積層される。ここでは、絶縁材料層1の下面側に導体層401~403が配設されている。導体層401~403は、例えば、電解銅めっきにより、ビルドアップ基板5の製造に用いられる支持体やビルドアップ基板5を構成するコア層もしくは他の絶縁材料層(不図示)の上に形成される。また、導体層401~403の表面に、絶縁材料層1との密着性を高めるための粗化処理や密着層を形成するようにしてもよい。
【0037】
次に、
図5Bに示すように、絶縁材料層1の上面から導体層403に向けてレーザーによるアブレーションにより穴を開け、導体層403に達するビア31を形成する。具体的には、レーザー照射により、樹脂である絶縁材料層1が熱で昇華する。この時、金属である導体層403はレーザー照射されても昇華しづらいため、ビア31は導体層401が底になる。
【0038】
次に、ビア31内の樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア処理を行う。デスミア処理としては、例えばウェットデスミア法などを用いることができる。次に、ビア31を含む絶縁材料層1の上面に無電解銅めっきが施され、シード層32が形成される。ここで、シード層32は、無電解銅めっき以外にも、スパッタ法など種々の方法により形成されてもよい。
【0039】
次に、ビア31を含む絶縁材料層1の上面のシード層32上に、DFR(Dry Film Resist)がラミネートされる。次に、露光及び現像が行われ、DFRパターン33が形成される。本実施例では、導体層201が形成される位置に、貫通孔210を形成するためのパターン331が形成される。また、導体層202が形成される位置に、貫通孔220を形成するためのパターン332が形成される。次に、DFRパターン33に対して、電解銅めっきが施される。これにより、導体層201及び202が形成される。この場合、パターン331及び332の場所には電解銅めっきが施されない。また、この電解銅めっきによりビア31にはビアフィルめっきが施され、導体層403に接続された導通ビア301が形成される。これにより、
図5Cに示す状態となる。
【0040】
次に、剥離液を使用してDFRを剥離して除去する。次に、絶縁材料層1の上面に露出するシード層32をエッチングにより除去する。これにより、
図5Dに示す状態となる。ここで、導体層201に貫通孔210が形成される。また、導体層202に貫通孔220が形成される。
【0041】
次に、
図5Eに示すように、絶縁材料層1の上面に絶縁材料層2が積層される。なお、絶縁材料層2を積層する工程の前に、導体層201~202の表面に、絶縁材料層2との密着性を高めるための粗化処理や密着層の形成などをしてもよい。
【0042】
次に、
図5Fに示すように、絶縁材料層2の上面からのレーザーによるアブレーションにより、ビア34~37が形成される。具体的には、レーザー照射により、樹脂である絶縁材料層2は熱で昇華する。
【0043】
ビア34は、導通ビア301の上面に届くように穴が開けられる。金属はレーザーが照射されても昇華しづらいため、ビア34は、導通ビア301の上面が底となる。
【0044】
また、貫通孔210及び220を通してレーザーによりアブレーションされ、絶縁材料層1における導体層201及び202の裏の領域も昇華する。これに対して、金属はレーザーが照射されても昇華しづらいため、導体層201を残してビア36が形成され、導体層202を残してビア35が形成される。
【0045】
ここで、
図6Aを参照して、ビア35のアブレーションについて説明する。
図6Aは、デガスホールを介したレーザーによるアブレーションについて説明するための図である。
【0046】
レーザーは、デガスホールである貫通孔220を通して絶縁材料層1に穴を開ける。絶縁材料層1のアブレーションを始めると、貫通孔220毎に穴が形成される。さらに、レーザーが照射されると、絶縁材料層1における各貫通孔220の下の穴同士が平面方向に繋がり、底部分が凹凸形状であるビア35が形成される。
【0047】
ここで、本実施例では、ビア35として、導体層202の各貫通孔220の絶縁材料層1側の空間を繋げる穴を形成したが、ビア35の形状はこれでなくてもよい。例えば、ビア35の絶縁材料層1側の部分は、
図6Bのように、絶縁材料層1に貫通孔220毎に別個の穴が形成された形状、すなわち、各貫通孔220の下の穴同士が平面方向に繋がらない形状であってもよい。
図6Bは、デガスホールを貫通するビアの他の形状を表す図である。
【0048】
図5Fに戻って説明を続ける。ビア37は、絶縁材料層1の内部に達するように穴が開けられる。ビア34~37の絶縁材料層2における形状は同じ形状となる。ここで、ビア34~37は、同じ工程で同時にレーザー照射が行われ穴があけられるので、ビア34~37の数が増えても、製造工程は増加しない。
【0049】
その後、ビア34~37内の樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア処理を行った後に、ビア34~37を含む絶縁材料層2の上面に無電解銅めっきが施されシード層38が形成される。これにより、
図5Gに示す状態となる。
【0050】
ここで、
図7は、
図5Gにおけるビア35の先端部分の拡大図である。
図7に示すように、導体層202における開口部220の間の各部材の周りもシード層38で覆われる。
【0051】
図5Gに戻って説明を続ける。次に、絶縁材料層2の上面側に形成されたシード層38の上に、DFRがラミネートされる。次に、露光及び現像が行われ、DFRパターン39が形成される。この時、ビア35~37は、開口が塞がれる。次に、DFRパターン39に対して、電解銅めっきが施される。これにより、ビア34にはビアフィルめっきが施され、導通ビア301に接続された導通ビア302が形成される。また、ビア35~37は開口が塞がれているので、ビア35~37には電解銅めっきが施されない。これにより、
図5Hに示す状態となる。
【0052】
次に、剥離液を使用してDFRを剥離して除去する。さらに、エッチングによりビア35~37内及び絶縁材料層2の上面に露出するシード層38、並びに、ビア35及び36内に露出するシード層32及び38を除去する。例えば、
図7に示した導体層202における開口部220の間の各部材の周りのシード層38及び開口部220の間の各部材の下のシード層32が、エッチングにより除去される。これにより、
図5Iに示す状態となる。
【0053】
次に、絶縁材料層2の上面上に絶縁材料層3が積層される。この際、ビア35~37に絶縁材料が充填される。この場合、導体層201の貫通孔210や導体層202の貫通孔220を経由して絶縁材料層1側に絶縁材料が流れ込み、ビア35及び36の絶縁材料層1側の空間にも絶縁材料が充填される。これにより、
図1に示した樹脂ビア101~103及び絶縁材料層3が形成される。すなわち、ビア35及び36内に露出する導体層201及び202の上面及び下面を被覆し、導体層201の貫通孔210及び導体層202の貫通孔220を充填する樹脂ビア101及び102が絶縁材料層3と一体に形成される。
【0054】
なお、本実施例では、絶縁材料層3の積層工程以降については説明を省略したが、以降の工程についてはビルドアップ法を用いて、ビルドアップ基板5を完成させる。
【0055】
さらに、本実施例では、絶縁材料層1~3を積層したが、絶縁材料層3の上にさらに1つ又は複数の絶縁材料層を積層してもよい。その場合、同様に樹脂ビア101~103を設けることが好ましい。
【0056】
ここで、本実施例では、樹脂ビア101~103として絶縁材料層2を貫通し次の絶縁材料層1に達する形状としたが、樹脂ビア101~103は、絶縁材料層2を貫通し、さらに絶縁材料層1及び絶縁材料層1の下層にある複数の絶縁材料層(不図示)を貫通するようにしてもよい。その場合、樹脂ビア101及び102は、導体層201又は202以外の導体層を貫通するように設けてもよい。
【0057】
さらに、本実施例では、導体層201及び202が貫通孔210や220を有する場合で説明したが、樹脂ビア101又は102が貫通する導体層201及び202は、他の形状であってもよい。
【0058】
図8は、外周部の切り欠きと貫通孔を有する導体層の一例の図である。
図8は、
図2及び3と同様に、切り欠き及び貫通孔を有する導体層204を樹脂ビア104が貫通した状態の平面方向の断面を表す。導体層204は、切り欠き241及び貫通孔242を有する。
【0059】
また、
図9は、
図8におけるIX-IX断面図である。
図9に示すように、導体層204を貫通する樹脂ビア104は、貫通孔242及び切り欠き241を介して絶縁材料層1側に回り込み、導体層204を挟むように設けられる。また、樹脂ビア104は、貫通孔242の下の穴と切り欠き241の下の穴とが平面方向に繋がり、底部分が凹凸形状である。このように、外周部の切り欠き241を有する導体層204を用いてもよい。
【0060】
以上に説明したように、本実施例に係る積層基板は、1つの絶縁材料層を貫通し他の絶縁材料層に達する樹脂ビアが設けられる。これにより、密着する面が増えるため密着性が高まりデラミの発生を抑制することができる。また、絶縁材料層と絶縁材料層との界面もしくは、絶縁材料層と導体層との界面を跨ぐように樹脂ビアが設けられるため、各界面を伝搬するデラミの進展を抑制することができる。また、導体層を挟むように樹脂ビアが形成されることで、アンカー効果により導体層と絶縁材料層とのデラミの発生及び伝搬を抑制することができる。また、デラミの伝搬を抑えることで、デラミが導体層と導通ビアとの界面に達することを抑制することができ、電気的な導通を確保して電気的接続信頼性を維持することができる。
【0061】
また樹脂ビアは絶縁材料により形成されているため、樹脂ビアを設ける導体層としてグランドプレーンもしくは電源プレーンを用いる場合であっても、該導体層に不要な電気的接続が発生するおそれはない。したがって、樹脂ビアを設けることによる配線デザイン上の制約はほとんど増えない。
【符号の説明】
【0062】
1~3 絶縁材料層
5 ビルドアップ基板
101~104 樹脂ビア
201,202,204 導体層
210,220,242 貫通孔
241 切り欠き
301,302 導通ビア
401~403 導体層