(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20221018BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20221018BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20221018BHJP
C09B 47/18 20060101ALI20221018BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20221018BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20221018BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/031
G02B5/20 101
C09B47/18
C08F2/50
C08F290/12
C08F290/14
(21)【出願番号】P 2019071053
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青葉 充哉
(72)【発明者】
【氏名】東 直人
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-046655(JP,A)
【文献】特開2015-124378(JP,A)
【文献】特開2015-124376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0053900(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0157172(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106569389(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/031
G02B 5/20
C09B 47/18
C08F 2/50
C08F 290/12
C08F 290/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤、(B)溶剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を含
有する着色樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(1)で表される化学構造を有するフタロシアニン化
合物を含み、
前記(D)光重合開始剤が、フルオレン骨格を有する光重合開始剤(d1)を含
み、
前記光重合開始剤(d1)が、下記一般式(I)で表される光重合開始剤を含むことを
特徴とする着色樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、A
1~A
16は各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は下記一般式(2)
で表される基を表す。ただし、A
1~A
16のうち1つ以上はフッ素原子を表し、かつ、A
1
~A
16のうち1つ以上は下記一般式(2)で表される基を表す。)
【化2】
(式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有し
ていてもよい。*は結合手を表す。)
【化3】
(式(I)中、R
d1
は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよ
い芳香族環基を表す。
R
d2
は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基
を表す。
pは0又は1を表す。
R
d3
は任意の1価の置換基を表す。qは0~3の整数を表す。
R
d4
及びR
d5
は各々独立に、置換基を有していてもよい、炭素数が4以上のアルキル基
を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化学構造を有するフタロシアニン化合物の含有割合が、全
固形分中に5質量%以上である、請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の着色樹脂組成物を用いて作成した画素を有する、カラーフィル
タ。
【請求項4】
請求項
3に記載のカラーフィルタを有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタを製造する方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法が知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0003】
近年、カラーフィルタに対して、より高輝度、高コントラスト且つ高色域化が要求されている。カラーフィルタの色を決める色材としては、耐熱性、耐光性等の観点から一般には顔料が用いられているが、顔料では特に高輝度については市場要求を満たすことが出来なくなってきており、色材として顔料に替えて染料を用いる検討が盛んにおこなわれている。緑色画素については染料として特定のフタロシアニン化合物を用いる検討が行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-043556号公報
【文献】特開2015-072440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが検討を行ったところ、特許文献1に記載されている着色樹脂組成物では、得られるカラーフィルタのコントラストが実用上十分ではないことが見出された。一方で特許文献2に記載されている着色樹脂組成物では、得られるカラーフィルタの輝度が実用上十分ではないことが見出された。
そこで本発明は、コントラスト及び輝度が実用上十分なパターンを形成可能な着色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、着色剤として特定のフタロシアニン化合物を用い、さらに、光重合開始剤として特定の光重合開始剤を用いることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[5]の構成を有する。
【0007】
[1] (A)着色剤、(B)溶剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を含有する着色樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(1)で表される化学構造を有するフタロシアニン化合物を含み、
前記(D)光重合開始剤が、フルオレン骨格を有する光重合開始剤(d1)を含むことを特徴とする着色樹脂組成物。
【0008】
【0009】
(式(1)中、A1~A16は各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は下記一般式(2)で表される基を表す。ただし、A1~A16のうち1つ以上はフッ素原子を表し、かつ、A1~A16のうち1つ以上は下記一般式(2)で表される基を表す。)
【0010】
【0011】
(式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。*は結合手を表す。)
【0012】
[2] 前記一般式(1)で表される化学構造を有するフタロシアニン化合物の含有割合が、全固形分中に5質量%以上である、[1]に記載の着色樹脂組成物。
【0013】
[3] 前記光重合開始剤(d1)が、下記一般式(I)で表される光重合開始剤を含む、[1]又は[2]に記載の着色樹脂組成物。
【0014】
【0015】
(式(I)中、Rd1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
Rd2は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
pは0又は1を表す。
Rd3は任意の1価の置換基を表す。qは0~3の整数を表す。
Rd4及びRd5は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。Rd4とRd5は相互に結合して環を形成していてもよい。)
【0016】
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の着色樹脂組成物を用いて作成した画素を有する、カラーフィルタ。
[5] [4]に記載のカラーフィルタを有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コントラスト及び輝度が実用上十分なパターンを形成可能な着色樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明のカラーフィルタを有する有機EL表示素子の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をさす。
また本発明において、「全固形分」とは、着色樹脂組成物における溶剤以外の全成分を意味するものとする。
また本発明において、「アミン価」とは、特に断りのない限り有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの質量で表される値である。
また本発明において、「C.I.」とはカラーインデックスを意味する。
【0020】
[1]着色樹脂組成物の構成成分
以下に本発明の着色樹脂組成物の各構成成分を説明する。本発明に係る着色樹脂組成物は、(A)着色剤、(B)溶剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を必須成分とし、更に要すれば、上記成分以外の他の添加物等が配合されていてもよい。
以下、各構成成分を説明する。
【0021】
[1-1](A)着色剤
本発明の着色樹脂組成物に含まれる(A)着色剤は、下記一般式(1)で表される化学構造を有するフタロシアニン化合物(以下、「フタロシアニン化合物(1)」と称する場合がある。)を含む。
【0022】
【0023】
式(1)中、A1~A16は各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は下記一般式(2)で表される基を表す。ただし、A1~A16のうち1つ以上はフッ素原子を表し、かつ、A1~A16のうち1つ以上は下記一般式(2)で表される基を表す。
【0024】
【0025】
式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。*は結合手を表す。
【0026】
本発明の着色樹脂組成物に含まれる(A)着色剤はフタロシアニン化合物(1)を含むが、フタロシアニン化合物(1)は、フタロシアニン環同士のπ-π相互作用、前記一般式(2)で表される基同士のπ-π相互作用によって分子同士が会合しやすく、さらに、原子半径が小さいフッ素原子を有することで分子同士のパッキングがより密となり、二分子間の会合体形成によって輝度が高くなると考えられる。
【0027】
その一方で、フタロシアニン化合物(1)は、分子間のπ-π相互作用等によって二分子間の会合体形成にとどまらず、さらに会合が進行して凝集体を形成しやすいため、その凝集体による光散乱によってコントラストが低下しやすい傾向があると考えられる。
【0028】
そこで本発明の着色樹脂組成物では、フルオレン骨格を有する光重合開始剤を含むことで、そのフルオレン骨格とフタロシアン環とのπ-π相互作用により、フタロシアン化合物(1)同士の二分子間の会合体形成は促進しつつも、過度の会合による凝集体形成が抑制され、光散乱が発生しにくくなりコントラスト低下が抑制できると考えられる。このとき、電子豊富なフタロシアニン骨格に対して、電荷移動作用により、芳香族複素環骨格よりも芳香族炭化水素環骨格の方が相互作用しやすいからだと考えられる。
【0029】
(A1~A16)
前記式(1)中、A1~A16は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は下記一般式(2)で表される基を表す。ただし、A1~A16のうち1つ以上はフッ素原子を表し、かつ、A1~A16のうち1つ以上は下記一般式(2)で表される基を表す。
【0030】
【0031】
式(2)中、Xは2価の連結基を表す。式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。*は結合手を表す。
【0032】
(X)
前記一般式(2)中のXは2価の連結基を表す。2価の連結基としては特に限定されないが、酸素原子、硫黄原子、又は-N(Ra1)-基(Ra1は水素原子、又は炭素数1~6の脂肪族炭化水素基を表す。)が挙げられる。これらの中でもフタロシアニン化合物(1)のベーク時における安定性の観点から、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0033】
(ベンゼン環が有していてもよい置換基)
また、式(2)中のベンゼン環は任意の置換基を有していてもよい。該置換基としては特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基(-ORA基(ただし、RAはアルキル基を表す。))、アルコキシカルボニル基(-COORA基(ただし、RAはアルキル基を表す。))、アリール基、アリールオキシ基(-ORB基(ただし、RBはアリール基を表す。))、アリールオキシカルボニル基(-COORB基(ただし、RBはアリール基を表す。))が挙げられ、これらの基に含まれるアルキル基(-RA基)やアリール基(-RB基)が、さらにこれらの置換基で置換されていてもよい。これらの中でも、溶剤への溶解性や輝度の観点から、アルコキシカルボニル基が好ましい。
【0034】
なおこれらの基に含まれるアルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよいが、溶剤への溶解性と輝度の観点から直鎖状であることが好ましい。
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで、親油性が向上し、フタロシアニン化合物(1)の溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで、フタロシアニン環同士のπ-π相互作用を阻害せず、二分子間の会合体形成によって輝度が高くなる傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、溶剤への溶解性と輝度の観点からメチル基又はエチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0035】
またこれらの基に含まれるアリール基は、芳香族炭化水素環基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。
アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常4以上、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでフタロシアニン化合物(1)の溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアリール基起因の色相変化が抑制される傾向がある。
【0036】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、チオフェン環、ピロール環、2H-ピラン環、4H-チオピラン環、ピリジン環、1,3-オキサゾール環、イソオキサゾール環、1,3-チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,3,5-トリアジン環、ベンゾフラン環 、2-ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、2-ベンゾチオフェン環、1H-ピロリジン環、インドール環、イソインドール環、インドリジン環、2H-1-ベンゾピラン環、1H-2-ベンゾピラン環、キノリン環、イソキノリン環、4H-キノリジン環、ベンゾイミダゾール環、1H-インダゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、1,8-ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環などの基が挙げられる。
【0037】
式(2)中のベンゼン環が任意の置換基を有する場合、その置換数は特に限定されないが、フタロシアニン化合物(1)の溶剤への溶解性に影響する親油性と、フタロシアニン化合物(1)の二分子間の会合体形成による輝度向上の観点から、該ベンゼン環1つに対して置換数が1であることが好ましい。
また、式(2)中のベンゼン環が任意の置換基を有する場合、その置換位置は、o-位でも、m-位でも、p-位でもよいが、分子の対称性から導かれるフタロシアニン化合物(1)の二分子間の会合体形成による輝度向上の観点から、p-位が好ましい。
【0038】
A1~A16のうち1つ以上はフッ素原子を表すが、フタロシアニン化合物(1)の二分子間の会合体形成による輝度向上の観点から、A1~A4のうち1つ以上がフッ素原子であり、A5~A8のうち1つ以上がフッ素原子であり、A9~A12のうち1つ以上がフッ素原子であり、かつ、A13~A16のうち1つ以上がフッ素原子であることが好ましく、A1~A4のうち2つ以上がフッ素原子であり、A5~A8のうち2つ以上がフッ素原子であり、A9~A12のうち2つ以上がフッ素原子であり、かつ、A13~A16のうち2つ以上がフッ素原子であることがより好ましい。
【0039】
また、A1~A16のうち1つ以上は前記一般式(2)で表される基を表すが、溶剤への溶解性の観点から、A1~A4のうち1つ以上が前記一般式(2)で表される基であり、A5~A8のうち1つ以上が前記一般式(2)で表される基であり、A9~A12のうち1つ以上が前記一般式(2)で表される基であり、かつ、A13~A16のうち1つ以上が前記一般式(2)で表される基であることが好ましく、A1~A4のうち2つ以上が前記一般式(2)で表される基であり、A5~A8のうち2つ以上が前記一般式(2)で表される基であり、A9~A12のうち2つ以上が前記一般式(2)で表される基であり、かつ、A13~A16のうち2つ以上が前記一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
特に、カラーフィルタで求められる色目、輝度、溶剤への溶解性の観点から、A2、A3、A6、A7、A10、A11、A14、及びA15が前記一般式(2)で表される基であり、かつ、A1、A4、A5、A8、A9、A12、A13、及びA16がフッ素原子であることが特に好ましい。
【0040】
フタロシアニン化合物(1)の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
フタロシアニン化合物(1)の製造方法としては公知の方法を採用することができ、例えば、特開平05-345861号公報に記載の方法を採用することができる。
【0046】
(A)着色剤は、フタロシアニン化合物(1)以外に、その他の着色剤を含んでいてもよい。その他の着色剤としては、顔料や染料が挙げられる。これらの中でも、緑色画素用途に用いる場合には、緑色顔料、緑色染料、黄色顔料、黄色染料などを用いることが好ましい。
緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63などが挙げられ、輝度の観点からC.I.ピグメントグリーン58が好ましい。
緑色染料としては、カラーインデックスで染料に分類されているものの中で、C.I.ソルベント染料としてC.I.ソルベントグリーン1、3、4、5、7、28、29、32、33、34、35が挙げられ、またC.I.アシッド染料としてC.I.アシッド・グリーン1、3、5、9、16、25、27、50、58、63、65、80、104、105、106、109、C.I.モーダント・グリーン1、3、4、5、10、15、19、26、29、33、34、35、41、43、53などが挙げられる。これらの中でも、熱焼成時の染料分解抑制の観点からC.I.ソルベントグリーン1、3、4、5、7、28、29、32、33、34、35が好ましい。
【0047】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、86、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、125、126、127、127:1、128、129、133、134、136、137、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、及び下記式(i)で表されるアゾバルビツール酸のニッケルとの1:1錯体又はその互換異性体に、他の化合物が挿入されてなる化合物(以下、「式(i)で表されるニッケルアゾ錯体」と称する場合がある。)等が挙げられる。
【0048】
【0049】
また、前記他の化合物としては、下記式(ii)で表される化合物などが挙げられる。
【0050】
【0051】
この中でも、高輝度および高色域の観点から、C.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、154、155、180、185、及び式(i)で表されるニッケルアゾ錯体が好ましく、C.I.ピグメントイエロー83、138、139、180、185及び式(i)で表されるニッケルアゾ錯体がより好ましい。
【0052】
黄色染料としては、バルビツール酸アゾ系染料、ピリドンアゾ系染料、ピラゾロンアゾ系染料、キノフタロン系染料、シアニン系染料などが挙げられる。その具体例としては、特開2010-168531号公報に記載の具体的化合物が挙げられる。
カラーインデックスで染料に分類されているものの中で、C.I.ソルベント染料として、C.I.ソルベント・イエロー4、14、15、23、24、38、62、63、68、79、82、94、98、99、162、163などが挙げられる。またC.I.アシッド染料としてC.I.アシッド・グリーン1、3、5、9、16、25、27、50、58、63、65、80、104、105、106、109、C.I.アシッド・イエロー1、3、7、9、11、17、23、25、29、34、36、38、40、42、54、65、72、73、76、79、98、99、111、112、113、114、116、119、123、128、134、135、138、139、140、144、150、155、157、160、161、163、168、169、172、177、178、179、184、190、193、196、197、199、202、203、204、205、207、212、214、220、221、228、230、232、235、238、240、242、243、251やその誘導体が挙げられる。またC.I.ダイレクト染料としてC.I.ダイレクト・イエロー2、33、34、35、38、39、43、47、50、54、58、68、69、70、71、86、93、94、95、98、102、108、109、129、136、138、141などの染料が挙げられる。さらに、C.I.モーダント染料としてC.I.モーダント・イエロー5、8、10、16、20、26、30、31、33、42、43、45、56、61、62、65などの染料が挙げられ、好ましくは、C.I.ソルベント・イエロー4、14、15、23、24、38、62、63、68、82、94、98、99、162、C.I.アシッド・イエロー1、3、7、9、11、17、23、25、29、34、36、38、40、42、54、65、72、73、76、79、98、99、111、112、113、114、116、119、123、128、134、135、138、139、140、144、150、155、157、160、161、163、168、169、172、177、178、179、184、190、193、196、197、199、202、203、204、205、207、212、214、220、221、228、230、232、235、238、240、242、243、251、23、25、29、34、40、42、72、76、99、111、112、114、116、163、243やその誘導体が挙げられる。
これらの中でも、熱焼成時の染料分解抑制の観点から、C.I.ソルベント・イエロー4、14、15、23、24、38、62、63、68、79、82、94、98、99、162及び163からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0053】
顔料の平均一次粒子径は、通常0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.04μm以下である。顔料の微粒化に際しては、上述したソルベントソルトミリングのような手法が好適に用いられる。
【0054】
本発明の着色樹脂組成物における(A)着色剤の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がよりさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましく、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、45質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで輝度や色域等の色特性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでパターン形成性が良好となる傾向がある。
【0055】
本発明の着色樹脂組成物におけるフタロシアニン化合物(1)の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上がよりさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がよりさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで輝度や色域等の色特性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでパターン形成性が良好となる傾向がある。
【0056】
その他の着色剤を含む場合、その含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上がよりさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましく、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで輝度や色域等の色特性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでパターン形成性が良好となる傾向がある。
【0057】
[1-2](B)溶剤
(B)溶剤は、本発明の着色樹脂組成物や顔料分散液において、着色剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、その他の成分を溶解又は分散させ、粘度を調節する機能を有する。
かかる(B)溶剤としては、各成分を溶解または分散させることができるものであればよい。
【0058】
このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
【0059】
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
【0060】
エチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;
シクロヘキサノールアセテートなどのアルキルアセテート類;
アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコールのような1価又は多価アルコール類;
n-ペンタン、n-オクタン、ジイソブチレン、n-ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
【0061】
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類等が挙げられる。
【0062】
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
フォトリソグラフィ法にてカラーフィルタの画素を形成する場合、溶剤としては沸点が100~200℃(圧力1013.25[hPa]条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120~170℃の沸点をもつものである。
上記溶剤中、塗布性、表面張力などのバランスが良く、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、グリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましい。
【0064】
また、グリコールアルキルエーテルアセテート類は、単独で使用してもよいが、他の溶剤を併用してもよい。併用する溶剤として、特に好ましいのはグリコールモノアルキルエーテル類である。中でも、特に組成物中の構成成分の溶解性の観点からプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。なお、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、添加量が多すぎると顔料が凝集しやすく、後に得られる着色樹脂組成物の粘度が上がっていくなどの保存安定性が低下する傾向があるので、溶剤中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5質量%~30質量%が好ましく、5質量%~20質量%がより好ましい。
【0065】
また、150℃以上の沸点をもつ溶剤を併用することも好ましい。このような高沸点の溶剤を併用することにより、着色樹脂組成物は乾きにくくなるが、急激に乾燥することによる顔料分散液の相互関係の破壊を起こし難くする効果がある。高沸点溶剤の含有割合は、(B)溶剤に対して3質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が特に好ましい。前記下限値以上とすることで、例えばスリットノズル先端で色材成分などが析出・固化して異物欠陥を惹き起こすことを回避しやすい傾向があり、また前記上限値以下とすることで組成物の乾燥速度が遅くなって減圧乾燥プロセスのタクト不良や、プリベークのピン跡といった問題を惹き起こすことを回避しやすい傾向がある。
なお沸点150℃以上の溶剤が、グリコールアルキルエーテルアセテート類であっても、またグリコールアルキルエーテル類であってもよく、この場合は、沸点150℃以上の溶剤を別途含有させなくてもかまわない。
好ましい高沸点溶剤として、例えば前述の各種溶剤の中ではジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテート、トリアセチンなどが挙げられる。
【0066】
インクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成する場合、溶剤としては、沸点が、通常130℃以上300℃以下、好ましくは150℃以上280℃以下のものが適当である。前記下限値以上とすることで、得られる塗膜の均一性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで、焼成時の残留溶剤を低減しやすい傾向がある。
また、溶剤の蒸気圧は、得られる塗膜の均一性の観点から、通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下のものが使用できる。
【0067】
なお、インクジェット法によるカラーフィルタ製造において、ノズルから発せられるインクは数~数十pLと非常に微細であるため、ノズル口周辺あるいは画素バンク内に着弾する前に、溶剤が蒸発してインクが濃縮・乾固する傾向がある。これを回避するためには溶剤の沸点は高い方が好ましく、具体的には、沸点180℃以上の溶剤を含むことが好ましい。より好ましくは沸点が200℃以上、特に好ましくは沸点が220℃以上である溶剤を含有する。また、沸点180℃以上である高沸点溶剤は着色樹脂組成物に含まれる全溶剤中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が最も好ましい。前記下限値以上とすることで、液滴からの溶剤の蒸発防止効果が十分に発揮されやすい傾向がある。
【0068】
好ましい高沸点溶剤として、例えば前述の各種溶剤の中ではジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテート、トリアセチンなどが挙げられる。
さらに、着色樹脂組成物の粘度調整や固形分の溶解度調整のためには、沸点が180℃より低い溶剤を一部含有することも効果的である。このような溶剤としては、低粘度で溶解性が高く、低表面張力であるような溶剤が好ましく、エーテル類、エステル類やケトン類などが好ましい。中でも特に、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノールアセテートなどが好ましい。
【0069】
一方、溶剤がアルコール類を含有すると、インクジェット法における吐出安定性が劣化する場合がある。よって、アルコール類は全溶剤中20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0070】
本発明の着色樹脂組成物に占める溶剤の含有割合は特に限定されないが、その上限は、通常99質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。前記上限値以下とすることで塗布膜を形成しやすくなる傾向がある。一方で、溶剤含有割合の下限は、塗布に適した粘性などを考慮して、通常70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは78質量%以上である。
【0071】
[1-3](C)アルカリ可溶性樹脂
本発明の着色樹脂組成物は、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する。(C)アルカリ可溶性樹脂を含有することで、光重合による膜硬化性と現像液による溶解性を両立することができる。
(C)アルカリ可溶性樹脂としては、例えば特開平7-207211号公報、特開平8-259876号公報、特開平10-300922号公報、特開平11-140144号公報、特開平11-174224号公報、特開2000-56118号公報、特開2003-233179号公報などの各公報等に記載される公知の高分子化合物を使用することができるが、中でも好ましくは下記(C-1)~(C-5)の樹脂などが挙げられる。
(C-1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂(以下「樹脂(C-1)」と称する場合がある。)
(C-2)主鎖にカルボキシル基を含有する直鎖状アルカリ可溶性樹脂(以下、「樹脂(C-2)」と称する場合がある。)
(C-3)前記樹脂(C-2)のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下、「樹脂(C-3)」と称する場合がある。)
(C-4)(メタ)アクリル系樹脂(以下、「樹脂(C-4)」と称する場合がある。)
(C-5)カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(以下、「樹脂(C-5)」と称する場合がある。)
このうち特に好ましくは樹脂(C-1)が挙げられ、以下詳述する。
【0072】
なお、樹脂(C-2)~(C-5)は、アルカリ性の現像液によって溶解され、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有するものであれば何でもよく、各々、特開2009-025813号公報に同項目として記載されているものを好ましく採用することができる。
【0073】
(C-1)エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂
樹脂(C-1)の好ましい態様の1つとして、「エポキシ基含有(メタ)アクリレート5~90モル%と、他のラジカル重合性単量体10~95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10~100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の10~100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂」が挙げられる。
【0074】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、下記一般式(V)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0076】
【0077】
式(V)中、R91~R98は各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。なお、R96とR98、又はR95とR97とが、互いに連結して環を形成していてもよい。
式(V)において、R96とR98、又はR95とR97とが連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和の何れでもよく、又、炭素数が5~6であるのが好ましい。
【0078】
中でも、一般式(V)で表される構造としては、下記式(Va)、(Vb)、又は(Vc)で表される構造が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の着色樹脂組成物をカラーフィルタ形成用に使用する場合に、該着色樹脂組成物の耐熱性が向上し、該着色樹脂組成物を用いて形成された画素の強度が増す傾向がある。
【0079】
なお、一般式(V)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
【0081】
前記一般式(V)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り公知の各種のものが使用できるが、特に下記一般式(VI)で表されるモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0082】
【0083】
式(VI)中、R89は水素原子又はメチル基を表し、R90は下記一般式(V)で表される構造を表す。
【0084】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体において、前記一般式(VI)で表されるモノ(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位の含有割合は、前記他のラジカル重合性単量体に由来する繰り返し単位中に、5~90モル%含有するものが好ましく、10~70モル%含有するものが更に好ましく、15~50モル%含有するものが特に好ましい。
【0085】
なお、前記一般式(VI)で表されるモノ(メタ)アクリレート以外の、他のラジカル重合性単量体としては、特に限定されるものではないが具体的には、例えば、スチレン、スチレンのα-、o-、m-、p-アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体等のビニル芳香族類;ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸-1,1,1-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジ-iso-プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等のビニル化合物類;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド等のモノマレイミド類;N-(メタ)アクリロイルフタルイミド等が挙げられる。
【0086】
これら他のラジカル重合性単量体の中でも、着色樹脂組成物に優れた耐熱性及び強度を付与させるとの観点からは、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドからなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。特に他のラジカル重合性単量体に由来する繰り返し単位中に、これらスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドからなる群から選ばれる1種以上に由来する繰り返し単位の含有割合が、1~70モル%であるものが好ましく、3~50モル%であるものが更に好ましい。
【0087】
なお、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。使用する溶剤はラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。
その溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
これらの溶剤の使用量は、得られる共重合体100質量部に対し、通常30~1000質量部、好ましくは50~800質量部である。溶剤の使用量を前記範囲内とすることで共重合体の分子量の制御が容易となる傾向がある。
また、共重合反応に使用されるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物触媒を使用することができる。その有機過酸化物触媒としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものが挙げられる。
【0089】
その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシル-3、3-イソプロピルヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0090】
又、アゾ化合物触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド等が挙げられる。
これらの中から、重合温度に応じて、適当な半減期のラジカル重合開始剤が1種又は2種以上使用される。ラジカル重合開始剤の使用量は、共重合反応に使用される単量体の合計100質量部に対して、通常0.5~20質量部、好ましくは1~10質量部である。
【0091】
共重合反応は、共重合反応に使用される単量体及びラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して行ってもよいし、ラジカル重合開始剤を添加した単量体を、昇温、攪拌した溶剤中に滴下して行ってもよい。又、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加し昇温した中に単量体を滴下してもよい。反応条件は目標とする分子量に応じて自由に変えることができる。
【0092】
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位5~90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰り返し単位10~95モル%と、からなるものが好ましく、前者20~80モル%と、後者80~20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30~70モル%と、後者70~30モル%とからなるものが特に好ましい。
【0093】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位の含有割合を前記下限値以上とすることで、後述する不飽和一塩基酸や多塩基酸無水物の付加量が十分となる傾向があり、一方で、他のラジカル重合性単量体に由来する繰り返し単位の含有割合を前記下限値以上とすることで、耐熱性や強度が十分となる傾向がある。
続いて、エポキシ樹脂含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
【0094】
エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸、α-位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
このような成分を付加させることにより、樹脂(C-1)に重合性を付与することができる。
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10~100モル%に付加させるが、好ましくは30~100モル%、より好ましくは50~100モル%に付加させる。前記下限値以上とすることで、着色樹脂組成物の経時安定性が良好となる傾向がある。なお、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0096】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、及び/又は無水コハク酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
このような成分を付加させることにより、樹脂(C-1)にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10~100モル%に付加させるが、好ましくは20~90モル%、より好ましくは30~80モル%に付加させる。前記上限値以下とすることで、現像時の残膜率が良好となる傾向があり、また、前記下限値以上とすることで溶解性が十分となる傾向がある。なお、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0098】
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
また、現像性を向上させるために、生成したカルボキシル基の一部に、重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
【0099】
又、この両方を付加させてもよい。
重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニル基やアルキル基を有するグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。市販品として、例えば、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-111」、「デナコールEX-121」、「デナコールEX-141」、「デナコールEX-145」、「デナコールEX-146」、「デナコールEX-171」、「デナコールEX-192」等がある。
【0100】
なお、このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8-297366号公報や特開2001-89533号公報に記載されており、既に公知である。
樹脂(C-1)のGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、3000~100000が好ましく、5000~50000が特に好ましい。前記下限値以上とすることで、耐熱性や膜強度が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像液に対する溶解性が良好となる傾向がある。また、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0~5.0が好ましい。
【0101】
一方で、紫外線露光時の塗膜硬化性の観点から、(C)アルカリ可溶性樹脂の中でも、(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂が好ましい。
(c1)アクリル共重合樹脂が有する、エチレン性不飽和基を有する側鎖を含む部分構造は特に限定されないが、紫外線露光時の塗膜硬化性とアルカリ現像時のアルカリ溶解性の両立の観点から、例えば、下記一般式(I)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0102】
【0103】
式(I)中、R1及びR2は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。*は結合手を表す。
【0104】
また、前記式(I)で表される部分構造の中でも、感度やアルカリ現像性の観点から、下記一般式(I’)で表される部分構造が好ましい。
【0105】
【0106】
式(I’)中、R1及びR2は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。RXは水素原子又は多塩基酸残基を表す。
【0107】
多塩基酸残基とは、多塩基酸又はその無水物からOH基を1つ除した1価の基を意味する。多塩基酸としては、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸から選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中でもパターニング特性の観点から、好ましくは、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸であり、より好ましくは、テトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸である。
【0108】
(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂に含まれる、前記一般式(I)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がよりさらに好ましく、50モル%以上が特に好ましく、65モル%以上が最も好ましく、また、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましく、80モル%以下がよりさらに好ましく、75モル%以下が特に好ましく、70モル%以下が最も好ましい。前記下限値以上とすることで紫外線露光時の塗膜硬化性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアルカリ現像時のアルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0109】
(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂に含まれる、前記一般式(I’)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がよりさらに好ましく、50モル%以上が特に好ましく、65モル%以上が最も好ましく、また、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましく、80モル%以下がよりさらに好ましく、75モル%以下が特に好ましく、70モル%以下が最も好ましい。前記下限値以上とすることで紫外線露光時の塗膜硬化性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアルカリ現像時のアルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0110】
(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、他に含まれる部分構造は特に限定されないが、アルカリ現像時のアルカリ溶解性の観点から、例えば、下記一般式(II)で表される部分構造を有することも好ましい。
【0111】
【0112】
上記式(II)中、R3は水素原子又はメチル基を表し、R4は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族環基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
【0113】
(R4)
前記式(II)において、R4は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族環基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
R4におけるアルキル基としては直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、8以上であることが特に好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0114】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ドデカニル基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、ジシクロペンタニル基又はドデカニル基が好ましく、ジシクロペンタニル基がより好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0115】
R4における芳香族環基としては、1価の芳香族炭化水素環基及び1価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は6以上であることが好ましく、また、24以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、18以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環基としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、ベンゼン環基、又はナフタレン環基が好ましく、ベンゼン環基がより好ましい。
また、芳香族環基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0116】
R4におけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0117】
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、2-プロペン-2-イル基、2-ブテン-1-イル基、3-ブテン-1-イル基、2-ペンテン-1-イル基、3-ペンテン-2-イル基、ヘキセニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、ビニル基又はアリル基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
【0118】
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0119】
このように、R4は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族環基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表すが、これらの中でも現像性と膜強度の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0120】
(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂における前記一般式(II)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、20モル%以上が特に好ましく、また、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましく、40モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでアルカリ溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで着色樹脂組成物の保存安定性が向上する傾向がある。
【0121】
(c1)アクリル共重合樹脂が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、他に含まれる部分構造として、フタロシアニン化合物(1)とアクリル共重合樹脂の親和性を向上させることによる、フタロシアニン化合物(1)のアルカリ溶解性の観点から下記一般式(III)で表される部分構造が含まれることが好ましい。
【0122】
【0123】
上記式(III)中、R5は水素原子又はメチル基を表し、R6は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表す。tは0~5の整数を表す。
【0124】
(R6)
前記式(III)においてR6は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表す。
R6におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0125】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ドデカニル基等が挙げられる。これらの中でも耐熱性の観点から、ジシクロペンタニル基又はドデカニル基が好ましく、ジシクロペンタニル基がより好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0126】
R6におけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0127】
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、2-プロペン-2-イル基、2-ブテン-1-イル基、3-ブテン-1-イル基、2-ペンテン-1-イル基、3-ペンテン-2-イル基、ヘキセニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル等が挙げられる。これらの中でも紫外線露光時の露光感度の観点から、ビニル基又はアリル基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
【0128】
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0129】
R6におけるアルキニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0130】
アルキニル基の具体例としては、1-プロピン-3-イル基、1-ブチン-4-イル基、1-ペンチン-5-イル基、2-メチル-3-ブチン-2-イル基、1,4-ペンタジイン-3-イル基、1,3-ペンタジイン-5-イル基、1-ヘキシン-6-イル基、等が挙げられる。
【0131】
また、アルキニル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0132】
R6におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でもアクリル共重合樹脂の保存安定性の観点からはフッ素原子が好ましい。
【0133】
R6におけるアルコキシ基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0134】
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、等が挙げられる。
【0135】
また、アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0136】
R6におけるアルキルスルフィド基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルスルフィド基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで親油性が向上し、溶剤への溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで親水性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0137】
アルキルスルフィド基の具体例としては、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、メチルスルフィド基又はエチルスルフィド基が好ましい。
【0138】
また、アルキルスルフィド基におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0139】
このように、R6は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表すが、これらの中でも現像性の観点から、ヒドロキシル基又はカルボキシル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0140】
前記式(III)においてtは0~5の整数を表すが、製造容易性の観点からはtが0であることが好ましい。
【0141】
(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂における前記一般式(III)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、5モル%以上がさらに好ましく、8モル%以上が特に好ましく、また、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましく、20モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでフタロシアニン化合物(1)とアクリル共重合樹脂の親和性が向上し、アルカリ溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでその他部分構造の含有割合が増え、アルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0142】
(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂が前記一般式(I)で表される部分構造を有する場合、他に含まれる部分構造として、現像性の観点から下記一般式(IV)で表される部分構造を有することも好ましい。
【0143】
【0144】
上記式(IV)中、R7は水素原子又はメチル基を表す。
【0145】
(c1)側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル共重合樹脂における前記一般式(IV)で表される部分構造を含有する場合の含有割合は特に限定されないが、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、また、80モル%以下が好ましく70モル%以下がより好ましく、60%モル以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでアルカリ溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで着色樹脂組成物の保存安定性が向上する傾向がある。
【0146】
一方で、(C)アルカリ可溶性樹脂の酸価は特に限定されないが、10mgKOH/g以上が好ましく、30mgKOH/g以上がより好ましく、40mgKOH/g以上がさらに好ましく、50mgKOH/g以上がよりさらに好ましく、60mgKOH/g以上が特に好ましく、また、300mgKOH/g以下が好ましく、250mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下がさらに好ましく、150mgKOH/g以下がよりさらに好ましい。前記下限値以上とすることでアルカリ溶解性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで着色樹脂組成物の保存安定性が向上する傾向がある。
【0147】
(C)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、通常1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上、さらに好ましくは6000以上、よりさらに好ましくは7000以上、特に好ましくは8000以上であり、また、通常30000以下、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは10000以下である。前記下限値以上とすることで耐熱性や塗膜硬化性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアルカリ溶解性が向上する傾向がある。
【0148】
本発明の着色樹脂組成物における(C)アルカリ可溶性樹脂の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、また、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。前記下限値以上とすることにより、強固な膜が得られ、基板への密着性にも優れる傾向がある。また、前記上限値以下とすることにより、露光部への現像液の浸透性が低く、画素の表面平滑性や感度の悪化を抑制できる傾向がある。
【0149】
[1-4](D)光重合開始剤
本発明の着色樹脂組成物は(D)光重合開始剤を含有する。(D)光重合開始剤を含有することで光重合による膜硬化性を得ることができる。
(D)光重合開始剤は、加速剤(連鎖移動剤)及び必要に応じて添加される増感色素等の付加剤との混合物(光重合開始系)として用いることもできる。光重合開始系は、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0150】
本発明の着色樹脂組成物における(D)光重合開始剤は、フルオレン骨格を有する光重合開始剤(d1)(以下、「光重合開始剤(d1)」と称する場合がある。)を含む。
光重合開始剤(d1)を含むことで、そのフルオレン骨格とフタロシアニン化合物(1)のフタロシアン環とのπ-π相互作用により、フタロシアン化合物(1)の凝集体形成が抑制され、光散乱が発生しにくくなりコントラスト低下が抑制できるとなると考えられる。
【0151】
フルオレン骨格を有する光重合開始剤(d1)の中でも、溶剤への溶解性とコントラスト低下抑制の観点から、下記一般式(I)で表される光重合開始剤が好ましい。
【0152】
【0153】
式(I)中、Rd1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
Rd2は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
pは0又は1を表す。
Rd3は任意の1価の置換基を表す。qは0~3の整数を表す。
Rd4及びRd5は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。Rd4とRd5は相互に結合して環を形成していてもよい。
【0154】
(Rd1)
前記式(I)において、Rd1は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
Rd1におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下、最も好ましくは2以下であり、通常1以上である。アルキル基の炭素数を前記上限値以下とすることで、溶剤への溶解性が向上し、フタロシアン環とのπ-π相互作用により、フタロシアン化合物(1)の凝集体形成が抑制されコントラスト低下を抑制する傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、感度の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数6~10の芳香族環基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0155】
Rd1における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで分子が安定となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0156】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0157】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基又は水酸基が好ましい。
【0158】
これらの中でも感度の観点から、Rd1は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0159】
(Rd2)
前記式(I)において、Rd2は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
Rd2におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよいが、溶剤溶解性の観点から直鎖状又は分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。一方で、感度の観点からは直鎖状アルキル基と環状アルキル基とを結合した基が好ましい。
【0160】
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、よりさらに好ましくは5以上、特に好ましくは6以上、最も好ましくは7以上、また、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下、特に好ましくは8以下である。アルキル基の炭素数を前記下限値以上とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
【0161】
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数6~10の芳香族環基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0162】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基などが挙げられる。これらの中でも、溶剤溶解性の観点から、イソペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、又はシクロヘキシルエチル基が好ましく、シクロペンチルエチル基又はシクロヘキシルエチル基がより好ましく、シクロヘキシルエチル基がさらに好ましい。
【0163】
Rd2における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで分子が安定となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0164】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0165】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1~5のアルコキシ基又は水酸基が好ましい。置換基のアルキル鎖部分は、直鎖状でも分岐状でもよく、更に、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のアルキルチオ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などの置換基を有していてもよい。
【0166】
これらの中でも溶剤への溶解性とコントラスト低下抑制の観点から、Rd2は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0167】
(p)
前記式(I)において、pは0又は1を表す。感度の観点からはpが0であることが好ましく、一方で溶剤溶解性の観点からはpが1であることが好ましい。
【0168】
(Rd3)
前記式(I)において、Rd3は任意の1価の置換基を表す。
任意の1価の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子;炭素数1~10のアシル基;炭素数1~10のアルキルエステル基;炭素数1~10のアルコキシカルボニル基;炭素数1~10のハロゲン化アルキル基;炭素数4~10の芳香族環基;アミノ基;炭素数1~10のアミノアルキル基;水酸基;ニトロ基;CN基;置換基を有していてもよいベンゾイル基;置換基を有していてもよいテノイル基等が挙げられる。ベンゾイル基、または、テノイル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基等が挙げられ、0~3個の範囲で有してもよい。これらの中でもコントラスト低下抑制の観点から、ニトロ基が好ましい。
Rd3において、qが2以上の場合、複数のRd3同士が結合して環を形成していてもよい。環は脂肪族環であっても、芳香族環であってもよい。
【0169】
(q)
前記式(I)において、qは0~3の整数を表す。ラジカル生成効率の観点から、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0170】
(Rd4及びRd5)
前記式(I)において、Rd4及びRd5は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
【0171】
Rd4及びRd5におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも、それらが結合したものであってもよいが、感度の観点から直鎖状又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは5以上、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。アルキル基の炭素数を前記下限値以上とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、感度と溶剤溶解性のバランスの観点から、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、又はブチル基が好ましく、エチル基又はプロピル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数6~10の芳香族環基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0172】
Rd4及びRd5における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、また、12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。芳香族環基の炭素数を前記下限値以上とすることで分子が安定となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向がある。
【0173】
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。これらの中でも溶剤溶解性の観点から、1個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、1個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0174】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基などが挙げられ、溶剤溶解性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基又は水酸基が好ましい。また、感度の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0175】
また、Rd4及びRd5は相互に結合して環を形成していてもよく、該環は脂肪族環でもよく芳香族環でもよい。
【0176】
これらの中でも感度の観点から、Rd4及びRd5は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、ブチル基であることがさらに好ましい。
【0177】
また、光重合開始剤(d1)の市販品としては、SPI-02、SPI-03(いずれもSamyang社製)などが挙げられる。また、特開2017-223954号公報に記載のもの、特表2018-532851号公報に記載のもの、特表2018-537518号公報に記載のもの、特表2019-507108号公報に記載のものを用いることもできる。
【0178】
光重合開始剤(d1)の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0179】
【0180】
(D)光重合開始剤は、光重合開始剤(d1)以外に、その他の光重合開始剤(d2)をさらに含んでいてもよい。
その他の光重合開始剤(d2)としては、例えば、特開昭59-152396号公報、特開昭61-151197号各公報に記載のチタノセン化合物を含むチタノセン誘導体;特開2000-56118号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール誘導体;特開平10-39503号公報記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体、ハロメチル-s-トリアジン誘導体、N-フェニルグリシン等のN-アリール-α-アミノ酸類、N-アリール-α-アミノ酸塩類、N-アリール-α-アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α-アミノアルキルフェノン誘導体;特開2000-80068号公報、特開2006-36750号公報等に記載されているオキシムエステル誘導体等が挙げられる。
【0181】
具体的には、例えば、チタノセン誘導体類としては、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニ-1-イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6-トリフルオロフェニ-1-イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,6-ジフルオロフェニ-1-イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,4-ジフルオロフェニ-1-イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニ-1-イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6-ジフルオロフェニ-1-イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウム〔2,6-ジ-フルオロ-3-(ピロ-1-イル)-フェニ-1-イル〕等が挙げられる。
【0182】
また、ビイミダゾール誘導体類としては、2-(2’-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(2’-クロロフェニル)-4,5-ビス(3’-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(2’-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(2’-メトキシフエニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、(4’-メトキシフエニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
【0183】
また、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体類としては、2-トリクロロメチル-5-(2’-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2’-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2’-(6”-ベンゾフリル)ビニル)〕-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等が挙げられる。
【0184】
また、ハロメチル-s-トリアジン誘導体類としては、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0185】
また、α-アミノアルキルフェノン誘導体類としては、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、4-ジメチルアミノエチルベンゾエ-ト、4-ジメチルアミノイソアミルベンゾエ-ト、4-ジエチルアミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-エチルヘキシル-1,4-ジメチルアミノベンゾエート、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7-ジエチルアミノ-3-(4-ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4-(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
【0186】
オキシムエステル誘導体としては、特表2004-534797号公報、特開2000-80068号公報、特開2006-36750号公報、特開2008-179611号公報、特表2012-526185号公報、特表2012-519191号公報等に記載されているオキシムエステル化合物が挙げられる。中でも感度の観点から4-アセトキシイミノ-5-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-5-オキソペンタン酸メチルが、また製品名として、OXE-01、OXE-02、OXE-03(BASF社製)、TR-PBG-304、TR-PBG-305、TR-PBG314(常州強力社製)、NCI-831、NCI-930(ADEKA社製)等を好ましいものとして挙げることができる。
上記その他の光重合開始剤(d2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0187】
これら(D)光重合開始剤は、それぞれ1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0188】
また(D)光重合開始剤に加えて、さらに連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤とは、発生したラジカルを受け取り、該ラジカルを他の化合物に受け渡す機能を有する化合物である。
連鎖移動剤としては、上記機能を有する化合物であれば種々のものを用いることができるが、例えば、メルカプト基含有化合物や、四塩化炭素等が挙げられ、連鎖移動効果が高い傾向があることからメルカプト基を有する化合物を用いることがより好ましい。S-H結合エネルギーが小さいことによって結合開裂が起こりやすく、水素引きぬき反応や連鎖移動反応を起こしやすいためであると考えられる。感度向上や表面硬化性に有効である。
【0189】
メルカプト基含有化合物としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリン、β-メルカプトナフタレン、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン等の芳香族環を有するメルカプト基含有化合物;へキサンジチオール、デカンジチオール、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等の脂肪族系のメルカプト基含有化合物が挙げられ、特に表面平滑性の観点から、メルカプト基を複数有する化合物が好ましい。
【0190】
このうち好ましくは、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物の中では2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールが好ましく、脂肪族系のメルカプト基含有化合物の中では、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが好ましい。
【0191】
また感度の面からは、脂肪族系のメルカプト基含有化合物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)がより好ましい。
これらは種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。
【0192】
本発明の着色樹脂組成物において、(D)光重合開始剤の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、12質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像後のパターニング特性を確保できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで光重合開始剤過剰添加による透過率低下が抑制される傾向がある。
【0193】
本発明の着色樹脂組成物において、光重合開始剤(d1)の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、12質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでコントラスト低下が抑制される傾向があり、また、前記上限値以下とすることで光重合開始剤過剰添加による透過率低下が抑制される傾向がある。
【0194】
[1-5]その他の固形分
本発明の着色樹脂組成物には、更に、必要に応じ上記成分以外の固形分を配合できる。このような成分としては、光重合性モノマー、分散剤、分散助剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0195】
[1-5-1]光重合性モノマー
光重合性モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と称す)が好ましい。エチレン性化合物とは、本発明の着色樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、光重合開始剤の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。なお、本発明における単量体は、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも含有する概念を意味する。
本発明においては、特に、1分子中にエチレン性二重結合を2個以上有する多官能エチレン性単量体を使用することが望ましい。多官能エチレン性単量体が有するエチレン性二重結合の数は特に限定されないが、通常2個以上であり、好ましくは4個以上であり、より好ましくは5個以上であり、また、好ましくは8個以下であり、より好ましくは7個以下である。前記下限値以上とすることで高感度となる傾向があり、前記上限値以下とすることで溶媒への溶解性が向上する傾向がある。
【0196】
エチレン性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、それとモノヒドロキシ化合物とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物等が挙げられる。
【0197】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステルが挙げられる。また、これらアクリレートのアクリル酸部分を、メタクリル酸部分に代えたメタクリル酸エステル、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、又は、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0198】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であっても良い。代表例としては、例えば、アクリル酸、フタル酸及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸及びジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0199】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等と、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシ(1,1,1-トリアクリロイルオキシメチル)プロパン、3-ヒドロキシ(1,1,1-トリメタクリロイルオキシメチル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0200】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物としては、例えば、エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等も有用である。
また、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。
【0201】
これらのモノマーは1種を単独で用いても良いが、製造上、単一の化合物を用いることは難しいことから、2種以上を混合して用いても良い。また、必要に応じてモノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用しても良い。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。前記下限値以上とすることで現像溶解特性を良好なものとすることができる傾向があり、前記上限値以下とすることで製造や取扱いが良好になり光重合性能、画素の表面平滑性等の硬化性を良好にしやすい傾向がある。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
【0202】
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能モノマーは、東亞合成(株)製TO1382として市販されているジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能モノマーの他の多官能モノマーを組み合わせて使用することもできる。また、特開2013-140346号公報の段落[0056]や[0057]に記載のものを使用することもできる。
【0203】
また本発明において、画素の耐薬品性や画素のエッジの直線性を良好にするとの観点からは、特開2013-195971号公報に記載の重合性モノマーを用いることが好ましい。塗布膜の感度及び現像時間の短縮を両立するとの観点からは、特開2013-195974号公報に記載の重合性モノマーを用いることが好ましい。
【0204】
本発明の着色樹脂組成物が光重合性モノマーを含む場合、光重合性モノマーの含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に、通常0質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。前記下限値以上とすることで塗膜の硬化性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアルカリ現像性の低下が抑制される傾向がある。
【0205】
[1-5-2]分散剤、分散助剤
本発明の着色樹脂組成物が(A)着色剤として顔料を含む場合、顔料を安定に分散させる目的で分散剤を含むことが好ましい。分散剤の中でも高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。
高分子分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤を挙げることができる。これら分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(登録商標、BASF社製)、DisperBYK(登録商標、ビックケミー社製)、ディスパロン(登録商標、楠本化成社製)、SOLSPERSE(登録商標、ルーブリゾール社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)、特開2013-119568号公報に記載のもの等を挙げることができる。
【0206】
高分子分散剤の中でも、分散性や保存安定性の観点から、窒素原子を含む官能基を有するブロック共重合体が好ましく、アクリル系ブロック共重合体がより好ましい。
窒素原子を含む官能基を有するブロック共重合体としては、側鎖に4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及び/又はアミノ基を有さないBブロックとからなる、A-Bブロック共重合体及び/又はB-A-Bブロック共重合体が好ましい。
【0207】
窒素原子を含む官能基としては、1~3級アミノ基や、4級アンモニウム塩基が挙げられ、分散性や保存安定性の観点から、1~3級アミノ基を有することが好ましく、3級アミノ基を有することがより好ましい。
前記ブロック共重合体における、3級アミノ基を有する繰り返し単位の構造は特に限定されないが、分散性や保存安定性の観点から、下記一般式(1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0208】
【0209】
上記式(1)中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、R1及びR2が互いに結合して環状構造を形成してもよい。R3は水素原子又はメチル基である。Xは2価の連結基である。
【0210】
上記式(1)における、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることがより好ましい。また、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。また、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などの環状構造を含んでもよい。
【0211】
上記式(1)における、置換基を有していてもよいアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、これらの中でもフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、又はジエチルフェニル基であることが好ましく、フェニル基、メチルフェニル基、又はエチルフェニル基であることがより好ましい。
【0212】
上記式(1)における、置換基を有していてもよいアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。アラルキル基の具体例としては、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基、フェニルイソプロピレン基などが挙げられ、これらの中でも、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、又はフェニルブチレン基であることが好ましく、フェニルメチレン基、又はフェニルエチレン基であることがより好ましい。
【0213】
これらの中でも、分散性、保存安定性、電気信頼性、現像性の観点から、R1及びR2が各々独立に置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0214】
上記式(1)におけるアルキル基、アラルキル基又はアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ベンゾイル基、水酸基などが挙げられ、合成の容易さの観点からは無置換であることが好ましい。
【0215】
また、上記式(1)において、R1及びR2が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5~7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記(IV)のものが挙げられる。
【0216】
【0217】
これらの環状構造は、更に置換基を有していてもよい。
【0218】
上記式(1)において、2価の連結基Xとしては、例えば、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、-CONH-R13-基、-COOR14-基〔但し、R13及びR14は単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は炭素数2~10のエーテル基(アルキルオキシアルキル基)である〕等が挙げられ、好ましくは-COO-R14-基である。
【0219】
また、前記ブロック共重合体の全繰り返し単位に占める前記式(1)で表される繰り返し単位の含有割合は、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましく、15モル%以上であることがよりさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましく、25モル%以上であることが最も好ましく、また、90モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましく、40モル%以下であることが特に好ましい。前記範囲内の場合には分散安定性と高輝度の両立が可能となる傾向がある。
【0220】
また前記ブロック共重合体は、分散剤の溶媒等バインダー成分に対する相溶性を高め、分散安定性を向上させるとの観点から、下記式(2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0221】
【0222】
上記式(2)中、R10はエチレン基又はプロピレン基であり、R11は置換基を有していてもよいアルキル基であり、R12は水素原子又はメチル基である。
nは1~20の整数である。
【0223】
上記式(2)のR11における、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、2以上であることが好ましく、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることがより好ましい。また、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。また、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などの環状構造を含んでもよい。有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ベンゾイル基、水酸基などが挙げられ、合成の容易さの観点からは無置換であることが好ましい。
【0224】
また、上記式(2)におけるnは溶媒等バインダー成分に対する相溶性と分散性の観点から、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、また、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0225】
また、前記ブロック共重合体の全繰り返し単位に占める前記式(2)で表される繰り返し単位の含有割合は、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、4モル%以上であることがさらに好ましく、また、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。前記範囲内の場合には溶媒等バインダー成分に対する相溶性と分散安定性の両立が可能となる傾向がある。
【0226】
また、前記ブロック共重合体は、分散剤の溶媒等バインダー成分に対する相溶性を高め、分散安定性を向上させるという観点から、下記式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0227】
【0228】
上記式(3)中、R8は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基である。R9は水素原子又はメチル基である。
【0229】
上記式(3)のR8における、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、1以上であることが好ましく、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることがより好ましい。また、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。また、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などの環状構造を含んでもよい。
【0230】
上記式(3)のR8における、置換基を有していてもよいアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、これらの中でもフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、又はジエチルフェニル基であることが好ましく、フェニル基、メチルフェニル基、又はエチルフェニル基であることがより好ましい。
【0231】
上記式(3)のR8における、置換基を有していてもよいアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7以上であり、また、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。アラルキル基の具体例としては、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基、フェニルイソプロピレン基などが挙げられ、これらの中でも、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、又はフェニルブチレン基であることが好ましく、フェニルメチレン基、又はフェニルエチレン基であることがより好ましい。
【0232】
これらの中でも、溶剤相溶性と分散安定性の観点から、R8がアルキル基、又はアラルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、又はフェニルメチレン基であることがより好ましい。
R8における、アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。また、アリール基又はアラルキル基が有していてもよい置換基としては、鎖状のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。また、R8で示される鎖状のアルキル基には、直鎖状及び分岐鎖状のいずれも含まれる。
【0233】
また、前記ブロック共重合体の全繰り返し単位に占める前記式(3)で表される繰り返し単位の含有割合は、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、また、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。前記範囲内の場合には分散安定性と高輝度の両立が可能となる傾向がある。
【0234】
前記ブロック共重合体は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位、前記一般式(2)で表される繰り返し単位、前記一般式(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。そのような繰り返し単位の例としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系単量体; (メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体; 酢酸ビニル;アクリロニトリル;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル;N-メタクリロイルモルホリン等の単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0235】
分散性をより高めるとの観点から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するAブロックと、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有さないBブロックとを有する、ブロック共重合体であることが好ましい。該ブロック共重合体は、A-Bブロック共重合体又はB-A-Bブロック共重合体であることが好ましい。また、Bブロックが前記一般式(2)で表される繰り返し単位及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0236】
また、前記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位が、Aブロック中に含有されていてもよく、そのような繰り返し単位の例としては、前述の(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位等が挙げられる。前記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の、Aブロック中の含有量は、好ましくは0~50モル%、より好ましくは0~20モル%であるが、かかる繰り返し単位はAブロック中に含有されないことが最も好ましい。
【0237】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位がBブロック中に含有されていてもよく、そのような繰り返し単位の例としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体; 酢酸ビニル;アクリロニトリル;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル;N-メタクリロイルモルホリン等の単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。前記一般式(2)で表される繰り返し単位及び前記一般式(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の、Bブロック中の含有量は、好ましくは0~50モル%、より好ましくは0~20モル%であるが、かかる繰り返し単位はBブロック中に含有されないことが最も好ましい。
【0238】
また、前記ブロック共重合体の酸価は、分散性の点から、低い方が好ましく、特に0mgKOH/gであることが好ましい。ここで酸価とは、分散剤固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数を表す。
【0239】
さらに、前記ブロック共重合体のアミン価は、分散性と現像性の観点から、30mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、70mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、90mgKOH/g以上であることがよりさらに好ましく、100mgKOH/g以上であることが特に好ましく、110mgKOH/g以上であることが最も好ましく、また、150mgKOH/g以下であることが好ましく、130mgKOH/g以下であることがより好ましい。ここでアミン価とは、有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの質量で表される値である。
【0240】
また、前記ブロック共重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある。)で1000~30,000の範囲が好ましい。前記範囲内である場合には、分散安定性が良好となり、また、スリットノズル方式による塗布時に乾燥異物がより発生しにくくなる傾向がある。
【0241】
前記ブロック共重合体は、公知の方法により製造することができるが、例えば、上記各繰り返し単位を導入する単量体を、リビング重合することにより製造することができる。リビング重合法としては、特開平9-62002号公報、特開2002-31713号公報や、P.Lutz,P.Masson et al,Polym.Bull.12,79(1984),B.C.Anderson,G.D.Andrews et al,Macromolecules,14,1601(1981),K.Hatada,K.Ute,et al,Polym.J.17,977(1985),18,1037(1986),右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36,366(1987),東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46,189(1989),M.Kuroki,T.Aida,J.Am.Chem.Soc,109,4737(1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985),D.Y.Sogoh,W.R.Hertler et al,Macromolecules,20,1473(1987)等に記載されている公知の方法を採用することができる。
【0242】
本発明の着色樹脂組成物が顔料及び分散剤を含む場合、分散剤の含有割合は特に限定されるものではないが、顔料100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、よりさらに好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。前記範囲内とすることで、分散安定性に優れ、高輝度な着色性樹脂組成物を得ることができる傾向がある。
【0243】
また本発明の着色樹脂組成物が顔料を含む場合、顔料の分散性の向上、分散安定性の向上のために分散助剤として顔料誘導体等を含んでいても良い。顔料誘導体としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系顔料等の誘導体が挙げられる。顔料誘導体の置換基としてはスルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシ基、アミド基等が顔料骨格に直接またはアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合したものが挙げられ、好ましくはスルホンアミド基及びその4級塩、スルホン酸基が挙げられ、より好ましくはスルホン酸基である。またこれら置換基は一つの顔料骨格に複数置換していても良いし、置換数の異なる化合物の混合物でも良い。顔料誘導体の具体例としてはアゾ顔料のスルホン酸誘導体、フタロシアニン顔料のスルホン酸誘導体、キノフタロン顔料のスルホン酸誘導体、イソインドリン顔料のスルホン酸誘導体、アントラキノン顔料のスルホン酸誘導体、キナクリドン顔料のスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロール顔料のスルホン酸誘導体、ジオキサジン顔料のスルホン酸誘導体等が挙げられる。
【0244】
[1-5-3]界面活性剤
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性界面活性剤等、各種のものを用いることができるが、諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤の含有割合は特に限定されないが、着色樹脂組成物の全固形分中に通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下の範囲で用いられる。
【0245】
[2]着色樹脂組成物の調製
次に、本発明に係る着色樹脂組成物(以下、レジストと称することがある)を調製する方法を説明する。
【0246】
着色剤として顔料を含むものを調製する場合にはまず、顔料、溶剤および分散剤を各所定量秤量し、分散処理工程において、顔料を含む着色剤を分散させて顔料分散液を調製する。この分散処理工程では、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザーなどを使用することができる。この分散処理を行なうことによって着色剤が微粒子化されるため、着色樹脂組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルタ基板における画素の透過率が向上する。
【0247】
顔料を分散処理する際には、上述の通り、分散助剤又は分散樹脂などを適宜併用するのが好ましい。
サンドグラインダーを用いて分散処理を行なう場合は、0.1から数mm径のガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズを用いるのが好ましい。分散処理する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲に設定する。なお、分散時間は、顔料分散液の組成、及びサンドグラインダーの装置の大きさなどにより適正時間が異なるため、適宜調整すればよい。
【0248】
上記分散処理によって得られた顔料分散液に、溶剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、必要に応じて上記以外の成分などを混合し、均一な分散溶液とする。なお、分散処理工程及び混合の各工程においては、微細なゴミが混入することがあるため、得られた顔料分散液をフィルタなどによって、ろ過処理することが好ましい。
【0249】
着色剤として顔料を含まない場合には、着色剤、溶剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、必要に応じて上記以外の成分などを混合し、均一な溶液として得ることができる。得られた溶液をフィルタなどによってろ過処理することが好ましい。
【0250】
[3]カラーフィルタ基板の製造
次に、本発明に係るカラーフィルタについて説明する。
本発明に係るカラーフィルタは、上述の着色樹脂組成物を用いて形成した画素を有する。
【0251】
[3-1]透明基板(支持体)
カラーフィルタの透明基板としては、透明で適度の強度があれば、その材質は特に限定されるものではない。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホンの熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂シート、又は各種ガラスなどが挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラスまたは耐熱性樹脂が好ましい。
【0252】
透明基板及びブラックマトリクス形成基板には、接着性などの表面物性の改良のため、必要に応じ、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤や、ウレタン系樹脂などの各種樹脂の薄膜形成処理などを行なってもよい。透明基板の厚さは、通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、また、通常10mm以下、好ましくは7mm以下の範囲とされる。また、各種樹脂の薄膜形成処理を行なう場合、その膜厚は、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の範囲である。
【0253】
[3-2]ブラックマトリクス
上述の透明基板上にブラックマトリクスを設け、更に通常は赤色、緑色、青色の画素画像を形成することにより、本発明に係るカラーフィルタを製造することができる。上記着色樹脂組成物は、赤色、緑色、青色の画素のうち、緑色の画素(レジストパターン)形成用塗布液(以下、「緑色レジスト」と略記する場合がある)として使用することが好ましい。当該緑色レジストを用い、透明基板上に形成された樹脂ブラックマトリクス形成面上、又は、クロム化合物その他の遮光金属材料を用いて形成した金属ブラックマトリクス形成面上に、塗布、加熱乾燥、画像露光、現像及び熱硬化の各処理を行なって画素画像を形成する。
【0254】
ブラックマトリクスは、遮光金属薄膜又はブラックマトリクス用着色樹脂組成物を利用して、透明基板上に形成される。遮光金属材料としては、金属クロム、酸化クロム、窒化クロムなどのクロム化合物、ニッケルとタングステン合金などが用いられ、これらを複数層状に積層させたものであってもよい。
これらの金属遮光膜は、一般にスパッタリング法によって形成され、ポジ型フォトレジストにより、膜状に所望のパターンを形成した後、クロムに対しては硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸及び/又は硝酸とを混合したエッチング液を用い、その他の材料に対しては、材料に応じたエッチング液を用いて蝕刻され、最後にポジ型フォトレジストを専用の剥離剤で剥離することによって、ブラックマトリクスを形成することができる。
【0255】
この場合、まず、蒸着又はスパッタリング法などにより、透明基板上にこれら金属又は金属・金属酸化物の薄膜を形成する。次いで、この薄膜上に着色樹脂組成物の塗布膜を形成した後、ストライプ、モザイク、トライアングルなどの繰り返しパターンを有するフォトマスクを用いて、塗布膜を露光・現像し、レジスト画像を形成する。その後、この塗布膜にエッチング処理を施してブラックマトリクスを形成することができる。
【0256】
ブラックマトリクス用感光性着色樹脂組成物を利用する場合は、黒色の着色剤を含有する着色樹脂組成物を使用して、ブラックマトリクスを形成する。例えば、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラックなどの黒色色材単独又は複数、もしくは、無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択される赤色、緑色、青色などの混合による黒色色材を含有する着色樹脂組成物を使用し、下記の赤色、緑色、青色の画素画像を形成する方法と同様にして、ブラックマトリクスを形成することができる。
【0257】
[3-3]画素の形成
ブラックマトリクスを設けた透明基板上に、赤色、緑色、青色のうち一色の着色樹脂組成物を塗布し、乾燥した後、塗布膜の上にフォトマスクを重ね、このフォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成する。この操作を、赤色、緑色、青色の三色の着色樹脂組成物について各々行なうことによって、カラーフィルタ画像を形成することができる。
【0258】
カラーフィルタ用の着色樹脂組成物の塗布は、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法などによって行なうことができる。中でも、ダイコート法によれば、塗布液使用量が大幅に削減され、かつ、スピンコート法によった際に付着するミストなどの影響が全くなく、更には異物発生が抑制されるなど、総合的な観点から好ましい。
【0259】
塗布膜の厚さは、大き過ぎるとパターン現像が困難となるとともに、液晶セル化工程でのギャップ調整が困難となることがある一方で、小さ過ぎると顔料濃度を高めることが困難となり、所望の色発現が不可能となることがある。塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲である。
【0260】
[3-4]塗布膜の乾燥
基板に着色樹脂組成物を塗布した後の塗布膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。通常は、予備乾燥の後、再度加熱させて乾燥させる。予備乾燥の条件は、前記溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができる。乾燥温度及び乾燥時間は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて選択されるが、具体的には、乾燥温度は通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常80℃以下、好ましくは70℃以下の範囲であり、乾燥時間は通常15秒以上、好ましくは30秒以上、また、通常5分間以下、好ましくは3分間以下の範囲である。
【0261】
再加熱乾燥の温度条件は、予備乾燥温度より高い温度が好ましく、具体的には、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは130℃以下の範囲である。また、乾燥時間は、加熱温度にもよるが、通常10秒以上、中でも15秒以上、また、通常10分以下、中でも5分の範囲とするのが好ましい。乾燥温度は、高いほど透明基板に対する接着性が向上するが、高過ぎるとバインダー樹脂が分解し、熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。なお、この塗布膜の乾燥工程としては、温度を高めず減圧チャンバー内で乾燥を行なう減圧乾燥法を用いてもよい。
【0262】
[3-5]露光工程
画像露光は、着色樹脂組成物の塗布膜上に、ネガのマトリクスパターンを重ね、このマスクパターンを介し、紫外線又は可視光線の光源を照射して行なう。この際、必要に応じ、酸素による光重合性層の感度の低下を防ぐため、光重合性層上にポリビニルアルコール層などの酸素遮断層を形成した後に露光を行なってもよい。上記の画像露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプなどのランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルタを利用することもできる。
【0263】
[3-6]現像工程
本発明に係るカラーフィルタは、本発明に係る着色樹脂組成物を用いた塗布膜に対し、上記の光源によって画像露光を行なった後、界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いて現像を行なうことによって、基板上に画像を形成して製造することができる。この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料又は顔料を含ませることができる。
【0264】
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物や、モノ-・ジ-又はトリエタノールアミン、モノ-・ジ-又はトリメチルアミン、モノ-・ジ-又はトリエチルアミン、モノ-又はジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、モノ-・ジ-又はトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0265】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤、アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0266】
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、水溶液と併用して使用できる。
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、また、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法などの何れかの方法によることができる。
【0267】
[3-7]熱硬化処理
現像の後のカラーフィルタには、熱硬化処理を施す。この際の熱硬化処理条件は、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、また、通常280℃以下、好ましくは250℃以下の範囲で選ばれ、時間は5分間以上、60分間以下の範囲で選ばれる。これら一連の工程を経て、一色のパターニング画像形成は終了する。この工程を順次繰り返し、ブラック、赤色、緑色、青色をパターニングし、カラーフィルタを形成する。なお、4色のパターニングの順番は、上記した順番に限定されるものではない。
【0268】
[3-8]透明電極の形成
本発明に係るカラーフィルタは、このままの状態で画像上にITOなどの透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置などの部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミドなどのトップコート層を設けることもできる。また一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)などの用途においては、透明電極を形成しないこともある。
【0269】
[4]画像表示装置(パネル)
次に、本発明の画像表示装置について説明する。本発明の画像表示装置は、前述のカラーフィルタを有する。以下、画像表示装置として、液晶表示装置及び有機EL表示装置について詳述する。
【0270】
[4-1]液晶表示装置
本発明に係る液晶表示装置の製造方法について説明する。本発明に係る液晶表示装置は、通常、上記本発明に係るカラーフィルタ上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサを散布した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して完成する。配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法及び/又はフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは数10nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行なった後、紫外線の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。
【0271】
スペーサは、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが用いられ、通常2~8μmのものが好適である。カラーフィルタ基板上に、フォトリソグラフィ法によって透明樹脂膜のフォトスペーサ(PS)を形成し、これをスペーサの代わりに活用することもできる。対向基板としては、通常、アレイ基板が用いられ、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。
【0272】
対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶表示装置の用途によって異なるが、通常2μm以上、8μm以下の範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂等のシール材によって封止する。シール材は、UV照射及び/又は加熱することによって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
周辺をシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶を液晶セル内に注入する。液晶セル内の減圧度は、通常1×10-2Pa以上、好ましくは1×10-3以上、また、通常1×10-7Pa以下、好ましくは1×10-6Pa以下の範囲である。また、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は通常30℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲である。
【0273】
減圧時の加温保持は、通常10分間以上、60分間以下の範囲とされ、その後、液晶中に浸漬される。液晶を注入した液晶セルは、液晶注入口を、UV硬化樹脂を硬化させて封止することによって、液晶表示装置(パネル)が完成する。
液晶の種類には特に制限がなく、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物等、従来から知られている液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶等の何れでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶及びコレステリック液晶等が知られているが、何れであってもよい。
【0274】
[4-2]有機EL表示装置
本発明のカラーフィルタを有する有機EL表示装置を作成する場合、例えば
図1に示すように、透明支持基板10上に、本発明の着色樹脂組成物により画素20が形成された青色カラーフィルタ上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製する。
【0275】
有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100は、パッシブ駆動方式の有機EL表示装置にもアクティブ駆動方式の有機EL表示装置にも適用可能である。
【実施例】
【0276】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0277】
<フタロシアニン化合物A>
特開平05-345861号公報の実施例30に基づいて合成した、以下の化学構造を有するフタロシアニン化合物Aを使用した。
【0278】
【0279】
<フタロシアニン化合物B>
テトラクロロフタロニトリル5.00g(18.8mmol)、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール3.32g(18.8mmol)、炭酸カリウム3.89g(28.2mmol)及びアセトニトリル50mLを混合して70℃に加熱し、そのまま4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、反応液をろ過、濃縮した。得られた残留物をアセトニトリルで再結晶することにより中間体Aと中間体Bの混合物4.70g(収率59%、純度77.9%、中間体A/中間体B=73/23)を得た。なお、この純度は高速液体クロマトグラフィー分析の結果から算出した面積%の値である。
【0280】
【0281】
中間体Aの1H-NMR(CDCl3)
δ:1.28(m,1H)、1.45(m,4H)、1.76(dd,1H)、1.86(dd,2H)、1.96(dd,2H)、2.21(s,3H)、3.03(q,1H)、5.96(s,1H)、6.92(d,1H)、7.23(d,1H)
【0282】
中間体Aと中間体Bの混合物3.00g(7.15mmol)、ヨウ化亜鉛0.69g(2.14mmol)及びベンゾニトリル7.2gを混合し、170℃で6.5時間反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、メタノール20mLに投入した。生成した固形分をろ過した後、メタノール及び水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、2.62g(収率84%)のフタロシアニン化合物Bを得た。
【0283】
【0284】
フタロシアニン化合物B1mgをDMSO(ジメチルスルホキシド)100mLに溶解させ、可視吸収スペクトルを紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U-4100)にて、1cm角の石英セルを用いて測定したところ、最大吸収波長は651.0nm、モル吸光係数(ε)は4.08×105であった。
【0285】
<分散剤A:ビックケミー社製分散剤「BYK-LPN6919」>
親溶媒性基を有するAブロックと、窒素原子含有官能基を有するBブロックからなるメタクリル酸系ABブロック共重合体。下記式(2a)及び(3a)の繰り返し単位を有し、かつ、下記式(1a)の繰り返し単位を有さない。アミン価は120mgKOH/g、酸価は1mgKOH/g以下である。
【0286】
全繰り返し単位中における下記式(2a)、(3a)の含有割合はそれぞれ、33.3モル%、6.7モル%である。
【0287】
【0288】
<アルカリ可溶性樹脂A>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
【0289】
一方、モノマー槽中にジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート30質量部、メタクリル酸60質量部、メタクリル酸シクロヘキシル110質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn-ドデシルメルカプタン5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27質量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽及び連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。
【0290】
3時間、110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル39.6質量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4質量部、トリエチルアミン0.8質量部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。
室温まで冷却し、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが9000、酸価が101mgKOH/gのアルカリ可溶性樹脂Aを得た。
【0291】
<アルカリ可溶性樹脂B>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート148.0質量部を窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。ここにスチレン7.3質量部、グリシジルメタクリレート91.0質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製FA-513M)61.7質量部を滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.8質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、無水コハク酸39.0質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、120℃3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂BのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは8000、酸価は88mgKOH/gであった。
【0292】
<アルカリ可溶性樹脂C>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート90質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製FA-513M)10質量部を滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸50質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)13質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、120℃3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂CのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは9000、酸価は25mgKOH/gであった。
【0293】
<緑色顔料分散液の調製>
C.I.ピグメントグリーン58を13.29質量部、分散剤Aを固形分換算で2.95質量部、アルカリ可溶性樹脂Aを固形分換算で3.81質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを79.95質量部(分散剤A由来の溶剤及びアルカリ可溶性樹脂A由来の溶剤も含む)、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させた。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、緑色顔料分散液を調製した。
【0294】
<黄色顔料分散液の調製>
C.I.ピグメントイエロー138を12.06質量部、分散剤Aを固形分換算で3.01質量部、アルカリ可溶性樹脂Aを固形分換算で6.03質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを78.9質量部(分散剤A由来の溶剤及びアルカリ可溶性樹脂A由来の溶剤も含む)、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて、黄色顔料分散液を調製した。
【0295】
<光重合性モノマー>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(A-9550、新中村化学工業社製)
【0296】
<光重合開始剤A>
以下の化学構造を有するオキシムエステル系化合物を用いた。
【0297】
【0298】
<光重合開始剤B>
以下の化学構造を有するオキシムエステル系化合物((4-アセトキシイミノ-5-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-5-オキソペンタン酸メチル))を用いた。
【0299】
【0300】
<光重合開始剤C>
以下の化学構造を有する化合物を用いた。
【0301】
【0302】
<光重合開始剤D>
以下の化学構造を有する化合物を用いた。
【0303】
【0304】
<連鎖移動剤A>
ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオナート)(淀化学社製)
【0305】
<界面活性剤A>
メガファックF-559(DIC社製)
【0306】
<界面活性剤B>
BYK-330(ビックケミー社製)
【0307】
<着色樹脂組成物の調製>
表1に記載の各成分を表1に記載の固形分比率で混合し着色樹脂組成物を調製した。なお、着色樹脂組成物中の全固形分の含有割合が18質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を使用した。
【0308】
【0309】
<輝度の測定>
50mm角、厚さ0.7mmのガラス基板(AGC社製、AN100)上に、上記着色樹脂組成物をスピンコーターで塗布した後、80℃で2分間乾燥した。次いで、2kW高圧水銀灯により、30mW/cm2、40mJ/cm2の露光量で全面露光処理を行った。その後、温度230℃で、20分間の熱硬化処理を行った。
得られた着色基板にて日立製作所社製分光光度計U-3310により透過スペクトルを測定し、SB2光源にて色度sy=0.568の色度となった際の輝度を表2に示す。
【0310】
【0311】
表2から明らかなように、実施例1のように緑色着色剤としてフタロシアニン化合物(1)を含む着色樹脂組成物を用いた場合には輝度が高くなっており、その一方で比較例2~3のようにフタロシアニン化合物(1)に替えて塩素原子置換のフタロシアニン化合物BやC.I.ピグメントグリーン58を含む着色樹脂組成物を用いた場合には輝度が低くなっている。
フタロシアニン化合物(1)は、フタロシアニン環同士のπ-π相互作用や前記一般式(2)同士のπ-π相互作用によって分子同士が会合しやすく、特に、原子半径が小さいフッ素原子を有することで分子同士のパッキングがより密となり、二分子間の会合体形成によって輝度が高くなっていると考えられる。
【0312】
<着色樹脂組成物の調製>
表3に記載の各成分を表3に記載の固形分比率で混合し着色樹脂組成物を調製した。なお、着色樹脂組成物中の全固形分の含有割合が18質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を使用した。
【0313】
【0314】
<コントラストの測定>
50mm角、厚さ0.7mmのガラス基板(AGC社製、AN100)上に、上記着色樹脂組成物をスピンコーターで塗布した後、80℃で2分間乾燥した。次いで、2kW高圧水銀灯により、30mW/cm2、40mJ/cm2の露光量で全面露光処理を行った。その後、温度230℃で、20分間の熱硬化処理を行い、膜厚2μmの着色基板を得た。
着色基板を用いて壺坂電機社製コントラスト計CT-1Bで測定したコントラストをそれぞれ表4に示す。
【0315】
【0316】
表4から明らかなように、フタロシアニン化合物(1)を含む着色樹脂組成物において、実施例2のようにフルオレン骨格を有する光重合開始剤(d1)を含むものは、比較例3~5のようにそれ以外の光重合開始剤を含むものと比べて、コントラストが高くなっている。
【0317】
フタロシアニン化合物(1)は、フタロシアニン環同士のπ-π相互作用、前記一般式(2)で表される基同士のπ-π相互作用によって分子同士が会合しやすく、さらに、原子半径が小さいフッ素原子を有することで分子同士のパッキングがより密となって二分子間の会合体形成による輝度向上があるものの、さらに会合が進行して、凝集体を形成しやすい。そのため凝集体による光散乱によってコントラストが低下しやすいと考えられる。そこで、フルオレン骨格を有する光重合開始剤(d1)を含むことで、フルオレン骨格とフタロシアン環とのπ-π相互作用により、フタロシアン化合物(1)同士の二分子間の会合体形成は促進しつつも、過度の会合による凝集体形成が抑制され、光散乱が発生しにくくなってコントラスト低下が抑制できると考えられる。これに対して比較例6~9のように、緑色着色剤としてフタロシアニン化合物(1)に替えて、塩素置換のフタロシアン化合物BやC.I.ピグメントグリーン58を用いた場合には、それらの着色剤においてフタロシアニン環同士のπ-π相互作用が弱いため、光重合開始剤の種類によらず凝集体が形成されずコントラストの低下が起きていないと考えられる。
【0318】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0319】
10 透明支持基板
20 画素
30 有機保護層
40 無機酸化膜
50 透明陽極
51 正孔注入層
52 正孔輸送層
53 発光層
54 電子注入層
55 陰極
100 有機EL素子
500 有機発光体