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特許7159139記録再生装置、記録再生方法、及び磁気テープカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】記録再生装置、記録再生方法、及び磁気テープカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G11B 20/10 20060101AFI20221017BHJP
   G11B 23/00 20060101ALI20221017BHJP
   G11B 23/107 20060101ALI20221017BHJP
   G11B 5/09 20060101ALI20221017BHJP
   G11B 23/30 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G11B20/10 301Z
G11B23/00 E
G11B23/107
G11B5/09 301Z
G11B23/30 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019175123
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021051821
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 穂高
(72)【発明者】
【氏名】赤野 洋一
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-216457(JP,A)
【文献】特開2004-127488(JP,A)
【文献】米国特許第10170152(US,B1)
【文献】特開平07-244979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0317310(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/09
20/10-20/16
23/00-23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープ及び非接触で情報の記録と読み取りが可能な前記磁気テープ以外の記録媒体を備える磁気テープカートリッジであって、前記磁気テープカートリッジの生産工程で取得された前記磁気テープに関する情報である生産時情報が前記記録媒体に記録された前記磁気テープカートリッジの前記記録媒体から前記生産時情報を読み取る読取部と、
前記磁気テープカートリッジの初期化処理として、前記生産時情報を前記磁気テープに記録し、かつ前記記録媒体の前記生産時情報を無効化する制御を行う制御部と、
を備えた記録再生装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記生産時情報を無効化する制御として、前記記録媒体から前記生産時情報を削除する制御を行う
請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
前記記録媒体には、前記生産時情報が記録されているか否かを表す保持情報が更に記録されており、
前記制御部は、前記保持情報が前記記録媒体に前記生産時情報が記録されていることを表す場合に、前記制御を行う
請求項1又は請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
前記記録媒体には、前記生産時情報の種別情報及び識別情報の少なくとも一方が更に記録されており、
前記制御部は、前記種別情報及び識別情報の少なくとも一方と、前記生産時情報とを対応付けて前記磁気テープに記録する制御を行う
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の記録再生装置。
【請求項5】
前記生産時情報は、前記磁気テープに対するデータの記録又は再生の制御に用いられる情報である
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の記録再生装置。
【請求項6】
磁気テープ及び非接触で情報の記録と読み取りが可能な前記磁気テープ以外の記録媒体を備える磁気テープカートリッジであって、前記磁気テープカートリッジの生産工程で取得された前記磁気テープに関する情報である生産時情報が前記記録媒体に記録された前記磁気テープカートリッジの前記記録媒体から前記生産時情報を読み取り、
前記磁気テープカートリッジの初期化処理として、前記生産時情報を前記磁気テープに記録し、かつ前記記録媒体の前記生産時情報を無効化する制御を行う
処理を記録再生装置が実行する記録再生方法。
【請求項7】
磁気テープ及び非接触で情報の記録と読み取りが可能な前記磁気テープ以外の記録媒体を備える磁気テープカートリッジであって、
前記磁気テープカートリッジの生産工程で取得された前記磁気テープに関する情報であって、前記磁気テープカートリッジの初期化処理によって無効化される生産時情報が前記記録媒体に記録された
磁気テープカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記録再生装置、記録再生方法、及び磁気テープカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気テープカートリッジの効率的な運用及び磁気テープに対する磁気ヘッドのトラッキング精度の向上等のために、磁気テープカートリッジが備える磁気テープ以外の記録媒体に、磁気テープカートリッジに関する情報を記録する技術が知られている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、磁気テープと、IC(Integrated Circuit)タグとを備えた磁気テープカートリッジが開示されている。特許文献1では、磁気テープカートリッジが備えるICタグに、磁気テープカートリッジのラベル名等の管理情報が記録される。
【0004】
また、特許文献2では、磁気テープカートリッジが備えるICタグに、磁気テープに記録されるサーボ信号の直線性に関する情報が記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-130216号公報
【文献】特開2019-46521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、磁気テープカートリッジが備える磁気テープ以外の記録媒体(以下、「第2の記録媒体」という)は、記憶容量が4KB(KiloByte)~16KB程度であり、磁気テープに比較して記憶容量が非常に小さい。また、第2の記録媒体には、磁気テープへのデータの記録又は再生に伴って、使用履歴に関する情報及び故障履歴に関する情報等が記録される。
【0007】
これらの情報に加えて、特許文献1及び特許文献2に記載されているような磁気テープカートリッジに関する情報を第2の記録媒体に更に記録すると、第2の記録媒体の記憶容量が増大してしまう。この場合、第2の記録媒体として、記憶容量がより大きい記録媒体を用いることとなり、コストアップにつながってしまう。
【0008】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、磁気テープカートリッジが備える磁気テープ以外の記録媒体の記憶容量の増大を抑制することができる記録再生装置、記録再生方法、及び磁気テープカートリッジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の記録再生装置は、磁気テープ及び磁気テープ以外の記録媒体を備える磁気テープカートリッジであって、磁気テープカートリッジの生産工程で取得された磁気テープに関する情報である生産時情報が記録媒体に記録された磁気テープカートリッジの記録媒体から生産時情報を読み取る読取部と、磁気テープカートリッジの初期化処理として、生産時情報を磁気テープに記録し、かつ記録媒体の生産時情報を無効化する制御を行う制御部と、を備える。
【0010】
なお、本開示の記録再生装置は、制御部が、生産時情報を無効化する制御として、記録媒体から生産時情報を削除する制御を行ってもよい。
【0011】
また、本開示の記録再生装置は、記録媒体に、生産時情報が記録されているか否かを表す保持情報が更に記録されており、制御部が、保持情報が記録媒体に生産時情報が記録されていることを表す場合に、上記制御を行ってもよい。
【0012】
また、本開示の記録再生装置は、記録媒体に、生産時情報の種別情報及び識別情報の少なくとも一方が更に記録されており、制御部が、種別情報及び識別情報の少なくとも一方と、生産時情報とを対応付けて磁気テープに記録する制御を行ってもよい。
【0013】
また、本開示の記録再生装置は、生産時情報が、磁気テープに対するデータの記録又は再生の制御に用いられる情報であってもよい。
【0014】
また、本開示の記録再生方法は、磁気テープ及び磁気テープ以外の記録媒体を備える磁気テープカートリッジであって、磁気テープカートリッジの生産工程で取得された磁気テープに関する情報である生産時情報が記録媒体に記録された磁気テープカートリッジの記録媒体から生産時情報を読み取り、磁気テープカートリッジの初期化処理として、生産時情報を磁気テープに記録し、かつ記録媒体の生産時情報を無効化する制御を行う処理を記録再生装置が実行するものである。
【0015】
また、本開示の磁気テープカートリッジは、磁気テープ及び磁気テープ以外の記録媒体を備える磁気テープカートリッジであって、磁気テープカートリッジの生産工程で取得された前記磁気テープに関する情報であって、磁気テープカートリッジの初期化処理によって無効化される生産時情報が記録媒体に記録されたものである。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、磁気テープカートリッジが備える磁気テープ以外の記録媒体の記憶容量の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】磁気テープカートリッジの構成の一例を示すブロック図である。
図2】磁気テープの一例を示す平面図である。
図3】磁気ヘッドの位置決め処理を説明するための平面図である。
図4】記録再生素子によりデータを記録又は再生する処理を説明するための図である。
図5A】サーボライタの構成の一例を示す図である。
図5B】サーボライタの構成の一例を示す図である。
図6】測定装置及び記録装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7】サーボパターンの線状パターン間の距離を説明するための図である。
図8】生産時情報の一例を示す図である。
図9】磁気テープカートリッジの生産工程における記録媒体の記録内容の一例を示す図である。
図10】サーボ記録処理の一例を示すフローチャートである。
図11】記録再生システムの構成の一例を示すブロック図である。
図12】初期化処理の一部の処理の一例を示すフローチャートである。
図13】初期化処理後の記録媒体及び磁気テープの記録内容の一例を示す図である。
図14】データ記録処理の一例を示すフローチャートである。
図15】理想的なサーボパターンと実際のサーボパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0019】
まず、実施形態の詳細を説明する前に、以下の実施形態で用いられるサーボパターンについて説明する。
【0020】
磁気テープの製造のための各種工程については、特開2010-231843号公報の段落0067~0070を参照できる。磁気テープには、磁気テープ装置における磁気ヘッドのトラッキング制御、及び磁気テープの走行速度の制御等を可能とするために、公知の方法によってサーボパターンを形成することもできる。「サーボパターンの形成」は、「サーボ信号の記録」ということもできる。サーボ信号は、通常、磁気テープの長手方向に沿って記録される。サーボ信号を利用する制御の方式としては、タイミングベースサーボ、アンプリチュードサーボ、及び周波数サーボ等が挙げられる。以下、サーボ信号の記録について更に説明する。
【0021】
ECMA(European Computer Manufacturers Association)―319に示される通り、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープ(一般に「LTOテープ」と呼ばれる。)では、タイミングベースサーボ方式が採用されている。このタイミングベースサーボ方式において、サーボ信号は、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(「サーボストライプ」とも呼ばれる。)が、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置されることによって構成されている。このように、サーボ信号が互いに非平行な一対の磁気ストライプにより構成される理由は、サーボ信号上を通過するサーボ再生素子に、その通過位置を教えるためである。具体的には、上記の一対の磁気ストライプは、その間隔が磁気テープの幅方向に沿って連続的に変化するように形成されており、サーボ再生素子がその間隔を読み取ることによって、サーボ信号とサーボ再生素子との相対位置を知ることができる。この相対位置の情報が、データトラックのトラッキングを可能にする。そのために、サーボ信号上には、通常、磁気テープの幅方向に沿って、複数のサーボトラックが設定されている。
【0022】
サーボバンドは、磁気テープの長手方向に連続するサーボ信号により構成される。このサーボバンドは、通常、磁気テープに複数本設けられる。隣り合う2本のサーボバンドに挟まれた領域は、データバンドと呼ばれる。データバンドは、複数のデータトラックを含んで構成されており、各データトラックは、各サーボトラックに対応している。
【0023】
また、一態様では、特開2004-318983号公報に示されているように、各サーボバンドには、サーボバンドの番号を示す情報(「サーボバンドID(IDentification)」とも呼ばれる。)が埋め込まれている。このサーボバンドIDは、サーボバンド中に複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のものを、その位置が磁気テープの長手方向に相対的に変位するように、ずらすことによって記録されている。具体的には、複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のもののずらし方を、サーボバンド毎に変えている。これにより、記録されたサーボバンドIDはサーボバンド毎にユニークなものとなるため、一つのサーボバンドをサーボ再生素子により読み取るだけで、そのサーボバンドを一意に特定することができる。
【0024】
なお、サーボバンドを特定する方法には、ECMA―319に示されているような隣接するサーボバンド間の長手方向のずれを用いたものもある。この方式では、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置された、互いに非平行な一対の磁気ストライプの群全体を、サーボバンド毎に磁気テープの長手方向にずらすように記録する。隣接するサーボバンド間における、このずらし方の組み合わせを、磁気テープ全体においてユニークなものとすれば、2つのサーボ再生素子により隣接するサーボ信号を同時に読み取る際に、サーボバンドを一意に特定することも可能となる。
【0025】
また、各サーボバンドには、ECMA―319に示されている通り、通常、磁気テープの長手方向の位置を示す情報(「LPOS情報」とも呼ばれる。)も埋め込まれている。このLPOS情報も、サーボバンドIDと同様に、一対のサーボストライプの位置を、磁気テープの長手方向にずらすことによって記録されている。ただし、サーボバンドIDとは異なり、このLPOS情報では、各サーボバンドに同じ信号が記録されている。
【0026】
上記のサーボバンドID及びLPOS情報とは異なる他の情報を、サーボバンドに埋め込むことも可能である。この場合、埋め込まれる情報は、サーボバンドIDのようにサーボバンド毎に異なるものであってもよいし、LPOS情報のようにすべてのサーボバンドに共通のものであってもよい。また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
【0027】
サーボ信号記録用のヘッドは、サーボライトヘッドとも呼ばれる。サーボライトヘッドは、上記一対の磁気ストライプに対応した一対のギャップを、サーボバンドの数だけ有する。通常、各一対のギャップには、それぞれコアとコイルが接続されており、コイルに電流パルスを供給することによって、コアに発生した磁界が、一対のギャップに漏れ磁界を生じさせることができる。サーボ信号の記録の際には、サーボライトヘッド上に磁気テープを走行させながら電流パルスを入力することによって、一対のギャップに対応した磁気パターンを磁気テープに転写させて、サーボ信号を記録することができる。各ギャップの幅は、記録するサーボ信号の密度に応じて適宜設定することができる。各ギャップの幅は、例えば、1μm以下、1~10μm、10μm以上等に設定可能である。
【0028】
磁気テープにサーボ信号を記録する前には、磁気テープに対して、通常、消磁(イレース)処理が施される。このイレース処理は、直流磁石又は交流磁石を用いて、磁気テープに一様な磁界を加えることによって行うことができる。イレース処理には、DC(Direct Current)イレースとAC(Alternating Current)イレースとがある。ACイレースは、磁気テープに印加する磁界の方向を反転させながら、その磁界の強度を徐々に下げることによって行われる。一方、DCイレースは、磁気テープに一方向の磁界を加えることによって行われる。DCイレースには、更に2つの方法がある。第一の方法は、磁気テープの長手方向に沿って一方向の磁界を加える、水平DCイレースである。第二の方法は、磁気テープの厚み方向に沿って一方向の磁界を加える、垂直DCイレースである。また、イレース処理は、斜め方向に行うことも可能である。イレース処理は、磁気テープ全体に対して行ってもよいし、磁気テープのサーボバンドの存在する領域だけに対して行ってもよい。
【0029】
記録されるサーボ信号の磁界の向きは、イレースの向きに応じて決まる。例えば、磁気テープに水平DCイレースが施されている場合、サーボ信号の記録は、磁界の向きがイレースの向きと反対になるように行われる。これにより、サーボ信号を読み取った際の出力を、大きくすることができる。なお、特開2012-53940号公報に示されている通り、垂直DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いたパターンの転写を行った場合、記録されたサーボ信号の読み取り信号は、単極パルス形状となる。一方、水平DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いたパターンの転写を行った場合、記録されたサーボ信号の読み取り信号は、双極パルス形状となる。
【0030】
データの記録及びデータの再生の少なくとも一方を行う磁気ヘッドとは別のヘッドとして、サーボ再生素子を備えた磁気ヘッドが上記磁気テープ装置に含まれていてもよい。例えば、磁気ヘッドは、サーボ再生素子を2つ含むことができ、2つのサーボ再生素子のそれぞれが、隣り合う2つのサーボバンドを同時に読み取ることができる。2つのサーボ再生素子の間に、1つ又は複数のデータ用素子を配置することができる。
【0031】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る磁気テープカートリッジ10の構成を説明する。図1に示すように、磁気テープカートリッジ10は、磁気によって情報が記録される磁気テープMTと、無線通信等によって非接触で情報の記録及び読み取りが可能な磁気テープMT以外の記録媒体の一例としての記録媒体12とを備えている。本実施形態では、記録媒体12として、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグを用いた例を説明する。記録媒体12には、生産時情報14、保持フラグ16、及び特定情報18等が記録される。生産時情報14が、磁気テープカートリッジ10の生産工程で取得された磁気テープMTに関する情報である生産時情報の一例である。保持フラグ16が、生産時情報が記録されているか否かを表す保持情報の一例である。また、生産時情報14は、磁気テープに対するデータの記録又は再生の制御に用いられる。生産時情報14、保持フラグ16、及び特定情報18の詳細については後述する。なお、磁気テープMTの例としては、LTOテープが挙げられる。
【0032】
図2に示すように、磁気テープMTには、5本のサーボバンドSBが磁気テープMTの長手方向に沿って形成されている。また、5本のサーボバンドSBは、磁気テープMTの幅方向(短手方向)に等間隔に並ぶように形成されている。そして、5本のサーボバンドSBの間のそれぞれには、データが記録されるデータバンドDBが形成されている。換言すると、サーボバンドSBと、データバンドDBとが磁気テープMTの幅方向に沿って交互に配列されている。なお、サーボバンドSB及びデータバンドDBの本数は、図2に示す例に限定されない。例えば、サーボバンドSBが3本で、データバンドDBが2本であってもよい。以下では、磁気テープMTの長手方向を「テープ長手方向」といい、磁気テープMTの幅方向を「テープ幅方向」という。
【0033】
サーボバンドSBには、磁気ヘッドH(図3参照)のテープ幅方向の位置決めを行うためのサーボパターンSPが、テープ長手方向に沿って繰り返し形成される。サーボパターンSPは、テープ幅方向に沿ってテープ幅方向に対して所定の角度だけ傾いて形成される線状パターンSP1と、線状パターンSP2とを含む。線状パターンSP2は、線状パターンSP1に対して非平行に形成される。本実施形態では、線状パターンSP2は、テープ幅方向に沿った直線に対して、線状パターンSP1と線対称になるように形成される。なお、図2では、サーボパターンSPが1組の線状パターンSP1及び線状パターンSP2を含む例を図示しているが、サーボパターンSPが複数組の線状パターンSP1及び線状パターンSP2を含んでもよい。
【0034】
次に、図3及び図4を参照して、前述したサーボパターンSPが形成された磁気テープMTのテープ幅方向に対する磁気ヘッドHの位置決め処理を説明する。
【0035】
図3に示すように、磁気ヘッドHは、サーボバンドSBに記録されたサーボパターンSPを再生するサーボ再生素子SRDと、データトラックDTに対するデータの記録又は再生を行う記録再生素子RWDとを含む。記録再生素子RWDは、データを再生するデータ再生素子DRとデータを記録するデータ記録素子DWとを含む。本実施形態では、記録再生素子RWDは、データ記録素子DWのテープ長手方向の両側に、それぞれデータ再生素子DRを備えている。これは、磁気テープMTを磁気テープカートリッジ10から引き出すときと巻き戻すときの両方において、データ記録素子DWに対して磁気テープMTの走行方向の後方に配置されたデータ再生素子DRが、データを記録した後のベリファイも行うためである。なお、ここでいう再生とは、磁気テープMTに記録されたサーボパターンSP又はデータ等を表す信号を読み取ることを意味する。また、以下では、単に、磁気ヘッドHの位置、サーボ再生素子SRDの位置、及び記録再生素子RWDの位置と表記した場合は、それぞれテープ幅方向に沿った位置を意味するものとする。
【0036】
本実施形態に係る磁気ヘッドHは、テープ幅方向に隣り合うサーボバンドSBに記録されたサーボパターンSPを各々読み取る2つのサーボ再生素子SRDを備える。また、記録再生素子RWDは、2つのサーボ再生素子SRDの間に、テープ幅方向に沿って配列される。
【0037】
本実施形態では、磁気テープMTが予め定められた走行方向(例えば、図3における右から左の方向)に走行した際に、磁気ヘッドHのサーボ再生素子SRDがサーボバンドSBのテープ幅方向の所定の位置に位置決めされることによって磁気ヘッドHが磁気テープMTに対して位置決めされる。なお、以下では、単に走行方向と表記した場合は、磁気テープMTの走行方向を意味するものとする。
【0038】
サーボ再生素子SRDは、線状パターンSP1及び線状パターンSP2がサーボ再生素子SRDによる検出位置を通過する際に、線状パターンSP1及び線状パターンSP2を検出する。この際の線状パターンSP1及び線状パターンSP2の検出間隔が所定値となる位置に磁気ヘッドHが位置決めされる。これにより、磁気ヘッドHの記録再生素子RWDが所定のデータトラックDTに追従する。この磁気ヘッドHの位置決めには、例えば、2つのサーボ再生素子SRDによる上記検出間隔の平均値が用いられる。
【0039】
また、図4に示すように、記録再生素子RWDは、2つのサーボ再生素子SRDの間にテープ幅方向に沿って複数配列され、複数のデータトラックDTに対して同時にデータを記録又は再生することが可能とされている。また、図4に示すように、各記録再生素子RWDによってデータが記録される複数のデータトラックDTが含まれる複数のデータトラック群が、1つのデータバンドDBに含まれる。
【0040】
次に、図5A及び図5Bを参照して、本実施形態に係る磁気テープMTの各サーボバンドSBにサーボパターンSPを記録するサーボライタSWの構成を説明する。
【0041】
図5Aに示すように、サーボライタSWは、送出リールSW1、巻取リールSW2、駆動装置SW3、パルス発生回路SW4、制御装置SW5、及びサーボ信号書込ヘッドWHを備えている。また、サーボライタSWは、図示しない、電源装置、磁気テープMTをクリーニングするクリーニング装置、及び磁気テープMTに記録されたサーボパターンSPの検査を行うベリファイ装置等も備えている。
【0042】
送出リールSW1は、サーボパターンSPの書き込み前に幅広のウェブ原反から製品幅に裁断された磁気テープMTが大径巻のパンケーキによりセットされており、サーボパターンSPの書き込み時に磁気テープMTを送り出す。送出リールSW1から送り出された磁気テープMTは、ガイドSW6等に案内されてサーボ信号書込ヘッドWHに搬送される。そして、サーボ信号書込ヘッドWHにより各サーボバンドSBにサーボパターンSPが記録された磁気テープMTは、ガイドSW6等に案内されて巻取リールSW2まで搬送される。巻取リールSW2は、駆動装置SW3によって回転駆動され、サーボパターンSPが記録された磁気テープMTを巻き取る。
【0043】
駆動装置SW3は、巻取リールSW2を回転駆動するための装置であり、図示しないモータ、モータに電流を供給するためのモータ駆動回路、及びモータ軸と巻取リールSW2とを連結するためのギヤ等を備えている。駆動装置SW3は、制御装置SW5からのモータ電流信号に基づいてモータ駆動回路によりモータ電流を発生させ、このモータ電流をモータに供給し、更にギヤを介してモータの回転駆動力を巻取リールSW2に伝達することにより巻取リールSW2を回転駆動する。
【0044】
パルス発生回路SW4は、制御装置SW5からのパルス制御信号に基づいてサーボ信号書込ヘッドWHに設けられた複数のコイルC(図5B参照)に記録パルス電流を供給する回路であり、複数のコイルCそれぞれに独立して設けられている。具体的には、パルス発生回路SW4は、制御装置SW5からのパルス制御信号に基づいて、プラス極性又はマイナス極性を持つパルス電流とゼロ電流とを交互に発生させることで、サーボパターンSPを各サーボバンドSBの所定位置に記録する。なお、記録パルス電流は、ギャップパターンG(図5B参照)からの漏れ磁束により磁気テープMTの磁性層を磁化するために十分な電流値であり、サーボ信号書込ヘッドWHのコイルCの特性等を考慮して設定される。
【0045】
図5Bに示すように、サーボ信号書込ヘッドWHは、各サーボバンドSBに対応する位置に設けられた線状のギャップパターンGを含み、それぞれのギャップパターンGによりサーボパターンSPを磁気テープMTのサーボバンドSBに記録する。ギャップパターンGの一方の線状パターンは、線状パターンSP1の角度に対応して傾けられ、他方の線状パターンは、線状パターンSP2に対応して一方の線状パターンに非平行とされている。ギャップパターンGが、サーボバンドSBにサーボパターンSPを記録するサーボ記録素子の一例である。
【0046】
また、ギャップパターンG毎にヘッドコアHCは独立しており、これらのヘッドコアHCにはそれぞれコイルCが巻回されている。そして、各コイルCに接続される各パルス発生回路SW4は、制御装置SW5でエンコードされた個々のサーボバンドSBを区別するためのデータを記録パルス電流のパターンに変換し、このパターンに従って記録パルス電流をコイルCに供給している。これにより、各サーボバンドSBのサーボパターンSPに、各サーボバンドSBに応じた固有の識別情報が埋め込まれる。なお、ギャップパターンG毎にヘッドコアHCは独立していなくてもよく、例えば、全てのギャップパターンGに対応して1つのヘッドコアHCが設けられていてもよい。この場合、1つの記録パルス電流によって、一括して各サーボバンドSBにサーボパターンSPが記録される。
【0047】
次に、図6を参照して、磁気テープカートリッジ10の生産工程において、磁気テープカートリッジ10の記録媒体12に、生産時情報14を記録するための測定装置20及び記録装置22の構成について説明する。測定装置20の例としては、MFM(Magnetic Force Microscope)、SEM(Scanning Electron Microscope)、及びレーザー顕微鏡等が挙げられる。図6に示すように、記録装置22は、CPU(Central Processing Unit)及び一時記憶領域としてのメモリ等を含む制御部24と、記録媒体12に非接触で情報を記録する記録部26とを含む。
【0048】
測定装置20は、サーボライタSWのサーボ信号書込ヘッドWHを測定し、各ギャップパターンGの2つの線状パターンにおけるテープ長手方向の距離に応じた信号を出力する。
【0049】
記録装置22の制御部24は、測定装置20から出力された信号を取得する。また、制御部24は、一例として図7に示すように、取得した信号を用いて、各ギャップパターンGの2つの線状パターンにおけるテープ長手方向の距離Dを導出する。制御部24は、距離Dを、テープ幅方向に沿ったサーボパターンSPの対応する位置(以下、「サーボ位置」という)毎に導出する。なお、このサーボ位置は、前述した各データトラック群の各データトラックDTに対応している。すなわち、例えば、各データトラック群に6本のデータトラックDTが含まれている場合は、サーボ位置は6箇所の位置となる。そして、制御部24は、記録部26を制御し、各ギャップパターンGに対応するサーボバンドSBの番号、及びサーボ位置の番号に対応付けて、導出した距離Dを生産時情報14として記録媒体12に記録する。
【0050】
図8に、生産時情報14の一例を示す。図8に示すように、生産時情報14には、サーボバンドSBの番号及びサーボ位置の番号の組み合わせの各々に対応する距離Dが含まれる。図8の例では、アジマス角が12°で、テープ幅方向の長さが93μmで、テープ幅方向の中点の位置(すなわち、46.5μm(=93÷2)の位置)での線状パターンSP1と線状パターンSP2との長手方向の距離が38μmのサーボパターンSPを前提とした場合の各サーボ位置での距離Dを示している。図3に示すように、ここでいうアジマス角とは、線対称のサーボパターンSPにおいて、テープ幅方向に沿った直線(図3における二点鎖線)に対する線状パターンSP1の角度(図3におけるθ)を意味する。
【0051】
この距離Dから、以下の(1)式に従って、距離Dが、何れのサーボ位置に対応するかが算出される。なお、(1)式における「中点での距離」は、サーボパターンSPのテープ幅方向の中点の位置における線状パターンSP1と線状パターンSP2とのテープ長手方向の距離(図8の例では、38μm)を表す。すなわち、(1)式では、サーボ位置が、サーボパターンSPのテープ幅方向の中点の位置を基準としたテープ幅方向の距離で算出される。
【0052】
【数1】
【0053】
また、図9に示すように、制御部24は、記録部26を制御し、保持フラグ16を記録媒体12に記録する。保持フラグ16は、記録媒体12に生産時情報14が記録されているか否かを表す情報である。本実施形態では、記録媒体12に生産時情報14が記録されている場合は、保持フラグ16として「1」が記録され、記録媒体12に生産時情報14が記録されていない場合は、保持フラグ16として「0」が記録される。
【0054】
また、図9に示すように、制御部24は、記録部26を制御し、生産時情報14に対応する特定情報18を記録媒体12に記録する。本実施形態に係る特定情報18は、生産時情報14の種別情報(図9の例では「A」)と、同じ種別内で生産時情報14を識別するための識別情報(図9の例では「001」)とが組み合わされた情報である。この種別情報と識別情報との組み合わせである特定情報18によって、生産時情報14が前述した各ギャップパターンGの2つの線状パターンにおけるテープ長手方向の距離Dであることを特定することができる。
【0055】
次に、図10を参照して、磁気テープカートリッジ10の生産工程において、磁気テープMTにサーボパターンSPを記録し、記録媒体12に生産時情報14、保持フラグ16、及び特定情報18を記録するサーボ記録処理の流れの一例を説明する。
【0056】
図10のステップS10で、サーボライタSWは、前述したように、制御装置SW5による制御によって、磁気テープMTの各サーボバンドSBに対し、サーボ信号書込ヘッドWHの対応するギャップパターンGによって、サーボパターンSPを記録する。
【0057】
ステップS12で、測定装置20は、前述したように、ステップS10の処理に用いられたサーボライタSWのサーボ信号書込ヘッドWHを測定し、測定結果の信号を出力する。ステップS14で、記録装置22の制御部24は、前述したように、ステップS12の処理により出力された信号を用いて、距離Dを導出する。そして、制御部24は、記録部26を制御し、各ギャップパターンGに対応するサーボバンドSBの番号、及びサーボ位置の番号に対応付けて、導出した距離Dを生産時情報14として記録媒体12に記録する。
【0058】
ステップS16で、制御部24は、記録部26を制御し、保持フラグ16として「1」を記録媒体12に記録する。ステップS18で、制御部24は、記録部26を制御し、ステップS14で記録された生産時情報14に対応する特定情報18を記録媒体12に記録する。ステップS18の処理が終了すると、サーボ記録処理が終了する。
【0059】
なお、サーボ記録処理の処理順序は図10に示した例に限定されない。例えば、ステップS12からステップS18の処理が実行された後に、ステップS10の処理が実行されてもよいし、ステップS10とステップS12の順序を入れ替えてもよい。以上の処理によってサーボバンドSBにサーボパターンSPが記録され、記録媒体12に生産時情報14、保持フラグ16、及び特定情報18が記録された磁気テープカートリッジ10が生産・出荷される。
【0060】
次に、図11を参照して、出荷された磁気テープカートリッジ10に対するデータの記録及び再生を行う記録再生システム30の構成を説明する。図11に示すように、記録再生システム30は、磁気テープカートリッジ10、テープドライブ44、及びテープドライブ44制御用のコンピュータ(図示省略)を備えている。テープドライブ44が、開示の技術に係る記録再生装置の一例である。
【0061】
テープドライブ44には、磁気テープカートリッジ10がロードされる。また、テープドライブ44にロードされた磁気テープカートリッジ10の磁気テープMTに対するデータの記録又は再生が終了した後、磁気テープカートリッジ10がテープドライブ44からアンロードされる。
【0062】
テープドライブ44は、制御部46、読取書込部48、及び磁気ヘッドHを備えている。制御部46が、開示の技術に係る制御部の一例であり、読取書込部48が開示の技術に係る読取部の一例である。磁気ヘッドHは、複数の記録再生素子RWD、及び隣り合うサーボバンドSBの各々に対応する複数(本実施形態では、2つ)のサーボ再生素子SRDを備えている。また、本実施形態では、磁気ヘッドHが備える記録再生素子RWDの数は、1つのデータバンドDBが備えるデータトラック群の数と同じ数とされている。なお、磁気ヘッドHが備える記録再生素子RWDの数と、1つのデータバンドDBが備えるデータトラック群の数とは同じ数でなくてもよい。
【0063】
読取書込部48は、制御部46による制御によって、磁気テープカートリッジ10に内蔵された記録媒体12に記録された情報を非接触で読み取り、読み取った情報を制御部46に出力する。また、読取書込部48は、制御部46による制御によって、情報を非接触で記録媒体12に記録する。読取書込部48の例としては、RFIDリーダーライターが挙げられる。
【0064】
制御部46は、PLD(Programmable Logic Device)、一時記憶領域としてのメモリ、及び不揮発性の記憶部等を含む。なお、制御部46は、例えば、CPU等のPLD以外のプロセッサにより実現されてもよいし、複数種類のプロセッサにより実現されてもよい。例えば、制御部46がCPUにより実現される場合、CPUがプログラムを実行することによりPLDと同様の機能を有することとなる。
【0065】
次に、図12を参照して、記録再生システム30が磁気テープカートリッジ10を初期化する初期化処理の一部の処理の流れを説明する。図12に示す初期化処理の一部の処理は、例えば、磁気テープカートリッジ10が初回にテープドライブ44にロードされた場合に実行される。ここでいう初回とは、磁気テープカートリッジ10の出荷後の初回だけではなく、磁気テープカートリッジ10が使用された後にフォーマットが行われた後の初回も含む。なお、磁気テープカートリッジ10のテープドライブ44へのロードが初回であるか否かは、初期化フラグ(例えば、ECMA―319で規定されている「Block 1 Protection Flag」)によって判別することができる。また、ここでは、テープドライブ44に磁気テープカートリッジ10がロードされた状態でデータ記録処理が実行されるものとする。また、ここでは、LTO規格等の磁気テープカートリッジ10の各種磁気テープカートリッジ規格又は仕様に従って行われる初期化処理については説明を省略する。
【0066】
図12のステップS20で、制御部46は、読取書込部48を制御し、記録媒体12に記録された保持フラグ16を読み取らせる。そして、制御部46は、読取書込部48により読み取られた保持フラグ16を取得する。ステップS22で、制御部46は、ステップS20で取得した保持フラグ16が「1」であるか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合は、記録媒体12に生産時情報14が保持されていないものとして、ステップS24~ステップS28の処理をスキップし、肯定判定となった場合は、処理はステップS24に移行する。
【0067】
ステップS24で、制御部46は、読取書込部48を制御し、記録媒体12に記録された特定情報18及び生産時情報14を読み取らせる。そして、制御部46は、読取書込部48により読み取られた特定情報18及び生産時情報14を取得する。ステップS26で、制御部46は、磁気ヘッドHを制御し、ステップS24で取得した特定情報18及び生産時情報14を対応付けて磁気テープMTの管理情報を保持する領域(例えば、磁気テープMTの先頭部分の予め定められた範囲の領域)に記録する。
【0068】
ステップS28で、制御部46は、読取書込部48を制御し、記録媒体12に記録された生産時情報14を削除し、かつ保持フラグ16を「0」に変更することによって、記録媒体12の生産時情報14を無効化する。なお、制御部46は、保持フラグ16を「0」に変更することだけで記録媒体12の生産時情報14を無効化することも可能である。ステップS28の処理が終了すると、図12に示す初期化処理の一部の処理が終了する。図12に示す初期化処理の一部の処理が完了すると、テープドライブ44から磁気テープカートリッジ10がアンロードされる。なお、図12に示す初期化処理の一部の処理の完了後、テープドライブ44から磁気テープカートリッジ10をアンロードせずに、次の動作を待機してもよい。
【0069】
以上の初期化処理の一部の処理によって、図13に示すように、記録媒体12に記録されていた特定情報18及び生産時情報14が対応付けられて磁気テープMTに記録される。本実施形態では、特定情報18の直後に生産時情報14を記録することによって、特定情報18及び生産時情報14を対応付けている。また、図13に示すように、記録媒体12に記録されていた生産時情報14が記録媒体12から削除される。従って、記録媒体12の生産時情報14が記録されていた記憶領域は空き領域となる。この空き領域には、初期化処理の後に磁気テープMTに対してデータの記録又は再生が行われる場合に、使用履歴に関する情報及び故障履歴に関する情報等が記録される。これにより、記録媒体12の記憶容量の増大を抑制することができる。
【0070】
次に、図14を参照して、記録再生システム30が磁気テープカートリッジ10にデータを記録するデータ記録処理の流れを説明する。図14に示すデータ記録処理は、例えば、テープドライブ44制御用のコンピュータから、記録対象のデータがテープドライブ44の制御部46に入力された場合に実行される。なお、ここでは、テープドライブ44に磁気テープカートリッジ10がロードされた状態でデータ記録処理が実行されるものとする。
【0071】
図14のステップS40で、制御部46は、読取書込部48を制御し、記録媒体12に記録された保持フラグ16を読み取らせる。そして、制御部46は、読取書込部48により読み取られた保持フラグ16を取得する。ステップS42で、制御部46は、ステップS40で取得した保持フラグ16が「1」であるか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合は、処理はステップS52に移行し、肯定判定となった場合は、処理はステップS44に移行する。
【0072】
ステップS44で、制御部46は、読取書込部48を制御し、記録媒体12に記録された特定情報18を読み取らせる。そして、制御部46は、読取書込部48により読み取られた特定情報18を取得する。ステップS46で、制御部46は、読取書込部48を制御し、記録媒体12に記録された生産時情報14を読み取らせる。そして、制御部46は、読取書込部48により読み取られた生産時情報14を取得する。
【0073】
ステップS48で、制御部46は、磁気ヘッドHを制御し、サーボバンドSBに記録された所定の個数のサーボパターンSPをサーボ再生素子SRDに読み取らせる。ステップS50で、制御部46は、ステップS48の処理による線状パターンSP1と線状パターンSP2とが読み取られたタイミングの時間間隔、及びステップS46の処理により取得された生産時情報14に基づいて、磁気ヘッドHの位置決めを行う。ステップS50の処理が終了すると、処理はステップS60に移行する。
【0074】
ステップS52で、制御部46は、磁気ヘッドHを制御し、磁気テープMTに記録された特定情報18を読み取らせる。そして、制御部46は、磁気ヘッドHにより読み取られた特定情報18を取得する。ステップS54で、制御部46は、磁気ヘッドHを制御し、磁気テープMTの管理情報を保持する領域における、ステップS52で取得した特定情報18の直後に記録されている生産時情報14を読み取らせる。そして、制御部46は、磁気ヘッドHにより読み取られた生産時情報14を取得する。
【0075】
ステップS56で、制御部46は、磁気ヘッドHを制御し、サーボバンドSBに記録された所定の個数のサーボパターンSPをサーボ再生素子SRDに読み取らせる。ステップS58で、制御部46は、ステップS56の処理による線状パターンSP1と線状パターンSP2とが読み取られたタイミングの時間間隔、及びステップS54の処理により取得された生産時情報14に基づいて、磁気ヘッドHの位置決めを行う。ステップS58の処理が終了すると、処理はステップS60に移行する。
【0076】
ステップS60で、制御部46は、磁気ヘッドHを制御し、データバンドDBにデータを記録する。ステップS60の処理が終了すると、データ記録処理が終了する。データ記録処理により記録対象のデータの磁気テープMTへの記録が完了すると、テープドライブ44から磁気テープカートリッジ10がアンロードされる。なお、記録対象のデータの磁気テープMTへの記録の完了後、テープドライブ44から磁気テープカートリッジ10をアンロードせずに、次の動作を待機してもよい。また、ステップS46で、記録媒体12及び磁気テープMTの双方から、生産時情報14を読み取ってもよい。この場合、記録媒体12から読み取った生産時情報14と磁気テープMTから読み取った生産時情報14とが異なる場合は、エラーとしてデータ記録処理を終了してもよいし、何れかの生産時情報14を優先して使用してもよい。
【0077】
なお、磁気テープカートリッジ10に記録されたデータを読み取る処理についても図14に示すデータ記録処理と同様に実行が可能である。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、磁気テープカートリッジ10の初期化処理として、記録媒体12の生産時情報14を磁気テープMTに記録し、かつ記録媒体12から生産時情報14を削除している。従って、磁気テープカートリッジ10が備える磁気テープMT以外の記録媒体である記録媒体12の記憶容量の増大を抑制することができる。
【0079】
また、一例として図15に示すように、サーボパターンSPは、直線状に記録されることが理想であるが、実際には、湾曲する場合もある。これに対し、本実施形態では、サーボパターンSPが湾曲することも考慮し、磁気テープMTに実際にサーボパターンSPを形成したギャップパターンGを測定して得られた生産時情報14を用いて磁気ヘッドHの位置決めを行っている。従って、磁気ヘッドHの位置決めを精度良く行うことができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、磁気テープカートリッジ10の初期化処理として、記録媒体12から生産時情報14を削除することによって、生産時情報14を無効化する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、磁気テープカートリッジ10の初期化処理として、記録媒体12に記録された生産時情報14を上書き可能とすることによって生産時情報14を無効化してもよい。この場合、例えば、保持フラグ16として、生産時情報が上書き不可の状態で記録されている、生産時情報が上書き可能な状態で記録されている、及び生産時情報が記録されていない、の3種類の情報を記録する形態が例示される。
【0081】
また、上記実施形態では、生産時情報として、各ギャップパターンGの2つの線状パターンにおけるテープ長手方向の距離Dを適用した場合について説明したが、これに限定されない。生産時情報として、例えば、磁気テープカートリッジ10の生産工程において取得された磁気テープMTの欠陥に関する情報を適用してもよい。この磁気テープMTの欠陥に関する情報としては、磁気テープMTの欠陥の位置を表す情報が挙げられる。この場合、磁気テープMTへのデータの記録又は再生を行う際には、欠陥がある位置を避けてデータの記録又は再生を行う。
【0082】
また、上記実施形態では、保持フラグ16として、生産時情報が記録されているか否かを表す2種類の情報(上記実施形態では「1」と「0」)を適用した場合について説明したが、これに限定されない。保持フラグ16として、生産時情報が記録されているか否かに加えて、生産時情報が記録されている場合の生産時情報の保存先を表す情報を適用してもよい。この場合、保持フラグ16として、記録媒体12に生産時情報が記録されている、磁気テープMTに生産時情報が記録されている、及び生産時情報が記録されていない、の3種類の情報を適用する形態が例示される。
【0083】
また、上記実施形態において、保持フラグ16及び特定情報18として、既存の情報を使用してもよい。この場合、保持フラグ16の例としては、前述した初期化フラグが挙げられる。また、この場合、特定情報18の例としては、磁気テープカートリッジ10のシリアル番号が挙げられる。
【0084】
また、上記実施形態において、生産時情報として、複数種類の情報が記録媒体12に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 磁気テープカートリッジ
12 記録媒体
14 生産時情報
16 保持フラグ
18 特定情報
20 測定装置
22 記録装置
24、46 制御部
26 記録部
30 記録再生システム
44 テープドライブ
48 読取書込部
C コイル
D 距離
DB データバンド
DR データ再生素子
DT データトラック
DW データ記録素子
G ギャップパターン
H 磁気ヘッド
HC ヘッドコア
MT 磁気テープ
RWD 記録再生素子
SB サーボバンド
SP サーボパターン
SP1、SP2 線状パターン
SRD サーボ再生素子
SW サーボライタ
SW1 送出リール
SW2 巻取リール
SW3 駆動装置
SW4 パルス発生回路
SW5 制御装置
SW6 ガイド
WH サーボ信号書込ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15