(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】コンポーネントの位置を周波数に基づいて決定する測定アセンブリ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20221017BHJP
G03F 7/20 20060101ALN20221017BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020564422
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061038
(87)【国際公開番号】W WO2019223968
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】102018208147.6
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マティアス マンガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス コニゲル
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴォグラー
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0157598(US,A1)
【文献】特表2016-502665(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0050789(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0090936(KR,A)
【文献】米国特許第7022978(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 9/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系のコンポーネントの位置を周波数に基づいて決定する測定アセンブリであって、
固定の第1の共振ミラーと、前記コンポーネントに割り当てられた可動の測定対象と、固定の第2の共振ミラーとを含む、少なくとも1つの光共振器を備え、前記第2の共振ミラーは、
前記測定対象からの測定ビームが前記測定対象へ入射する経路と同一の経路で前記前記第2の共振ミラーへ戻るように前記測定ビームを反射して逆行させる反転ミラー(130、330、430、530)により形成される測定アセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の測定アセンブリであって、前記共振器は、測定ビームをそのまま平行にオフセットして方向を反転させるレトロリフレクタ(120)をさらに含むことを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載の測定アセンブリであって、前記測定対象は前記レトロリフレクタにより形成されることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の測定アセンブリであって、前記測定対象は平面ミラー(340、440、540)により形成されることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、偏光ビームスプリッタ(450)を含むことを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載の測定アセンブリであって、前記偏光ビームスプリッタ(450)からの測定ビームが前記測定対象に対して垂直に入射することを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、ケプラー配置の2つのレンズ素子(521、523)を含む光学群(520)を含むことを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載の測定アセンブリであって、前記光学群(520)は、前記2つのレンズ素子(521、523)の共通の焦点面に開口を有するミラー(522)を含み、該ミラーは、前記測定対象から戻るビーム経路を反射することを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、前記レトロリフレクタは偏光保持型に構成されることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、前記第1の共振ミラーは、前記共振器のライトフィールドが安定に閉じ込められるような曲率を有することを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、前記第1の共振ミラーはキャッツアイミラーとして構成されることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、該測定アセンブリは、前記光共振器の共振器モードに安定化した少なくとも1つの波長可変レーザ(601、801、1001、1101)を備えることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項13】
請求項12に記載の測定アセンブリであって、該測定アセンブリは、Pound-Drever-Hall法に従って前記波長可変レーザ(601、801、1001、1101)を安定化させるように構成された制御ループを備えることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の測定アセンブリであって、前記少なくとも1つの波長可変レーザ(601、801、1001、1101)のレーザ放射の周波数を決定するための少なくとも1つのフェムト秒レーザ(803、1001、1103)を備えることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、周波数標準(806、1006、1106)、特にガスセルをさらに備えることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、絶対測長を実現するために、前記光共振器の既知の周波数間隔の異なる共振器モードに安定化させることができる2つの波長可変レーザ(1001、1012)を備えることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項17】
請求項16に記載の測定アセンブリであって、ビート周波数解析ユニット(1005、1009)が前記2つの可変波長レーザ(1001、1012)のそれぞれに割り当てられることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、前記少なくとも1つの可変波長レーザ(1101)が発生したレーザビームから分岐した部分ビームの場合に周波数シフトを実現するための音響光学変調器(1114)を備えることを特徴とする測定アセンブリ。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の測定アセンブリであって、周波数に基づく測長用の6つの光共振器が、6自由度の位置決定のために前記コンポーネントに割り当てられることを特徴とする測定アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年5月24日付けの独国特許出願第10 2018 208 147.6号の優先権を主張する。上記独国出願の内容を参照により本願の本文にも援用する。
【0002】
本発明は、特にマイクロリソグラフィ用光学系のコンポーネントの位置を周波数に基づいて決定する測定アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路又はLCD等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照射デバイス及び投影レンズを備えたいわゆる投影露光装置で実行される。この場合、照射デバイスにより照射されたマスク(レチクル)の像を、投影レンズにより、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影レンズの像平面に配置された基板(例えばシリコンウェーハ)に投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
EUV領域、すなわち15nm未満(例えば、約13nm又は約7nm)の波長用に設計した投影露光装置では、適当な光透過屈折材料が利用できないため、ミラーを結像プロセス用の光学コンポーネントとして用いる。
【0005】
EUV用に設計したこのような投影レンズの動作中には、通常はマスク及びウェーハを走査プロセスで相互に対して移動させるが、収差及びそれに伴う結像結果の不良を回避又は少なくとも低減するために、全6自由度で部分的に可動であるミラーの位置を相互に対してもマスク及び/又はウェーハに対しても高精度で設定及び維持しなければならない。この位置決定中に、例えば1メートルの経路長でピコメートル(pm)範囲の測長精度が要求され得る。
【0006】
個々のレンズミラーの位置及びウェーハ又はウェーハステージ及びレチクル面の位置を測定するには、多様な手法が従来既知である。干渉測定アセンブリのほかに、光共振器を用いた周波数に基づく位置測定もここでは知られている。
【0007】
特許文献1から見て取れる、例えば
図12に示す従来の配置構成(set-up)では、ファブリー・ペロー共振器の形式の共振器152が、2つの共振ミラー154及び155を備え、第1の共振ミラー154は、投影露光装置の投影レンズのハウジングに連結固定された測定フレームの形態の基準素子140に固定され、(「測定対象」としての)第2の共振ミラー155はEUVミラーMに固定されて、EUVミラーMの位置に関して測定される。実際の距離測定デバイスは、光周波数について調整可能な放射源156を備え、放射源156は、入力結合放射158を生成し、入力結合放射線158は、ビームスプリッタ162を通過し、光共振器152に結合される。その場合、放射源156は、放射源156の光周波数が、光共振器152の共振周波数に調整され、そのため上記共振周波数に結合されるように、結合デバイス160によって制御される。ビームスプリッタ162を介して取り出された入力結合放射線158は、光周波数測定デバイス164によって分析され、光周波数測定デバイス164は、例えば、高い精度で絶対光周波数を測定する周波数コム発生器132を備え得る。EUVミラーMの位置がx方向に変化すると、共振ミラー154と155との間の距離と共に光共振器152の共振周波数も変化し、そのため光共振器152の共振周波数への調整可能な放射源156の周波数の結合により、入力結合放射線158の光周波数も変化し、これはさらに周波数測定デバイス164によって直接記録される。
【0008】
例えば
図12に示す距離測定中の光共振器の機能に不可欠なのは、第1に、光共振器で固有モードが形成され得るように、共振器内の測定ビームが共振器内で(上記測定ビームが共振器により形成されたキャビティから出ることなく)できる限り多くの循環回数を達成できることである。さらに、同じく不可欠なのは、共振器経路の入力にある外部放射フィールド(external radiation field)(「入力結合場(input coupling field)」)を光共振器のモード場(「共振器場(resonator field)」)に結合できることである。この場合、上記結合に特有の結合効率は、入力結合場と共振器フィールドとの重なり積分により規定され、高い結合効率を得るために入力結合場及び共振器場が全ての関連パラメータにおいてできる限りよく対応しなければならない。
【0009】
実際には、コンポーネント又はミラーの位置の測定時の距離測定に光共振器を用いると、ミラーに配置された測定対象(当該測定対象は、例えばレトロリフレクタ又は平面ミラーの形態で構成され得る)の移動が実際の測定方向に沿ってだけでなく全6自由度のうち他の自由度でも生じ得ることから、問題が起こり得る。測定方向に沿ったものでないこのような(寄生的な)移動、例えば測定対象の意図的若しくは非意図的な傾斜又は横変位により、位置及び角度に関して、共振器のモードがいわば「通る」主光線の「ドリフト」が起こるという影響があり得る結果として、入力結合場への共振器場の十分な結合が得られなくなる。
【0010】
ビーム方向ずれについてここで課される厳しい要件(当該要件は、例えば主光線のビームベクトルの角度ずれが0.1未満であることを求め得る)を考えれば、周波数に基づく位置決定中に測定対象の傾斜又は横変位が効果を生じさせないことを保証することは厳しい課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許出願公開第10 2012 212 663号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述した問題を回避しつつ高精度の位置決定を可能にする、特にマイクロリソグラフィ用光学系のコンポーネントの位置を周波数に基づいて決定する測定アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立特許請求項1の特徴により達成される。
【0014】
特にマイクロリソグラフィ用光学系のコンポーネントの位置を周波数に基づいて決定する測定アセンブリは、
固定の第1の共振ミラーと、コンポーネントに割り当てられた可動の測定対象と、固定の第2の共振ミラーとを含む、少なくとも1つの光共振器
を備え、第2の共振ミラーは、測定対象からの測定ビームを反射して逆行させる(reflects back on itself)反転ミラーにより形成される。
【0015】
一実施形態によれば、共振器は、測定ビームをそのまま平行にオフセットして方向を反転させるレトロリフレクタをさらに含む。この場合、上記レトロリフレクタは、キューブコーナレトロリフレクタ(中空又はガラス体レトロリフレクタ)として、又はキャッツアイレトロリフレクタ(例えば、焦点面にミラーが配置されたフーリエレンズ素子を有する)として構成され得る。
【0016】
本発明は、反転ミラーの位置設定により、光共振器内で測定ビームが進む経路の通過を繰り返すという概念に特に基づく。光路の逆進(invertibility)の原理を用いると、このようにして被測定コンポーネント及び/又は当該コンポーネントに割り当てられた測定対象に関する測定方向には作用しない横変位又は傾斜が、周波数に基づく位置決定中に効果を生じさせないか又は測定結果に影響を及ぼさないままであることが保証される。
【0017】
換言すれば、測定アームでの反転ミラーの本発明による使用により達成されるのは、被測定コンポーネントに割り当てられた測定対象の横変位又は傾斜に関係なく、上記反転ミラーに到達する測定ビームが反射されて逆行することである。したがって、上記測定ビームは測定対象を介して同一経路上を戻り、その結果として、測定アーム(測定軸)の方向に沿って作用しない自由度の変化が測定に対して及ぼす影響が完全に排除される。
【0018】
したがって、測定方向に対して横方向の被測定コンポーネントに割り当てられた測定対象の横変位又は傾斜(距離測定により直接検出されず、この点で「寄生的な移動」とも称し得る)は、本発明による距離測定中には結果に関与しなくなる。それゆえ、本発明による測定アセンブリは上記寄生的な移動に関して影響を受けにくくなり、その結果として、上記測定対象の位置の安定制御が不可能であるか又はそれに関連するコストを回避しようとする状況で高精度の位置測定を実現することができる。
【0019】
一実施形態によれば、測定対象はレトロリフレクタにより形成される。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、測定対象は平面ミラーにより形成される。
【0021】
一実施形態によれば、測定アセンブリは偏光ビームスプリッタを備える。この場合、特に、さらに詳細に後述するように、偏光ビームスプリッタを用いてビーム経路が光軸上に直接折り曲げられることにより、平面ミラーとして具現された測定対象に対する垂直入射を達成することができる。
【0022】
一実施形態によれば、偏光ビームスプリッタからの測定ビームは、測定対象に対して垂直に入射する。
【0023】
一実施形態によれば、測定アセンブリは、ケプラー配置の2つのレンズ素子を含む光学群を備える。
【0024】
一実施形態によれば、光学群は、上記2つのレンズ素子の共通の焦点面に開口を有するミラーを含み、当該ミラーは、測定対象から戻るビーム経路を反射する。
【0025】
一実施形態によれば、レトロリフレクタは偏光保持型に構成される。
【0026】
一実施形態によれば、第1の共振ミラーは、共振器のライトフィールドが安定に閉じ込められるような曲率を有する。
【0027】
一実施形態によれば、第1の共振ミラーはキャッツアイミラーとして構成される。この場合、好ましくは、共振器におけるフィールド閉じ込め(field confinement)に必要な波面曲率を生成するために、上記ミラーは、レンズ素子の焦点面に対して規定通りにデフォーカスされるように配置される。
【0028】
一実施形態によれば、測定アセンブリは、光共振器の共振器モードに安定化させた少なくとも1つの波長可変レーザを備える。
【0029】
一実施形態によれば、測定アセンブリは、Pound-Drever-Hall法に従って波長可変レーザを安定化させるよう構成された制御ループを備える。
【0030】
一実施形態によれば、測定アセンブリは、少なくとも1つの波長可変レーザのレーザ放射の周波数を決定するための少なくとも1つのフェムト秒レーザを備える。
【0031】
一実施形態によれば、測定アセンブリは、周波数標準、特にガスセルをさらに備える。
【0032】
一実施形態によれば、測定アセンブリは、絶対測長を実現するために、光共振器の既知の周波数間隔の異なる共振器モードに安定化させることができる2つの波長可変レーザを備える。この場合、ビート周波数解析ユニットを上記2つの波長可変レーザのそれぞれに割り当てることができる。
【0033】
光共振器の既知の周波数間隔の異なる共振器モードに安定化させることができる2つの波長可変レーザを有する構成により、さらに詳細に後述するように、例えば共振器モードに安定化させた波長可変レーザとフェムト秒レーザとの間のビート周波数の周期的なダイヤモンドパターンを表すスペクトルで起こる、ダイヤモンドパターンのセル境界の通過のカウント方向に関する従来の曖昧性の問題を考慮することが可能となる。特に、本発明による上記構成では、2つの波長可変レーザのレーザ周波数は、ビート周波数の2つの交差したグリッドを有し、これに基づいて、同じく後述するように、上記カウント方向の曖昧性を除去することができる。
【0034】
一実施形態によれば、測定アセンブリは、波長可変レーザが発生したレーザビームから分岐した部分ビームの場合に周波数シフトを実現するための音響光学変調器を備える。
【0035】
一実施形態によれば、周波数に基づく測長用の6つの光共振器が、6自由度で位置決定するためにコンポーネントに割り当てられる。
【0036】
一実施形態によれば、コンポーネントはミラーである。
【0037】
一実施形態によれば、光学系はマイクロリソグラフィ投影露光装置である。
【0038】
本発明のさらに他の構成は、説明及び従属請求項から得ることができる。
【0039】
添付図面に示す例示的な実施形態に基づいて、本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1a】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図1b】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図1c】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図3a】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図3b】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図3c】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図4a】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図4b】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図5a】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図5b】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図5c】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図5d】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図7】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図8】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図9a】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図9b】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図10】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図11】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
【
図12】周波数に基づく位置決定用の測定アセンブリの従来の配置構成を説明する概略図を示す。
【
図13】EUVでの動作用に設計したマイクロリソグラフィ投影露光装置の可能な配置構成を説明する概略図を示す。
【
図14】負荷消散支持構造体(load-dissipating carrying structure)及びそれから独立して設けられた測定構造体を有する配置構成におけるミラーでの本発明による測定路の実現の可能性を説明する概略図を示す。
【
図15】6自由度のミラーの位置の決定の可能性を説明する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1a及び
図1bは、本発明の例示的な実施形態における測定アセンブリの配置構成及び機能を説明する概略図を示す。
【0042】
図1aによれば、ユニット101(その配置構成及び機能は
図6~
図11を参照してさらに詳細に説明する)及び光ファイバ102を介して固定の曲面共振ミラー110を通して共振器に入ってから、自由空間路Aを通過した後に、測定ビームは軸外で(測定対象としての)レトロリフレクタ120に入射し、平行にオフセットして反射される。自由空間路Bを通過した後に、測定ビームは、ビーム伝播方向に対して垂直に位置付けられた反転ミラー130により、ビームオフセットされずに反射されて逆行する。レトロリフレクタ120を含めて自由空間路B及びAを再度通過した後に、測定ビームは、固定の曲面共振ミラー110に再度入射し、それにより循環を閉じる。
【0043】
ビーム伝播方向に対して垂直に位置付けられた反転ミラー(「再循環ミラー(recirculation mirror)」)130での反射後に、測定ビームは同様に逆行して戻り、結果として「光路の逆進」の原理を用いて、測定対象を形成するレトロリフレクタ120の横変位に伴うビームオフセットがゼロに補償される。
【0044】
図1bに示す実施形態が
図1aのものと異なる点は、焦点面にミラー113が配置されたフーリエレンズ素子112からなる固定の「キャッツアイ光学ユニット」を固定の曲面共振ミラー110の代わりに用いることだけである。共振器での閉じ込めに必要な波面曲率を得るために、上記ミラー113は、レンズ素子の焦点面に対して規定通りにデフォーカスされるように配置される。
【0045】
さらなる説明の理解のために、近軸行列光学(paraxial matrix optics)の拡張形式を以下で簡単に導入し、この形式を次に用いて共振器の光学の原理について述べる。形式の拡張は、位置決定用の測定共振器での発生が避けられないようなビームオフセット及びビームずれを考慮することを含む。球状曲面及び/又は平面ミラー素子(ミラー及びプレート)からなる光学系又はサブシステムの一般的な伝達行列は、この形式では以下の通りである。
【数1】
【0046】
成分A、B、C、Dは、適切な場合には公称偏向鏡映に対応する展開を行った後の、光軸(伝播軸)に対して回転対称なシステムの近軸ビーム伝播パラメータを記述する。最後の場所に成分1を含む追加列により、ビームオフセット及び/又はビーム傾斜を引き起こす素子の回転対称破壊効果を記述することができる。この場合、パラメータt
x、t
yは、ここではz軸に対応する光軸に対して垂直な並進変位である。パラメータφ
x、φ
yは、ビームずれの角度(ラジアン単位)を示す。K個のサブセクションを備えた連結光学系(concatenated optical system)では、伝達行列
【数2】
が、行列乗算により初等的な伝達行列
M
1,…,
M
Kをカスケードすることから得られる。以下で説明する全ての測定共振器を構成する初等的な伝達行列は、以下の通りである。
・距離zの自由空間伝播路:
【数3】
・焦点距離fを有するレンズ素子の通過:
【数4】
・光軸に関するオフセット(s
x,s
y)を有するレトロリフレクタ:
【数5】
・(s
x,s
y)のビームオフセット:
【数6】
・(θ
x,θ
y)のビームずれ(ラジアン単位):
【数7】
【0047】
共振器において、ビームは、光路を複数回通過し、さらには理想的な限りなく高い品質(フィネス)の場合には無限に通過することが多い。この場合、n回パスは、
【数8】
に従った単一の共振器経路のn回カスケーディングを示す。
【0048】
【数9】
に従った単一経路行列の固有合成(eigen composition、Eigen-Zerlegung)により、固有ベクトル
V=(
v
1 v
2 v
3 v
4 v
5)の行列が得られ、関連の固有値
μ=(μ
1,μ
2,μ
3,μ
4,μ
5)が得られる。
【0049】
概して、2×2の部分伝達行列
【数10】
では、経路の入力及び出力における屈折率が同一である場合の行列式が常に同様に1であることが分かる。したがって、det(
m)=AD-BC=1ということになり、4つの成分のうち3つのみが独立する。初等計算後の経路行列
Mの固有値は、
μ
1=1 (11)
であり、
【数11】
となる。
【0050】
関連する固有ベクトルは、
【数12】
また、
【数13】
【数14】
【0051】
したがって、共振器経路のn回通過後に、ビームベクトルR
nに関して得られるのは以下の通りである。
【0052】
【数15】
式中、入力ビーム
R
0は、固有ベクトルに関してk=1,2,3,4,5であるその成分R
k,0で表される。
【0053】
光共振器の安定性には、ビームベクトルが任意の循環回数で常に制限される必要がある。それにはさらに、
【数16】
に従って2つの固有値μ
2,3及びμ
4,5も同様に制限される必要がある。
【0054】
この要件はさらに、安定条件
|g|=|(A+D)/2|≦1 (18)
に直接変換され、いわゆる安定性パラメータはg=(A+D)/2で定義される。安定した共振器経路のためには、2つの固有値及び関連する固有ベクトルが素数になり、置換cos(θ)=gとして、
【数17】
また、
【数18】
に従っていずれの場合も相互に共役な対を形成することが必要である。したがって、経路のn回通過後にビームベクトルで得られるのは次の通りである。
【数19】
ここから、共振器内に拘束された(bound)ビームの振動及び振幅制限(amplified-limited)挙動が明白になる。
【0055】
基本モード(TEM00)のガウスビームが、複素ビームパラメータqにより完全に記述される。後者は、曲率半径R及びビームサイズwという2つのビーム変数を結合したものである。これは、その逆数により以下のように定義される。
【数20】
式中、λはライトフィールドの波長を表す。ビームパラメータの伝播は、伝達行列の形式で次式により与えられる。
【数21】
この場合、q
outは出力側のビームパラメータを示し、q
inは入力側のビームパラメータを示す。
【0056】
共振器の安定モードは、2つの定常性条件を満たさなければならない。ライトフィールドが伝播する主光線
Rcの定常性は、第1に
【数22】
を必要とする。
【0057】
主光線に関する解は、R
c=v
1に従って固有値μ1=1に関する共振器経路の固有ベクトルに正確に対応し、v
1は上記セクションで指定されている。
【0058】
主光線に沿って伝播する放射フィールドの複素ビームパラメータの定常性には、第2に、
【数23】
が必要である。
【0059】
この式は、固有ビームパラメータに関する2つの解を有する。これらは明確に以下の通りである。
【数24】
【0060】
これにより、最後に結果として共振器経路の入力で、固有モードの波面曲率半径R
mに関して次式が得られ、
【数25】
固有モードのビームサイズに関して次式が得られる。
【数26】
【0061】
図1cは、近軸行列光学の拡張形式での記述のための、単一の共振器経路について
図1a及び
図1bからの実施形態に関して導出された等価回路を示す。
図1aに示す固定の曲面共振ミラー110の場合、対応する伝達行列は例として以下の通りである。
【数27】
【0062】
この場合、Lは、固定の曲面共振ミラー110と測定対象を形成するレトロリフレクタ120との間の可変距離を示し、L’は、固定の平面反転ミラー(「再循環ミラー」)130と可動のレトロリフレクタ120との間の可変距離を示し、Rは、曲面共振ミラー110の曲率半径を示し、(Sx,Sy)は、光軸(図示の座標系でz方向に延びる)に対するレトロリフレクタ120の横変位を示す。
【0063】
伝達行列の最終列の最初の4つの成分が同様にゼロであることにより、主光線のビームベクトルに
R
c=(0,0,0,0,1)
Tが当てはまる。したがって、所望に応じて、主光線は測定対象を形成するレトロリフレクタ120のドリフトから独立する。有効共振器長は、L
eff=L+L’である。測定対象を形成するレトロリフレクタ120が測定方向にΔLだけ変位することから、ΔL
eff=2ΔLということになる。安定条件を満たすのに必要なのは、L+L’≦R≦∞である。TEM00固有モードのパラメータは、R
m=R及び
【数28】
として上記式から得られる。
【0064】
図2は、本発明による概念を説明する図をさらに別の概略図で示す。固定の共振ミラー10及び測定対象20を有する従来の光共振器を、
図2の左側部分に示す。本発明によれば、再循環光学ユニット230(
図1の反転ミラー130により実現される)が、固定の共振ミラー210と測定対象220との間に設けられる(
図2の右側部分に示す)。
【0065】
図3a及び
図3bは、本発明による測定アセンブリのさらに他の実施形態を説明する概略図を示し、
図1a及び
図1bと比べて類似の又は実質的に同じ機能を有するコンポーネントは「200」を足した参照符号で示す。
図3a及び
図3bの実施形態が
図1a及び
図1bからのものと異なる点は、レトロリフレクタ120の代わりに平面ミラー340が可動の測定対象としての役割を果たし、レトロリフレクタ320は共振器の固定部分の場所に配置されることである。
【0066】
公称角度で展開した経路の伝達行列は、
図3aに示す固定の曲面共振ミラー310の例示的な実施形態について、例として以下の通りである。
【数29】
【0067】
式中、Lは、固定の曲面共振ミラー310と可動の平面ミラー340との間の可変距離を示し、L’は、固定のレトロリフレクタ320と可動の平面ミラー340との間の可変距離を示し、L’’は、固定の反転ミラー330と可動の平面ミラー340との間の可変距離を示し、Rは、固定の曲面共振ミラー310の曲率半径を示す。
【0068】
(2)に従った伝達行列の最終列の最初の4つの成分が同様にゼロであることにより、主光線のビームベクトルに
R
c=(0,0,0,0,1)
Tが当てはまる。したがって、所望に応じて、ここでも主光線は測定対象のドリフトから独立する。有効共振器長は、L
eff=L+2L’+L’’である。測定対象を形成する平面ミラー340が測定方向にΔLだけ変位することから、ΔL
eff=4ΔLということになる。安定条件を満たすのに必要なのは、L+2L’+L’’≦R≦∞である。TEM00固有モードのパラメータに関して、R
m=R及び
【数30】
が得られる。
【0069】
図3bに示す実施形態が
図3aからのものと異なる点はさらに(
図1a及び
図1bと同様に)、焦点面にミラー313が配置されたフーリエレンズ素子312を含む固定の「キャッツアイ光学ユニット」が固定の曲面共振ミラー310の代わりに用いられることだけである。
【0070】
図3cは、
図3a及び
図3bからの実施形態に基づき且つ測定対象を形成する平面ミラー340の方向から見た、幾何学的配置が異なるいくつかの可能な構成を示す。
【0071】
図4a及び
図4bは、本発明による測定アセンブリのさらに他の実施形態を説明する概略図を示し、
図3a及び
図3bと比べて類似の又は実質的に同じ機能を有するコンポーネントはさらに、「100」を足した参照符号で示す。
【0072】
図4aによれば、測定ビームはこの場合も、ユニット401(その配置構成及び機能は
図6~
図11を参照してさらに詳細に説明する)及び光ファイバ402を介して共振器に入り、(ミラー面411を有する)固定の曲面共振ミラー410を通過し、自由空間路を通過した後に、ビームスプリッタ層450aを含む偏光ビームスプリッタ450に入射する。測定ビームのp偏光成分は透過するのに対し、s成分は共振器から反射され、したがって消滅する。p偏光となったビームは、1/4波長板460により円偏光ビームに変換され、測定対象を形成する平面ミラー440までさらなる自由空間路を通過する。ビームはそこで反射され、1/4波長板460を再度通過し、それにより元のp偏光に対して90°回転した直線偏光に、すなわちs偏光ビームに変換される。
【0073】
s偏光となったビームは、偏光ビームスプリッタ450で完全に反射され、(例えば一体的に取り付けられた)レトロリフレクタ420へ導かれる。そこでビームは平行にオフセットして反射され、ビームスプリッタ層450aで測定対象を形成する平面ミラー440の方向に再度偏向される。1/4波長板を通過すると、ビームは再度円偏光され、自由空間路の後に測定対象を形成する平面ミラー440に到達し、当該平面ミラーで再度反射される。1/4波長板を再度通過した後に、ビームは元のp偏光状態を再度とり、偏向されずにビームスプリッタ層450aを通過し、最後に固定の反転ミラー330に到達する。そこからは、全光路が逆順に同様に進み、パスの終端で、ビームは固定の曲面共振ミラー410に元の位置及び同じ傾きで再度入射する。したがって、円が閉じ、曲面共振ミラー310での反射で次の循環が始まる。ここで、ビームの偏光がパスの後に維持されるようにレトロリフレクタが具現されると思われ、これは適当な設計の光学多層コーティング系でのミラー面のコーティングにより達成することができる。
【0074】
図4bに示す実施形態が
図4aからのものと異なる点はさらに(
図1a及び
図1bと同様に)、規定通りにデフォーカスされたミラー413が焦点面に配置されたフーリエレンズ素子412を含む固定の「キャッツアイ光学ユニット」が固定の曲面共振ミラー410の代わりに用いられることだけである。
【0075】
図4a~
図4cによれば、結果として、
図3a及び
図3bとは対照的に、偏光ビームスプリッタ450を用いて「レトロリフレクタビーム経路」を光軸上に直接折り曲げることにより、特にいずれの場合も平面ミラーとして具現された測定対象440に対する公称垂直入射が達成される。
【0076】
図5a及び
図5bは、本発明による測定アセンブリのさらに他の実施形態を説明する概略図を示し、
図4a及び
図34と比べて類似の又は実質的に同じ機能を有するコンポーネントはさらに、「100」を足した参照符号で示す。
【0077】
図5a及び
図5bの実施形態では、ケプラー配置(アフォーカル配置)の2つのレンズ素子521、523を含む光学群520がレトロリフレクタの代わりに用いられる。中央開口を有するミラー522(網膜ミラー(retina mirror)とも称し得る)が、ここで2つの上記レンズ素子521、523の共通の焦点面、いわゆる空間フィルタ面に位置し、上記ミラーは、測定対象を形成する平面ミラー540が十分に大きな入射角(setting angle)を有する場合であれば平面ミラー540から戻るビーム経路を反射する。展開された公称システム(平面ミラー540の公称入射角を広げる)の伝達行列は以下の通りである。
【数31】
【0078】
この場合、Lは、出力側のレンズ素子523と測定対象を形成する平面ミラー540との間の可変距離を示し、F
1及びF
2は、2つのレンズ素子521、523の焦点距離を示す。θ(→)=(θ
x,θ
y)は、測定対象を形成する平面ミラー540のその公称値に対する傾き偏差を表す。平面ミラー530及び光学群520を含む
図5cに示す配置の基礎をなす等価スキームを
図5dに示す。出力側のレンズ素子523は、その焦点面の(網膜)ミラー522と共に、キャッツアイの形態の機能的なレトロリフレクタを形成する。この場合、第1レンズ素子521の焦点面は、入力側の基準面として選択される。伝達行列は、その成分M
5,1及びM
5,3が同様にゼロである形態で再帰反射の特性を示す。
【0079】
さらに、
図5a及び
図5bによれば、上述の実施形態と同様に上述の光学群520の下流の(すなわち、その「システム出力」における)光ビーム経路に対して、再循環光学ユニットとしての平面ミラー530が挿入され、これがビーム経路を反射して逆行させる。
【0080】
図5a~
図5cに示す光共振器の展開された公称キャビティの伝達行列は、以下の通りである。
【数32】
【0081】
これに含まれる変数は、平面ミラー530と入力側のレンズ素子521との間の距離l1を除いて上記で既に定義されている。平面ミラー530を介した再循環により、入力及び出力は同一であり、最終列の最初の4つの成分がゼロであることは、測定対象を形成する平面ミラー540の寄生的傾斜に対する目標のロバスト性が達成されることを示す。
【0082】
入力側が曲面ミラー510で(
図5aに示す)、又は代替として焦点面にミラー513が配置されたフーリエレンズ素子512を含む「キャッツアイ光学ユニット」で(
図5bに示す)終わることにより、上述の光学ユニットは、
図5a~
図5cに従って光共振器を完成させる。
【0083】
図5aに示す曲面ミラーを有する実施形態でのこのような共振器の単一パス通過に関する伝達行列は、
【数33】
であり、曲面共振ミラー510及び再循環を引き起こす平面ミラー530の両方が、光学群520の入力側のレンズ素子521の焦点面にある。
【0084】
伝達行列の最終列の最初の4つの成分が同様にゼロであることにより、主光線のビームベクトルに
R
c=(0,0,0,0,1)
Tが当てはまる。したがって、所望に応じて、主光線は測定対象を形成する平面ミラー540のドリフトから独立する。有効共振器長は、L
eff=4(L-L
2)であり、出力側のレンズ素子523の出力側焦点面からカウントされる。測定対象を形成する平面ミラー540が測定方向にΔLだけ変位することから、ΔL
eff=4ΔLということになる。安定条件
【数34】
を満たすのに必要なのは、L
eff=4(L-F
2)≦R F
2
2/F
1
2<∞である。
【0085】
光学群520(効果的なケプラー望遠鏡を形成する)の結像特性の結果として、入力側の共振ミラー510の曲率半径は、有効曲率半径Reff=R F2
2/F1
2に変換される。スケーリングファクタは、アフォーカル光学ユニットの縦倍率に正確に対応する。
【0086】
図1~
図5を参照して上述した全ての実施形態において、いずれの場合も存在するレトロリフレクタは、「キャッツアイ構成」(すなわち、焦点面にミラーが配置されたフーリエ光学ユニット又はレンズ素子を含む)で構成することもできる。これは、光共振器における損失が通常は最大0.1%~0.5%に制限されなければならないという状況を考慮することができるが、この制限は、複数の反射面を有するレトロリフレクタの構成の場合には複数回の反射が起こることにより妨げられる。
【0087】
ビームの偏光がパス後に維持されるようにレトロリフレクタが具現されるとさらに考えられる。レトロリフレクタの偏光保持特性は、適当な設計の光学多層コーティング系でのミラー面のコーティングにより達成することができる。
【0088】
周波数に基づく長さ又は位置測定の実現の概念を、
図6~
図9の概略図を参照して以下で説明する。
【0089】
この場合、
図6はまず、波長可変レーザ601が(図示の例ではPound-Drever-Hallに従った)適当な制御ループにより共振器602の周波数に従い、最終的に測定される共振器602の長さLが波長可変レーザ601の周波数として符号化されるようにする、自体公知の原理を説明する図を示す。
【0090】
図6において、破線枠で囲まれた領域は、
図5からのユニット「501」(又は
図1、
図3、及び
図4のユニット「102」、「301」、及び「401」)に対応する。
【0091】
図6に示す配置は、ファラデーアイソレータ605、電気光学変調器606、偏光ビームスプリッタ607、1/4波長板608、光検出器609、及びローパスフィルタ610を含む。周波数測定のために、波長可変レーザ601が発した光の一部は、ビームスプリッタ603を介して取り出されて周波数測定用のアナライザ604に供給される。アナライザ604での実際の周波数測定は、例えば周波数基準(以下でも説明するように、フェムト秒レーザのfs周波数コム)との比較により行うことができる。
【0092】
図7によれば、周波数に基づく測長の上記原理のさらなる発展形態において、2つの波長可変レーザ701、702を(例えば同様にPound-Drever-Hall法に従って)、モードインデックス間隔に関して既知である2つの異なる共振器モードに制御することも可能である。光検出器703で2つのレーザ701、702からの放射の重畳により得られた信号のビート又は差周波数f
beat=Δf=f
2-f
1が、周波数カウンタ704により求められる。続いて、共振器の目的の長さLを
L=c/2 Δq/f
beat (35)
に従って求めることができ、式中、Δqは共振器の周波数コムにおけるモード間隔を示す。モード間隔Δqは、例えば、共通の起動周波数(starting frequency)から起こる2つのレーザ周波数の一を調整し、かつ共振器の周波数コムの通過した反射極小を計数することとにより得ることができる。
【0093】
図8は、共振器802の共振器モードに安定化させた波長可変レーザ801とフェムト秒レーザ803との間のビートに基づいて、周波数に基づく測長の原理を説明する役割を果たす。波長可変レーザ801及びフェムト秒レーザ803のレーザビーム間のビートは、高速光検出器805での重畳により実現される。個々のビート周波数は、同時に起こる多数のビートの重畳を含むビート信号の解析から抽出される。
図8によれば、周波数コムインデックスに関する無知を解消するために、周波数標準806(例えば、ガスセル、特に例えば約1500nmのS及びC通信周波数帯域のアセチレンガスセルの形態)がさらに設けられる。光検出器810及び信号アナライザ811が、周波数標準806の下流に配置される。
【0094】
波長可変レーザ801の目的の周波数は、
図8に従って、個々のビート周波数の情報及びモードインデックスの情報から再現することができる。
【0095】
この場合、フェムト秒レーザ803のキャリアエンベロープ周波数(コムオフセット周波数)は、
【数35】
により得られ、非線形、いわゆるf-2f干渉計を用いて測定することができ、制御ループにより一定に保つか又は光学的非線形プロセスにより除去することができる。コムオフセット周波数f
ceo及びパルス繰り返し周波数
【数36】
は、無線周波数範囲にあり、高精度に測定して原子時計で安定化することができる。上記フェムト秒レーザ803の広い光スペクトルは、
【数37】
に従った一定の周波数間隔f
repを有する多数の鮮明なラインを含み、式中、kはコムインデックスを示す。
【0096】
決定すべき周波数f
xを有する波長可変レーザとパラメータが正確に分かっているフェムト秒レーザとの間に生じ得る多数の周波数は、概して、
【数38】
となる。
【0097】
共振器長の変化の関数としての、共振器モードに安定化させた波長可変レーザとフェムト秒レーザとの間のビート周波数の例示的なスペクトルを
図9aに示す。これは、両軸に沿って周期的な、ビートグリッドとも称し得るダイヤモンドパターンを含む。ここから生じる曖昧性は、原理上は、計数距離測定干渉法(counting distance-measuring interferometry)と同様に、計数の際、ゼロ化により規定された開始位置から始めたダイヤモンドパターンでのセル境界の通過をギャップなしで含めることにより除去されなければならない。カウント方向に関してここで依然として残る不確かさとこの不確かさの除去とについて、
図10を参照して以下で説明する。
【0098】
図10は、
図8からの配置構成の延長を示し、
図8と類似の又は実質的に機能的に同一のコンポーネントは「200」を足した参照符号で示す。
【0099】
図10によれば、第1波長可変レーザ1001に加えて、光検出器1008及び割り当てビート周波数解析ユニット1009を有する第2波長可変レーザ1012が測定システムに組み込まれる。第2レーザ1012も同様に、光共振器の選択共振器モードに安定化され、第2波長可変レーザ1012が発生したレーザビームの周波数について以下が当てはまるようになる。
f
2=f
1+FSR(L)Δq (39)
この場合、FSR(L)=c/2Lは、共振器のモードコムにおける隣接モード間の周波数間隔に対応するいわゆる自由スペクトル領域を示す。
【0100】
図10のレーザ1001及び1012のレーザ周波数は、(
図9bに概略的に示すダイヤモンドパターンに類似の)ビート周波数の2つの交差したグリッドを有し、これに基づいて、(
図9aのダイヤモンドパターンのセル境界の通過をカウントする際の)カウント方向に関する従来の「方向曖昧性」を除去することが可能である。上記追加のレーザ1012が発生して光共振器の周波数コムに結合されたレーザビームを用いて、カウント方向に関する曖昧性の問題がここで解決されるが、それは、第2ビート周波数グリッドの周波数の形態の付加情報を用いてカウント方向を常に一義的に確認できるからである(
図9b参照)。この場合、
【数39】
に従って光共振器の絶対長をいつでも直接決定すること、及びひいては
【数40】
に従ってさらなるインクリメンタルカウントについての絶対(連結)値を得ることが可能であり、これは有利である。インクリメンタルカウント中、既知のグイ位相も包含するオフセットインデックスδ
gの変化を無視して、相対周波数変化が相対長変化を直接表すようにすることが可能である。以前に求めた絶対長の情報により、関心の絶対長変化を相対長変化から直接計算することができる。結果として、
図10で提案した配置構成で周波数に基づく測長が実現される。
【0101】
原理上、上述した2つのビート信号を重畳加算して単一の共通ビートアナライザに供給することもできるが、その場合、両方のグリッドのビート周波数が一致し、測定誤差の存在下でのグリッドの分離及び割り当てが少なくともより困難になるか、又は極端な場合には一義的に可能ではなくなる。
【0102】
図11は、
図10の代替的な実施形態を示し、
図10と類似の又は実質的に機能的に同一のコンポーネントは「100」を足した参照符号で示す。
【0103】
図11によれば、
図10からの第2波長可変レーザ1012をなくし、共振器コムに安定化させることが可能な波長可変レーザ1101から部分ビームを分岐させて、その周波数を音響光学変調器(AOM)1114により値f
aomだけシフトさせることにより、さらにシフトしたビートグリッドを発生するさらに別のレーザビームが実現される。周波数f
2=f
1+f
aomを有するこの部分ビームは、その周波数に関して可変波長レーザ1101に剛結合されており、同じく光検出器1112でフェムト秒レーザ1103の分岐ビームとビーティングを生じる。この場合に得られたビート信号は、さらに別のビート周波数解析ユニット1113によりその周波数構成に関して解析される。ここでも、2つのビート信号を単一の共通ビート周波数解析ユニットに加算的に供給することが原理上は可能である。
【0104】
図13は、EUVでの動作用に設計した例示的なマイクロリソグラフィ投影露光装置1300の概略図を示す。本発明による測定アセンブリは、投影レンズ又は照明デバイスの個々のミラー間の距離を測定するためにこの投影露光装置で用いることができる。しかしながら、本発明は、EUVでの動作用に設計したシステムでの用途に制限されず、他の作動波長(例えば、VUV領域又は250nm未満の波長)用の光学系の測定で実現することも可能である。さらなる用途では、本発明をマスク検査装置又はウェーハ検査装置で実現することもできる。
【0105】
図13によれば、投影露光装置1300の照明デバイスは、視野ファセットミラー1303及び瞳ファセットミラー1304を含む。プラズマ光源1301及びコレクタミラー1302を含む光源ユニットからの光は、視野ファセットミラー1303へ指向される。第1望遠鏡ミラー1305及び第2望遠鏡ミラー1306が、瞳ファセットミラー1304の下流の光路に配置される。偏向ミラー1307が、光路の下流に配置され、当該偏向ミラーは、入射した放射線を6つのミラー1351~1356を含む投影レンズの物体平面の物体視野へ指向させる。物体視野の場所で、反射構造担持マスク1321がマスクステージ1320に配置され、上記マスクは、投影レンズを用いて像平面に投影され、像平面では感光層(フォトレジスト)でコーティングされた基板1361がウェーハステージ1360上に位置する。
【0106】
本発明を制限するものではないが、例えば米国特許第6,864,988号から自体周知の配置構成を例えば基礎とすることができ、これは、負荷消散支持構造体1403(「フォースフレーム」)及びそれとは別に設けられた測定構造体1404(「センサフレーム」)の両方を含むものである。
図14によれば、支持構造体1403及び測定構造体1404の両方は、動的分離の働きをする機械リンク(例えばばね)1405及び1406それぞれにより相互に独立して光学系のベースプレート又はベース1430に機械的に連結される。ミラー1401に関しては、ミラー固定手段1402により支持構造体1403に固定される。
図14は、測定構造体1404からミラー1401まで延びる2つの測定路1411及び1421を概略的に示し、これらの測定路は本発明による光共振器により測定される。
【0107】
全6自由度でミラーの場所を測定するために、周波数に基づく測長用の本発明による6つの光共振器が必要であり、可能な一構成を
図15に概略的に示す。この図は、測定フレーム1506に位置する始点1504とミラー1501に位置する終点1503とをそれぞれ有する6つの測定路1505を示す。
【0108】
本発明は特定の実施形態に基づいて説明されているが、例えば個々の実施形態の特徴の組み合わせ及び/又は交換により、多数の変形形態及び代替的な実施形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、当業者には言うまでもなく、かかる変形形態及び代替的な実施形態も本発明に包含され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の意味の範囲内にのみ制限される。