(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ジアミン化合物、それを用いたポリイミド前駆体及びポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C07D 209/48 20060101AFI20221018BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221018BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20221018BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C07D209/48 CSP
C08G73/10
C07D401/14
C07D403/14
(21)【出願番号】P 2021509196
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 KR2019017463
(87)【国際公開番号】W WO2020122585
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0160168
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0163512
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ク、キチュル
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュンファン
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05235005(US,A)
【文献】独国特許出願公開第04205685(DE,A1)
【文献】米国特許第04668757(US,A)
【文献】特開平08-283436(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102432878(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0023531(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/48
C08G 73/10
C07D 401/14
C07D 403/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の構造を有する、ジアミン:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
Z
1からZ
8は、それぞれ独立して炭素原子または窒素原子であるが、Z
1からZ
4
が同時に窒素原子ではなく、
かつ、Z
5
からZ
8
が同時に窒素原子ではなく、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基のうちから選択されるものであり、n
1、n
2、n
3及びn
4は、それぞれ独立して0~4の整数であり、Xは、単
結合、O、S、S-S、C(=O)、-C(=O)O-、CH(OH)、S(=O)
2、Si(CH
3)
2、CR'R"、C(=O)NH、及びこれらの組合わせからなる群から選択された官能基であり、前記R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基、及び炭素数1~10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【請求項2】
Z
1からZ
4のうち1つ以上は、必ず炭素原子であり、Z
5からZ
8のうち1つ以上は、必ず炭素原子である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項3】
R
1及びR
2は、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロアルキル基であるか、n
1及びn
2が、それぞれ独立して0である、請求項1または請求項2に記載のジアミン。
【請求項4】
Z
1からZ
4が、いずれも炭素原子である、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のジアミン。
【請求項5】
Z
1からZ
4のうち1つ以上が、窒素原子であるか、Z
5からZ
8のうち1つ以上が、窒素原子である、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のジアミン。
【請求項6】
Z
1からZ
4のうち1つ以上が、窒素原子であり、Z
5からZ
8のうち1つ以上が、窒素原子である、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のジアミン。
【請求項7】
前記化学式1のジアミンが、下記化学式1-1から化学式1-20の化合物のうちから選択される、請求項1に記載のジアミン:
【化2】
。
【請求項8】
1種以上のジアミン及び1種以上の酸二無水物を含む重合成分を重合させて得られるポリイミド前駆体であって、
前記ジアミンが、請求項1から請求項7のうち何れか一項に記載のジアミンを含む、ポリイミド前駆体。
【請求項9】
請求項8に記載のポリイミド前駆体を用いて製造された、ポリイミドフィルム。
【請求項10】
請求項8に記載の前記ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物をキャリア基板上に塗布する段階と、
前記ポリイミド前駆体組成物を加熱及び硬化する段階と、
を含
むポリイミドフィルム
の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載のポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物をキャリア基板上に塗布する段階と、
前記ポリイミド前駆体組成物を加熱してポリアミド酸をイミド化することにより、ポリイミドフィルムを形成する段階と、
前記ポリイミドフィルム上に素子を形成する段階と、
前記素子が形成されたポリイミドフィルムを前記キャリア基板から剥離する段階と、
を含む、フレキシブルデバイスの製造工程。
【請求項12】
前記製造工程が、LTPS(低温ポリシリコン)工程、ITO工程またはOxide工程を含む、請求項1
1に記載のフレキシブルデバイスの製造工程。
【請求項13】
下記化学式iと化学式iiとの化合物を反応させて化学式iiiの化合物を得る段階と、
前記化学式iiiの化合物と化学式ivの化合物とを反応させて化学式vの化合物を得る段階と、
前記化学式vの化合物を還元させる段階と、
を含む、化学式1の構造を有するジアミンを製造する方法:
【化3】
(i)
【化4】
(ii)
【化5】
(iii)
【化6】
(iv)
【化7】
(v)
【化8】
(1)
前記化学式において、
Z
aからZ
dは、それぞれ独立して炭素原子または窒素原子であるが、Z
aからZ
dが同時に窒素原子ではなく、R
1、R
2及びR
aは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基のうちから選択されるものであり、n
1、n
2及びnは、それぞれ独立して0~4の整数であり、Xは、単
結合、O、S、S-S、C(=O)、-C(=O)O-、CH(OH)、S(=O)
2、Si(CH
3)
2、CR'R"、C(=O)NH、及びこれらの組合わせからなる群から選択された官能基であり、前記R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基、及び炭素数1~10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年12月12日付の大韓民国特許出願10-2018-0160168号及び2019年12月10日付の大韓民国特許出願第10-2019-0163512号に基づいた優先権の利益を主張し、該特許文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規なジアミン及びそれを用いたポリイミド前駆体及びポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、ディスプレイ分野で製品の軽量化及び小型化が重要視されており、現在、使われているガラス基板の場合、重くてよく割れてしまい、連続工程が困難であるという限界があるために、ガラス基板を代替して、軽くて柔軟であり、連続工程が可能な長所を有するプラスチック基板を携帯電話、ノート型パソコン、PDAなどに適用するための研究が活発に進められている。
【0004】
特に、ポリイミド(PI)樹脂は、合成が容易であり、薄膜フィルムを作ることができ、硬化のための架橋基が不要であるという長所を有しており、最近、電子製品の軽量及び精密化の現象によって、LCD、PDPなど半導体材料に集積化素材として多く適用されており、PIを軽くて柔軟な性質を有するフレキシブルディスプレイ基板(flexible plastic display board)に使用しようとする多くの研究が進められている。
【0005】
前記ポリイミド樹脂をフィルム化して製造したものが、ポリイミド(PI)フィルムであり、一般的に、ポリイミド樹脂は、芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミド酸誘導体溶液を製造した後、それをシリコンウェーハやガラスなどにコーティングし、熱処理によって硬化させる方法で製造される。
【0006】
高温工程を伴うフレキシブルデバイスは、高温での耐熱性が要求されるが、特に、LTPS(low temperature polysilicon)工程を使用するOLED(organic light emitting diode)デバイスの場合、工程温度が500℃に近接する。しかし、このような温度では、耐熱性に優れたポリイミドであっても、加水分解による熱分解が起こりやすい。したがって、フレキシブルデバイスの製造のためには、高温工程でも加水分解による熱分解が起こらない優れた耐化学性及び貯蔵安定性を確保しなければならない。
【0007】
また、芳香族ポリイミド樹脂は、分子内相互作用及び電荷移動錯体(CTC)によって不良な加工性及び褐色の着色現象を表わし、その克服のために、ポリイミドの製造に使われる単量体に脂肪族鎖、柔軟性の結合基、フッ化官能基などを導入する試みがなされている。しかし、これらの置換基の導入でポリイミドの強みである機械的物性を落とす問題が発生した。
【0008】
これにより、ポリイミドの特性を保持しながら機械的特性を向上させうる技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、物性が向上したポリイミドを製造することができる新規なジアミンを提供するところにある。
【0010】
本発明が解決しようとする他の課題は、物性が改善されたポリイミドフィルムを製造するためのポリイミド前駆体を提供するところにある。
【0011】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記ポリイミド前駆体を用いるポリイミドフィルムを提供するところにある。
【0012】
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムを含むフレキシブルデバイス及びその製造工程を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題を解決するために、下記化学式1で表されるジアミンを提供する。
[化学式1]
【化1】
【0014】
前記化学式1において、Z1からZ8は、それぞれ独立して炭素原子または窒素原子であるが、Z1からZ8が同時に窒素原子ではなく、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基のうちから選択されるものであり、n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して0~4の整数であり、Xは、単一結合、O、S、S-S、C(=O)、-C(=O)O-、CH(OH)、S(=O)2、Si(CH3)2、CR'R"、C(=O)NH、及びこれらの組合わせからなる群から選択された官能基であり、前記R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基、及び炭素数1~10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0015】
一実施例によれば、化学式1において、Z1からZ4のうち1つ以上は、必ず炭素原子であり、Z5からZ8のうち1つ以上は、必ず炭素原子であるものである。
【0016】
一実施例によれば、化学式1において、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロアルキル基であるか、n1及びn2が、それぞれ独立して0であるものである。
【0017】
一実施例によれば、化学式1において、Z1からZ4が、いずれも炭素原子である。
【0018】
一実施例によれば、化学式1において、Z1からZ4のうち1つ以上が、窒素原子であるか、X5からX8のうち1つ以上が、窒素原子である。
【0019】
一実施例によれば、化学式1において、Z1からZ4のうち1つ以上が、窒素原子であり、Z5からZ8のうち1つ以上が、窒素原子である。
【0020】
一実施例によれば、前記化学式1のジアミンが、下記化学式1-1から化学式1-20の化合物のうちから選択されるものである。
【化2】
【0021】
本発明は、また、1種以上のジアミン及び1種以上の酸二無水物を含む重合成分を重合させて得られるポリイミド前駆体であって、前記重合成分のうち、ジアミンが、前記化学式1で表されるジアミンを含むものであるポリイミド前駆体を提供する。
【0022】
本発明は、また、前記ポリイミド前駆体を用いて製造されたポリイミドフィルムを提供する。
【0023】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物をキャリア基板上に塗布する段階;及び前記ポリイミド前駆体組成物を加熱及び硬化する段階;を含む方法で製造可能である。
【0024】
本発明の他の課題を解決するために、前記ポリイミドフィルムを基板として含むフレキシブルデバイスを提供する。
【0025】
本発明は、また、前記ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物をキャリア基板上に塗布する段階;前記ポリイミド前駆体組成物を加熱してポリアミド酸をイミド化することにより、ポリイミドフィルムを形成する段階;前記ポリイミドフィルム上に素子を形成する段階;及び前記素子が形成されたポリイミドフィルムを前記キャリア基板から剥離する段階;を含むフレキシブルデバイスの製造工程を提供する。
【0026】
一実施例によれば、前記製造工程が、LTPS(低温ポリシリコン)工程、ITO工程またはOxide工程を含みうる。
【0027】
本発明は、化学式1の構造を有するジアミンを製造する方法を提供し、前記方法は、下記の段階を含む:
下記化学式iと化学式iiとの化合物を反応させて化学式iiiの化合物を得る段階;前記化学式iiiの化合物と化学式ivの化合物とを反応させて化学式vの化合物を得る段階;及び前記化学式vの化合物を還元させる段階;
【化3】
(i)
【化4】
(ii)
【化5】
(iii)
【化6】
(iv)
【化7】
(v)
【化8】
(1)
前記化学式において、Z
aからZ
dは、それぞれ独立して炭素原子または窒素原子であるが、Z
aからZ
dが同時に窒素原子ではなく、R
1、R
2及びR
aは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基のうちから選択されるものであり、n
1、n
2及びnは、それぞれ独立して0~4の整数であり、Xは、単一結合、O、S、S-S、C(=O)、-C(=O)O-、CH(OH)、S(=O)
2、Si(CH
3)
2、CR'R"、C(=O)NH、及びこれらの組合わせからなる群から選択された官能基であり、前記R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基、及び炭素数1~10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、分子内イミド基を含み、前記イミド基の両側にアミド基で置換された芳香族環基をさらに含む構造を有する新規なジアミンを開示し、新規なジアミンを重合成分としてポリイミドの製造に使用する場合、光学的特性を保持しながらも、機械的、熱的特性も著しく向上したポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0030】
本明細書において、あらゆる化合物または有機基は、特別な言及がない限り、置換または非置換のものである。ここで、「置換」とは、化合物または有機基に含まれた少なくとも1つの水素がハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、及びこれらの誘導体からなる群から選択される置換基で置き換えられたものを意味する。
【0031】
芳香族ポリイミドは、熱酸化安定性、高い機械的強度、優れた機械的強度ような優れた総合特性によって、マイクロ電子、航空宇宙、絶縁材料及び耐火材料のような先端産業で広範囲に使われる。しかし、紫外線-可視光線領域で強い吸光度を有する芳香族ポリイミドは、薄い黄色で濃い褐色の強い着色が表われるが、これは、透明性及び無色特性が基本要求事項である光電子領域(optoelectronics area)での広範囲な適用を制限する。芳香族ポリイミド樹脂で着色が表われる理由は、高分子主鎖で交代電子供与体(dianhydride)と電子受容体(diamine)との間、及び内部分子間の電荷移動錯体(CT-complexes)を形成するためである。
【0032】
このような問題を解決するために、高いガラス転移温度(Tg)を有し、光学的に透明なPIフィルムの開発のために、官能基の導入、体積が大きなペンダント基、フッ化官能基などを高分子主鎖として導入するか、柔軟な単位(-S-、-O-、-CH2-など)を導入する方法が研究されてきた。しかし、これらの置換基の導入でポリイミドの強みである機械的物性を落とす問題が発生しうる。
【0033】
これにより、本発明は、機械的物性が向上したポリイミドを製造することができる重合成分であって、下記化学式1で表されるジアミンを提供する。
[化学式1]
【化9】
【0034】
前記化学式1において、Z1からZ8は、それぞれ独立して炭素原子または窒素原子であるが、Z1からZ8が同時に窒素原子ではなく、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基のうちから選択されるものであり、n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して0~4の整数であり、Xは、単一結合、O、S、S-S、C(=O)、-C(=O)O-、CH(OH)、S(=O)2、Si(CH3)2、CR'R"、C(=O)NH、及びこれらの組合わせからなる群から選択された官能基であり、前記R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基、及び炭素数1~10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0035】
本発明によるジアミンは、分子内イミド基を含むジアミンを含んでポリイミド重合時に、イミド基を含むジアミン繰り返し単位の分子間π-π電子の相互作用の増加を通じて電荷移動錯体(CTC)の効果が上昇し、これにより、機械的物性が向上し、分子間距離が近くなって、重合反応確率が増加して、分子量が増加する。また、前記イミド基の両側にアミド基が置換された芳香族環がさらに結合された構造を有して、芳香族構造が連続して連結されることによって、前記上昇したCTC効果が減少して、加工性が増加する。すなわち、イミド化率の増加によるCTC効果の上昇で機械的物性の向上と共に、アミド基によって、前記CTC効果を再び抑制することができる。
【0036】
一実施例によれば、化学式1において、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロアルキル基であるか、n1及びn2が、それぞれ独立して0であるものである。
【0037】
一実施例によれば、化学式1において、Z1からZ4が、いずれも炭素原子である。
【0038】
他の実施例によれば、Z1からZ4のうち1つ以上が、窒素原子であるか、Z5からZ8のうち1つ以上が、窒素原子であり、さらに他の実施例によれば、Z1からZ4のうち1つ以上が、窒素原子であり、Z5からZ8のうち1つ以上が、窒素原子である。
【0039】
一実施例によれば、前記化学式1のジアミンは、下記反応式1のような反応から製造可能である。
[反応式1]
【化10】
【0040】
前記式において、ZaからZdは、それぞれ独立して炭素原子または窒素原子であるが、ZaからZdが同時に窒素原子ではなく、R1、R2及びRaは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基のうちから選択されるものであり、n1、n2及びnは、それぞれ独立して0~4の整数であり、Xは、前記化学式1で定義されたものと同一である。
【0041】
前記反応式1の段階(1)において、化学式iの化合物及び化学式iiの化合物を反応させて化学式iiiの化合物を収得する。
【0042】
この際、化学式iの化合物及び化学式iiの化合物は、1:0.3~1:1のmol比、例えば、1:0.3~1:0.7のmol比で使われる。
【0043】
前記段階(1)の反応は、有機溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)などを使用し、反応性の増加のために、触媒としてプロピレンオキシドを添加することができる。
【0044】
また、前記反応は、高反応性による激烈な反応を減らすために、-30~0℃、例えば、-20℃で行われることが有利であり、反応時間は、1~5時間、例えば、1~3時間でもある。
【0045】
前記反応式1の段階(2)では、前記化学式iiiの化合物及び化学式ivの化合物を反応させて化学式vの化合物を収得する。
【0046】
この際、化学式iiiの化合物及び化学式ivの化合物は、1:0.3~1:1のmol比、例えば、1:0.3~1:0.7のmol比で使われる。
【0047】
前記段階(2)の反応は、反応化合物を分散させるために、酢酸、プロピオン酸などが使われ、反応温度を約100℃まで昇温させて3~5時間、例えば、4時間反応させることができる。
【0048】
引き続き、反応温度を常温に下げた後、固形物の収得のために、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールを添加することができる。
【0049】
前記反応式1の段階(3)では、前記化学式vの化合物を還元させることにより、化学式1の化合物を最終的に収得する。
【0050】
前記段階(3)の還元反応は、水素雰囲気下にパラジウム/チャコール(Pd/C)触媒の存在下に12~18時間、例えば,16時間行われる。この際、分散媒としては、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが使われる。
【0051】
一実施例によれば、前記構造を有するジアミンを使用して製造されたポリイミド前駆体の重量平均分子量は、50,000g/molを超過して、機械的物性を向上させうる。例えば、51,000~65,000g/molの重量平均分子量を有しうる。分子量が50,000g/mol以下である場合、ポリイミドの反応性低下による溶液の粘度低下が発生して、固形分に比べて、粘度が低くて、溶液コーティング工程及び最終硬化工程時に、フィルム厚さの制御が容易ではない。また、分子量が低ければ、機械的な物性が低下して、フィルム強度が低くなる問題が発生する恐れがある。
【0052】
一実施例によれば、アミド基で置換された芳香族環に窒素原子を含むことにより、CTC効果を減少させて光学的特性をより向上させうる。
【0053】
一実施例によれば、前記化学式1のジアミンは、下記化学式1-1から化学式1-20の化合物である。
【化11】
【0054】
前記化学式1において、フッ素原子(F)を含む置換基、例えば、フルオロアルキル基のような置換基は、ポリイミド構造内または鎖間パッキング(packing)を減少させ、立体障害及び電気的効果によって、発色源間の電気的な相互作用を弱化させて、可視光領域で高い透明性を示すことができる。
【0055】
本発明によるポリイミド前駆体は、重合成分として下記化学式2の構造を有するジアミンをさらに含みうる:
[化学式2]
【化12】
【0056】
前記化学式2において、R5及びR6は、それぞれ独立して炭素数1~20の1価の有機基であり、そして、hは、3~200の整数である。
【0057】
より具体的に、前記化学式2の化合物は、下記化学式2-1のジアミン化合物である。
[化学式2-1]
【化13】
【0058】
前記化学式2-1において、Rは、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~24のアリール基であり、p及びqは、モル分率であって、p+q=100である時、pは、70~90、qは、10~30である。
【0059】
前記化学式2の化合物は、前記重合成分の総重量に対して5~50重量%に含まれ、望ましくは、全体重合成分総重量に対して10~20重量%に含みうる。
【0060】
前記化学式2の構造を含む重合成分が、総重量に対して過度に添加されれば、ポリイミドのモジュラス(modulus)のような機械的特性が低下し、膜の強度が減少することにより、工程上でフィルムが破れるなどの物理的損傷が発生する恐れがある。また、化学式2の構造を有するジアミンが過度に添加される場合、前記シロキサン構造を有する高分子由来のTgが表われ、これにより、350℃以下の低い工程温度でTgが表われて、350℃以上の無機膜蒸着工程時に、高分子の流動現象によってフィルム表面にしわが発生して、無機膜が割れる現象が発生する恐れがある。
【0061】
一般的に、前記化学式2のようなシリコンオリゴマー構造を含むジアミンを重合成分中に10重量%以上に含むポリイミドの場合、残留応力の低減効果が高くなり、50重量%よりも高い組成では、Tgが390℃よりも低くなって、耐熱性が低下する。
【0062】
一方、本発明によるポリイミドは、全体重合成分に対して10重量%以上にシリコンオリゴマーを含むにも拘らず、Tgを390℃以上に保持することができる。したがって、ガラス転移温度を390℃以上に保持しながら、シリコンオリゴマー構造による残留応力の減少効果も共に得られる。
【0063】
前記化学式2の構造を有するジアミンに含まれたシリコンオリゴマー構造の分子量は、4000g/mol以上であり、ここで、分子量は、重量平均分子量を意味し、分子量の計算は、NMR分析または酸塩基滴定法を使用してアミンまたは二無水物のような反応基の当量を計算する方式を使用することができる。
【0064】
前記化学式2の構造を含むシリコンオリゴマー構造の分子量が4000g/mol未満である場合には、耐熱性が低下し、例えば、製造されたポリイミドのガラス転移温度(Tg)が低下するか、熱膨張係数が過度に増加する。
【0065】
本発明によれば、ポリイミドマトリックス内に分布されているシリコンオリゴマードメインのサイズが、ナノサイズ、例えば、1~50nm、または5~40nm、または10~30nmであって、連続相を有するので、耐熱性と機械的物性とを保持しながら残留応力を最小化することができる。このような連続相を有さない場合には、残留応力の減少効果はあるが、耐熱性と機械的物性とが著しく減少して、工程に利用しにくい。
【0066】
ここで、シリコンオリゴマーのドメインは、シリコンオリゴマー構造を有するポリマーが分布する領域を意味し、そのサイズは、当該領域を取り囲む円の直径を指称する。
【0067】
シリコンオリゴマー構造を含む部分(ドメイン)が、ポリイミドマトリックス内に連続相で連結されていることが望ましいが、ここで、連続相とは、ナノサイズのドメインが均一に分布している形状を意味する。
【0068】
したがって、本発明は、高分子量を有するシリコンオリゴマーであるにも拘らず、ポリイミドマトリックス内で相分離なしに均一に分布されて、ヘイズ特性が低下して、より透明な特性を有するポリイミドが得られるだけではなく、シリコンオリゴマー構造が連続相で存在することにより、ポリイミドの機械的強度及びストレス緩和効果をより効率的に向上させうる。このような特性から、本発明による組成物は、熱的特性及び光学的特性だけではなく、コーティング-硬化後、基板が曲がる現象が減少して、平らなポリイミドフィルムを提供することができる。
【0069】
本発明は、シリコンオリゴマー構造をポリイミド構造に挿入することにより、ポリイミドのモジュラス強度を適切に向上させ、外力によるストレスも緩和させる。この際、シリコンオリゴマー構造を含むポリイミドは、極性を示し、シロキサン構造を含まないポリイミド構造と極性の差による相分離が発生し、これにより、シロキサン構造がポリイミド構造全般に不均一に分布される。この場合には、シロキサン構造によるポリイミドの強度向上及びストレス緩和効果のような物性向上効果を示しにくいだけではなく、相分離によってヘイズが増加して、フィルムの透明性が低下する。特に、シロキサン構造を含むジアミンが高分子量を有する場合に、これにより製造されたポリイミドは、その極性がさらに克明に表われて、ポリイミド間の相分離現象がより克明に表われる。この際、低分子量の構造を有するシロキサンジアミンを使用する場合には、ストレス緩和などの効果を示すためには、多量を添加しなければならず、これは、低い温度でTgが発生するなどの工程上の問題を発生させ、これにより、ポリイミドフィルムの物理的特性が低下する。これにより、高分子量のシロキサンジアミンを添加する場合には、緩和セグメント(relaxation segment)が分子内に大きく形成され、したがって、低分子量を添加することに比べて、少ない含量でも効果的にストレス緩和効果を示すことができる。したがって、本発明は、前記高分子量を有するシロキサン構造を有する化学式2の化合物を使用することにより、ポリイミドマトリックス上に相分離なしにより均一に分布される。
【0070】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体を重合するために使われる酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物が使われ、例えば、前記テトラカルボン酸二無水物として、分子内芳香族、脂環族、または脂肪族の4価の有機基、またはこれらの結合基として、脂肪族、脂環族または芳香族の4価の有機基が架橋構造を通じて互いに連結された4価の有機基を含むテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。望ましくは、単環式または多環式芳香族、単環式または多環式脂環族、または、これらのうち2つ以上が単一結合または官能基で連結された構造を有する酸二無水物を含みうる。または、芳香族、脂環族などの環構造が単独、または接合(fused)された複素環構造、または単一結合で連結された構造のような剛直(rigid)な構造を有する4価の有機基を含むテトラカルボン酸二無水物を含みうる。
【0071】
例えば、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式3aから化学式3eの構造を有する4価の有機基を含むものである:
[化学式3a]
【化14】
[化学式3b]
【化15】
[化学式3c]
【化16】
[化学式3d]
【化17】
[化学式3e]
【化18】
【0072】
前記化学式3aから化学式3eにおいて、前記R
11からR
17は、それぞれ独立して-F、-Cl、-Br及び-Iから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO
2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ、炭素数1~10のハロゲノアルキル、炭素数6~20のアリール基から選択されるものであり、前記a1は、0~2の整数、a2は、0~4の整数、a3は、0~8の整数、a4及びa5は、それぞれ独立して0~3の整数、a6及びa9は、それぞれ独立して0~3の整数、そして、a7及びa8は、それぞれ独立して0~7の整数であり、前記A
11及びA
12は、それぞれ独立して単一結合、-O-、-CR'R"-(この際、R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基など)、及び炭素数1~10のハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基など)からなる群から選択されるものである)、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO-、-SO
2-、-O[CH
2CH
2O]y-(yは、1~44の整数である)、-NH(C=O)NH-、-NH(C=O)O-、炭素数6~18の単環式または多環式のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基など)、炭素数6~18の単環式または多環式のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基、フルオレニレン基など)、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、または、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式4aから化学式4nからなる群から選択される4価の有機基を含むものである。
【化19】
【0073】
前記化学式4aから化学式4nの4価の有機基内の1つ以上の水素原子は、-F、-Cl、-Br及び-Iから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ、炭素数1~10のハロゲノアルキル、炭素数6~20のアリール基から選択される置換体で置換される。例えば、前記ハロゲン原子は、フルオロ(-F)であり、ハロゲノアルキル基は、フルオロ原子を含む炭素数1~10のフルオロアルキル基であって、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基などから選択されるものであり、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基から選択されるものであり、前記アリール基は、フェニル基、ナフタレニル基から選択されるものであり、より望ましくは、フルオロ原子及びフルオロアルキル基などのフルオロ原子を含む置換基である。
【0074】
または、前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族環または脂肪族構造がそれぞれの環構造が剛直な構造、すなわち、単環構造、それぞれの環が単一結合で結合された構造またはそれぞれの環が直接連結された複素環構造を含む4価の有機基を含むものである。
【0075】
一実施例によれば、ポリイミド前駆体重合時に、前記化学式1のジアミン及び任意の化学式2のジアミンの以外にも、1種以上のジアミンがさらに含まれ、例えば、炭素数6~24の単環式または多環式芳香族の2価の有機基、炭素数6~18の単環式または多環式脂環族の2価の有機基、または、これらのうち2つ以上が単一結合や官能基で連結された構造を含む2価の有機基から選択される2価の有機基の構造を含むジアミンを含み、または、芳香族、脂環族などの環構造化合物が単独、または接合された複素環構造、または単一結合で連結された構造のような剛直な構造を有する2価の有機基から選択されるものである。
【0076】
例えば、前記ジアミンは、下記化学式5aから化学式5eから選択される2価の有機基を含むものである。
[化学式5a]
【化20】
[化学式5b]
【化21】
[化学式5c]
【化22】
[化学式5d]
【化23】
[化学式5e]
【化24】
【0077】
前記化学式5aから化学式5eにおいて、R21からR27は、それぞれ独立して-F、-Cl、-Br及び-Iから選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のハロゲノアルコキシ、炭素数1~10のハロゲノアルキル、炭素数6~20のアリール基からなる群から選択されうる。
【0078】
また、A21及びA22は、それぞれ独立して単一結合、-O-、-CR'R"-(この際、R'及びR"は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基など)、及び炭素数1~10のハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基など)からなる群から選択されるものである)、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO-、-SO2-、-O[CH2CH2O]y-(yは、1~44の整数である)、-NH(C=O)NH-、-NH(C=O)O-、炭素数6~18の単環式または多環式のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基など)、炭素数6~18の単環式または多環式のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基、フルオレニレン基など)、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、b1は、0~4の整数であり、b2は、0~6の整数であり、b3は、0~3の整数であり、b4及びb5は、それぞれ独立して0~4の整数であり、b7及びb8は、それぞれ独立して0~9の整数であり、b6及びb9は、それぞれ独立して0~3の整数である。
【0079】
例えば、前記ジアミンは、下記化学式6aから化学式6pから選択される2価の有機基を含むものである。
【化25】
【0080】
または、前記ジアミンは、芳香族環または脂肪族構造が剛直な鎖構造を形成する2価の有機基を含むものであり、例えば、単環構造、それぞれの環が単一結合で結合された構造またはそれぞれの環が直接に接合された複素環構造を含む2価の有機基の構造を含みうる。
【0081】
本発明の一実施例によれば、酸二無水物及びジアミンは、1:1.1~1.1:1mol比で反応する。前記反応mol比は、意図する反応性及び工程性によって変化される。本発明の一実施例によれば、前記酸二無水物及びジアミンのmol比は、1:0.98~0.98:1、望ましくは、1:0.99~0.99:1である。
【0082】
酸二無水物とジアミン系化合物との重合反応は、溶液重合など通常のポリイミドまたはその前駆体の重合方法によって実施される。
【0083】
ポリアミド酸重合反応時に使用可能な有機溶媒としては、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトール、ジメチルプロピオンアミド(dimethylpropionamide、DMPA)、ジエチルプロピオンアミド(diethylpropionamide、DEPA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)]エーテル、エクアミド(Equamide)M100、エクアミドB100などであり、これらのうち、1種または2種以上の混合物が使われる。
【0084】
一実施例によれば、前記重合成分を重合する有機溶媒として25℃分配係数Log Pが正数である溶媒を使用することができる。Log Pが正数である有機溶媒を使用することによって、メチルフェニルシリコンオリゴマーが10重量%以上に含まれる組成でも、Tgを390℃以上の高い温度に保持することができる。
【0085】
また、前記のような分配係数が正数である有機溶媒は、フレキシブル(flexible)なポリイミド繰り返し構造とシリコンオリゴマーのようなシロキサン構造とを含むポリイミド構造の極性の差による相分離によって発生する白濁現象を減少させることができる。従来、このような相分離を解決するために、2種の有機溶媒を使用したが、前記のような有機溶媒を使用するだけでも、白濁現象を減少させて、より透明なポリイミドフィルムを製造することができる。
【0086】
前記問題を解決するために、極性溶媒と非極性溶媒とを混合して使用する方法もあるが、極性溶媒の場合、揮発性が高い傾向があり、したがって、製造工程上であらかじめ揮発されるなどの問題が発生し、このために、工程の再現性が低下するなどの問題が発生するだけではなく、相分離問題の完全な改善ができず、製造されたポリイミドフィルムのヘイズ(Haze)が高くなって、透明度が低下してしまう。
【0087】
より具体的には、溶媒の分子が両親媒性を有する構造を含む溶媒を使用することにより、極性溶媒を使用することによる工程上の問題を解決するだけではなく、両親媒性を有する分子構造によって、1種の溶媒のみを使用するとしても、ポリイミドを均一に分布させて、相分離による問題の解決に非常に適し、これにより、ヘイズ特性が著しく改善されたポリイミドを提供することができる。
【0088】
前記分配係数値が正数である場合には、溶媒の極性が疎水性であることを意味するが、本発明者の研究によれば、分配係数値が正数である特定溶媒を使用してポリイミド前駆体組成物を製造すれば、エッジバック現象が改善されることが分かった。また、本発明は、前記のようにLog Pが正数を有する溶媒を使用することにより、レベリング剤のような素材の表面張力及び塗膜の平滑性を調節する添加剤を使用せずとも、溶液のエッジバック現象を制御することができ、これは、添加剤などの付加的な添加剤を使用しないので、最終生成物に低分子物質が含有されるなどの品質及び工程上の問題を除去するだけではなく、より効率的に均一な特性を有するポリイミドフィルムを形成しうる効果がある。
【0089】
例えば、ポリイミド前駆体組成物をガラス基板にコーティングする工程において、硬化時または湿度条件のコーティング液の放置条件でコーティング層の収縮によるエッジバック現象が発生する恐れがある。このようなコーティング溶液のエッジバック現象は、フィルムの厚さの偏差をもたらして、これによるフィルムの耐屈曲性の不足でフィルムが切られるか、カッティング時に、エッジが割れる現象が表われて、工程上の作業性が悪く、収率が低下する問題が発生する恐れがある。
【0090】
また、基板上に塗布されたポリイミド前駆体組成物に極性を有する微細異物が流入される場合、Log Pが負数である極性の溶媒を含むポリイミド前駆体組成物では、前記異物が有する極性によって異物の位置を基準に散発的なコーティングの亀裂または厚さ変化が起こりうるが、Log Pが正数である疎水性の溶媒を使用する場合には、極性を有する微細異物が流入される場合にも、コーティングの亀裂による厚さ変化などの発生が減少または抑制される。
【0091】
具体的に、Log Pが正数である溶媒を含むポリイミド前駆体組成物は、下記式1で定義されるエッジバック率(edge back ratio)が0~0.1%以下である。
[式1]
エッジバック率(%)=[(A-B)/A]Х100
【0092】
前記式1において、A:基板(100mmХ100mm)上にポリイミド前駆体組成物が完全にコーティングされた状態での面積であり、B:ポリイミド前駆体組成物またはPIフィルムがコーティングされた基板の縁部の先端からエッジバック現象が発生した後の面積である。
【0093】
このようなポリイミド前駆体組成物及びフィルムのエッジバック(edge back)現象は、ポリイミド前駆体組成物溶液をコーティングした後、30分以内に発生し、特に、縁部から巻き込まれ始めることにより、縁部の厚さを厚くする。
【0094】
本発明によるポリイミド前駆体組成物を基板にコーティングした後、10分以上、例えば、40分以上の時間湿度条件で放置した後の前記コーティングされた樹脂組成物溶液のエッジバック率が、0.1%以下であり、例えば、20~30℃の温度で、40%以上の湿度条件、より具体的には、40~80%の範囲の湿度条件、すなわち、40%、50%、60%、70%、80%のそれぞれの湿度条件で、例えば、50%の湿度条件で10~50分間放置された以後にも、0.1%以下の非常に小さなエッジバック率を示し、望ましくは、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いエッジバック率を示すことができる。
【0095】
前記のようなエッジバック率は、硬化以後にも保持されるものであり、例えば、ポリイミド前駆体組成物を基板にコーティングした後、10分以上、例えば、20~30℃の温度で、40%以上の湿度条件、より具体的には、40~80%の範囲の湿度条件、すなわち、40%、50%、60%、70%、80%のそれぞれの湿度条件で、例えば、50%の湿度条件で10~50分間放置した後、硬化されたポリイミドフィルムのエッジバック率が0.1%以下であり、すなわち、熱処理による硬化工程でも、エッジバック現象がほとんど起こらないか、全く起こらず、具体的には、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いエッジバック率を示すことができる。
【0096】
本発明によるポリイミド前駆体組成物は、このようなエッジバック現象を解決することにより、より均一な特性を有するポリイミドフィルムを収得することができて、製造工程の収率をより向上させうる。
【0097】
また、本発明による溶媒の密度は、ASTM D1475の標準測定方法で測定した時、1g/cm3以下であり、密度が1g/cm3以上の値を有する場合には、相対粘度が高くなって、工程上の効率性が減少する。
【0098】
前記Log Pが正数である溶媒は、例えば、N,N-ジエチルアセトアミド(N,N-diethylacetamide、DEAc)、N,N-ジエチルホルムアミド(N,N-diethylformamide、DEF)、N-エチルピロリドン(N-ethylpyrrolidone、NEP)、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、及びジエチルプロピオンアミド(DEPA)のうちから選択される1つ以上である。
【0099】
前記溶媒は、沸点が300℃以下であり、より具体的に、25℃分配係数Log P値は、0.01~3、または0.01~2、または0.1~2である。
【0100】
前記分配係数は、ACD/Labs社のACD/Percepta platformのACD/Log P moduleを使用して計算され、ACD/Log P moduleは、分子の2D構造を用いてQSPR(Quantitative Structure-Property Relationship)方法論の基盤のアルゴリズムを利用する。
【0101】
また、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素をさらに使用することもでき、また、ポリマーの溶解を促進させるために、前記溶媒に前記溶媒総量に対して約50重量%以下のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をさらに添加することもできる。
【0102】
また、ポリアミド酸またはポリイミドを合成する場合、過剰のポリアミノ基または酸無水物基を不活性化するために、分子末端をジカルボン酸無水物またはモノアミンを反応させて、ポリイミドの末端を封止する末端封止剤をさらに添加することができる。
【0103】
前記テトラカルボン酸二無水物をジアミンと反応させる方法は、溶液重合など通常のポリイミド前駆体重合の製造方法によって実施し、具体的には、ジアミンを有機溶媒中に溶解させた後、結果として収得された混合溶液にテトラカルボン酸二無水物を添加して重合反応させることで製造可能である。
【0104】
前記重合反応は、不活性ガスまたは窒素気流下に実施され、無水条件で実行可能である。
【0105】
また、前記重合反応時に、反応温度は、-20~80℃、望ましくは、0~80℃で実施される。反応温度が過度に高い場合、反応性が高くなって、分子量が大きくなり、前駆体組成物の粘度が上昇することにより、工程上に不利である。
【0106】
前記製造方法によって製造されたポリアミド酸溶液にフィルム形成工程時の塗布性などの工程性を考慮して、前記組成物が適切な粘度を有させる量で固形分を含むことが望ましい。
【0107】
前記ポリアミド酸を含むポリイミド前駆体組成物は、有機溶媒中に溶解された溶液の形態であり、このような形態を有する場合、例えば、ポリイミド前駆体を有機溶媒中で合成した場合には、溶液は、得られる反応溶液自体でも良く、または、この反応溶液を他の溶媒で希釈したものであっても良い。また、ポリイミド前駆体を固形粉末として得た場合には、それを有機溶媒に溶解させて溶液にしたものであっても良い。
【0108】
一実施例によれば、全体ポリイミド前駆体の含量が8~25重量%になるように、有機溶媒を添加して組成物の含量を調節し、望ましくは、10~25重量%、より望ましくは、10~20重量%以下に調節することができる。
【0109】
または、前記ポリイミド前駆体組成物は、20重量%以下の固形分濃度で3,000cP以上の粘度を有するように調節するものであり、前記ポリイミド前駆体組成物の粘度は、10,000cP以下、望ましくは、9,000cP以下、より望ましくは、8,000cP以下の粘度を有するように調節することが望ましい。ポリイミド前駆体組成物の粘度が10,000cPを超過する場合、ポリイミドフィルム加工時に、脱泡の効率性が低下することにより、工程上の効率だけではなく、製造されたフィルムは、気泡発生で表面粗度が不良であって、電気的、光学的、機械的特性が低下する。
【0110】
引き続き、前記重合反応の結果として収得されたポリイミド前駆体を化学的または熱的イミド化の方法を用いてイミド化させることにより、透明ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0111】
一実施例によれば、ポリイミド前駆体組成物をキャリア基板上に塗布する段階;及び前記ポリイミド前駆体組成物を加熱及び硬化する段階;を含む方法でポリイミドフィルムを製造することができる。
【0112】
この際、前記キャリア基板としては、ガラス、金属基板またはプラスチック基板などが特に制限なしに使われ、そのうちでも、ポリイミド前駆体に対するイミド化及び硬化工程のうち、熱及び化学的安定性に優れ、別途の離型剤処理なしでも、硬化後、形成されたポリイミド系フィルムに対して損傷なしに容易に分離されるガラス基板が望ましい。
【0113】
また、前記塗布工程は、通常の塗布方法によって実施され、具体的には、スピンコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、エアナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレー法、浸漬法またはブラシ法などが用いられうる。そのうちでも、連続工程が可能であり、ポリイミドのイミド化率を増加させることができるキャスティング法によって実施されることがより望ましい。
【0114】
また、前記ポリイミド前駆体組成物は、最終的に製造されるポリイミドフィルムがディスプレイ基板用として適した厚さを有させる厚さの範囲で基板上に塗布されうる。
【0115】
具体的には、10~30μmの厚さにする量で塗布されうる。前記ポリイミド前駆体組成物塗布後、硬化工程に先立って、ポリイミド前駆体組成物内に存在する溶媒を除去するための乾燥工程が選択的にさらに実施される。
【0116】
前記乾燥工程は、通常の方法によって実施され、具体的に、140℃以下、あるいは80~140℃の温度で実施される。乾燥工程の実施温度が80℃未満であれば、乾燥工程が長くなり、140℃を超過する場合、イミド化が急激に進行して、均一な厚さのポリイミドフィルムの形成が困難である。
【0117】
引き続き、前記基板に塗布されたポリイミド前駆体組成物は、IRオーブン、熱風オーブンやホットプレート上で熱処理され、この際、前記熱処理温度は、300~500℃、望ましくは、320~480℃の温度範囲であり、前記温度範囲内で多段階加熱処理で進行することもできる。前記熱処理工程は、20~70分間進行し、望ましくは、20~60分間進行しうる。
【0118】
前記のように製造されたポリイミドフィルムの硬化直後、残留応力は、40MPa以下であり、前記ポリイミドフィルムを25℃ 50%の湿度条件で3時間放置した後の残留応力変化値が、5MPa以下である。
【0119】
前記ポリイミドフィルムの黄色度は、15以下であり、望ましくは、13以下である。また、前記ポリイミドフィルムのヘイズは、2以下であり、望ましくは、1以下である。
【0120】
また、前記ポリイミドフィルムの450nmでの透過度は、75%以上であり、550nmでの透過度は、85%以上であり、630nmでの透過度は、90%以上である。
【0121】
前記ポリイミドフィルムは、耐熱性が高く、例えば、質量減少が1%起こる熱分解温度(Td_1%)が、500℃以上である。
【0122】
前記のように製造されたポリイミドフィルムは、モジュラスが3~6GPaである。前記モジュラス(弾性率)が3Gpa未満であれば、フィルムの剛性が低くて、外部衝撃に容易に壊れやすく、前記弾性率が6GPaを超過すれば、カバーレイフィルムの剛性は優れているが、十分な柔軟性を確保することができない問題が発生する恐れがある。
【0123】
また、前記ポリイミドフィルムの延伸率は、90%以上であり、望ましくは、92%以上であり、引張強度が、130MPa以上、望ましくは、140MPa以上である。
【0124】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、温度変化による熱安定性に優れ、例えば、100~350℃の温度範囲で加熱及び冷却工程をn+1回経た後の熱膨張係数が、-10~100ppm/℃の値を有し、望ましくは、-7~90ppm/℃の値、より望ましくは、80ppm/℃以下である(この際、nは、0以上の整数)。
【0125】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、厚さ方向位相差(Rth)が-150~+150nmの値、望ましくは、-130~+130nmを有することにより、光学的等方性を示して、視感性が向上する。
【0126】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、キャリア基板との接着力が5gf/in以上であり、望ましくは、10gf/in以上である。
【0127】
また、本発明は、前記ポリイミド前駆体組成物をキャリア基板上に塗布する段階;前記ポリイミド前駆体組成物を加熱してポリアミド酸をイミド化することにより、ポリイミドフィルムを形成する段階;前記ポリイミドフィルム上に素子を形成する段階;及び前記素子が形成されたポリイミドフィルムを前記キャリア基板から剥離する段階;を含むフレキシブルデバイスの製造工程を提供する。
【0128】
特に、前記フレキシブルデバイスの製造工程は、LTPS工程、ITO工程またはOxide工程を含みうる。
【0129】
例えば、ポリイミドフィルム上にSiO2を含む遮断層を形成する段階;前記遮断層上にa-Si(amorphous silicon)薄膜を蒸着する段階;前記蒸着されたa-Si薄膜を450±50℃の温度で熱処理する脱水素アニーリング段階;及び前記a-Si薄膜をエキシマレーザなどで結晶化させる段階;を含むLTPS薄膜製造工程以後、レーザ剥離などでキャリア基板とポリイミドフィルムとを剥離することにより、LTPS層を含むフレキシブルデバイスが得られる。
【0130】
酸化物薄膜工程は、シリコンを利用した工程に比べて低い温度で熱処理され、例えば、ITO TFT工程の熱処理温度は、240℃±50℃であり、Oxide TFT工程の熱処理温度は、350℃±50℃である。
【0131】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0132】
<製造例1>化学式1-1の化合物の製造
【化26】
【0133】
窒素雰囲気で前記化学式A(40.0g、190.6mmol)の化合物をTHF(300mL)に溶かした後、プロピレンオキシド(5.5g、95.3mmol)を投入した後、零下20℃に冷却した。この溶液に、前記化学式Bの化合物(13.2g、95.3mmol)を4等分して10分間隔で投入した。3時間後にヘキサン(300ml)を添加して固体を生成した。濾過後、得られた固体をヘキサン/酢酸エチル(10/7)で洗浄して、前記化学式Cの化合物(25.9g、収率87.0%)を製造した。
MS[M+H]+=313
【0134】
前記化学式C(20g、63.9mmol)と化学式D(10.2g、32.0mmol)との化合物を氷酢酸(200mL)に分散させ、100℃まで昇温した。4時間後に常温に温度を下げた後、エタノールを添加して固体を得た。濾過後、得た固体を水とエタノールとで洗浄して、前記化学式Eの化合物(26.8g、収率92.3%)を製造した。
MS[M+H]+=909
【0135】
前記化学式Eの化合物(25g、27.5mmol)をNMP(N-メチルピロリドン)(200mL)に分散させた後、パラジウム/チャコール(0.75g)を投入後、水素雰囲気で16時間撹拌した。反応終了後に濾過して、得られた濾液に水(200mL)を加えて固体を生成した。濾過後、収得した固体をNMPと酢酸エチルとで再結晶して、化学式1-1の化合物(17.7g、収率75.9%)を製造した。
MS[M+H]+=845
【0136】
<製造例2>化学式1-2の化合物の製造
【化27】
【0137】
製造例1において、化学式Bの代わりに化学式Fの化合物を使用したことを除いては、化学式Cの化合物を製造する方法と同じ方法で前記化学式Gの化合物を製造した。
【0138】
化学式Cの代わりに化学式Gの化合物を使用したことを除き、前記化学式Eの化合物を製造する方法と同じ方法で化学式Hの化合物を製造した。
【0139】
化学式Eの代わりに化学式Hの化合物を使用したことを除いては、化学式1-1の化合物を製造する方法と同じ方法で化学式1-2の化合物を製造した。
MS[M+H]+=851
【0140】
<製造例3>化学式1-5の化合物の製造
【化28】
【0141】
製造例1において、化学式Dの代わりに化学式Iの化合物を使用したことを除いては、化学式Eの化合物を製造する方法と同じ方法で前記化学式Jの化合物を製造した。
【0142】
化学式Eの代わりに化学式Jの化合物を使用したことを除いては、化学式1-1の化合物を製造する方法と同じ方法で化学式1-5の化合物を製造した。
MS[M+H]+=863
【0143】
<製造例4>化学式1-9の化合物の製造
【化29】
【0144】
製造例1において、化学式Dの代わりに化学式Kの化合物を使用したことを除いては、化学式Eの化合物を製造する方法と同じ方法で前記化学式Lの化合物を製造した。
【0145】
化学式Eの代わりに化学式Lの化合物を使用したことを除いては、化学式1-1の化合物を製造する方法と同じ方法で化学式1-9の化合物を製造した。
MS[M+H]+=729
【0146】
<製造例5>化学式1-13の化合物の製造
【化30】
【0147】
製造例1において、化学式Bの代わりに化学式Mの化合物を使用したことを除いては、化学式Cの化合物を製造する方法と同じ方法で化学式Nの化合物を製造した。
【0148】
化学式Cの代わりに化学式N、化学式Dの代わりに化学式Oの化合物を使用したことを除いては、化学式Eの化合物を製造する方法と同じ方法で化学式Pの化合物を製造した。
【0149】
化学式Eの代わりに化学式Pの化合物を使用したことを除いては、化学式1-1の化合物を製造する方法と同じ方法で化学式1-13の化合物を製造した。
MS[M+H]+=729
【0150】
<製造例6>化学式1-14の化合物の製造
【化31】
【0151】
製造例1において、化学式Bの代わりに化学式Qの化合物を使用したことを除いては、化学式Cの化合物を製造する方法と同じ方法で化学式Rの化合物を製造した。
【0152】
化学式Cの代わりに化学式Rの化合物を使用したことを除いては、前記化学式Eの化合物を製造する方法と同じ方法で前記化学式Tの化合物を製造した。
【0153】
化学式Eの代わりに化学式Tの化合物を使用したことを除いては、化学式1-1の化合物を製造する方法と同じ方法で化学式1-14の化合物を製造した。
MS[M+H]+=731
【0154】
<製造例7>化学式1-19の化合物の製造
【化32】
【0155】
製造例1において、化学式Bの代わりに化学式Mの化合物を使用したことを除いては、化学式Cの化合物を製造する方法と同じ方法で化学式Nの化合物を製造した。
【0156】
化学式Cの代わりにN、化学式Dの代わりにKの化合物を使用したことを除いては、化学式Eを製造する方法と同じ方法で前記化学式Uの化合物を製造した。
【0157】
化学式Eの代わりに化学式Uの化合物を使用したことを除き、前記化学式1-1の化合物を製造する方法と同じ方法で化学式1-19の化合物を製造した。
MS[M+H]+=731
【0158】
<比較例1>6-FDA/TFMB
窒素気流が流れる反応器内にDEAc(ジエチルアセトアミド)130gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でTFMB(2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)0.0500molを同じ温度で添加して溶解させた。TFMBジアミンが添加された溶液に6-FDA(4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)0.0500molをDEAc 40gと共に添加した後、48時間反応させて、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0159】
<実施例1>6-FDA/化学式1-1のジアミン
窒素気流が流れる反応器内にDEAc(ジエチルアセトアミド)200gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で前記製造例1から製造された化学式1-1のジアミン0.0413molを同じ温度で添加して溶解させた。前記化学式1-1のジアミンが添加された溶液に6-FDA(4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)0.0413molをDEAc 60gと共に添加した後、48時間反応させて、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0160】
<実施例2>6-FDA/化学式1-2のジアミン
窒素気流が流れる反応器内にDEAc(ジエチルアセトアミド)200gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で前記製造例2から製造された化学式1-2のジアミン0.0413molを同じ温度で添加して溶解させた。前記化学式1-2のジアミンが添加された溶液に6-FDA(4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)0.0413molをDEAc 60gと共に添加した後、48時間反応させて、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0161】
<実施例3>6-FDA/化学式1-5のジアミン
窒素気流が流れる反応器内にDEAc(ジエチルアセトアミド)200gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で前記製造例3から製造された化学式1-5のジアミン0.0413molを同じ温度で添加して溶解させた。前記化学式1-5のジアミンが添加された溶液に6-FDA(4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)0.0413molをDEAc 60gと共に添加した後、48時間反応させて、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0162】
<実施例4>6-FDA/化学式1-19のジアミン
窒素気流が流れる反応器内にDEAc(ジエチルアセトアミド)200gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で前記製造例7から製造された化学式1-19のジアミン0.0413molを同じ温度で添加して溶解させた。前記化学式1-19のジアミンが添加された溶液に6-FDA(4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)0.0413molをDEAc 60gと共に添加した後、48時間反応させて、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0163】
<実験例1>
実施例1から実施例4及び比較例1から製造されたポリイミド前駆体溶液の粘度及びポリアミド酸の分子量を測定して、下記表1に示した。粘度は、Viscotek社のTDA302を用いて測定し、分子量は、Viscotek社のGPCmax VE2001を用いて測定した。
【0164】
<実験例2>
実施例1から実施例4及び比較例1から製造されたそれぞれのポリイミド前駆体溶液をガラス基板上にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、5℃/minの速度で加熱し、80℃で30分、250℃で30分、400℃で30~40分を保持して硬化工程を進行して、ポリイミドフィルムを製造した。それぞれのフィルムに対する物性を測定して、下記表1に示した。
【0165】
<モジュラス(GPa)、引張強度(MPa)、延伸率(%)>
長さ5mmX50mm、厚さ10μmのフィルムを引張試験機(株式会社Instron製造:Instron 3342)で速度10mm/minに引っ張って、モジュラス(GPa)、引張強度(MPa)、延伸率(%)を測定した。
【表1】
【0166】
表1の結果から分かるように、本発明によるジアミンを含むポリイミド前駆体溶液は、20重量%以下の固形分濃度で3000cPs以上の粘度を有し、TFMBを使用する比較例1に比べて、高い分子量を有するポリアミド酸が製造されたことが分かる。また、このような高い分子量を有するポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルムは、比較例1のポリイミドフィルムに比べて、機械的強度が向上したということが分かる。
【0167】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。