(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20221018BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L21/30 541M
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2019088439
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】安井 健一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖雄
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089839(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073694(WO,A1)
【文献】特開平11-204415(JP,A)
【文献】特開2017-139458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接効果及び近接効果よりも影響半径の小さい中距離効果を補正する照射量の荷電粒子ビームを用いて基板にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
前記基板の描画領域を第1メッシュサイズで複数の第1メッシュ領域に仮想分割する工程と、
前記第1メッシュ領域毎のパターンの面積密度を算出し、第1メッシュデータを作成する工程と、
前記第1メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズより大きい第2メッシュサイズに変換して第2メッシュデータを作成する工程と、
前記第2メッシュデータと近接効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第3メッシュデータを作成する工程と、
前記第3メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズに変換して第4メッシュデータを作成する工程と、
前記第1メッシュデータと中距離効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第5メッシュデータを作成する工程と、
前記第4メッシュデータと前記第5メッシュデータとを加算して、前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量を算出する工程と、
この算出された照射量の荷電粒子ビームを用いて、前記基板にパターンを描画する工程と、
を備える荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項2】
算出した前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量を前記第1メッシュデータとして利用して、前記第2メッシュデータの作成、前記第3メッシュデータの作成、前記第4メッシュデータの作成、前記第5メッシュデータの作成及び前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量の算出の各工程を複数回繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項3】
前記第2メッシュデータの初回作成時にメッシュ値が0となるメッシュ領域がある場合、2回目以降の前記第2メッシュデータの作成工程において、対応するメッシュ領域のメッシュ値に0を設定することを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項4】
前記第1メッシュデータにおいて面積密度が0の第1メッシュ領域に対応するメッシュ領域のメッシュ値に0を設定して前記第4メッシュデータを作成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
前記第2メッシュサイズは、前記第1メッシュサイズのn(nは2以上の整数)倍であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項6】
近接効果及び近接効果よりも影響半径の小さい中距離効果を補正する照射量の荷電粒子ビームを用いて基板にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画装置であって、
前記基板の描画領域を第1メッシュサイズで複数の第1メッシュ領域に仮想分割するメッシュ分割部と、
前記第1メッシュ領域毎のパターンの面積密度を算出し、第1メッシュデータを作成する面積密度算出部と、
前記第1メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズより大きい第2メッシュサイズに変換して第2メッシュデータを作成する第1メッシュ変換部と、
前記第2メッシュデータと近接効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第3メッシュデータを作成する第1畳み込み演算部と、
前記第3メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズに変換して第4メッシュデータを作成する第2メッシュ変換部と、
前記第1メッシュデータと中距離効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第5メッシュデータを作成する第2畳み込み演算部と、
前記第4メッシュデータと前記第5メッシュデータとを加算して、前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量を算出する加算部と、
この算出された照射量の荷電粒子ビームを用いて、前記基板にパターンを描画する描画部と、
を備える荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、フォトマスクのパターンをウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画では、後方散乱電子によりパターンの寸法変動が生じる、いわゆる近接効果の影響が問題となる。近接効果を補正する方法の1つとして、照射量補正法が知られている。これは、ビーム照射位置の周辺パターンのサイズや粗密に基づき位置毎に照射量を決定する補正方法である。
【0004】
照射量補正では、フォトマスクへ照射した電子ビームがマスクで反射し、レジストを再露光して生じる、後方散乱照射量の計算が行われる。この計算は、レイアウト内のパターン情報を例えば数μm角のメッシュで表現したパターン密度マップと、後方散乱分布関数としてのガウスカーネルとの積和(畳み込み)を用いて高速化されている。
【0005】
近接効果の影響範囲は10μm程度であり、照射量補正における計算メッシュサイズは数μm程度である。これに加え、近年、影響範囲が数百nm~数μm程度のEUV基板固有の後方散乱や、プロセスに起因する線幅エラーを補正する中距離効果補正の必要性が高まっている。中距離効果補正は、
図9に示すように、従来の近接効果補正方法に対し、中距離効果のカーネルを追加することで行うことができる。
【0006】
近接効果と中距離効果とは影響範囲の大きさが近く、これらを分離して別々に計算すると補正精度の劣化を招くため、互いを考慮して計算する必要がある。中距離効果補正における計算メッシュサイズは数百nm程度であるが、10μm程度のカーネルを数百nm程度のメッシュサイズを使って畳み込むと、計算量が膨大になり、実用的時間内で計算処理を行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-140311号公報
【文献】特開2009-033025号公報
【文献】特開平11-204415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、近接効果補正及び中距離効果補正の計算処理を効率良く行うことができる荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、近接効果及び近接効果よりも影響半径の小さい中距離効果を補正する照射量の荷電粒子ビームを用いて基板にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、前記基板の描画領域を第1メッシュサイズで複数の第1メッシュ領域に仮想分割する工程と、前記第1メッシュ領域毎のパターンの面積密度を算出し、第1メッシュデータを作成する工程と、前記第1メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズより大きい第2メッシュサイズに変換して第2メッシュデータを作成する工程と、前記第2メッシュデータと近接効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第3メッシュデータを作成する工程と、前記第3メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズに変換して第4メッシュデータを作成する工程と、前記第1メッシュデータと中距離効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第5メッシュデータを作成する工程と、前記第4メッシュデータと前記第5メッシュデータとを加算して、前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量を算出する工程と、この算出された照射量の荷電粒子ビームを用いて、前記基板にパターンを描画する工程と、を備えるものである。
【0010】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、算出した前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量を前記第1メッシュデータとして利用して、前記第2メッシュデータの作成、前記第3メッシュデータの作成、前記第4メッシュデータの作成、前記第5メッシュデータの作成及び前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量の算出の各工程を複数回繰り返し行う。
【0011】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、前記第2メッシュデータの初回作成時にメッシュ値が0となるメッシュ領域がある場合、2回目以降の前記第2メッシュデータの作成工程において、対応するメッシュ領域のメッシュ値に0を設定する。
【0012】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、前記第1メッシュデータにおいて面積密度が0の第1メッシュ領域に対応するメッシュ領域のメッシュ値に0を設定して前記第4メッシュデータを作成する。
【0013】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法において、前記第2メッシュサイズは、前記第1メッシュサイズのn(nは2以上の整数)倍である。
【0014】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、近接効果及び近接効果よりも影響半径の小さい中距離効果を補正する照射量の荷電粒子ビームを用いて基板にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画装置であって、前記基板の描画領域を第1メッシュサイズで複数の第1メッシュ領域に仮想分割するメッシュ分割部と、前記第1メッシュ領域毎のパターンの面積密度を算出し、第1メッシュデータを作成する面積密度算出部と、前記第1メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズより大きい第2メッシュサイズに変換して第2メッシュデータを作成する第1メッシュ変換部と、前記第2メッシュデータと近接効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第3メッシュデータを作成する第1畳み込み演算部と、前記第3メッシュデータのメッシュサイズを前記第1メッシュサイズに変換して第4メッシュデータを作成する第2メッシュ変換部と、前記第1メッシュデータと中距離効果補正カーネルとの畳み込み演算を行い、第5メッシュデータを作成する第2畳み込み演算部と、前記第4メッシュデータと前記第5メッシュデータとを加算して、前記第1メッシュ領域毎の荷電粒子ビームの照射量を算出する加算部と、この算出された照射量の荷電粒子ビームを用いて、前記基板にパターンを描画する描画部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、近接効果補正及び中距離効果補正の計算処理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子ビーム描画装置の概略図である。
【
図2】第1成形アパーチャプレート及び第2成形アパーチャプレートの斜視図である。
【
図3】同実施形態による描画方法を説明するフローチャートである。
【
図4】(a)(b)はメッシュ変換の例を示す図である。
【
図5】メッシュサイズと処理時間との関係の例を示すグラフである。
【
図6】中距離効果補正を行った場合と行わなかった場合のパターン寸法のずれ量の例を示すグラフである。
【
図8】描画速度と照射量補正計算の計算速度との関係の例を示すグラフである。
【
図9】近接効果補正及び中距離効果補正の計算式の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る電子ビーム描画装置の概略図である。
図1に示す電子ビーム描画装置は、制御部Cと描画部Wとを備えた可変成形ビーム型の描画装置である。
【0019】
描画部Wは、鏡筒30と描画室60を備えている。鏡筒30内には、電子銃32、照明レンズ34、ブランカ36、ブランキングアパーチャプレート37、第1成形アパーチャプレート38、投影レンズ40、成形偏向器42、第2成形アパーチャプレート44、対物レンズ46、主偏向器48、及び副偏向器50が配置されている。
【0020】
描画室60内には、XYステージ62が配置されている。XYステージ62上には、描画対象の基板70が載置されている。基板70は、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体回路が描画される半導体基板(シリコンウェハ)等である。また、基板70は、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスであってもよい。
【0021】
鏡筒30内に設けられた電子銃32(放出部)から放出された電子ビームBは、照明レンズ34により、矩形の開口39(
図2参照)を有する第1成形アパーチャプレート38に照射される。第1成形アパーチャプレート38の開口39を通過することで、電子ビームBは矩形に成形される。
【0022】
第1成形アパーチャプレート38を通過した第1アパーチャ像(矩形)の電子ビームBは、ブランカ36(ブランキング偏向器)内を通過する際にブランカ36によって、電子ビームを基板70に照射するか否か切り替えられる。ブランカ36によってビームオフとなった場合、電子ビームBはブランキングアパーチャプレート37で遮蔽されるように偏向される。ビームオンの場合は、電子ビームBがブランキングアパーチャプレート37を通過するように制御される。
【0023】
ブランキングアパーチャプレート37を通過した第1アパーチャ像(矩形)の電子ビームBは、投影レンズ40により、開口45(
図2参照)を有した第2成形アパーチャプレート44上に投影される。このとき、偏向器42によって、第2成形アパーチャプレート44上に投影される第1アパーチャ像(矩形)は偏向制御され、開口45を通過する電子ビームの形状と寸法を変化させる(可変成形を行う)ことができる。また、偏向器42によって、第1アパーチャ像(矩形)の電子ビームBが全て第2成形アパーチャプレート44の開口45を通過するよう制御すれば、第1アパーチャ像(矩形)の電子ビームの形状と寸法を変化させないようにすることもできる。
【0024】
第2成形アパーチャプレート44の開口45を通過した第2アパーチャ像の電子ビームBは、対物レンズ46により焦点を合わせ、主偏向器48及び副偏向器50によって偏向され、連続的に移動するXYステージ62上に載置された基板70の目標位置に照射される。
【0025】
制御部Cは、制御計算機10、記憶部20,22、及び偏向制御回路24を有する。記憶部20には、複数の図形パターンから構成される描画データ(レイアウトデータ)が外部から入力され、格納されている。
【0026】
制御計算機10は、メッシュ分割部11、面積密度算出部12、第1メッシュ変換部13、第1畳み込み演算部14、第2メッシュ変換部15、第2畳み込み演算部16、加算部17及び描画制御部18を有する。
【0027】
制御計算機10の各部は、電気回路等のハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御計算機10の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを記録媒体に収納し、このプログラムを、電気回路を含むコンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0028】
電子ビーム描画装置は、例えば、フォトマスクのパターン描画に用いられる。フォトマスクの作製では、まず、クロム膜等の遮光膜及びレジストが設けられた石英基板を準備し、電子ビーム描画装置でレジストに所望のパターンを描画する。描画後、現像処理により、レジストの露光部(又は非露光部)を溶解除去してレジストパターンを形成する。続いて、レジストパターンをマスクにしてドライエッチング装置でエッチング処理を行い、遮光膜を加工する。この後、レジストを剥離することで、フォトマスクが作製される。
【0029】
電子ビーム描画では、後方散乱電子による近接効果の影響でパターンの寸法変動が生じるため、照射量を補正して寸法変動を抑制する必要がある。また、近接効果よりも影響範囲がやや小さく、寸法変動の要因となる中距離効果についても補正する必要がある。本実施形態では、近接効果補正と中距離効果補正とを効率良く行う。
【0030】
近接効果補正及び中距離効果補正を含む描画方法を、
図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0031】
まず、メッシュ分割部11は、基板70の描画領域を格子状の複数のメッシュ領域に仮想分割する(ステップ1)。メッシュ分割部11は、中距離効果補正に必要な小さいメッシュサイズ(第1メッシュサイズ、小メッシュサイズ)、例えば100nm程度となるように分割する。以下、この小メッシュサイズのメッシュ領域を小メッシュ領域とも称する。
【0032】
続いて、面積密度算出部12は、記憶装置20から描画データを読み出し、小メッシュ領域に図形パターンを割り当て、各小メッシュ領域のパターン面積密度を算出する。これにより、小メッシュ領域毎のパターン面積密度が定義された第1メッシュデータが得られる。第1メッシュデータは記憶部22に格納される。
【0033】
第1メッシュ変換部13は、第1メッシュデータを、近接効果補正に適した大きいメッシュサイズ(第2メッシュサイズ、大メッシュサイズ)の第2メッシュデータに変換する(ステップ2)。例えば、大メッシュサイズ(第2メッシュサイズ)は、小メッシュサイズ(第1メッシュサイズ)のn(nは2以上の整数)倍である。例えば、小メッシュサイズを100nmとした場合、大メッシュサイズを1.6μmとする。
【0034】
例えば、
図4(a)に示すように、複数の小メッシュ領域m1~m9を1つの大メッシュ領域Mに変換(結合)する。大メッシュ領域Mのメッシュ値は、小メッシュ領域m1~m9のメッシュ値及び位置等を用いて算出される。例えば、小メッシュ領域の位置(左下の頂点位置)を(xi、yi)、メッシュ値をs
i、大メッシュサイズをMeshSizeとすると、大メッシュ領域Mの各頂点に紐付くメッシュ値S1~S4は以下の式から求まる。
【0035】
【0036】
siはi番目の小メッシュ領域内の面積・ドーズ量を示す。
【0037】
第1畳み込み演算部14は、第2メッシュデータを入力として近接効果補正カーネルで畳み込み演算を行い、第3メッシュデータを生成する(ステップ3)。第3メッシュデータのメッシュ値は近接効果が補正された照射量となる。
【0038】
第3メッシュデータは、第2メッシュデータと同様に大メッシュサイズのメッシュデータである。第2メッシュ変換部15が、第3メッシュデータを、小メッシュサイズの第4メッシュデータに変換する(ステップ4)。この小メッシュサイズは、中距離効果補正に必要な小さいメッシュサイズである。すなわち、第1メッシュデータと第4メッシュデータとはメッシュサイズが同じである。
【0039】
例えば、
図4(b)に示すように、1つの大メッシュ領域Mを、複数の小メッシュ領域m1~m9に変換(分割)する。小メッシュ領域m1~m9のメッシュ値は、大メッシュ領域Mの各頂点に紐付くメッシュ値D1~D4の内挿処理で算出される。この内挿処理する際の内挿法については例えば線形内挿等、周知の内挿法を用いれば良い。メッシュ値D1~D4は、メッシュ値S1~S4の畳み込み演算後の値である。
【0040】
第2畳み込み演算部16は、第1メッシュデータを入力として中距離効果補正カーネルで畳み込み演算を行い、第5メッシュデータを生成する(ステップ5)。第5メッシュデータは小メッシュサイズのメッシュデータである。第5メッシュデータのメッシュ値は中距離効果が補正された照射量となる。
【0041】
加算部17は、第4メッシュデータと第5メッシュデータとを加算し、小メッシュ領域毎の補正照射量を算出する(ステップ6)。ステップ2~6の処理を所定回数(n回)繰り返す。繰り返し処理では、加算部17による加算結果が、第1メッシュ変換部13及び第2畳み込み演算部16の入力となる。
【0042】
ステップ2~6の処理をn回、例えば3回程度繰り返したら(ステップ7_Yes)、描画処理を行う(ステップ8)。描画制御部18が、偏向制御回路24等を介して描画部Wを制御して描画処理を行う。描画部Wは、加算部17が算出した補正照射量の電子ビームBを用いて、基板70にパターンを描画する。例えば、偏向制御回路24は、補正照射量をビーム電流で除してショット毎の照射時間を算出し、ブランカ36に偏向電圧を印加して照射時間を制御する。
【0043】
このように、本実施形態によれば、中距離効果補正に対応した小メッシュサイズの第1メッシュデータを近接効果補正に対応した大メッシュサイズの第2メッシュデータに変換して近接効果補正カーネルで畳み込み演算を行い、第3メッシュデータを生成する。そして、第3メッシュデータを小メッシュサイズの第4メッシュデータに変換し、第1メッシュデータを中距離効果補正カーネルで畳み込み演算して生成した第5メッシュデータと加算する。
【0044】
近接効果は中距離効果よりも影響範囲が大きいため、小メッシュサイズのメッシュデータで畳み込み演算を行うと計算量が膨大になり、多大な処理時間がかかる。しかし、本実施形態では、小メッシュサイズの第1メッシュデータを大メッシュサイズの第2メッシュデータに変換してから近接効果補正計算を行うため、計算量を抑え、処理時間を短縮できる。また、近接効果補正に加えて中距離効果補正を行うため、描画パターンの寸法変動を抑えることができる。
【0045】
図5に、小メッシュサイズと近接効果補正及び中距離効果補正に要する処理時間との関係を示す。メッシュサイズが小さい程、処理時間が長くなる。例えば小メッシュサイズが100nmである場合、上記実施形態のように、小メッシュサイズの第1メッシュデータを大メッシュサイズの第2メッシュデータに変換するメッシュ変換を行う場合の処理時間は、メッシュ変換を行わない場合の処理時間と比較して、1/25程度に短縮できることがわかる。
【0046】
図6は、中距離効果補正を行う場合と、中距離効果補正を行わない場合の描画パターンの寸法ずれ量を示す。中距離効果補正を行うことで、寸法精度を大幅に向上させることができる。
【0047】
図3のステップ2の処理でメッシュ値S1~S4が0の大メッシュ領域Mについては、計算結果を保持しておき、繰り返し処理で再度ステップ2の処理を行う際は、メッシュ値の算出処理をスキップし、メッシュ値0を設定してもよい。これにより、補正処理の計算量を削減できる。
【0048】
図3のステップ1の処理でメッシュ値が0の小メッシュ領域については、計算結果を保持しておき、ステップ4の内挿処理をスキップして、対応する小メッシュ領域のメッシュ値に0を設定してもよい。これにより、補正処理の計算量を削減できる。
【0049】
図3のステップ3やステップ5の畳み込み演算は、一般的には、CPUのキャッシュ利用効率を考慮して区画分けして行われる。
図7に示すように、第1畳み込み演算部14や第2畳み込み演算部16に入力されるメッシュデータにおいて、メッシュ値が全て0となる区画Rがある場合、この区画の畳み込み演算をスキップし、出力するメッシュデータの対応区画のメッシュ値に0を設定してもよい。これにより、補正処理の計算量を削減できる。
【0050】
このような一部処理のスキップにより計算量を削減することで、
図8に示すように、ショット数が少ない場合でも補正処理の計算時間を描画時間よりも短くし、実用的時間内で計算処理を行うことができる。
【0051】
描画装置は可変成形ビーム型に限定されず、複数のビームを一度に照射するマルチビーム描画装置であってもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 制御計算機
11 メッシュ分割部
12 面積密度算出部
13 第1メッシュ変換部
14 第1畳み込み演算部
15 第2メッシュ変換部
16 第2畳み込み演算部
17 加算部
18 描画制御部