(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】プラスチック樹脂の射出物性評価方法および射出成形用ポリエチレン樹脂
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20221018BHJP
G01N 33/44 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G01N11/00 C
G01N33/44
(21)【出願番号】P 2021129643
(22)【出願日】2021-08-06
(62)【分割の表示】P 2019570569の分割
【原出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0106308
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0122819
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンソプ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、イ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ-ス
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミョン-ハン
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-268920(JP,A)
【文献】特開2009-156985(JP,A)
【文献】特開昭48-062848(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1617870(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00
G01N 33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック樹脂試片に対して、溶融指数(Melt Index、MI)値を測定する段階と、
プラスチック樹脂試片に対して、定常流粘度(steady flow viscosity)値を測定する段階と、
前記定常流粘度値から、粘度モデル式によりせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を導出する段階と、
前記溶融指数値およびせん断薄化指数値を用いて、射出圧力を予測する段階とを含む、プラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項2】
前記溶融指数値は、ASTM D1238のE項目によって測定する、請求項
1に記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項3】
前記定常流粘度値は、0.05~500rad/sの領域で、せん断速度変化に応じた値で測定する、請求項
1または
2に記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項4】
前記定常流粘度値は、せん断速度が増加するほど定常流粘度が減少する領域で測定される、請求項
3に記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項5】
前記せん断薄化指数値は、Power-lawモデル、Crossモデル、Carreauモデル、およびCarreau-Yasudaモデルのうちのいずれか1つ以上の粘度モデル式により、せん断速度値に応じた定常流粘度値をプロットして導出される、請求項
1~
4のいずれかに記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項6】
前記射出圧力を予測する段階は、
下記数式1を利用して行われる、請求項
1~
5のいずれかに記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法:
【数1】
上記数式1中、
MI
2.16は、ASTM D1238のE項目によって測定される、溶融指数値であり、 STIは、粘度モデル式により導出された、せん断薄化指数値であり、
aは、2,200~2,500の値を有することができ、
bは、-0.1~-0.5の値を有することができ、
cは、0.1~0.5の値を有することができる。
【請求項7】
前記溶融指数(Melt Index、MI)値が0.1~1.5g/10分である、請求項
1~
6のいずれかに記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項8】
前記せん断薄化指数値が0.1~0.5である、請求項
1~
7のいずれかに記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項9】
前記予測された射出圧力値が1,000~2,000Paである、請求項
1~
8のいずれかに記載のプラスチック樹脂の射出物性評価方法。
【請求項10】
ASTM1505によって測定された、前記プラスチック樹脂の密度値が0.94~0.96g/cm
3である、請求項
1~
9のいずれかに記載のプラスチック樹脂成形品の物性評価方法。
【請求項11】
前記プラスチック樹脂はポリエチレン樹脂である、請求項
1~
10のいずれかに記載のプラスチック樹脂成形品の物性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年8月22日付の韓国特許出願第10-2017-0106308号および2017年9月22日付の韓国特許出願第10-2017-0122819号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、プラスチック樹脂の射出物性評価方法および射出成形工程に適したポリエチレン樹脂に関する。本発明は、より詳しくは、特定のプラスチック樹脂を射出工程によって加工する時、樹脂試片を用いて測定した物性値を通じて、当該プラスチック樹脂の射出適合性および射出工程時の射出圧力を導出することができる、新たなプラスチック樹脂の射出物性評価方法および特定条件の射出成形工程に適したポリエチレン樹脂に関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチックは、熱および/または圧力を利用して成形可能な高分子化合物の一種であって、加工が容易で、熱を加えると溶け、温度を十分に下げると固体状態に戻る高分子である。
【0004】
プラスチックは多様な形態に加工しやすく、そのうちの一部は再利用可能であるため、現代社会では多様な種類のプラスチック樹脂成形品が使用されている。
【0005】
このようなプラスチックは、一般に、単量体化合物を重合して得られ、重合した樹脂または樹脂組成物をペレット形態に加工して保管し、各用途に応じて多様な方法で成形して製品を製造する。
【0006】
射出成形(Injection Molding)は、プラスチックを成形する技術の1つであって、ビーズ、ペレットあるいはチップの形態に準備されたプラスチック樹脂を射出成形機に入れ、射出して所望の形態に加工する。
【0007】
射出成形機は、原料であるプラスチック樹脂を投入するホッパー、プラスチック樹脂を加熱して溶かす加熱部、溶融したプラスチック樹脂を押し出すスクリュー、および目的とする形態に成形する鋳型などの部分からなる。
【0008】
ビーズ、ペレットあるいはチップなどの形態に加工されたプラスチック樹脂は、ホッパーから一定量ずつ計量されて加熱部に送られ、そこでスクリューにより押し出されながら溶融する。溶融したプラスチック樹脂は、射出ノズルから鋳型内の空洞で射出される。鋳型内部から射出されたプラスチック樹脂が再び固化して、最終目的とする製品の形態を有することになる。
【0009】
通常の射出成形工程でプラスチック樹脂が射出鋳型内に導入されることによって、鋳型内部の空洞壁に触れる材料は直ちに固形化するが、これは、流体状態のプラスチック樹脂が材料の非流動温度未満の温度に冷却されるためである。
【0010】
プラスチック樹脂が鋳型を通じて流動することによって、樹脂の境界層が鋳型の内部面に当接して形成されるが、鋳型内部にプラスチック樹脂を充填し続けることによって、境界層は厚くなり続け、結局、プラスチック樹脂の流動経路を遮断し、追加の材料が鋳型内に流動することを妨害するようになるため、射出時に射出圧力を判断して射出成形工程に
適合性を判断する必要がある。
【0011】
つまり、射出圧力が一定範囲以下の場合、上述した原因によってプラスチック樹脂が鋳型内に注入されない問題が発生することがあり、射出圧力が一定範囲以上の場合、工程性が低下することがあるが、従来は射出圧力を確認するためにペレットタイプのプラスチック樹脂を直接射出する方法のみが存在しており、射出成形を行う前に射出圧力を予測するかまたは射出成形の適合性を判断することができる方法は知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特定のプラスチック樹脂を射出工程によって加工する際、樹脂試片を用いて測定した物性値を通じて、当該プラスチック樹脂の射出適合性を正確に判断できる、新たなプラスチック樹脂の射出物性評価方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、特定条件の射出工程に適したポリエチレン樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
プラスチック樹脂試片に対して、数平均分子量値を測定する段階と、
プラスチック樹脂試片の分子量分布で分子量が3,500g/mol以下である低分子量分子の分率を求める段階と、
前記数平均分子量値および低分子量分子の分率を通して、プラスチック樹脂の射出適合性を予測する段階とを含む、プラスチック樹脂の射出物性評価方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、数平均分子量値が14,500g/mol以下であり、分子量が3,500g/mol以下である低分子量分子の分率が4%以上である、射出成形用ポリエチレン樹脂を提供する。
【0016】
また、本発明は、
プラスチック樹脂試片に対して、溶融指数(Melt Index、MI)値を測定する段階と、
プラスチック樹脂試片に対して、定常流粘度(steady flow viscosity)値を測定する段階と、
前記定常流粘度値から、粘度モデル式によりせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を導出する段階と、
前記溶融指数値およびせん断薄化指数値を用いて、射出圧力を予測する段階とを含む、プラスチック樹脂の射出物性評価方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際のプラスチック樹脂を射出成形工程に投入しなくても、試片で測定した物性だけで射出適合性および実際の射出工程で必要な射出圧力を正確に導出することができるので、時間的、金銭的な側面において経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に使用された用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定する意図はない。単数の表現は文脈上明白に異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、‘含む’、‘備える’または‘有する’などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め
排除しないものと理解しなければならない。
【0019】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を図面に例示し詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解しなければならない。
【0020】
本明細書において、プラスチック樹脂とは、熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性プラスチックを含む概念であって、射出成形方法によって加工できる高分子プラスチック樹脂を意味する。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の一側面に係るプラスチック樹脂の射出物性評価方法は、
プラスチック樹脂試片に対して、数平均分子量値を測定する段階と、
プラスチック樹脂試片の分子量分布で分子量が3,500g/mol以下である低分子量分子の分率を求める段階と、
前記数平均分子量値および低分子量分子の分率を通して、プラスチック樹脂の射出適合性を予測する段階とを含む。
【0023】
本発明者らは、プラスチック樹脂の射出成形工程で、射出圧力が当該プラスチック樹脂の分子量特性と関連しているという仮設を設定し、プラスチック樹脂試料を用いて測定できる特定の分子量関連因子により実際の射出適合性を正確に導出することができることを発見し、本発明を完成した。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記プラスチック樹脂試片の数平均分子量は、約10,000~約20,000g/molであることが好ましい。
【0025】
また、分子量が3,500g/mol以下である低分子量分子の分率は、約1~約10%であることが好ましい。
【0026】
また、前記プラスチック樹脂は、約240℃および約650barの射出工程条件で、射出圧力が約1,600Pa未満、好ましくは約1,000~約1,600Pa、または約1,200Pa以上、約1,600Pa未満である。
【0027】
本発明の他の一実施形態によれば、
前記射出適合性を予測する段階は、
前記プラスチック樹脂試片の数平均分子量値が14,500g/mol以下であり、分子量が3,500g/mol以下である低分子量分子の分率が4%以上の場合、射出に適すると判断される。
【0028】
射出圧力が一定範囲以下である場合、プラスチック樹脂が鋳型内に注入されない問題が発生することがあり、射出圧力が一定範囲以上である場合、工程性が低下することがあるため、一般的なプラスチック樹脂の射出工程では、約240℃および約650barの射出工程条件で、射出圧力を約1,600Pa未満に調節することが好ましい。
【0029】
このような射出圧力は、プラスチック樹脂の流動物性により異なる特性であるが、数平均分子量値が14,500g/mol以下であり、分子量が3,500g/mol以下である低分子量分子の分率が4%以上の場合、約240℃および約650barの射出工程条件で、射出圧力が約1,600Pa未満、あるいは約1,200Pa以上、約1,60
0Pa未満で、射出適合性が非常に優れていることが示され、上述した条件のうちの1つでも満足しない場合、約240℃および約650barの射出工程条件で、射出圧力が約1,600Paを超えることになり、射出適合性が低下することが示された。
【0030】
つまり、上記のような方法を用いる場合、射出工程でプラスチック樹脂を直接投入せず、試片の分子量特性のみを測定し、これにより特定条件での射出適合性を容易に判断することができる。
【0031】
一方、本発明の他の一側面によれば、数平均分子量値が14,500g/mol以下であり、分子量が3,500g/mol以下である低分子量分子の分率が4%以上である、射出成形用ポリエチレン樹脂が提供される。
【0032】
前記ポリエチレン樹脂は、上述のように、約240℃および約650barの射出工程条件で、射出圧力が約1,600Pa未満であるため、射出成形工程に非常に適している。
【0033】
そして、前記ポリエチレン樹脂は、190℃、2.16kg荷重下で、ASTM1238により測定された溶融指数(Melt Index、MI)値が約0.1~約1.5g/10分であり、ASTM1505により測定された、前記プラスチック樹脂の密度値は約0.94~約0.96g/cm3である。
【0034】
上述したポリエチレン樹脂は、次のようなメタロセン触媒を用いて製造することができる。
【0035】
上記使用できるメタロセン触媒は、下記化学式1で表される第1メタロセン化合物1種以上、および下記化学式3で表される第2メタロセン化合物1種以上の混合物が挙げられる。
【0036】
【0037】
上記化学式1中、
Mは、4族遷移金属であり、
B1は、炭素、シリコンまたはゲルマニウムであり、
Q1およびQ2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数3~20のヘテロシクロアルキル基、または炭素数5~20のヘテロアリール基であり、
X1およびX2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、ニトロ基、アミド基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、
または炭素数1~20のスルホネート基であり、
C1およびC2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、下記化学式2a、化学式2b、化学式2c、または化学式2dのうちの1つで表され、但し、C1およびC2のうちの1つ以上は化学式2aで表され;
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
上記化学式2a、2b、2c、および2d中、
R1~R28は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数
1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のシリルアルキル基、炭素数1~20のアルコキシシリル基、炭素数1~20のエーテル基、炭素数1~20のシリルエーテル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、または炭素数7~20のアリールアルキル基であり、
R’1~R’3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基であり、
前記R1~R28のうちの互いに隣接する2つ以上が互いに連結されて置換または非置換
の脂肪族または芳香族環を形成することができる。
【0043】
【0044】
上記化学式3中、
R31~R38のうちのいずれか1つ以上は、-(CH2)n-OR(このとき、Rは炭素
数1~6の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、nは2~4の整数である)であり、
残りは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、および炭素数7~20のアリールアルキル基からなる群から選択される官能基であるか、または互いに隣接する2つ以上が互いに連結されて炭素数1~10のヒドロカルビル基で置換または非置換の脂肪族または芳香族環を形成することができ、
Q3およびQ4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基であり、
M’は、4族遷移金属であり、
X3およびX4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基であり、
mは、0または1の整数である。
【0045】
上記化学式の置換基をより詳細に説明すれば、以下の通りである。
【0046】
前記炭素数1~20のアルキルとしては、直鎖または分岐鎖のアルキルを含み、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0047】
前記炭素数2~20のアルケニルとしては、直鎖または分岐鎖のアルケニルを含み、具体的には、アリル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0048】
前記炭素数6~20のアリールとしては、単環または縮合環のアリールを含み、具体的には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、フルオレニルなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0049】
前記炭素数5~20のヘテロアリールとしては、単環または縮合環のヘテロアリールを含み、カルバゾリル、ピリジル、キノリン、イソキノリン、チオフェニル、フラニル、イミダゾール、オキサゾリル、チアゾリル、トリアジン、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0050】
前記炭素数1~20のアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、フェニルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0051】
前記炭素数1~20のアルキルシリル基としては、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0052】
前記炭素数1~20のシリルアルキル基としては、シリルメチル基、ジメチルシリルメチル基(-CH2-Si(CH3)2H)、トリメチルシリルメチル基(-CH2-Si(CH3)3)などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0053】
前記4族遷移金属としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0054】
上記化学式1のメタロセン化合物において、上記化学式2a、2b、2c、および2d中のR1~R28は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、メチル基、エチル基、プロピル
基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ハロゲン基、エーテル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、
トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリメチルシリルメチル基、ジメチルエーテル基、tert-ブチルジメチルシリルエーテル基、メトキシ基、エトキシ基、またはtert-ブトキシヘキシル基であることが好ましいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0055】
上記化学式1中、Q1およびQ2は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、tert-ブトキシメチル基、1-エトキシエチル基、1-メチル-1-メトキシエチル基、tert-ブトキシヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、またはテトラヒドロフラニル基であることが好ましいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0056】
上記化学式1中、B1は、シリコン(Si)であることが好ましいが、これにのみ限定
されるものではない。
【0057】
上記化学式1のメタロセン化合物は、特に、上記化学式2aの置換基でトリメチルシリルメチル基(trimethylsilyl methyl)のような炭素数1~20のシリルアルキル基を少なくとも1つ以上含むことを特徴とする。
【0058】
より具体的には、上記化学式2aのインデン誘導体は、インデノインドール誘導体やフルオレニル誘導体に比べて相対的に電子密度が低く、立体障害が大きいシリルアルキル基を含むことによって、立体障害効果および電子密度的要因により類似構造のメタロセン化合物に比べて相対的に低い分子量のオレフィン重合体を高活性で重合することができる。
【0059】
また、上記化学式2bのように表されるインデノインドール(Indeno indole)誘導体、上記化学式2cのように表されるフルオレニル(Fluorenyl)誘導体、上記化学式2dのように表されるインデン(Indene)誘導体がブリッジによって架橋された構造を形成し、リガンド構造にルイス塩基として作用できる非共有電子対を有することによって高い重合活性を示す。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式2aで表される官能基の具体的な例としては、下記構造式のうちの1つで表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式2bで表される官能基の具体的な例としては、下記構造式のうちの1つで表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式2cで表される官能基の具体的な例としては、下記構造式のうちの1つで表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式2dで表される官能基の具体的な例としては
、下記構造式のうちの1つで表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0074】
【0075】
【0076】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式1で表されるメタロセン化合物の具体的な例としては、下記構造式のうちの1つで表される化合物が挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
上記化学式1の第1メタロセン化合物は、活性に優れ、高分子量のポリエチレンを重合することができる。特に、担体に担持して使用する場合にも高い重合活性を示し、高分子
量のポリエチレンを製造することができる。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、上記化学式1のメタロセン化合物は、インデン誘導体と、シクロペンタジエン誘導体をブリッジ化合物で連結してリガンド化合物として製造した後、金属前駆体化合物を投入してメタレーション(metallation)を行うことにより得られるが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記混成メタロセン触媒に含まれる第2メタロセン化合物は、下記化学式3で表される。
【0084】
【0085】
上記化学式3中、
R31~R38のうちのいずれか1つ以上は、-(CH2)n-OR(このとき、Rは炭素
数1~6の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、nは2~4の整数である)であり、残りは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、および炭素数7~20のアリールアルキル基からなる群から選択される官能基であるか、または互いに隣接する2つ以上が互いに連結されて炭素数1~10のヒドロカルビル基で置換または非置換の脂肪族または芳香族環を形成することができ、
Q3およびQ4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基であり、
M’は、4族遷移金属であり、
X3およびX4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、または炭素数1~20のアルキル基であり、
mは、0または1の整数である。
【0086】
上記化学式3のメタロセン化合物は、シクロペンタジエン(Cp)またはその誘導体の置換基に-(CH2)n-OR(このとき、Rは炭素数1~6の直鎖または分岐鎖アルキ
ル基であり、nは2~4の整数である)の置換基を導入することによって、共単量体を用いたポリエチレンの製造時、前記置換基を含まない他のCp系触媒に比べて共単量体に対する低い転換率を示し、共重合度または共単量体分布が調節された中低分子量のポリエチ
レンを製造することができる。
【0087】
より具体的な例として、上記化学式3の第2メタロセン化合物と共に高分子量領域のポリエチレン製造用の他のメタロセン化合物を共に用いて混成(hybrid)触媒として使用する場合、前記他のメタロセン化合物によって高分子量領域のポリエチレンでは高い共重合性を示し、かつ上記化学式3の第2メタロセン化合物の作用によって低分子量領域でのポリエチレンでは低い共重合性を示すことができる。これにより、共単量体の含有量が高分子量の主鎖に集中している構造、つまり、側鎖含有量が高分子量側へ行くほど多くなる構造のBOCD(Broad Orthogonal Co-monomer Distribution)構造を有するポリエチレンを重合するのに非常に有利である。
【0088】
上記化学式3で定義された各置換基についてより詳細に説明する。
【0089】
前記炭素数1~20のアルキル基(alkyl group)は、直鎖または分岐鎖のアルキル基を含むことができる。
【0090】
前記アリール基(aryl group)は、炭素数6~20の芳香族環であることが好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
前記アルキルアリール基は、炭素数1~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基が1以上導入されたアリール基を意味し、前記アリールアルキル基は、炭素数6~20のアリール基が1以上導入された直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0092】
前記ヒドロカルビル基(hydrocarbyl group)は、1価の炭化水素化合物(hydrocarbon compound)を意味し、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基などを含む。
【0093】
前記ハロゲン基は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)を意味する。
【0094】
前記M’で定義された4族遷移金属としては、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、ハフニウム(Hf)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
前記Q3およびQ4は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、またはプロピル基であり得る。
【0096】
前記X3およびX4は、好ましくはハロゲン基、より好ましくはClであり得る。
【0097】
前記一実施形態のメタロセン化合物において、化学式3のR31~R38のうちのいずれか1つ以上は、-(CH2)n-OR(このとき、Rは炭素数1~6の直鎖または分岐鎖ア
ルキル基であり、nは2~4の整数である)である特徴を有する。上記化学式3中、-(CH2)n-ORは、好ましくは、tert-ブトキシブチル基(tert-butox
ybutyl)であり得る。より好ましくは、2個のシクロペンタジエン(Cp)誘導体がそれぞれ-(CH2)n-OR基を含むか、またはいずれか1つのCp誘導体のみ-(
CH2)n-OR基を含むことができ、前記-(CH2)n-OR基は、tert-ブトキシブチル基(tert-butoxybutyl)であり得る。
【0098】
このような構造のメタロセン化合物が担体に担持された時、置換基のうち、-(CH2
)n-OR基が担持体として使用されるシリカ表面のシラノール基と密接な相互作用により共有結合を形成することができて、安定した担持重合が可能である。
【0099】
上記化学式3のメタロセン化合物は、より具体的には、下記のような化学式3-1~化学式3-4で表される。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
上記化学式3-1~3-4中、R31~R38、Q3~Q4、M’、X3~X4の定義は、上記化学式3と同一であり、R’およびR’’は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
【0105】
化学式3-1の構造は、化学式3中、mが0の場合で、2個のシクロペンタジエン(Cp)基が非架橋の構造であり、R31~R38のうちのいずれか1つ以上の置換基は、-(CH2)n-ORである。
【0106】
化学式3-2の構造は、化学式3中、mが1の場合で、2個のCp基がSiQ3Q4ブリッジ(bridge)によって架橋された構造であり、R31~R38のうちのいずれか1つ
以上の置換基は、-(CH2)n-ORである。
【0107】
化学式3-3の構造は、化学式3中、mが0の場合で、Cp基で隣接する置換基が互いに連結されて形成された2個のインデン(indene)基が非架橋の構造であり、前記インデン基の置換基R31、R32、R35、およびR36のうちのいずれか1つ以上の置換基は、-(CH2)n-ORであり、それぞれのインデン基は、炭素数1~10のヒドロカル
ビル基(R’、R’’)で置換され得る。
【0108】
化学式3-4の構造は、化学式3中、mが1の場合で、Cp基で隣接する置換基が互いに連結されて形成された2個のインデン基がSiQ3Q4ブリッジ(bridge)によって架橋された形態であり、前記インデン基の置換基R31、R32、R35、およびR36のうちのいずれか1つ以上の置換基は、-(CH2)n-ORであり、それぞれのインデン基は
、炭素数1~10のヒドロカルビル基(R’、R’’)で置換され得る。
【0109】
一方、上記化学式3で表されるメタロセン化合物の具体的な例として、下記構造式で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
【0111】
【0112】
そして、上記化学式3で表されるメタロセン化合物は、知られた有機化合物および遷移金属化合物の製造方法により製造することができる。
【0113】
本発明で使用されるメタロセン触媒は、上記化学式1で表される第1メタロセン化合物の1種以上、および上記化学式3で表される化合物の中から選択される第2メタロセン化合物の1種以上を助触媒化合物と共に担体に担持した混成担持メタロセン触媒であり得る。
【0114】
本発明に係る混成担持メタロセン触媒において、前記メタロセン化合物を活性化するために担体に共に担持される助触媒としては、13族金属を含む有機金属化合物であって、一般的なメタロセン触媒下でオレフィンを重合する時に使用可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0115】
具体的には、前記助触媒化合物は、下記化学式4のアルミニウム含有第1助触媒、および下記化学式5のボレート系第2助触媒のうちの1つ以上を含むことができる。
【0116】
【0117】
化学式4中、R39は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロゲン置換または非置換の炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、kは、2以上の整数であり、
【0118】
【0119】
化学式5中、T+は、+1価の多原子イオンであり、Bは、+3酸化状態のホウ素であ
り、Gは、それぞれ独立して、ハイドライド、ジアルキルアミド、ハロゲン化合物、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、ハロカルビル、およびハロ-置換されたヒドロカルビルからなる群から選択され、前記Gは、20個以下の炭素を有するが、ただし、1つ以下の位置において、Gは、ハロゲン化合物である。
【0120】
このような第1および第2助触媒の使用によって、最終的に製造されたポリエチレンの分子量分布がより均一になるにつれ、重合活性が向上することができる。
【0121】
上記化学式4の第1助触媒は、線状、円状、または網状に繰り返し単位が結合したアルキルアルミノキサン系化合物であり得、このような第1助触媒の具体的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、またはブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0122】
また、上記化学式5の第2助触媒は、三置換されたアンモニウム塩、またはジアルキルアンモニウム塩、三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物であり得る。このような第2助触媒の具体的な例としては、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、メチルテトラジシクロオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2級-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、またはN,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたアンモニウム塩形態のボレート系化合物;ジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボ
レート、ジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩形態のボレート系化合物;またはトリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはトリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換された塩形態のボレート系化合物などが挙げられる。
【0123】
本発明に係る混成担持メタロセン触媒において、化学式1で表される第1メタロセン化合物、または化学式3で表される第2メタロセン化合物に含まれる全体遷移金属に対する担体の質量比は、1:10~1:1,000である。前記質量比で担体およびメタロセン化合物を含むとき、最適な形状を示すことができる。また、助触媒化合物に対する担体の質量比は、1:1~1:100である。
【0124】
本発明に係る担持メタロセン触媒において、前記担体としては、表面にヒドロキシ基を含有する担体を使用することができ、好ましくは、乾燥して表面に水分が除去された、反応性が高いヒドロキシ基とシロキサン基を有する担体を使用することができる。
【0125】
例えば、高温で乾燥したシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが使用可能であり、これらは通常、Na2O、K2CO3、BaSO4、およびMg(NO3)2などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有することができる。
【0126】
前記担体の乾燥温度は、200℃~800℃が好ましく、300℃~600℃がさらに好ましく、300℃~400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が200℃未満の場合、水分が多すぎて表面の水分と助触媒とが反応し、800℃を超える場合には、担体表面の気孔が合わされるにつれて表面積が減少し、また、表面にヒドロキシ基が多く無くなり、シロキサン基のみ残るようになって助触媒との反応サイトが減少するので、好ましくない。
【0127】
前記担体表面のヒドロキシ基の量は、0.1~10mmol/gが好ましく、0.5~5mmol/gのとき、さらに好ましい。前記担体表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件、または乾燥条件、例えば温度、時間、真空、またはスプレー乾燥などによって調節することができる。
【0128】
前記ヒドロキシ基の量が0.1mmol/g未満であれば、助触媒との反応サイトが少なく、10mmol/gを超えると、担体粒子表面に存在するヒドロキシ基以外に水分に起因する可能性があるので、好ましくない。
【0129】
一方、本発明に係るポリエチレンは、上述した混成担持メタロセン触媒の存在下で、エチレンを重合させることによって製造することができる。
【0130】
前記重合反応は、1つの連続式スラリー重合反応器、ループスラリー反応器、気相反応器、または溶液反応器を用いてエチレンを重合して進行させることができる。
【0131】
このとき、本発明の一実施形態によれば、選択的に分子量調節剤を含む単一反応器で、エチレンを供給して重合が行われる。
【0132】
また、本発明の一実施形態によれば、水素気体の存在下でエチレン単量体を供給して重合が行われる。
【0133】
このとき、前記水素気体は、重合初期のメタロセン触媒の急激な反応を抑制する役割を果たし、高分子量ポリエチレンがより多量に生成され得るようにする。したがって、このような水素気体の使用および使用量の調節によって、本発明のポリエチレンが効果的に得られる。
【0134】
前記水素気体は、エチレン単量体の重量を基準に0.01重量%~1重量%となるように投入される。水素気体の使用量が過度に小さくなると、触媒活性が十分に実現されず、所望の物性を有するポリエチレンの製造が困難になり、過度に多量の水素気体を投入する場合、触媒の活性が十分に実現されないことがある。
【0135】
一方、前記反応器には、反応器内の水分を除去するための有機アルミニウム化合物がさらに投入され、その存在下で重合反応が行われる。このような有機アルミニウム化合物の具体的な例としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルミニウムジアルキルハイドライド、またはアルキルアルミニウムセスキハライドなどが挙げられ、そのより具体的な例としては、Al(C2
H5)3、Al(C2H5)2H、Al(C3H7)3、Al(C3H7)2H、Al(i-C4H9
)2H、Al(C8H17)3、Al(C12H25)3、Al(C2H5)(C12H25)2、Al(
i-C4H9)(C12H25)2、Al(i-C4H9)2H、Al(i-C4H9)3、(C2H5
)2AlCl、(i-C3H9)2AlClまたは(C2H5)3Al2Cl3などが挙げられる
。このような有機アルミニウム化合物は、反応器に連続的に投入され、適切な水分除去のために反応器に投入される反応媒質の1kgあたり約0.1~10モルの比率で投入される。
【0136】
そして、前記重合温度は約25~約500℃、好ましくは約25~約200℃、さらに好ましくは約50~約150℃である。また、重合圧力は、約1~約100Kgf/cm2、好ましくは約1~約50Kgf/cm2、さらに好ましくは約5~約30Kgf/cm2である。
【0137】
前記担持メタロセン触媒は、炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体と、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒などに溶解または希釈して注入することができる。ここに使用される溶媒は、少量のアルキルアルミニウム処理することによって、触媒毒として作用する少量の水または空気などを除去して使用することが好ましく、助触媒をさらに使用して実施することも可能である。
【0138】
本発明に係るポリエチレンは、低分子量の高分子鎖を主に重合する化学式3~5の触媒と、高分子量の高分子鎖を主に重合する化学式1の触媒とを共に使用して、エチレン単量体を重合して製造される。
【0139】
また、第1および第2メタロセン化合物の種類および含有量、水素気体の投入量、共単量体の含有量、分子量調節剤の投入の有無などを調節して多様に変化させて、前記所望の物性のポリエチレンを製造することができる。つまり、第1および第2メタロセン化合物が有する水素および分子量調節剤に対する反応性がそれぞれ異なるので、1つの反応器内でメタロセン化合物の選択的な組み合わせと水素気体の投入量、分子量調節剤の投入の有無によって、上述した物性を有するポリエチレンの製造が可能である。
【0140】
このように製造されたポリエチレンは、溶融流動指数および溶融流動率比が広くて加工性に優れて、同時に低いもつれ分子量で高い耐環境応力亀裂性を備えて、高圧および高温環境で安定性が要求される食品容器、ボトルキャップなどに非常に好ましく使用できる。
【0141】
一方、本発明の他の一側面による、プラスチック樹脂の射出物性評価方法は、
プラスチック樹脂試片に対して、溶融指数(Melt Index、MI)値を測定する段階と、
プラスチック樹脂試片に対して、定常流粘度(steady flow viscosity)値を測定する段階と、
前記定常流粘度値から、粘度モデル式によりせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を導出する段階と、
前記溶融指数値およびせん断薄化指数値を用いて、射出圧力を予測する段階とを含む。
【0142】
本発明の発明者らは、プラスチック樹脂の射出成形工程で、射出圧力が当該プラスチック樹脂の流動物性と関連しているという仮設を設定し、プラスチック樹脂試料を用いて測定できる特定因子により実際の射出圧力を正確に導出することができることを発見し、本発明を完成した。
【0143】
本発明の一実施形態によれば、前記溶融指数値は、ASTM D1238のE項目により約190℃の温度条件および約2.16kg荷重条件下で測定された値を使用することが好ましい。
【0144】
そして、前記定常流粘度値は、約0.05~約500rad/sの領域で、せん断速度が増減するにつれて共に変化する関数値として測定することが好ましく、より具体的には、前記定常流粘度値は、せん断速度が増加するほど定常流粘度が減少する領域、つまり、ニュートンの粘性法則(Newton’s Law of viscosity)に従わない非ニュートン挙動中、せん断薄化(shear thinning)挙動領域で測定することが望ましい。
【0145】
本発明の他の一実施形態によれば、前記定常流粘度値から、粘度モデル式によりせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を導出する段階で、前記せん断薄化指数値は、Power-lawモデル、Crossモデル、Carreauモデル、およびCarreau-Yasudaモデルのうちのいずれか1つ以上の粘度モデル式により、せん断速度値に応じた定常流粘度値をプロットして導出されることが望ましい。
【0146】
一例として、粘性流体の非ニュートン挙動を説明する1つのモデルである、Power-lawモデルは、下記式1で表される。
【0147】
【0148】
上記式1中、
γは、定常流粘度値の測定時のせん断速度値であり、
η(γ)は、定常流粘度値であって、これがせん断速度値に対する関数形態であることを意味し、
kは、粘稠度指数(consistency index)であり、
nは、測定により求めようとするせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を意味する。
【0149】
前記粘稠度指数(k)値は、物質のせん断流動で流動物性により変わることがある値で
ある。
【0150】
つまり、Power-lawモデルを用いる場合、せん断速度値に応じた定常流粘度値を測定した後、上記式1で表される関数に代入する方法によって、上記式での粘稠度指数値およびせん断薄化指数値を導出することができ、そのうち、せん断薄化指数値を射出圧力の予測に利用することになる。
【0151】
他の一例として、粘性流体の非ニュートン挙動を説明する1つのモデルである、Crossモデルは、下記式2で表される。
【0152】
【0153】
上記式2中、
γは、定常流粘度値の測定時のせん断速度値であり、
η(γ)は、定常流粘度値であって、これがせん断速度値に対する関数形態であることを意味し、
ηoは、せん断速度値が0である場合の粘度値、つまり、ゼロせん断粘度(zero-
shear viscosity)値であり、
λは、緩和時間(relaxation time)値であり、
nは、求めようとするせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を意味する。
【0154】
前記緩和時間(λ)値は、物質のせん断流動で流動物性により変わることがある値である。
【0155】
つまり、Crossモデルを用いる場合、せん断速度値に応じた定常流粘度値を測定した後、上記式2で表される関数に代入する方法によって、上記式での緩和時間値およびせん断薄化指数値を導出することができ、そのうち、せん断薄化指数値を射出圧力の予測に利用することになる。
【0156】
また他の一例として、粘性流体の非ニュートン挙動を説明する1つのモデルである、Carreauモデルは、下記式3で表される。
【0157】
【0158】
上記式3中、
γは、定常流粘度値の測定時のせん断速度値であり、
η(γ)は、定常流粘度値であって、これがせん断速度値に対する関数形態であることを意味し、
ηoは、せん断速度値が0である場合の粘度値、つまり、ゼロせん断粘度(zero-
shear viscosity)値であり、
λは、緩和時間(relaxation time)値であり、
nは、求めようとするせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を意味する。
【0159】
つまり、Carreauモデルを用いる場合、せん断速度値に応じた定常流粘度値を測定した後、上記式3で表される関数に代入する方法によって、上記式での緩和時間値およびせん断薄化指数値を導出することができ、そのうち、せん断薄化指数値を射出圧力の予測に利用することになる。
【0160】
そして、粘性流体の非ニュートン挙動を説明する1つのモデルである、Carreau-Yasudaモデルは、下記式4で表される。
【0161】
【0162】
上記式3中、
γは、定常流粘度値の測定時のせん断速度値であり、
η(γ)は、定常流粘度値であって、これがせん断速度値に対する関数形態であることを意味し、
ηoは、せん断速度値が0である場合の粘度値、つまり、ゼロせん断粘度(zero-
shear viscosity)値であり、
λは、緩和時間(relaxation time)値であり、
aは、物質定数(material constants)であり、
nは、求めようとするせん断薄化指数(Shear Thinning Index)値を意味する。
【0163】
つまり、Carreau-Yasudaモデルを用いる場合、せん断速度値に応じた定常流粘度値を測定した後、上記式4で表される関数に代入する方法によって、上記式での緩和時間値およびせん断薄化指数値を導出することができ、そのうち、せん断薄化指数値を射出圧力の予測に利用することになる。
【0164】
上記式1~4でそれぞれ表されたモデル式は、プラスチック樹脂の流動特性およびせん断薄化挙動特性により適切に選択することができ、特に、測定対象のプラスチック樹脂がポリエチレンの場合、Carreauモデルを用いることが射出圧力の正確な予測のために望ましい。
【0165】
そして、前記粘度モデル式から導出されたせん断薄化指数および流動指数により射出圧力を予測する段階は、下記数式1を利用して行うことができる。
【0166】
【0167】
上記数式1中、
MI2.16は、ASTM D1238のE項目によって測定される、溶融指数値であり、
STIは、粘度モデル式により導出された、せん断薄化指数値であり、
aは、約2,200~約2,500の値を有することができ、
bは、約-0.1~約-0.5の値を有することができ、
cは、約0.1~約0.5の値を有することができる。
【0168】
つまり、溶融指数値とせん断薄化指数値を前記数式1に代入し、対象となるプラスチック樹脂の流動特性およびせん断薄化特性に応じて、a、bおよびcの値を導入した後、単純な計算式により、射出圧力を予測することができる。
【0169】
より具体的には、一部のプラスチック試片に対する実際の射出圧力値を測定し、上述したMI値およびSTI値を測定した後、これを上記数式1で表される関数に代入してa、bおよびcの値を導出する段階により数式1の定数値を求め、これをリファレンス化して使用することができる。特に、上述した数式1の場合、関数の両辺にlogを取ると連立3元1次方程式の形態を有することになるので、射出圧力を予測しようとするプラスチック樹脂試片を最小3個のみを取り、測定および計算しても正確な係数値を導出することができ、これを用いて各種プラスチック樹脂に対するa、bおよびcをリファレンス化することができる。
【0170】
ポリエチレン樹脂の場合、前記数式1中、aは、約2,200~約2,500、好ましくは約2,250~約2,350の値を有することができ、bは、約-0.1~約-0.5、好ましくは約-0.2~約-0.3、または、約-0.2~約-0.25の値を有することができ、cは、約0.1~約0.5、好ましくは約0.35~約0.45、または約0.4~約0.45の値を有することができる。
【0171】
しかし、本発明は、このようなa、bおよびcの範囲に必ずしも限定されるものではなく、各係数は、測定対象となるプラスチック樹脂の流動特性に応じて異にして定めることができる。
【0172】
上記のような本発明の射出物性評価方法は、射出成形品の形態で製造される多様なプラスチック高分子樹脂に対して適用が可能である。
【0173】
一例として、上述した溶融流れ指数(MI)値が約0.1~約1.5g/10分、好ましくは約0.2~約1.1g/10分である、プラスチック樹脂を対象とすることができる。
【0174】
本発明の他の一実施形態によれば、上述したせん断薄化指数値が約0.1~約0.5、好ましくは約0.2~約0.45であるプラスチック樹脂を対象とすることができる。
【0175】
そして、前記予測された射出圧力値が約1,000~約2,000Pa、好ましくは約1,300~約2,000Pa、または約1,350~約1,850Paであるプラスチック樹脂を対象とすることができ、上記の射出圧力は、約235℃、約50mm/sの射出速度の場合の射出圧力である。
【0176】
そして、ASTM1505によって測定された、前記プラスチック樹脂の密度値が約0.94~約0.96g/cm3、好ましくは約0.950~約0.955g/cm3であるプラスチック樹脂を対象とすることができる。
【0177】
そして、数平均分子量値が約30,000g/mol以下、好ましくは約10,000~約20,000g/mol、または約12,000~約18,500g/molであるプラスチック樹脂を対象とすることができる。
【0178】
そして、具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メト)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS系樹脂、ウレタンエポキシ系樹脂、ウレタンアクリル系樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、およびポリエステル系樹脂など、射出成形工程により製品に加工される多様なプラスチック樹脂をその対象とすることができるが、熱可塑性プラスチック樹脂を対象とする場合、より正確な評価結果を示すことができ、その中でも、ポリエチレンおよびポリプロピレン樹脂など、ポリオレフィン系樹脂をその対象とすることが好ましく、そのうちポリエチレン樹脂をその対象とすることが最も好ましい。
【0179】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【0180】
<メタロセン化合物および担持触媒の製造実施例>
合成例1:第1メタロセン化合物の合成
1-1:リガンド化合物の製造
乾燥した250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に2.331g(10mmol)のIndenoindoleを入れて、アルゴン下で40mLのエーテルを注入した。エーテル溶液を0℃まで冷却した後、4.8mL(12mmol)の2.5M nBuLi hexane solutionをゆっくり滴下した。反応混合物はゆっくり常温に上げた後、翌日まで攪拌した。他の250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)にエーテル20mLを満たした後、3.6mL(30mmol)のdichloromethyl(tertbutoxyhexyl)silaneを注入した。このフラスコを-78℃まで冷却した後、そこにIndenoindoleのlithiated solutionをcannulaを通して注入した。注入が終わった混合物は常温にゆっくり上げた後、約5時間攪拌した後、一日間攪拌後、フラスコ内に50mlの水を入れてクエンチングし、有機層を分離してMgSO4で乾燥した
。減圧下で溶媒として使用されたエーテルを除去した。これをNMRで確認して、約95%以上の純度の10-((6-(tert-butoxy)hexyl)chloro(methyl)silyl)-5,8-dimethyl-5,10-dihydroindeno[1,2-b]indoleを得た。
【0181】
Indenoindole partの合成が確認された後、乾燥した100mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に1.7g(10mmol)の((1H-inden-3-yl)methyl)trimethylsilaneを注入し、40mLのエーテルに溶解させた。以降、-78℃で4.8ml(12mmol)の2.5M nBuLi hexane solutionをゆっくり滴下し、一日間攪拌した。先に合成した10-((6-(tert-butoxy)hexyl)chloro(methyl)silyl)-5,8-dimethyl-5,10-dihydroindeno[1,2-b]indoleを40mLのエーテルに溶かした後、-78℃で((1H-inden-3-yl)methyl)trimethylsilaneのlithiated solutionを滴下した。約20時間後、フラスコ内に50mLの水を入れてクェンチングし、有機層を分離してMgSO4で乾燥した。Filtrati
onにより得られた混合物は、真空減圧条件で溶媒を蒸発させた。その結果、6.5g(10.2mmol、100%)の10-((6-(tert-butoxy)hexyl)(methyl)(3-((trimethylsilyl)methyl)-1H-inden-1-yl)silyl)-5,8-dimethyl-5,10-dihydroindeno[1,2-b]indoの黄色oilを得た。
【0182】
Mw:634.05、Purity(wt%)=100%
【0183】
1H NMR(500MHz、CDCl3):-0.40、-0.37(3H、d)、0.017(9H、m)、1.10(4H、m)、1.18(9H、s)、1.34(6H、m)、2.41(3H、m)、3.25(2H、m)、3.25(1H、m)、3.53(1H、m)、4.09(3H、s)、5.62、5.82、5.95、5.95、6.11(1H、s)、7.04~7.32(9H、m)、7.54(1H、m)、7.75(1H、m)。
【0184】
1-2:メタロセン化合物の製造
オーブンに乾燥した250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)にリガンドを入れてエーテルに溶かした後、2.1当量のnBuLi solutionを加えて翌日までlithiationをさせた。グローブボックス内で1当量のZrCl4(THF)2を取って250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に入れて、エーテルまたはトルエンを入れたsuspensionを準備した。前記2つのフラスコとも-78℃まで冷却させた後、ligand anionをゆっくりZr
suspensionに加えた。注入が終わった後、反応混合物はゆっくり常温まで上げた。この過程でメタレーションが成功的に進行している場合、触媒前駆体特有の色である赤紫色が現れることが確認された。これを一日間攪拌した後、混合物内のトルエンまたはエーテルを約1/5volumeまで真空減圧により除去し残っている溶媒の5倍程度のvolumeのヘキサンを加えた。この時、ヘキサンを加える理由は、合成された触媒前駆体がヘキサンに対する溶解度が低下するので、結晶化を促進させるためである。このhexaneスラリーをアルゴン下でフィルターしろ過後、フィルターされた固体とろ過液を全て真空減圧下で蒸発させた。前記で残ったfilter cakeをグローブボックス内で計量しサンプリングして、合成の有無と収率、純度を確認した。メタレーションの溶媒としてはエーテルを使用し、6.4g(10mmol)のリガンドから6.08g(76.5%)の赤紫色固体が得られた。
【0185】
NMR基準purity(wt%)=100%、Mw=794.17
【0186】
1H NMR(500MHz、CDCl3):-0.23、-0.16(9H、d)、0.81(3H、m)、1.17(9H、m)、1.20~1.24(3H、m)、1.31(2H、s)、1.62~1.74(5H、m)、1.99~2.11(2H、m)、2.55(3H、d)、3.33(2H、m)、3.95、4.13(3H、s)、5.17、5.21、5.32(1H、s)、6.89~7.07(3H、m)、7.12~7.21(3H、m)、7.29(1H、m)、7.36(1H、m)、7.44(1H、m)、7.84(1H、m)。
【0187】
合成例2:第2メタロセン化合物の合成
2-1:リガンド化合物の製造
乾燥した250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に10.8g(100mmol)のchlorobutanolを入れた後、10gのmolecular sieveと100mLのMTBEを加えた後、20gの硫酸を30分にかけてゆっくり加えた。反応混合物は時間とともにゆっくりピンク色に変わり、16時間後に氷で冷たく冷やした飽和sodium bicarbonate溶液に注いだ。該混合物にether(100mLx4)を加えて数回抽出し、集められた有機層はMgSO4で乾
燥しろ過した後、真空減圧下で溶媒を除去して、黄色の液体形態の1-(tert butoxy)-4-chlorobutane 10g(60%収率)を得た。
【0188】
1H NMR(500MHz、CDCl3):1.16(9H、s)、1.67~1.76(2H、m)、1.86~1.90(2H、m)、1.94(1H、m)、3.36(
2H、m)、3.44(1H、m)、3.57(3H、m)。
【0189】
乾燥した250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に4.5g(25mmol)の前記合成した1-(tert butoxy)-4-chlorobutaneを入れて、40mLのTHFに溶かした。そこに20mLのsodium cyclopentadienylide THF溶液をゆっくり加えた後、一日間攪拌した。この反応混合物に50mLの水を加えてクェンチング(quenching)させ、etherで抽出(50mLx3)した後、集められた有機層をbrineで十分に洗浄した。MgSO4で残った水分を乾燥しろ過した後、真空減圧下で溶媒を除去することに
よって、暗褐色の粘性がある形態の生成物である2-(4-(tert-butoxy)butyl)cyclopenta-1,3-dieneを定量収率で得た。
【0190】
1H NMR(500MHz、CDCl3):1.16(9H、s)、1.54~1.60(4H、m)、1.65(1H、m)、1.82(1H、m)、2.37~2.42(2H、m)、2.87、2.92(2H、s)、3.36(2H、m)、5.99(0.5H、s)、6.17(0.5H、s)、6.25(0.5H、s)、6.34(0.5H、s)、6.42(1H、s)。
【0191】
2-2:メタロセン化合物の製造
乾燥した250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に1-1で合成したリガンド化合物4.3g(23mmol)を入れて、60mLのTHFに溶かした。そこに11mLのn-BuLi 2.0M hexane solution(28mmol)を加えて一日間攪拌させた後、該溶液をZrCl4(THF)2 3.83g(10.3mmol)を50mLのetherに分散させたフラスコに-78℃でゆっくり加えた。
【0192】
該反応混合物は常温まで上げると、薄褐色のサスペンションから濁った黄色のサスペンション形態に変わった。一日間攪拌した後、反応混合物の溶媒を全て乾燥させ、200mLのヘキサンを入れてsonicationをして沈めた後、上層に浮かんだヘキサン溶液をcannulaでdecantationして集めた。この過程を2回繰り返して得られたヘキサン溶液を真空減圧下で乾燥して、薄黄色の固体形態の化合物であるbis(3-(4-(tert-butoxy)butyl-2,4-dien-yl)zirconium(IV)chlorideが生成されたことを確認した。
【0193】
1H NMR(500MHz、CDCl3):0.84(6H、m)、1.14(18H、s)、1.55~1.61(8H、m)、2.61(4H、m)、3.38(4H、m)、6.22(3H、s)、6.28(3H、s)。
【0194】
製造例1:担持触媒の製造
300mLのガラス反応器にトルエン溶液50mLを入れて乾燥したシリカ(Grace Davison社製、SP2410)10gを投入した後、反応器の温度を40℃に上げながら攪拌した。10重量%メチルアルミノキサン(MAO)/トルエン溶液を60mL投入し、60℃に温度を上げた後、200rpmで12時間攪拌した。反応器の温度を40℃に下げた後、攪拌を中止し10分間settlingした後、反応溶液をデカンテーション(decantation)した。再びトルエン100mLを投入し10分間攪拌した後、攪拌を中止し10分間settlingした後、トルエン溶液をデカンテーションした。
【0195】
反応器にトルエン50mLを投入し、高分子量触媒前駆体として前記合成例1のメタロセン化合物0.50gとトルエン10mLを反応器に投入し、200rpmで60分間攪
拌した。そこに低分子量触媒前駆体として前記合成例2のメタロセン化合物0.5gとトルエン10mLを反応器に投入し、200rpmで12時間攪拌した。
【0196】
以降、攪拌を中止し10分間settlingした後、反応溶液をデカンテーションした。反応器にヘキサン100mLを投入しヘキサンスラリーを250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に移送してヘキサン溶液をデカンテーションし、常温で3時間減圧乾燥して、混成担持メタロセン触媒を製造した。
【0197】
(エチレン/アルファ-オレフィン共重合体の製造)
(実施例1)
前記製造例1で製造した担持触媒50mgをドライボックスで定量して50mLのガラス瓶にそれぞれ入れた後、ゴム隔膜で密封してドライボックスから取り出して注入する触媒を準備した。重合は、機械式撹拌機付きの温度調節が可能で高圧で用いられる2L金属合金反応器で行った。
【0198】
前記反応器に1.0mmolトリエチルアルミニウム(triethylaluminium)が入っているヘキサン1Lと1-ブテン1mLを注入し、前記準備した担持触媒を反応器に空気接触なしに投入した後、80℃で水素気体存在下で気体エチレン単量体を9Kgf/cm2の圧力で加え続けて1時間重合した。このとき、水素投入量は、0.7
45gであった(0.745g/h)。
【0199】
重合の終結は、まず、攪拌を止めた後、エチレンを排気させて除去することによって完了させた。前記得られた重合体から重合溶媒をろ過させて大部分除去した後、80℃の真空オーブンで4時間乾燥させた。
【0200】
(実施例2~15)
表1に示すように、水素の投入量を異にしたまま、前記実施例1と同様に重合反応を進行した。
【0201】
(プラスチック樹脂試片の準備)
各実施例のポリエチレン樹脂を40℃の真空オーブンで一晩乾燥し、ツインスクリュー押出機(twin screw extruder、BA-19、BAUTECH社製)を用いてペレット形態に製造した。
【0202】
圧縮して得られたペレット形態の樹脂を再び40℃の真空オーブンで一晩乾燥した後に試片製造機(Xplore 5.cc micro injection molding machine)を用いて、各物性測定条件に合う形態で試片を製作した。
【0203】
(プラスチック樹脂試片の物性測定)
準備された試片の基本物性は次の通りである。
(密度は、ASTM 1505によって測定し、使用されたすべてのポリエチレン樹脂の密度値は0.950~0.953g/cm3であった。)
【0204】
1)数平均分子量および低分子含有量の測定
GPC-FTIRによって数平均分子量および分子量分布を同時に連続的に測定して、分子量(Molecular weight、Mw)のログ値(log Mw)をx軸にして、前記ログ値に対する分子量分布(dwt/dlog Mw)をy軸にして分子量が3500g/molである分子の含有量を%分率で計算した。
【0205】
2)溶融指数(MI):
190℃、2.16kg荷重下で、ASTM1238により測定した。
【0206】
3)実際の射出圧力測定
前記準備したポリエチレンペレットを、射出機(モデル名:Victory1500、ENGEL社製)に投入し、240℃、保圧650bar、射出速度78mm/s条件で、実際の射出圧力を測定した。
【0207】
前記測定値を下記表1に示す。
【0208】
【0209】
4)定常流粘度値:
190℃、0.5% Strain、0.05~500rad/sの領域で、せん断速度を変化させながら、せん断速度変化に応じた定常流粘度値の関数の形態で、定常流粘度値を測定した。
【0210】
5)せん断薄化指数の導出
前記4)の項目でせん断速度vs定常流粘度の関数の形態で測定された、せん断速度および定常流粘度値を、下記Carreauモデル式に代入して、せん断薄化指数値を導出した。
【0211】
より具体的には、i)測定条件のせん断速度値に対するCarreauモデル関数値が、ii)実際測定された定常流粘度値に収束するように、iii)下記式中のn項の値を決定し、これをせん断薄化指数値として導出した。
η(γ)=ηo/[[1+(λγ)2](1-n)/2]
【0212】
6)予測射出圧力の導出
前記溶融指数値およびせん断薄化指数値を下記式に代入して、射出圧力を予測した。
予測射出圧力=a(MI2.16)b*(STI)c
上記式中、a、b、およびcの値は、ポリエチレンに対応する値で、それぞれ2290.47147、-0.22201、0.42278を使用した。
【0213】
前記測定値を下記表2に示す。
【0214】
【0215】
上記表1を参照すると、本発明の一例により射出適したものと判断された実施例は、実際射出工程で適用される射出圧力が全て1,600Pa未満に示し、数平均分子量値および低分子含有量のうちのいずれか1つの条件でも満たさない場合、実際の測定射出圧力が全て1,600Paを超えることが確認された。
【0216】
これは、ポリエチレン樹脂の実際の射出適合性が、上述した数平均分子量値および3500g/mol以下の分子量値を有する低分子の含有量に直接的な関連があることを明確に説明せしめたと言える。
【0217】
上記表2を参照すると、本発明の一例により予測した射出圧力は、実際適用される射出圧力と非常に類似した値を有することが明確にわかる。
【0218】
特に、実際射出圧力と予測射出圧力値を比較して検証してみると、R2値が0.975
に至る、非常に高い相関関係があることが確認できるが、これは、プラスチック樹脂の実際の射出圧力が、上述した溶融指数値およびせん断薄化指数値に直接的な関連があることを明確に説明せしめたと言える。プラスチック樹脂の実際の射出圧力が、上述した溶融指数(Melt Index、MI)値と定常流粘度(steady flow viscosity)値に直接的な関連がない場合には、上述した数式1中、a、bおよびcなどの係数値をどのように調節しても、予測された射出圧力値が実際の射出圧力値に収束でき
ないためである。
【0219】
しかし、プラスチック樹脂の実際の射出圧力は、数式1により予測された射出圧力値と1次相関関係があることが明確に検証されたため、これは、本発明で提示したように、プラスチック樹脂の射出圧力が数式1で使ったa、bおよびcなどの定められた係数値と関係なく、各プラスチック樹脂のせん断薄化特性と関連した物性である溶融指数値およびせん断薄化指数値と直接的な相関関係があることを明確に裏付ける結果と言える。