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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/20 20060101AFI20221018BHJP
   C08F 4/54 20060101ALI20221018BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C08C19/20
C08F4/54
C08F36/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021530197
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 KR2019018259
(87)【国際公開番号】W WO2020130741
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167688
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チェ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ぺ、ヒョ-チン
(72)【発明者】
【氏名】アン、チョン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ソク-ヨン
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2004-0013253(KR,A)
【文献】特表2015-524018(JP,A)
【文献】特開2013-224391(JP,A)
【文献】特開2009-144154(JP,A)
【文献】特開2001-261683(JP,A)
【文献】特開平08-208751(JP,A)
【文献】特表2018-505943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00-19/44
C08F 4/54、4/606、6/00-246/00、301/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類金属触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合し、重合停止剤により重合を停止して活性重合体を製造する段階(段階1)と、
下記化学式1で表される化合物を含む添加剤及び塩化硫黄を添加して変性させる段階(段階2)と、を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化7】

前記化学式1において、
Rxは、炭素数1から30の脂肪族炭化水素基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であり,
Ryは、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数1から30の脂肪族炭化水素基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であり,
nは、1から20の整数である。
【請求項2】
前記化学式1において、
Rxは、炭素数1から30のアルキル基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であり、
Ryは、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数1から30のアルキル基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であり、
nは、1から10の整数のものである、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記添加剤は、前記化学式1で表される化合物を2つ以上含む混合物である、請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記段階2)で前記添加剤は、共役ジエン系単量体100重量部基準で0.01から0.5重量部添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記段階2)で前記塩化硫黄及び前記添加剤は、1:0.1から1:2の重量比で添加される、請求項1~4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記希土類金属触媒組成物は、希土類金属化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤及びハロゲン化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記希土類金属化合物は、下記化学式2のネオジム化合物を含む、請求項6に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化8】

前記化学式2において、
1からR3は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は炭素数1から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【請求項8】
前記化学式2において、
1が炭素数6から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、
2及びR3が、それぞれ独立して水素原子であるか、又は炭素数2から8の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、但し、R2及びR3が同時に水素ではない、請求項7に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記希土類金属触媒組成物は、共役ジエン系単量体をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記第1アルキル化剤は、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン及び2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンからなる群から選択された一つ以上を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド及びベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドからなる群から選択された一つ以上を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記段階2)以後、酸化防止剤及び脂肪酸エステルを添加する段階をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記脂肪酸エステルは、変性共役ジエン系単量体100重量部基準で0.01から1.0重量部添加される、請求項12に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月21日付韓国特許出願第10-2018-0167688号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた物性を有しつつ、ムーニー粘度の上昇及び分枝度の制御が容易な変性共役ジエン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー節約及び環境問題に対する関心が高くなるにつれ、自動車の低燃費化が要求されている。これを実現するための方法の一つとして、タイヤ形成用ゴム組成物内のシリカ又はカーボンブラック等の無機充填剤を用いてタイヤの発熱性を下げる方法が提案されたが、ゴム組成物内の前記無機充填剤の分散が容易ではないため、却って耐磨耗性、耐クラック性又は加工性等をはじめとするゴム組成物の物性が全体的に低下する問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、ゴム組成物内のシリカ又はカーボンブラック等の無機充填剤の分散性を高めるための方法として、有機リチウムを用いた陰イオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性部位を、無機充填剤と相互作用可能な官能基に変性する方法が開発された。具体的には、共役ジエン系重合体の重合活性末端をスズ系化合物に変性するか、アミノ基を導入する方法又はアルコキシシラン誘導体に変性する方法等が提案された。
【0005】
しかし、前述した方法で変性された共役ジエン系重合体を用いてゴム組成物の製造時、低発熱性は確保できるものの耐磨耗性、加工性等のゴム組成物に対する物性改善効果は十分ではなかった。
【0006】
また他の方法として、ランタン系列の希土類元素化合物を含む触媒を用いた配位重合によって得られるリビング重合体において、リビング活性末端を特定のカップリング剤や変性剤によって変性し、加工性,物性を改善する方法が開発された。
【0007】
一例として、米国特許第5,557,784号に開示された方法で、当該文献ではネオジムカルボキシル基塩化合物、アルキルアルミニウム化合物、ハロゲンを含有する化合物の組み合わせでなる触媒を用いて非極性溶媒下で1,4-シスポリブタジエンを製造した後、反応停止剤と酸化防止剤で反応を停止してから塩化硫黄を添加し、分枝構造を導入する方法を開示している。
【0008】
このように変性剤として塩化硫黄を添加する場合、分枝構造を導入できるため、重合体の線形性を減少させてムーニー粘度を増加させることが可能であった。
【0009】
しかし、従来の技術のように塩化硫黄等を変性剤として適用し重合体の分枝度を調節する場合、ランタン系列の希土類元素化合物を含む触媒システム内のアルミニウム成分等によって変性剤の反応速度が速くなる等、触媒システムによって変性反応速度が影響を受けるため、全体的な変性反応速度を調節し難い。これによって、最終製造される変性共役ジエン系重合体の分枝度、ムーニー粘度増加率等の調節が難しいため、安定的な変性工程を行うことができない問題がある。
【0010】
したがって、最終に製造された変性共役ジエン系重合体の物性、加工性を優れた水準に改善しつつ、変性条件によって重合体の物性変化の程度が一定であるため変性再現性に優れ、変性条件の調節を介して物性変化制御が容易な変性共役ジエン系重合体の製造方法に対する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,557,784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであり、変性段階で塩化硫黄とともに特定構造の化合物を添加することで、変性再現性に優れた変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、分子量分布が狭い共役ジエン系重合体を製造することで、優れた物性を有し得、変性前後のムーニー粘度が安定的な増加を示し、引張強度及び粘弾性特性のような配合物性に優れるとともに、加工性が大きく改善された変性共役ジエン系重合体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は、希土類金属触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造する段階(段階1)と、下記化学式1で表される化合物を含む添加剤及び塩化硫黄を添加して変性させる段階(段階2)と、を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0015】
【化1】
【0016】
前記化学式1において、
Rxは、炭素数1から30の脂肪族炭化水素基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であってよく、
Ryは、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数1から30の脂肪族炭化水素基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であってよく、
nは、1から20の整数であってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体の製造方法は、変性段階で塩化硫黄とともに特定構造の化合物を添加することで、変性再現性を大きく改善できるため安定的な工程を行うことができ、変性条件による変性共役ジエン系重合体の物性、特に、ムーニー粘度増加率及び分枝度変化程度を予測でき、変性条件を調節することでムーニー粘度増加率、分枝度変化程度を容易に制御できる。
【0018】
また、本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体の製造方法は、変性による重合体の物性変化を容易に調節し、引張強度及び粘弾性のような配合物性を優れた水準に確保しつつ、加工性が大きく改善された変性共役ジエン系重合体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に対する理解を深めるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0020】
本発明の説明及び特許請求の範囲において用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法によって説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0021】
[用語]
本明細書で用いられる用語『予備重合(preforming)』とは、共役ジエン重合用触媒組成物内での前(pre)重合を意味する。具体的には、希土類金属化合物、アルミニウム化合物を含むアルキル化剤、及びハロゲン化合物を含む共役ジエン重合用触媒組成物が前記アルミニウム化合物としてジイソブチルアルミニウムヒドリド(以下、DIBAH(diisobutyl aluminum hydride)と称する)のようなアルミニウムヒドリド系化合物を含む場合、多様な触媒活性種の生成可能性を減らすために、ブタジエン等の単量体を少量で共に含む。これにより、共役ジエン系重合体製造のための重合反応に先立って、前記共役ジエン系重合体製造用触媒組成物内でブタジエンの前(pre)重合が行われるが、これを予備重合という。
【0022】
また、本明細書で用いられる用語『予備混合(premixing)』とは、触媒組成物内で重合が行われずに、各構成成分が均一に混合した状態を意味する。
【0023】
また、本明細書に用いられる用語『触媒組成物』は、構成成分の単純混合物、物理的又は化学的引力によってもたらされる多様な複合体又は構成成分の化学反応物を含むものである。
【0024】
また、本明細書で用いられる用語「脂肪族炭化水素基(Aliphatic hydrocarbonyl group)」は、ベンゼン環を含む芳香族炭化水素を除外した炭化水素を含む置換基を示すもので、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基を含み、直鎖状炭化水素基及び環状炭化水素基を含む。
【0025】
また、本明細書で用いられる用語『アルキル基(alkyl group)』は、一価の脂肪族飽和炭化水素を意味してよく、メチル、エチル、プロピル及びブチル等の直鎖状アルキル基及びイソプロピル(isopropyl)、sec- ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)及びネオペンチル(neo-pentyl)等の分枝状アルキル基を全て含んでよい。
【0026】
また、本明細書で用いられる用語『アルキルアリール基(alkylaryl group)』は、一価の芳香族炭化水素のうちアルキル基が置換された芳香族炭化水素置換基を意味してよい。
【0027】
また、本明細書で用いられる用語『アリールアルキル基(arylalkyl group)』は、前述したアルキル基に芳香族炭化水素基のアリール基が置換された置換基を意味してよい。
【0028】
[測定方法]
本発明で『-S/R(Stress/Relaxation)値』は、同一量の変性(strain)に対する反応で表れるストレス(stress)の変化を示すものであって、MV2000E(Monsanto社)を用い、100℃でRotor Speed2±0.02rpm、Large Rotorで、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(platen)を作動させてトルクを印加しつつムーニー粘度を測定し、トルクが緩みながら表れるムーニー粘度変化の傾き値を測定し、これの絶対値として示したものである。
【0029】
本発明において『ムーニー粘度(mooney viscosity、MV)』は、重合体の加工性を判断する一尺度であって、ムーニー粘度が適正線に低いと流れが良いため加工性に優れたものと判断され、単位は、MU(Mooney Unit)で表示され、100℃でML(1+4)値を求めたものであり、ここで、MはMooney、Lはプレートの大きさ、1はプレヒーティング(preheating)時間である1分を、4はローター(rotor)を作動してから4分後の値を読み取ったことを示すものである。
【0030】
具体的に、前記ムーニー粘度は、MV2000E(Monsanto社製)を用い、100℃でRotor Speed2±0.02rpm、Large Rotorで、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(platen)を作動させてトルクを印加しつつ測定した。
【0031】
本発明において『t-80(分)』は、ムーニー粘度測定直後(初期ムーニー粘度)から初期ムーニー粘度対比20%のムーニー粘度を有する時までの時間(分)を測定した値を示したものである。
【0032】
本発明において『分子量分布(PDI;MWD、Mw/Mn)』は、重合体の分子量分布の程度を示すものであり、重合体の重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算したものである。前記重量平均分子量及び数平均分子量は、重合体を40℃条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて測定し、このとき、カラムはポリマーラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)の商品名PLgel Olexisカラム二本とPLgel mixed-Cカラム一本を組み合わせて用い、新たに交替したカラムは、全て混床(mixed bed)タイプのカラムを用い、ゲル浸透クロマトグラフィー標準物質(GPC Standard material)としてはポリスチレン(Polystyrene)を用いた。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、希土類金属触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造する段階(段階1)と、下記化学式1で表される化合物を含む添加剤及び塩化硫黄を添加して変性させる段階(段階2)と、を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0034】
【化2】
【0035】
前記化学式1において、
Rxは、炭素数1から30の脂肪族炭化水素基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であってよく、
Ryは、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数1から30の脂肪族炭化水素基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であってよく、
nは、1から20の整数であってよい。
【0036】
具体的に、前記化学式1において、Rxは、炭素数1から30のアルキル基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であってよく、より具体的に、炭素数5から15のアルキル基又は炭素数10から20のアルキルアリール基であってよく、さらに具体的に、炭素数8から12のアルキル基又はノニルフェニル基であってよい。また、前記Ryは、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数1から30のアルキル基、炭素数7から30のアルキルアリール基又は炭素数7から30のアリールアルキル基であってよく、より具体的に、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数5から15のアルキル基又は炭素数10から20のアルキルアリール基であってよく、さらに具体的に、ヒドロキシ基(-OH)、炭素数8から12のアルキル基又はノニルフェニル基であってよい。また、前記nは、1から10の整数であってよく、さらに具体的に、1から5、1から3の整数又は1から2の整数であってよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態による前記化学式1で表される化合物は、ポリオキシエチレンリン酸エステル系化合物であってよく、一例としてポリオキシエチレンアルキル(アリール)リン酸エステル系化合物であってよい。
【0038】
また、本発明の一実施形態による前記化学式1で表される化合物を含む添加剤は、前記化学式1を満たす互いに異なる化合物が2種以上含まれた混合物であってよい。
【0039】
一例として、化学式1で表される化合物を含む添加剤は、化学式1のRxがノニルフェニル基又は炭素数8から12のアルキル基であり、Ryがヒドロキシ基、ノニルフェニル基又は炭素数8から12のアルキル基であり、nが1から2の整数である互いに異なる化合物を2種以上含む混合物であってよく、このとき、添加剤全体に含まれた炭素数8から12のアルキル基及びノニルフェニル基のモル比は、70:30から90:10であってよい。また、炭素数8から12のアルキル基は、より具体的に、炭素数12のアルキル基であってよい。商業的に利用可能な例示として、前記化学式1で表される化合物を含む添加剤は、HPSS-81(イルチル化学社)を含んでよい。
【0040】
本発明の一実施形態によって、変性段階で変性剤である塩化硫黄以外に化学式1で表される化合物を含む添加剤を添加することで、変性剤の変性反応性を調節でき、これによって急激な変性で表れ得るゲル化現象を防止でき、変性再現性を大きく改善させることができ。また、変性剤及び化学式1の化合物を含む添加剤の添加量等の変性条件を調節し、変性共役ジエン系重合体の物性、特に、ムーニー粘度増加率として示される分枝度変化率を容易に制御できる。具体的に、本発明による希土類金属触媒システムを適用すると、触媒組成物内のアルミニウム化合物によって変性剤である塩化硫黄の反応速度が急激に増加し、安定的な反応性を維持できない問題がある。安定的な反応性を維持できなければ、反応再現性を確保できない問題も発生し得るが、特に、変性剤による分枝構造導入程度を制御できないため、重合体内の分枝度が急激に高くなるか、急激な変性によるゲル化現象が頻繁に表れる問題が発生し得る。このとき、本発明の一実施形態によって前記化学式1で表される化合物を含む添加剤を変性剤と共に添加すれば、添加剤内の化学式1で表される化合物によって触媒組成物内のアルミニウム化合物は塩を形成するようになり、これで反応速度を制御でき、変性剤及び化学式1の化合物を含む添加剤の添加量等の条件を調節して反応速度の制御程度を調節できるため、変性反応性を容易に調節できる。このため、変性再現性を改善でき、さらに重合体内にゲルが形成されることを防止できる。
【0041】
本発明の一実施形態による前記段階1)は、希土類金属触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造する段階であり、ここで活性重合体は、有機金属が結合された活性重合体を示すものであってよい。
【0042】
本発明の一実施形態による前記重合は、ラジカル重合によって行われてよく、バルク重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合等の多様な重合方法で行われてよく、また、バッチ(batch)法、連続法、又は反連続法で行われてもよい。具体的な例として、前記共役ジエン系重合体製造のための重合は、有機溶媒中で前記触媒組成物に対し、共役ジエン系単量体を投入して反応させることで行われてよい。
【0043】
具体的に、溶液重合によって製造する場合、本発明の一実施形態による共役ジエン重合体は、重合溶媒中で前記の触媒組成物に対し、共役ジエン系単量体を投入して反応させることで行われてよい。
【0044】
前記共役ジエン系単量体としては、通常共役ジエン系重合体の製造に用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。前記共役ジエン系単量体は、具体的に、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、又は2,4-ヘキサジエン等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。より具体的に、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエンであってよい。
【0045】
また、前記重合反応時に最終製造される共役ジエン系重合体の物性的特性を考慮し、前記共役ジエン系単量体と共重合可能なそれ以外の単量体をさらに用いてもよく、前記それ以外の単量体は、具体的に、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等のような芳香族ビニル単量体等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。前記それ以外の単量体は、重合反応に用いられる単量体の全重量に対して、20重量%以下の含量で用いられてよい。
【0046】
このとき、前記共役ジエン系単量体は、ジエン系重合体製造のために用いられる量が全体で非極性溶媒に溶解されて用いられるものではなく、全体使用量の一部が重合溶媒に溶解され重合された後、重合転換率によって1回以上、具体的には2回以上、より具体的には2回から4回分割投入されてよい。
【0047】
また、前記重合時に含まれ得る溶媒は、炭化水素系溶媒であってよく、前記炭化水素系溶媒は、非極性溶媒であってよい。具体的に、前記炭化水素系溶媒は、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等のような脂肪族炭化水素系溶媒と、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のようなシクロ脂肪族炭化水素系溶媒と、又はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等のような芳香族炭化水素系溶媒等からなる群から選択された1種以上を用いてよい。具体的な例として、前記炭化水素系溶媒は、ヘキサン等のような脂肪族炭化水素系溶媒であってよい。前記重合溶媒の使用時、単量体の濃度は特に限定されないが、3重量%から80重量%、より具体的には、10重量%から30重量%であってよい。
【0048】
また、前記重合時、トリメチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド又はトリメチルシラン等のような分子量調節剤;ポリオキシエチレングリコールホスフェート等のような重合反応を完了させるための反応停止剤;又は2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール等のような酸化防止剤等の添加剤がさらに用いられてよい。それ以外にも、通常溶液重合を容易にする添加剤、具体的には、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤又は酸素捕捉剤(oxygen scavenger)のような添加剤が選択的にさらに用いられてよい。
【0049】
また、前記重合反応は、0℃から100℃、より具体的には、20℃から100℃の温度で行われてよい。
【0050】
また、前記重合反応は、共役ジエン系重合体の転換率100%に至るまで前記の温度範囲内で5分から1時間行われてよく、具体的に、15分から1時間行われてよい。
【0051】
本発明の一実施形態による希土類金属触媒組成物は、(a)希土類金属化合物、(b)第1アルキル化剤(c)第2アルキル化剤及び(d)ハロゲン化合物を含んでよく、ここで、共役ジエン系単量体をさらに含むものであってよい。
【0052】
具体的に、前記希土類金属化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化合物及び共役ジエン系単量体は、1:(1から200):(1から80):(1から5):(0から100)のモル比を有するものであってよい。より具体的には、前記希土類金属化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化合物及び共役ジエン系単量体は、1:(1から150):(1から50):(2から4):(5から30)のモル比を有するものであってよい。
【0053】
具体的に、前記触媒組成物は、炭化水素系溶媒中に希土類金属化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化合物、そして選択的に共役ジエン系単量体を順次投入して混合することで製造されてよい。
【0054】
このとき、触媒活性種の生成を促進するために、前記混合工程が-20℃から30℃、具体的には、-10℃から10℃の温度範囲で行われてよく、このとき、前記の温度条件を満たすようにするために熱処理が併行されてもよい。
【0055】
より具体的には、前記触媒組成物は、希土類金属化合物、第1及び第2アルキル化剤、溶媒の混合後-20℃から30℃の温度で第1熱処理し、結果として収得される混合物にハロゲン化合物を添加し、-20℃から30℃の温度範囲で第2熱処理して製造されてよい。
【0056】
前記のような製造方法によって製造される触媒組成物内には、構成成分の相互作用により触媒活性種が生成される。製造された触媒組成物は、低温条件で熟成する工程をさらに含んでよい。
【0057】
このとき、前記炭化水素系溶媒は、前記の触媒組成物の構成成分と反応性がない非極性溶媒であってよい。具体的に、前記炭化水素系溶媒は、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等のような脂肪族炭化水素系溶媒と、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のようなシクロ脂肪族炭化水素系溶媒と、又はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等のような芳香族炭化水素系溶媒等からなる群から選択された1種以上を用いてよい。具体的な例として、前記炭化水素系溶媒は、ヘキサン等のような脂肪族炭化水素系溶媒であってよい。
【0058】
また、本重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の一部を前記触媒組成物と予備混合(premix)して予備重合(preforming)触媒組成物の形態で用いることで、触媒活性を向上させ、さらに製造された共役ジエン系重合体を安定化するという効果がある。
【0059】
具体的に、前記共役ジエン系単量体としては、通常共役ジエン系重合体の製造に用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。具体的に、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、又は2,4-ヘキサジエン等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0060】
本発明の一実施形態による触媒組成物は、以下で各成分別に詳しく説明する。
【0061】
(a)希土類金属化合物
本発明の一実施形態による前記希土類金属化合物は、第1及び第2アルキル化剤によって活性化された後、共役ジエンの重合のための触媒活性種を形成する。
【0062】
このような希土類金属化合物としては、通常共役ジエン系重合体の製造時に用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。具体的に、前記希土類金属化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、ガドリニウム又はプラセオジム等のような原子番号57から71の希土類金属のうち何れか一つ、又は、二つ以上の化合物であってよく、より具体的には、ネオジム、ランタン及びガドリニウムでなる群から選択される何れか一つ、又は、二つ以上を含む化合物であってよい。
【0063】
また、前記希土類金属化合物は、前記の希土類金属含有カルボン酸塩(例えば、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム乳酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート等)、有機リン酸塩(例えば、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、又はネオジムジデシルリン酸塩等)、有機ホスホン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩又はネオジムオクタデシルホスホン酸塩等)、有機ホスフィン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩又はネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩等)、カルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩又はネオジムジベンジルカルバミン酸塩等)、ジチオカルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩又はネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩等)、キサントゲン酸塩(例えば、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩又はネオジムベンジルキサントゲン酸塩等 、β-ジケトネート(例えば、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート又はネオジムベンゾイルアセトネート等)、アルコキシド又はアリールオキシド(例えば、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジムフェノキシド又はネオジムノニルフェノキシド等)、ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物(ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物、ネオジムヨウ化物、ネオジムシアン化物、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、又はネオジムアジド等)、オキシハライド(例えば、ネオジムオキシフルオライド、ネオジムオキシクロリド、又はネオジムオキシブロミド等)、又は1以上の希土類金属-炭素結合を含む有機希土類金属化合物(例えば、Cp3Ln、Cp2LnR’、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me52LnR’、Ln(R’)3、Ln(アリル)3、又はLn(アリル)2Cl等、前記式のうち、Lnは希土類金属元素であり、R’は炭素原子を介して金属原子に結合する一価の有機基であって、ヒドロカルビル基であってよい)等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物を含んでよい。
【0064】
より具体的に、前記希土類金属化合物は、下記化学式2のネオジム化合物であってよい。
【0065】
【化3】
【0066】
前記化学式2において、R1からR3は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は炭素数1から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0067】
より具体的に、前記希土類金属化合物は、前記化学式2において、R1が炭素数6から12の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は炭素数2から6の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、但し、R2及びR3が同時に水素原子ではないネオジム化合物であってよく、さらに具体的には、前記化学式2において、R1が炭素数6から8の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立して炭素数2から6の直鎖状又は分枝状のアルキル基であるネオジム化合物であってよい。
【0068】
このように、前記化学式2のネオジム化合物が、a位置に炭素数2以上の多様な長さのアルキル基を置換基で含むカルボキシレートリガンドを含む場合、ネオジム中心金属周りに立体的な変化を誘導し化合物間の凝集現象を遮断でき、その結果、オリゴマー化を抑制するため活性種への転換率が高い。このようなネオジム化合物は、重合溶媒に対する溶解度が高く、触媒活性種への転換に困難がある中心部分に位置するネオジムの比率が減少され、触媒活性種への転換率の高くなる効果がある。
【0069】
さらに具体的に、前記希土類金属化合物は、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3及びNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択された何れか一つ又は二つ以上の混合物であってよい。また、オリゴマー化に対する虞なく重合溶媒に対する優れた溶解度、触媒活性種への転換率、及び、これによる優れた触媒活性改善効果を考慮する際、前記ネオジム化合物は、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、及びNd(2,2-ジオクチルデカノエート)3からなる群から選択された何れか一つ又は二つ以上の混合物であってよい。
【0070】
また、前記希土類金属化合物は、溶解度が常温(23±5℃)で非極性溶媒6g当たり約4g以上のものであってよい。本発明において、ネオジム化合物の溶解度は、濁る現象なく清く溶解される程度を意味するものである。このように高い溶解度を示すことで、優れた触媒活性を示すことができる。
【0071】
前記希土類金属化合物は、一例として、重合に用いられる共役ジエン系単量体100g当たり0.01から0.5mmol、より具体的には、0.05から0.2mmolの含量で用いられてよく、この範囲内で触媒活性が高く、適正触媒濃度を有するため、別途の奪回工程を経なくても良い効果がある。
【0072】
前記希土類金属化合物は、一例として、ルイス塩基との反応物の形態で用いられてもよい。この反応物は、ルイス塩基によって、希土類金属化合物の溶媒に対する溶解性を向上させ、長期間安定した状態で保存できる効果がある。前記ルイス塩基は、一例として、希土類元素1モル当たり30モル以下、又は、1から10モルの比率で用いられてよい。前記ルイス塩基は、一例として、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物又は一価又は二価のアルコール等であってよい。
【0073】
(b)第1アルキル化剤
本発明の一実施形態による前記第1アルキル化剤は、アルミノキサンであってよく、前記アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム系化合物に水を反応させることで製造されたものであってよい。具体的に、前記アルミノキサンは、下記化学式3aの直鎖状アルミノキサン又は化学式3bの環状アルミノキサンであってよい。
【0074】
【化4】
【0075】
【化5】
【0076】
前記化学式3a及び3bにおいて、Rは、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基であって、ヒドロカルビル基であってよく、x及びyは、互いに独立して1以上の整数、具体的には1から100、より具体的には2から50の整数であってよい。
【0077】
さらに具体的には、前記アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン又は2,6-ジメチルフェニルアルミノキサン等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0078】
また、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基を修飾基(R)、具体的には、炭素数2から20の炭化水素基で置換したものであり、具体的には下記化学式4で表される化合物であってよい。
【0079】
【化6】
【0080】
前記化学式4において、Rは、先立って定義した通りであり、m及びnは、互いに独立して2以上の整数であってよい。また、前記化学式4において、Meは、メチル基(methyl group)を示すものである。
【0081】
具体的に、前記化学式4において、前記Rは、炭素数2から20のアルキル基、炭素数3から20のシクロアルキル基、炭素数2から20のアルケニル基、炭素数3から20のシクロアルケニル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアリールアルキル基、炭素数7から20のアルキルアリール基、アリール基又は炭素数2から20のアルキニル基であってよく、より具体的には、エチル基、イソブチル基、ヘキシル基又はオクチル基等のような炭素数2から10のアルキル基であり、さらに具体的には、イソブチル基であってよい。
【0082】
さらに具体的に、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基の約50モル%から90モル%を前記の炭化水素基で置換したものであってよい。変性メチルアルミノキサン内の置換された炭化水素基の含量が前記範囲内であるとき、アルキル化を促進させ触媒活性を増加させることができる。
【0083】
このような変性メチルアルミノキサンは、通常の方法によって製造されてよく、具体的には、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて製造されてよい。このとき、前記アルキルアルミニウムは、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム又はトリオクチルアルミニウム等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0084】
また、本発明の一実施形態によれば、製造される変性共役ジエン系重合体の分子量分布を狭く形成してよく、これによる重合体の物性改善側面で、好ましく、前記第1アルキル化剤は、メチルアルミノキサン又は変性メチルアルミノキサンであってよい。
【0085】
(c)第2アルキル化剤
本発明の一実施形態による前記第2アルキル化剤は、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであってよく、具体的に、前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド又はベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリド等のジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド及びn-オクチルアルミニウムジヒドリドからなる群から選択された1種以上のものであってよい。
【0086】
一方、本発明の一実施形態による前記触媒組成物において、アルキル化剤は、ヒドロカルビル基を他の金属に転移できる有機金属化合物であって、助触媒の役割をするものであってよい。
【0087】
また、本発明の一実施形態による前記触媒組成物は、必要に応じて前記の第1及び第2アルキル化剤以外に、通常共役ジエン系重合体の製造時にアルキル化剤として用いられる通常的なアルキル化剤をさらに含んでよく、このようなアルキル化剤としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、又はジベンジルマグネシウムのようなアルキルマグネシウム化合物等が挙げられ、また、前記有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウム等のようなアルキルリチウム化合物等が挙げられる。
【0088】
(d)ハロゲン化合物
本発明の一実施形態による前記共役ジエン重合用触媒組成物において、前記ハロゲン化合物は、その種類が特別に限定されないが、通常ジエン系重合体の製造時にハロゲン化合物として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。
【0089】
具体的に、前記ハロゲン化合物としては、ハロゲン単体(simple substance)、ハロゲン間化合物(interhalogen compound)、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド又は有機金属ハライド等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。この中でも、触媒活性向上及びこれによる優れた反応性改善効果を考慮する際、前記ハロゲン化合物としては、有機ハライド、金属ハライド及び有機金属ハライドからなる群から選択された何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0090】
より具体的に、前記ハロゲン単体としては、フッ素、塩素、ブロム又はヨードが挙げられる。
【0091】
また、前記ハロゲン間化合物としては、具体的に、ヨードモノクロリド、ヨードモノブロミド、ヨードトリクロリド、ヨードペンタフルオリド、ヨードモノフルオリド又はヨードトリフルオリド等が挙げられる。
【0092】
また、前記ハルロゲン化水素としては、具体的に、フッ化水素、塩化水素、臭化水素又はヨウ化水素等が挙げられる。
【0093】
また、前記有機ハルライドとしては、具体的に、t-ブチルクロリド(t-BuCl)、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(TMSCl)、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、メチルブロモホルメート、ヨードメタン、ジヨードメタン、トリヨードメタン(「ヨードホルム」とも呼ばれる)、テトラヨードメタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、t-ブチルヨージド、2,2-ジメチル-1-ヨードプロパン(「ネオペンチルヨージド」とも呼ばれる)、アリルヨージド、ヨードベンゼン、ベンジルヨージド、ジフェニルメチルヨージド、トリフェニルメチルヨージド、ベンジリデンヨージド(「ベンザルヨージド」とも呼ばれる)、トリメチルシリルヨージド、トリエチルシリルヨージド、トリフェニルシリルヨージド、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンゾイルヨージド、プロピオニルヨージド又はメチルヨードホルマート等が挙げられる。
【0094】
また、前記非金属ハライドとしては、具体的に、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素(SiCl4)、四臭化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、四ヨウ化ケイ素、三ヨウ化ヒ素、四ヨウ化テルル、三ヨウ化ホウ素、三ヨウ化リン、オキシヨウ化リン又は四ヨウ化セレン等が挙げられる。
【0095】
また、前記金属ハライドとしては、具体的に、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二フッ化亜鉛、三ヨウ化アルミニウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四ヨウ化チタン、二ヨウ化亜鉛、四ヨウ化ゲルマニウム、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、三ヨウ化アンチモン又は二ヨウ化マグネシウム等が挙げられる。
【0096】
また、前記有機金属ハライドとしては、具体的に、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジブロミド、トリ-n-ブチルスズクロリド、トリ-n-ブチルスズブロミド、メチルマグネシウムヨージド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジ-n-ブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、ジ-n-オクチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、n-ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムヨージド、トリメチルスズヨージド、トリエチルスズヨージド、トリ-n-ブチルスズヨージド、ジ-n-ブチルスズジヨージド又はジ-t-ブチルスズジヨージド等が挙げられる。
【0097】
また、本発明の一実施形態による共役ジエン重合体製造用触媒組成物は、前記ハロゲン化合物の代わりに又は前記ハロゲン化合物とともに、非配位性陰イオン含有化合物又は非配位性陰イオン前駆体化合物を含んでもよい。
【0098】
具体的に、前記非配位性陰イオンを含む化合物において、非配位性陰イオンは、立体障害によって触媒系の活性中心と配位結合を形成しない、立体的に体積が大きい陰イオンであって、テトラアリールボレート陰イオン又はフッ化テトラアリールボレート陰イオン等であってよい。また、前記非配位性陰イオンを含む化合物は、前記の非配位性陰イオンとともに、トリアリールカルボニウム陽イオンのようなカルボニウム陽イオン;N,N-ジアルキルアニリニウム陽イオン等のようなアンモニウム陽イオン、又はホスホニウム陽イオン等の相手陽イオンを含むものであってよい。より具体的に、前記非配位性陰イオンを含む化合物は、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、又はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等であってよい。
【0099】
また、前記非配位性陰イオン前駆体としては、反応条件下で非配位性陰イオンが形成可能な化合物であって、トリアリールホウ素化合物(BE3、このときRは、ペンタフルオロフェニル基又は3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等のような強い電子吸引性のアリール基である)を挙げられる。
【0100】
また、本発明の一実施形態によれば、前記重合反応以後、若しくは反応中に2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール等のような酸化防止剤等の添加剤がさらに用いられてよい。それ以外にも、通常溶液重合を容易にする添加剤、具体的には、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤又は酸素捕捉剤(oxygen scavenger)のような添加剤が選択的にさらに用いられてもよい。
【0101】
また、前記重合反応は、前記触媒組成物及び重合体を失活させないために、一例として、重合反応系内に酸素、水、炭酸ガス等の失活作用がある化合物の混入を防止するのが好ましい。
【0102】
前記のような重合反応の結果として、前記希土類金属化合物を含む触媒組成物から活性化された有機金属部位を含む活性重合体、より具体的には、1,3-ブタジエン単量体単位を含むネオジム触媒化共役ジエン系重合体が生成され、前記製造された共役ジエン系重合体は、擬リビング特性を有し得る。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、前記段階1)以後、重合を停止するために重合停止剤を添加してよく、重合停止剤は、共役ジエン系重合工程に用いられる重合停止剤であれば制限なく使用可能であり、具体的に、リン酸エステル系重合停止剤を用いてよく、より具体的に、前記の化学式1で表される化合物と同一の化合物を用いてよい。
【0104】
本発明において、前記段階1)以後に添加する重合停止剤は、共役ジエン系単量体100重量部基準に0.01から0.4重量部を添加するものであってよい。
【0105】
本発明の一実施形態による前記段階2)は、段階1)で重合された活性重合体を変性させる段階であり、塩化硫黄と前記の化学式1で表される化合物を添加して変性させる段階であってよい。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、前記段階2)は、段階1)以後に重合停止剤を添加して重合を停止した後、塩化硫黄及び前記化学式1で表される化合物を添加して行われるものであってよい。
【0107】
また、本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物において、置換基Ryが脂肪族炭化水素基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基である化合物を添加する場合には、Ryがヒドロキシ基である化学式1で表される化合物を共に添加するものであってよい。
【0108】
ここで、前記変性は、溶液反応又は固相反応によって行われてよく、具体的な例として、溶液反応によって行われてよい。また他の例として、前記変性反応は、バッチ(batch)式反応器を用いて行われてもよく、多段連続式反応器やインラインミキサー等の装置を用いて連続式で行われてもよい。
【0109】
また他の例として、前記変性反応は、通常重合反応と同一の温度及び圧力条件で行われてよく、具体的な例として、20から100℃の温度で行われてよく、この範囲内で重合体の粘度が上昇せず、重合体の活性化された末端が失活しない効果がある。
【0110】
本発明の一実施形態による塩化硫黄は、活性重合体を変性させる変性剤として用いたものであってよく、一塩化硫黄(二塩化二硫黄、S2Cl2)、二塩化硫黄(SCl2)、四塩化硫黄(SCl4)等の塩化硫黄化合物であれば制限なく使用可能であるが、共役ジエン系重合体外内の分枝構造を容易に導入し、段階的にムーニー粘度を増加させる側面で、好ましくは、本発明の塩化硫黄は一塩化硫黄(S2Cl2)であってよい。
【0111】
本発明では、塩化硫黄を変性剤として用い、重合体に分枝構造を導入することでムーニー粘度を段階的に増加させることができ、このため、加工性等の配合物性を改善するとともに、前記の化学式1で表される化合物が含まれた添加剤を塩化硫黄と共に添加することで、残留する触媒組成物のアルミニウム成分等と変性剤間の反応性制御を介して変性反応性を調節でき、これにより安定的な変性反応を行うようになって変性再現性を改善できる。変性再現性に優れるため、変性条件による物性の変化程度、特に、ムーニー粘度の増加率を予測でき、変性条件を調節して重合体の物性変化を容易に調節できる。
【0112】
また、本発明において、前記化学式1で表される化合物を含む添加剤は、前記段階2)で共役ジエン系単量体100重量部基準に0.01から0.5重量部を添加するものであってよく、変性反応性の調節を容易にして変性再現性をより大きく向上させる側面で、好ましくは、0.01から0.3重量部、より好ましくは、0.01から0.2重量部を添加するものであってよい。
【0113】
また、本発明の一実施形態によれば、前記段階2)で前記塩化硫黄及び化学式1で表される化合物を含む添加剤は、1:0.1から1:2の重量比で添加するものであってよく、変性反応効率を低下させずに、変性を介して優れた物性改善効果を確保しつつも変性再現性を大きく向上させる側面で、好ましくは、1:0.1から1:1重量比で添加するものであってよい。
【0114】
また、本発明の一実施形態によれば、段階2)以後に酸化防止剤及び脂肪酸エステルを添加する段階をさらに含んでよい。これは、最終製造される変性共役ジエン系重合体を安定化して回収するための後処理段階に該当するものであってよい。
【0115】
本発明において、酸化防止剤と共に脂肪酸エステルを添加することで、酸化防止剤の分散性を増大させ、酸化防止剤の添加効果をより増幅することができる。
【0116】
本発明の一実施形態による前記酸化防止剤は、変性共役ジエン系重合体の重合工程で使用可能な酸化防止剤であれば制限なく使用可能であり、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等を用いてよい。前記フェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF(株)製)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、BASF(株)製)、イルガノックス3114(Irganox 3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、イルガノックス3790(Irganox 3790:1,3,5-トリス((4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、イルガノックス1035(Irganox 1035:チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、イルガノックス1135(Irganox 1135:ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-C9側鎖アルキルエステル、BASF(株)製)、イルガノックス1520(Irganox 1520:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、BASF(株)製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、BASF(株)製)、イルガノックス565(Irganox 565:2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、BASF(株)製)、アデカスタブAO-80(アデカスタブAO-80:3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、(株)ADEKA製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、住友化学(株)製)、スミライザーGA-80(Sumilizer GA-80、 住友化学(株)製)、スミライザーGS(Sumilizer GS、住友化学(株)製)、シアノックス1790(Cyanox1790、(株)サイテック製)及びビタミンE(エーザイ(株)製)等が挙げられる。前記リン系酸化防止剤としては、イルガフォス168(Irgafos 168:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、BASF(株)製)、イルガフォス12(Irgafos 12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、BASF(株)製)、イルガフォス38(Irgafos 38:ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、BASF(株)製)、アデカスタブ329K((株)ADEKA製)、アデカスタブPEP36((株)ADEKA製)、アデカスタブPEP-8((株)ADEKA製)、Sandstab P-EPQ(クラリアントン社製)、ウェストン618(Weston 618、GE社製)、ウェストン619G(Weston 619G、GE社製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、GE社製)及びスミライザーGP(Sumilizer GP:6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン)(住友化学(株)製)等が挙げられる。前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル又はジステアリール等のジアルキルチオジプロピオネート化合物及びテトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物等が挙げられる。また、変性共役ジエン系重合体の酸化防止効果を改善して重合体安定性を向上させる側面で、好ましくは、イルガノックス1520(Irganox 1520:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール)を用いてよい。
【0117】
また、前記脂肪酸エステルは、重合工程で使用可能な脂肪酸エステルであれば制限なく使用可能であり、具体的には、エポキシ化脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル及び不飽和脂肪酸エステルのうち何れか一つ以上であってよく、好ましくは、エポキシ化脂肪酸エステルのうちエポキシ化大豆油を用いてよい。
【0118】
また、本発明の一実施形態によれば、前記脂肪酸エステルは、変性共役ジエン系単量体100重量部基準に0.01から1.0重量部を添加するものであってよく、酸化防止剤の分散性をより増大させる側面で、好ましくは、0.01から0.5重量部、より好ましくは、0.1から0.4重量部を添加するものであってよい。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、前記の製造方法で製造された変性共役ジエン系重合体を提供する。本発明の変性共役ジエン系重合体は、分枝構造の導入により変性後のムーニー粘度が上昇し、-S/R値が下がり、分子量分布が増加して、変性工程時に変性剤及び化学式1で表される化合物の添加量、添加比率によって前記のような物性変化率が一定範囲に調節されたものであってよい。
【0120】
また、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布(PDI;Polydispersity)が、3.0以下の狭い分子量分布を有するものであってよい。共役ジエン系重合体のPDIが3.0を超過する場合、ゴム組成物に適用時、耐磨耗性及び耐衝撃性等の機械的物性が低下する虞がある。より具体的に、分子量分布制御による重合体の顕著な機械的物性改善効果を考慮する際、前記共役ジエン系重合体の分子量分布は2.0から3.0であってよい。
【0121】
また、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、前記の分子量分布条件を満たすとともに、重量平均分子量(Mw)が300,000g/molから1,200,000g/molであり、具体的には、400,000g/molから1,000,000g/molであってよい。また、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000g/molから700,000g/molであり、具体的には、120,000g/molから500,000g/molであってよい。前記共役ジエン系重合体の重量平均分子量が300,000g/mol未満であるか、又は数平均分子量が100,000g/mol未満の場合、加硫物の弾性率が低下するため、ヒステリシスロスが上昇し、よって耐磨耗性が低下する虞がある。また、重量平均分子量が1,200,000g/molを超過するか、数平均分子量が700,000g/molを超過すると、加工性低下により、前記共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の作業性が低下し、混練が困難になるため、ゴム組成物の物性を十分に向上し難い。本発明において、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算分子量である。
【0122】
より具体的に、ゴム組成物に適用時のゴム組成物に対する機械的物性、弾性率及び加工性のバルランス良い改善効果を考慮する際、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、前記の多分散度と共に重量平均分子量及び数平均分子量条件を同時に満たすのが好ましい。具体的に、前記共役ジエン系重合体は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0以下であり、重量平均分子量(Mw)が300,000g/molから1,200,000g/molであり、数平均分子量(Mn)が100,000g/molから700,000g/mol、より具体的には、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.0から3.0であり、重量平均分子量(Mw)が400,000g/molから1,000,000g/molであり、数平均分子量(Mn)が120,000g/molから500,000g/molであってよい。
【0123】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、変性前重合体の100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity、MV)が10から90、具体的には30から80、より具体的には40から70であってよい。また、変性後重合体の100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity、MV)が20から120、具体的に50から120、より具体的に60から110であってよい。
【0124】
本発明において、前記ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000Eで、100℃でRotor Speed2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定してよい。このとき用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取しダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(Platen)を作動させて測定してよい。
【0125】
前記のように、変性工程を経てムーニー粘度が増加することから変性共役ジエン系重合体内に分枝構造が導入されたことが確認できる。このとき、変性後重合体のムーニー粘度が前記の範囲を満たす際に、加工性がより改善する効果が発現し得る。
【0126】
本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体は、変性前重合体のムーニー粘度対比変性後重合体のムーニー粘度増加率(%)が50から200%、引張特性及び粘弾性特性の低下を防止しつつも加工性を大きく改善する側面で、好ましくは、70から150%、より好ましくは、90から130%であってよい。ここで、ムーニー粘度増加率は、下記数式1で算出されるものであってよい。
【0127】
【数1】
【0128】
前記範囲内のムーニー粘度の増加は、加工性が改善されることを示すものであってよく、前記範囲を満たす時、引張特性のような機械的物性及び粘弾性特性を優れた水準に維持するとともに加工性を改善できる。また、前記範囲内のムーニー粘度の増加は、加工性を改善することにより役に立ち、ムーニー粘度が高くなりすぎて却って加工性を悪化させる問題を防止できる。
【0129】
本発明の一実施形態による変性共役ジエン系重合体は、変性前重合体のムーニー粘度対比変性後重合体のムーニー粘度増加率(%)の標準偏差が15%以下、好ましくは、標準偏差が12%以下、より好ましくは、10%以下であってよい。このとき、標準偏差を算出する時に必要な原資料は、同一条件で数回繰り返して製造された変性共役ジエン系重合体を対象にしたものである。
【0130】
本発明の変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度増加率の標準偏差が前述した範囲を示すことを介して、本発明の製造方法によると、同一製造条件での変性前、変性後のムーニー粘度の上昇の程度が均一に表れることが確認できる。さらに、前記のようにムーニー粘度の上昇が安定的な範囲内で行われるため、同一の変性条件で均一な物性の変化を有し得る。このように、変性再現性が容易な変性共役ジエン系重合体が形成されることによって変性共役ジエン系重合体の物性制御の容易な利点がある。
【0131】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、-S/R(Stress/Relaxation)値が1.00以下、0.90以下、0.80以下又は0.75以下であってよく、下限値は制限なく適用できるが、好ましくは、0.10以上、0.40以上、0.50以上又は0.60以上であってよい。前記-S/R値を介して重合体の線形性を予測できる。例えば、前記-S/R値が低いほど重合体の線形性が低いことを意味し、逆に値が高いほど重合体の線形性が高いことを意味するもので、線形性が低すぎるとゴム組成物に適用時に配合物性が低下し引張特性及び粘弾性特性が減少し、線形性が高すぎると加工性が低下し得る。よって、加工性及び配合物性がバランス良く優れた水準を有するためには、重合体の線形性が適正水準を維持する必要があり、本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体は、前述した通りの-S/R値を有することで、高い加工性を示し、同時に引張特性及び粘弾性特性のような配合物性に優れる。
【0132】
また、本発明の一実施形態による前記共役ジエン系重合体は、ポリブタジエンのようなブタジエン単独重合体であってよく、又はブタジエン-イソプレン共重合体のようなブタジエン共重合体であってよい。
【0133】
具体的な例として、前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位80から100重量%、及び、選択的に1,3-ブタジエンと共重合可能なそれ以外の共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位20重量%以下を含んでよく、前記範囲内で重合体内の1,4-シス結合の含量が低下しないという効果がある。このとき、前記1,3-ブタジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、又は2-エチル-1,3-ブタジエン等の1,3-ブタジエン又はその誘導体が挙げられ、前記1,3-ブタジエンと共重合可能なそれ以外の共役ジエン系単量体としては、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン又は2,4-ヘキサジエン等が挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の化合物が用いられてよい。
【0134】
さらに、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物、及び前記ゴム組成物から製造された成形品を提供する。
【0135】
本発明の一実施形態による前記ゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体を0.1重量%以上100重量%以下、具体的には、10重量%から100重量%、より具体的には、20重量%から90重量%で含むものであってよい。もし、前記共役ジエン系重合体の含量が0.1重量%未満の場合、結果的に前記ゴム組成物を用いて製造された成形品、例えば、タイヤの耐磨耗性及び耐亀裂性等を改善させる効果が微々であり得る。
【0136】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体以外に必要に応じて他のゴム成分をさらに含んでよく、このとき、前記ゴム成分は、ゴム組成物全重量に対して、90重量%以下の含量で含まれてよい。具体的には、前記変性共役ジエン系共重合体100重量部に対して、1重量部から900重量部で含まれるものであってよい。
【0137】
前記ゴム成分は、天然ゴム又は合成ゴムであってよく、例えば、前記ゴム成分は、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR); 前記一般的な天然ゴムを変性又は精製したエポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴム等の変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のような合成ゴムであってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0138】
また、前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部から150重量部の充填剤を含むものであってよく、前記充填剤は、シリカ系、カーボンブラック又はこれらを組み合わせたものであってよい。具体的には、前記充填剤は、カーボンブラックであってよい。
【0139】
前記カーボンブラック系充填剤は、特に制限するものではないが、例えば、窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定する)が20m2/gから250m2/gのものであってよい。また、前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80cc/100gから200cc/100gのものであってよい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が250m2/gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞があり、20m2/g未満であれば、カーボンブラックによる補強性能が微々であり得る。また、前記カーボンブラックのDBP吸油量が200cc/100gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞があり、80cc/100g未満であれば、カーボンブラックによる補強性能が微々であり得る。
【0140】
また、前記シリカは、特に制限するものではないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム又はコロイダルシリカ等であってよい。具体的に、前記シリカは、破壊特性の改良効果及びウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も著しい湿式シリカであってよい。また、前記シリカは、窒素吸着比表面積(nitrogen surface area per gram、N2SA)が120m2/gから180m2/gであり、CTAB(cetyl trimethyl ammonium bromide)吸着比表面積が100m2/gから200m2/gであってよい。前記シリカの窒素吸着比表面積が120m2/g未満であれば、シリカによる補強性能が低下する虞があり、180m2/gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞がある。また、前記シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/g未満であれば、充填剤であるシリカによる補強性能が低下する虞があり、200m2/gを超過すれば、ゴム組成物の加工性が低下する虞がある。
【0141】
一方、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性及び低発熱性改善のために、シランカップリング剤が共に用いられてよい。
【0142】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、又はジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等を挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。より具体的には、補強性改善効果を考慮する際、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド又は3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってよい。
【0143】
また、本発明による一実施形態によるゴム組成物は、硫黄架橋性であってよく、これにより加硫剤をさらに含んでよい。
【0144】
前記加硫剤は、具体的に硫黄粉末であってよく、ゴム成分100重量部に対して、0.1重量部から10重量部で含まれてよい。前記含量範囲で含まれる時、加硫ゴム組成物の必要な弾性率及び強度を確保でき、同時に低燃費性を得ることができる。
【0145】
また、本発明による一実施形態によるゴム組成物は、前記成分以外に、通常ゴム工業界において用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂等をさらに含んでよい。
【0146】
前記加硫促進剤は、特に限定されるのではなく、具体的には、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系化合物、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系化合物が用いられてよい。前記加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対し、0.1重量部から5重量部で含まれてよい。
【0147】
また、前記プロセス油は、ゴム組成物内で軟化剤として作用するものであって、具体的には、パラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系化合物であってよく、より具体的には、引張強度及び耐磨耗性を考慮する際に芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損失及び低温特性を考慮する際にナフテン系又はパラフィン系プロセス油が用いられてよい。前記プロセス油は、ゴム成分100重量部に対して、100重量部以下の含量で含まれてよく、前記含量で含まれる時、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止できる。
【0148】
また、前記老化防止剤としては、具体的に、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、又はジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等が挙げられる。前記老化防止剤は、ゴム成分100重量部に対して、0.1重量部から6重量部で用いられてよい。
【0149】
本発明の一実施形態によるゴム組成物は、前記配合処方によってバンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練機を用いて混練することで収得でき、また、成形加工後の加硫工程によって低発熱性、且つ、耐磨耗性に優れたゴム組成物を収得できる。
【0150】
これによって前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダートレッド、サイドウォール、カカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラ、チェーファー、又はビードコーティングゴム等のタイヤの各部材や防振ゴム、ベルトコンベヤー、ホース等の各種工業用ゴム製品の製造に有用である。
【0151】
前記ゴム組成物を用いて製造された成形品は、タイヤ又はタイヤトレッドを含むものであってよい。
【0152】
[実施例]
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらだけに本発明の範囲が限定されるのではない。
【0153】
[実施例1から4]
アルゴン条件下で、10Lの反応器にヘキサン4.173kgと1,3-ブタジエン500gを投入し、70℃に昇温した。ここに、ネオジムバーサテート(neodymium versatate、NdV)0.40mmol、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(diisobutylaluminum hydride、DIBAH)16.0mmol、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)0.96mmol、1,3-ブタジエン8.0mmolのヘキサン溶液、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane、MAO)40.0mmolのトルエン溶液の反応を介して製造した触媒組成物を、0.06±0.03mmol NdV/100g BDの量で添加した後、1,3-ブタジエンのポリブタジエンへの転換率が約100%になるまで重合してから化学式1に該当する化合物を含むポリオキシエチレンリン酸エステル系添加剤(イルチル化学社製、商品名HPSS-81)を投入し、重合を停止した。1,3-ブタジエンの重合反応が完了してから、塩化硫黄1.0g及びHPSS-81(イルチル化学社製)0.25gが含まれたヘキサン溶液を前記重合溶液に添加した後、70℃で30分間反応させた。以後、1.0gのIrganox 1520(BASF社製)及び1.0gのエポキシ化大豆油が含まれたヘキサン溶液を添加した。その結果得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ホットロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、変性共役ジエン重合体を製造した。
【0154】
[実施例5から8]
前記実施例1において、1,3-ブタジエンの重合反応が完了してから、1.0gの塩化硫黄及び0.5gのHPSS-81(イルチル化学社製)が含まれたヘキサン溶液を添加することを除いては、前記実施例1と同一の方法で変性共役ジエン重合体を製造した。
【0155】
[比較例1から4]
アルゴン条件下で、10Lの反応器にヘキサン4.173kgと1,3-ブタジエン500gを投入し、70℃に昇温した。ここに、ネオジムバーサテート(neodymium versatate、NdV)0.40mmol、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(diisobutylaluminum hydride、DIBAH)16.0mmol、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)0.96mmol、1,3-ブタジエン8.0mmolのヘキサン溶液の反応を介して製造した触媒組成物を添加した後、1,3-ブタジエンのポリブタジエンへの転換率が約100%になるまで重合してから化学式1に該当する化合物を含むポリオキシエチレンリン酸エステル系添加剤(イルチル化学社製、商品名HPSS-81)を投入し、重合を停止した。1,3-ブタジエンの重合反応が完了してから塩化硫黄1.0gが含まれたヘキサン溶液を前記重合溶液に添加した後、70℃で30分間反応させた。以後、1.0gのIrganox 1520(BASF社製)及び1.0gのエポキシ化大豆油が含まれたヘキサン溶液を添加した。その結果得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ホットロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、変性共役ジエン重合体を製造した。
【0156】
[比較例5から8]
前記比較例1において、1,3-ブタジエンの重合反応が完了してから、1.0gの塩化硫黄及び0.5gのパルミチン酸が含まれたヘキサン溶液を添加することを除いては、前記比較例1と同一の方法で変性共役ジエン重合体を製造した。
【0157】
[比較例9から12]
前記実施例1において、1,3-ブタジエンの重合反応が完了してから、1.0gの塩化硫黄が含まれたヘキサン溶液を添加することを除いては、前記実施例1と同一の方法で変性共役ジエン重合体を製造した。
【0158】
[比較例13から16]
前記実施例1において、1,3-ブタジエンの重合反応が完了してから、1.0gの塩化硫黄及び0.5gのパルミチン酸が含まれたヘキサン溶液を添加することを除いては、前記実施例1と同一の方法で変性共役ジエン重合体を製造した。
【0159】
<実験例1>
前記実施例及び比較例で製造された各重合体に対し、下記のような方法で数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、最大ピーク分子量(Mp)、分子量分布(PDI)、ムーニー粘度(MV)、及び-S/R値をそれぞれ測定した。
【0160】
1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、最大ピーク分子量(Mp)及び分子量分布(PDI)
各重合体を40℃条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて重量平均分子量及び数平均分子量を測定し、測定された重量平均分子量及び数平均分子量の比から分子量分布を算出した。このとき、カラムは、ポリマーラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)の商品名PLgel Olexisカラム二本とPLgel mixed-Cカラム一本を組み合わせて用いた。また、新たに入れ替えたカラムは、全て混床(mixed bed)タイプのカラムを用い、ゲル浸透クロマトグラフィー標準物質(GPC Standard material)としてポリスチレン(Polystyrene)を用いた。
【0161】
2)ムーニー粘度(MV、ML1+4、@100℃)(MU)及び-S/R(stress/relaxation)、t80値
各重合体に対して、Monsanto社のMV2000EでLarge Rotorを用い、100℃でRotor Speed2±0.02rpmの条件でムーニー粘度(ML1+4、@100℃)(MU)を測定した。このとき用いられた試料は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取しダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しつつムーニー粘度を測定した。また、トルクが緩みながら表れるムーニー粘度変化の傾き値を測定することで、-S/R値(絶対値)を得た。
【0162】
また、t-80は、ムーニー粘度測定直後(初期ムーニー粘度)から初期ムーニー粘度対比20%のムーニー粘度を有する時までの時間(分)を測定した値を示す。
【0163】
一方、変性前重合体のムーニー粘度、-S/R及びt80値を測定するための試料は、重合転換率が100%に到逹すると1gの重合停止剤を投入し10分撹拌する。以後、50g程度の重合体が溶解されている500gの重合混合物を反応器外部に取り出し、200mlの蒸留水と0.1gのIR1520が混合された溶液に十分混ぜた後にロールミル(roll-mill)処理して得た。
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
前記表1に示された通り、本発明の一実施形態によって変性する際、塩化硫黄とともにポリオキシエチレンリン酸エステル系添加剤を添加して製造した変性共役ジエン系重合体である実施例1から8は、変性再現性に優れることが確認できる。
【0168】
具体的に、同一条件で変性共役ジエン系重合体を製造した実施例1から4は、変性前ムーニー粘度対比変性後ムーニー粘度の上昇幅が同等範囲内であるのが確認でき、実施例1から4とはポリオキシエチレンリン酸エステル系添加剤の添加量を異にした実施例5から8もまた互いに同一条件で変性共役ジエン系重合体を製造しており、ムーニー粘度の上昇幅が互いに同等範囲内であるのが確認できる。このように、同一条件で物性の変化率が一定範囲内に維持され、変性再現性に優れることが確認できる。
【0169】
これと異なり、表2及び表3に示された通り、変性段階で塩化硫黄の添加時にポリオキシエチレンリン酸エステル系添加剤を添加していない比較例1から16は、変性再現性を実現できないことが確認できる。
【0170】
具体的に、それぞれ同一条件で製造した比較例1から4、比較例5から8、比較例9から12及び比較例13から16は、同一条件で繰り返して製造するとしても、ムーニー粘度の上昇幅が一定でなく大きな差があることが確認できる。
【0171】
<実験例2>
前記実施例及び比較例で製造した変性共役ジエン重合体と、比較例で製造した変性共役ジエン重合体を用いてゴム組成物及びゴム試料を製造した後、下記のような方法で加工性特性を測定し、その結果を下記表4から表6に示した。
【0172】
具体的に、前記ゴム組成物は、前記各重合体100重量部にカーボンブラック70重量部、プロセス油(process oil)22.5重量部、老化防止剤(TMDQ)2重量部、酸化亜鉛(ZnO)3重量部及びステアリン酸(stearic acid)2重量部を配合し、それぞれのゴム組成物を製造した。以後、前記各ゴム組成物に硫黄2重量部、加硫促進剤(CZ)2重量部及び加硫促進剤(DPG)0.5重量部を添加し、50℃で1.5分間50 rpmで弱く混合してから50℃のロールを用いてシート状の加硫配合物を得た。得た加硫配合物を160℃で25分間加硫してゴム試料を製造した。
【0173】
1)加工性
加工性は、前記加硫配合物を用いてムーニー粘度(FMB、Final Master Batch)を測定し、ムーニー粘度の差(△MV)を介して確認しており、ここで、ムーニー粘度の差は、前記表1に示された各重合体の変性後ムーニー粘度と配合物のムーニー粘度の差(△MV、FMB-RP)を示すものであり、ムーニー粘度の差が小さいほど加工性に優れることを示す。
【0174】
具体的に、ムーニー粘度(ML1+4、@100℃)(MU)は、前記製造された各加硫配合物を用いて測定した。Monsanto社のMV2000EでLarge Rotorを用い、100℃でRotor Speed2±0.02rpmの条件でムーニー粘度(MV)を測定した。このとき用いられた試料は、室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取しダイキャビティ内部に入れておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しつつムーニー粘度(FMB)を測定した。
【0175】
2)引張強度(tensile strength、kgf/cm2)、300%モデュラス(300%modulus、kgf/cm2)及び伸び率(%)
前記各加硫配合物を150℃でt90分加硫した後、ASTM D412に準じて加硫物の引張強度、300%伸張時のモデュラス(M-300%)及び破断時加硫物の伸び率を測定した。
【0176】
3)粘弾性特性(Tanδ@50℃)
Tanδ物性は、ドイツGabo社のDMTS 500Nを用い、周波数10Hz、Prestrain3%、Dynamic Strain3%で50℃での粘弾性係数(tanδ)で測定した。
【0177】
本発明では、各測定値に対して、比較例4の測定値を100とし、改善された程度を指数化(Index値)した。このとき、50℃での粘弾性係数インデックス値が大きいほどヒステリシス損失が少なく、優れた低回転抵抗性、すなわち低燃費性を示すことを意味する。
【0178】
4)フィラー分散性(△G’)
前記各加硫配合物に対して、strainが28%での動的弾性値であるG’とstrainが40%である時のG’の差を測定した。
【0179】
本発明では、各測定値に対して、比較例4の測定値を100とし、改善された程度を指数化(Index値)した。このとき、Index値の数値が大きいほど加硫配合物内のカーボンブラック(フィラー)の分散性に優れることを意味する。
【0180】
【表4】
【0181】
【表5】
【0182】
【表6】
【0183】
前記表4から表6でのように、同一条件で製造された実施例1から4のそれぞれの配合物性、及び、同一条件で製造された実施例8から12のそれぞれの配合物性は、互いに同等範囲内の配合物性を示す一方、比較例1から4、比較例5から8、比較例9から12及び比較例13から16は、それぞれ互いに同一条件で製造したにもかかわらず、配合物性において互いに大きな差を示すことが確認できる。特に、加工性の指標と見られるムーニー粘度の差において、実施例及び比較例の物性の均一性は、より確実な差を示すことが確認できる。
【0184】
また、同一条件で製造する時、同等範囲内の配合物性を表わす実施例1から8が、配合物性を制御できない比較例1から16に比べ、加工性だけでなく引張特性、粘弾性特性及びフィラー分散性の全般的に全て優れた物性を示すことが確認できる。