(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造方法及び熱伝導シート
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
(21)【出願番号】P 2020537975
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031196
(87)【国際公開番号】W WO2020039561
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小舩 美香
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 倫明
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073727(WO,A1)
【文献】特開2017-038086(JP,A)
【文献】特開2004-288825(JP,A)
【文献】特開2016-046499(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030079(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/123012(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140020(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115456(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0374071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が
0.50MPa~1.40MPaである熱伝導シートが間に配置された放熱体と複数の発熱体に対して、前記熱伝導シートの厚み方向に圧力をかけて、前記放熱体と前記複数の発熱体とを前記熱伝導シートを介して接着させる工程を含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
定常法により測定される熱抵抗から求められる前記熱伝導シートの熱伝導率が7W/(m・K)以上である、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記熱伝導シートの25℃におけるタック力が5.0N・mm以上である、請求項1又は請求項2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記圧力が0.05MPa~10.00MPaである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記圧力が0.10MPa~0.50MPaである、請求項4に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記複数の発熱体が、種類の異なる複数の発熱体である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記複数の発熱体のうち少なくとも1個の発熱体の、前記熱伝導シートと対向する面の面積が100mm
2以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記複数の発熱体は基板に設けられ、前記基板の、前記複数の発熱体が設けられる面の面積が、1,000mm
2以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記複数の発熱体の個数が3個以上である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記熱伝導シートは樹脂を含み、前記樹脂が非硬化性樹脂である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が
0.50MPa~1.40MPaであり、半導体デバイスの放熱体と複数の発熱体との間に配置して前記放熱体と前記複数の発熱体との接着に用いるための、熱伝導シート。
【請求項12】
定常法により測定される熱抵抗から求められる熱伝導率が7W/(m・K)以上である、請求項
11に記載の熱伝導シート。
【請求項13】
樹脂を含み、前記樹脂が非硬化性樹脂である、請求項11又は請求項12に記載の熱伝導シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイスの製造方法及び熱伝導シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層配線板の配線の高密度化、半導体パッケージに対する配線の高密度化、電子部品の搭載密度の増大、半導体素子自身の高集積化による単位面積あたりの発熱量の増大等に伴い、半導体パッケージの放熱性を高めることが望まれている。
【0003】
なかでもCPU(中央処理装置、Central Processing Unit)、パワーデバイス等の発熱量の大きな半導体デバイスでは、優れた放熱性が要求される。これらの半導体デバイスでは、発熱体と、アルミニウム、銅等の放熱体との間に、グリース、熱伝導シート等の熱伝導材料を挟んで密着させることによって放熱させる仕組みを有している(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-247268号公報
【文献】特開平10-298433号公報
【文献】特許第4743344号
【文献】特許第5316254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体パッケージの高性能化に伴い、半導体チップ及び半導体パッケージの大型化が進んでいる。この大型化により、熱伝導材料としてグリースを用いる場合には、熱サイクル時のポンプアウトが発生しやすくなり、十分な放熱性を担保することが困難になってきた。
【0006】
さらに、近年、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路、HBM(high bandwidth memory)等のメモリなどの複数の発熱体を基板に搭載して構成される半導体デバイスの需要が増加している。放熱体と複数の発熱体と間の熱伝導材料としてグリースを用いる場合には、各発熱体にグリースを塗布して放熱体と接着させる必要があるため、工程が煩雑である。また、各発熱体の高さが異なる場合には、グリースでは高低差に追従できず、複数の発熱体と放熱体を十分に接着させることが困難であった。熱伝導材料として熱伝導シートを用いる場合であっても、従来の製造方法では複数の発熱体の高低差に追従することができず、十分な放熱性が得られない場合があった。
【0007】
かかる状況に鑑み、本開示は、放熱性に優れる半導体デバイスを製造可能であり、工程の簡略化された半導体デバイスの製造方法、及び放熱性に優れる半導体デバイスを製造可能な熱伝導シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.40MPa以下である熱伝導シートが間に配置された放熱体と複数の発熱体に対して、前記熱伝導シートの厚み方向に圧力をかけて、前記放熱体と前記複数の発熱体とを前記熱伝導シートを介して接着させる工程を含む、半導体デバイスの製造方法。
<2> 定常法により測定される熱抵抗から求められる前記熱伝導シートの熱伝導率が7W/(m・K)以上である、<1>に記載の半導体デバイスの製造方法。
<3> 前記熱伝導シートの25℃におけるタック力が5.0N・mm以上である、<1>又は<2>に記載の半導体デバイスの製造方法。
<4> 前記圧力が0.05MPa~10.00MPaである、<1>~<3>のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
<5> 前記圧力が0.10MPa~0.50MPaである、<4>に記載の半導体デバイスの製造方法。
<6> 前記複数の発熱体が、種類の異なる複数の発熱体である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
<7> 前記複数の発熱体のうち少なくとも1個の発熱体の、前記熱伝導シートと対向する面の面積が100mm2以上である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
<8> 前記複数の発熱体は基板に設けられ、前記基板の、前記複数の発熱体が設けられる面の面積が、1,000mm2以上である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
<9> 前記複数の発熱体の個数が3個以上である、<1>~<8>のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
<10> 150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.40MPa以下であり、半導体デバイスの放熱体と複数の発熱体との間に配置して前記放熱体と前記複数の発熱体との接着に用いるための、熱伝導シート。
<11> 定常法により測定される熱抵抗から求められる熱伝導率が7W/(m・K)以上である、<10>に記載の熱伝導シート。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、放熱性に優れる半導体デバイスを製造可能であり、工程の簡略化された半導体デバイスの製造方法、及び放熱性に優れる半導体デバイスを製造可能な熱伝導シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態における半導体デバイスの概略断面図を示す。
【
図3】実施例における基板上の半導体チップの配置を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0012】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0013】
≪半導体デバイスの製造方法≫
本開示の半導体デバイスの製造方法は、150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.40MPa以下である熱伝導シートが間に配置された放熱体と複数の発熱体に対して、前記熱伝導シートの厚み方向に圧力をかけて、前記放熱体と前記複数の発熱体とを前記熱伝導シートを介して接着させる工程を含む。本開示の半導体デバイスの製造方法によれば、複数の発熱体を一括して放熱体と接着させることができ、工程を簡略化することができる。
【0014】
〔発熱体〕
本開示における発熱体は、熱伝導シートを介して放熱体を接着して放熱させる対象物である。発熱体としては、半導体チップ、半導体パッケージ等が挙げられる。
【0015】
発熱体の大きさは特に制限されない。例えば、各発熱体の熱伝導シートと対向する面の面積は100mm2以上であってもよく、200mm2以上であってもよく、400mm2以上であってもよい。各発熱体の熱伝導シートと対向する面の面積は例えば10,000mm2以下であってもよく、3,000mm2以下であってもよく、1,500mm2以下であってもよい。
【0016】
半導体デバイスに設けられる発熱体の個数は、2個以上であっても、3個以上であっても、4個以上であっても、5個以上であってもよい。上限値は特に制限されず、10個以下であってもよい。1個の半導体デバイスに同じ種類の複数の発熱体が設けられていてもよく、異なる種類の複数の発熱体(例えば、熱伝導シートの厚み方向における長さが異なる複数の発熱体)が設けられていてもよい。特に、1つの半導体デバイスに異なる種類の複数の発熱体が設けられる場合には、発熱体ごとに高低差が発生しやすいが、本開示の半導体デバイスの製造方法によれば、熱伝導シートが段差に追従して良好な放熱性を得られる傾向にある。
【0017】
〔放熱体〕
本開示における放熱体は、熱伝導シートを介して発熱体を放熱させる部材である。放熱体としては、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、水冷パイプ等が挙げられる。
【0018】
〔基板〕
複数の発熱体は、基板に設けられていてもよい。基板は特に制限されず、有機基板、有機フィルム、セラミック基板、ガラス基板等のインターポーザ基板、液晶用ガラス基板、MCM(Multi Chip Module)用基板、ハイブリットIC用基板などが挙げられる。
【0019】
基板の大きさは特に制限されない。例えば、基板の、複数の発熱体が設けられる面の面積は、1,000mm2以上であってもよく、2,000mm2以上であってもよく、3,000mm2以上であってもよく、5,000mm2以上であってもよい。基板の、複数の発熱体が設けられる面の面積は10,000mm2以下であってもよい。
【0020】
〔熱伝導シート〕
本開示で用いられる熱伝導シートは150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.40MPa以下である。本開示において、熱伝導シートは、半導体デバイスの放熱体と複数の発熱体との間に配置して、放熱体と複数の発熱体の接着に用いるシートである。本開示においてシートとは液状ではないシート状の製品を表し、液状のグリース等とは区別される。ここで液状とは25℃における粘度が1000Pa・s以下である物質を意味する。粘度は、25℃でレオメーターを用いて5.0s-1のせん断速度で測定したときの値と定義する。粘度は、せん断粘度として、コーンプレート(直径40mm、コーン角0°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、温度25℃で測定される。
【0021】
発熱体と放熱体との間の熱伝導材料としてグリースを用いる場合、熱サイクル時のポンプアウトに伴い熱抵抗が増大する可能性があるが、本開示の製造方法では熱伝導シートを用いるため、ポンプアウトが生じることがない。
また、本開示の製造方法では上記圧縮弾性率を有する熱伝導シートを用いるため、複数の発熱体に高低差があっても、圧力をかけた(プレス)ときに熱伝導シートが潰れて高低差に追従しやすく、放熱性が担保されやすい。
【0022】
本開示で用いられる熱伝導シートは、放熱体と複数の発熱体との間に配置して両者の接着に用いられる。熱伝導シートは、例えば、発熱体である半導体チップと放熱体であるヒートスプレッダとの間に配置される熱伝導材料(TIM1;Thermal Interface Material 1)であってもよい。TIM1としては従来グリースが用いられていたが、発熱体の大型化に伴いグリースで十分な放熱性を担保することが困難となってきており、本開示で用いられる熱伝導シートは特に有用である。
【0023】
熱伝導シートは、150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.40MPa以下であり、1.30MPa以下であることが好ましく、1.20MPa以下であることがより好ましい。上記圧縮弾性率が1.20MPa以下であると、複数の発熱体の高低差により追従しやすい。150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率の下限は特に制限されない。上記圧縮弾性率は0.50MPa以上であってもよく、0.70MPa以上であってもよい。
【0024】
熱伝導シートの圧縮弾性率は、圧縮試験装置(例えば、INSTRON 5948 Micro Tester(INSTRON社))を用いて測定することができる。熱伝導シートに厚み方向に対して0.1mm/minの変位速度で荷重を加え、変位(mm)と荷重(N)を測定する。変位(mm)/厚み(mm)で求められる歪み(無次元)を横軸に、荷重(N)/面積(mm2)で求められる応力(MPa)を縦軸に示し、所定の応力のときの傾きを圧縮弾性率(MPa)とする。具体的には、例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
熱伝導シートは、密着性を向上する観点から、タック力を有することが好ましい。熱伝導シートの25℃におけるタック力は、5.0N・mm以上であることが好ましく、6.0N・mm以上であることがより好ましく、7.0N・mm以上であることがさらに好ましい。タック力が5.0N・mm以上であると、各発熱体に反りが発生しても追従して熱伝導シートの剥離を抑制でき、放熱性をより向上できる傾向にある。タック力の上限値は特に制限されない。上記タック力は20.0N・mm以下であってもよく、15.0N・mm以下であってもよい。
【0026】
熱伝導シートの25℃におけるタック力は、万能物性試験機(例えば、テクスチャーアナライザー、(英弘精機株式会社))を用いて測定することができる。25℃(常温)において、直径7mmのプローブを荷重40Nで熱伝導シートに押し当て10秒間保持した後、プローブを引き上げた際の荷重と変位曲線を積分して得られる面積を、25℃におけるタック力(N・mm)とする。具体的には、例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
【0027】
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.40MPa以下である熱伝導シートを得る方法は特に制限されず、例えば熱伝導シートに用いられる熱伝導性フィラー、樹脂等の各成分の種類及び配合割合を調整することによって得ることができる。
【0028】
熱伝導シートの熱伝導率は特に制限されず、高いほど好ましい。定常法により測定される熱抵抗から求められる熱伝導シートの熱伝導率は7W/(m・K)以上であることが好ましく、10W/(m・K)以上であることがより好ましく、15W/(m・K)以上であることがさらに好ましい。熱伝導率が7W/(m・K)以上であると、発熱体への反り追従性を向上させるために熱伝導シートの厚みを厚くしても、熱抵抗の上昇を抑制しやすい傾向にある。
【0029】
本開示において、熱伝導シートの熱伝導率は、具体的には以下のように求める。
熱伝導シートを10mm角に切り抜き、発熱体であるトランジスタ(2SC2233)と放熱体である銅ブロックとの間に挟み、トランジスタを80℃、0.14MPaの圧力で押し付けながら電流を通じた際のトランジスタの温度T1(℃)及び銅ブロックの温度T2(℃)を測定する。測定値と印加電力W1(W)に基づいて、単位面積(1cm2)当たりの熱抵抗値X(K・cm2/W)を以下のように算出する。
X=(T1-T2)×1/W1
さらに熱伝導率λ(W/(m・K))を厚みt(μm)を用いて以下のように算出した。
λ=(t×10-6)/(X×10-4)
【0030】
熱伝導シートの厚みは特に制限されず、使用される半導体パッケージ等の仕様により適宜選択することができる。厚みが小さいほど熱抵抗が低下する傾向にあり、厚みが大きいほど反り追従性が向上する傾向にある。熱伝導シートの平均厚みは、50μm~3000μmであってもよく、熱伝導性及び密着性の観点から、100μm~500μmであることが好ましく、150μm~300μmであることがより好ましい。熱伝導シートの平均厚みは、マイクロメータを用いて3箇所の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる。
【0031】
熱伝導シートの圧縮量は特に制限されない。例えば150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮量は20μm~1000μmであってもよく、30μm~200μmであってもよく、40μm~100μmであってもよい。150℃における圧縮応力が0.15MPaのときの圧縮量が上記値であってもよい。
熱伝導シートの「圧縮量」とは、熱伝導シートの厚み方向に圧力をかけたときの熱伝導シートの圧縮量であり、圧力をかける前の熱伝導シートの厚みから圧力をかけている時の熱伝導シートの厚みを減じた値である。
【0032】
熱伝導シートの圧縮率は特に制限されない。例えば、150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮率は、10%~60%であってもよく、15%~50%であってもよく、15%~40%であってもよい。150℃における圧縮応力が0.15MPaのときの圧縮率が上記値であってもよい。
熱伝導シートの「圧縮率」とは、圧力をかける前の熱伝導シートの厚み(μm)に対する上記圧縮量(μm)の割合(%)である。
【0033】
熱伝導シートは、粘着面の保護のため、少なくとも一方の面に保護フィルムを有しているものを準備して用いてもよい。この場合、保護フィルムを剥離した熱伝導シートを発熱体と放熱体との接着に用いる。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルナフタレート、メチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロアルコキシアルカン等の樹脂フィルム、コート紙、コート布、及びアルミニウム等の金属箔が使用できる。これらの保護フィルムは、1種単独で使用しても、2種以上組み合わせて多層フィルムとしてもよい。保護フィルムは、シリコーン系、シリカ系等の離型剤などで表面処理されていることが好ましい。
【0034】
熱伝導シートが上記特定の圧縮弾性率を満たす限り、熱伝導シートの組成は特に限定されない。例えば、樹脂及び熱伝導性フィラーを含有する熱伝導シートが挙げられる。
【0035】
熱伝導性フィラーとしては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素、酸化ケイ素、シリカ、ガラス、金属粒子、炭素繊維、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。熱伝導性フィラーは、表面処理が施されていてもよい。熱伝導性フィラーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
熱伝導性フィラーの形状は特に限定されず、球状、楕円体状、鱗片状、顆粒状、棒状、針状、繊維状等が挙げられる。
【0037】
熱伝導性フィラーの平均粒径は特に制限されず、熱伝導性フィラーの材質等に応じて設定することが好ましい。
【0038】
熱伝導性フィラーのアスペクト比(長径/短径)は特に制限されず、1~100の範囲であってもよく、5~50の範囲であってもよく、10~40の範囲であってもよい。熱伝導性フィラーのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、20個の代表的な粒子についてそれぞれ短径に対する長径の長さの比(長径/短径)を測定し、得られた測定値の算術平均値とする。
【0039】
熱伝導性フィラーは、熱伝導性の観点から、熱伝導シートの厚み方向に配向していることが好ましい。本開示において、「厚み方向に配向している」とは、長軸と短軸を有する(すなわち、アスペクト比が1を超える)熱伝導性フィラーにおいて、熱伝導性フィラーの長軸方向と、熱伝導シートの表面(主面)とのなす角度(「配向角度」ともいう)が、60°以上であることをいう。配向角度は、80°以上であることが好ましく、85°以上であることがより好ましく、88°以上であることがさらに好ましい。
【0040】
熱伝導シート中の熱伝導性フィラーの含有量は、熱伝導性フィラーの材質等に応じて、熱伝導性と密着性のバランス等の観点から適宜選択することが好ましい。例えば、熱伝導性フィラーの含有率は、熱伝導シートの全体積に対して25体積%~75体積%であってもよく、30体積%~60体積%であってもよく、35体積%~50体積%であってもよい。
【0041】
熱伝導シート中に含有される樹脂としては、特に制限されず、例えば硬化性樹脂であっても、非硬化性樹脂であってもよい。樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリサルファイド、アクリロニトリルゴム、シリコーンゴム、炭化水素樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール等が挙げられる。樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
熱伝導シート中の樹脂の含有量は、樹脂の種類及び所望の柔軟性、粘着力、密着性、シート強度、耐加水分解性等に応じて選択することが好ましい。例えば、樹脂の含有率は熱伝導シートの全体積に対して、25体積%~75体積%であることが好ましく、40体積%~70体積%であることがより好ましく、50体積%~65体積%であることがさらに好ましい。
【0043】
熱伝導シートは、熱伝導性フィラー及び樹脂の他に、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有してもよい。難燃剤は特に限定されず、通常用いられる難燃剤から適宜選択することができる。例えば、赤りん系難燃剤及びりん酸エステル系難燃剤が挙げられる。中でも、安全性に優れ、可塑化効果により密着性が向上する観点から、りん酸エステル系難燃剤が好ましい。
【0044】
熱伝導シートの製造方法は、上記特定の圧縮弾性率及びタック力を有する熱伝導シートが得られる方法であれば特に制限されない。例えば、熱伝導シートの各成分を含有する組成物を準備し、圧延、プレス、押出、塗工等によりシートを作製してもよい。
また、熱伝導シートの各成分を含有する組成物を用いて成形体を成形し、当該成形体をスライスすることによってシートを作製してもよい。このとき、熱伝導性フィラーが厚み方向に配向するように成形体をスライスすることが好ましい。
【0045】
一実施形態において、熱伝導シートは、熱伝導シートの各成分を含有する組成物を準備し、当該組成物をシート化してシートを得た後、前記シートを積層して積層体を作製し、当該積層体の側端面をスライスすることによって製造してもよい。かかる方法で熱伝導シートを製造することで、効率的な熱伝導パスが形成され、熱伝導性と密着性に優れる熱伝導シートが得られる傾向にある。さらに、得られた熱伝導シートを保護フィルムに貼り付けてラミネートしてもよい。
【0046】
〔発熱体及び放熱体の接着方法〕
本開示における半導体デバイスの製造方法では、熱伝導シートが間に配置された放熱体と複数の発熱体に対して、前記熱伝導シートの厚み方向に圧力をかけて、前記放熱体と前記複数の発熱体とを前記熱伝導シートを介して接着させる。本開示において接着とは化学的若しくは物理的な力又はその両者によって複数の面が接している状態をいう。
【0047】
放熱体と複数の発熱体とを熱伝導シートを介して接着させて半導体デバイスを組み立てたときの接着面積は、各発熱体又は放熱体の熱伝導シートに対向する面の面積のうち80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0048】
熱伝導シートを放熱体と複数の発熱体の間に配置する方法としては、まず複数の発熱体上に熱伝導シートを配置した後、当該熱伝導シートを介して放熱体を配置してもよい。また、まず放熱体上に熱伝導シートを配置した後、当該熱伝導シートを介して複数の発熱体を配置してもよい。例えば、ヒートスプレッダ等の放熱体に熱伝導シートを貼り付けて仮固定し、その上に複数の発熱体を配置する方法が挙げられる。この方法によれば、複数の発熱体のそれぞれに熱伝導シートを仮固定する作業を省略することができ、簡便に熱伝導シートを仮固定しやすい。また、熱伝導シートを仮固定する際にたわみ等の発生を抑制しやすい傾向にある。
工程の簡略化の観点から、1枚の熱伝導シートに対し、複数の発熱体を配置することが好ましい。また、1枚の熱伝導シートに対し、1個の放熱体を配置してもよく、複数の放熱体を配置してもよい。
【0049】
熱伝導シートを間に配置した放熱体及び複数の発熱体に対して、熱伝導シートの厚み方向に圧力をかけて、放熱体と複数の発熱体を熱伝導シートを介して接着させる。このとき、発熱体側から圧力をかけてもよく、放熱体側から圧力をかけてもよい。
【0050】
熱伝導シートの厚み方向にかける圧力は、熱伝導シートの密着性及び電子部品への負荷低減の観点から、0.05MPa~10.00MPaであることが好ましく、0.10MPa~5.00MPaであることがより好ましく、0.10MPa~1.00MPaであることがさらに好ましい。電子部品への負荷低減の観点からは、0.10MPa~0.50MPaであることが特に好ましい。
【0051】
圧力をかけるときの温度は特に制限されず、熱伝導シートの種類に応じて好適な温度範囲を選択することが好ましい。圧力をかけるときの温度は常温であってもよく、圧縮率を向上させる観点から、加熱された温度であることが好ましい。加熱された温度としては、例えば、80℃~200℃であってもよく、100℃~190℃であってもよく、120℃~180℃であってもよい。
【0052】
なかでも、120℃~180℃の温度範囲で、0.10MPa~1.00MPaの圧力をかけることが好ましい。圧力を0.10MPa以上又は加熱温度を120℃以上とすることで、優れた密着性が得られる傾向にある。また、圧力が1.00MPa以下又は加熱温度が180℃以下であることで、密着の信頼性がより向上する傾向にある。これは熱伝導シートが過度に圧縮されて厚みが薄くなったり、周辺部材の歪み又は残留応力が大きくなりすぎたりすることを抑制できるためと考えられる。
【0053】
圧力をかけている時、例えば150℃において0.10MPaの圧力をかけている時の発熱体の反り量は、例えば少なくとも1つの発熱体において5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよい。また、圧力をかけている時、例えば150℃において0.10MPaの圧力をかけている時の発熱体の反り量は、少なくとも1つの発熱体において80μm以下であってもよく、70μm以下であってもよく、60μm以下であってもよい。150℃において0.15MPaの圧力をかけている時の発熱体の反り量が上記範囲であってもよい。
【0054】
圧力を開放した後の発熱体の反り量は、例えば少なくとも1つの発熱体において25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。また、圧力を開放した後の発熱体の反り量は、少なくとも1つの発熱体において150μm以下であってもよく、140μm以下であってもよく、130μm以下であってもよい。圧力を開放した後に温度変化に伴い反り量が変化する場合には、上記「圧力を開放した後の発熱体の反り量」は、25℃における反り量とする。
【0055】
放熱体と複数の発熱体を接着する工程において、圧力をかけている時の各発熱体の反り量と、圧力を開放した後の同一の発熱体の反り量との差は、少なくとも1つの発熱体において、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。上限値は特に制限されず、少なくとも1つの発熱体において120μm以下であってもよい。
【0056】
発熱体の「反り量」とは、発熱体が反って変形したときの、発熱体の厚み方向の最大変形量(μm)を表す。
発熱体の反り量の測定方法の一例を、
図2を用いて説明する。なお、本開示における半導体デバイスは複数の発熱体を有するが、
図2では便宜的に1つの発熱体のみを図示している。反り量は、以下のように、発熱体を搭載した基板の変形量に基づいて測定することができる。反り量の解析範囲は、基板側から見て発熱体が搭載されている部分(発熱体部分a)とする。発熱体部分aにおいて、基板の厚み方向の変形量が最も大きい部分と、発熱体の端との変位差を反り量bと定義する。
【0057】
放熱体と複数の発熱体とを前記熱伝導シートを介して接着させるための具体的な方法は、それぞれを十分に密着させた状態で固定できる方法であれば特に制限されない。例えば、放熱体と複数の発熱体との間に熱伝導シートを配置し、0.05MPa~1.00MPa程度に加圧可能な治具で固定し、この状態で複数の発熱体を発熱させるか、又はオーブン等により80℃~180℃程度に加熱する方法が挙げられる。また、80℃~180℃、0.05MPa~1.00MPaで加熱加圧できるプレス機を用いる方法が挙げられる。
【0058】
固定は、クリップの他、ネジ、バネ等の治具を用いてもよく、接着剤等の通常用いられる手段でさらに固定されていることが、密着を持続させるうえで好ましい。
【0059】
半導体デバイスは、上述のように熱伝導シートを介して接着した放熱体と複数の発熱体を用いて製造することができる。半導体デバイスとしては、インターポーザにGPU、CPU等の集積回路及びHBM等のメモリを搭載した半導体パッケージ等が挙げられる。
【0060】
一実施形態における半導体デバイスの具体例を、
図1を参照しながら説明する。なお、実施形態はこれに限定されるものではない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0061】
熱伝導シート1を、複数の発熱体2に対しその一方の面を密着させ、他方の面を放熱体3に密着させて使用する。
図1では、発熱体2は基板4にアンダーフィル材5を用いて固定されており、放熱体3はシール材6により基板4に固着され、熱伝導シート1と放熱体3及び複数の発熱体2との密着性を、押し付けることで向上させている。熱伝導シート1を介して放熱体3及び複数の発熱体2が積層されていることで、複数の発熱体2からの熱を放熱体3に効率よく伝導することができる。効率よく熱伝導することができると、半導体デバイスの使用において寿命が向上し、長期使用においても安定して機能する半導体デバイスが提供できる。また、複数の発熱体2の高さにわずかな高低差があっても、熱伝導シート1を介して放熱体3と複数の発熱体2とを接着させる工程において、外部から厚み方向に圧力をかけることによって、熱伝導シート1が潰れて高低差に追従し、放熱体3と複数の発熱体2との接着を良好に維持する。また、熱伝導シート1を用いて複数の発熱体2を一括して放熱体3と接着させるため、工程が簡略化できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例において、圧縮弾性率、圧縮量、タック力、熱伝導率、反り量、接着面積の評価は以下の方法により行った。
【0063】
(圧縮弾性率及び圧縮量の測定)
測定には、恒温槽が付属している圧縮試験装置(INSTRON 5948 Micro Tester (INSTRON社))を用いた。熱伝導シートを直径14mmの円型に切り抜いて試験に用いた。熱伝導シートを0.1mm厚の紙(離型紙)に挟み、恒温槽の温度150℃において、熱伝導シートの厚み方向に対して0.1mm/minの変位速度で荷重を加え、変位(mm)と荷重(N)を測定した。変位(mm)/厚み(mm)で求められる歪み(無次元)を横軸に、荷重(N)/面積(mm2)で求められる応力(MPa)を縦軸に示し、応力が0.10MPaのときの傾きを圧縮弾性率(MPa)とした。また、任意の圧力まで圧縮した際の最大変位を圧縮量(μm)とした。
【0064】
(タック力の測定)
万能物性試験機(テクスチャーアナライザー、(英弘精機株式会社))を用いて、25℃(常温)において、直径7mmのプローブを荷重40Nで熱伝導シートに押し当て10秒間保持した後、プローブを引き上げた際の荷重と変位曲線を積分して得られる面積をタック力(N・mm)とした。
【0065】
(熱伝導率の測定)
熱伝導シートを10mm角に切り抜き、発熱体であるトランジスタ(2SC2233)と放熱体である銅ブロックとの間に挟み、トランジスタを80℃、0.14MPaの圧力で押し付けながら電流を通じた際のトランジスタの温度T1(℃)及び銅ブロックの温度T2(℃)を測定し、測定値と印加電力W1(W)から、単位面積(1cm2)当たりの熱抵抗値X(K・cm2/W)を以下のように算出した。
X=(T1-T2)×1/W1
さらに熱伝導率λ(W/(m・K))を熱抵抗値(K・cm2/W)及び厚みt(μm)を用いて以下のように算出した。
λ=(t×10-6)/(X×10-4)
【0066】
(反り量の測定)
反り量は3D加熱表面形状測定装置(サーモレイPS200、AKROMETRIX社)を用いて測定した。半導体チップ面積部(20mm×20mm及び10mm×10mm)に対応する基板の反り量を測定した。
150℃、0.15MPaをかけているときの発熱体の反り量は、20mm角の半導体チップで28μmであり、10mm角の半導体チップで12μmであった。圧力を開放した後の発熱体の反り量は、20mm角の半導体チップで60μmであり、10mm角の半導体チップで29μmであった。
【0067】
(接着面積評価試験)
接着面積は以下のように評価した。超音波画像診断装置(Insight-300、インサイト株式会社)を用いて、反射法、35MHzの条件で貼り付き状態を観察した。さらに、その画像を画像解析ソフト(ImageJ)により2値化し、20mm角の半導体チップ部分及び10mm角の半導体チップ部分のうち、貼り付いている面積の割合をそれぞれ算出し、接着面積(%)とした。
【0068】
接着面積評価試験には、以下のように作製した簡易のパッケージを用いた。
基板にはMCL-E-700G(R)(厚み0.81mm、日立化成株式会社)、アンダーフィル材にはCEL-C-3730N-2(日立化成株式会社)、シール材にはシリコーン系接着剤(SE4450、東レ・ダウコーニング株式会社)を用いた。また、ヒートスプレッダには厚み1mmの銅板の表面にニッケルでメッキ処理したものを用いた。基板及びヒートスプレッダのサイズは65mm角とした。基板上に20mm角の半導体チップ(高さ0.775 mm)を1つと10mm角の半導体チップ(高さ0.725 mm)を2つ、
図3に示されるように配置した。半導体チップ同士の間隔は5mmとした。
パッケージの組立は以下のように行った。任意の厚みの熱伝導シートを、23mm角に切り抜き、ヒートスプレッダ又は半導体チップへ貼り付けた。ヒートスプレッダを半導体チップ及びシール材を配置した基板にかぶせて、高精度加圧・加熱接合装置(HTB-MM、アルファーデザイン株式会社)を用いて任意の温度及び圧力で3分間熱伝導シートの厚み方向に加圧した。その後、150℃の恒温槽で2時間処理し、シール材を完全に硬化させた。
【0069】
<実施例1>
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.16MPaであり、25℃におけるタック力が7.6N・mm、熱伝導率が21W/(m・K)である日立化成株式会社製の厚み0.3mmの熱伝導シートを選択して、ヒートスプレッダへ貼り付けた。このヒートスプレッダを、前述の3つの半導体チップ及びシール材が配置された基板にかぶせてから、150℃、0.15MPaの条件において上記方法でパッケージを組み立て、熱伝導シートを発熱体である半導体チップと放熱体であるヒートスプレッダに接着させた。このとき、20mm角の半導体チップ部における接着面積は97%であり、2つの10mm角の半導体チップ部における接着面積はそれぞれ99%、99%であった。反り追従性の指標である接着面積が90%以上を示し、優れた反り追従性を示し、一括で短時間に複数個の発熱体と放熱体を接着することができた。
【0070】
<実施例2>
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.16MPaであり、25℃におけるタック力が7.6N・mm、熱伝導率が18W/(m・K)である日立化成株式会社製の厚み0.2mmの熱伝導シートを選択して、ヒートスプレッダへ貼り付けた。このヒートスプレッダを、前述の3つの半導体チップ及びシール材が配置された基板にかぶせてから、150℃、0.15MPaの条件において上記方法でパッケージを組み立て、熱伝導シートを発熱体である半導体チップと放熱体であるヒートスプレッダに接着させた。このとき、20mm角の半導体チップ部における接着面積は95%であり、2つの10mm角の半導体チップ部における接着面積はそれぞれ99%、98%であった。反り追従性の指標である接着面積が90%以上を示し、優れた反り追従性を示し、一括で短時間に複数個の発熱体と放熱体を接着することができた。
【0071】
<実施例3>
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.16MPaであり、25℃におけるタック力が7.6N・mm、熱伝導率が21W/(m・K)である日立化成株式会社製の厚み0.3mmの熱伝導シートを選択した。前記の複数個のチップ及びシール材が配置された基板を用いて、前述の3つの半導体チップに熱伝導シートを先に貼り付けてから、ヒートスプレッダをかぶせた。150℃、0.15MPaの条件において上記方法でパッケージを組み立て、熱伝導シートを発熱体である半導体チップと放熱体であるヒートスプレッダに接着させた。このとき、20mm角の半導体チップ部における接着面積は96%であり、2つの10mm角の半導体チップ部における接着面積はそれぞれ98%、97%であった。反り追従性の指標である接着面積が90%以上を示し、優れた反り追従性を示し、一括で短時間に複数個の発熱体と放熱体を接着することができた。
【0072】
<実施例4>
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.16MPaであり、25℃におけるタック力が7.6N・mm、熱伝導率が16W/(m・K)である日立化成株式会社製の厚み0.15mmの熱伝導シートを選択して、ヒートスプレッダへ貼り付けた。このヒートスプレッダを、前述の3つの半導体チップ及びシール材が配置された基板にかぶせてから、150℃、0.15MPaの条件において上記方法でパッケージを組み立て、熱伝導シートを発熱体である半導体チップと放熱体であるヒートスプレッダに接着させた。このとき、20mm角の半導体チップ部における接着面積は92%であり、2つの10mm角の半導体チップ部における接着面積はそれぞれ95%、94%であった。反り追従性の指標である接着面積が90%以上を示し、優れた反り追従性を示し、一括で短時間に複数個の発熱体と放熱体を接着することができた。
【0073】
<比較例1>
熱伝導材として、液状の熱伝導率2W/(m・K)のシリコングリース(サンワサプライ製、TK-P3K)を選択した。前述の3つの半導体チップ及びシール材が配置された基板を用いて、複数個の半導体チップにそれぞれグリース材を塗布してから、ヒートスプレッダをかぶせ、150℃、0.03MPaの条件において上記方法でパッケージを組み立て、発熱体である半導体チップと放熱体であるヒートスプレッダに接着させた。組み立て後のシリコングリースの厚みは40μmであった。20mm角の半導体チップ部における接着面積は84%であり、2つの10mm角の半導体チップ部における接着面積はそれぞれ95%、94%であった。
【0074】
<比較例2>
150℃における圧縮応力が0.10MPaのときの圧縮弾性率が1.73MPaであり、25℃におけるタック力が1.8N・mm、熱伝導率が23W/(m・K)である日立化成株式会社製の厚み0.3mmの熱伝導シートを選択して、ヒートスプレッダへ貼り付けた。このヒートスプレッダを前述の3つの半導体チップ及びシール材が配置された基板にかぶせてから、150℃、0.15MPaの条件において上記方法でパッケージを組み立て、熱伝導シートを発熱体である半導体チップと放熱体であるヒートスプレッダに接着させた。このとき、20mm角の半導体チップ部における接着面積は78%であり、2つの10mm角の半導体チップ部における接着面積はそれぞれ86%、85%であった。
【0075】
以上のように、実施例の方法によれば複数個の発熱体を一括して簡便に放熱体と接着させることができる。また良好な接着面積が維持されることから放熱性に優れる半導体デバイスを得ることができると考えられる。
【0076】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 熱伝導シート
2 発熱体
3 放熱体
4 基板
5 アンダーフィル材
6 シール材
10 半導体デバイス
a 発熱体部分(解析範囲)
b 反り量