(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法および脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収するための回収キット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/00 20060101AFI20221018BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20221018BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20221018BHJP
B01D 15/08 20060101ALI20221018BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20221018BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221018BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20221018BHJP
C07K 17/14 20060101ALI20221018BHJP
C07K 2/00 20060101ALI20221018BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20221018BHJP
【FI】
C12Q1/00
B01J20/22 C
B01J20/34 G
B01D15/08
C12N1/02
C12M1/00 A
G01N33/48 S
C07K17/14
C07K2/00
C12N5/07
(21)【出願番号】P 2022057872
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504059429
【氏名又は名称】ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 裕人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲太
(72)【発明者】
【氏名】本間 リナ
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 克仁
(72)【発明者】
【氏名】氏原 大
(72)【発明者】
【氏名】水口 博義
(72)【発明者】
【氏名】皿良 剛
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
(72)【発明者】
【氏名】角南 寛
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03925703(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/141947(WO,A1)
【文献】特開2021-121421(JP,A)
【文献】国際公開第2021/181819(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0081468(US,A1)
【文献】国際公開第2022/038190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12N 15/00-90
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を含む試料から脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収する、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法であっ
て、
前記試料
を、前記アミノ基を含む物質が保持された担体を通
過させることによって、前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞と前記担体に担持された前記アミノ基とが結合してなる複合体を形成させる複合体形成工程と、
前記複合体形成工程によって得られた前記複合体と、金属陽イオンを含む解離バッファー液とを接触させて、前記複合体から前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を解離させる解離工程と、を含む脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法
であり、
前記アミノ基を含む物質は、ポリオルニチンを含むペプチドである脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法。
【請求項2】
前記担体のメソ孔の孔径を制限することで、回収される前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の粒子径を制御する請求項
1に記載の回収方法。
【請求項3】
前記担体は、シリカモノリスである請求項1
または2に記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法。
【請求項4】
前記解離バッファー液は、2価の金属イオンがマグネシウムを含む溶液である請求項1~
3の何れか1項に記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法。
【請求項5】
前記解離バッファー液の濃度は、0.1~1.5Mである請求項1~
4のいずれか1項に記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を行なうための脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットであって、
前記アミノ基を含む物質
が担持された前記担体
と、前記解離バッファー
と、を含む、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞
を回収するための回収キット。
【請求項7】
脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を含む試料から脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収する、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットであって、
ポリオルニチンを含むペプチドと、前記ペプチドが担持された担体とを、含む脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キット
であり、
前記試料を、前記ポリオルニチンを含むペプチドが保持された担体を通過させることによって、前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞と前記担体に担持された前記アミノ基とが結合してなる複合体を形成させ、得られた前記複合体と、金属陽イオンを含む解離バッファー液とを接触させて、前記複合体から前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を解離させ、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収するための回収キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法および脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットに関する。特に、エクソソームの回収方法およびエクソソームの回収キットに関する。
【背景技術】
【0002】
脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞であるエクソソームは、細胞から分泌される直径20~150nmの膜で覆われた粒子である。エクソソームは、血液、唾液、尿、脳脊髄液等の広範な生体液中に存在しており、その内部には、タンパク質、mRNA、microRNA等の様々な物質が含まれていることが知られている。最近では、エクソソームは、その内部に包含する物質を介した細胞間の情報伝達機能を有することが示唆されており、各種疾患や生命現象のバイオマーカーとして注目されている。
【0003】
エクソソームを回収する技術としては、これまでにいくつかの方法が報告されており、例えば、(1)超遠心法(特許文献1)、(2)遠心によるペレットダウン、(3)粒子のサイズによる分画、(4)免疫沈降法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-038566号公報
【文献】Drug Delivery System 17-4 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上該方法は、試料中の一部のエクソソームしか回収できないという問題点を有している。さらには、回収したエクソソームと抗体との複合体におけるエクソソームと抗体との結合が強固である為、エクソソームと抗体とを解離させてエクソソームの構造及び機能を損なわない状態のエクソソームを回収するためには、タンパク質の変性を伴うような厳しい条件で解離させる必要がある。このためエクソソームの構造及び機能を損なわない状態でのエクソソームの回収は困難である。
したがって、実施の形態の課題は、エクソソームを効率よく、エクソソームの構造及び機能を損なわない状態で分離できるエクソソームの回収方法およびエクソソームの回収キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を含む試料から脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収する、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法であって、
上記試料と、アミノ基を含む物質と、上記アミノ基を含む物質を担持可能な担体とを接触させるか、または、上記試料と、上記担体に担持された上記アミノ基を含む物質とを接触させることによって、上記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞と上記担体に担持された上記アミノ基とが結合してなる複合体を形成させる複合体形成工程と、
上記複合体形成工程によって得られた上記複合体と、金属陽イオンを含む解離バッファー液とを接触させて、上記複合体から上記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を解離させる解離工程と、を含む脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を用いる。
【0007】
また、上記エクソソームの回収方法を行なうためのエクソソームの回収キットであって、上記ペプチド、上記担体、および上記解離バッファー、を含むことを特徴とする、エクソソームの回収キットを用いる。さらに、エクソソームを含む試料からエクソソームを回収する、エクソソームの回収キットであって、ポリオルニチンを含むペプチドと、上記ペプチドが担持された担体とを、含むエクソソームの回収キットを用いる。
また、上記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を行なうための脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットであって、
上記アミノ基を含む物質、上記担体、および上記解離バッファー、を含む、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットを用いる。さらに、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を含む試料から脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収する、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットであって、ポリオルニチンを含むペプチドと、上記ペプチドが担持された担体とを、含む脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットを用いる。
【発明の効果】
【0008】
本願のエクソソームの回収方法およびエクソソームの回収キットでは、エクソソームを十分分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の微粒子または小胞分離用カラムの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
実施の形態の一実施形態について以下に説明するが、実施の形態はこれに限定されるものではない。実施の形態は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。実施の形態はまた、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても実施の形態の技術的範囲に含まれる。
【0011】
〔1.エクソソームの回収方法〕
実施の形態の一実施形態に係るエクソソームの回収方法は、エクソソームを含む試料からエクソソームを回収する、エクソソームの回収方法であって、試料と、オルニチンを含むペプチドと、上記ペプチドを担持可能な担体とを接触させるか、または、上記試料と、上記担体に担持された上記ペプチドとを接触させることによって、上記エクソソームと上記担体に担持された上記ペプチドとが結合してなる複合体を形成させる複合体形成工程と、上記複合体形成工程によって得られた上記複合体と、金属陽イオンを含む解離バッファーとを接触させて、上記複合体から上記エクソソームを解離させる解離工程と、を含んでいる。
実施の形態の一実施形態に係るエクソソームの回収方法は、上記構成とすることから、下記(1)~(3)の効果を奏する。
【0012】
(1)超遠心機等を使用する必要がないため、短時間に、かつ、簡便に、エクソソームを回収できる。
【0013】
(2)オルニチンがエクソソームの膜に結合することを利用しているため、エクソソームにおける抗原分子の発現状態に関わらず、広くエクソソームを捕捉し、回収することができる
【0014】
(3)複合体から、エクソソームの膜構造および膜に存在するタンパク質の構造に影響を与えることが少ない、金属陽イオンを含む解離バッファーを用いたマイルドな(温和な)条件でエクソソームを解離させているため、エクソソームを傷つけることなく(換言すればエクソソームの構造及び機能を損なわない状態、またはエクソソームの構造及び機能をほぼ損なわない状態で)、エクソソームを回収することができる。
【0015】
エクソソームの構造及び機能を損なわない状態(またはエクソソームの構造及び機能をほぼ損なわない状態)のエクソソームを回収することによって、例えば、(1)エクソソームの生理作用等の機能解析、および(2)バイオマーカー(エクソソーム由来のタンパク質、miRNA等の核酸)等に利用することが可能である。
【0016】
また、エクソソームはがん、アルツハイマー病、心筋梗塞、脳梗塞、神経変性疾患、変形性膝関節症および感染症等、幅広い疾患の治療への応用が期待されている。そのため、エクソソームの構造及び機能を損なわない状態(またはエクソソームの構造及び機能をほぼ損なわない状態)のエクソソームを回収することによって、回収したエクソソームそのものを、(3)治療薬、および(4)ドラッグデリバリーシステムの運搬体、として利用できる。特に、上記(3)治療薬としてのエクソソームの利用には、(A)再生医療への補助的な利用、(B)免疫制御を目的とした利用、および(C)ワクチンとしての利用等が考えられている。
【0017】
以下では、実施の形態の一実施形態に係るエクソソームの回収方法に用いられる材料についてまずは説明し、続いて、エクソソームの回収方法の各工程について説明する。
〔1-1.材料〕
【0018】
(試料)
実施の形態の回収方法において、「エクソソームを含む試料」(本明細書中では、単に試料とも称する)とはエクソソームを含む混合物であれば、その他の構成は特に限定されず、例えば、エクソソームを含む生物学的試料が挙げられる。
【0019】
本明細書中では、「生物学的試料」とは、生物の体内から採取された検体や、生体からの抽出物、培養液中や、微生物由来成分を意味する。生物学的試料としては、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、涙液、汗、母乳、羊水、脳脊髄液(髄液)、骨髄液、胸水、腹水、関節液、眼房水、硝子体、生体そのものや一部の組織からの抽出物、培養液、微生物由来成分等が含まれるがこれらに限定されない。生物学的試料の選択は、目的に応じて、当業者により適宜設定され得る。例えば、採取の容易さの観点からは、血液、血漿、血清、唾液、尿等が好ましく用いられる。他に、各臓器の抽出物、動物・植物細胞培養後の培養液、微生物もしくは微生物由来成分などが含まれる。
【0020】
実施の形態の一実施形態では、生物学的試料の由来は、エクソソームを保有する生物種由来であれば別段限定されない。生物学的試料の由来となる生物種としては、例えば哺乳類が使われる。哺乳類の例としては、マウス(Musmusculus)、ラット( Rattus norvegicus)、ネコ(Felis catus)、イヌ(Canis lupus familiaris)、ブタ(Sus scrofa domesticus)、ヒツジ(Ovis aries)、ウシ(Bosaurus)、ミドリザル(Cercopithecus aethiops)、ヒト(Homosapiens)等が挙げられる。また、培養液として幹細胞やがん細胞、口腔粘膜由来細胞等を培養した培養液などが使用できる。
他にも、葉、果物からの抽出物、植物の果汁成分などが用いられる。植物としては、ブドウ、グレープフルーツ、アセロラ、ドラゴンフルーツ、ショウガ、ニンジン、レモンなどの柑橘類、ブロッコリー、リンゴ等があげられる。また、微生物としては、コウジカビ、乳酸菌、酵母等が含まれる。食品(味噌、醤油、酒、ヨーグルト、牛乳、その他の発酵食品)なども含まれる。
【0021】
(ペプチド)
実施の形態の回収方法において利用するペプチド(以下、適宜「実施の形態のペプチド」という。)は、オルニチンを含むペプチドであって、試料中のエクソソームと結合することができる。
【0022】
実施の形態のペプチドは、当該分野において公知の任意の手法に従って容易に作製され、例えば、ペプチドの発現ベクターが導入された形質転換体によって発現されても、化学合成されてもよい。すなわち、実施の形態のペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、実施の形態の範囲内である。化学合成法としては、固相法または液相法を挙げることができる。固相法において、例えば、市販の各種ペプチド合成装置(ModelMultiPepRS(IntavisAG)等)を利用することができる。また市販されているポリオルニチンを実施の形態のペプチドとして利用可能である。市販されているポリオルニチンは、特に限定されるものではないはないが、後述する実施例において利用したポリ-L-オルニチン(シグマアルドリッチ社製)等が挙げられる。
【0023】
実施の形態のペプチドの分子量の上限は特に限定されるものではないが、溶解性および粘度等の操作性の観点からは300,000程度が上限であるといえる。
実施の形態のペプチドは、単一の分子量を有するペプチドからなるものであっても、それぞれ異なった分子量を有するペプチドの混合物からなるものであってもよい
【0024】
(担体)
実施の形態の回収方法において利用する担体(以下適宜「実施の形態の担体」という。)は、実施の形態のペプチドを担持可能な担体を意味する。実施の形態の担体は、エクソソームに結合した実施の形態のペプチドと結合しエクソソーム-実施の形態のペプチド-実施の形態の担体の順で結合した複合体を形成し得る。
【0025】
実施の形態の回収方法では、担体を用いることによって、エクソソームを含む複合体を効率的かつ簡便に回収することでエクソソームの高効率回収が可能となる。
【0026】
担体は、実施の形態のペプチドを直接的または間接的に担持(保持)できる構造物であれば、その他の構成は特に限定されない。実施の形態の担体としては、担体に結合する実施の形態のペプチドの機能を弱めない支持体であることが好ましく、例えば、ガラス、ナイロンメンブレン、半導体ウェハー、ラテックス粒子、セルロース粒子、μビーズ、シリカビーズ、磁性粒子、モノリス担体等が挙げられる。実施の形態の担体としては、エクソソームを含む複合体の回収およびエクソソームの回収を容易に行なうことができるという点で、特にモノリス担体であることが好ましい。モノリス担体はペプチド、タンパク質、抗体、核酸等の分離精製において広く使用されており、当業者であれば十分に理解し得る担体である。
【0027】
(実施の形態のペプチドと実施の形態の担体との結合方法)
上述したように、実施の形態のペプチドと担体とは結合することによって、実施の形態のペプチドを実施の形態の担体が担持することが可能である。
【0028】
実施の形態の一実施形態においてペプチドと担体との結合方法は、別段限定されず、適宜、周知の方法を用いることができる。また、ペプチドと担体との結合は直接的であっても間接的であってもよい。
【0029】
担体と結合するペプチドの種類は、一種類であってもよいし、複数種類の組み合わせであってもよい。複数種類のペプチドが組み合わせて用いられる場合、その組み合わせは別段限定されない。
【0030】
<モノリス>
ここで特に担体として、以下のものがよい。実施の形態は、モノリス体の表面がポリマーで被覆され、上記ポリマーにイオン交換基が修飾されているモノリス体及びこのようなモノリス体を備えた微粒子または小胞の分離用カラムである。又、イオン交換基は、特に限定されないが、陰イオン交換基を用いることが出来る。
【0031】
微粒子または小胞とは粒子径が1nmから数300nmの粒子であり、小胞というのは、ウイルスやエクソソーム、リソソーム、リポソーム、といった内側に液体などで包括された空間を持つものであり、その中にタンパク質や核酸などの物質が含まれる場合もあれば、含まれない場合もある。微粒子または小胞には生物により作られるものと工業的に生産されるものが含まれる。微粒子または小胞は、これらに限定されないが、薬物を含有したナノメディシンナノメディシンを含み、ナノメディシンは、リポソーム製剤、タンパク質結合型製剤、エクソソーム、ウイルスを含む。尚、多くのナノメディシンの表面は血管内での安定した循環を可能にするため、負に帯電している。ナノメディシンに含まれる薬物は、これらに限定されないが、低分子化合物、高分子の抗体、オリゴ核酸、ペプチド、タンパク質、DNA、メッセンジャーRNA、μRNA(miRNA)が含まれる。又、微粒子または小胞の母体は、これらに限定されないが、金、銀、炭素等で構成することが出来る。
【0032】
微粒子または小胞の分離とは、微粒子または小胞の分析や精製等を行うための分離が含まれる。
モノリス体とは、三次元網状の骨格構造を備え、骨格によって形成される、骨格の一方の端部から他方の端部に連続し、言い換えれば骨格の上端から下端まで貫通し、且つ相互に連通する貫通孔である、マクロ孔を備えた、単一の構造物である多孔質体であり、一体型多孔質体である。又、モノリス体は、貫通孔(マクロ孔)内の骨格に貫通孔より小径であって貫通孔間に連通する又は連通しない細孔である、メソ孔を備える構造のものとメソ孔のない構造のものが存在する。モノリス体としては、貫通孔が連続的かつ規則正しく三次元網目構造を形成しているものが好ましいが、これに限定されない。又、貫通孔はモノリス体の軸と直交する方向の断面が円形又はそれに近いものが好ましい。
【0033】
マクロ孔は、培養細胞や、血液などに含まれるたんぱく質などや、微粒子または小胞及び微粒子または小胞からの低分子である放出物や遊離物、ナノメディシン及びナノメディシンに含まれていた薬物であって、ナノメディシンからの放出薬物や遊離薬物の通路として働き、メソ孔は、微粒子または小胞からの低分子である放出物や遊離物、ナノメディシンに含まれていた薬物であって、ナノメディシンからの放出薬物や遊離薬物の分離する機能になる。又、メソ孔は、微粒子または小胞の大きさや微粒子または小胞からの放出物や遊離物の大きさに応じて径の大きさを選択することにより、微粒子または小胞からの放出物や遊離物として、低分子から抗体、核酸等の高分子の放出物や遊離物まで、微粒子または小胞と微粒子または小胞からの放出物や遊離物の分離をすることが可能である。
【0034】
メソ孔のサイズによって、微粒子または小胞と結合力が変わると考えられ、また表面積が変化することにより、回収率が最も高くなるメソ孔が存在する。つまり、メソ孔がターゲットとなる微粒子または小胞よりも小さい場合は、メソ孔内で補足することができなくなるが、一方で、メソ孔を十分に大きくすると、表面積が減少するため、補足する微粒子または小胞が少なくなってしまう。回収率を最も上げるための条件としては、メソ孔を0.005~200nmとするのが好ましい
【0035】
一方、メソ孔を十分に小さくすると、大きな微粒子または小胞を回収することが難しくなることがわかっている。おそらく、大きな微粒子または小胞は、一部がメソ孔にトラップされてしまい、解離液中の陽イオンが微粒子または小胞とメソ孔中の陰イオン基にアクセスできなくなってしまうことが原因と考えられる。小さい微粒子または小胞を選択的に取得できることは、微粒子または小胞をドラックデリバリーシステムやワクチンなどの外殻に使用する際に有効である。つまり、より小さい方が、細胞内に取り込みやすくなるためである。(非特許文献1)この場合、メソ孔は0.005~300nm以下とすることが好ましい。
【0036】
モノリス体は、試料を含んだ液体の流れる貫通孔であるマクロ孔の直径は特に限定されないが、1~50μmが好ましい。基本的にはマクロ孔の直径が小さいほど、接触回数が増えるが、試料を含んだ液体を流す際の通液抵抗も上昇するので、HPLCカラムや固相抽出カラムとして利用する場合には、マクロ孔の直径は1~20μmが好ましい。
【0037】
モノリス体としては、シリカモノリス体やガラスモノリス体を含むセラミックモノリス体やポリマーモノリス体を用いることが出来る。モノリス体の原料は、特に限定されないが、セラミックやガラス等の無機質が好ましい。更に、生体試料成分の場合はモノリス体を形成する原料により、非対象物の吸着が生じる場合があり、固相抽出など実績のあるケイ素アルコキシドを原料とするシリカモノリス体が好ましい。
【0038】
ケイ素アルコキシドを原料とするシリカモノリス体としては、特に限定されないが、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等を原料として製造されるシリカモノリス体が好ましく、又、これらの原料を単独又は混合してから行うゾル-ゲル合成により製造されるシリカモノリス体が好ましい。
【0039】
シリカモノリス体の製造は、特に限定されないが、ゾル-ゲル法等の一般的に知られている方法を用いて、以下のように行うことが出来る。先ず、水溶性高分子を酢酸水溶液に溶解し、この溶液に上記原料加えて加水分解反応を行って攪拌した後に得られた溶液を固化させる。そして、固化したゲルをアンモニア水溶液中に浸漬した後、乾燥し、加熱することによって、非晶質シリカよりなる多孔質のシリカモノリス体を得る。尚、アンモニア溶液浸漬の温度が高いほど大きいメソ孔が得られ、又、乾燥、加熱時の温度コントロールによりメソ孔の大きさは自由に変化させることが可能である。特にシリカモノリス体のノンポーラス化は、1100℃程度で行うことが出来る。又、上記原材料比や固化時の温度によってマクロ孔もコントロール可能である。
【0040】
一具体例としては、ゾル-ゲル法で作製する場合、テトラエトキシシランを、ポリエチレングリコールポリマー(PEO)を含む酸性水溶液中で高分子化しゾル溶液を得る。そのゾル溶液を、円筒状、例えば内径8mm、長さ50cmのポリカーボネートパイプに注ぎ密栓をして20時間インキュベーションする。このようにして、円柱状のモノリスゾル体、例えば外径5mm、長さ40cmのモノリスゾル体を得ることが出来る。そして、アンモニア水溶液に、ゲル内溶液を完全に置換した後、インキュベーションしメソ孔を作製し、メタノールで洗浄しシリカモノリス体を得る。
【0041】
PEO濃度を、1%~20%に変化させることで、モノリス多孔質体のマクロ孔の径を0.1μm~200μmまで変化させることが出来る。又、アンモニア水溶液の濃度を、0.01%~1%に変化させることで、モノリス多孔質体のメソ孔の径を0.005~200nmまで変化させることが出来る。
【0042】
即ち、シリカモノリス体はテトラメトキシシラン等の金属アルコキシドやトリメトキシシラン等の反応性有機モノマー等を単独、又は、混合して用いて、部分的に加水分解して、重縮合してコロイド状オリゴマーを作り(ゾルの生成)、更に加水分解して重合と架橋を促進させ、三次元網状の骨格構造を作ることで合成される(ゲルの生成)。そして、最後に焼成して、完全にゲル化して固めるが、焼成温度が300℃以上あれば、ゲル化は完了する。尚、焼成温度を1100℃程度の高温処理とすることにより、シリカモノリス体をノンポーラス化することが出来る。ゲル化が完了していれば、融着等の熱でも変性することが無い。
【0043】
ガラスモノリス体及びセラミックモノリス体も原料及び製造方法が異なるが、シリカモノリス体と同様の構造を有する多孔質体である。
【0044】
セラミックを原料とするセラミックモノリス体としては、特に限定されないが、シリカやチタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの4族元素化合物、アルミナシリケート質A(硬磁気粒子を燒結したもの)、けい砂質、アルミナ質、アルミナシリト質B(シャモット粒子を燒結したもの)、多孔質ムライト質、けいそう土質のもの等から選択することが出来る。
【0045】
この場合の製造方法として、これに限定されないが、例えば、一定範囲の粒子径の陶磁器粒子(硬磁気粉砕物、シリカ、アルミナ、シャモットなど)と気孔形成材、例えば結晶セルロ-スと適当な分散溶媒と混合・成形・燒結して製造することが出来る。より具体的には、これに限定されないが、例えば、けい砂、硼酸、ソーダ灰及びAl2O3、ZrO2、ZnO2、TiO2、SnO2、MgO2等種々の金属酸化物を混合し、1200~1400℃に溶融することで、組成が金属酸化物-Na2O-B2O3-SiO2-CaO等のセラミックモノリス体を製造することが出来る。
【0046】
ガラスを原料とするガラスモノリス体としては、特に限定されないが、組成がNaO-B2O3-SiO2-CaO系のものが挙げられ、A12O3、ZrO2、ZnO2、TiO2、SnO2、MgO2など種々の酸化物を添加したガラスを用いて製造する場合もある。この場合の製造方法として、これに限定されないが、例えば、けい砂、硼酸、ソ-ダ灰及びアルミナを混合し、1200~1400℃に溶融することで、ガラスの塊りが作られる。組成がNa2O-B2O3-SiO2-CaOになりガラスの多孔質体となる。
【0047】
これを800~110℃にて成形後、未分相硼けいガラスを得、熱処理によりSiO2相とB2O3-NaO-CaO相に分相させ、酸処理によってSiO2骨格を残したガラスモノリス体を製造することが出来る。モノリス体の原料が無機質の場合、熱処理時の条件を変化させることにより、細孔分布の均一なものが製造可能である。
【0048】
セラミックモノリス体やガラスモノリス体は、組成や分相化条件でマクロ孔の径をコ
ントロールすることが出来、マクロ孔と同時にメソ孔も形成することが出来る。
【0049】
又、モノリス体として、耐薬品性やアルカリ性溶媒への耐久性が高く、シラノールの影響がなく、高分子物質(ポリマー)を原料とした多孔性のポリマーモノリス体を用いることが出来る。このようにポリマーで構成されたモノリス体は、モノリス体の表面がポリマーで被覆されている構成である。ポリマーモノリス体は、そのままの使用では、ナノメディシンはボイドに溶出するために、ナノメディシンが低濃度の場合には正確な定量が難しいので、イオン交換基、好ましくは陰イオン交換基を導入することが必要である。
【0050】
ポリマーモノリス体の材質は、特に限定されるものではないが、具体的には、スチレン-ジビニルベンゼン系、メタクリル酸エステル系、アクリルアミド系などの共重合体が挙げられる。モノリス体は、これらの共重合体であるポリマーに陰イオン交換基を導入して構成したものでもよい。ポリマーモノリス体を構成するモノマーは、共重合性を有するものであれば特に限定されず、目的に適合したモノマーを選択すればよい。又、モノマーの配合割合を調節することで、疎水性を制御することが出来る。又、ポリマーモノリス体のマクロ孔の直径及びメソ孔の直径の均一性は、モノマーを溶解するポロゲンの配合割合や溶媒種、モノマー濃度、架橋剤や重合開始剤の割合、重合温度等により制御することが出来る。
【0051】
ポリマーモノリス体の作製例として、エポキシ基の開環反応を利用した陰イオン交換ポリマーモノリスの作製例を挙げる。先ず、メタクリル酸グリシジル(GMA)300μL、メタクリル酸エチレングリコール(EDMA)100μLを1-プロパノール350μL、1,4-ブタンジオール200μL、水50μLからなるホロゲンに溶解する。このモノマー溶液に窒素を通液した後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を4mg加え、カラム管に満たして60℃で24時間反応させ、GMAベースのポリマーモノリス体を作製することが出来る。
【0052】
モノリス体の表面はポリマーで被覆され、上記ポリマーの表面にイオン交換基が修飾されている。そして、モノリス体の表面にコートされたポリマーの表面、言い換えればモノリス体のマクロ孔及びメソ孔の表面にはイオン交換基が露出して存在している。実施の形態が利用されるイオン交換クロマトグラフィーは、微粒子または小胞の分子の荷電状態を利用し、反対の電荷を有する担体と可逆的に結合、切断させる手法である。微粒子または小胞の分子と担体との結合は、イオン交換基との可逆的な相互作用の他にも例えばファンデルワールス力や疎水性相互作用も関わる可能性があるが、一般的にはそれらはイオン結合に比べれば、ごく弱い結合であるため、微粒子または小胞分子の表面荷電をコントロールすることで無視できるものである。
【0053】
しかし、担体としてシリカ母体のモノリス体を使用する場合は、イオン結合だけではなく、微粒子または小胞がモノリス体の表面処理時に残存するシラノール基に強く吸着し、イオン結合を切断するだけでは溶出することが出来ない。そのため、残存シラノール基の影響を無くすために、モノリス体の表面をポリマーで被覆することにより、シラノール基をポリマーで被覆し、シラノール基の影響を無くして微粒子または小胞の溶出を可能としている。尚、モノリス体としてポリマーモノリス体を利用することが出来る。このような構成により、シラノールの影響がなく、又、予めモノリス体の表面がポリマーで被覆されている構成であるので、モノリス体を別途ポリマーで被覆することは不要とすることが出来る。
【0054】
モノリス体の表面を被覆するポリマーは、モノリス体の表面に直接高分子材料を結合させて構成してもよく、モノリス体の表面にリンカーを介して結合させて構成してもよい。リンカーを介する場合、リンカーに予め構成されたポリマーを結合してもよいが、リンカーにモノマーを結合させ、モノマーをグラフト重合させて成形されたポリマーを結合させた構成とすることも出来る。
【0055】
リンカーはエポキシ基やビニル基など二重結合を有しているものを用いることが出来る。例えば、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランに由来するリンカーを用いることが出来る。
【0056】
重合させるモノマーとしては特に限定されないが、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム、3-メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム等を用いることが出来る。
【0057】
又、モノリス体の表面へのポリマーの被覆は、陰イオン交換能を有するポリマー自体を被覆する構成としてもよい。この様な構成としては、特に限定されないが、以下のように構成することが出来る。シリカモノリス体の表面を、アミノ基と反応性のあるエポキシ基やイソシアネート、イソチオシネート、酸無水物などを有するシランカップリング剤でリンカー修飾し、リンカーを介してポリアミンやポリアミノ酸、ポリエチレンイミン、重合型DEAE、ポリアリルアミン、アミノエチル化アクリル重合体、アクリルアミドージアリルジメチルアンモニウム共重合体、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)重合体、ポリ(メタクリル酸トリメチルアミノエチル)重合体を被覆することが出来る。尚、陰イオン交換能を有するポリマーは、ポリマー自体が陰イオン交換基を有しているものでもよく、予めポリマーに陰イオン交換基を導入して構成したものでもよい。
【0058】
又、シリカモノリス体上のシラノール基を標的としたリンカーとしては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリメチルシリルイソチオシネート等のシランカップリング剤を用いることが出来る。
【0059】
又、シラノール基を、アミノ基を有するN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤で修飾することでアミノ基導入シリカモノリスを作製することが出来る。又、シラノール基に、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物を導入後に、コハク酸を開環反応することでカルボキシル基導入シリカモノリスを作製することが出来る。
【0060】
そして、上記アミノ基やカルボキシル基と化学結合を形成する官能基であるイソチオシネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、カルボジイミドなどを有するホモ二機能性架橋剤やヘテロ二機能性架橋剤をクロスリンカーとして用いることも出来る。ホモ二極能性としては例えばDSS(disuccinimidylsuberate)、DMP(dimethylpimelimidate)等を用いることが出来、アミノ基を介した固定化が可能であり、ヘテロ二機能性架橋剤は、EDC(1-etyl-3-(dimethylaminopropyl)carbodiimide等を用いることが出来、カルボキシル基とアミノ基を介した架橋が可能である。
【0061】
陰イオン交換基は正電荷をもち、陰イオンを結合できるものを使用する。陰イオン交換基は、負に荷電した微粒子または小胞を吸着し、放出する。微粒子または小胞これらに限定されないが、一級アミン基、二級アミン基、三級アミン基又は四級アミン基を用いることが出来る。又、陰イオン交換基としては、強陰イオン交換基である第4級アンモニウム(Q)、弱陰イオン官能基であるジエチルアミノエチル(DEAE)、ジエチルアミノプロピル(ANX)等を用いることが出来、解離するpH範囲、分離対象の微粒子または小胞に応じて適宜選択することが出来る。更に、陰イオン交換基としては、トリメチルアンモニウムなどの第4級アミンを有する強陰イオン交換官能基、第1級および第2級アミンを有するポリアミン、塩基性ポリアミノ酸の1種であるポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリジアミノ酪酸が好ましい。
【0062】
移動相に含まれてモノリス体に送られた、ナノメディシンを含む微粒子または小胞及び微粒子または小胞からの放出薬物を含む放出物や遊離薬物を含む遊離物は、マクロ孔を通る。この際、微粒子または小胞は、マクロ孔のメソ孔を除いた側面に露出した陰イオン交換基を含むイオン交換基に結合し、結合が切られながら、メソ孔には入らずにマクロ孔内を進み、モノリス体から放出される。一方、微粒子または小胞からの放出物や遊離物は、メソ孔に入りながらマクロ孔内を進み、モノリス体から放出される。
【0063】
実施の形態は、モノリス体を分離対象である微粒子または小胞の電荷的な特性に従ってイオン交換基を有するポリマーで被覆し、微粒子または小胞のシラノールへの吸着を無くすと共にイオン交換基との相互作用によって微粒子または小胞を保持させ、イオン強度によって溶出させる。一方、微粒子または小胞からの放出物や遊離物はメソ孔を通過することによって、放出物や遊離物の電荷的な特性に従ってメソ孔内のイオン交換基と、マクロ孔におけるイオン交換基と微粒子または小胞との相互作用とは異なる強さで相互作用することにより分離させることが出来る。
【0064】
モノリス体へのポリマーによる表面被覆及びポリマーの表面へのイオン交換基の修飾は以下のように行うことが出来る。モノリス体の表面の被覆は、表面が完全に覆われず、一部露出している場合も含まれる。一具体例としては、シリカモノリス体をアクリルアミドで被覆する場合は、この方法に限定されないが、シリカモノリス体の表面のシリカ表面にリンカーを結合させ、グラフト重合によりシリカモノリス体にポリマーを被覆させることが出来る。
【0065】
具体的には、トルエン下でメタクリロイルクロリドの溶液を滴下添加し、トルエン中で3-アミノプロピルトリエトキシシランとトリエチルアミンを0℃にて0.5時間以上に攪拌して調製されたN-(3-トリエトキシシリルプロピル)メタクリルアミドでリンカー(スペーサー)としてのシランを調製し、シリカモノリス体を、窒素雰囲気下にて80℃、12時間、シラン、ピリジン、トルエン1:1:1混合物と反応させ、得られたリンカーで修飾されたシリカモノリス体をトルエンとメタノールで洗浄した。次いで、リンカーで修飾されたシリカモノリス体を、トリメチルアンモニウム基を有するアクリルアミドモノマーである3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを含むモノマー溶液(反応溶液重量に対するモノマー試薬重量が3~30重量%)とペルオキソ二硫酸アンモニウムを含むメタノール水溶液中で70℃、15時間反応させ、モノリス体表面へポリマー被覆とイオン交換基の導入を行い、続いて水とアセトンで洗浄してポリマー被覆されると共に陰イオン交換基が修飾されたシリカモノリス体を得た。
【0066】
このように、ポリマーをモノリス体の表面に被覆する方法として、モノリス体の表面にリンカーを付け、リンカーにモノマーをグラフト重合させる方法があるが、モノリス体の表面に直接高分子材料を結合させることも出来る。又、ポリマーにイオン交換基を修飾する方法として、ポリマーにイオン交換基を修飾する方法の他、イオン交換基が修飾されたモノマーを重合させて、ポリマーを形成すると共にイオン交換基を導入する方法を採用することが出来る。モノリス体の表面に直接高分子材料を結合させる方法として以下の方法が挙げられるが、これらの手法に限定されることはない。
【0067】
シリカモノリス体に対して、ポリリジンを被覆する方法として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシラン剤(5wt%)を混合後、窒素パージを行った。200℃で10時間反応後、アセトン洗浄、乾燥をすることで、エポキシ修飾シリカモノリス体を調製した。エポキシ修飾シリカモノリス体に対して、分子量4000~15000のポリリジン水溶液を添加し、70℃で10時間反応させることで、シリカモノリス体にポリリジンを導入することが出来る。ポリリジンの分子量は4000~15000に限定されず、分子量50万程度までのポリリジンを使用することが可能である。尚、同様の方法により、その他の塩基性ポリアミノ酸や塩基性アミノ酸とその他のアミノ酸とが組み合わされたポリマーをシリカモノリス体に導入することが出来る。
【0068】
ポリマーモノリス体に陰イオン交換基を導入する方法としては、これらに限定されないが以下の方法を採用することが出来る。GMAベースのポリマーモノリス体に10%ジエチルアミン溶液inアセトニトリルを添加し、70℃で10時間反応させることで、弱陰イオン交換基であるDEAE基を導入することが出来る。更に、DEAE基が修飾されたポリマーモノリス体をクロロトルエン中にて反応させることで、第4級アミン型の強陰イオン交換基を導入することが出来る。
【0069】
上述のようにして得られた、表面がポリマーで被覆され、当該ポリマーにイオン交換基が修飾された3mmφのモノリス体を乾燥し、化学的に不活性なPEEK樹脂等の第一ポリマー層でモノリス体の側面を覆い、次いでステンレス鋼管(6mmOD、厚さ1.2mm、長さ50mm)に挿入し、第一ポリマー層で側面を被覆されたモノリス体とステンレス管の間にエポキシ樹脂などの第二ポリマー層を充填し、微粒子または小胞分離用カラムを得た。
【0070】
本手法の場合、使用最高温度50℃、30MPaまでの使用可能なカラムを得ることが出来、送液圧力の低いモノリス型シリカゲルカラムでは、十分な性能のカラムが作製可能である。ステンレス鋼管の末端を切断し、カートリッジ型微粒子または小胞分離用HPLCカラム(3mmID×50mm)として用いることが出来る。カートリッジ型カラムは、同じくステンレス鋼管である専用のホルダーにはめ込み、1/16インチ配管に接続可能なエンドナットで締めることでカラムとして使用出来る。
【0071】
実施の形態のモノリス体は、簡易的な分離、精製が可能となる固相抽出カラムにも利用することができる。例えば、固相抽出カラムとして、
図1に示すように、その素材及びその径によらず空のカラム2内にモノリス体3を設置して構成したスピンカラム1のような形態(回収キット)をとることができる。
ここでいう固相抽出カラムとは、従来の粒径の大きな粒子を詰めたカラムクロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーなどの煩雑で特別な装置や技術を必要とする方法に代わって、モノリス体をカートリッジカラムに充填する方法で確立されたものである。遠心機やバキュームポンプ、アスピレーターなどの吸引に加え、加圧を用いて通液し、容易に化合物の分離、精製が可能である。例えば、ナノメディシンナノメディシン幹細胞培養中のエクソソームを通液し、洗浄し回収することができる。
これら、簡易的な方法に加え、ポンプなどの装置を使用する液体クロマトグラフィーや、低圧ポンプを特徴とする精製用装置も使用でき、使用機器に応じてモノリスカラムの形態を適宜変更することが可能である。
【0072】
又、固相抽出によりナノメディシンを分離、精製する従来の手法として、サイズ排除クロマトグラフィー充填剤を用いたカラムが用いられている。しかし、この従来の手法では、エクソソームの溶出時間幅として4~5分程度かかり、サイズ排除クロマトグラフィーのため、試料アプライ前のカラム平衡化に慎重さが必要となり、決して誰しもが容易に短時間に使用出来る手法ではない。一方、
図1に示すような、実施の形態の微粒子または小胞分離用カラムとしてのスピンカラム1を用いて、遠心機にて通液することにより、短時間に誰もが容易にエクソソームを精製可能となった。
【0073】
(解離バッファー)
実施の形態の回収方法では、後述する解離工程において、複合体と金属陽イオンを含み、pHを調整した解離バッファー(以下、適宜「実施の形態の解離バッファー」という。)と、を接触させることによって、複合体からエクソソームを解離させ、エクソソームを回収する。実施の形態の解離バッファーは界面活性剤および/またはタンパク質変性剤等を含むことなくまたは、ごく低濃度で含んでおり、マイルドな(温和な)条件でエクソソームを複合体から解離させることができるため、エクソソームをエクソソームの構造及び機能を損なわない状態(エクソソームの構造及び機能をほぼ損なわないに近い状態)で回収することができる。またエクソソームをエクソソームの構造及び機能を損なわない状態(エクソソームの構造及び機能をほぼ損なわないに近い状態)で簡便に回収することができるという効果は、実施の形態の顕著かつ有利な効果である。
【0074】
実施の形態の解離バッファーに含まれる金属陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、銀イオン、および銅(I)イオン等の1価の金属陽イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、バリウムイオン、銅(II)イオン、鉄(II)イオン、スズ(II)イオン、コバルト(II)イオン、および鉛(II)イオン等の2価の金属陽イオン、ならびにアルミニウムイオン、および鉄(III)イオン等の3価の金属陽イオン、等が挙げられる。実施の形態の解離バッファーに含まれる金属陽イオンとしては、これら金属陽イオンの中でも、水溶性が高いことから、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、およびニッケルイオンが好ましい。さらに、複合体からエクソソームを十分に解離させることができることから、実施の形態の解離バッファーは、上述した金属陽イオンの中でもナトリウムイオン、カリウムイオン、もしくはマグネシウムイオンを、単独でまたは組み合わせて含むことが好ましい。pH調整には、各種の緩衝液を使用することができる。MESやTRIS、TRISIN、MOPS,BES,BISTRIS、TES、HEPES、TAPSO、HEPSO、POPSO、MOPSO、BICINE、TAPS、CHES、CAPS、などのグッド緩衝液や、リン酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファー、などの各種緩衝液を使用することができる。また、解離液には、使用用途に合わせて、殺菌剤などの試薬を添加することができる。
【0075】
実施の形態の目的は、簡便に、かつ、エクソソームの構造及び機能を損なわない状態で(またはエクソソームの構造及び機能をほぼ損なわない状態で)エクソソームを回収することである。よって、実施の形態の回収方法において「エクソソームの構造及び機能を損なわない状態で(またはエクソソームの構造及び機能をほぼ損なわない状態で)エクソソームを回収する」とは、エクソソームを傷つけることなく(ほぼ傷つけることなく)、試料中のエクソソームを、試料中のエクソソーム以外の物質(例えばタンパク質等)から分離し、回収することを意味する。換言すれば、実施の形態の回収方法において「エクソソームの構造及び機能を損なわない状態で(またはエクソソームの構造及び機能をほぼ損なわない状態で)エクソソームを回収する」とは、エクソソームの膜構造(具体的には脂質二重膜構造)を保った状態(ほぼ保った状態)で、および、膜に存在するタンパク質の構造を保った状態(ほぼ保った状態)で、試料中のエクソソームを、試料中のエクソソーム以外の物質と分離し、回収することを意味する。
【0076】
解離バッファーは、エクソソームの膜構造および膜に存在するタンパク質の構造に影響
を与えない範囲において、金属陽イオン以外の物質を含んでいてもよい。
【0077】
解離バッファーにおける金属陽イオンの濃度は、複合体からエクソソームを解離させることが可能であり、かつ、エクソソームの膜構造および膜に存在するタンパク質の構造に影響を与えない限り、特に限定されない。つまり、使用する実施の形態のペプチドとエクソソームとの結合強度、および金属陽イオンの種類(価数)等に応じて最適な陽イオンの濃度は変わり得る為、適宜最適な濃度を検討の上、決定すればよい。なお、実施の形態の解離バッファーにおける金属陽イオンの濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、0.01M~5Mであることが好ましく、0.05M~2Mであることがより好ましく、0.1M~1Mであることがさらに好ましく、0.3M~0.7Mであることが特に好ましい。塩が低濃度であれば、エクソソームをより多く取得することが期待できる一方、タンパク質など夾雑物が混入する懸念がある。使用用途に合わせて、適宜、塩濃度を選択することが可能である。
【0078】
また、解離バッファーのpHは適宜設定され得る。解離バッファーのpHは、5~10であることが好ましく、6~9であることがより好ましく、7~8であることがさらに好ましく、7.3~7.5であることが特に好ましい。解離バッファーのpHが上記範囲であれば、エクソソームの膜構造および膜に存在するタンパク質の構造に影響を与えないため好ましい。
〔1-2.工程〕
【0079】
(複合体形成工程)
実施の形態の回収方法に含まれる複合体形成工程(以下、適宜「実施の形態の複合体形成工程」という。)は、エクソソームを含む試料と実施の形態のペプチドと、実施の形態の担体とを接触させるか、または、上記試料と、実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドとを接触させることによって、上記エクソソームと上記担体に担持された上記ペプチドとが結合してなる複合体(エクソソーム-実施の形態のペプチド-実施の形態の担体の順で結合した複合体。以下、適宜「実施の形態の複合体」という。)を形成させる複合体形成工程である。つまり、実施の形態の複合体形成工程では、実施の形態のペプチドが実施の形態の担体に担持されていない状態で実施の形態のペプチドと実施の形態の担体と試料とを接触させた後にエクソソーム-実施の形態のペプチド-実施の形態の担体の順で結合した複合体を形成させてもよいし、実施の形態の担体に実施の形態のペプチドが既に担持させた状態で当該ペプチドと試料とを接触させて実施の形態の複合体を形成してもよいということである。ただし、より効率的に実施の形態の複合体を形成するという観点からは後者の態様がより好ましいといえる。
【0080】
エクソソームを含む試料と実施の形態のペプチドと実施の形態の担体とを接触させる方法としては、試料中のエクソソームと実施の形態のペプチドと実施の形態の担体とが、それぞれ結合し、実施の形態の複合体を形成できるような条件下で行なわれるものであれば、その他の方法は限定されない。例えば、試料中に、実施の形態のペプチドと実施の形態の担体とを添加し、混合する方法が挙げられる。試料、実施の形態のペプチド、および実施の形態の担体を接触させる際の添加および混合する順序は特に限定されない。例えば、(1)実施の形態のペプチドおよび実施の形態の担体を同時に、試料に添加し、混合してもよく、(2)試料に実施の形態のペプチドを添加し、混合した後に、実施の形態の担体を添加し、混合してもよく、(3)試料に実施の形態の担体を添加し、混合した後に、実施の形態のペプチドを添加し、混合してもよい。ただし、実施の形態のペプチドがエクソソームに結合し、実施の形態のペプチドと実施の形態の担体とが結合することから上記(2)の手順が好ましいかもしれない。上述した方法による、試料とペプチドと担体との接触によって、エクソソームとペプチドと担体とを含む実施の形態の複合体が形成され得る。
【0081】
また、試料と、実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドとを接触させる方法としては、試料中のエクソソームと実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドとが結合し、実施の形態の複合体を形成できるような条件下で行なわれるものであれば、その他の方法は限定されない。例えば、試料中に実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドを添加し、混合させる方法が挙げられる。
試料と実施の形態のペプチドと実施の形態の担体との接触時間、または、試料と実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドとの接触時間は、実施の形態の複合体を形成するために十分な時間であれば限定されるものではなく、適宜最適な条件を検討の上、決定され得る。
【0082】
また、エクソソームを含む試料と実施の形態のペプチドと実施の形態の担体との接触において、例えば柱状または円筒状の容器(カラム)に実施の形態の担体を充填することによって作製した、担体を含むカラム(本明細書中では、「担体カラム」という。)を用いることも可能である。担体カラムに試料を含む溶液およびペプチドを含む溶液を通液させて実施の形態の複合体を得る方法としては、試料中のエクソソームと実施の形態のペプチドと実施の形態の担体とが、それぞれ結合し、実施の形態の複合体を形成できるような条件下で行なわれるものであれば、その他の方法は限定されない。例えば、次の(1)~(3)が挙げられる:(1)担体カラムに、実施の形態のペプチドを含む溶液を添加し、当該溶液を通液させることによって、実施の形態の担体に実施の形態のペプチドを結合させた後、担体カラムに試料を含む溶液を添加し、当該溶液を通液させることによって実施の形態の複合体を形成させる;(2)予め試料に実施の形態のペプチドを添加し、混合する等して、試料と実施の形態のペプチドとを接触させることによって、試料中のエクソソームとペプチドとが結合してなる複合体(エクソソーム-ペプチド複合体)を形成させ、その後、エクソソーム-ペプチド複合体を含む溶液を担体カラムに添加し、通液させることによって、実施の形態のペプチドと実施の形態の担体とが結合して実施の形態の複合体を形成させる;(3)担体カラムに試料を含む溶液および実施の形態のペプチドを含む溶液同時に添加し、それら溶液を通液させることによって、実施の形態の複合体を形成させる。
上記(1)~(3)において、担体カラムと、ペプチドおよび/もしくは試料、または、エクソソーム-ペプチド複合体を含む試料、との接触時間は、試料中のエクソソームとペプチドと担体とが実施の形態の複合体を形成するために十分な時間であることが好ましい。
【0083】
上記時間は、担体カラムへの試料溶液(エクソソームを含む試料をおよび/もしくは実施の形態のペプチドを含む溶液、またはエクソソーム-ペプチド複合体を含む溶液)の通液速度、または、当該試料溶液を添加してから通液を開始するまでの時間等を調整することによって、適宜設定できる。
【0084】
また、エクソソームを含む試料と実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドとの接触において、例えば柱状または円筒状の容器(カラム)に実施の形態のペプチドが担持された実施の形態の担体を充填することによって調製したカラム(本明細書中では、「ペプチドカラム」という。)を用いることも可能である。当該ペプチドカラムに試料を含む溶液を通液させることによって、試料と実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドとを接触させ、実施の形態の複合体を得ることが可能である。ペプチドカラムと試料との接触時間は、試料中のエクソソームと実施の形態の担体に担持された実施の形態のペプチドとが実施の形態の複合体を形成するために十分な時間であることが好ましい。上記時間は、試料を含む溶液の通液速度、または、当該溶液を添加してから通過を開始するまでの時間等を調整することによって、適宜設定できる。
【0085】
上記担体カラムまたは上記ペプチドカラムに試料溶液を通液させるための物理的方法は従来公知の方法を用いることが可能である。例えば、以下(1)~(3)の方法が挙げられる。
【0086】
(1)鉛直方向に載置された担体カラム(またはペプチドカラム)上に、上記試料溶液を添加し、重力によって担体カラム(またはペプチドカラム)内に上記試料溶液を通液させる方法である。
【0087】
(2)担体カラム(またはペプチドカラム)の一方に上記試料溶液を添加し、試料溶液を添加した方向から加圧するか、または、試料溶液を添加した方向とは逆の方向から吸引することによって、担体カラム(またはペプチドカラム)内に上記試料溶液を通液させる方法である。
【0088】
(3)担体カラム(またはペプチドカラム)の一方に試料溶液を添加した後、当該担体カラム(またはペプチドカラム)を遠心チューブ内に装填し、当該遠心チューブを遠心分離することによって、担体カラム(またはペプチドカラム)内に上記試料溶液を通液させる方法である。なお、上記(3)の方法は、いわゆる従来公知のスピンカラムを用いた方法である。(3)の場合は、遠心後、乾燥を防ぐため、速やかに次工程へ進むことが望ましい。
【0089】
(解離工程)
実施の形態の回収方法に含まれる解離工程(以下、適宜「実施の形態の解離工程」という。)は、上記複合体形成工程によって得られた実施の形態の複合体と、金属陽イオンを含む実施の形態の解離バッファーとを接触させて、実施の形態の複合体からエクソソームを解離させる工程である。
【0090】
実施の形態の複合体と実施の形態の解離バッファーとを接触させる方法としては、実施の形態の複合体からエクソソームを解離させるような条件下で行なわれるものであれば、その他の方法は限定されない。例えば、実施の形態の複合体を含む容器に実施の形態の解離バッファーを添加し、混合させる方法が挙げられる。実施の形態の複合体と実施の形態の解離バッファーとの接触時間は、複合体からエクソソームが解離するために十分な時間であれば特に限定されるものではない。実施の形態の複合体と実施の形態の解離バッファーとの接触によって、エクソソームは実施の形態の複合体から解離され、当該解離バッファーへ移動する。そして、当該解離バッファーと実施の形態の担体とを分離し当該解離バッファーを回収することにより、エクソソームを回収することができる。
【0091】
実施の形態の解離工程において、実施の形態のペプチドは、実施の形態の担体に結合されたままでいてもよく、実施の形態の担体から解離されていてもよい。また、上記分離の後、回収された解離バッファー中に実施の形態のペプチドが含まれていてもよい。エクソソームをより純度高く回収する観点から、実施の形態の解離工程において実施の形態のペプチドは実施の形態の担体に結合されたままでいることが好ましく、上記分離の後、回収された解離バッファー中に実施の形態のペプチドが含まれていないことが好ましい。
【0092】
また、複合体形成工程においてカラムが使用された場合には、複合体形成工程において実施の形態の複合体が形成されたカラムに、実施の形態の解離バッファーを通液させることによって、実施の形態の複合体と実施の形態の解離バッファーとを接触させることが可能である。カラムへ実施の形態の解離バッファーを通液させるための物理的方法としては、(複合体形成工程)の項に記載した(1)~(3)の方法が挙げられる。カラムと実施の形態の解離バッファーとを接触させた場合には、エクソソームは複合体から解離され当該解離バッファーへ移動する。従って、カラム通液後の解離バッファーを回収することによって、エクソソームを回収することができる。
【0093】
実施の形態の回収方法は、上述した複合体形成工程および解離工程以外の工程が含まれていてもよい。その他の工程としては、例えば洗浄工程、および回収工程が挙げられる。
【0094】
(回収工程)
回収工程は、複合体形成工程と解離工程との間に設けられ、複合体形成工程によって得られた実施の形態の複合体を回収する工程である。回収工程は、複合体形成工程および担体等に応じて従来公知の方法が適宜採用され得る。
【0095】
担体が、〔1-1.材料〕の(担体)の項で説明したような構造物である場合には、遠心分離によって実施の形態の複合体含む担体を回収することができる。例えば、遠心を行なうことによって、実施の形態の複合体を含む担体を回収することが可能である。
【0096】
また、担体が、磁性粒子である場合には、従来公知のマグネティックスタンド等の磁性体を用いて外部から磁力を与えることによって、担体を容易に回収することができる。担体が磁性粒子であり、磁性体を用いて回収する場合には、遠心の方法と比較して、以下の(1)および(2)の利点を有する:(1)磁性粒子である担体は、磁性体に引き寄せられているため、上清をほぼ完全に取り除くことが可能であり、得られるエクソソームの純度が高くなること;(2)上清を取り除く際に、磁性粒子を一緒に取り除いてしまう虞が小さくなり、得られるエクソソームの損失を防ぐことができること(エクソソームの回収率を向上することができる)。
【0097】
なお、実施の形態の複合体形成工程において、担体カラムまたはペプチドカラムが用いられる場合には、実施の形態の複合体を含む担体はカラム内に留まることとなる。このため、上述の回収工程は必要とされる。
【0098】
(洗浄工程)
実施の形態の回収方法には、解離工程の前に、さらに洗浄工程が含まれていることが好ましい。洗浄工程は、回収された実施の形態の複合体、または、カラム中の実施の形態の複合体を、適当な洗浄液を用いて、適当な回数洗浄する工程である。洗浄工程は、当該複合体が解離しない条件下で行なわれるものであれば、使用される洗浄液の種類および洗浄回数等は特に限定されない。
【0099】
洗浄工程で使用される洗浄液としては、例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(Phosphatebufferedsaline、PBS)が挙げられる。
【0100】
実施の形態の一実施形態が回収工程を含む場合には、洗浄工程としては、以下のような方法が挙げられる。(1)回収された実施の形態の複合体を含む担体を上記洗浄液と混合することによって、担体を当該洗浄液に再懸濁する。(2)再度、実施の形態の複合体を含む担体を回収する(すなわち、実施の形態の複合体を含む担体と洗浄液とを分離する)。
【0101】
また実施の形態の複合体形成工程において、担体カラムまたはペプチドカラムが用いた場合には、実施の形態の複合体が形成された後のカラムに対して上記洗浄液を適当量通液すればよい。
【0102】
〔2.エクソソームの回収キット〕
実施の形態の一実施形態に係るエクソソームの回収キット(以下、適宜「実施の形態のキット」という)は、上述した実施の形態の回収方法を行なうためのキットであって、上述した実施の形態のペプチド、実施の形態の担体、および実施の形態の解離バッファー、を含む。よって、キットの構成の説明については、〔1.エクソソームの回収方法〕の説明が援用可能である。
【0103】
実施の形態のキットに含まれる実施の形態のペプチドおよび実施の形態の担体は、実施の形態のペプチドが実施の形態の担体に予め担持された状態で実施の形態のキットに含まれていてもよいし、それぞれが別体として含まれていてもよい。
【0104】
また、実施の形態のキットには、磁性粒子、ポリオルニチンが固定化された磁性粒子、およびマグネティックスタンド等の磁性体、ならびにビオチン等が含まれていてもよい。
また実施の形態のキットには、上記の構成の他に、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュ、カラム等)が含まれていてもよい。実施の形態のキットは、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。実施の形態のキットの説明において使用される用語「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図され得る。
【0105】
また。実施の形態のキットは、実施の形態の回収方法を実施するための説明書を備えていてもよい。さらに、エクソソームを含む試料からエクソソームを回収する、エクソソームの回収キットであって、ポリオルニチンを含むペプチドと、上記ペプチドが担持された担体とを、含むエクソソームの回収キットでもよい。この回収キットと、試料と、解離バッファーとを用いればよい。
実施の形態の一実施形態は、以下のような構成である。
[1]脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を含む試料から脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収する、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法であって、
前記試料と、アミノ基を含む物質と、前記アミノ基を含む物質を担持可能な担体とを接触させるか、または、前記試料と、前記担体に担持された前記アミノ基を含む物質とを接触させることによって、前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞と前記担体に担持された前記アミノ基とが結合してなる複合体を形成させる複合体形成工程と、
前記複合体形成工程によって得られた前記複合体と、金属陽イオンを含む解離バッファー液とを接触させて、前記複合体から前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を解離させる解離工程と、を含む脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法である。
[2]前記アミノ基を含む物質は、オルニチンを含むペプチドである[1]に記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を用いる。
[3]前記担体のメソ孔の孔径を制限することで、回収される前記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の粒子径を制御する[1]又は[2]に記載の回収方法を用いる。
[4]前記担体は、シリカモノリスである[1]~[3]のいずれか1つに記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を用いる。
[5]前記解離バッファー液は、2価の金属イオンがマグネシウムを含む溶液である[1]~[4]の何れか1つに記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を用いる。
[6]前記解離バッファー液の濃度は、0.1~1.5Mである[1]~[5]のいずれか1つに記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を用いる。
[7][1]~[6]のいずれか1つに記載の脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を行なうための脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットであって、
前記アミノ基を含む物質、前記担体、および前記解離バッファー、を含む、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットを用いる。
[8]脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を含む試料から脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収する、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットであって、
ポリオルニチンを含むペプチドと、前記ペプチドが担持された担体とを、含む脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収キットを用いる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により実施の形態の一実施形態を更に詳細に説明するが、実施の形態はかかる実施例のみに限定されるものではない。
<実施例A>
ペプチドが担持されたカラム(修飾体固定化カラム)を作製した。担体としては、シリカモノリスを用いた。
【0107】
シリカモノリス体(3mmID×長さ50mm)は、マクロ孔サイズ1μm、メソ孔サイズ11nm、表面積340m2/gを用いた。シリカモノリス体の表面に正電荷を加えるために、ソースとしてトリメチルアンモニウム基を選択した。シリカモノリス体の表面にトリメチルアンモニウム基を組み込むために、アクリルアミドとシロキサンの2つの異なる官能基修飾方法によって同じ官能基(トリメチルアンモニウム基)を修飾したシリカモノリス体を用いたカラム(以下「トリメチルアンモニウム基修飾カラム」ともいう。)を用いた。
【0108】
シリカモノリス体の表面修飾は以下のように行った。実施例として、シリカモノリス体の表面を、トリメチルアンモニウム基を有するアクリルアミドモノマーを重合させてアクリルアミドで被覆し、陰イオン交換基を導入した、ポリマー被覆型シリカモノリス体を用いたカラム(以下「アクリルアミド被覆カラム」ともいう。)を使用した。トルエン下でメタクリロイルクロリドの溶液を滴下添加し、トルエン中で3-アミノプロピルトリエトキシシランとトリエチルアミンを0℃にて0.5時間以上に攪拌して調製されたN-(3-トリエトキシシリルプロピル)メタクリルアミドでシランを調製し、シリカモノリス体を、窒素雰囲気下にて80℃、12時間、シラン、ピリジン、トルエン1:1:1混合物と反応させ、得られたリンカーで修飾されたシリカモノリス体をトルエンとメタノールで洗浄した。次いで、リンカーで修飾されたシリカモノリス体に、ポリオルニチン(実施例A4)、ポリリジン(実施例A2)、アミノシラン(実施例A1)、ポリアリルアミン(実施例A3)の各溶液を反応させ、ポリオルニチン、ポリリジン、アミノシラン、ポリアリルアミンの各修飾体で修飾されたシリカモノリス体を得た。
【0109】
<試料>
HADSC-脂肪由来幹細胞(ロンザ社)をコーニング CellBIND表面ハイパーフラスコM(コーニング社)に播種、培地にはKBM ADSC-4(コージンバイオ社)を使用した。37℃、5% CO2雰囲気下のインキュベーター内で培養し、50%以上コンフルエントになったら培養上清液を回収した。回収した培養上清液を、遠心機(工機ホールディングス、CF16RN)を用いて4℃で10000 ×g、30分間の条件で遠心し、上清を回収した。その後、マイレクスGP 0.22μm PES(メルクミリポア、SLGP033RS)に通して、培養上清液を得た。培養上清液(0.5mL)中のエクソソームを以下の方法で回収した。
<方法>
【0110】
(1)上記培養上清液(0.5mL)を、上記カラムを通過させた
【0111】
(2)カラム中の修飾体に、エクソソームを結合させた。すなわち、複合工程にて、エクソソームと修飾体(ペプチド)とカラムとを含む複合体が形成させた
【0112】
(3)複合体を洗浄した:カラムに、超純水を0.5mL、カラムを通過させた
【0113】
(4)上記(3)の操作(洗浄)をさらに2回行ない、培養上清液中のエクソソームを複合体として含む、ポリオルニチン固定化カラムを回収した
【0114】
(5)解離バッファーをカラムに流し、複合体からエクソソームを分離した。解離バッファーは、MgCl2を用いた。
【0115】
(6)解離バッファー液中のエクソソーム量をELISAで測定した
【0116】
(7)CD9/CD63 Exosome ELISA Kit(コスモバイオ、EXH0102EL)とサンライズサーモRC-R(TECAN、551-40081)を用いて、添付の標準プロトコルに従ってエクソソーム量を測定した
<結果>
結果を表1、
図2に示す。実施例A4のポリオルニチンは、他の実施例A1~A3と比較して、予想外に4倍以上のエクソソームを回収できた。ポリリジンやポリオルニチンといったアミノ酸重合体は、カラム担体上の正電荷を増やし、脂質二重膜などが接着できる。ポリオルニチンは、ポリリジンよりも、分子量が小さく、疎水性が低い。そのため、ポリオルニチンはより帯電し易く、疎水性が低いため、より吸着しやすい条件を導き出したと考えられる。
【0117】
担体として、シリカモノリスが好ましい。なぜなら、ポリマーを容易に固定可能なためである。
【0118】
【表1】
<実施例B>
実施例A4の条件で、シリカモノリスのメソ穴径を変えて、回収されたエクソソームの粒子径、量を測定した。説明しない事項は、実施例A、A4と同様である。
エクソソームの粒子径の測定には、粒子径分布測定機(Lightsizer:アントンパール製、レーザー回析・散乱法、体積基準で平均値)もしくは透過型電子顕微鏡(JEM1230R:日本電子製、1%酢酸ウラニルで試料をネガティブ染色)を用いた。
メソ穴径の測定は、細孔分布測定装置(水銀圧入法あるいは窒素吸着法)を用いた。
条件と結果を表2、
図3、4に示す。メソ孔径により、回収できるエクソソームの径、量が異なることがわかる。
図3より、必要な径のエクソソームを得るために、メソ孔を設定できる。たとえば、140nm径のエクソソームを得るには、10nm前後のメソ孔径(A領域)を使用する。105nm径のエクソソームを得るには、300nm前後のメソ孔径(C領域)を使用する。170~180nm径のエクソソームを得るには、20~200nmのメソ孔径(B領域)を使用する。
担体のメソ孔径を制限することで回収されるエクソソームの粒子径を制御することができる。
これにより得られる所望の粒子径のエクソソームは、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)で有効に使用され得る。
図4より、エクソソームをより多く回収するには、メソ孔径が、30~200nmのシリカモノリスの担体を使用するのが好ましい。
また、
図3,4より、メソ孔径30~200nmの担体を用いると、エクソソームの回収率が高く、エクソソームの粒子径も一定のものが得られる。
【表2】
<実施例C>
実施例A4の条件で、洗浄液をNaClとして、その濃度を変えて、回収されたエクソソームの粒子径を測定した。説明しない事項は、実施例A、A4と同様である。
条件と結果を表3、
図5に示す。
洗浄液の濃度は、0.1~1.5Mがよい。1.6M~16Mもよい。0.1~0.9Mが好ましい。洗浄液としてNaClを用いたが、他の洗浄液でも同様の濃度がよい。
【表3】
<実施例D>
実施例A4の条件で、解離バッファー液をMgSO
4、Na
2SO
4として、回収されたエクソソームの量を測定した。説明しない事項は、実施例A4と同様である。
条件と結果を表4、
図6に示す。
2価の金属イオンを含むMgSO
4は、1価金属イオンを含むNa
2SO
4より、2倍近い量のエクソソームを回収できた。これは、多価の陽イオンのほうがカラムに修飾されたイオン交換基に対する親和性が強いためと思われる。2価の金属イオンを含む酸性溶液なら同様に効果がある。
【表4】
(全体として)
カラムは、シリカモノリス以外のビーズや多孔質体でもよい。
なお、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞は、細胞から放出される核を持たない(複製できない)脂質二重膜で囲まれた粒子である。脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞は産生機構の違いから(1)エクソソーム、(2)μベシクル、(3)アポトーシス小胞に分類されている。上記では、エクソソームだけでなく、(2)~(3)に同様に適用できる。つまり、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
実施の形態によると、簡便に、かつエクソソームの構造及び機能を損なわない状態(エクソソームの構造及び機能をほぼ損なわない状態)でエクソソームを回収することができる。したがって、実施の形態によると、エクソソームの内部に包含される物質の解析を簡便に、かつ、詳細に行なうことができるようになる。従って、実施の形態は、種々の技術分野、とりわけ、製薬および医療分野等において有用である。
【符号の説明】
【0120】
1 スピンカラム
2 カラム
3 モノリス体
【要約】
【課題】細胞外小胞を十分分離できる脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を提供することである。
【解決手段】脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を回収する、脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法であって、上記試料と、アミノ基を含む物質と、上記アミノ基を含む物質を担持可能な担体とを接触させることによって、上記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞と上記担体に担持された上記アミノ基とが結合してなる複合体を形成させる複合体形成工程と、上記複合体形成工程によって得られた上記複合体と、金属陽イオンを含む解離バッファー液とを接触させて、上記複合体から上記脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞を解離させる解離工程と、を含む脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法を用いる。
【選択図】
図1