(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】酸性水中油型乳化液状調味料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/60 20160101AFI20221017BHJP
【FI】
A23L27/60 A
(21)【出願番号】P 2019055533
(22)【出願日】2019-03-22
(62)【分割の表示】P 2016090097の分割
【原出願日】2011-11-29
【審査請求日】2019-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】古川 寛子
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】大島 祥吾
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-197(JP,A)
【文献】特開2000-23634(JP,A)
【文献】特開2008-167723(JP,A)
【文献】特開2008-178381(JP,A)
【文献】GNPD-Sesame Flavoured Dressing,2001,ID# 117021
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種皮付きホール胡麻を1~20%、醤油を1~40%、蛋白質を0.5~5%、果糖を5~30%、脂質を1~75%含有し、かつ酢酸を含有しpH3.0~4.6である胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料の製造方法において、
少なくとも、清水、種皮付きホール胡麻、醤油、蛋白質、及び果糖を混合して、水相を調製する工程と、
前記水相に油脂を添加して、乳化処理を行う工程と
を含む、胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料の製造方法(但し、胡麻を油相中で粉砕した後、他の原料と混合する工程を含むものを除く)。
【請求項2】
前記胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料が種皮付きホール胡麻を2~15%含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料が醤油を3~40%含有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料が蛋白質を2~5%含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料が脂質を10~45%含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料のpHが3.7~4.6である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料の粘度が0.2~800Pa・sである、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料がソルビン酸を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
酢酸とソルビン酸との含有量の比率が、1:0.005~1:1である、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管後においても胡麻特有の芳香を十分に感じることができる酸性水中油型乳化液状調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズ、マヨネーズ類又は乳化ドレッシング等の酸性水中油型乳化液状調味料は、様々な風味と酸味によるすっきりとした後味が付与された調味料である。その使用用途は様々で、トマト、レタス、キャベツ、コーン等の生野菜サラダ用、リンゴ、キウイ、オレンジ等のフルーツサラダ用、火鍋等の鍋料理のつけだれ用、茹でたポテト等の温野菜用、豆腐料理や肉料理のたれ用等、あらゆる料理に用いることができる万能調味料である。そして、様々な種類の酸性水中油型乳化液状調味料のうち、すっきりとした酸味の酢酸を用い、胡麻特有の芳香を特徴とした酸性水中油型乳化液状調味料が大変人気を博している。
【0003】
しかしながら、酢酸を用いた胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料は、作り立ては大変美味しいものの、保管後において、胡麻特有の芳香が経時的に消失し易い問題があった。製造した加工食品を世界中に流通させる必要がある現在において、例えば、中国のような大国や更にはその近隣諸国で流通させようとした場合、数カ月以上の長期に渡り保管されたり、熱帯や寒冷地等の温度が一定でない条件で保管されるため、胡麻特有の芳香が劣化し易く、消費者の手元に届く時までその芳香を十分に保持することができなかった。
【0004】
胡麻特有の芳香を保持する技術は、例えば、特開2007-14252号公報(特許文献1)に、胡麻香料の芳香を保持する技術として、特定材質の皮膜で形成したカプセルに胡麻芳香を封入した酸性調味料用の胡麻香料が提案されている。しかしながら、当該技術は、製造方法が煩雑で費用がかさむため、消費者の要望を十分に満足できるものとはいい難かった。
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、保管後においても胡麻特有の芳香を十分に保持できる、酢酸を用いた胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ピラジン類や含硫化合物に代表される胡麻特有の芳香成分は、非常に化学変化を受け易く、特に酢酸を含有した胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料において、胡麻特有の芳香を保持することは難しい。
【0008】
また、胡麻は、植物学上では胚乳種子に分類され、種子の表面を外側から種皮、胚乳層の順番に覆い、更に胚乳層の内部に、芳香成分を多く含む油滴群からなる子葉が詰まっている。従って、胡麻は、芳香成分を多く含む油滴群からなる子葉部分が外気に触れることで、初めて胡麻特有の芳香を官能的に感じられるようになるメカニズムになっている。
【0009】
前記メカニズムは、歴史的に世界中の胡麻を含有した液状調味料に応用されており、例えば、中国料理の練り胡麻(いり胡麻をペースト状になるまですり潰したもの)や芝麻醤(練り胡麻に胡麻油等の食用油脂や調味料を加え、滑らかに伸ばしたもの)、エジプト料理のタヒーナ(練り胡麻にニンニク、香辛料、酢等を混ぜたもの)等は、胡麻をすり潰すことで、子葉部分に詰まっている胡麻特有の芳香成分が外気に触れる表面積を大きくして、揮発し官能的に感じられる芳香成分の量を数百倍に増加させている。また、アジア、アフリカ、中南米を中心に世界中で広く利用されている胡麻油は、胡麻の子葉部分から油滴群のみを抽出したものであり、前述の例と同様に、胡麻特有の芳香成分が外気に触れる表面積を大きくして、揮発する芳香成分の量を増加させている。
【0010】
すなわち、従来、胡麻特有の芳香を有する液状調味料を調製するためには、子葉部分を覆っている種皮及び胚乳層に切れ込みを入れ、子葉部分に詰まっている胡麻特有の芳香成分を外気に触れさせる方法がもっとも効果的な方法と考えられてきた。しかしながら、芳香成分が揮発してしまった後の胡麻の芳香が薄くなるのは当然であり、更に、酢酸を含有した酸性水中油型乳化液状調味料中で、数カ月以上の長期間や、温度や湿度が一定でない条件下で、胡麻の芳香を保持することは非常に困難であった。
【0011】
そこで、本発明者が、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酢酸を用いた胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料において、胡麻種子を種皮の付いたホール状で含有し、かつ、醤油等の蛋白質、ぶどう糖、果糖、蔗糖等の糖、脂質、粘度を特定の条件に調整することで、意外にも胡麻特有の芳香保持に非常に有効であることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
酢酸を含有しpH3.0~4.6である胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料において、種皮付きホール胡麻を1~20%、醤油を1~40%、蛋白質を0.5~5%、果糖を2~35%、脂質を1~75%含有する胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料。
【0013】
また、本発明によれば、以下の発明も提供される。
種皮付きホール胡麻を1~20%、醤油を1~40%、蛋白質を0.5~5%、果糖を5~30%、脂質を1~75%含有し、かつ酢酸を含有しpH3.0~4.6である胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料の製造方法において、
少なくとも、清水、種皮付きホール胡麻、醤油、蛋白質、及び果糖を混合して、水相を調製する工程と、
前記水相に油脂を添加して、乳化処理を行う工程と
を含む、胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料の製造方法(但し、胡麻を油相中で粉砕した後、他の原料と混合する工程を含むものを除く)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保管後においても胡麻特有の芳香を十分に保持した胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を提供できる。したがって、例えば、中国などの大国や更には東アジアの隅々まで、芳香成分に優れた胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を流通させることができ、近年の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料に対する需要の増加に応え、更なる需要の拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0016】
本発明は、酢酸を含有しpH3.0~4.6である胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料において、種皮付きホール胡麻を1~20%、醤油を1~40%、蛋白質を0.5~5%、果糖を2~35%、脂質を1~75%含有することを特徴とする胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料である。
【0017】
本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料とは、胡麻及び酢酸を含有しpHが3.0~4.6の水相中に食用油脂が油滴として略均一に分散して水中油型の乳化状態となっている液状調味料である。
【0018】
本発明に用いる種皮付きホール胡麻は、石臼、コロイドミル、フードカッター、マイルダー、ロール粉砕器等によって切断処理を施さず、ホール状とする。種皮は、アルカリ処理等を施して剥くことはせず、少なくとも一部を有している状態とする。
【0019】
本発明に用いる種皮付きホール胡麻は、少なくとも種皮の一部を有したホール胡麻であり、胚乳層の30%以上が種皮に覆われていることが好ましく、50%以上がより好ましい。また、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料は、種皮付きホール胡麻と胡麻切断物とを合わせて含有することで、保管後における胡麻特有の芳香保持効果に優れ好ましい。
【0020】
胡麻が種皮付きのホール状である場合、芳香成分を多く含む油滴群からなる子葉部分が外気に触れることが無いため、胡麻特有の芳香がほとんど感じられない。しかしながら、種皮付きホール胡麻を特定の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料に含有し、長期間保管した場合は、胡麻特有の芳香が感じられ十分に保持できる。この現象のメカニズムは定かではないが、酢酸を含有しpH3~4.6の酸性条件において、種皮付きホール胡麻、醤油等の蛋白質、ぶどう糖、果糖、蔗糖等の糖による、アミノカルボニル反応やメイラード反応等の各原料の相互作用が進行し、保管中に経時的に薄らいでしまう胡麻の芳香成分を増強する効果が得られるものと考えられる。
【0021】
本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料は、種皮付きホール胡麻を1~20%含有する。2~15%が好ましく、2~8%がより好ましい。前記範囲より少ないと、保管条件によって保管後における胡麻特有の芳香を十分に保持できない場合がある。前記範囲より多いと、胡麻のエグ味等が強くなり過ぎ、酸性液状調味料本来の酸味によるすっきりとした後味が損なわれてしまう場合がある。
【0022】
原料とする胡麻の種類は、特に限定されないが、白胡麻、金胡麻、黒胡麻、茶胡麻等が挙げられる。これらの中でも、白胡麻又は金胡麻を種皮付きのホールの状態で用いると、保管後における胡麻特有の芳香を十分に保持した胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料が得られやすく好ましい。
【0023】
本発明に用いる醤油は、特に限定されないが、濃口醤油、淡口醤油、薄口醤油、たまり醤油、再仕込み醤油、白醤油、生醤油等の発酵によって調製された醸造醤油、酸、アルカリ、又は酵素等を用いて蛋白質を加水分解しアミノ酸を生成させた化学醤油、又は、発酵と酸、アルカリ等の添加とを組合せた醤油が挙げられる。
【0024】
本発明に用いる醤油の含有量は、1~40%であり、3~40%が好ましく、5~30%がより好ましい。醤油の含有量が前記範囲より少ないと、保管後における胡麻特有の芳香を十分に保持できない場合がある。前記範囲より多いと、醤油の芳香が強くなり胡麻の芳香を損ねてしまう場合がある。
【0025】
本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料は、胡麻及び醤油等の蛋白質原料を含有しており、胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料に対して蛋白質を0.5~5%含有する。蛋白質を含有する原料は、胡麻及び醤油以外に、例えば、卵黄等があり、その合計量が0.5~5%となっている。蛋白質の含有量は、保管中に胡麻の芳香成分を増強する効果が得られることから、2~5%が好ましい。
【0026】
蛋白質の測定方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号)に開示されている、一般にケルダール法と呼ばれる窒素の定量方法に基づいて簡便に行うことができる。本発明における蛋白質とは、高分子化合物に加え、アミノ酸、ペプチド等を含む。
【0027】
本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料は、果糖を2~35%含有する。前記糖の含有量は、5~35%が好ましく、5~30%がより好ましい。前記糖の含有量を前記範囲とすることで、蛋白質と糖質によるメイラード反応等の各原料の相互作用により、保管中に経時的に薄らいでしまう胡麻の芳香成分を増強する効果が得られる。前記糖の合計含有量が前記範囲より多いと、糖の甘味が強くなり過ぎ、胡麻の芳香を損ねてしまう場合がある。
【0028】
果糖の測定方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号)に開示されている、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)に基づいて行う。
【0029】
本発明に用いる脂質は、特に限定されないが、具体的には、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を用いることができる。好ましくは、菜種油、大豆油又はパーム油を含有し、より好ましくはパーム油を含有する。
【0030】
脂質の測定方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号)に開示されている、エーテル抽出法に基づいて行う。
【0031】
本発明に用いる脂質の含有量は、1~75%であり、10~45%が好ましい。脂質の含有量が前記範囲より少ないと、保管後における胡麻特有の芳香を十分に保持できない場合がある。前記範囲より多いと、脂質の風味が強くなり胡麻の芳香を損ねてしまう場合がある。
【0032】
本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料のpHは、酸味の付与と、保管後における胡麻特有の芳香の保持とを両立できることから、pH3.0~4.6であり、3.7~4.6が好ましい。
【0033】
粘度は、胡麻の芳香成分の揮発のし易さと、保管後における胡麻特有の芳香の保持との両立に関連する。本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料の粘度は、0.2~800Pa・sが好ましく、0.2~10Pa・sがより好ましい。粘度が前記範囲であることにより、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料は、保管後においても胡麻特有の芳香を十分に感じることができるものとなる。これに対して、粘度が前記範囲より高い場合、保管後における胡麻特有の芳香が弱く好ましくない。一方、粘度が前記範囲よりも低い場合、脂質を乳化液状調味料中に安定して分散させ難いため分離が生じ易く、胡麻特有の芳香が弱くなる。粘度の調整は、脂質含有量にもよるが、増粘多糖類等の含有量により調整することができる。なお、本発明における前記粘度は、BH形粘度計と品温20℃のサンプルを用いて測定を開始し、ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0034】
本発明で用いる増粘多糖類は、特に限定されないが、具体的には、例えば、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、サイリュームシードガム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料は、好ましくは、酢酸及びソルビン酸を含有する。酢酸及びソルビン酸を1:0.005~1:1で含有することで胡麻の芳香を保持する効果に優れ好ましく、1:0.01~1:0.5がより好ましい。
【0036】
本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料に用いるソルビン酸の含有量は、前記酢酸との相互作用が得られる量であれば特に限定されないが、0.01~1%が好ましい。
【0037】
酢酸及びソルビン酸の測定方法は、「栄養表示のための成分分析のポイント」(財団法人日本食品分析センター編、2007年10月20日発行)に開示されている、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)による有機酸分子の測定方法に基づいて行う。具体的には、例えば、水溶液中でソルビン酸又はソルビン酸塩の状態で存在しているソルビン酸分子を、過塩素酸で抽出し、有機酸類の紫外部吸収を利用して高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)で分別定量する。
【0038】
なお、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料には、上述した酢酸、種皮付きホール胡麻、醤油、果糖、脂質、増粘多糖類以外に、本発明の効果を損なわない範囲で酸性乳化液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、燐酸、塩酸、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等の酸材、切り胡麻やすり胡麻等の破砕した胡麻、澱粉分解物、デキストリンアルコール、オリゴ糖、オリゴ糖アルコール等の糖類、グルタミン酸ナトリウム、食塩、動植物のエキス類等の各種調味料、からし粉、胡椒等の香辛料、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化材、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0039】
次に、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0040】
[実施例1]
撹拌羽付きのタンクの中に、清水26%、酢酸1.2%、種皮付きホール胡麻2%、醤油30%、ぶどう糖5%、果糖25%、グルタミン酸ナトリウム0.5%、キサンタンガム0.1%及び生卵黄0.2%を投入して均一に混合することにより水相を調製した。次に、撹拌をしながら大豆油10%を注加して乳化処理を行い、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を調製した。得られた本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を、蓋付きPET容器に充填密封し、室温35℃で1ヵ月間保管した後に官能評価を行った。その結果、保管後における胡麻特有の芳香を保持しており好ましかった。なお、得られた胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料のpHは3.7、粘度は0.5Pa・s、蛋白質は3%、脂質は10%であった。
【0041】
[比較例1]
種皮付きホール胡麻2%を胡麻切断物(切り胡麻)2%に置換えた以外は、実施例1に準じて、胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を調製した。実施例1と同様の方法で官能評価を行った結果、保管後における胡麻特有の芳香に劣っていた。
【0042】
[比較例2]
種皮付きホール胡麻2%を胡麻切断物(切り胡麻)1.7%及び種皮付きホール胡麻0.3%に置換えた以外は、実施例1に準じて、胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を調製した。実施例1と同様の方法で官能評価を行った結果、保管後における胡麻特有の芳香に劣っていた。
【0043】
[比較例3]
大豆油10%を清水10%に置換えた以外は、実施例1に準じて、胡麻含有酸性液状調味料を調製した。実施例1と同様の方法で官能評価を行った結果、保管後における胡麻特有の芳香に劣っていた。
【0044】
[実施例2]
酢酸1.2%を酢酸1.19%及びソルビン酸0.01%に置換えた以外は、実施例1の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料に準じて、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を調製した。実施例1と同様の方法で官能評価を行った結果、実施例1の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料と比べ、更に保管後における胡麻特有の芳香に優れており好ましかった。
【0045】
[実施例3]
酢酸0.4%を酢酸0.3%及びソルビン酸0.1%に置換えた以外は、実施例1の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料に準じて、本発明の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料を調製した。実施例2と同様の方法で官能評価を行った結果、実施例1の胡麻含有酸性水中油型乳化液状調味料と比べ、更に保管後における胡麻特有の芳香に優れており好ましかった。