(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】磁歪式センサ用温度検出回路、磁歪式センサ、及び磁歪式センサの温度検出方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/12 20060101AFI20221018BHJP
G01L 1/26 20060101ALI20221018BHJP
G01K 7/00 20060101ALI20221018BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20221018BHJP
G01L 1/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G01L1/12
G01L1/26 D
G01K7/00 381L
G01L3/10 301M
G01L1/00 K
(21)【出願番号】P 2019164538
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃之
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6555023(JP,B2)
【文献】特開2007-114088(JP,A)
【文献】特開昭56-87831(JP,A)
【文献】特許第4004411(JP,B2)
【文献】実公昭60-42348(JP,Y2)
【文献】特許第3485282(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
G01K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁歪材の周囲に設けられた検出コイル、及び前記検出コイルを交流励磁する駆動部を備え、前記検出コイルのインダクタンスの変化を基に前記磁歪材に付与された応力を検出する磁歪式センサに用いられ、前記検出コイルの温度を検出する磁歪式センサ用温度検出回路であって、
前記駆動部が出力する交流電圧が、矩形波であり、
前記交流電圧の切り替わりに応じて前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるように構成されており、
前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出する電流切替時間検出部と、
前記電流切替時間検出部が検出した時間を基に、前記検出コイルの温度を算出する温度算出部と、を備えた、
磁歪式センサ用温度検出回路。
【請求項2】
前記電流切替時間検出部は、前記検出コイルと直列に接続された電流検出用抵抗を有し、
前記電流検出用抵抗に流れる電流の向きを検出可能に構成されている、
請求項1に記載の磁歪式センサ用温度検出回路。
【請求項3】
前記電流切替時間検出部は、前記電流検出用抵抗の両端に接続されたコンパレータを有し、
前記コンパレータの出力を基に、前記電流検出用抵抗に流れる電流の向きを検出可能に構成されている、
請求項2に記載の磁歪式センサ用温度検出回路。
【請求項4】
前記駆動部は、矩形波信号を発振する発振器と、発振器から出力された矩形波信号から前記交流電圧を生成し出力するドライバと、を有し、
前記電流切替時間検出部は、
前記コンパレータの出力信号と、前記発振器からの前記矩形波信号とが入力され、前記コンパレータの出力信号と前記矩形波信号との排他的論理和を出力する排他的論理和回路を有し、
前記排他的論理和回路の出力を基に、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出するように構成される、
請求項3に記載の磁歪式センサ用温度検出回路。
【請求項5】
前記電流切替時間検出部は、
前記排他的論理和回路の出力信号が入力されるローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタの出力電圧を基に、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出する時間検出部と、を有する、
請求項4に記載の磁歪式センサ用温度検出回路。
【請求項6】
磁歪材の周囲に設けられた検出コイル、及び前記検出コイルを交流励磁する駆動部を備え、前記検出コイルのインダクタンスの変化を基に前記磁歪材に付与された応力を検出する磁歪式センサであって、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁歪式センサ用温度検出回路と、
前記磁歪式センサ用温度検出回路が検出した前記検出コイルの温度を基に、検出した応力を温度補正する温度補正部と、を備えた、
磁歪式センサ。
【請求項7】
磁歪材の周囲に設けられた検出コイル、及び前記検出コイルを交流励磁する駆動部を備え、前記検出コイルのインダクタンスの変化を基に前記磁歪材に付与された応力を検出する磁歪式センサにおいて、前記検出コイルの温度を検出する温度検出方法であって、
前記駆動部が出力する交流電圧が、矩形波であり、
前記交流電圧の切り替わりに応じて前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるように構成し、
前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出し、
当該検出した時間を基に、前記検出コイルの温度を算出する、
磁歪式センサの温度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪式センサ用温度検出回路、磁歪式センサ、及び磁歪式センサの温度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転トルクや荷重等の応力が付与された際に透磁率が変化する磁歪特性を有する磁歪材を用い、応力が付与された際の磁歪材の透磁率の変化を検出コイルのインダクタンスの変化として検出することにより、磁歪材に付与された応力を検出する磁歪式センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
磁歪式センサにおいては、温度変化によって検出コイルのインピーダンスが変化し、検出精度が低下するおそれがあることが知られている。そのため、検出コイルの温度を検出し、温度補正を行うことが望まれる。検出コイルの温度を検出する方法として、例えば、検出コイルの温度検出用のセンサ(熱電対等)を設ける方法や、直流信号を用いて検出コイルの抵抗値を測定し、当該抵抗値を基に温度を算出する方法等が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検出コイルの温度検出用のセンサを設ける方法では、コストが高く磁歪式センサのセンサ部が大型化してしまうおそれがある。また、直流信号を用いて検出コイルの抵抗値を測定する方法では、磁歪式センサの検出回路とは別に温度検出用の直流回路が必要となるため、回路構成が複雑となり、また磁歪材に付与された応力の検出時に検出コイルの温度を測定することも困難になる、という課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、低コストかつ簡易な構成で検出コイルの温度を検出でき、磁歪材に付与された応力の検出時においても検出コイルの温度を測定可能な磁歪式センサ用温度検出回路、磁歪式センサ、及び磁歪式センサの温度検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、磁歪材の周囲に設けられた検出コイル、及び前記検出コイルを交流励磁する駆動部を備え、前記検出コイルのインダクタンスの変化を基に前記磁歪材に付与された応力を検出する磁歪式センサに用いられ、前記検出コイルの温度を検出する磁歪式センサ用温度検出回路であって、前記駆動部が出力する交流電圧が、矩形波であり、前記交流電圧の切り替わりに応じて前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるように構成されており、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出する電流切替時間検出部と、前記電流切替時間検出部が検出した時間を基に、前記検出コイルの温度を算出する温度算出部と、を備えた、磁歪式センサ用温度検出回路を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、磁歪材の周囲に設けられた検出コイル、及び前記検出コイルを交流励磁する駆動部を備え、前記検出コイルのインダクタンスの変化を基に前記磁歪材に付与された応力を検出する磁歪式センサであって、前記磁歪式センサ用温度検出回路と、前記磁歪式センサ用温度検出回路が検出した前記検出コイルの温度を基に、検出した応力を温度補正する温度補正部と、を備えた、磁歪式センサを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、磁歪材の周囲に設けられた検出コイル、及び前記検出コイルを交流励磁する駆動部を備え、前記検出コイルのインダクタンスの変化を基に前記磁歪材に付与された応力を検出する磁歪式センサにおいて、前記検出コイルの温度を検出する温度検出方法であって、前記駆動部が出力する交流電圧が、矩形波であり、前記交流電圧の切り替わりに応じて前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるように構成し、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイルを流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出し、当該検出した時間を基に、前記検出コイルの温度を算出する、磁歪式センサの温度検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストかつ簡易な構成で検出コイルの温度を検出でき、磁歪材に付与された応力の検出時においても検出コイルの温度を測定可能な磁歪式センサ用温度検出回路、磁歪式センサ、及び磁歪式センサの温度検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る磁歪式センサ用温度検出回路を備えた磁歪式センサの検出回路のブロック図である。
【
図2】(a),(b)は、磁歪式センサ用温度検出回路の原理を説明する図である。
【
図3】
図1の磁歪式センサ用温度検出回路の動作を説明するタイムチャートである。
【
図4】磁歪式センサの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はフレキシブル基板の積層構造を示す断面図である。
【
図5】フレキシブル基板の各配線層に形成される配線パターンの一例を示す図である。
【
図6】(a)は磁歪式センサ用温度検出回路の変形例を示すブロック図、(b)はその動作を説明するタイムチャートである。
【
図7】磁歪式センサ用温度検出回路の変形例を示すブロック図である。
【
図8】磁歪式センサ用温度検出回路の変形例を示すブロック図である。
【
図9】(a),(b)は、ブリッジ回路の一変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る磁歪式センサ用温度検出回路を備えた磁歪式センサの検出回路のブロック図である。
図1に示すように、磁歪式センサの検出回路10は、図示しない磁歪材の周囲に設けられた検出コイル11と、検出コイル11を交流励磁する駆動部12と、検出コイル11のインダクタンスの変化を基に磁歪材に付与された応力を検出する検出部13と、本実施の形態に係る磁歪式センサ用温度検出回路1と、を備えている。
【0014】
本実施の形態では、検出回路10は、4つの検出コイル11をブリッジ接続したブリッジ回路14を備えている。以下、4つの検出コイル11のそれぞれを第1乃至第4の検出コイル111~114と呼称する。ブリッジ回路14は、第1の検出コイル111と第2の検出コイル112とを直列接続し、第3の検出コイル113と第4の検出コイル114とを直列接続し、かつ、第1及び第2の検出コイル111,112と第3及び第4の検出コイル113,114とを並列接続して構成されている。第1乃至第4の検出コイル111~114は、同じ巻数とされ、略同じインピーダンスとなるように構成されている。
【0015】
駆動部12は、ブリッジ回路14における第1の検出コイル111と第3の検出コイル113との間の接点aと、第2の検出コイル112と第4の検出コイル114との間の接点bとの間に、交流電圧を印加する。本実施の形態では、駆動部12が出力する交流電圧Vbが、矩形波であり、交流電圧Vbの切り替わりに応じて第1乃至第4の検出コイル111~114を流れる電流の向きが切り替わるように構成されている。
【0016】
駆動部12は、矩形波信号Vclkを発振する発振器121と、発振器121から出力された矩形波信号Vclkから交流電圧Vbを生成し出力するドライバ122と、を有している。ドライバ122は、交流電圧Vbとして、絶対値の等しい正の電圧と負の電圧とが所定の周期で交互に繰り返される矩形波を生成し(
図3参照)出力する。交流電圧Vbの周波数は、発振器121から出力される矩形波信号Vclkの周波数と等しい。
【0017】
検出部13は、ブリッジ回路14における第1の検出コイル111と第2の検出コイル112との間の接点cと、第3の検出コイル113と第4の検出コイル114との間の接点dとの間の電圧を測定する。
【0018】
駆動部12が接点a,b間に交流電圧Vbを印加すると、当該交流電圧Vbにより第1乃至第4の検出コイル111~114を電流が流れ、第1乃至第4の検出コイル111~114が交流励磁されて磁束が発生する。第1乃至第4の検出コイル111~114は応力の測定対象となる磁歪材の周囲に配置されており、第1乃至第4の検出コイル111~114で発生する磁束は、磁歪材を通過する。磁歪材は応力が付与された際に透磁率が変化するため、付与される応力の状態(後述する
図4,5の例では回転トルクの大きさや向き)に応じて、各検出コイル11のインピーダンス(インダクタンス)が変化し、検出部13で検出される電圧が変化する。検出部13では、検出される電圧を基に、磁歪材に付与された応力を検出する。磁歪式センサの具体例及び各検出コイル11の配置等の詳細については、後述する。なお、検出部13で検出される電圧は交流電圧であるから、検出部13では、同相成分を除去して差動成分のみを検出するために、接点c,d間の電圧を差動増幅回路で増幅し、さらに検波した信号を基に、磁歪材に付与された応力を検出するとよい。
【0019】
検出部13で検出された検出値(磁歪材に付与された応力の検出値)は、温度補正部15に出力される。温度補正部15は、検出部13から入力された検出値を、後述する磁歪式センサ用温度検出回路1で検出した検出コイル11の温度を用いて、温度補正する。温度補正部15で温度補正された検出値が、磁歪式センサの検出回路10における出力となる。なお、検出部13及び温度補正部15は、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータに組み込まれており、CPU、ソフトウェア、メモリ、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現されている。
【0020】
(磁歪式センサ用温度検出回路1)
磁歪式センサ用温度検出回路1は、検出コイル11の温度を検出する回路である。磁歪式センサ用温度検出回路1は、電流切替時間検出部2と、温度算出部3と、を備えている。
【0021】
電流切替時間検出部2は、ドライバ122から出力された交流電圧Vbが正から負、あるいは負から正に切り替わってから、検出コイル11を流れる電流Icの向きが切り替わるまでの時間を検出する。
【0022】
図2(a)に示すように、第1乃至第4の検出コイル111~114からなるブリッジ回路14は、インダクタ成分Lsと抵抗成分Rsとを直列接続した等価回路で表すことができる。ここで、説明を簡略化するためにブリッジ回路14に直接交流電圧Vbが印加された場合を考える。交流電圧Vbは、絶対値の等しい正の電圧と負の電圧とを所定の周期で交互に出力する矩形波であることから、
図2(b)に示すように、検出コイル11を流れる電流Icは、交流電圧Vbの切り替わりに応じて、その向きが切り替わる。
【0023】
ここで、検出コイル11が理想的なコイルである場合には、抵抗成分Rsはゼロとなるため、
図2(b)に一点鎖線で示すように、電流Icは時間経過に対して直線的に変化する。この場合、交流電圧Vbの周期(すなわちVclkの周期)をTclkとすると、交流電圧Vbが正から負、あるいは負から正に切り替わってから、検出コイル11を流れる電流Icの向きが切り替わるまでの時間Ts0は、下式(1)
Ts0=Tclk/4 ・・・(1)
で表される。
【0024】
しかし、実際には、検出コイル11には抵抗成分Rsが存在し、この抵抗成分Rsは、検出コイル11の温度によって変動することが知られている。例えば、検出コイル11の温度が上昇した場合、抵抗成分Rsが増加する。その結果、増加した抵抗成分Rsの影響により、
図2(b)に実線で示すように、交流電圧Vbが正から負、あるいは負から正に切り替わってから、検出コイル11を流れる電流Icの向きが切り替わるまでの時間Tsは、理想的なコイルにおける時間Ts0よりも短くなる。具体的には、時間Tsは、下式(2)で表すことができる。
【数1】
【0025】
式(2)より、時間Tsは、検出コイル11の温度により変化する抵抗成分Rsに応じて変化する。したがって、この時間Ts(より詳細には、Tclkに対するTsのデューティー比)を測定することにより、温度を算出することができる。式(2)より、時間Tsはインダクタンス成分Lsによっても変化するため、検出コイル11としては、温度によるインダクタンス成分Lsの変化がなるべく小さいものを用いることが望ましい。
【0026】
なお、矩形波信号Vclkの周波数を高くし、検出コイル11(ブリッジ回路14)の共振周波数を超えると、各部の信号の挙動が変化し正常な測定ができなくなる場合がある。そのため、矩形波信号Vclkの周波数は、検出コイル11(ブリッジ回路14)の共振周波数に対して十分に小さくなるように設定される。
【0027】
図1に戻り、本実施の形態では、電流切替時間検出部2は、検出コイル11(ブリッジ回路14)と直列に接続された電流検出用抵抗21を有し、電流検出用抵抗21に流れる電流Icの向きを検出可能に構成されている。なお、電流検出用抵抗21は検出コイル11(ブリッジ回路14)と直列に接続されているため、電流検出用抵抗21に流れる電流と検出コイル11(ブリッジ回路14)を流れる電流の向きは同じとなる。
【0028】
より具体的には、電流切替時間検出部2は、電流検出用抵抗21の両端に接続されたコンパレータ22を有し、コンパレータ22の出力を基に、電流検出用抵抗21に流れる電流Icの向きを検出可能に構成されている。本実施の形態では、電流検出用抵抗21の駆動部12側の端部をコンパレータ22の非反転入力に接続し、電流検出用抵抗21のブリッジ回路14側の端部をコンパレータ22の反転入力に接続している。これにより、コンパレータ22は、電流Icの向きが電流検出用抵抗21側から検出コイル11側(ブリッジ回路14側)であるときにハイ(1)の信号を出力し、電流Icの向きが検出コイル11側(ブリッジ回路14側)から電流検出用抵抗21側であるときにロー(0)の信号を出力するように構成されている。なお、コンパレータ22に入力される信号が小さい場合には、前段に差動増幅器等の増幅器を設けてもよい。これにより、コンパレータ22の出力信号V1がハイかローかによって、電流Icの向きを検出することができる。
【0029】
また、電流切替時間検出部2は、コンパレータ22の出力信号V1と、発振器121からの矩形波信号Vclkとが入力され、コンパレータ22の出力信号V1と矩形波信号Vclkとの排他的論理和を出力する排他的論理和回路(以下、XOR回路という)23と、XOR回路23の出力信号V2が入力されるローパスフィルタ24と、ローパスフィルタ24の出力電圧Voを基に、交流電圧Vbが切り替わってから、検出コイル11を流れる電流(電流検出用抵抗21を流れる電流)Icの向きが切り替わるまでの時間Tsを検出する時間検出部25と、を有している。
【0030】
矩形波信号Vclk、交流電圧Vb、電流Ic、出力信号V1,V2のタイムチャートは、
図3のようになる。
図3に示すように、ドライバ122によって、矩形は信号Vclkに同期して正負が反転する矩形波の交流信号Vbが生成され、交流信号Vbの切り替わりに応じて、電流Icの向きが切り替わる。この際、交流信号Vbの切り替わりから時間Ts遅延して、電流Icの正負が切り替わる。これに対応して、コンパレータ22の出力電圧V1は、交流信号Vbの切り替わりから時間Ts遅延してハイとローが切り替わることになる。したがって、出力信号V1と矩形波信号Vclkとの排他的論理和であるXOR回路23の出力信号V2は、時間Tsの間(すなわち交流信号Vbの正負と電流Icの正負とが異なる期間)だけハイとなり、その以外はローとなる。
【0031】
ローパスフィルタ24は、出力信号V2の電圧の平均化をとるためのものであり、その時定数は、矩形波信号Vclkの周期Tclkに対して十分大きくなるように設定されている。ローパスフィルタ24の出力電圧V0(V)は、出力信号V2のハイをVDD(V)、ローを0(V)とすると、下式(3)
V0=(Ts/Tclk)×VDD ・・・(3)
で表される。
【0032】
時間検出部25は、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータに組み込まれており、CPU、ソフトウェア、メモリ、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現されている。時間検出部25は、ローパスフィルタ24の出力電圧Voを基に、上記式(3)を用いて、時間Tsを検出する。
【0033】
温度算出部3は、ローパスフィルタ24の出力電圧Voをデジタル信号に変換するアナログデジタル変換装置(以下、ADCという)と、マイクロコンピュータ、マイクロコンピュータに実装されたソフトウェア等を適時組み合わせて実現されている。温度算出部3は、時間検出部25が検出した時間Tsを基に、検出コイル11の温度を算出する。温度算出部3は、例えば、予め設定された時間Tsと検出コイル11の温度との関係式、あるいは時間Tsと検出コイル11の温度との関係を予め求めたデータベース等を基にして、時間Tsから検出コイル11の温度を算出する。温度算出部3で算出した検出コイル11の温度は、温度補正部15に出力され、温度補正に用いられる。
【0034】
(磁歪式センサ)
次に、
図1の磁歪式センサの検出回路10が適用される磁歪式センサの具体例について説明する。
図4は、磁歪式センサの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はフレキシブル基板の積層構造を示す断面図である。
図5は、フレキシブル基板の各配線層に形成される配線パターンの一例を示す図である。
【0035】
図4,5に示すように、磁歪式センサ100は、本発明の磁歪材としての回転軸101の周囲に取り付けられ、回転軸101に付与されたトルク(回転トルク)を測定するものである。
【0036】
回転軸101は、磁歪特性を有する材料から構成され、円柱状(棒状)に形成されている。磁歪特性を有する材料としては、例えば、ニッケル、鉄-アルミニウム合金、鉄-コバルト合金等が挙げられる。なお、回転軸101に用いる材料としては、圧縮時に透磁率が低下し引張時に透磁率が増加する正磁歪材料、圧縮時に透磁率が増加し引張時に透磁率が低下する負磁歪材料のどちらを用いても構わない。回転軸101は、例えば、パワートレイン系のトルク伝達に用いられるシャフト、あるいは車両のエンジンのトルク伝達に用いられるシャフトである。
【0037】
磁歪式センサ100は、回転軸101と離間して同軸に配置されるフレキシブル基板102と、フレキシブル基板102の周囲に同軸に配置される磁性体リング103と、を備えている。
【0038】
磁性体リング103は、磁性体(強磁性体)からなり、中空円筒状に形成されている。フレキシブル基板102は、磁性体リング103の内周面に接着固定されている。磁性体リング103は、検出コイル11で生じた磁束が外部に漏れて感度が低下することを抑制する役割を果たす。
【0039】
磁歪式センサ100では、フレキシブル基板102と回転軸101との間には隙間104が形成され、磁歪式センサ100が回転軸101に接触しないように構成されている。磁歪式センサ100は、ハウジング等の固定部材に固定され、回転軸101の回転に伴って回転しないようにされる。
【0040】
図4(b)に示すように、フレキシブル基板102は、少なくとも2層の配線層105を有している。ここでは、第1配線層105a、第2配線層105b、第3配線層105c、第4配線層105dの4層の配線層105を有する場合を説明するが、配線層105の層数はこれに限定されない。
【0041】
第1配線層105aは、ポリイミドからなる第1ベース樹脂層106aの表面に形成されており、第1ベース樹脂層106aの裏面は接着層107bを介して第2配線層105bに接着固定されている。第1配線層105aの表面には、接着層107aを介してポリイミドからなる第1カバーレイ層108aが設けられ、絶縁処理が施されている。
【0042】
第2配線層105aは、ポリイミドからなる第2ベース樹脂層106bの表面に形成されており、第2ベース樹脂層106bの裏面には、第3配線層105cが形成されている。
【0043】
第4配線層105dは、ポリイミドからなる第3ベース樹脂層106cの裏面に形成されており、第3ベース樹脂層106cの表面は接着層107cを介して第3配線層105cに接着固定されている。第4配線層105bの表面には、接着層107dを介してポリイミドからなる第2カバーレイ層108bが設けられ、絶縁処理が施されている。
【0044】
第2カバーレイ層108aには、両面テープ109が貼付され、この両面テープ109を介して、フレキシブル基板102が磁性体リング103に接着固定される。これにより、回転軸101側から磁性体リング103側にかけて、第1配線層105a、第2配線層105b、第3配線層105c、第4配線層105dが順次形成されることになる。
【0045】
フレキシブル基板102の内層となる第2配線層105bと第3配線層105cとは、圧延銅箔からなる。フレキシブル基板102の外層となる第1配線層105aと第4配線層105dとは、電解銅箔に銅めっきを施したものからなる。詳細は後述するが、磁歪式センサ100では、フレキシブル基板102にビア(スルーホール)を形成する必要があるため、外層である第1,4配線層105a,105dでは、めっきを施した構成となっている。
【0046】
(検出コイル11の説明)
図5は、フレキシブル基板102の各配線層105に形成される配線パターンの一例を示す図である。
図5では、フレキシブル基板102を展開して平面とした際の各配線層105の配線パターンを模式的に示している。
【0047】
図5に示すように、第1乃至第4の検出コイル111~114は、フレキシブル基板102の配線層105に形成されている。第1及び第4の検出コイル111,114は、回転軸101の軸方向に対して所定角度傾斜した第1直線部111a,114aを有し、第2及び第3の検出コイル112,113は、回転軸101の軸方向に対して第1直線部111a,114aと反対方向に所定角度傾斜した第2直線部112a,113aを有する。
【0048】
磁歪式センサ100では、回転軸101にトルクが付与された際の透磁率の変化は軸方向に対して±45度の方向で最も大きくなる。よって、第1直線部111a,114aを軸方向に対して+45度傾斜するように形成し、第2直線部112a,113aを軸方向に対して-45度傾斜するように形成することで、検出感度を向上できる。
【0049】
この磁歪式センサ100では、第1の検出コイル111を形成する配線層105と、第3の検出コイル113を形成する配線層105の配線パターンを一部入れ替え、2層の配線層105(第1及び第2配線層105a,105b)にわたって第1及び第3の検出コイル111,113が形成されるように構成している。同様に、第2の検出コイル112を形成する配線層105と、第4の検出コイル114を形成する配線層105の配線パターンを一部入れ替え、2層の配線層105(第3及び第4配線層105c,105d)にわたって第2及び第4の検出コイル112,114が形成されるように構成している。配線層105間はビアを介して電気的に接続される。
【0050】
各検出コイル11を2層の配線層105にわたって形成することで、2層の配線層105の特性差による影響を抑制することが可能になる。その結果、配線層105間の特性差に起因した測定誤差を抑制し、測定精度を向上させることが可能になる。
【0051】
本実施の形態では、第1配線層105aと第3配線層105c、および、第2配線層105bと第4配線層105dに形成される配線パターンは、略同じパターンとされる。また、第1配線層105aと第3配線層105c、および、第2配線層105bと第4配線層105dに形成される配線パターンに流れる電流は、同じ向きとなるようにされる。
図5では、白抜き矢印で電流の向きを示している。また、
図5では、第1乃至第4の検出コイル111~114の入力側電極を符号111b,112b,113b,114b、出力側電極を符号111c,112c,113c,114cで示している。また、
図5における符号a~y,A~Yは、ビアによる接続関係を便宜的に表すものであり、同じ符号同士がビアを介して電気的に接続されていることを表している。なお、
図5に示す各配線層105の配線パターンはあくまで一例であり、配線パターンの具体的な構造はこれに限定されるものではない。
【0052】
フレキシブルプリント基板102を用いた磁歪式センサ100では、検出コイル11の抵抗成分Rsが増大するため、単純に検出コイル11の抵抗成分Rsを測定し、測定した抵抗成分Rsから温度を求める方法では、検出出来ない温度範囲が生じてしまう場合がある。本実施の形態に係る磁歪式センサ用温度検出回路1のように、交流電圧Vbが切り替わってから、検出コイル11を流れる電流Icの向きが切り替わるまでの時間Tsを検出し、その時間Tsを基に検出コイル11の温度を算出することで、検出コイル11の温度を広い温度範囲で精度よく検出することが可能になり、温度補正を適切に行って高精度な測定が可能になる。
【0053】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る磁歪式センサ用温度検出回路1では、交流電圧Vbが切り替わってから、検出コイル11を流れる電流Icの向きが切り替わるまでの時間Tsを検出する電流切替時間検出部2と、電流切替時間検出部2が検出した時間Tsを基に、検出コイル11の温度を算出する温度算出部3と、を備えている。
【0054】
これにより、熱電対等の温度センサや、温度検出用の直流回路等を別途設けることなく、交流励磁用の駆動部12の交流電圧Vbを利用して、検出コイルの温度を精度よく測定することが可能になる。つまり、本実施の形態によれば、低コストかつ簡易な構成で検出コイル11の温度を検出でき、磁歪材に付与された応力の検出時においても検出コイル11の温度を測定可能な磁歪式センサ用温度検出回路1を実現できる。
【0055】
(変形例)
上記実施の形態では、電流検出用抵抗21の駆動部12側の端部をコンパレータ22の非反転入力に接続し、電流検出用抵抗21のブリッジ回路14側の端部をコンパレータ22の反転入力に接続したが、非反転入力と反転入力の接続を逆にしてもよい。この場合、
図3の場合と異なりコンパレータ22の出力信号のハイとローが反転するので、XOR回路23の出力信号のハイとローも反転することになる。その結果、ローパスフィルタ24の出力電圧V0は、時間Tsが短くなるほど(検出コイル11の温度が高くなるほど)大きい値となる。よって、この場合であっても、時間検出部25において、ローパスフィルタ24の出力電圧V0から時間Tsを検出することが可能である。
【0056】
また、上記実施の形態におけるXOR回路23に替えて、NXOR回路(否定排他的論理和回路)を用いてもよい。この場合も、ローパスフィルタ24の出力電圧V0は、時間Tsが短くなるほど(検出コイル11の温度が高くなるほど)大きい値となるので、時間検出部25において、ローパスフィルタ24の出力電圧V0から時間Tsを検出することが可能である。なお、XOR回路23やNXOR回路は、AND回路やOR回路等の複数の論理回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0057】
また、
図6(a)に示すように、上記実施の形態におけるXOR回路23に替えて、ロックインアンプ(LIA)26を用いることも可能である。この場合、コンパレータ22の出力をロックインアンプ26の入力に接続し、発振器121からの矩形波信号Vclkを、ゲート信号としてロックインアンプ26のゲート端子Gに接続するとよい。ロックインアンプ26では、ゲート信号がハイである間、入力と出力を導通させる。よって、矩形波信号Vclk、コンパレータ22の出力信号V1、ロックインアンプ26の出力信号V3のタイムチャートは、
図6(b)のようになる。
【0058】
図6(b)に破線Aで囲まれた領域に示されるように、ロックインアンプ26の出力信号V3は、Vclkが立ち上がる際にはハイとならないため、
図3のXOR回路の出力信号V2と比較して、デューティー比が1/2になるものの、この出力信号V3を用いて時間Tsを検出することが可能である。ただし、ロックインアンプ26はコストが高いため、上記実施の形態のように、低コストなXOR回路23を用いることがより好ましいといえる。
【0059】
さらに、上記実施の形態では言及しなかったが、コンパレータ22は、オペアンプ(差動増幅器)を用いて構成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、ブリッジ回路14と直列に1つの電流検出用抵抗21を接続する場合を説明したが、
図7に示すように、ブリッジ回路14を挟み込むように2つの電流検出用抵抗21a,21bを接続してもよい。この場合、電流検出用抵抗21aの駆動部12側の端部、及び電流検出用抵抗21bのブリッジ回路14側の端部を適宜な抵抗Rを介してコンパレータ22の非反転入力に接続し、電流検出用抵抗21aのブリッジ回路14側の端部、及び電流検出用抵抗21bの接地側の端部を適宜な抵抗Rを介してコンパレータ22の反転入力に接続するとよい。これにより、電流検出用抵抗21a,21bや抵抗Rの抵抗値を適宜調整することで、コンパレータ22に入力される電圧値を適宜な範囲に調整することができる。特に、コンパレータ22をオペアンプで構成する場合には、入力可能な電圧値が限られるため、
図7のような回路構成とすることが好ましい。なお、
図7では温度補正部15を省略して示している。
【0061】
さらに、上記実施の形態ではローパスフィルタ24を用いたが、ローパスフィルタ24は必須ではなく、省略可能である。例えば、XOR回路23の出力信号V2をそのまま時間検出部25に入力し、時間検出部25にて出力信号V3がハイで維持される時間、すなわち時間Tsを検出するように構成してもよい。
【0062】
さらにまた、上記実施の形態では、ドライバ122にて正負が反転する矩形波の交流信号Vbを生成したが、これに限らず、例えばブリッジ回路14の接点a側にローのレベルが0(V)となる矩形波信号を入力し、ブリッジ回路14の接点b側に接点a側に入力される矩形波信号と位相を反転した矩形波信号を入力する等、検出コイル11(ブリッジ回路14)に相補的な電圧を加えてもよい。具体的には、例えば
図8に示すように、接点a,bにそれぞれ接続される一対のドライバ122を備え、接点aに接続される一方のドライバ122に発振器121からの信号を直接入力し、接点bに接続される他方のドライバ122に発振器121からの信号を否定回路(NOT回路)123を介して入力するように構成することができる。これにより、ドライバ122にて負の電圧を生成する必要がなくなるため、ドライバ122の回路構成をより簡易にすることができる。
【0063】
また、上記実施の形態では、4つの検出コイル11を用いたが、使用する検出コイル11の数はこれに限定されない。例えば、
図9(a)に示すように、第1及び第2の検出コイル111,112を抵抗R1,R2に置き換え、第3及び第4の検出コイル113,114の2つの検出コイル11のみを用いるようにしてもよい。同様に、第3及び第4の検出コイル113,114を抵抗に置き換え、第1及び第2の検出コイル111,112のみを使用してもよい。さらに、
図9(b)に示すように、第1及び第3の検出コイル111,113を抵抗R1,R3に置き換え、第2及び第4の検出コイル112,114の2つの検出コイル11のみを用いるようにしてもよい。同様に、第2及び第4の検出コイル112,114を抵抗に置き換え、第1及び第3の検出コイル111,113のみを用いるようにしてもよい。
【0064】
さらにまた、4つの検出コイル11を用いる場合であっても、その一部の検出コイル11のみを磁歪材の周囲に設けてもよい。例えば、第1及び第2の検出コイル111,112のみを磁歪材の周囲に設けてもよいし、第3及び第4の検出コイル113,114のみを磁歪材の周囲に設けてもよい。また、第1及び第3の検出コイル111,113のみを磁歪材の周囲に設けてもよいし、第2及び第4の検出コイル112,114のみを磁歪材の周囲に設けてもよい。つまり、第1乃至第4の検出コイル111~114の少なくとも2つが、磁歪材の周囲に設けられていればよい。なお、磁歪材の周囲に設けない検出コイル11は、例えば、磁歪材と別体に設けられ、外力(応力)が付与されない基準用の磁歪材の周囲に設けられてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、フレキシブル基板102の配線層105に検出コイル11を形成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、磁歪材の周囲に設けられた環状のボビン等に絶縁電線を巻き回して検出コイル11を形成してもよいし、磁歪材の周囲に直接絶縁電線を巻き回して検出コイル11を形成してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、トルク検出用の磁歪式センサ100について説明したが、例えば、軸状の磁歪材の軸方向に付与された荷重を検出する荷重検出用の磁歪式センサ等にも、本発明は適用可能である。
【0067】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0068】
[1]磁歪材(101)の周囲に設けられた検出コイル(11)、及び前記検出コイル(11)を交流励磁する駆動部(12)を備え、前記検出コイル(11)のインダクタンスの変化を基に前記磁歪材(101)に付与された応力を検出する磁歪式センサ(100)に用いられ、前記検出コイル(11)の温度を検出する磁歪式センサ用温度検出回路(1)であって、前記駆動部(12)が出力する交流電圧が、矩形波であり、前記交流電圧の切り替わりに応じて前記検出コイル(11)を流れる電流の向きが切り替わるように構成されており、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイル(11)を流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出する電流切替時間検出部(2)と、前記電流切替時間検出部(2)が検出した時間を基に、前記検出コイル(11)の温度を算出する温度算出部(3)と、を備えた、磁歪式センサ用温度検出回路(1)。
【0069】
[2]前記電流切替時間検出部(2)は、前記検出コイル(11)と直列に接続された電流検出用抵抗(21)を有し、前記電流検出用抵抗(21)に流れる電流の向きを検出可能に構成されている、[1]に記載の磁歪式センサ用温度検出回路(1)。
【0070】
[3]前記電流切替時間検出部(2)は、前記電流検出用抵抗(21)の両端に接続されたコンパレータ(22)を有し、前記コンパレータ(22)の出力を基に、前記電流検出用抵抗(21)に流れる電流の向きを検出可能に構成されている、[2]に記載の磁歪式センサ用温度検出回路(1)。
【0071】
[4]前記駆動部(12)は、矩形波信号を発振する発振器(121)と、発振器(121)から出力された矩形波信号から前記交流電圧を生成し出力するドライバ(122)と、を有し、前記電流切替時間検出部(2)は、前記コンパレータ(22)の出力信号と、前記発振器(121)からの前記矩形波信号とが入力され、前記コンパレータ(22)の出力信号と前記矩形波信号との排他的論理和を出力する排他的論理和回路(23)を有し、前記排他的論理和回路(23)の出力を基に、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイル(11)を流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出するように構成される、[3]に記載の磁歪式センサ用温度検出回路(1)。
【0072】
[5]前記電流切替時間検出部(2)は、前記排他的論理和回路(23)の出力信号が入力されるローパスフィルタ(24)と、前記ローパスフィルタ(24)の出力電圧を基に、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイル(11)を流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出する時間検出部(25)と、を有する、[4]に記載の磁歪式センサ用温度検出回路(1)。
【0073】
[6]磁歪材(101)の周囲に設けられた検出コイル(11)、及び前記検出コイル(11)を交流励磁する駆動部(12)を備え、前記検出コイル(11)のインダクタンスの変化を基に前記磁歪材(101)に付与された応力を検出する磁歪式センサ(100)であって、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の磁歪式センサ用温度検出回路(1)と、前記磁歪式センサ用温度検出回路(1)が検出した前記検出コイル(11)の温度を基に、検出した応力を温度補正する温度補正部(15)と、を備えた、磁歪式センサ(100)。
【0074】
[7]磁歪材(101)の周囲に設けられた検出コイル(11)、及び前記検出コイル(11)を交流励磁する駆動部(12)を備え、前記検出コイル(11)のインダクタンスの変化を基に前記磁歪材(101)に付与された応力を検出する磁歪式センサ(100)において、前記検出コイル(11)の温度を検出する温度検出方法であって、前記駆動部(12)が出力する交流電圧が、矩形波であり、前記交流電圧の切り替わりに応じて前記検出コイル(11)を流れる電流の向きが切り替わるように構成し、前記交流電圧が切り替わってから、前記検出コイル(11)を流れる電流の向きが切り替わるまでの時間を検出し、当該検出した時間を基に、前記検出コイル(11)の温度を算出する、磁歪式センサの温度検出方法。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…磁歪式センサ用温度検出回路
2…電流切替時間検出部
21…電流検出用抵抗
22…コンパレータ
23…排他的論理和回路
24…ローパスフィルタ
25…時間検出部
3…温度算出部
11…検出コイル
12…駆動部
121…発振器
122…ドライバ
14…ブリッジ回路
15…温度補正部
100…磁歪式センサ
101…回転軸(磁歪材)