(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】歯周病予防用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20221018BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20221018BHJP
A01N 63/22 20200101ALI20221018BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20221018BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20221018BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20221018BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A23L33/135
A01N25/00 102
A01N63/22
A01P1/00
A23K10/18
A61K35/747
A61P1/02
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2018223460
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-25
【微生物の受託番号】IPOD FERM BP-5445
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畠 英史
(72)【発明者】
【氏名】山下 舞亜
(72)【発明者】
【氏名】冠木 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】落合 智子
(72)【発明者】
【氏名】小林 良喜
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083547(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022560(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/021957(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/082027(WO,A1)
【文献】特開2012-025699(JP,A)
【文献】特開2006-262893(JP,A)
【文献】雪印メグミルク研究報告,No.2,2016年,pp.1-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/135
A01N 25/00
A01N 63/22
A01P 1/00
A23K 10/18
A61K 35/747
A61P 1/02
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)を有効成分とする歯周病予防用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の歯周病予防用組成物を含む歯周病予防用飲食品
。
【請求項3】
請求項1に記載の歯周病予防用組成物を含む歯周病予防剤。
【請求項4】
請求項1に記載の歯周病予防用組成物を含む歯周病予防用飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病予防用組成物に関する。特にラクトバチルス・ヘルベティカスを有効成分とする歯周病予防用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、ポルフィロモナス・ジンジバリスやアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスなどの歯周病菌により引き起こされる歯周組織に発生する炎症性疾患の総称である。歯周組織の炎症が慢性化し、歯周病が進行すると、最終的には歯槽骨が吸収されることで歯牙の喪失を招く。また、歯周病は慢性炎症による歯周組織の破壊のみならず、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の発症とも関連していることが報告されており、歯周病を予防することは、単に口腔内の健康だけでなく、生活の質を向上させるためにも重要である。
従来、歯周病の予防および改善には、殺菌・抗菌剤を含有するうがい薬などを用いて歯周病菌を直接殺菌する方法や、歯周病菌が形成するプラークを直接取り除く外科的手法、または抗生物質の服用による薬物投与法などの方法により行われてきた。
特許文献1は、バイオフィルムを形成する主要な口腔内細菌に対して共凝集を引き起こす口腔用組成物を提供することを課題とし、その解決手段としてロイコノストック属の乳酸菌を含有する口腔疾患の予防および/または治療のために用いられる口腔用組成物を開示している。また、チューインガム、トローチ、キャンディーなどへの応用が開示されている。
特許文献2は、通常時(摂食時以外)の口腔内で、う蝕予防、歯周病予防・治療、口臭改善・予防、口腔内のバイオフィルム形成抑制に有用な乳酸菌、又はこの乳酸菌の培養物、培養上清、これらの中和物、及びこれらを含有する組成物等を提供することを課題とし、その解決手段としてう蝕、歯周病又は口臭の原因となる口腔細菌との糖不含培地での共培養において、上記口腔細菌の生育及び/又は上記口腔細菌によって形成されたバイオフィルムの形成を抑制する性質を有する乳酸菌およびその培養由来物を開示している。
特許文献3は、口腔内に留めておく必要がなく、簡便な方法で歯周病を予防することができる口腔内疾患予防剤を提供することを課題とし、その解決手段としてラクトバチルス属に属する乳酸菌が腸管内で定着することで、口腔内で産生した抗菌ペプチドにより口腔内疾患を予防する、ラクトバチルス・ガセリSBT2055を有効成分とする口腔内疾患予防剤を開示している。
しかしながら、本願の提供する解決手段はいずれの文献にも開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-53062号公報
【文献】特許第5904028号公報
【文献】特許第6285687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を有効成分とする新規な歯周病予防用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明には以下の構成が含まれる。
(1)ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)を有効成分とする歯周病予防用組成物。
(2)(1)に記載の歯周病予防用組成物を含む歯周病予防用飲食品、歯周病予防剤又は歯周病予防用飼料。
(3)ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)を有効成分とする抗菌ペプチド産生促進用組成物。
(4)抗菌ペプチドがβディフェンシンである(3)に記載の抗菌ペプチド産生促進用組成物。
(5)(3)又は(4)に記載の抗菌ペプチド産生促進用組成物を含む抗菌ペプチド産生促進用飲食品、抗菌ペプチド産生促進剤又は抗菌ペプチド産生促進用飼料。
【発明の効果】
【0006】
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体を含む組成物を摂取することにより、口腔内のポルフィロモナス・ジンジバリスを減少させ、歯周病予防効果を得ることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体の投与の有無における、歯槽骨の染色の様子を示したデジタルHDマイクロスコープの写真である。
【
図2】ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体の投与の有無における、歯槽骨吸収量を示した図である。
【
図3】ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体の投与の有無における、歯肉組織中のポルフィロモナス・ジンジバリス由来DNA検出量を示した図である。
【
図4】ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体の投与の有無における、歯肉組織中のTNFα遺伝子発現量を示した図である。
【
図5】ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体の投与の有無における、歯肉組織中のβ-ディフェンシン遺伝子発現量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を有効成分として含む新規な歯周病予防用組成物を提供するものである。本発明の歯周病予防用組成物について以下に詳細に説明する。
本発明は、経口摂取により歯周病予防効果を示す菌株として、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)、またはラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)と実質的に同等の変異株を用いる。
実質的に同等の変異株とは、経口摂取により歯周病予防効果を示し、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくはラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171と同一の菌学的性質を有するものである。さらに、本発明の効果が損なわれない限り、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171又はそれと実質的に同等の菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された菌株であってもよい。
このラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171は新規なラクトバチルス属の菌株として報告されており(特開平7-274949号公報)、FERM BP-5445として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。また、新規アミノペプチダーゼを産生することや新規エンドペプチダーゼを産生すること等が報告されている(特開平8-9973号公報、特開平8-298987号公報、特開平9-206074号公報)。また、多糖を産生し、低脂肪硬質ナチュラルチーズの製造に適していることが報告されている(特開平11-155481号公報)。
本発明の歯周病予防用組成物の経口摂取により歯周病予防効果を示す作用は、必ずしも明らかではないが、摂取したラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171が生体内において歯周病菌に対する抗菌ペプチド産生促進作用などの感染防御機能を強化し、歯周病菌の増殖を抑制したと考えられる。
【0009】
(歯周病予防用組成物の調製)
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の菌体は、乳酸菌培養の常法に従ってラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離することにより得ることができる。ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を含む組成物は、純粋に分離された菌体だけでなく、培養物や懸濁物といった菌体含有物、さらにこれらの乾燥物、濃縮物、ペースト状物等を用いて調製することができる。
【0010】
(歯周病予防用飲食品)
本発明の歯周病予防用組成物の一態様である飲食品の形態について説明する。
本発明の歯周病予防用飲食品の形態は歯周病予防効果を妨げないものであればどのようなものでもよい。本発明の歯周病予防用飲食品の形態として、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の菌体や菌体を含む培養物、およびラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を含む乳酸菌を用いて調製した発酵乳やチーズ等の発酵食品、さらに、上記の菌体、菌体を含む培養物、発酵乳、チーズ等の発酵食品を含むパン、スナック菓子、ケーキ、プリン飲料、麺類、ソーセージ等の加工食品、さらには、各種粉乳、乳幼児食品、サプリメント等を例示することができる。
【0011】
(歯周病予防用医薬品、歯周病予防用動物飼料)
本発明の歯周病予防用組成物の一態様である医薬品及び動物飼料の形態について説明する。
医薬品を調製する場合は、製剤化に際しては製剤上許可されている賦型剤、安定剤、矯味剤などを適宜混合して用いることができ、本発明の効果を妨げない範囲で、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、その他の任意の薬剤を混合して製剤化することもできる。剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤などが可能であり、これらを経口的に投与する。動物飼料に含まれる場合は、これを摂取した動物も同様の効果が期待できる。
【0012】
(摂取量)
本発明の歯周病予防効果を発揮させるためには、成人の場合、乳酸菌体重量で1~1,000mg/日摂取することが望ましい。
本発明のラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を配合した歯周病予防用飲食品などを調製する場合、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の含有割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すればよい。例えば形状が液体の場合には、1×105cells/ml~1×1010cells/mlとすることが好ましく、固体の場合には、1×105cells/g~1×1010cells/gとすることが好ましい。
上記歯周病予防用組成物は、その作用から抗菌ペプチド産生促進用組成物としても利用することができ、その場合、上記調製方法、摂取量、飲食品、医薬品、動物飼料において歯周病予防用組成物を抗菌ペプチド産生促進用組成物と読み替えるものとする。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
〔試験例1〕本発明乳酸菌のマウス歯周炎に対する抑制効果の確認
1.ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体の調製
本試験に用いたラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体の調製例を以下に示す。
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171をMRS液体培地100mLで37℃、16時間培養後、遠心分離(8,000×g、4℃、10分間)にて菌体を回収し、生理食塩水で2回、滅菌MilliQ水で1回洗浄し、菌体を得た。
【0015】
2.マウス実験的歯周炎に対する乳酸菌の抑制効果
2-1.実験的歯周炎の惹起方法
生後7週齢の雌性BALB/cマウスを2試験群A、Bに分け、試験群Aには25%トレハロース溶液のみを胃内投与した。試験群Bには25%トレハロース水溶液に混合したラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(109cfu/200μl)を、ゾンデを用いて3週間連日胃内に強制投与した。その後、2試験群それぞれのマウスに対して実験的に歯周炎を惹起させるために、5%カルボキシメチルセルロース溶液で調製したポルフィロモナス・ジンジバリス381株の菌液(109cfu/100μl)を、2週間連日口腔内に強制接種した。ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の投与中も、試験群Bには25%トレハロース溶液に混合したラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(109cfu/200μl)の投与を続け、試験群Aには25%トレハロース溶液のみを胃内投与した。
【0016】
2-2.歯槽骨の吸収量
(1)評価方法
両試験群共にポルフィロモナス・ジンジバリス菌の口腔接種後30日目にマウスを炭酸ガスにて安楽死させ、頭蓋骨を2気圧下で10分間加熱後、3%次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬して軟組織を除去し、1% メチレンブルー溶液で歯槽骨を染色乾燥させた試料をデジタルHDマイクロスコープにて観察した。観察結果を
図1に示す。
また、下顎臼歯部のセメントエナメル境から歯槽骨頂までの距離を7カ所測定し、測定値を平均し個体当たりの歯槽骨吸収量とした。結果を
図2に示す。
(2)評価結果
図1はデジタルHDマイクロスコープの写真であり、上は試験群Aを下は試験群Bを示す。試験群Bの歯槽骨は試験群Aの歯槽骨と比較し、染色部が少ないことから、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の投与により、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌感染による炎症及び歯槽骨吸収が顕著に抑制されたことが分かる。
図2は、縦軸に平均歯槽骨吸収量(μm)を表した。左側が試験群Aで右側が試験群Bである。試験群Bは、試験群Aと比較し平均骨吸収量が低いことから、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の投与により、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌感染による炎症及び歯槽骨吸収が顕著に抑制されたことが分かる。
【0017】
2-3.組織中のポルフィロモナス・ジンジバリス菌のDNAの検出
(1)評価方法
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の口腔接種後30日目に両試験群のマウスから歯肉組織を採取し、組織中のポルフィロモナス・ジンジバリス菌のDNAをPCRで増幅し、アガロースゲル電気泳動にて検出した。結果を
図3に示す。
(2)評価結果
試験群Bは、試験群Aと比較し、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌のDNAに由来するバンドが薄いことから、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の投与により、口腔内のポルフィロモナス・ジンジバリス菌が減少したことが分かる。
【0018】
2-4.組織中のTNFα特異的mRNAの発現量の測定
(1)評価方法
ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の口腔接種後1日目に両試験群のマウスから歯肉組織を採取し、Trizol(登録商標) Reagent(Thermo Fisher Scientific)を用いてトータルRNAを抽出した。抽出したトータルRNA溶液から、GeneAmp RNA PCR Kit(タカラバイオ)を用いてcDNAを合成した。得られた逆転写反応液をtemplate cDNAとしてリアルタイムPCRに供した。
リアルタイムPCRにはAmpliTaq Gold(Life Technologies)を使用した。プライマーはTNFα(Forward:5’-GGCAGTCAGATCATCTTCTCGAA-3’、Reverse: 5’-GAAGGCCTAAGGTCCACTTGTGT-3’)、Gapdh(Forward:5’-TGTGTCCGTCGTGGATCTGA-3’、Reverse: 5’-TTGCTGTTGAAGTCGCAGGAG-3’)を使用した。反応にはThermal Cycler Dice(登録商標) real-time PCR systemを使用した。組織中のTNFα特異的mRNA発現量測定結果を
図4に示す。
(2)評価結果
試験群Bが試験群Aと比較してTNFαの発現が低いことから、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の投与により、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の感染による歯肉での炎症が抑制されたことが分かる。
【0019】
2-5.組織中のβ-ディフェンシン濃度特異的mRNA発現量の測定
(1)評価方法
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171もしくはトレハロース水溶液の3週間投与後、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の口腔接種前に、両試験群のマウスから歯肉組織を採取し、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて細胞からトータルRNAを抽出した。抽出したトータルRNAは、NanoDrop2000(Thermo Fisher Scientific)で濃度を測定した。
抽出したトータルRNA溶液から、ReverTra Ace qPCR RT Mas ter Mix with gDNA Remover(東洋紡)を用いてcDNAを合成した。逆転写反応には、TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(登録商標)Gradient(タカラバイオ)を使用した。得られた逆転写反応液をtemplate cDNAとしてリアルタイムPCRに供した。
リアルタイムPCRにはTaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix(Life Technologies、Cat#4444556)およびTaqManGene Expression Assay(Defb4:Mm00731768_m1、Defb14:Mm00806979_m1、Gapdh:Mm99999915_g1)(Life Technologies)を使用した。反応には384ウェルプレート(Life Technologies、Cat#4309849)を用い、ViiA
TM7(Life Technologies)を使用した。遺伝子発現はΔΔCt法によって試験群Aに対する相対発現量として評価した。
組織中のβ-ディフェンシン(Defb4、Defb14)特異的mRNA発現量測定結果を
図5に示す。
(2)評価結果
試験群Bが試験群Aと比較してβ-ディフェンシンの発現が高いことから、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の投与により、β-ディフェンシン産生が顕著に亢進し、歯周病菌感染による症状を抑制したことがわかる。
【0020】
(食品への配合例)
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体100mgに、脱脂粉乳30g、ビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gを加えて混合した。混合物をスティック状袋に詰め、本発明の歯周病予防用スティック状健康食品を製造した。
【0021】
(飼料への配合例)
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171菌体20gを3980gの脱イオン水に懸濁し、40℃まで加熱後、TKホモミクサー(MARK II 160型;特殊機化工業社製)にて、3,600rpmで20分間撹拌混合して2g/4kgの菌体溶液を得た。この菌体溶液2kgに大豆粕1kg、脱脂粉乳1kg、大豆油0.4kg、コーン油0.2kg、パーム油2.3kg、トウモロコシ澱粉1kg、小麦粉0.9kg、ふすま0.2kg、ビタミン混合物0.5kg、セルロース0.3kg、ミネラル混合物0.2kgを配合し、120℃、4分間加熱殺菌して、本発明の歯周病予防用飼料10kgを製造した。
【0022】
(医薬品への配合例)
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の液体培養物を、4℃、7,000rpmで15分間遠心分離した後、滅菌水による洗浄と遠心分離を3回繰り返して行い、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体を凍結乾燥処理して菌体粉末を得た。この菌体粉末1部に脱脂粉乳4部を混合し、この混合粉末を打錠機により1gずつ常法により打錠して、本発明の歯周病予防用錠剤を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を有効成分とする素材を体内に摂取することにより、歯周病予防作用を得ることが期待できる。