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特許7159254基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/34 20060101AFI20221017BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C23C16/34
C23C16/44 A
C23C16/44 B
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020157225
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050996
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】清野 篤郎
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186969(JP,A)
【文献】特開2013-076157(JP,A)
【文献】特開2016-063007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0120712(US,A1)
【文献】特開2016-189432(JP,A)
【文献】国際公開第2019/120743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/34
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対して有機リガンドとして炭化水素基を含むガスを供給し、前記基板の表面に炭化水素基を吸着させる工程と、
(b)前記基板に対してハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する工程を有し、
(a)と(b)との間では、パージガスを供給しない
基板処理方法
【請求項2】
前記有機リガンドは、アルキル基を含む請求項1に記載の基板処理方法
【請求項3】
前記アルキル基は、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基のうち少なくともいずれかを含む請求項に記載の基板処理方法
【請求項4】
前記有機リガンドは、アミン基を含む請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項5】
前記有機リガンドとして炭化水素基を含むガスは、金属元素を含む請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項6】
前記有機リガンドとして炭化水素基を含むガスが含む金属元素は、前記ハロゲン元素と金属元素とを含有するガスが含む金属元素とは異なる請求項に記載の基板処理方法
【請求項7】
前記有機リガンドとして炭化水素基を含むガスが含む金属元素は、非遷移金属元素である請求項又はに記載の基板処理方法
【請求項8】
(d)(a)の前に、前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程を更に有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項9】
(e)(a)の後に、前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程を更に有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項10】
(d)(a)の前に、前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程と、
(e)(a)の後に、前記基板に対して前記第2の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(a)と(e)とを複数回行う
請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項11】
前記第2の還元ガスは、前記第1の還元ガスとは異なるガスである請求項乃至10のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項12】
前記第2の還元ガスは、前記第1の還元ガスと同じガスである請求項乃至10のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項13】
(a)では、前記基板に対して有機リガンドとして炭化水素基を含むガスを時分割で供給する請求項1乃至のいずれか一項に記載の基板処理方法
【請求項14】
(b)では、前記有機リガンドが露出した前記基板に対して前記ハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する請求項1に記載の基板処理方法
【請求項15】
(a)基板に対して有機リガンドとしての炭化水素基と非遷移金属元素を含むガスを供給し、前記基板の表面に炭化水素基を吸着させる工程と、
(b)前記基板に対してハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する工程を有する
基板処理方法
【請求項16】
(a)基板に対して有機リガンドとして炭化水素基を含むガスを供給し、前記基板の表面に炭化水素基を吸着させる工程と、
(b)前記基板に対してハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する工程を有し、
(a)と(b)との間では、パージガスを供給しない
半導体装置の製造方法
【請求項17】
(a)基板に対して有機リガンドとしての炭化水素基と非遷移金属元素を含むガスを供給し、前記基板の表面に炭化水素基を吸着させる工程と、
(b)前記基板に対してハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する工程を有する
半導体装置の製造方法
【請求項18】
(a)基板に対して有機リガンドとして炭化水素基を含むガスを供給し、前記基板の表面に炭化水素基を吸着させる手順と、
(b)前記基板に対してハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する手順と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する手順と、を有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する手順を有し
(a)と(b)との間では、パージガスを供給しない手順
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項19】
(a)基板に対して有機リガンドとしての炭化水素基と非遷移金属元素を含むガスを供給し、前記基板の表面に炭化水素基を吸着させる手順と、
(b)前記基板に対してハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給させる手順と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを供給させる手順と、を有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内にハロゲン元素と金属元素とを含有するガス、第1の還元ガス及び有機リガンドとして炭化水素基を含むガスを供給するガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記有機リガンドとして炭化水素基を含むガスを供給する処理と、
(b)前記基板に対して前記ハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する処理と、
(c)前記基板に対して前記第1の還元ガスを供給する処理と、有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する処理を行わせる際に(a)と(b)との間では、パージガスを供給しないように、前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項21】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内にハロゲン元素と金属元素とを含有するガス、第1の還元ガス及び有機リガンドとしての炭化水素基と非遷移金属元素を含むガスを供給するガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記有機リガンドとしての炭化水素基と非遷移金属元素を含むガスを供給する処理と、
(b)前記基板に対して前記ハロゲン元素と金属元素とを含有するガスを供給する処理と、
(c)前記基板に対して前記第1の還元ガスを供給する処理と、有し、
(a)の後、(b)と(c)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する処理を行わせるように、前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAMのワードラインとして例えば低抵抗なタングステン(W)膜が用いられている。また、このW膜と絶縁膜との間にバリア膜として例えば、窒化チタン(TiN)膜が用いられることがある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-66263号公報
【文献】国際公開第2019/058608号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、W膜を形成する溝の埋め込み幅が微細となっており、TiN膜が平坦でないとW膜の体積が減少し、W膜の低抵抗化が難しくなる。
【0005】
本開示は、金属含有膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)基板を処理容器に収容する工程と、
(b)前記基板に対して有機リガンドを含むガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して金属含有ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(b)の後、(c)と(d)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する工程を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、金属含有膜の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A線概略横断面図である。
図3】本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスを示す図である。
図5図5(A)~図5(C)は、図4に示す基板処理シーケンスにおける基板表面の状態を説明するための模式図である。
図6図6(A)は、図4に示す基板処理シーケンスを用いて基板上に形成されたTiN膜表面のTEM画像を示す図である。図6(B)は、比較例における基板処理シーケンスにより基板上に形成されたTiN膜表面のTEM画像を示す図である。
図7】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
図8】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
図9図9(A)~図9(D)は、図8に示す基板処理シーケンスにおける基板表面の状態を説明するための模式図である。
図10】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
図11】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
図12】本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す図である。
図13図13(A)及び図13(B)は、本開示の他の実施形態における基板処理装置の処理炉の概略を示す縦断面図である。
図14】それぞれ異なる基板処理シーケンスによりサンプル1~4の基板上に形成されたTiN膜のTEM画像を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に処理容器を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
アウタチューブ203の内側には、処理容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0014】
処理室201内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0015】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320,330には、開閉弁であるバルブ314,324,334がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320,330のバルブ314,324,334の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520,530がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520,530には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522,532及び開閉弁であるバルブ514,524,534がそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420,430は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0017】
ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。これにより、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420a,430aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0019】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、金属含有ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。
【0020】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、有機リガンドを含むガスである有機リガンド含有ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。
【0021】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、還元ガスが、MFC332、バルブ334、ノズル430を介して処理室201内に供給される。
【0022】
ガス供給管510,520,530からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC512,522,532、バルブ514,524,534、ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0023】
主に、ガス供給管310,320,330、MFC312,322,332、バルブ314,324,334、ノズル410,420,430により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420,430のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310から金属含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により金属含有ガス供給系が構成されるが、ノズル410を金属含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から有機リガンドを含むガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により有機リガンド含有ガス供給系が構成されるが、ノズル420を有機リガンド含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管330から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管330、MFC332、バルブ334により還元ガス供給系が構成されるが、ノズル430を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管330から還元ガスとしてN含有ガスを供給する場合、還元ガス供給系をN含有ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管510,520,530、MFC512,522,532、バルブ514,524,534により不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420a,430aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420a、ノズル430のガス供給孔430aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0025】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420,430に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間で構成された排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0026】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0027】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0028】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送系)として構成されている。
【0029】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0030】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420,430と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0031】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0032】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,512,522,532、バルブ314,324,334,514,524,534、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,332,512,522,532による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,514,524,534の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0035】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
(2)基板処理工程
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、金属含有膜であるTiN膜を形成する工程の一例について、図4及び図5を用いて説明する。TiN膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0037】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)ウエハ200を処理容器に収容する工程と、
(b)ウエハ200に対して有機リガンド含有ガスを供給する工程と、
(c)ウエハ200に対して金属含有ガスを供給する工程と、
(d)ウエハ200に対して第1の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(b)の後、(c)と(d)をそれぞれ1回以上行うことにより、ウエハ200に対して金属含有膜を形成する工程を有する。
【0038】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0039】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)され、処理容器内に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0040】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0041】
[前工程]
(有機リガンド含有ガス供給)
バルブ324を開き、ガス供給管320内に有機リガンド含有ガスを流す。有機リガンド含有ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガス等の不活性ガスを流してもよい。また、ノズル410,430内への有機リガンド含有ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開き、ガス供給管510,530内に不活性ガスを流してもよい。
【0042】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御する有機リガンド含有ガスの供給流量は、例えば0.01~5.0slmの範囲内の流量とする。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~550℃の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0043】
このとき、ウエハ200に対して有機リガンド含有ガスが供給されることとなる。有機リガンド含有ガスとしては、炭化水素基(CH-)を含むガスが用いられ、例えばアルキル基を含むガスであり、例えばメチル基を含むガスであり、金属元素を含むガスである例えばトリメチルアルミニウム((CH33Al)ガス(以下、TMAガスと称する)を用いることができる。有機リガンド含有ガスとして、TMAガスを用いた場合、有機リガンド含有ガスの供給により、図5(A)に示すように、ウエハ200(表面の下地膜)上に、有機リガンドであり、炭化水素基であり、アルキル基であるメチル基(-CH3)が吸着する。また、図5(A)に示すように、ウエハ200(表面の下地膜)上には、メチル基が結合した状態のAl原子が吸着することもある。いずれにしても、有機リガンド含有ガスの供給により、ウエハ200の表面は、メチル基で終端されることとなる。なお、本開示において、「終端」や「吸着」とは、ウエハ200表面の全てが覆われていない状態も含み得る。ガスの供給条件や、ウエハ200の表面状態により、ウエハ200の表面の全てが覆われない場合がある。また、自己制限的に、反応が停止することにより、全てが覆われない場合がある。
【0044】
ここで、有機リガンド含有ガスが含む金属元素は、非遷移金属元素であり、後述する成膜工程における金属含有ガスが含む金属元素とは異なる元素が好ましい。例えば、本実施形態で例示するように、形成する金属含有膜がTiN膜の場合には、有機リガンドを含むガスとして、Alを含むガスを用いる。
【0045】
[成膜工程(金属含有膜形成工程)]
上述した前工程によりウエハ200上に有機リガンド含有ガスを供給した後、以下の第1ステップ~第4ステップを繰り返し行う。すなわち、有機リガンド含有ガスを供給した後、パージガスを供給しないで、以下の第1ステップ~第4ステップを繰り返し行う。すなわち、ウエハ200上に有機リガンドが吸着された状態で、有機リガンドが露出したウエハ200に対して、以下の第1ステップ~第4ステップを繰り返し行う。
【0046】
(金属含有ガス供給、第1ステップ)
バルブ314を開き、ガス供給管310内に金属含有ガスを流す。金属含有ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガス等の不活性ガスを流してもよい。このとき、ノズル420,430内への金属含有ガスの侵入を防止するために、バルブ524,534を開き、ガス供給管520,530内にN2ガスを流してもよい。
【0047】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御する金属含有ガスの供給流量は、例えば0.1~2.0slmの範囲内の流量とする。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~550℃の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。金属含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0048】
このとき、有機リガンド含有ガス由来の有機リガンドであるメチル基が吸着したウエハ200、すなわち、表面がメチル基により終端されたウエハ200に対して金属含有ガスが供給されることとなる。ここで、金属含有ガスとしては、例えばチタン(Ti)を含み、ハロゲン(塩素)を含むガスである四塩化チタン(TiCl4)ガスを用いることができる。金属含有ガスとして、TiCl4ガスを用いた場合、図5(A)の様になる。すなわち、有機リガンドであるメチル基が露出したウエハ200に対してTiCl4ガスが供給される。TiCl4ガスの供給により、図5(B)に示すように、TiCl4ガスに含まれるハロゲン(Cl)と、ウエハ200上に存在するメチル基が反応して、TiClx(xは4より小さい)がウエハ200上に吸着する。つまり、ウエハ200上にTiCl4よりも分子サイズが小さいTiClxが吸着するため、TiCl4が吸着する場合に比べて、立体障害が少なくなる。すなわち、分子サイズの小さいTiClxがウエハ200(表面の下地膜)上に吸着され、ウエハ200上のTi元素の吸着密度を増加させることができ、Ti元素の含有率の高いTi含有層を形成することができる。なお、この時、副生成物として、クロロメタン(CH3Cl)が生じる。この副生成物の大部分は、ウエハ200上から脱離する。
【0049】
(パージ、第2ステップ)
金属含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~10秒後にバルブ314を閉じ、金属含有ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の金属含有ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ514,524,534を開いたままとして、パージガスとしての不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の金属含有ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する効果を高めることができる。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~10slmとする。
【0050】
(第1の還元ガス供給、第3ステップ)
パージを開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~10秒後にバルブ514,524,534を閉じて、不活性ガスの処理室201内への供給を停止する。このときバルブ334を開き、ガス供給管330内に、第1の還元ガスを流す。第1の還元ガスは、窒素含有ガスとも称する。第1の還元ガスは、MFC332により流量調整され、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、第1の還元ガスが供給される。なお、このとき同時にバルブ534を開き、ガス供給管530内に不活性ガスを流してもよい。また、ノズル410,420内への第1の還元ガスの侵入を防止するために、バルブ514,524を開き、ガス供給管510,520内に不活性ガスを流してもよい。
【0051】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC332で制御する第1の還元ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。第1の還元ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0052】
このとき、ウエハに対して第1の還元ガスが供給されることとなる。ここで、第1の還元ガスとしては、例えば窒素(N)を含むN含有ガスとしての例えばアンモニア(NH3)ガスを用いることができる。第1の還元ガスとして、NH3ガスを用いた場合の反応について、図5(C)に示す。NH3ガスは、図5(C)に示すように、ウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiN層が形成される。また、置換反応の際には、HCl、NH4Cl、H2等の反応副生成物が生じる。
【0053】
(パージ、第4ステップ)
第1の還元ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~60秒後にバルブ334を閉じて、第1の還元ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応もしくは金属含有層の形成に寄与した後の第1の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ514,524,534を開いたままとして、パージガスとしての不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の第1の還元ガスや上述の反応副生成物を処理室201内から排除する効果を高めることができる。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~10slmとする。
【0054】
すなわち、処理室201内に残留する未反応もしくは金属含有層の形成に寄与した後の第1の還元ガスや上述の反応副生成物を処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0055】
(所定回数実施)
上記した第1ステップ~第4ステップを順に行うサイクルを所定回数(N回)、1回以上実行することにより、ウエハ200上に、所定の厚さの、金属含有層を形成して金属含有膜を形成する。ここでは、金属含有膜として、TiN膜が形成される。
【0056】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510~530のそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0057】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0058】
図6(A)は、上述した基板処理シーケンスを用いてウエハ200上に形成されたTiN膜を透過型電子顕微鏡(TEM)用いて投影したTEM画像を示す図である。図6(B)は、比較例に係る基板処理シーケンスを用いてウエハ200上に形成されたTiN膜表面のTEM画像を示す図である。それぞれ、同一の条件で、シリコン酸化(SiO2)膜が形成されたウエハ200上に、20Åの膜厚のTiN膜を形成した。
【0059】
比較例に係る基板処理シーケンスでは、ウエハ200に対して成膜工程を行う前に、上述した前工程を行わなかった。比較例に係る基板処理シーケンスにより形成された、有機リガンドを含むガスを供給しないで形成されたTiN膜は、図6(B)に示すように、SiO2膜上に形成すると、20Å程度の薄膜では連続膜にならずに島状に成長した。すなわち、ウエハ200上へのTiCl4の吸着が不十分となり、被覆率が悪かった。
【0060】
これに対して、図6(A)に示すように、本実施形態における基板処理シーケンスにより形成されたTiN膜は、比較例に係る基板処理シーケンスにより形成されたTiN膜と比較して、結晶粒が小さく高密度で連続して形成され、被覆率が高かった。
【0061】
つまり、成膜工程前に有機リガンドを含むガスを供給することにより、ウエハ200上へのTiCl4の吸着を促進させることができ、Ti元素の吸着密度を高めることができ、Ti元素の含有率の高いTiN膜を形成することができることが確認された。すなわち、TiN膜の表面に形成されるW膜を低抵抗化することが可能となることが確認された。
【0062】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)金属含有膜の特性を向上させることができる。
(b)金属含有膜を連続的に成長させることができる。ここで連続的とは、金属含有膜の材料の結晶が連なっていること、結晶の間隔が小さいこと等を意味する。
(c)高密度で平坦性を有する金属含有膜を形成することができる。
(d)被覆率を向上させることができ、金属含有膜上に形成される他の金属含有膜の抵抗率を低減させることができる。
(e)金属含有ガスの金属元素の吸着密度を増加させることが可能となる。
【0063】
(4)他の実施形態
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0064】
上記実施形態では、前工程として有機リガンド含有ガスを連続的に供給する例について説明したが、これに限らず、異なるガスを用いる場合にも適用できる。
【0065】
(変形例1)
図7は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの変形例を示す。本変形例では、前工程として、有機リガンド含有ガスを供給する前に、第2の還元ガスを供給する。すなわち、成膜工程を行う前に、前工程として、ウエハ200に対して、第2の還元ガスを供給する工程と、有機リガンド含有ガスを供給する工程とを行う。このとき、第2の還元ガス供給と有機リガンド含有ガス供給の間と、前工程と成膜工程の間に、パージガスを供給しない。この場合であっても、上述した図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。なお、本変形例においては、第1の還元ガスと第2の還元ガスは、同じ種類のガスが用いられる。
【0066】
本変形例において示すように、前工程において有機リガンド含有ガス(例えばTMAガス)を供給する前に、ウエハ200に対して第2の還元ガス(例えばNH3ガス)を供給することにより、ウエハ200上に、NH結合(NH終端)と、H結合(H終端)の少なくともいずれかを形成することができる。これらのいずれかの結合が生じることにより、ウエハ200上の有機リガンド含有ガスの吸着量を増加させることができる。そして、これにより、ウエハ200上の有機リガンドであるメチル基が吸着する量を増加させて、有機リガンドであるメチル基が吸着したウエハ200に対して金属含有ガスが供給される。すなわち、有機リガンドであるメチル基が露出したウエハ200に対して金属含有ガスが供給される。ここで、金属含有ガスが、TiCl4ガスの場合、TiCl4ガスの供給により、TiCl4ガスに含まれるハロゲン(Cl)と、ウエハ200上に存在するメチル基が反応して、TiClx(xは4より小さい)がウエハ200上に吸着する。つまり、TiCl4が吸着する場合に比べて、立体障害が少ないTiClxがウエハ200(表面の下地膜)上に吸着され、ウエハ200上のTi元素の吸着密度を増加させることができ、Ti元素の含有率の高いTi含有層を形成することができる。また、前工程における第2の還元ガスとして、成膜工程における第1の還元ガスと同じNH3ガスを用いることで、処理容器に接続されるガス供給管の数を少なくすることができる。
【0067】
(変形例2)
図8は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの他の変形例を示す。本変形例では、前工程として、有機リガンド含有ガスを供給する前後に、第2の還元ガスを供給し、有機リガンド含有ガスの供給と第2の還元ガスの供給とをそれぞれ1回以上行い、その後に、上述した成膜工程を行う。すなわち、成膜工程を行う前に、前工程として、ウエハ200に対して、第2の還元ガスを供給する工程を行った後に、有機リガンド含有ガスを供給する工程と、第2の還元ガスを供給する工程と、を所定回数(M回)であって1回以上行う。このとき、第2の還元ガス供給と有機リガンド含有ガス供給の間と、前工程と成膜工程との間に、パージガスを供給しない。この場合であっても、上述した図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0068】
本変形例においては、図9(A)に示すように、前工程においてウエハ200に対して有機リガンド含有ガスとしてTMAガスを供給する前に、第2の還元ガスとしてNH3ガスを供給することにより、ウエハ200上にNH結合(NH終端)と、H結合(H終端)の少なくともいずれかを形成することができる。NH終端やH終端を形成することにより、ウエハ200上の有機リガンド含有ガスの分子(TMA)の吸着量を増加させることができる。即ち、ウエハ200上の有機リガンドを増やすことができる。
【0069】
そして、図9(B)及び図9(C)に示すように、TMAが吸着されたウエハ200に対してNH3ガスを供給する。これにより、ウエハ200上の未結合サイトには、NH結合(NH終端)と、H結合(H終端)の少なくともいずれかが形成される。また、ウエハ200上に形成された有機リガンドの一部とNH3が反応し、Al-(CH3xから、有機リガンドの一部を除去(例えば、CH3を除去)することができ、分子数の小さい有機リガンドを生成することができる。例えば、Al-(CH3yの様なリガンドである。ここで、yはxより小さい。例えば、x=2、y=1である。なお、TMAとNH3との反応により一部はAlNとなる。
【0070】
本変形例において示すように、前工程において、ウエハ200に対して、NH3ガスを供給する工程を行った後に、TMAガスを供給する工程と、NH3ガスを供給する工程と、を所定回数(M回)であって1回以上行うことにより、ウエハ200上の有機リガンド、NH結合、H結合の数を増やすことができる。また、分子数の小さい有機リガンドを生成することができる。ここで、分子数の小さい有機リガンドは、低分子数有機リガンドとも呼び、具体的には、炭化水素基(CH-)が3つ以下のリガンドであり、好ましくは、2つ以下のリガンドである。
【0071】
そして、このような表面状態のウエハ200に対してTiCl4ガスが供給されることにより、図9(D)に示すように、TiCl4ガスに含まれるClと、ウエハ200上に存在するNH結合や有機リガンドが反応して、ウエハ200上にTiCl4からClが少なくなった状態のTiClx(xは4より小さい)が吸着する。このため、TiCl4が吸着する場合に比べて、立体障害が少ないTiClxがウエハ200(表面の下地膜)上に形成され、ウエハ200上のTi元素の吸着密度を増加させることができ、Ti元素の含有率の高いTi含有層を形成することができる。また、前工程における第2の還元ガスとして、成膜工程における第1の還元ガスと同じNH3ガスを用いることで、処理容器に接続されるガス供給管の数を少なくすることができる。また、ここでは、ウエハ200上には、分子数の小さい有機リガンドが生成されているため、有機リガンド自体が立体障害になることを抑制することができ、TiClxの吸着を促進することができる。
【0072】
(変形例3)
図10は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの他の変形例を示す。本変形例では、前工程において、有機リガンド含有ガスを時分割で供給する。すなわち、前工程として、有機リガンド含有ガスを時分割供給した後に、パージガスを供給しないで、上述した成膜工程を行う。分割供給することにより、ウエハ200上に有機リガンドを隙間なく吸着させることができる。この場合であっても、上述した図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0073】
(変形例4)
図11は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスの他の変形例を示す。本変形例では、前工程において、有機リガンド含有ガスとして、アミン含有有機リガンドガス(本開示では単にアミン含有ガスとも呼ぶ)を供給する。アミン含有ガスは、アミン基(NH-)を有する有機リガンドを含むガスである、例えばトリジメチルアミノシラン(((CH32N)3SiH)ガス(以下、TDMASガスと称する)を供給する。前工程としてアミン含有ガスを供給した後に、パージガスを供給しないで、上述した成膜工程を行う。この場合であっても、上述した図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0074】
本変形例において、前工程において、有機リガンドを含むガスとして、アミン基を有する有機リガンドを含むガスを用いることにより、ウエハ200上のアミン基であるNH結合を増加させることができる。そして、NH結合が吸着したウエハ200に対してTiCl4ガスが供給される。TiCl4ガスの供給により、TiCl4ガスに含まれるClと、ウエハ200上に存在するNH結合(NH終端)が反応して、ウエハ200上にTiClx(xは4より小さい)が吸着する。すなわち、TiCl4より分子数が少なく立体障害が少ないTiClxがウエハ200(表面の下地膜)上に形成され、Tiの吸着量の多く連続したTiN膜が形成される。なお、有機リガンドを含むガスは、高分子材料の場合には有機リガンドが立体障害として機能してしまうため、低分子材料が好ましい。
【0075】
また、有機リガンド含有ガスとして、Si等のIVA族の元素を含む材料がある。この材料の内、IVA族元素と炭化水素(CH-)基が、直接結合している材料では、炭化水素(CH-)基とIVA族元素との結合エネルギーが、上述の様な金属元素(非遷移金属元素)と炭化水素基との結合エネルギーよりも大きいことが考えられ、本開示の様な効果が得られにくいことがある。例えば、-Si-(CH3xの様な有機リガンドでは、SiとCH3の結合が切れにくく、TiCl4ガスを供給しても-Si-(CH3xと反応しないことが考えられる。故に、有機リガンドを含むガスとしては、上述の様に金属元素を含むガスが好ましい。更に好ましくは、上述の様に非遷移金属元素を含む有機リガンドを含むガスを用いる。即ち、金属元素(非遷移金属元素)を含む有機リガンドを含むガスを用いることにより、上述の効果をより得ることが可能となる。また、金属元素は、遷移金属ではなく、非遷移金属であることが望ましい。遷移金属として例えばHf,Zr等の元素を含むガスを用いた場合、前工程において、誘電率の高い誘電体を形成してしまうことが考えられる。このような誘電体を形成した場合、半導体デバイスの特性に影響を与える可能性がある。また、Tiの様な遷移金属では、後述の様な影響が考えられる。
【0076】
また、上記実施形態では、前工程で用いる有機リガンドを含むガスに含まれる金属元素と、成膜工程における金属含有ガスが含む金属元素とは異なる元素である形態を示したが、この様に異なる金属元素のガスを用いることにより、成膜工程で形成する金属含有膜が、前工程で形成される金属含有層の特性の影響を受けることを抑制することができる。例えば、前工程において、成膜工程と同様のTiを含むガスである場合、特性の悪いTiN膜が形成されてしまい、成膜工程で形成するTiN膜の特性が悪化することが考えられる。故に、成膜工程と、前工程で用いるガスに含まれる金属元素は異なる元素であることが望ましい。
【0077】
また、上記実施形態では、前工程において用いる第2の還元ガスと、成膜工程において用いる第1の還元ガスを、同じNH3ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、前工程において用いる第2の還元ガスと、成膜工程において用いる第1の還元ガスを、異なるガスを用いてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、前工程と成膜工程の間で、パージ工程を行わない形態を示したが、これに限るものでは無く、適宜前工程と、成膜工程の間でパージ工程を行っても良い。前工程と成膜工程の間でパージ工程を行うことにより、処理室201内に存在する、副生成物や、余分なガスを除去することができ、成膜工程で形成される膜の特性を向上させることができる。
【0079】
(変形例5)
例えば、図12に示すように、前工程として、有機リガンド含有ガスを供給する工程と、第2の還元ガスを供給する工程と、をそれぞれ1回以上行った後、成膜工程として金属含有ガスとしてモリブデンジクロリドジオキシド(MoO2Cl2)ガスを供給する工程と、第1の還元ガスとして水素(H2)ガスを供給する工程と、をそれぞれ1回以上行って、ウエハ200上に金属含有膜としてMo膜を形成する場合においても、上述した図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0080】
また、上記実施形態では、前工程において、有機リガンドを含むガスとして例えば、炭化水素基であり、アルキル基であり、メチル基を含むガスであるTMAガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、有機リガンドを含むガスとして、アルキル基であるエチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基のうち少なくともいずれかを含むガスを用いる場合にも、好適に適用できる。
【0081】
また、上記実施形態では、金属含有ガスとしてTiとClを含むTiCl4ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、金属含有ガスとしてモリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、タングステン(W)等とハロゲンを含むガスを用いる場合にも、好適に適用できる。
【0082】
また、上記実施形態では、金属含有膜としてTiN膜を形成する場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、金属含有膜としてMo膜、Ru膜、Cu膜、W膜、窒化珪化チタン(TiSiN)膜等を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0083】
また、上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0084】
例えば、図13(A)に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本開示は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内にガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、上述の金属含有ガスを供給するガス供給ポート332aと、上述の還元ガスを供給するガス供給ポート332bと、上述の有機リガンドを含むガスを供給するガス供給ポート332cが接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の金属含有ガス供給系と同様の金属含有ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332bには、上述の実施形態の還元ガス供給系と同様の還元ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332cには、上述の有機リガンド含有ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内にガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0085】
また例えば、図13(B)に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本開示は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、上述の金属含有ガスを供給するガス供給ポート432aと、上述の還元ガスを供給するガス供給ポート432bと、上述の有機リガンドを含むガスを供給するガス供給ポート432cが接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の金属含有ガス供給系と同様の金属含有ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432bには、上述の実施形態の還元ガス供給系と同様の還元ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432cには、上述の実施形態の有機リガンド含有ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0086】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができる。
【0087】
これらの各種薄膜の形成に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0088】
また、本開示は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本開示に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本開示に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0089】
また、本開示は、例えば、3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAM等のワードライン部分に用いることができる。
【0090】
以上、本開示の種々の典型的な実施形態を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0091】
以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0092】
上述した基板処理装置10を用いて、上述した図4の基板処理シーケンスにより、20Åの厚さのTiN膜をSiO2基板上に形成したサンプル1と、上述した図7の基板処理シーケンスにより、20Åの厚さのTiN膜をSiO2基板上に形成したサンプル2と、上述した図8の基板処理シーケンスにより、20Åの厚さのTiN膜をSiO2基板上に形成したサンプル3と、成膜工程の前に前工程を行わない基板処理シーケンスにより、20Åの厚さのTiN膜をSiO2基板上に形成したサンプル4を用意した。図14は、サンプル1~4のTiN膜の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)用いて投影したTEM画像を示す図である。
【0093】
図14に示すように、サンプル1~サンプル3のTiN膜は、サンプル4のTiN膜と比較して、SiO2基板上のTiNの粒子比が高く高密度であることが確認された。すなわち、TiN膜を形成する前に前工程を行って、基板に対して有機リガンドを含むガスを供給した後に成膜工程を行って形成されたTiN膜の方が、前工程を行わないで形成されたTiN膜と比較して、SiO2基板上のTiNの粒子比が高く高密度であって平坦性を有することが確認された。
【0094】
すなわち、TiN膜を形成する前に、有機リガンドを含むガスを供給することにより、ウエハ表面上へのTi元素の吸着を促進させることが可能となり、薄膜で被覆率の高いTiN膜を形成することができることが確認された。
【0095】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0096】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)基板を処理容器に収容する工程と、
(b)前記基板に対して有機リガンドを含むガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して金属含有ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(b)の後、(c)と(d)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0097】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
前記有機リガンドは、炭化水素基を含む。
【0098】
(付記3)
付記1又は2に記載の方法であって、
前記有機リガンドは、アルキル基を含む。
【0099】
(付記4)
付記3に記載の方法であって、
前記アルキル基は、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基のうち少なくともいずれかを含む。
【0100】
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記有機リガンドは、アミン基を含む。
【0101】
(付記6)
付記1~5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記有機リガンドを含むガスは、金属元素を含む。
【0102】
(付記7)
付記6に記載の方法であって、
前記有機リガンドを含むガスが含む金属元素は、前記金属含有ガスが含む金属元素とは異なる。
【0103】
(付記8)
付記6又は7に記載の方法であって、
前記有機リガンドを含むガスが含む金属元素は、非遷移金属元素である。
【0104】
(付記9)
付記1~8のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)と(c)の間では、パージガスを供給しない。
【0105】
(付記10)
付記1~9のいずれか1項に記載の方法であって、
(e)(b)の前に、前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程を更に有する。
【0106】
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(f)(b)の後に、前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程を更に有する。
【0107】
(付記12)
付記1~9のいずれか1項に記載の方法であって、
(e)(b)の前に、前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程と、
(f)(b)の後に、前記基板に対して前記第2の還元ガスを供給する工程と、を有し、
(b)と(f)とを複数回行う。
【0108】
(付記13)
付記10~12のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第2の還元ガスは、前記第1の還元ガスとは異なるガスである。
【0109】
(付記14)
付記10~12のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第2の還元ガスは、前記第1の還元ガスと同じガスである。
【0110】
(付記15)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)では、前記基板に対して有機リガンドを含むガスを時分割で供給する。
【0111】
(付記16)
付記1に記載の方法であって、
(c)では、前記有機リガンドが露出した前記基板に対して前記金属含有ガスを供給する。
【0112】
(付記17)
本開示の他の態様によれば、
(a)基板処理装置の処理容器に基板を収容する手順と、
(b)前記基板に対して有機リガンドを含むガスを供給する手順と、
(c)前記基板に対して金属含有ガスを供給する手順と、
(d)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する手順と、を有し、
(b)の後、(c)と(d)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する処理をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【0113】
(付記18)
本開示のさらに他の態様によれば、
処理容器と、
前記処理容器内に基板を搬送する搬送系と、
前記処理容器内に金属含有ガス、第1の還元ガス及び有機リガンドを含むガスを供給するガス供給系と、
(a)前記基板を前記処理容器に収容する処理と、
(b)前記基板に対して有機リガンドを含むガスを供給する処理と、
(c)前記基板に対して金属含有ガスを供給する処理と、
(d)前記基板に対して第1の還元ガスを供給する処理と、有し、
(b)の後、(c)と(d)をそれぞれ1回以上行うことにより、前記基板に対して金属含有膜を形成する処理を行わせるように、前記搬送系及び前記ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0114】
10 基板処理装置
121 コントローラ
200 ウエハ(基板)
201 処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14