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特許7159250管理システム、管理装置、管理方法及び管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】管理システム、管理装置、管理方法及び管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20221017BHJP
   B65G 3/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G06Q10/04
B65G3/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020131548
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028244
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-07-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】池川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】栗野 琢士
(72)【発明者】
【氏名】高野瀬 康
(72)【発明者】
【氏名】高 大輔
(72)【発明者】
【氏名】海谷 絵未
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-162614(JP,A)
【文献】特開平02-075510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理システムであって、
情報管理部と、気象情報取得部と、評価部と、処理実行部と、第1出力部と、第2出力部とを備え、
前記情報管理部は、前記物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び前記粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、前記物質のパイルごとに管理するように構成され、
前記気象情報取得部は、前記屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成され、
前記評価部は、前記粉塵防止処理情報及び前記気象情報に基づいて、前記パイルごとに前記気象情報の予想時点と同じ時点の粉塵の発生を評価するように構成され、
前記処理実行部は、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果に基づき、特定のパイルに対し、新たな粉塵防止処理を施すように構成され
前記第1出力部は、前記パイルごとに、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果を表示するように構成され、
前記第2出力部は、前記パイルごとに、既済の前記粉塵防止処理の有無、及び前記粉塵防止処理を施した場合、前記粉塵防止処理の種類を表示するとともに、その効果が消失する時間に応じて非表示とするように構成される、
管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムにおいて、
前記気象情報は、前記屋外における未来の予想される風速を含む、
管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の管理システムにおいて、
水分量情報取得部をさらに備え、
前記水分量情報取得部は、前記物質に含まれる水分量を示す水分量情報を取得するように構成される、
管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の管理システムにおいて、
前記水分量情報は、前記パイルの表層に含まれる水分量を含む、
管理システム。
【請求項5】
屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理装置であって、
情報管理部と、気象情報取得部と、評価部と、処理実行部と、第1出力部と、第2出力部とを備え、
前記情報管理部は、前記物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び前記粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、前記物質のパイルごとに管理するように構成され、
前記気象情報取得部は、前記屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成され、
前記評価部は、前記粉塵防止処理情報及び前記気象情報に基づいて、前記パイルごとに前記気象情報の予想時点と同じ時点の粉塵の発生を評価するように構成され、
前記処理実行部は、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果に基づき、特定のパイルに対し、新たな粉塵防止処理を施すように構成され
前記第1出力部は、前記パイルごとに、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果を表示するように構成され、
前記第2出力部は、前記パイルごとに、既済の前記粉塵防止処理の有無、及び前記粉塵防止処理を施した場合、前記粉塵防止処理の種類を表示するとともに、その効果が消失する時間に応じて非表示とするように構成される、
管理装置。
【請求項6】
屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理方法であって、
情報管理工程と、気象情報取得工程と、評価工程と、処理実行工程と、出力工程とを備え、
前記情報管理工程は、前記物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び前記粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、前記物質のパイルごとに管理し、
前記気象情報取得工程は、前記屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得し、
前記評価工程は、前記粉塵防止処理情報及び前記気象情報に基づいて、前記パイルごとに前記気象情報の予想時点と同じ時点の粉塵の発生を評価し、
前記処理実行工程は、前記粉塵の発生の評価結果に基づき、特定のパイルに対し、新たな粉塵防止処理を施し、
前記出力工程は、第1出力部に、前記パイルごとに、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果を表示し、第2出力部に、前記パイルごとに、既済の前記粉塵防止処理の有無、及び前記粉塵防止処理を施した場合、前記粉塵防止処理の種類を表示するとともに、その効果が消失する時間に応じて非表示とする
管理方法。
【請求項7】
屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理プログラムであって、
コンピュータを、情報管理部、気象情報取得部、評価部処理実行部、第1出力部及び第2出力部として機能させ、
前記情報管理部は、前記物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び前記粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、前記物質のパイルごとに管理するように構成され、
前記気象情報取得部は、前記屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成され、
前記評価部は、前記粉塵防止処理情報及び前記気象情報に基づいて、前記パイルごとに前記気象情報の予想時点と同じ時点の粉塵の発生を評価するように構成され、
前記処理実行部は、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果に基づき、特定のパイルに対し、新たな粉塵防止処理を施すように構成され
前記第1出力部は、前記パイルごとに、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果を表示するように構成され、
前記第2出力部は、前記パイルごとに、既済の前記粉塵防止処理の有無、及び前記粉塵防止処理を施した場合、前記粉塵防止処理の種類を表示するとともに、その効果が消失する時間に応じて非表示とするように構成される、
管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理システム、管理装置、管理方法及び管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、製鉄原料として石炭、鉄鉱石、ダスト及びスラグ等が、発電所では、発電燃料として石炭等が、パイルの状態でヤード内に保管される。このようなパイルにおいては、パイル表層の水分量が低下して乾燥すると粉塵が発生する。そこで、パイルに対して散水を行い、パイル表層の水分量を上げて、粉塵を抑制している。
【0003】
従来、このようなパイルに対する散水は、その頻度を決めて定期的に行っていた。しかしながら、このような方法では、上述した石炭等の物質が水分量を多く保持していたり、表面が樹脂コーティングされていたりして、粉塵が抑制されているにもかかわらず、散水されることがあった。
【0004】
そして、このような散水によって水分量が多くなると種々の問題が起こり得る。例えば、製鉄原料としての鉄鉱石、石炭、ダスト及びスラグの水分量が多い場合、ホッパー、サイロ、ベルトコンベア乗継部等で詰まりが発生することがある。また、コークス原料としての石炭の水分量が多い場合、コークス炉に装入されるコークスの嵩密度が低下するため、生産量が低下する。さらに、ヤードにおいてパイルを構成する物質に含まれる水分量が多くなりすぎると、パイルを構成する物質が流れてパイル崩壊が起こりやすくなる。
【0005】
このような余剰の散水を防止するため、例えば特許文献1には、近赤外線式含水率計によってパイルの表面を走査して水分量を測定し、閾値を下回る箇所に散水する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-50076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される方法では、現在のパイルの表面の含水量のみに基づいて散水するため、例えばパイル表面は乾燥しているが、無風で粉塵の発生は予想されない場合であっても散水されることがある。上述した含水量の増加によって発生する問題の防止の観点や、水資源の保全の観点、散水のコストの観点等から、粉塵の発生が防止される限りにおいて散水量は少ないほどよい。
【0008】
本発明では上記事情を鑑み、パイルが置かれた環境やパイルに施された処理を考慮して粉塵の発生を評価することができる管理システム、管理装置、管理方法及びプログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理システムが提供される。この管理システムは、情報管理部と、気象情報取得部と、評価部とを備える。情報管理部は、物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、物質のパイルごとに管理するように構成される。気象情報取得部は、屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成される。評価部は、粉塵防止処理情報及び気象情報に基づいて、パイルごとに粉塵の発生を評価するように構成される。
【0010】
具体的には、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記管理システムにおいて、前記気象情報は、前記屋外における未来の予想される風速を含む、管理システム。
前記管理システムにおいて、水分量情報取得部をさらに備え、前記水分量情報取得部は、前記物質に含まれる水分量を示す水分量情報を取得するように構成される、管理システム。
前記管理システムにおいて、前記水分量情報は、前記パイルの表層に含まれる水分量を含む、管理システム。
前記管理システムにおいて、第1出力部をさらに備え、前記第1出力部は、前記パイルごとに、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果を表示するように構成される、管理システム。
前記管理システムにおいて、第2出力部をさらに備え、前記第2出力部は、前記パイルごとに、既済の前記粉塵防止処理の有無を表示するように構成される、管理システム。
前記管理システムにおいて、処理実行部をさらに備え、前記処理実行部は、前記評価部による前記粉塵の発生の評価結果に基づき、特定のパイルに対し、新たな粉塵防止処理を施すように構成される、管理システム。
屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理装置であって、情報管理部と、気象情報取得部と、評価部とを備え、前記情報管理部は、前記物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び前記粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、前記物質のパイルごとに管理するように構成され、前記気象情報取得部は、前記屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成され、前記評価部は、前記粉塵防止処理情報及び前記気象情報に基づいて、前記パイルごとに粉塵の発生を評価するように構成される、管理装置。
屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理方法であって、情報管理工程と、気象情報取得工程と、評価工程とを備え、前記情報管理工程は、前記物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び前記粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、前記物質のパイルごとに管理し、前記気象情報取得工程は、前記屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得し、前記評価工程は、前記粉塵防止処理情報及び前記気象情報に基づいて、前記パイルごとに粉塵の発生を評価する、管理方法。
屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理プログラムであって、コンピュータを、情報管理部、気象情報取得部及び評価部として機能させ、前記情報管理部は、前記物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び前記粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、前記物質のパイルごとに管理するように構成され、前記気象情報取得部は、前記屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成され、前記評価部は、前記粉塵防止処理情報及び前記気象情報に基づいて、前記パイルごとに粉塵の発生を評価するように構成される、管理プログラム。
もちろん、この限りではない。
【0011】
本発明によれば、パイルが置かれた環境やパイルに施された処理を考慮して粉塵の発生を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る管理システムを示す概略図である。
図2】本実施形態に係る管理装置の機能構成を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る出力装置に出力される画面の一例である。
図4】本実施形態に係る管理装置のハードウェア構成を示す概略図である。
図5】本実施形態に係る管理方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0014】
ところで、本実施形態に係るソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0015】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0016】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0017】
<管理システム>
本実施形態に係る管理システムは、屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理システムである。具体的に、この管理システムは、情報管理部と、気象情報取得部と、評価部とを備える。情報管理部は、物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、物質のパイルごとに管理するように構成されるものである。また、気象情報取得部は、屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成されるものである。さらに、評価部は、粉塵防止処理情報及び気象情報に基づいて、パイルごとに粉塵の発生を評価するように構成されるものである。
【0018】
ここで、「製鉄原料」とは、製鉄所等の製鉄設備における製鉄の原料及び燃料として使用されるものをいい、例えば石炭、鉄鋼、ダスト、スラグ、コークス、焼結鉱の他、石灰石、ドロマイト等の副原料等が挙げられる。また、「発電燃料」とは、発電所等の発電設備における発電の燃料として使用されるものをいい、例えば石炭、バイオマス燃料等が挙げられる。
【0019】
また、必須の構成ではないが、本実施形態に係る管理システムは、処理情報取得部、水分量情報取得部、粒子径情報管理部、第1出力部、第2出力部、処理実行部及び水分量情報測定部のうち、1又は2以上を備えてもよい。なお、以下で説明する図1には、これら全てを備える管理システムについて主として説明する。
【0020】
〔管理システムの機能的構成〕
図1は、本実施形態に係る管理システムの概略図である。この管理システム1は、管理装置2と、水分量情報測定装置3と、出力装置4と、処理実行部5とを備える。
【0021】
このうち、管理装置2は、管理システム1における物質の管理のための情報処理を制御するものである。図2は、本実施形態に係る管理装置の機能構成を示す概略模式図である。この図2に示すように、本実施形態に係る管理装置2は、主として、情報管理部21、気象情報取得部22及び評価部23を備える。また、管理装置2は、処理情報取得部24、水分量情報取得部25及び粒子径情報取得部26を備える。なお、水分量情報測定装置3は、水分量情報測定部の一例であるが、以下では特に区別せず説明する。また、出力装置4は、第1出力部及び第2出力部の一例である。
【0022】
〔管理システムの機能〕
以下、管理システム1の各部の機能について具体的に説明する。
【0023】
[情報管理部]
情報管理部21は、物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、物質のパイルPごとに管理するように構成されるものである。
【0024】
ここで、「粉塵防止処理」とは、物質のパイルPから粉塵が発生することを防止するために、パイルPに対して施す処理をいう。具体的には、粉塵防止剤によるパイル表面のコーティング、粉塵防止剤を溶解・分散させた水のパイルへの散水、又はパイル若しくはパイル前の物質への混合、散水による表面の乾燥防止等が挙げられる。
【0025】
粉塵防止剤としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、アクリル系共重合樹脂、酢酸ビニル系樹脂、合成ゴム、ウレタン樹脂、アスファルト(乳化剤)等のエマルション溶液、水溶性ポリマーの溶液、ポリオキシエチレンラウリルエーテルとグリセリン等の多価アルコールとの組み合わせ等の界面活性剤組成物等が挙げられる。なお、このような粉塵防止剤は、パイルP表面に塗布、散水してもよいし、パイルを構成する原料に混合してもよい。
【0026】
詳細は後述するが、鉄鉱石等においては近年微粉化が進んでおり、粉塵の発生の可能性が高いものがある。このような鉄鉱石に対しては、例えばヤードY内にパイルを設置する際に、パイルPに対して粉塵防止剤を用いて処理を施した後、散水する管理が行われる。また、例えばヤード内にパイルPを設置し、粉塵が多く見込まれる場合には、粉塵防止剤を用いて処理を施す管理が行われることもある。これらのように、粉塵防止処理の方法は多様化してきている。しかも、ヤードY内には、成分や粒子径が異なる複数種類のパイルPが配置されることもあるし、それらの納入の時期も異なることがある。そうすると、これらのパイルPでは粉塵防止剤の適用の有無及びその頻度や、散水の有無及びその頻度がそれぞれ異なるものとなる。そこで、本実施形態における管理システムの情報管理部21は、既済の粉塵防止処理の有無及び種類を含む粉塵防止処理情報をパイルPごとに管理し、パイルPごとの既済の粉塵防止処理の有無及び種類を利用可能な状態にする。
【0027】
[気象情報取得部]
気象情報取得部22は、屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得するように構成されるものである。
【0028】
気象情報としては、特に限定されないが、降水量(降雨量及び降雪量)、気温、風向、風速、日射量、相対湿度等のうち1又は2以上を用いることができる。気象情報は、屋外における未来の予想される風速を含むことが好ましい。風速は、粉塵の発生に大きな影響を与える要素である。また、気象情報は降雨量を含むことが好ましい。降雨量は、粉塵の発生防止に影響を与える要素である。なお、これらの気象情報は、日本国気象庁をはじめとする各国気象庁や、気象予報会社から得ることができる。
【0029】
なお、パイルPが配置されるヤードYは、通常広大な面積を有することが多く、例えば端部とその反対側の端部とでは、風速等の気象情報が異なることもある。そこで、気象情報について、パイルPごとに取得することが好ましい。
【0030】
[評価部]
評価部23は、粉塵防止処理情報及び気象情報に基づいて、パイルPごとに粉塵の発生を評価するように構成されるものである。
【0031】
この評価部23は、未来の特定時点におけるパイルPごとの粉塵の発生を評価する。ここで、「未来の特定時点」とは、評価開始時点よりも未来の時点をいう。また、評価部23は、入力情報である気象情報の予想時点と同じ時点の粉塵の発生を評価する。具体的に、未来の特定時点としては、特に限定されず、例えば評価開始時点の1秒後以上、10秒後以上、1分後以上、1時間後以上、2時間後以上、5時間後以上、10時間後以上、20時間後以上、1日後以上、2日以上、3日以上であってよい。また、未来の特定時点としては、評価開始時点の100日後以下、70日後以下、50日後以下、30日後以下、20日後以下、10日後以下、7日後以下であってよい。
【0032】
具体的に、この評価部23においては、例えば気象情報と、粉塵発生の可能性との関係を関数又はルックアップテーブルを作成するか、それらの関係を学習済モデルとして構築する等によって、気象情報から粉塵発生の可能性を算出する。この際に、粉塵防止処理情報、すなわち既済の粉塵防止処理の有無及び粉塵防止処理の種類を考慮して、粉塵発生の可能性から粉塵防止処理情報の分を差し引いて補正する。なお、粉塵防止処理が既済であったとしても、その内容によっては差し引かないこともあり得る。なお、ここで評価する粉塵の発生は、あくまで予測評価上の可能性であるから、実際の粉塵の発生結果と相違してもよい。
【0033】
粉塵の発生の評価方法としては、特に限定されず、例えば安全/注意/危険等の数段階に分けて評価してもよいし、粉塵の発生可能性を評価して、確率を計算し、例えばパーセント表示で1%ごとに分けて評価してもよい。
【0034】
また、粉塵の発生の評価方法としては、例えば気象情報の数値(例えば風速)に閾値を設け、この気象情報の数値が閾値を超えるか否かで評価する。具体的に、例えば気象情報の数値が、予め設けられた閾値を超えた場合に、粉塵が発生し得ると判断する。この際、上述した方法と同様に、粉塵防止処理情報を考慮して、粉塵発生の可能性から粉塵防止処理情報の分を差し引いて補正する。なお、閾値としては、その値を超えた場合に必ず問題が起こるものである必要はなく、一定程度の可能性が生じるものであってもよい。また、閾値としては、安全係数を考慮したものであってもよい。
【0035】
このようにして使用する閾値は、実際の運用で蓄積された経験的な数値を設定しても、実験を行って特定した数値を設定してもよい。また、閾値は、パイルを形成する物質(種類、銘柄、納品日等)ごとに変更してもよいし、変更しなくてもよい。
【0036】
また、気象情報の数値に対して、複数の閾値、すなわち複数の数値帯を設けて評価してもよい。例えば、未来の特定時点の風速が5m/s未満のときには粉塵が発生する可能性が低く「安全」と評価し、風速が5m/s以上10m/s未満のときには粉塵の発生の可能性が多少はあるため「注意」と評価し、風速が10m/s以上のときには粉塵の発生の可能性が高いため「危険」と評価する。また、例えば、未来の特定時点のパイルの表層の水分量が8%以上のときには粉塵が発生する可能性が低く「安全」と評価し、表層の水分量が5%以上8%未満のときには粉塵の発生の可能性が多少はあるため「注意」と評価し、表層の水分量が8%以上のときには粉塵の発生の可能性が高いため「危険」と評価する。この際、粉塵防止処理情報によって、この値を補正したり、ランクを下げたり(「注意」を「安全」に変更)してもよい。
【0037】
また、例えばあるパイル(以下、「パイルA」とする。)では、このパイルAの設置時に、粉塵防止剤によって粉塵防止処理が施されたものとする。一方、別のパイル(以下、「パイルB」とする。)では、このパイルBの設置時に、粉塵防止剤によって粉塵防止処理が施されていないものとする。この場合において、さらに気象情報として風速のみを用いこれを3段階の指標に分ける。風速が低い場合には、パイルA、Bともに「安全」と評価するが、風速が中程度の場合には、パイルAについては「安全」と評価するが、パイルBについては「注意」と評価し、風速が高い場合には、パイルA、Bともに「危険」と評価する。このように、粉塵防止処理が施されたパイルAと、粉塵防止処理が施されていないパイルBで評価に差を設けてもよい。
【0038】
なお、評価の方法や基準は、これらの具体例に何ら限定されない。
【0039】
後述する水分量情報取得部25を設ける場合、評価部23は、粉塵防止処理情報及び気象情報に加えてさらに、水分量情報取得部25において取得した物質のパイルPの水分量情報に基づいて、粉塵の発生を評価するように構成されることが好ましい。
【0040】
具体的に、例えば粉塵防止処理情報が同一のパイルPであれば、水分量がより低いパイルPは、水分量がより高いパイルPと比較して、粉塵の発生の可能性がより高いと評価する。そして、このような水分量がより低いパイルPに対してはより多くの量の水を散水する等の対応を行う。
【0041】
また、後述する粒子径情報取得部26を設ける場合、評価部23は、粉塵防止処理情報及び気象情報に加えてさらに、粒子径情報取得部26において取得した物質の粒子径情報に基づいて、粉塵の発生を評価するように構成されることが好ましい。
【0042】
具体的に、例えば粉塵防止処理情報が同一のパイルPであれば、粒子径がより小さい物質により構成されるパイルPは、粒子径がより大きい物質により構成されるパイルPと比較して、粉塵の発生の可能性がより高いと評価する。そして、このような粒子径がより小さいパイルPに対してはより多くの量の水を散水する等の対応を行う。
【0043】
後述するパイル情報取得部を設ける場合、評価部23は、粉塵防止処理情報及び気象情報に加えてさらに、パイル情報取得部において取得した物質のパイルPの面積、体積、平面形状、立体形状及び位置からなる群から選択される1以上を含むパイル情報に基づいて、パイルごとに粉塵の発生を評価するように構成されることが好ましい。
【0044】
なお、「面積」及び「平面形状」とは、ヤードY(パイルP)の上方からパイルPを平面視した場合の面積及び平面形状をいう。
【0045】
評価部23が、パイルPの面積、体積、平面形状及び立体形状のいずれか1以上の情報を用いる場合、例えば降水量情報と合わせて、パイルPの面積、体積、平面形状及び立体形状のいずれかと、降水量とから、例えば、関数やルックアップテーブル、学習済みモデル等を用いて物質の含水量の増加を算出することができる。なお、含水量は粉塵の発生に影響を及ぼし得、例えば、同条件であれば含水量が多いほど粉塵は発生しにくい。
【0046】
また、例えば、パイルPの面積と降水量とから、パイルPに直接降水する水の量を予測することができる。直接降水する水の量と、物質の含水量の増加分の関係を事前に求めておき、含水量の増加分を算出することもできる。
【0047】
さらに、例えば、パイルPの位置と風速・風向又は降水量とから、パイルPの位置における風の強さや降水量をより正確に予測することができる。これにより、粉塵の発生のしやすさをより正確に評価することができる。
【0048】
[処理情報取得部]
処理情報取得部24は、物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、物質のパイルPごとに取得するように構成されるものである。
【0049】
そして、この処理情報取得部24によって取得した粉塵防止処理情報は、上述した情報管理部21にてパイルPごとに管理される。
【0050】
[水分量情報取得部]
水分量情報取得部25は、物質に含まれる水分量を示す水分量情報を取得するように構成されるものである。
【0051】
水分量情報としては、特に限定されず、パイルPの表層の水分量、パイルPの水分量の全体平均、パイルPより一部をサンプリングしたものの水分量のいずれであっても十分に高い精度で粉塵の発生を評価することができる。ただし、パイルPの表層の水分量が粉塵の発生に強く関わっていることから、粉塵の発生の評価の精度をより高める観点から、水分量情報としては、パイルPの表層に含まれる水分量を含むことが好ましい。
【0052】
パイルPの水分量情報は、上述したとおりパイルPによって異なることも多い。したがって、水分量情報取得部25は、水分量情報をパイルPごとに取得して、水分量情報管理部(図示せず。)を設けて管理することが好ましい。
【0053】
[粒子径情報取得部]
粒子径情報取得部26は、物質の粒子径を示す粒子径情報を取得するように構成されるものである。
【0054】
ここで取得する粒子径の測定方法としては、特に限定されず、レーザー回折法による平均粒子径や、電子顕微鏡観察による粒子像の算術平均粒子径等が挙げられる。また、物質の納入時に納入業者から伝達されたものであっても、この管理システムの管理者側で測定したものであってもよい。
【0055】
パイルPの粒子径情報は、上述したとおりパイルPによって異なることも多い。したがって、粒子径情報もパイルPごとに取得して、粒子径情報管理部(図示せず。)を設けて管理することが好ましい。
【0056】
[水分量情報測定部]
水分量情報測定部3は、物質に含まれる水分量を示す水分量情報を測定するように構成されるものである。
【0057】
測定する水分量情報が、パイルPの表層の水分量である場合、この表層の水分量は、例えばパイルPの上空、パイルPの最大高さよりも高い位置から撮像して得られたスペクトル情報によって算出することができる。具体的には、パイルPの最大高さよりも高い位置を飛行することができるドローン等の飛行体や、パイルPの最大高さよりも高い位置まで伸長することができるリクレーマー等のブームに、水分量センサ、スペクトルカメラ等を取り付けて撮像する装置を用いればよい。
【0058】
水分量情報測定部3がパイル上空から測定するものである場合、その配置される高さとしては、特に限定されないが、ヤードYから20m以上200m以下高い位置に配置されることが好ましい。具体的に、水分量情報測定部3の配置される高さとしては、例えば25m以上、30m以上、35m以上、40m以上、45m以上、50m以上、55m以上、60m以上、65m以上、70m以上、75m以上、80m以上、85m以上、90m以上、95m以上、100m以上、105m以上、110m以上、115m以上120m以上、125m以上、130m以上135m以上であってよく、また、195m以下、190m以下、185m以下、180m以下、175m以下、170m以下、165m以下、160m以下であってもよい。
【0059】
水分量情報測定部3によって測定した面積情報は、水分量情報取得部25と通信して送信してもよいし、水分量情報測定部3に記録媒体を付して水分量情報をそこに記録し、その記録媒体を介して、水分量情報取得部25に面積情報を取得させてもよい。
【0060】
また、測定する水分量情報が、パイルPより一部をサンプリングしたものの水分量である場合、物質の水分量の測定方法としては、特に限定されないが、例えば近赤外光式やマイクロ波式、電気容量式等の水分計、熱重量計、乾燥重量法等によって測定することができる。なお、測定する水分量情報が、パイルPのパイルPの水分量の全体平均である場合、サンプリング箇所を複数の箇所の平均とするか、または、パイルを全体的に混ぜてサンプリングし、同様に水分量を測定すればよい。
【0061】
[第1出力部]
第1出力部4aは、パイルPごとに、評価部による粉塵の発生の評価結果を表示するように構成されるものである。
【0062】
以下、本実施形態に係る管理システム1による出力の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る出力装置4に出力される画面の一例である。この出力画面は、ヤード全体を上空から平面視した像を示している。この出力画面においては、表層の水分量も考慮して、粉塵の発生の可能性が高いと評価された箇所ほど(上述した3段階評価の例であれば「危険」、「注意」、「安全」の順に)濃く表示している。また、この出力画面において、パイルの像の右上に「エマルション」、「散水」と表示されているものは、それぞれ、エマルション樹脂溶液による処理、散水を施したものである。さらに、各パイルの上方には、「平均粒子径」を表示している。なお、「エマルション」、「散水」の表示は、例えばエマルション樹脂のコーティングや散水の効果が消失する時間を考慮して、一定時間後に消える設定にしてもよい。
【0063】
なお、この出力画面の右側には、本日の天気と予想風速が示されている。予想風速についての上下3段の帯は、それぞれ当日、3日後及び7日後の風速を示している。この風速についても、上述した3段階評価の例であれば「危険」、「注意」、「安全」の順に帯の色を濃く表示している。なおこの例では、風速が10m/s以上であれば「危険」、5m/s以上10m/s未満であれば「注意」、5m/s未満であれば「安全」と評価している。
【0064】
なお、図3の例では、パイルPの像上に粉塵発生の可能性に応じて色付けをする例を示したが、本実施形態に係る管理システム1の出力結果はこのような実際の上空からの像上に表示しなくてもよく、モデル図上に表示してもよい。また、出力画面には、図3のように物質の粒子径、本日の天気と予想風速が示されていてもよいし、示されていなくてもよい。さらに、出力画面には、物質の粒子径、本日の天気と予想風速以外の情報が示されていてもよいし、示されていなくてもよい。
【0065】
また、図3では、パイル上の粉塵の発生の可能性や風速について、「危険」、「注意」、「安全」の順に濃く表示しているが、色分けしてもよく、例えば「危険」と評価される箇所を赤色、「注意」と評価される箇所を黄色、「安全」と評価される箇所を青色にそれぞれ表示して視認性を高めてもよい。
【0066】
さらに、図3の例では、各パイルの下方に処理実行部(この例では散水装置)を設けており、この図3では模式的に円形で示している。図3に示すようにここからパイルに散水する様子をリアルタイムに表示してもよい。
【0067】
以上のようにして、評価した粉塵の発生の可能性、気象情報、パイルP表層の水分量等について、視覚的に認識できるよう表示することで、オペレータ等が粉塵の発生に対して素早く対応を検討でき、また、問題の見落としを抑制することもできる。
【0068】
[第2出力部]
第2出力部4bは、パイルPごとに、既済の粉塵防止処理の有無を表示するように構成されるものである。
【0069】
このようにして、パイルPごとに既済の粉塵防止処理の有無を表示することにより、オペレータがパイルPごとに新たな粉塵防止処理(粉塵防止剤、散水等)の必要性を判断しやすくなる。
【0070】
なお、第2出力部4bは、粉塵防止処理の有無以外に、粉塵防止処理の種類、粉塵防止処理の実行日時等をパイルPごとに表示してもよい。粉塵防止処理を複数施している場合には、その表示形式としては特に限定されないが、全ての粉塵防止処理を表示してもよいし、最新の粉塵防止処理のみを表示してもよい。
【0071】
なお、ここでは、便宜上第1出力部4aと第2出力部4bとを分けて説明したが、第1出力部4aと第2出力部4bとしては、図1に示したような同一の出力装置4を用いてもよいし、異なる出力装置を用いてもよい。
【0072】
[処理実行部]
処理実行部5は、評価部による粉塵の発生の評価結果に基づき、特定のパイルに対し、新たな粉塵防止処理を施すように構成されるものである。
【0073】
処理実行部5は、評価部による粉塵の発生の評価結果に基づき、特定のパイルに対し自動で粉塵防止処理を施してもよいし、例えば出力装置4に粉塵防止処理の必要性を表示する等して、オペレータに判断を委ね、このオペレータの手動によって粉塵防止処理を施してもよい。
【0074】
なお、新たな粉塵防止処理は、既済の粉塵防止処理がある場合、既済の粉塵防止処理と同一の種類の粉塵防止処理であってもよいし、既済の粉塵防止処理と異なる種類の粉塵防止処理であってもよい。
【0075】
[パイル情報取得部]
必須の構成ではないが、管理システム1は、パイル情報取得部(図示せず。)を備えてもよい。このパイル情報取得部は、物質のパイルPの面積、体積、平面形状、立体形状及び位置からなる群から選択される1以上を含むパイル情報を取得するように構成されるものである。
【0076】
このように物質のパイルPの面積、体積、平面形状、立体形状及び位置からなる群から選択される1以上を含むパイル情報を取得して、このパイル情報を気象情報とともに用いることにより、未来の特定時点の物質に含まれる水分量を適切に予測することができる。
【0077】
[パイル情報測定部]
必須の構成ではないが、管理システム1は、パイル情報測定部(図示せず。)を備えてもよい。このパイル情報測定部は、物質のパイルPの面積、体積、平面形状、立体形状及び位置からなる群から選択される1以上を含むパイル情報を測定するように構成されるものである。
【0078】
パイル情報のうちパイルPの面積、体積、平面形状、立体形状は、例えばパイルPの上空、パイルPの最大高さよりも高い位置から撮像して得られた像より、縮尺を考慮して算出することができる。具体的には、パイルPの最大高さよりも高い位置を飛行することができるドローン等の飛行体や、パイルPの最大高さよりも高い位置まで伸長することができるリクレーマー等のブームに、撮像装置を取り付けて撮像する装置が挙げられる。また、パイルPの面積は、パイルPが配置されるヤードY内の測量によって測定することもできる。パイル情報の測定の容易性の観点から、パイル情報測定部としては、特に限定されないが、上述した飛行体を用いることが好ましい。なお、このパイル情報測定部は、水分量情報測定部3を構成するドローン等の飛行体やリクレーマー等のブーム等に、パイルPの面積、体積、平面形状、立体形状の1以上を測定する別の装置を加えてもよいし、水分量情報測定部3を構成するスペクトルカメラ等のセンサがそのような機能を有していてもよい。もちろん、パイル情報測定部と、水分量情報測定部3とは異なる装置として構成してもよい。
【0079】
また、パイル情報のうちパイルPの位置は、パイルの位置を定量的に測定できるものであれば特に限定されない。例えばグローバルポジショニングシステム(GPS)等の衛星航法システム(GNSS)等、地球上における位置を機器によって測定してもよいし、例えばパイルPの上空、パイルPの最大高さよりも高い位置から撮像して得られたヤード内の全体像のうち、どの位置にあるかを測定してもよい。
【0080】
パイル情報測定部の配置される高さとしては、特に限定されないが、ヤードYから20m以上200m以下高い位置に配置されることが好ましい。具体的に、パイル情報測定部の配置される高さとしては、例えば25m以上、30m以上、35m以上、40m以上、45m以上、50m以上、55m以上、60m以上、65m以上、70m以上、75m以上、80m以上、85m以上、90m以上、95m以上、100m以上、105m以上、110m以上、115m以上、120m以上、125m以上、130m以上、135m以上であってよく、また、195m以下、190m以下、185m以下、180m以下、175m以下、170m以下、165m以下、160m以下であってもよい。
【0081】
パイル情報測定部によって測定したパイル情報は、パイル情報取得部と通信して送信してもよいし、パイル情報測定部に記録媒体を付してパイル情報をそこに記録し、その記録媒体を介して、パイル情報取得部にパイル情報を取得させてもよい。
【0082】
[その他の構成]
なお、その他の構成として、図示はしないが、物質の粒子径情報に基づき、初期(物質の納入時)の粉塵防止処理(例えば、エマルション樹脂溶液によるパイル表面のコーティング等)を、物質の粒子径に応じて必要性を判定する初期処理判定部と、その判定結果に基づき初期処理を実行する初期処理実行部を設けてもよい。なお、初期処理判定部は、管理装置2が備えてもよいし、他の管理装置が備えてもよい。また、初期処理実行部は、例えば初期処理実行装置として、指示に応じた処理を実行するよう構成されてよい。
【0083】
本実施形態に係る管理システム1によれば、パイルが置かれた環境やパイルに施された処理を考慮して粉塵の発生を評価することができ、これにより、粉塵が実際に発生するよりも前に、パイルPに対して適切な対策処理を施すことができる。
【0084】
〔管理システムのハードウェア構成〕
図4は、本実施形態に係る管理装置2のハードウェア構成を示す概略図である。図4に示されるように、管理装置2は、通信部61と、記憶部62と、制御部63とを有し、これらの構成要素が管理装置2の内部において通信バス64を介して電気的に接続されている。以下、これらの構成要素についてさらに説明する。
【0085】
通信部61は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいが、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めることができる。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。これにより管理装置2と通信可能な他の機器との間で情報や命令のやりとりが実行される。
【0086】
記憶部62は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、または、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施され得る。また、記憶部62は、これらの組合せであってもよい。また、記憶部62は、後述する制御部63が読み出し可能な各種のプログラムを記憶している。
【0087】
制御部63は、管理装置2に関連する全体動作の処理・制御を行う。この制御部63は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit:CPU、図示せず。)である。制御部63は、記憶部62に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、管理装置2に係る種々の機能を実現するものである。すなわち、ソフトウェア(記憶部62に記憶されている。)による情報処理がハードウェア(制御部63)によって具体的に実現されることで、図4に示されるように、制御部63における各機能部として実行され得る。なお、図4においては、単一の制御部63として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御部63を有するように構成してもよく、また、単一の制御部と複数の制御部を組合せてもよい。
【0088】
<管理方法>
本実施形態に係る管理方法は、屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理方法であって、情報管理工程と、気象情報取得工程と、評価工程とを備えるものである。情報管理工程は、物質に対する既済の粉塵防止処理の有無及び粉塵防止処理の種類を含む粉塵防止処理情報を、物質のパイルごとに管理する工程である。また、気象情報取得部は、屋外における未来の予想される気象を示す気象情報を取得する工程である。さらに、評価工程は、粉塵防止処理情報及び気象情報に基づいて、パイルごとに粉塵の発生を評価する工程である。
【0089】
図5は、本実施形態に係る管理方法のフローチャート図である。図5に示すとおり、本実施形態に係る管理方法においては、粉塵防止処理情報を管理する(情報管理工程S1)とともに、気象情報を取得して(気象情報取得工程S2)、これらを入力情報として、パイルごとに粉塵の発生を評価する(評価工程S3)。ここで、情報管理工程S1及び気象情報取得工程S2について、順序の先行は問わず、情報管理工程S1が先であっても、気象情報取得工程S2が先であってもよいし、情報管理工程S1及び気象情報取得工程S2を同時に行ってもよい。
【0090】
なお、本実施形態に係る管理方法においては、処理情報取得工程、水分量情報取得工程、粒子径情報取得工程、水分量情報測定工程、第1出力工程、第2出力工程及び処理実行工程を設けてもよい。これらはそれぞれ、処理情報取得部、水分量情報取得部、粒子径情報取得部、水分量情報測定部、第1出力部、第2出力部及び処理実行部の動作と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0091】
<管理プログラム>
本実施形態に係る管理プログラムは、屋外で管理される、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質の管理プログラムであって、コンピュータを、情報管理部、気象情報取得部及び評価部として機能させるものである。情報管理部、気象情報取得部及び評価部については上述したので、ここでの説明は省略する。
【0092】
本発明は、以上の実施形態には何ら制限されず、適宜変更を加えて実施することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 管理システム
2 管理装置
21 情報管理部
22 気象情報取得部
23 評価部
24 処理情報取得部
25 水分量情報取得部
26 粒子径情報取得部
3 水分量情報測定部又は水分量情報測定装置
4 出力装置
4a 第1出力部
4b 第2出力部
5 処理実行部
61 通信部
62 記憶部
63 制御部
64 通信バス
Y ヤード
P パイル
図1
図2
図3
図4
図5