(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】エッチング方法、及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
(21)【出願番号】P 2021526020
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021769
(87)【国際公開番号】W WO2020250751
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2019109990
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516017684
【氏名又は名称】ユニバーシテ ド オルレアン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 慈
(72)【発明者】
【氏名】ファゲ ジャック
(72)【発明者】
【氏名】前川 薫
(72)【発明者】
【氏名】大野 久美子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渚
(72)【発明者】
【氏名】デュサー レミ
(72)【発明者】
【氏名】ティロシェー トマス
(72)【発明者】
【氏名】ルフォシュ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アントン ガエル
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/054490(WO,A1)
【文献】特開2013-235912(JP,A)
【文献】米国特許第9793135(US,B1)
【文献】国際公開第2017/159512(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/022510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング対象膜が形成された被処理体を冷却しながら、第1の処理ガスの圧力が前記被処理体の温度に対する該第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で該第1の処理ガスに基づく吸着物を前記エッチング対象膜に物理吸着させる物理吸着工程と、
前記吸着物と前記エッチング対象膜とを第2の処理ガスのプラズマにより反応させることにより、前記エッチング対象膜をエッチングするエッチング工程と
を含む、エッチング方法。
【請求項2】
前記物理吸着工程は、前記吸着物を前記エッチング対象膜に物理吸着させる際に、前記被処理体が配置されるチャンバの壁の温度を前記被処理体の温度よりも高い値に調整する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記物理吸着工程は、前記吸着物の吸着量が飽和するまで、継続される、請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記物理吸着工程は、
前記第1の処理ガスの圧力が前記吸着物の吸着量を飽和させる圧力よりも高い値である条件下で前記吸着物を物理吸着させる第1の工程と、
前記第1の処理ガスの圧力が前記吸着物の吸着量を飽和させる圧力である条件下で前記吸着物を物理吸着させる第2の工程と、
を含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記物理吸着工程と前記エッチング工程とは、複数のサイクル繰り返される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記物理吸着工程と前記エッチング工程とが繰り返される度に、前記物理吸着工程において前記第1の処理ガスの圧力及び前記被処理体の温度の少なくともいずれか一方が変更される、請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記物理吸着工程と前記エッチング工程との間に、前記第1の処理ガスを排気する排気工程をさらに含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記物理吸着工程と前記エッチング工程との間に、前記第1の処理ガスを第3の処理ガスで置換する置換工程をさらに含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記第3の処理ガスは、前記第2の処理ガスと同一である、請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記エッチング工程は、前記吸着物と前記エッチング対象膜との反応が完了するまで、継続される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記エッチング工程の後に、前記第2の処理ガスを排気する排気工程をさらに含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記エッチング工程の後に、前記第2の処理ガスを第4の処理ガスで置換する置換工程をさらに含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記第1の処理ガスは、CF系ガスを含むことを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記物理吸着工程は、前記被処理体を-115℃以下の温度まで冷却しながら、前記吸着物を前記エッチング対象膜に物理吸着させる、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記物理吸着工程は、前記第1の処理ガスの圧力が前記第1の処理ガスの種類に応じて予め定められた下限値以上であり、且つ前記第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で前記吸着物を前記エッチング対象膜に物理吸着させる、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記第1の処理ガスは、C4F8であり、
前記第1の処理ガスの圧力は、0.5Pa以上である、請求項15に記載のエッチング方法。
【請求項17】
前記第2の処理ガスは、希ガスを含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項18】
被処理体が配置されるチャンバと、
前記チャンバ内を減圧するための排気部と、
前記チャンバ内に処理ガスを供給するためのガス供給部と、
エッチング対象膜が形成された被処理体を冷却しながら、第1の処理ガスの圧力が前記被処理体の温度に対する該第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で該第1の処理ガスに基づく吸着物を前記エッチング対象膜に物理吸着させる物理吸着工程と、前記吸着物と前記エッチング対象膜とを第2の処理ガスのプラズマにより反応させることにより、前記エッチング対象膜をエッチングするエッチング工程とを実行する制御部と、
を有する、エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法、及びエッチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エッチング対象膜をエッチングする手法の一つとして、Quasi-ALE(Atomic Layer Etching)法と呼ばれる手法が知られている。Quasi-ALE法では、処理ガスに基づくポリマ層をエッチング対象膜に堆積させ、ポリマ層とエッチング対象膜とを希ガスのプラズマにより反応させることにより、エッチング対象膜をエッチングする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチング量を適切に制御することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるエッチング方法は、エッチング対象膜が形成された被処理体を冷却しながら、第1の処理ガスの圧力が前記被処理体の温度に対する該第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で該第1の処理ガスに基づく吸着物を前記エッチング対象膜に物理吸着させる物理吸着工程と、前記吸着物と前記エッチング対象膜とを第2の処理ガスのプラズマにより反応させることにより、前記エッチング対象膜をエッチングするエッチング工程とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、エッチング量を適切に制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るエッチング装置の断面の一例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る第1の処理ガスの蒸気圧曲線の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るウェハの膜厚の時間的変化の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、ウェハの温度が-110℃である場合のSiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化をエリプソメータにより測定した結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、ウェハの温度が-110℃である場合のSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化をQMSにより測定した結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、ウェハの温度が-115℃である場合のSiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化をエリプソメータにより測定した結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ウェハの温度が-115℃である場合のSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化をQMSにより測定した結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、ウェハの温度が-120℃である場合のSiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化をエリプソメータにより測定した結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、ウェハの温度が-120℃である場合のSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化をQMSにより測定した結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態に係るエッチング方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
ところで、Quasi-ALE法では、処理ガスに基づくポリマ層をエッチング対象膜に堆積させる際に、エッチング対象膜に堆積されるポリマ層の堆積量が時間の経過とともに線形に増加する傾向がある。エッチング対象膜に堆積されるポリマ層の堆積量が時間の経過とともに線形に増加すると、ポリマ層の厚さを原子層単位で制御することが困難である。結果として、Quasi-ALE法では、ポリマ層と反応してエッチングされるエッチング対象膜のエッチング量を適切に制御することが困難であるという問題がある。
【0010】
[エッチング装置の構成]
まず、実施形態に係るエッチング装置について、
図1に基づき説明する。
図1は、実施形態に係るエッチング装置10の断面の一例を概略的に示す図である。
図1に示すエッチング装置10は、容量結合型エッチング装置である。
【0011】
エッチング装置10は、チャンバ12を備えている。チャンバ12は、略円筒形状を有する。チャンバ12は、その内部空間を処理空間として提供している。チャンバ12の内壁面には、耐プラズマ性を有する被膜が形成されている。この被膜は、アルマイト膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜であり得る。チャンバ12は、接地されている。チャンバ12の側壁には、開口12gが形成されている。チャンバ12の外部からチャンバ12へのウェハWの搬入時、及び、チャンバ12からチャンバ12の外部へのウェハWの搬出時に、ウェハWは開口12gを通過する。チャンバ12の側壁には、開口12gの開閉のために、ゲートバルブ14が取り付けられている。
【0012】
チャンバ12の底部上には、支持部15が設けられている。支持部15は、略円筒形状を有している。支持部15は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部15は、チャンバ12内において、チャンバ12の底部から上方に延在している。チャンバ12内には、ステージ16が設けられている。ステージ16は、支持部15によって支持されている。
【0013】
ステージ16は、半導体ウェハ(以下、「ウェハW」という。)を載置する。ウェハWは、被処理体の一例である。ステージ16は、下部電極18及び静電チャック20を有している。下部電極18は、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状を有している。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0014】
静電チャック20は、第2プレート18b上に設けられている。静電チャック20は、絶縁層、及び、当該絶縁層内に設けられた膜状の電極を有している。静電チャック20の電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。静電チャック20の電極には、直流電源22から直流電圧が印加される。静電チャック20の電極に直流電圧が印加されると、静電チャック20は、静電引力を発生して、ウェハWを当該静電チャック20に引き付けて、当該ウェハWを保持する。なお、静電チャック20内には、ヒータが内蔵されていてもよく、当該ヒータには、チャンバ12の外部に設けられたヒータ電源が接続されていてもよい。
【0015】
第2プレート18bの周縁部上には、フォーカスリング24が設けられる。フォーカスリング24は、略環状の板である。フォーカスリング24は、ウェハWのエッジ及び静電チャック20を囲むように配置される。フォーカスリング24は、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリング24は、例えば、シリコン、石英といった材料から形成され得る。
【0016】
第2プレート18bの内部には、流路18fが設けられている。流路18fには、チャンバ12の外部に設けられているチラーユニットから、配管26aを介して冷媒が供給される。流路18fに供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。即ち、流路18fとチラーユニットとの間では、冷媒が循環される。この冷媒の温度を制御することにより、ステージ16(又は静電チャック20)の温度及びウェハWの温度が調整される。なお、冷媒としては、例えばガルデン(登録商標)が例示される。
【0017】
エッチング装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面とウェハWの裏面との間に供給する。
【0018】
エッチング装置10は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、ステージ16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34及び支持体36を含み得る。電極板34の下面は、チャンバ12に面している。電極板34には、複数のガス吐出孔34aが設けられている。この電極板34は、シリコン又は酸化シリコンといった材料から形成され得る。
【0019】
支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。支持体36には、ガス拡散室36aにガスを導くガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0020】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。複数のガスソースは、少なくとも、第1の処理ガスのガスソースと、第2の処理ガスのガスソースとを含んでいる。第1の処理ガスは、ウェハWのエッチング対象膜に物理吸着されるガスである。第2の処理ガスは、エッチング対象膜のエッチングに用いられるガスである。なお、複数のガスソースは、第1の処理ガス及び第2の処理ガス以外のガスのソースを含んでいてもよい。
【0021】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器といった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0022】
支持部15とチャンバ12の側壁との間にはバッフル部材48が設けられている。バッフル部材48は、例えば、板状の部材であり、アルミニウム製の母材の表面にY2O3等のセラミックスを被覆することにより形成され得る。バッフル部材48には、当該バッフル部材48を貫通する複数の孔が形成されている。バッフル部材48の下方において、チャンバ12の底部には、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁といった圧力制御器、及び、ターボ分子ポンプといった真空ポンプを有しており、チャンバ12を所望の圧力に減圧することができる。
【0023】
エッチング装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波電力(高周波電気エネルギー)を発生する電源である。第1の高周波電力は、例えば27~100MHzの範囲内の周波数を有する。第1の高周波電源62は、整合器63を介して上部電極30に接続されている。整合器63は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(上部電極30側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。なお、第1の高周波電源62は、整合器63を介して下部電極18に接続されていてもよい。
【0024】
第2の高周波電源64は、ウェハWにイオンを引き込むための第2の高周波電力(高周波電気エネルギー)を発生する電源である。第2の高周波電力は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。第2の高周波電源64は、整合器65を介して下部電極18に接続されている。整合器65は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0025】
エッチング装置10は、制御部70によって、その動作が統括的に制御される。制御部70には、CPU(Central Processing Unit)を備えエッチング装置の各部を制御するプロセスコントローラ71と、ユーザインターフェース72と、記憶部73とが設けられている。
【0026】
ユーザインターフェース72は、工程管理者がエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、エッチング装置の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0027】
記憶部73には、エッチング装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ71の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)に記憶されてより。制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送されてもよい。
【0028】
制御部70は、プロセスコントローラ71が記憶部73に格納された制御プログラムや処理条件データに基づいて動作することにより、装置全体の動作を制御する。
【0029】
[エッチング方法]
次に、エッチング装置10によりウェハWをエッチングする流れの一例を説明する。エッチング装置10は、まず物理吸着工程を実行する。すなわち、エッチング装置10は、エッチング対象膜が形成されたウェハWを冷却しながら、第1の処理ガスの圧力がウェハWの温度に対する第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で該第1の処理ガスに基づく吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。そして、エッチング装置10は、エッチング工程を実行する。すなわち、エッチング装置10は、吸着物とエッチング対象膜とを第2の処理ガスのプラズマにより反応させることにより、エッチング対象膜をエッチングする。エッチング対象膜は、例えばシリコン含有膜である。シリコン含有膜としては、例えばSiO2膜が挙げられる。第1の処理ガスは、例えばCF系ガスである。CF系ガスとしては、例えばC4F8が挙げられる。第2の処理ガスは、例えば希ガスである。希ガスとしては、例えばArが挙げられる。なお、物理吸着工程とエッチング工程とは、複数のサイクル繰り返されても良い。また、物理吸着工程とエッチング工程との間に、第1の処理ガスを第3の処理ガスで置換する置換工程が実行されても良い。第3の処理ガスは、例えば第2の処理ガスと同一であっても良い。
【0030】
ところで、エッチング対象膜をエッチングする手法の一つであるQuasi-ALE法では、処理ガスに基づくポリマ層をエッチング対象膜に堆積させる際に、エッチング対象膜に堆積されるポリマ層の堆積量が時間の経過とともに線形に増加する傾向がある。エッチング対象膜に堆積されるポリマ層の堆積量が時間の経過とともに線形に増加すると、ポリマ層の厚さを原子層単位で制御することが困難である。結果として、Quasi-ALE法では、ポリマ層と反応してエッチングされるエッチング対象膜のエッチング量を所望の量に制御することが困難であるという問題がある。
【0031】
そこで、エッチング装置10は、エッチング対象膜が形成されたウェハWを冷却しながら、第1の処理ガスの圧力がウェハWの温度に対する第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で該第1の処理ガスに基づく吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。ウェハWを冷却しながら、第1の処理ガスの圧力が飽和蒸気圧よりも小さい条件下で吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させることで、吸着物の吸着量が時間の経過とともに一定値に飽和するため、吸着物の厚さを原子層単位で高精度に制御することができる。結果として、吸着物と反応してエッチングされるエッチング対象膜のエッチング量を所望の量に適切に制御することができる。
【0032】
図2は、実施形態に係る第1の処理ガスの蒸気圧曲線の一例を示す図である。
図2には、第1の処理ガスであるC4F8の蒸気圧曲線が示されている。C4F8の飽和蒸気圧は、温度が高くなるほど、大きくなる。このため、ウェハWの温度が高くなるほど、C4F8に基づく吸着物がエッチング対象膜に物理吸着し難くなる。よって、エッチングに寄与するのに十分な量の物理吸着を引き起こすウェハWの温度には上限があり、エッチング装置10は、上限の温度よりも低い温度までウェハWを冷却する。本実施形態のエッチング装置10は、第1の処理ガスとしてC4F8を用いる場合、ウェハWを、例えば-115℃以下の温度まで冷却する。
【0033】
また、C4F8の圧力がウェハWの温度に対する飽和蒸気圧よりも小さい場合、エッチング対象膜に物理吸着する吸着物の吸着量が時間の経過とともに一定値に飽和する。この現象は、吸着平衡と呼ばれる。本実施形態のエッチング装置10は、ウェハWを冷却しながら、C4F8の圧力がウェハWの温度に対するC4F8の飽和蒸気圧よりも小さい条件下でC4F8に基づく吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。例えば、エッチング装置10は、ウェハWを-115℃以下の温度まで冷却しながら、C4F8の圧力がウェハWの温度に対するC4F8の飽和蒸気圧よりも小さい条件下でC4F8に基づく吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。
図2には、ウェハWの温度が-115℃以下である場合に設定されるC4F8の圧力の範囲が斜線の範囲で示されている。ウェハWを冷却しながら、C4F8の圧力が飽和蒸気圧よりも小さい条件下で吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させることで、吸着物の吸着量が時間の経過とともに一定値に飽和するため、吸着物の厚さを原子層単位で高精度に制御することができる。結果として、吸着物と反応してエッチングされるエッチング対象膜のエッチング量を所望の量に適切に制御することができる。
【0034】
次に、
図3を参照して、ウェハWをエッチングする流れの具体例を説明する。
図3は、実施形態に係るウェハWの膜厚の時間的変化の一例を示す図である。
図3の上側には、物理吸着工程、調整工程及びエッチング工程を順に8サイクル繰り返し実行した場合のウェハWの膜厚の時間的変化がグラフで示されている。
図3の下側には、
図3の上側のグラフのうち、7サイクル目に相当する部分が拡大されて示されている。ウェハWには、エッチング対象膜としてSiO2膜が形成されている。
【0035】
エッチング装置10は、冷媒を循環させて、ウェハWを-120℃まで冷却する。そして、エッチング装置10は、ウェハWを冷却しながら、C4F8の圧力がウェハWの温度に対するC4F8の飽和蒸気圧よりも小さい条件下でガスソース群40からC4F8をチャンバ12内に供給して吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。このとき、エッチング装置10は、チャンバ12内にプラズマを生成しない。
図3には、7サイクル目の物理吸着工程が実行されている期間T1が示されている。ウェハWでは、エッチング対象膜に物理吸着する吸着物の吸着量が時間の経過とともに一定値に飽和し、ウェハWの膜厚が一定値に飽和する。つまり、物理吸着工程は、吸着物の吸着量が飽和するまで、所定時間(例えば期間T1の時間)だけ継続される。なお、エッチング装置10は、吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる際に、チャンバ12の壁の温度をウェハWの温度よりも高い値に調整してもよい。チャンバ12の壁の温度の調整は、例えばヒータなどの加熱手段を用いて実行される。チャンバ12の壁の温度をウェハWの温度よりも高い値に調整することにより、チャンバ12の壁に物理吸着する吸着物の吸着量を低減することができる。
【0036】
エッチング装置10は、エッチング対象膜にC4F8に基づく吸着物を物理吸着させた後、ガスソース群40からArをチャンバ12内に供給して、C4F8をArで置換する。
図3には、7サイクル目の置換工程が実行されている期間T2が示されている。C4F8がArで置換されることにより、C4F8の分圧が減少して、エッチング対象膜に物理吸着する吸着物の一部が揮発する。エッチング対象膜に物理吸着する吸着物の一部が揮発するに連れて、ウェハWでは、吸着物の吸着量が減少し、ウェハWの膜厚が減少する。しかし、吸着物の他の一部は、揮発することなく残留物としてエッチング対象膜に残留する。これにより、吸着物の厚さが所定の厚さに調整される。
【0037】
エッチング装置10は、C4F8をArで置換した後、ガスソース群40からArをチャンバ12内に供給しつつ、第1の高周波電源62から第1の高周波電力を上部電極30に印加してチャンバ12内にArのプラズマを生成してエッチングを行う。このとき、エッチング装置10は、第2の高周波電源64から第2の高周波電力を下部電極18に印加してもよい。
図3には、7サイクル目のエッチング工程が実行されている期間T3が示されている。Arのプラズマが生成されることにより、エッチング対象膜上の吸着物に対するArイオンの衝突が促進され、吸着物とエッチング対象膜との反応が引き起こされる。吸着物とエッチング対象膜とが反応することにより、ウェハWでは、吸着物の厚さに応じてエッチング対象膜がエッチングされてエッチング対象膜の厚さが時間の経過とともに減少し、ウェハWの膜厚が減少する。吸着物とエッチング対象膜との反応が完了すると、エッチング対象膜の厚さの減少が停止する。つまり、エッチング工程は、吸着物とエッチング対象膜との反応が完了するまで、継続される。
【0038】
このように、エッチング装置10は、ウェハWを冷却しながら、C4F8の圧力がウェハWの温度に対するC4F8の飽和蒸気圧よりも小さい条件下で吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させることで、吸着物の吸着量を一定値に飽和させることができる。これにより、エッチング装置10は、吸着物の厚さを原子層単位で高精度に制御することができ、結果として、吸着物と反応してエッチングされるエッチング対象膜のエッチング量を所望の量に適切に制御することができる。
【0039】
ところで、エッチング装置10では、エッチング対象膜に吸着物を物理吸着させた場合であっても、エッチング対象膜のエッチングを行う前に吸着物の全てが揮発する場合がある。例えば、エッチング装置10では、SiO2膜に物理吸着した、C4F8に基づく吸着物は、ウェハWの温度が比較的に高い温度(例えば、-115℃よりも高い温度)である場合、エッチングを行う前に吸着物の全てが揮発する場合がある。エッチングを行う前に吸着物の全てが揮発すると、吸着物とエッチング対象膜との反応が実現されないため、エッチング対象膜のエッチングが実現されない。
【0040】
図4は、ウェハWの温度が-110℃である場合のSiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化をエリプソメータにより測定した結果を示すグラフである。
図5は、ウェハWの温度が-110℃である場合のSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化をQMS(Quadrupole Mass Spectrometer)により測定した結果を示すグラフである。
図4及び
図5は、チャンバ12内に供給されるC4F8の圧力を変えて、SiO2膜上の吸着物の厚さ及びSiO2膜付近のガス成分の強度を測定した結果である。
図4及び
図5には、C4F8の圧力ごとに、SiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化及びSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化がグラフにより示されている。
【0041】
図4のグラフは、ウェハWの温度が-110℃である場合、チャンバ12内にC4F8が供給されることにより、C4F8に基づく吸着物がSiO2膜に物理吸着することを示している。
図5のグラフは、ウェハWの温度が-110℃である場合、SiO2膜に一旦物理吸着した吸着物の全てがC4F8の排気が開始された後にガス成分として速やかに揮発することを示している。
【0042】
図6は、ウェハWの温度が-115℃である場合のSiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化をエリプソメータにより測定した結果を示すグラフである。
図7は、ウェハWの温度が-115℃である場合のSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化をQMSにより測定した結果を示すグラフである。
図6及び
図7は、チャンバ12内に供給されるC4F8の圧力を変えて、SiO2膜上の吸着物の厚さ及びSiO2膜付近のガス成分の強度を測定した結果である。
図6及び
図7には、C4F8の圧力ごとに、SiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化及びSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化がグラフにより示されている。
【0043】
図6のグラフは、ウェハWの温度が-115℃である場合、チャンバ12内にC4F8が供給されることにより、C4F8に基づく吸着物がSiO2膜に物理吸着することを示している。
図7のグラフは、ウェハWの温度が-115℃である場合、SiO2膜に一旦物理吸着した吸着物がC4F8の排気が開始された後にガス成分として緩やかに揮発することを示している。
図4と
図5と
図6と
図7とは、ウェハWの温度が-115℃である場合、ウェハWの温度が-110℃である場合と比較して、SiO2膜に一旦物理吸着した吸着物がSiO2膜に残留する時間を長くすることができることを示している。
【0044】
図8は、ウェハWの温度が-120℃である場合のSiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化をエリプソメータにより測定した結果を示すグラフである。
図9は、ウェハWの温度が-120℃である場合のSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化をQMSにより測定した結果を示すグラフである。
図8及び
図9は、チャンバ12内に供給されるC4F8の圧力を変えて、SiO2膜上の吸着物の厚さ及びSiO2膜付近のガス成分の強度を測定した結果である。
図8及び
図9には、C4F8の圧力ごとに、SiO2膜上の吸着物の厚さの時間的変化及びSiO2膜付近のガス成分の強度の時間的変化がグラフにより示されている。
【0045】
図8のグラフは、ウェハWの温度が-120℃である場合、チャンバ12内にC4F8が供給されることにより、C4F8に基づく吸着物がSiO2膜に物理吸着することを示している。
図9のグラフは、ウェハWの温度が-120℃である場合、SiO2膜に一旦物理吸着した吸着物がC4F8の排気が開始された後にガス成分として緩やかに揮発することを示している。
図6と
図7と
図8と
図9とは、ウェハWの温度が-120℃である場合、ウェハWの温度が-115℃である場合と比較して、SiO2膜に一旦物理吸着した吸着物がSiO2膜に残留する時間を長くすることができることを示している。
【0046】
そこで、本実施形態のエッチング装置10は、ウェハWを-115℃以下の温度まで冷却しながら、吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。これにより、エッチングを行う前に吸着物の全てが揮発する事態を回避することができるため、エッチング対象膜のエッチングを安定的に実現することができる。
【0047】
ただし、ウェハWが-115℃以下の温度まで冷却された場合でも、第1の処理ガスであるC4F8の圧力がウェハWの温度に対するC4F8の飽和蒸気圧よりも十分に低い場合には、C4F8に基づく吸着物が揮発し易くなる。例えば、C4F8の圧力が0.5Paよりも小さい場合、C4F8に基づく吸着物が揮発し易くなる。そこで、本実施形態のエッチング装置10は、第1の処理ガスの圧力が第1の処理ガスの種類に応じて予め定められた下限値以上であり、且つ第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。例えば、第1の処理ガスがC4F8である場合、第1の処理ガスの種類に応じて予め定められた下限値は、例えば0.5Paである。第1の処理ガスの圧力を第1の処理ガスの種類に応じて予め定められた下限値以上とすることにより、吸着物の揮発を抑制することができる。
【0048】
次に、本実施形態に係るエッチング方法の流れを簡単に説明する。
図10は、実施形態に係るエッチング方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
エッチング装置10は、流路18fとチラーユニットとの間で冷媒を循環させて、ステージ16及びウェハWを-115℃以下まで冷却する(ステップS11)。
【0050】
エッチング装置10は、ウェハWを冷却しながら、C4F8の圧力がウェハWの温度に対するC4F8の飽和蒸気圧よりも小さい条件下でガスソース群40からC4F8をチャンバ12内に供給して吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる(ステップS12)。ステップS12は、物理吸着工程の一例である。ステップS12におけるC4F8は、第1の処理ガスの一例である。
【0051】
エッチング装置10は、ガスソース群40からArをチャンバ12内に供給して、C4F8をArで置換する(ステップS13)。C4F8がArで置換されることにより、C4F8の分圧が減少して、エッチング対象膜に物理吸着する吸着物の一部が揮発する。吸着物の他の一部は、揮発することなく残留物としてエッチング対象膜に残留する。これにより、吸着物の厚さが所定の厚さに調整される。ステップS13は、置換工程の一例である。ステップS13におけるArは、第3の処理ガスの一例である。
【0052】
エッチング装置10は、ガスソース群40からArをチャンバ12内に供給しつつ、第1の高周波電源62から第1の高周波電力を上部電極30に印加してチャンバ12内にArのプラズマを生成してエッチング対象膜をエッチングする(ステップS14)。ステップS14は、エッチング工程の一例である。ステップS14におけるArは、第2の処理ガスの一例である。
【0053】
エッチング装置10は、ステップS12~S14が複数のサイクル繰り返されたか否かを判定する(ステップS15)。ステップS12~S14が複数のサイクル繰り返されていない場合(ステップS15No)、エッチング装置10は、処理をステップS12に移行する。これにより、物理吸着工程、置換工程及びエッチング工程が複数のサイクル繰り返される。
【0054】
一方、ステップS12~S14が複数のサイクル実行された場合(ステップS15Yes)、エッチング装置10は、エッチング方法を終了する。
【0055】
以上のように、本実施形態に係るエッチング方法は、物理吸着工程と、エッチング工程とを含む。物理吸着工程は、エッチング対象膜が形成された被処理体を冷却しながら、第1の処理ガスの圧力が被処理体の温度に対する該第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で該第1の処理ガスに基づく吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。エッチング工程は、吸着物とエッチング対象膜とを第2の処理ガスのプラズマにより反応させることにより、エッチング対象膜をエッチングする。これにより、吸着物の厚さを原子層単位で高精度に制御することができ、結果として、吸着物と反応してエッチングされるエッチング対象膜のエッチング量を所望の量に適切に制御することができる。これにより、被処理体の面内におけるエッチング量の均一性を向上するとともに、被処理体ごとのエッチング量のばらつきを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、物理吸着工程は、吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる際に、被処理体が配置されるチャンバの壁の温度を被処理体の温度よりも高い値に調整する。これにより、チャンバの壁に物理吸着する吸着物の吸着量を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、物理吸着工程は、吸着物の吸着量が飽和するまで、継続される。これにより、吸着物の厚さを所望の厚さに制御することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、物理吸着工程とエッチング工程とは、複数のサイクル繰り返される。これにより、繰り返される各サイクルにおけるエッチング量を所望の量に制御することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るエッチング方法は、第1の処理ガスを第3の処理ガスで置換する置換工程をさらに含む。これにより、残留ガスの影響によるエッチング不良の発生を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、第3の処理ガスは、第2の処理ガスと同一である。これにより、処理ガスの切り替えに起因したエッチング不良の発生を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、エッチング工程は、吸着物とエッチング対象膜との反応が完了するまで、継続される。これにより、自己制御的なエッチングを実現することができる。
【0062】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、第1の処理ガスは、CF系ガスを含む。これにより、CF系ガスに基づく吸着物と反応してエッチングされるエッチング対象膜のエッチング量を所望の量に適切に制御することができる。
【0063】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、物理吸着工程は、被処理体を-115℃以下の温度まで冷却しながら、吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。これにより、エッチングを行う前に吸着物の全てが揮発する事態を回避することができるため、エッチング対象膜のエッチングを安定的に実現することができる。
【0064】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、物理吸着工程は、第1の処理ガスの圧力が第1の処理ガスの種類に応じて予め定められた下限値以上であり、且つ第1の処理ガスの飽和蒸気圧よりも小さい条件下で吸着物をエッチング対象膜に物理吸着させる。これにより、吸着物の揮発を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、第1の処理ガスは、C4F8であり、第1の処理ガスの圧力は、0.5Pa以上である。これにより、C4F8に基づく吸着物の揮発を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態に係るエッチング方法において、第2の処理ガスは、希ガスを含む。これにより、吸着物とエッチング対象膜とを希ガスのプラズマにより反応させることができる。
【0067】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0068】
例えば、上記した実施形態において、物理吸着工程は1つのステップで実行されるが、2つのステップで実行されてもよい。例えば、物理吸着工程は、第1の工程と第2の工程とを含んでもよい。第1の工程では、第1の処理ガスの圧力が吸着物の吸着量を飽和させる圧力よりも高い値である条件下で吸着物を物理吸着させる。第2の工程では、第1の処理ガスの圧力が前記吸着物の吸着量を飽和させる圧力である条件下で前記吸着物を物理吸着させる。これにより、吸着物の吸着量が一定値に飽和するまでに要する時間を短縮することができる。
【0069】
また、上記した実施形態において、物理吸着工程とエッチング工程とが繰り返される際に、第1の処理ガスの圧力及び被処理体(ウェハW)の温度は変更されないが、開示の技術はこれに限られない。例えば、物理吸着工程とエッチング工程とが繰り返される度に、第1の処理ガスの圧力及び被処理体の温度の少なくともいずれか一方が変更されてもよい。これにより、エッチングの進行に伴ってエッチング量を変化させることができる。
【0070】
また、上記した実施形態では、物理吸着工程とエッチング工程との間に、第1の処理ガスを第3の処理ガスで置換する置換工程が行われる例を示したが、開示の技術はこれに限られない。例えば、物理吸着工程とエッチング工程との間に、第1の処理ガスを排気する排気工程が含まれてもよい。
【0071】
また、上記した実施形態において、エッチング工程の後に、第2の処理ガスを排気する排気工程が含まれても良い。また、上記した実施形態において、エッチング工程の後に、第2の処理ガスを第4の処理ガスで置換する置換工程が含まれてもよい。
【0072】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 エッチング装置
12 チャンバ
16 ステージ
18 下部電極
18f 流路
20 静電チャック
30 上部電極
40 ガスソース群
50 排気装置
62 第1の高周波電源
64 第2の高周波電源
70 制御部