(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システムおよび在庫管理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20221018BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20221018BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20221018BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
B65G61/00 426
B09B101:30
(21)【出願番号】P 2018158537
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-03-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】水品 恵一
(72)【発明者】
【氏名】米山 健太郎
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-271043(JP,A)
【文献】特開2010-075897(JP,A)
【文献】特開平09-019675(JP,A)
【文献】特開2016-114594(JP,A)
【文献】特開平11-076975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
B09B 5/00
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛灰を装入して処理するための飛灰処理部と、
飛灰を処理するための処理剤を貯留する処理剤貯留部と、
飛灰の一部を採取し
、採取した前記飛灰の性状である、P酸度、Pアルカリ度、キレート剤消費量および重金属含有量のうちの少なくともP酸度を、少なくとも1日に複数回分析し、
分析した前記飛灰の性状から、前記飛灰処理部に装入された量の飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示する処理剤添加管理部と、
前記処理剤添加管理部により指示された添加量の処理剤を、前記処理剤貯留部から前記飛灰処理部に供給する処理剤供給部と、
前記処理剤貯留部に貯留されている処理剤の残量情報を、前記処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報から収集し、収集した前記残量情報を記録し、将来の特定の時点の残量を予測し、予測された将来の特定の時点の残量から補充すべき処理剤の時期および量を求めるサーバー部と、
を備える、飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【請求項2】
前記サーバー部は、前記処理剤貯留部に補充すべき処理剤の時期および量を、処理剤の在庫管理を行うに際し、通知すべき関係者に通知する機能を有する、請求項1に記載の飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【請求項3】
前記処理剤の残量情報は、前記処理剤貯留部に設けた処理剤の残量測定計からの情報、および前記処理剤供給部と前記飛灰処理部との間に設けられた処理剤の供給量測定計からの情報のうちの少なくとも1つの情報をさらに有する、請求項1または2に記載の飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【請求項4】
前記飛灰は、廃棄物を処理した焼却炉から生成される排ガス中に含まれる飛灰であり、
前記処理剤の残量情報は、前記焼却炉における廃棄物の予定処理量から生成される飛灰の予測生成量の情報をさらに有する、請求項1、2または3に記載の飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【請求項5】
処理剤添加管理部により、飛灰処理部に装入される飛灰の一部を採取し
、採取した前記飛灰の性状である、P酸度、Pアルカリ度、キレート剤消費量および重金属含有量のうちの少なくともP酸度を、少なくとも1日に複数回分析し、
分析した前記飛灰の性状から、前記飛灰処理部に装入された量の飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示する工程と、
前記処理剤添加管理部で指示した添加量の処理剤を、処理剤貯留部から前記飛灰処理部に供給する工程と、
サーバー部によって、前記処理剤貯留部に貯留されている前記処理剤の残量情報を、前記処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報から収集し、収集した前記残留情報を記録し、将来の特定の時点の残量を予測し、予測された将来の残量から補充すべき処理剤の時期および量を求める工程と
を含む、飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システムおよび在庫管理方法に関し、より詳しくは、処理剤の在庫を正確に予測して、在庫切れ(欠品)が生じるのを抑制し、管理者が、予期しない欠品による処理剤メーカーへの緊急発注を行なうなどの管理の煩雑さを低減することができる、処理剤の在庫管理システムおよび在庫管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却して発生する排ガス中に含まれる固形物である飛灰には、鉛、カドミウム、ヒ素、セレン、クロムなどの重金属が含まれ得る。そのため、飛灰は、廃棄物処理法により特別管理一般廃棄物に指定されており、重金属の除去処理を施した後、埋め立て等により処分することが義務づけられている。
【0003】
飛灰の処理剤としては、例えば、特許文献1には、セメント類、中和剤、無機吸着剤、キレート剤、水ガラス、リン酸塩、及び鉛(Pb)等の有害金属化合物と反応し難溶性あるいは不溶性の化合物を生成する化合物の内から選択される1種以上を主たる構成成分とする有害金属安定化剤が開示されている。
【0004】
このような飛灰の処理剤は、飛灰処理のバッチごとまたは特定の飛灰量ごとに一定量を添加する場合があるが、この場合、飛灰の灰性状によって、飛灰を処理するのに最適な処理剤の量は変動するため、一定量の処理剤の添加は、特定の飛灰量の処理であっても、飛灰を無害化処理するのに不足あるいは過剰であることがあった。このため、近年では、飛灰の適正処理や処理剤使用量の削減の観点から、処理前に飛灰の一部を採取して分析し、必要な処理剤の添加量を見積もって、その量の処理剤を添加する方法が提案されている。例えば、特許文献2には、飛灰の一部を採取し、その飛灰に含まれる重金属をキレート剤で不溶化した後、金属化合物を加えることで、重金属と未反応であった未反応キレート剤と金属化合物との反応生成物であるキレート化金属を生成させ、そのキレート化金属の含有量を測定可能な波長で吸光度を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-99215号公報
【文献】特開2016-049481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の処理方法では、処理する飛灰に対し、適正な量の処理剤を見積もることができるが、その一方で、バッチごとまたは特定の飛灰量ごとに処理剤の添加量を変化させる必要があるため、処理剤の発注を定期的に行うと、在庫切れが生じるおそれがある。特に、飛灰の性状の変動が大きい場合や、処理剤の貯留設備の容量が小さい場合などにおいては、飛灰の処理に使用する処理剤の量が急激に増加した場合には、処理剤の在庫切れが生じやすい。そのため、在庫管理者が、貯留タンク内に貯留されている処理剤の量を頻繁に確認し、残量を把握するとともに、残量が所定量程度まで減少したところで、処理剤の発注を行っていた。
【0007】
しかしながら、このような在庫管理は、管理の煩雑さを伴うものであり、ヒューマンエラーも起こりやすい。さらに、省人化による人件費の削減の観点から、処理剤の残量を、正確に予測して自動的に管理できる在庫管理システムが求められている。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、飛灰の一部を採取して分析し、その分析結果に応じて、処理剤の添加量を変動させて飛灰を処理することを前提とし、処理剤の残量を正確に予測して、自動的に処理剤の在庫を管理することによって、管理の煩雑さを解消し、処理剤の在庫切れ(欠品)を抑制するとともに、省人化も図れる、飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システムおよび在庫管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以上の目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、処理前に飛灰の一部を採取して分析し、必要な処理剤の添加量を見積もって、その量の処理剤を添加する方法において、処理剤貯留部に貯留されている処理剤の残量を、直接または間接的に収集して管理するサーバー部を設けることにより、自動的に処理剤の残量を正確に予測可能な在庫管理システムを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1)飛灰を装入して処理するための飛灰処理部と、飛灰を処理するための処理剤を貯留する処理剤貯留部と、飛灰の一部を採取して分析し、前記飛灰処理部に装入された量の飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示する処理剤添加管理部と、前記処理剤添加管理部により指示された添加量の処理剤を、前記処理剤貯留部から前記飛灰処理部に供給する処理剤供給部と、前記処理剤貯留部に貯留されている処理剤の残量情報を、直接または間接的に収集して管理するサーバー部と、を備える、飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【0011】
(2)前記サーバー部は、収集した前記処理剤の残量情報を解析し、前記処理剤貯留部に補充すべき処理剤の時期および量を、在庫管理者や処理剤納入業者などの関係者に通知する機能を有する、上記(1)に記載の飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【0012】
(3)前記処理剤の残量情報は、前記処理剤貯留部に設けた処理剤の残量測定計からの情報、前記処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報、および前記処理剤供給部と前記飛灰処理部との間に設けられた処理剤の供給量測定計からの情報のうちの少なくとも1つの情報である、上記(1)または(2)に記載の飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【0013】
(4)前記飛灰は、廃棄物を処理した焼却炉から生成される排ガス中に含まれる飛灰であり、前記処理剤の残量情報は、前記焼却炉における廃棄物の予定処理量から生成される飛灰の予測生成量の情報をさらに有する、上記(3)に記載の飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【0014】
(5)処理剤添加管理部により、飛灰処理部に装入される飛灰の一部を採取して分析し、前記飛灰処理部に装入された量の飛灰の処理に必要な前記処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示する工程と、前記処理剤添加管理部で指示した添加量の処理剤を、処理剤貯留部から前記飛灰処理部に供給する工程と、前記処理剤貯留部に貯留されている前記処理剤の残量情報を、サーバー部によって、直接または間接的に収集して管理する工程とを含む、飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、飛灰を装入して処理するための飛灰処理部と、飛灰を処理するための処理剤を貯留する処理剤貯留部と、飛灰の一部を採取して分析し、前記飛灰処理部に装入された量の飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示する処理剤添加管理部と、前記処理剤添加管理部により指示された添加量の処理剤を、前記処理剤貯留部から前記飛灰処理部に供給する処理剤供給部と、前記処理剤貯留部に貯留されている処理剤の残量情報を、直接または間接的に収集して管理するサーバー部とを備え、特に、飛灰の一部を採取して分析し、その分析結果に応じて、処理剤の添加量を変動させて飛灰を処理することを前提とし、処理剤の残量を正確に予測して、自動的に処理剤の在庫を管理することによって、管理の煩雑さを解消し、処理剤の在庫切れ(欠品)を抑制するとともに、省人化も図れる、飛灰を処理するために用いる処理剤の在庫管理システムおよび在庫管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る処理剤の在庫管理システムの構築例の概略フロー図である。
【
図2】WEBサーバー導入前の従来の処理剤添加システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<処理剤の在庫管理システム>
図1は、本実施形態に係る処理剤の在庫管理システムの構築例の概略フロー図を示したものである。なお、
図1において、各ブロックを繋ぐ線のうち、実線は物の流れ、破線は情報の流れを表している。
本実施形態に係る処理剤の在庫管理システム1は、飛灰処理部13と処理剤貯留部14と処理剤添加管理部16と処理剤供給部15とサーバー部19とで主として構成されている。
【0019】
このような在庫管理システム1は、処理剤貯留部14に貯留されている処理剤の残量情報を収集して管理するサーバー部19を有することにより、自動的に処理剤の残量を正確に予測して、在庫管理の煩雑さを解消するとともに、在庫切れを抑制することができる。そして、このような在庫管理システム1は、例えば、長期的かつ連続的に飛灰を処理する必要がある焼却設備において、日々の在庫管理が大幅に削減され、効率的な運用が可能となる。また、処理剤のメーカーにおいても、緊急発注の回数が削減され、処理剤の製造や納入を効率的に行うことができる。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
〔飛灰処理部〕
飛灰処理部13は、飛灰を装入してその飛灰に対し処理を施すものである。上述したとおり、飛灰には、鉛、カドミウム、ヒ素、セレン、クロムなどの重金属が含まれ得るため、飛灰の埋め立て等に先立って、飛灰中に含有する重金属を固定化し、除去する必要がある。そこで、飛灰処理部13では、飛灰と処理剤を混合して反応させることによって、重金属を除去する。
【0021】
詳細は後述するが、処理剤は、例えばリン酸塩やキレート剤からなるものである。このような処理剤は、飛灰と混合して接触させることで、接触された飛灰中の重金属を固定化し除去することができる。飛灰処理部13としては、飛灰と処理剤を混合して反応させることができるものであれば特に限定されないが、例えば各種の混練機や反応装置を用いることができる。
【0022】
なお、飛灰としては、その発生源や含有成分について特に限定されるものではなく、各種の廃棄物の焼却により生成した飛灰を用いることができる。
【0023】
飛灰の処理はバッチ式で行ってよく、また連続式で行ってもよい。いずれの場合においても、飛灰の処理量は特に限定されず、発生する飛灰量等を考慮して適宜設計することができる。
【0024】
〔処理剤貯留部〕
処理剤貯留部14は、飛灰を処理するための処理剤を貯留するものである。本実施形態における処理剤の在庫管理システム1では、後述するサーバー部19によって、処理剤貯留部14に貯留されている処理剤の残量を管理する。
【0025】
処理剤貯留部14としては、処理剤を貯留することができるものであれば特に限定されないが、例えば、貯留タンクやサイロを用いることができる。
【0026】
処理剤貯留部14の貯留容量や形状としては、特に限定されず、その設置スペースや飛灰処理の稼働計画、飛灰の処理量、飛灰の処理頻度、発注頻度等を考慮して適宜設計することができる。
【0027】
〔処理剤添加管理部〕
処理剤添加管理部16は、飛灰の一部を採取して分析し、飛灰処理部に装入された量の飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示するものである。
【0028】
このように、処理剤添加管理部16を利用して、飛灰を処理する場合、処理剤の添加量をバッチごとまたは所定量ごとに一定とする場合と比較して、過剰な添加を抑制して、処理剤の添加量を有効に削減することができる。しかしながら、その一方で、処理剤の添加量は、飛灰の性状に応じて変動するため一定とならず、処理剤の在庫の管理の必要性が生じる。そこで、本実施形態のような在庫管理システムが必要となる。
【0029】
処理剤の添加管理の具体的手段としては、飛灰の一部を採取して分析し、飛灰処理部13に装入された量の飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出できる構成を有していればよく、特に限定されないが、採取した一部の飛灰を懸濁液として、その懸濁液に、処理剤又は処理剤と類似の性質を有する処理剤を添加して重金属を固定化除去する方法が多く知られている。
【0030】
具体的には、採取した一部の飛灰の懸濁液を酸・アルカリ滴定し、その懸濁液を中和するのに必要なリン酸の添加量を見積もる方法、採取した一部の飛灰の懸濁液にキレート剤を添加し、その吸光度から必要なキレート剤の添加量を見積もる方法、採取した一部の飛灰の懸濁液に余剰のキレート剤を添加した後、金属化合物を添加し、未反応のキレート剤と金属化合物との反応生成物であるキレート化金属の吸光度を測定し、その吸光度から必要なキレート剤の添加量を見積もる方法(特許文献2参照)等が挙げられる。
【0031】
〔処理剤供給部〕
処理剤供給部15は、処理剤添加管理部16により指示された添加量の処理剤を、前記処理剤貯留部14から飛灰処理部13に供給するものである。
【0032】
処理剤供給部15は、処理剤を処理剤貯留部14から飛灰処理部13に所定量供給できる構成であればよく、特に限定はされないが、例えば、定量フィーダーや、ポンプ、粉体供給機で構成することができる。
【0033】
(処理剤)
処理剤は、飛灰中の重金属を固定化し除去する機能を有する。処理剤としては、特に限定されず、液体状であっても、あるいは粉末状(固体状)であってもよいが、飛灰の一部を採取して分析することでその添加量が算出可能である成分を有することが必要である。例えばキレート剤、リン酸塩、セメント、水ガラス、ケイ酸塩、活性炭、中和剤などを用いることができるが、添加量の算出方法の容易性や、重金属の固定化能等の観点から、キレート剤及びリン酸塩を用いることが好ましい。
【0034】
キレート剤としては、特に限定されるものでなく、-OH、-CSSH、-SH、=NH、-COOH、-NH2 等、有害金属に対するキレート配位子を構造中に有する化合物、およびそれらの塩などを用いることができる。重金属と好適に反応し、重金属を好適に不溶化する観点から、ジチオカルバミン酸系キレート剤を用いることが好ましく、ジチオカルバミン酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、シクロアルキルジチオカルバミン酸塩、ピペラジンジチオカルバミン酸塩、テトラエチレンペンタミンジチオカルバミン酸塩、ポリアミンのジチオカルバミン酸塩を用いることがより好ましい。キレート剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、リン酸塩としては、特に限定されるものではないが、正リン酸塩、正リン酸水素塩、縮合リン酸塩、又は縮合リン酸水素塩などを用いることができる。また、これらのリン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などを用いることができる。その中でも、水溶液として添加することによるハンドリング性などの観点から、水溶性塩を用いることが好ましく、水溶性のリン酸ナトリウムを用いることがより好ましい。リン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
処理剤は、それ自身が液状の場合には、そのまま用いることができ、また溶媒と混合し希釈して用いることもできる。また、それ自身が粉体状の場合にも、そのまま用いることができ、また、溶媒に分散させて懸濁液状とすることや、溶媒に溶解させて溶液状とすることもできる。なお、以下においては、便宜上、処理剤、処理剤の希釈液、懸濁液および溶液を、「処理剤など」ということもある。
【0037】
なお、処理剤添加管理部16から送信される処理剤の添加量に関する指示は、例えば飛灰処理部13の上流側に設けた定量フィーダーなどの処理剤供給部15に伝達され、その指示に基づき処理剤供給部15を作動させて、飛灰処理部13に所定量の処理剤を添加することができる。
【0038】
〔サーバー部〕
サーバー部19は、処理剤貯留部14に貯留されている処理剤の残量情報を、直接または間接的に収集して管理する。そして、このような残量情報は、サーバー部19を通じて、例えば在庫管理者や処理剤納入業者などの関係者が取得することができるため、それらの関係者は、処理剤貯留部14内の処理剤を直接確認することなく、処理剤の残量を容易に把握することができる。また、サーバー部19は、飛灰処理部13に装入された飛灰の処理を、毎回、一定の添加量の処理剤で処理した場合における、処理剤貯留部14内の処理剤の残量が、飛灰の処理回数で、一定量ずつ減少するときの数値などを予め記憶させたデータベースや、データベースに記憶させた情報(例えば数値)を用いて、種々の情報(例えば数値)を算出する演算回路を有することが好ましい。
【0039】
残量情報としては、例えば、処理剤貯留部14に設けた処理剤の残量測定計17からの情報、処理剤添加管理部16で算出した処理剤添加量の情報、処理剤供給部15と飛灰処理部13との間に設けられた処理剤の供給量測定計18(
図1参照)からの情報などを用いることができる。また、処理の対象が、特に廃棄物を処理した焼却炉から生成される排ガス中に含まれる飛灰である場合には、その焼却炉Iにおける廃棄物の予定処理量から生成される飛灰の予測生成量の情報を用いることもできる。残量情報としては、これらの情報のうちの少なくとも1つの情報を用いればよく、特に処理剤添加管理部16で算出した処理剤添加量の情報を用いることが好ましい。処理剤添加管理部16で算出した処理剤添加量の情報は、処理剤の添加量が変動する場合であっても、処理剤貯留部14内に貯留されている処理剤の残量の消費速度(割合)を正確に予測することができ、また、処理剤が粉体である場合に生じる、内部でのブリッジングなどの不具合発生に伴う残量測定計17の誤作動によって処理剤の残量情報が不正確になるのを修正することができ、さらに、連続的に測定できる。また、処理剤添加管理部16は、処理剤と直接接触させることも、処理剤と同じ系内に配置することもないため、処理剤として酸性のリン酸塩、硫酸バンド、塩化第一鉄など腐食性がある剤を用いても、耐食材質への部品交換、センサー劣化に伴う誤作動、交換などのリスクがなく、また、表面に析出物が付着することによる誤作動も生じない。なお、処理剤貯留部14内の処理剤の残量をより正確に予測する観点から、残量情報として、2つ以上の情報を併用することがより好適である。
【0040】
(処理剤貯留部に設けた処理剤の残量測定計からの情報)
処理剤貯留部14には、残量を測定すべき処理剤の全量が貯留されている。したがって、ここに貯留されている処理剤を、残量測定計17で測定した情報から、処理剤貯留部14における処理剤の残量を予測することができる。
【0041】
残量測定計17としては、特に限定されず、レベル計や重量計などを用いることができる。これらの残量測定計17は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
レベル計は、レーザー式、超音波式、光学式、フロート式、圧力・差圧式、電圧式等、その測定原理に基づき多数の種類が存在するが、測定の対象である処理剤の特性に合わせて、選択することができる。このレベル計を用いることで、通常、直接的に処理剤などの粉体高さまたは液高さの情報が得られる。したがって、処理剤貯留部の底部の面積や、処理剤などの密度が既知であれば、残量を直接的に算出することができる。なお、処理剤を新たに納品した際に測定したレベル計の値と納品量との関係から、処理剤等の密度を見積もることができる。また、新たに処理剤を納品した際にレベル計で測定した値との関係から、残量の減少の割合を算出することができる。
【0043】
重量計は、例えば処理剤貯留部14の下流側などに設置して用いる。重量計を用いることで、通常、直接的に処理剤などの重量の情報が得られる。
【0044】
(処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報)
上述したとおり、処理剤添加管理部16は、飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示するものであるため、処理剤添加管理部16が、飛灰処理するにあたって、毎回、処理剤の添加量を算出し、処理剤供給部15に対して指示した添加量を、サーバー部19で記録して積算することで、飛灰処理により使用した処理剤の合計添加量を求めることができる。なお、この処理剤の合計添加量を、処理剤の初期の貯留量から差し引くことで、残量を求めることもできる。
【0045】
例えば、飛灰処理部13に装入された飛灰の処理を、毎回、一定の必要添加割合(例えば6%(例えば1%を80kgとする。))の添加量(例えば480kg)の処理剤で処理した場合における、処理剤貯留部14内の処理剤の残量(例えば初期の残量が15000kg)が、飛灰の処理回数(例えば1日当たり8回)で、一定量(例えば、毎回480kg))ずつ減少するときの数値を、サーバー部19のデータベースに予め記憶させておく。そして、データベースに記憶させている一定の添加量で飛灰を処理したごとに変化する処理剤の残量が、初期の残量(例えば15000kg)から起算して、発注点の残量(例えば10000kg)に達するまでの発注前期間(例えば5日間)を基準として、変動した添加量の処理剤で飛灰を処理した際に、処理剤の変動した添加量分を加味することで、処理剤の発注前期間が、どれだけ短縮または延長されるかを正確に予測することができる。具体的に、一定量の処理剤を加えたときの添加量に対する変動した添加量の増減分をΔwvとするとき、Δwvは、以下の式(1)で求められる。
Δwv=Σ{(xi%-x0%)×ni回}×wkg ・・(1)
なお、上記の式(1)において、xiは、飛灰を分析して算出した、処理剤の1回あたりの必要添加割合であって、変数であり、通常、ユーザーUなどが設定するものである。例えば、飛灰の酸度などの分析値が特定の範囲ごとに、必要添加割合を変動させることができる。また、x0は、一定の必要添加割合(例えば、後述する表1を参照)の添加量の処理剤を加えたときの、1回あたりの添加量であって、定数であり、サーバー部19のデータベースに記憶されている。niは必要添加割合xiの出現回数であって、変数である。wは、必要添加割合1%あたりの添加量であって、定数である。また、「Σ」は、xiがそれぞれの値のときの{(xi%-x0%)×ni回}を合計したものを意味する。
【0046】
なお、「発注点」は、上述の例では、処理剤の在庫量に対するものと設定したが、この例に限られず、例えば処理剤の使用量に対するものと設定することもできる。このような場合、例えば使用量が一定量を超えた場合に発注する。
【0047】
(処理剤供給部と飛灰処理部との間に設けられた処理剤の供給量測定計からの情報)
処理剤供給部15と飛灰処理部13との間に、処理剤の供給量を測定する供給量測定計18を設け、その供給量測定計18によって測定された供給量を記録して積算することで、使用した処理剤の合計添加量を求めることができる。なお、処理剤の供給量を、処理剤の初期の貯留量から差し引くことで、残量を求めることもできる。
【0048】
供給量測定計18としては、特に限定されないが、処理剤などが液状(溶液、懸濁液など)の場合には、例えば流量計や重量計を用いることができる。また、処理剤などが粉体状の場合には、例えば重量計を用いることができる。
【0049】
(処理剤供給部の稼働信号からの情報)
また、供給量測定計18を設けなくとも、処理剤供給部15の稼働に伴う出力信号(電圧、電流)を記録して積算することで、使用した処理剤の合計添加量を求めることができる。なお、処理剤の供給量を、処理剤の初期の貯留量から差し引くことで、残量を求めることもできる。
【0050】
(焼却炉における廃棄物の予定処理量から生成される飛灰の予測生成量の情報)
処理の対象が、廃棄物を処理した焼却炉から生成される排ガス中に含まれる飛灰である場合には、その焼却炉における廃棄物の予定処理量から生成される飛灰の予測生成量の情報を用いることもできる。
【0051】
例えば、焼却炉等を有する業者では、その焼却炉稼動に関する年間計画、月間計画、週間計画などの稼働計画を有していることがある。このような稼働計画を有している場合には、その計画から将来の処理剤の使用量を予測することができる。特に、処理剤の添加量に大きな変動がない場合や、例えばバッチごとには処理剤の添加量に変動があるが、所定期間の平均的な使用量に大きな変動がない場合には、将来の処理剤の使用量を正確に予測し、それを処理剤の発注に反映させることができる。
【0052】
サーバー部19は、以上のようにして収集した処理剤の残量情報を基に、処理剤貯留部14に補充すべき処理剤の時期および量を求める機能を備えることができる。
【0053】
例えば、サーバー部19は、以上のようにして収集した処理剤の残量情報を経時的に記録し、これまでの経時との関係における在庫情報の規則性や平均値などから、将来の特定の時点の残量を予測する。このようにして予測された将来の残量から補充すべき処理剤の時期および量を求めることができる。なお、補充すべき処理剤の時期および量の予測は、調達期間(発注から納入までの期間)の需要量や安全在庫量を考慮して行なうこともできる。なお、「安全在庫量」とは、発注から納入までの期間の需要の変動を吸収するための在庫量である。狭義には、安全在庫=安全係数×使用量の標準偏差×(発注リードタイム+発注間隔)1/2の式で表されるが、本発明では、発注から納入までの期間の需要の変動を吸収するために意図する在庫量全てを包含する概念である。
【0054】
また、簡易的には、以上のようにして収集した処理剤の残量情報が、発注点以下となった場合に、処理剤の発注を行うこともできる。なお、「発注点」とは、一般的には、調達期間中の平均使用量と安全在庫量の和のことを言うが、本発明における「発注点」は、これに限られず、例えば最大在庫量に対する所定の割合に設定することもできる。
【0055】
サーバー部19は、処理剤貯留部14に補充すべき処理剤の時期および量に関する情報を、在庫管理者や処理剤納入業者などの関係者に通知する機能を備えることができる。例えば、在庫管理者がこのような通知を受信する場合、在庫管理者は、この通知を契機として処理剤納入業者に発注することができる。また、処理剤納入業者がこのような通知を受信する場合、処理剤納入業者主導の納品、すなわち、いわゆるVMI(Vendor Managed Inventory)による納品が可能となる。
【0056】
<処理剤の在庫管理方法>
本実施形態に係る処理剤の在庫管理方法は、例えば上述した処理剤の在庫管理システムを用いて行うことができるものである。具体的には、処理剤添加管理部16により、飛灰処理部13に装入される飛灰の一部を採取して分析し、飛灰処理部13に装入された量の飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示する工程と、処理剤添加管理部16で指示した添加量の処理剤を、処理剤貯留部14から飛灰処理部13に供給する工程と、処理剤貯留部14に貯留されている処理剤の残量情報を、サーバー部19によって、直接または間接的に収集して管理する工程とを含むものである。
【0057】
図1に示す例では、焼却炉Fにて廃棄物を焼却することにより生成した排ガス中に含まれる飛灰は、焼却炉Fの下流に設置されたバグフィルター(図示せず)で集塵され、飛灰貯留サイロ11に貯留される。その後、定量フィーダー12で所定量が切り出され、飛灰処理部である混合ミキサー13に添加される。
【0058】
一方で、処理剤貯留部である処理剤貯留サイロ14に貯留された処理剤も、処理剤供給部である定量フィーダー15を経由して、混合ミキサー13に添加される。なお、以下においては、処理剤が液状である場合について説明する。
【0059】
以上のようにして、混合ミキサー13に添加された飛灰と処理剤は混合され、さらに加湿水と混練されて、重金属が除去された後、最終処分場へ搬出される。
【0060】
このような飛灰処理にあたって、定量フィーダー15から供給される処理剤の量は、処理剤添加管理部である処理剤添加管理装置16によって制御される。この処理剤添加管理装置16は、飛灰貯留サイロ11か、または飛灰貯留サイロ11と定量フィーダー12との間で、飛灰の一部を採取して、P酸度、Pアルカリ度、キレート剤消費量、重金属含有量など、飛灰の性状を分析する。そして、この飛灰の性状から算出した処理剤の添加量の情報を、この処理剤添加管理装置16と通信可能な状態で接続された定量フィーダー15に送信して、添加の指示を行う。この指示を受信した定量フィーダー15は、処理剤貯留サイロ14から供給された処理剤を、指示に基づく添加量だけ混合ミキサー13に添加する。そして、処理剤添加管理装置16は、定量フィーダー12に添加の指示をした処理剤の添加量(以下、「処理剤添加管理装置情報」という。)を記録する。
【0061】
このようにして処理剤が使用されると、処理剤貯留サイロ14内に貯留されている処理剤の量が減少する。処理剤貯留サイロ14の内部または近傍には、残量測定計であるレベル計17が設けられ、この残量(以下、「レベル計情報」という。)を測定する。
【0062】
また、定量フィーダー15と、混合ミキサー13との間には、供給量測定計である流量計18を設置する。この流量計は、定量フィーダー15から排出されて混合ミキサー13に供給される液量(以下、「流量計情報」という。)を測定する。
【0063】
処理剤添加管理装置16、レベル計17および流量計18は、サーバー部であるWEBサーバー19とそれぞれ通信可能な状態で接続されており、処理剤添加管理装置情報、レベル計情報および流量計情報をそれぞれWEBサーバー19に送信する。
【0064】
WEBサーバー19は、このようにして収集した情報を記憶(保持)し、処理剤貯留サイロ14中の処理剤の残量を管理する。そして、WEBサーバー19は、処理剤貯留部に補充すべき処理剤の時期および量を算出し、または予測して、ユーザーU(焼却炉運用業者)および関係者に通知する。なお、ここでいう「関係者」とは、ユーザーU、処理剤納入業者V、協力会社(処理剤保管倉庫業者W、運送業者D)など、処理剤の在庫管理を行うに際し、処理剤貯留部に補充すべき処理剤の時期および量を通知すべき者をいう。
【0065】
処理剤納入業者Vは、処理剤の納入時期や納入量を、ユーザーU、処理剤保管倉庫業者Wおよび運送業者Dとそれぞれ共有しながら、ユーザーUに処理剤を納入する。
【0066】
従来は、ユーザーUが、処理剤貯留サイロ14に貯留されている処理剤の残量を、レベル計17などを介して、随時、監視するなどして管理していたが、この管理方法は、管理が煩雑になるとともに、処理剤添加の管理に伴う使用量の変動を、リアルタイムで正確に予測することは難しかった。
【0067】
これに対し、本実施形態の在庫管理システムおよび在庫管理方法を導入することで、処理剤貯留サイロ14に貯留されている処理剤の残量(在庫量)を、リアルタイムに正確に把握することが可能になるとともに、発注点に至った時点も正確に把握することができる。そして、処理剤の正確な残量情報を、ユーザーUと処理剤納入業者Vが共有することで、処理剤の不足にともなう緊急納入や、さらには処理剤枯渇による焼却炉の運転停止などの不具合が生じるのを防止することが可能となる。
【0068】
さらには、ユーザーUと、協力者である処理剤保管倉庫業者Wや運送業者Dとが、処理剤の残量に関する情報の共有化することで、納入用配車の手配や、納入に割く人員(例えばドライバー等)の調整を効率的に行うことが可能となる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
【0070】
(実施例1)
廃棄物処理業者Aは、焼却炉を用いて廃棄物を焼却処理する業者である。この業者では、毎日午前8時から午後4時までの間、1時間毎にバッチで飛灰の処理を行っている。具体的には、各バッチ処理の開始時(8:00、9:00、10:00・・・15:00)に、飛灰に処理剤(リン酸塩)を添加し約50分混練し、その後、約10分間で次のバッチのための段取り替えを行う。すなわち、処理剤が減少するのは、各バッチ処理の開始時(8:00、9:00、10:00・・・15:00の計8回)のみである。
【0071】
廃棄物処理業者Aは、以前、WEBサーバー19を導入していなかった。
図2は、WEBサーバー導入前の従来の処理剤添加システムの概略フロー図である。この処理剤添加システム100は、
図1に示す本実施形態の処理剤の在庫管理システムの構成から、供給量測定計(流量計)18とWEBサーバー19を除いた構成を有している。そこで、WEBサーバー19の導入前は、各バッチで一定量の処理剤(480kg)を加えていた。従来、2日に1回発注することが通常の運用となっていた。
【0072】
その後、廃棄物処理業者Aは、WEBサーバー19を導入した。
図1に示す構成(ただし、流量計18のみ有しない構成である)を備える在庫管理システムを導入した。なお、残量情報は、処理剤添加管理装置情報、レベル計情報、流量計情報、焼却炉情報のうち、処理剤添加管理装置情報およびレベル計情報の2つを用いた。また、上述したとおり、流量計情報については用いなかった。
【0073】
飛灰は、その一部を採取して、処理剤添加管理装置16でP酸度を分析し、また、所定量の飛灰を、混合ミキサー13に装入する。そして、処理剤添加管理装置16でのP酸度の分析結果から、飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を、定量フィーダー15に指示し、定量フィーダー15によって、指示された処理剤であるリン酸塩の量を混合ミキサー13に添加する。ここで、処理剤添加管理装置16で分析したP酸度と、このP酸度に対する処理剤(リン酸塩)の必要添加割合(%)との関係を表1に示す。なお、表1中の処理剤(リン酸塩)の必要添加割合(%)は、80kgの処理剤の量の場合を1%(基本単位)としたときのものである。例えば、処理剤の必要添加割合が6%の場合には、処理剤の添加量は480kgを意味する。また、廃棄物処理業者Aにおける処理剤貯留部14における処理剤の最大貯留量は、15000kgであり、発注点は11000kgである。
【0074】
【0075】
下記表2に、ある一日の各バッチ(各時刻)における処理剤の必要添加割合及び必要添加量を示す。なお、この日は、8:00~11:00に開始するバッチと、12:00~15:00に開始するバッチとで、異なる業者の廃棄物に由来する飛灰を処理している。
【0076】
【0077】
WEBサーバー19の導入前に、仮に一定量(480kg)の処理剤で飛灰を処理したとすれば、この日の処理剤の添加量は(6%×8回)×80kg=3,840kgである。これに対し、WEBサーバー19の導入後においては、この日の処理剤の添加量は、8:00~11:00の4回の飛灰処理と、12:00~15:00の4回の飛灰処理とで、処理剤の添加量が変動しており、この日の処理剤の実際の添加量は、(5%×4回+8%×4回)×80kg=4,160kgであった。このことから分かるように、WEBサーバー19の導入に伴い、WEBサーバー19の導入前に比べて、多く処理剤が消費したことが分かる。そして、この分だけ処理剤の残量が少なくなる時期が早くなり、発注点に達するまでの期間が短くなる。ここで、WEBサーバー19を導入することで、いち早くこのような差異に基づく在庫量の変動を正確に予測することができる。
【0078】
また、発注点11000kgを基準にして、変動した添加量の増減分を加味したときの発注点を算出することで、一定量の処理剤を加えたときの(上記の例でいえばWEBサーバー19の導入前)発注点に比べて、どれだけ期間の短縮または延長できるかを予測することもできる。具体的に、上記の例では、上述した式(1)を用いて、一定量の処理剤を加えたときの添加量に対する変動した添加量の増減分Δwvを算出すると、
Δwv={(8%-6%)×4回+(5%-6%)×4回}×80kg=320kgとなり、処理剤の合計添加量が320kgだけ増加している。そしてまた、一定量の処理剤を加えたときに比べて、40分{320kg/(480kg/h)}だけ、発注点に達する時間が短縮されると予測することができる。
【0079】
(実施例2)
廃棄物処理業者Bは、焼却炉を用いて廃棄物を焼却処理する業者である。この業者では、毎日午前7時から廃棄物の焼却処理を開始して、その日処理すべき廃棄物の焼却処理が完了した時点で焼却炉の稼働を停止する。その後、焼却炉から排出された排ガス中に含まれる飛灰は、バグフィルターにより回収されて、所定量になったところで随時下記に示すバッチ処理を施す。
【0080】
具体的に、飛灰は、その一部を採取して、処理剤添加管理装置16でP酸度を分析し、また、所定量の飛灰を、混合ミキサー13に装入する。そして、処理剤添加管理装置16でのP酸度の分析結果から、飛灰の処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を、定量フィーダー15に指示し、定量フィーダー15によって、指示された処理剤であるリン酸塩の量を混合ミキサー13に添加する。ここで、処理剤添加管理装置16で分析したP酸度と、このP酸度に対する処理剤(リン酸塩)の必要添加割合(%)との関係は、実施例1と同様に表1に示すものとした。また、表1中の処理剤(リン酸塩)の必要添加割合(%)も、実施例1と同様に、80kgの処理剤の量の場合を1%(基本単位)としたときのものである。
【0081】
廃棄物処理業者Bは、以前、WEBサーバー19を導入していなかった。
図2は、WEBサーバー導入前の従来の処理剤添加システムの概略フロー図である。この処理剤添加システム100は、
図1に示す本実施形態の処理剤の在庫管理システムの構成から、供給量測定計(流量計)18とWEBサーバー19を除いた構成を有している。そこで、WEBサーバー19の導入前は、処理剤管理担当者が、レベル計17を目視で随時確認し、レベル系17が所定量に達した時点で処理剤の発注を行っていたが、処理剤の添加量の急激な変化などにより、予期せず、処理剤納入業者に緊急で処理剤の発注を行わざるをえないことが、前年の月平均で3回生じていた。
【0082】
そこで、廃棄物処理業者Bは、WEBサーバーを導入し、
図1に示す構成(ただし、流量計18のみ有しない構成である)を備える在庫管理システムを導入した。なお、残量情報は、処理剤添加管理装置情報、レベル計情報、流量計情報、焼却炉情報のうち、処理剤添加管理装置情報を用いて発注の管理を行った。具体的には、処理剤添加管理装置において、処理剤使用量の積算値を算出し、この積算値が11,000kgを超えた段階で要発注の警報をユーザーに通知するよう設定した。なお、レベル計情報は測定し、表3にも表記したが、その情報は発注の管理のために使用していない。また、上述したとおり、流量計情報は用いなかった。このような在庫管理システムを運用した結果、WEBサーバー導入後1ヶ月間、処理剤納入業者に緊急で処理剤の発注を行うことがなかった。
【0083】
表2に、WEBサーバー導入後のある6日間の在庫管理システムの運用実績を示す。具体的に、各日の所定の時刻における飛灰のP酸度、それに対応する処理剤添加率(表1参照)、処理剤の在庫管理システムにて記録した処理剤の使用量、レベル計の表示、処理剤の使用量に基づき算出した処理剤の残量をまとめた。
【0084】
【符号の説明】
【0085】
1 処理剤の在庫管理システム
11 飛灰貯留サイロ
12 定量フィーダー
13 飛灰処理部(または混合ミキサー)
14 処理剤貯留部(または処理剤貯留サイロ)
15 処理剤供給部(または定量フィーダー)
16 処理剤添加管理部(または処理剤添加管理装置)
17 残量測定計(またはレベル計)
18 供給量測定計(または流量計)
19 サーバー部(またはWEBサーバー)
100 処理剤添加システム