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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221018BHJP
   H05G 1/30 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 310
H05G1/30 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020549373
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037929
(87)【国際公開番号】W WO2020067323
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018183000
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今邨 亮
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正佳
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093159(JP,A)
【文献】特開2016-111772(JP,A)
【文献】特開昭64-030429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
H05G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発生する放射線源と、
前記放射線源を駆動する駆動回路と、
第1電圧で前記駆動回路に電流を流す内部電源と、
前記第1電圧とは異なる第2電圧で前記駆動回路に電流を流す外部電源と、
前記内部電源及び/または前記外部電源を用いて、前記駆動回路に給電する給電制御部と、
前記給電制御部が前記駆動回路への給電に使用する電源によって、前記放射線の出力を制御する放射線出力制限部と、
を備え
前記内部電源または前記外部電源のいずれかを前記駆動回路への給電に使用する電源とする場合において、前記放射線が発生中である場合、前記給電制御部は電源の切り替えを延期する放射線撮影装置。
【請求項2】
前記給電制御部は、前記内部電源及び前記外部電源を用いて、前記駆動回路に給電する請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記給電制御部は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合に、前記内部電源及び前記外部電源を用いて前記駆動回路に給電する請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記放射線出力制限部は、前記内部電源の特性を用いて、前記放射線の出力を制限する請求項1~3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記放射線出力制限部は、前記内部電源の残量を用いて、前記放射線の出力を制限する請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記放射線出力制限部は、前記内部電源の内部抵抗を用いて、前記放射線の出力を制限する請求項5に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記放射線出力制限部は、前記外部電源が前記駆動回路に流す電流を制限することにより、前記放射線の出力を制限する請求項4~6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記放射線出力制限部は、前記放射線の出力を設定可能な範囲を制限することにより、前記放射線の出力を制限する請求項4~6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記給電制御部は、前記内部電源の残量について設定する閾値を用いて、前記内部電源と前記外部電源を切り替える請求項に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記給電制御部は、前記放射線を用いて静止画を撮影する場合と、前記放射線を用いて動画を撮影する場合とで異なる前記閾値を設定する請求項に記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
前記放射線を用いて動画を撮影する場合に設定する前記閾値は、前記放射線を用いて静止画を撮影する場合に設定する前記閾値よりも大きい請求項10に記載の放射線撮影装置。
【請求項12】
前記給電制御部は、前記内部電源から前記外部電源に切り替える場合と、前記外部電源から前記内部電源に切り替える場合に用いる場合と、で値が異なる前記閾値を用いる請求項11のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項13】
前記内部電源を用いて前記駆動回路に電力を給電できる時間を報知する報知部を備える請求項12のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項14】
前記放射線出力制限部は、前記給電制御部が前記内部電源から前記外部電源に切り替えた場合に、前記放射線の出力を制限する請求項13のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項15】
放射線を発生する放射線源と、
前記放射線源を駆動する駆動回路と、
第1電圧で前記駆動回路に電流を流す内部電源と、
前記第1電圧とは異なる第2 電圧で前記駆動回路に電流を流す外部電源と、
前記内部電源及び/または前記外部電源を用いて、前記駆動回路に給電する給電制御部と、
前記給電制御部が前記駆動回路への給電に使用する電源によって、前記放射線の出力を制御する放射線出力制限部と、
を備え、
前記内部電源または前記外部電源のいずれかを前記駆動回路への給電に使用する電源とする場合、前記給電制御部は、前記内部電源の残量について設定する閾値を用いて、前記内部電源と前記外部電源とを切り替え、
前記内部電源から前記外部電源に切り替える場合よりも、前記外部電源から前記内部電源に切り替える場合の前記閾値を大きく設定する放射線撮影装置。
【請求項16】
放射線を発生する放射線源と、
前記放射線源を駆動する駆動回路と、
第1電圧で前記駆動回路に電流を流す内部電源と、
前記第1電圧とは異なる第2電圧で前記駆動回路に電流を流す外部電源と、
前記内部電源及び/または前記外部電源を用いて、前記駆動回路に給電する給電制御部と、
前記給電制御部が前記駆動回路への給電に使用する電源によって、前記放射線の出力を制御する放射線出力制限部と、
を備え、
前記給電制御部は、前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合に、前記内部電源及び前記外部電源を用いて、前記駆動回路に給電し、
前記内部電源及び前記外部電源を用いた場合の電圧が、前記第2電圧に相当する電圧となるように、前記第2電圧から前記第1電圧を引いた電位差分の電圧で、前記外部電源から前記駆動回路に給電し、
前記内部電源または前記外部電源のいずれかを前記駆動回路への給電に使用する電源とする場合において、前記放射線が発生中である場合、前記給電制御部は電源の切り替えを延期する放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影等のために放射線を発生する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を用いて被写体を撮影する放射線撮影装置が普及している。放射線撮影装置は、放射線を発生する放射線発生部と、放射線を検出することによって被写体の放射線画像を得る放射線検出パネルと、を備える。例えば、X線を用いて被写体を撮影するX線撮影装置である。X線撮影装置は、X線を発生するX線発生装置と、被写体のX線画像を得るX線検出装置と、を備える。
【0003】
近年の放射線撮影装置には、患者がいる病室等の任意の場所に移動して放射線撮影を行う移動型の放射線撮影装置が知られている。移動型の放射線撮影装置は、バッテリまたは蓄電したコンデンサ等の内部電源を備える。
【0004】
例えば、特許文献1のX線画像診断装置は、曝射バッテリを介してX線源に電力を供給する。そして、特許文献1のX線画像診断装置は、曝射バッテリの残量等にしたがって外部電源から曝射バッテリへの給電のON/OFFを切り替える。
【0005】
また、特許文献2の移動型X線装置は、バッテリを介してX線発生部に電力を供給する。そして、特許文献2の移動型X線装置は、X線発生部以外のユニットに商用交流電源から電力を供給する動作モードにおいては、商用交流電源に急激な電圧降下等が発生した場合にバッテリからもX線発生部以外のユニットにも電力を供給する動作モードを備える。
なお、設置型のCTスキャナもバッテリを搭載する場合があり、外部電源が電力需要に応えられない場合に、バッテリからスキャナに電力を供給する場合がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-200436号公報
【文献】特開2012-544288号公報
【文献】特表平11-500340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放射線発生部は、一般的な商用電源で賄えない電力を消費する場合がある。例えば、我が国における一般的な商用電源の容量は1500Wであるが、X線撮影においては、X線の発生に1500Wを超える電力(例えば2000W)を必要とする場合がある。このため、外部電源の容量を超える電力を消費する放射線発生部は、上記電力を賄える内部電源から放射線発生部に電力を供給する。
【0008】
しかし、内部電源から電力の供給を受ける放射線発生部は、内部電源の残量不足または劣化等によって動作しなくなり、その結果、放射線撮影が行えない場合がある。また、内部電源を充電する外部電源があるとしても、放射線発生部への電力の供給を内部電源を介して行う場合には、内部電源の残量不足または内部電源の劣化等によって動作しなくなり、放射線撮影が行えない場合がある。
【0009】
放射線撮影装置を用意したにもかかわらず、上記のような理由で何ら放射線撮影を行うことができない場合、医師及び患者等に負担を強いることになる。
【0010】
そこで、本発明は、内部電源からの電力供給により動作する構成の放射線撮影装置においても、外部電源を使用し、出力を制限した放射線を発生できるようにした放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線撮影装置は、放射線を発生する放射線源と、放射線源を駆動する駆動回路と、第1電圧で駆動回路に電流を流す内部電源と、第1電圧とは異なる第2電圧で駆動回路に電流を流す外部電源と、内部電源及び/ または外部電源を用いて、駆動回路に給電する給電制御部と、給電制御部が駆動回路への給電に使用する電源によって、放射線の出力を制御する放射線出力制限部と、を備え、内部電源または外部電源のいずれかを駆動回路への給電に使用する電源とする場合において、放射線が発生中である場合、給電制御部は電源の切り替えを延期する。
【0012】
給電制御部は、内部電源及び外部電源を用いて、駆動回路に給電することが好ましい。給電制御部は、第1電圧が第2電圧よりも小さい場合に、内部電源及び外部電源を用いて駆動回路に給電することが好ましい。
【0013】
放射線出力制限部は、内部電源の特性を用いて、放射線の出力を制限することが好ましい。放射線出力制限部は、内部電源の残量を用いて、放射線の出力を制限することが好ましい。放射線出力制限部は、内部電源の内部抵抗を用いて、放射線の出力を制限することが好ましい。
【0014】
放射線出力制限部は、外部電源が駆動回路に流す電流を制限することにより、放射線の出力を制限することが好ましい。
【0015】
放射線出力制限部は、放射線の出力を設定可能な範囲を制限することにより、放射線の出力を制限することが好ましい。
【0017】
給電制御部は、内部電源の残量について設定する閾値を用いて、内部電源と外部電源を切り替えることが好ましい。
【0018】
給電制御部は、放射線を用いて静止画を撮影する場合と、放射線を用いて動画を撮影する場合とで異なる閾値を設定することが好ましい。
【0019】
放射線を用いて動画を撮影する場合に設定する閾値は、放射線を用いて静止画を撮影する場合に設定する閾値よりも大きいことが好ましい。
【0020】
給電制御部は、内部電源から外部電源に切り替える場合と、外部電源から内部電源に切り替える場合に用いる場合と、で値が異なる閾値を用いることが好ましい。
【0022】
内部電源を用いて駆動回路に電力を給電できる時間を報知する報知部を備えることが好ましい。
【0023】
放射線出力制限部は、給電制御部が内部電源から外部電源に切り替えた場合に、放射線の出力を制限することが好ましい。
【0025】
本発明の放射線撮影装置は、放射線を発生する放射線源と、放射線源を駆動する駆動回路と、第1電圧で駆動回路に電流を流す内部電源と、第1電圧とは異なる第2電圧で駆動回路に電流を流す外部電源と、内部電源及び/または外部電源を用いて、駆動回路に給電する給電制御部と、給電制御部が駆動回路への給電に使用する電源によって、放射線の出力を制御する放射線出力制限部と、を備え、内部電源または外部電源のいずれかを駆動回路への給電に使用する電源とする場合、給電制御部は、内部電源の残量について設定する閾値を用いて、内部電源と外部電源とを切り替え、内部電源から外部電源に切り替える場合よりも、外部電源から内部電源に切り替える場合の閾値を大きく設定する。
【0026】
本発明の放射線撮影装置は、放射線を発生する放射線源と、放射線源を駆動する駆動回路と、第1電圧で駆動回路に電流を流す内部電源と、第1電圧とは異なる第2電圧で駆動回路に電流を流す外部電源と、内部電源及び/または外部電源を用いて、駆動回路に給電する給電制御部と、給電制御部が駆動回路への給電に使用する電源によって、放射線の出力を制御する放射線出力制限部と、を備え、給電制御部は、第1電圧が第2電圧よりも小さい場合に、内部電源及び外部電源を用いて、駆動回路に給電し、内部電源及び外部電源を用いた場合の電圧が、第2電圧に相当する電圧となるように、第2電圧から第1電圧を引いた電位差分の電圧で、外部電源から駆動回路に給電し、内部電源または外部電源のいずれかを駆動回路への給電に使用する電源とする場合において、放射線が発生中である場合、給電制御部は電源の切り替えを延期する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の放射線撮影装置によれば、内部電源からの電力供給により動作する構成の放射線撮影装置においても、外部電源を使用して、出力を制限した放射線を発生できる。この結果、内部電源に残量不足または劣化等があっても、放射線撮影装置を用いて、何らかの放射線撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】放射線撮影装置の概略図である。
図2】Cアームをスライドした放射線撮影装置である。
図3】Cアームを回転した放射線撮影装置である。
図4】放射線撮影パネルを分離して撮影する場合の模式図である。
図5】放射線発生部のブロック図である。
図6】放射線撮影部のブロック図である。
図7】撮影ユニット本体のブロック図である。
図8】電源ユニットの構成を示すブロック図である。
図9】給電制御部を構成する回路の1つの具体例である。
図10】放射線の曝射による内部電源の電圧降下を示すグラフである。
図11】放射線の曝射による内部電源の電圧降下を示すグラフである。
図12】内部電源のIV特性と、外部電源の供給限界を示すグラフである。
図13】内部電源の起電力と残量の関係を示すグラフである。
図14】内部電源の残量を検出する給電制御部のブロック図である。
図15】内部電源の内部抵抗を計測する給電制御部のブロック図である。
図16】第2実施形態の給電制御部を構成する回路の1つの具体例である。
図17】内部電源の残量と、内部電源と外部電源を切り替える閾値と、の関係を示す説明図である。
図18】内部電源の内部抵抗と、内部電源と外部電源を切り替える閾値と、の関係を示す説明図である。
図19】(A)内部電源から外部電源に切り替える場合の閾値と、(B)外部電源から内部電源に切り替える場合の閾値と、の関係を示す説明図である。
図20】電源の切り替えを行うフローチャートである。
図21】制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
図1に示すように、放射線撮影装置10は、撮影ユニット11と、表示ユニット12と、を備える。撮影ユニット11は、放射線を発生し、放射線を用いて被写体15(図4参照)を撮影するユニットである。表示ユニット12は、撮影ユニット11を用いて撮影した放射線画像を表示等するユニットである。
【0030】
撮影ユニット11は、撮影ユニット本体21と、放射線発生部22と、放射線撮影部23と、Cアーム25と、を備える。
【0031】
撮影ユニット本体21は、放射線発生部22、放射線撮影部23、及び、Cアーム25等の動作を統括的に制御する。また、撮影ユニット本体21は、表示ユニット12と有線または無線によって接続する。本実施形態においては、撮影ユニット本体21は、ケーブル31を用いて、表示ユニット12と有線接続する。これにより、撮影ユニット11は、表示ユニット12に、放射線画像及び電力等を供給する。表示ユニット12は、表示ユニット本体36と、放射線画像等を表示するモニタ37と、を備える。撮影ユニット本体21及び表示ユニット本体36にはキャスター27が取り付けられている。このため、放射線撮影装置10は移動自在であり、例えば、被写体15である患者がいる病室において放射線撮影を実施できる。
【0032】
放射線発生部22は、放射線撮影を行う場合に放射線を発生する。放射線発生部22は、Cアーム25の一端に回動自在に取り付けらている。本実施形態においては、放射線発生部22の回動はCアーム25の面内で可能である。例えば、Cアーム25をXZ面内に配置する場合(図1参照)、放射線発生部22は、XZ面内方向に回動できる。また、放射線発生部22は、第1操作部41を備える。第1操作部41は、放射線発生部22を操作するための操作部であり、放射線撮影装置10の使用状況に応じて有効または無効になる場合がある。なお、本実施形態においては、放射線発生部22において発生する放射線はX線であるが、放射線発生部22はX線以外の放射線を発生する構成に置換可能である。
【0033】
放射線撮影部23は、Cアーム25の他端(放射線発生部22が取り付けられた端部の反対側の端部)に着脱自在に取り付けられている。放射線撮影部23は、放射線発生部22が発生した放射線を用いて被写体15を撮影する。着脱検知部42は、放射線撮影部23の着脱を検知する機構であり、例えば、放射線撮影部23を取り付けた場合にオンになるスイッチ機構である。着脱検知部42は、本実施形態においてはCアーム25が放射線撮影部23を取り付ける端部に内蔵する。放射線撮影部23の着脱には、放射線撮影部23の一部の構成要素を着脱を含む。
【0034】
Cアーム25は、原則として、放射線発生部22と放射線撮影部23とが正対する位置(以下、正対位置という)に保持する。具体的には、Cアーム25は、放射線発生部22及び放射線撮影部23の両方を取り付けた場合に、放射線発生部22と放射線撮影部23を正対位置に保持する。ただし、放射線撮影装置10は、放射線撮影部23をCアーム25から取り外して放射線撮影を行うことができる。したがって、放射線撮影部23をCアーム25から取り外して放射線撮影を行う場合、Cアーム25は、放射線発生部22を任意の位置及び向き(通常は放射線撮影部23に対して正対する位置)に保持する。なお、正対位置とは、放射線発生部22が発生した放射線を、放射線撮影部23が概ね垂直に捉え得る位置である。「概ね垂直」は、被写体15の撮影に支障がない範囲内において放射線発生部22及び/または放射線撮影部23の傾斜等を許容する。
【0035】
Cアーム25は、スライド機構51を介して昇降機構52と接続する。スライド機構51はCアーム25を円弧状にスライド(摺動)自在に保持する。スライド機構51によってCアーム25をスライドすることにより、放射線発生部22及び放射線撮影部23は、正対位置を保ちながらCアーム25の中心(円弧である「C」形状の中心)の周りに回転できる。例えば、図1に示すように放射線発生部22及び放射線撮影部23をXZ面内に配置する場合、スライド機構51を用いてCアーム25をスライドすることにより、Cアーム25、並びに、Cアーム25に取り付けた放射線発生部22及び放射線撮影部23をY軸の周りに回転することができる。
【0036】
また、スライド機構51は、撮影ユニット本体21に対して鉛直方向(Z軸方向)に昇降自在に取り付けられた昇降機構52に対して回転自在に取り付けられている。このため、Cアーム25は、水平面内の特定方向(X軸)の周りに自在に回転できる。また、昇降機構52を昇降することにより、Cアーム25、並びに、Cアーム25に取り付けた放射線発生部22及び放射線撮影部23を鉛直上方向(Z軸正方向)または鉛直下方向(Z軸負方向)に任意に移動することができる。
【0037】
上記の他、撮影ユニット本体21は、第2操作部61を備える。第2操作部61は、放射線発生部22を含む撮影ユニット本体21の各部を操作する操作部である。第2操作部61を用いた操作は任意のタイミングで行うことができる。
【0038】
上記のように構成する放射線撮影装置10は、放射線を用いて被写体15を静止画または動画で撮影できる。すなわち、放射線撮影装置10は、放射線を用いて被写体15の静止画を撮影する静止画撮影モードと、放射線を用いて被写体15の動画を撮影する動画撮影モードと、を有する。また、本実施形態においては、図1及び図2に示すように、動画の撮影は、放射線発生部22を放射線撮影部23に対して相対的に概ね鉛直下方向(Z軸負方向)に配置し、かつ、放射線撮影部23を放射線発生部22に対して相対的に概ね鉛直上方向(Z軸正方向)に配置して実施する。一方、図3及び図4に示すように、静止画の撮影は、放射線発生部22を放射線撮影部23に対して相対的に概ね鉛直上方向に配置して実施する。また、図4に示すとおり、静止画の撮影は、Cアーム25から放射線撮影部23を取り外した状態でも行うことができる。この場合、放射線撮影部23は、放射線発生部22から見て被写体15の背後(図4においては被写体15のZ方向負側)に配置する。
【0039】
図5に示すように、放射線発生部22は、駆動回路71、放射線源72、コリメータ73、照射範囲表示部74、及び、第1操作部41を備える。
【0040】
駆動回路71は、放射線源72を駆動する駆動回路であり、いわゆる高電圧発生回路である。駆動回路71は、放射線源72に放射線を発生するために必要な電力を供給する。駆動回路71における高電圧とは、放射線源72が放射線を発生するために必要な電圧をいう。
【0041】
放射線源72は、駆動回路71から必要な電力の供給を受けて放射線を発生する。本実施形態においては、放射線源72は、X線を発生するX線源である。また、本実施形態においては、放射線源72と駆動回路71は一体的に構成されており、いわゆるモノタンク75(図1参照)を構成する。
【0042】
コリメータ73は、放射線源72が発生する放射線の照射範囲を調節する機構である。放射線撮影装置10においては、コリメータ73を用いて、撮影の条件等に応じて放射線の照射範囲を適切に変更可能である。コリメータ73は、放射線源72(モノタンク75)が放射線を放出する方向(放射線撮影部23の側)に配置する。
【0043】
照射範囲表示部74は、発光ダイオードまたはランプ等の発光素子であり、概ねX線の発生点(いわゆる焦点)の近傍からコリメータ73を介して可視光を被写体15に照射する。これにより、被写体15に放射線の照射範囲を表示する。
【0044】
第1操作部41は、放射線発生部22の各部を制御するための制御部である。具体的には、第1操作部41は、コリメータ73及び照射範囲表示部74の操作部である。したがって、ユーザである医師等は、第1操作部41を操作することによって放射線の照射範囲を調整できる。また、医師等は、第1操作部41を操作することによって放射線の照射範囲の表示をオンまたはオフすることができる。第1操作部41は、例えば、コリメータ73に設ける(図1等参照)。
【0045】
図6に示すように、放射線撮影部23は、放射線撮影パネル81、グリッド82、及び、バッテリ83等を備える。
【0046】
放射線撮影パネル81は、放射線発生部22が発生した放射線を受けて被写体15を画像化する。すなわち、放射線撮影パネル81(または放射線撮影部23の全体)は、いわゆる直接変換型または間接変換型のFPD(Flat Panel Detector)である。なお、本実施形態においては、放射線撮影部23が含む放射線撮影パネル81は、パネルサイズ等が異なる別の放射線撮影パネルに交換可能である。
【0047】
グリッド82は、散乱線を除去することによって放射線撮影画像の解像度等を向上する部材であり、放射線撮影パネル81の放射線の入射側(放射線発生部22がある側)に配置する。グリッド82は、交換可能である。グリッド82の交換は、放射線撮影パネル81とともに、または、放射線撮影パネル81とは別に行うことができる。また、グリッド82は、放射線撮影パネル81に含むことができる。
【0048】
バッテリ83は、放射線撮影パネル81に電力を供給するための電源である。バッテリ83は、放射線撮影パネル81に含むことができる。なお、本実施形態においては、放射線撮影部23をCアーム25から取り外して使用可能であるため、放射線撮影部23は放射線撮影部23はバッテリ83を搭載するが、放射線撮影装置10においては、Cアーム25に取り付け、撮影ユニット本体21から電力の供給を受けて放射線撮影をする放射線撮影パネルも使用できる。この場合、放射線撮影部23はバッテリ83を省略ることができる。
【0049】
図7に示すように、撮影ユニット本体21は、第2操作部61の他に、放射線撮影装置10の各部の動作を統括的に制御する制御部91と、放射線撮影装置10の各部に電力を供給する電源ユニット92と、放射線撮影部23を用いて撮影した放射線画像に必要に応じて画像処理を施す画像処理部93と、を備える。本実施形態においては、撮影ユニット本体21が画像処理部93を備えるが、画像処理部93は、表示ユニット本体36に設けることができる。
【0050】
図8に示すように、電源ユニット92は、内部電源101、外部電源102、及び、給電制御部103を備える。また、制御部91は、放射線出力制限部105を備える。
【0051】
内部電源101は、放射線撮影装置10の内部において電力を蓄積した電源であり、例えばバッテリまたはキャパシタである。本実施形態においては、内部電源101はバッテリである。内部電源101は、制御部91等だけでなく、給電制御部103を介して駆動回路71に電力を供給する。内部電源101が駆動回路71に電力を供給する場合、内部電源101は第1電圧で駆動回路71に電流を流す。なお、内部電源101は、電源ユニット92から取り外して蓄電する。ただし、内部電源101は、外部電源102から電力の供給を受けて蓄電できる。例えば、内部電源101をキャパシタで構成する場合には、外部電源102を用いて内部電源101を蓄電する。
【0052】
外部電源102は、放射線撮影装置10の外部から電力を取得する電源であり、例えば、病室等に配設された商用交流電源(electrical outlet)から電力を得るための回路等(いわゆるAC/DC(alternating current/Direct Current)電源)である。外部電源102は、第1電圧とは異なる第2電圧で駆動回路71に電流を流す。
【0053】
なお、内部電源101はバッテリ等であるから、残量、経時劣化による内部抵抗の上昇、または、駆動回路71の消費電力等によって、内部電源101が出力する電圧(第1電圧)が変化する場合がある。このため、内部電源101と外部電源102の比較(区別)する場合においては、これらの変動を考慮せず、「第1電圧」とは内部電源101の初期の電圧(初期の起電力)をいうものとする。その他の場合については、「第1電圧」とは、実際に内部電源101が出力する電圧をいうものとする。また、本実施形態においては、内部電源101の初期の電圧(初期の起電力)は外部電源102が出力する第2電圧よりも高い。外部電源102が駆動回路71に出力する電圧(第2電圧)は一定である。
【0054】
給電制御部103は、内部電源101及び/または外部電源102を用いて、駆動回路71に給電する。本実施形態においては、給電制御部103は、必要に応じて、内部電源101及び外部電源102の両方を用いて、駆動回路71に給電する。
【0055】
より具体的には、図9に示すように、本実施形態の給電制御部103は、例えば、内部電源101と外部電源102をダイオード109で接続する回路で構成する。このため、給電制御部103は、第1電圧が第2電圧よりも大きい場合、内部電源101を用いて駆動回路71に給電する。一方、給電制御部103は、内部電源101が出力する第1電圧が外部電源102が出力する第2電圧よりも小さい場合に、内部電源101及び外部電源102を用いて駆動回路71に給電する。なお、給電制御部103は、第1電圧と第2電圧が等しい場合、内部電源101、外部電源102、または、内部電源101及び外部電源102を用いて、駆動回路71に給電し得る。
【0056】
放射線出力制限部105は、給電制御部103が駆動回路71への給電に使用する電源によって、放射線の出力を制御する。例えば、放射線出力制限部105は、外部電源102を用いて駆動回路71に給電する場合に、外部電源102が駆動回路71に流す電流を制御することにより、放射線の出力を制限する。また、放射線出力制限部105は、放射線の出力を設定可能な範囲を制限することにより、放射線の出力を制限することができる。例えば、放射線の出力を設定するメニューから、特定の放射線の出力を選択できなくする等である。本実施形態においては、放射線出力制限部105は、放射線の出力を設定可能な範囲を制限することにより、放射線の出力を制限する。
【0057】
以下、上記のように構成する放射線撮影装置10を用いて放射線撮影を行う場合の作用を説明する。図10に示すように、内部電源101の起電力が「E」(V)であり、外部電源102が出力する第2電圧が「Va」(V)であるとする。そして、時刻T1から時刻T2にかけて放射線を曝射すると、放射線の曝射中において内部電源101が出力する第1電圧は「E」から「Vb」(V)に低下する。電圧降下後の内部電源101の出力電圧(第1電圧)「Vb」は、起電力「E」、内部電源101の内部抵抗「R」、駆動回路71の消費電流「I」を用いて、Vb=E-R・Iで表すことができる。
【0058】
したがって、内部電源101の起電力「E」、内部抵抗「R」、または、駆動回路71の消費電流「I」の値によっては、図11に示すように、内部電源101が駆動回路71に電流を流す場合に出力する電圧(第1電圧)Vbは、外部電源102が出力する電圧(第2電圧)Vaよりも低下する場合がある。この場合、内部電源101は、その給電力の範囲内で駆動回路71に電流を供給しつつ、かつ、外部電源102も駆動回路71に電流を供給する。すなわち、Vb<Vaの場合、外部電源102は、|Vb-Va|に対応する電流を駆動回路71に供給する。この結果、駆動回路71には内部電源101及び外部電源102の両方が電力を供給することになる。
【0059】
ただし、外部電源102の電力の供給力は有限である。外部電源102が日本における一般的な商用電源であれば、外部電源102は100V(1500W)である。このため、15Aより大きい電流の供給には耐えられない。そこで、放射線出力制限部105は、放射線の出力を、外部電源102が耐え得る範囲に制限する。例えば、図12に示すように、放射線撮影装置10が、W1ワット(例えば2.0kW)、W2ワット(例えば1.5kW)、W3ワット(例えば1.0kW)の放射線出力が可能である場合、内部電源101の特性(グラフ110で示すIV特性)によって、放射線出力制限部105は、外部電源102の電力の供給力を超えない破線で示す範囲に放射線の出力を制限する。図12においては、W1ワットの放射線出力は、実線Ia(W1)で示す範囲においてのみ設定可能とする。また、W2ワットの放射線出力は、実線Ia(W2)で示す範囲においてのみ設定可能とし、かつ、W3ワットの放射線出力は、実線Ia(W3)で示す範囲においてのみ設定可能とする。「P0」は、内部電源101の曝射時の電圧(第1電圧)Vbと、外部電源102の電圧(第2電圧)Vaと、が等しくなる点であり、「A1」はこの場合における内部電源101及び外部電源102が駆動回路71に供給する電流(A)である。また、「A2」は外部電源102が供給し得る最大の電流である。
【0060】
上記のように、放射線撮影装置10は、内部電源101及び外部電源102を用いて安定して放射線撮影を行うことができる。また、放射線撮影装置10は、内部電源101の電力の供給力が足りれば原則として内部電源101からの電力供給により動作(放射線を発生)するが、内部電源101からの供給電力が不足する場合においても、直ちに使用不可になるわけではなく、外部電源102を使用して何らかの放射線撮影を実行できる。
【0061】
なお、前述の通り、内部電源101が出力する電圧(第1電圧)Vbは、起電力「E」、起電力「E」、内部抵抗「R」、及び、駆動回路71の消費電流「I」によって変化する。このため、放射線出力制限部105は、内部電源101の特性を用いて、放射線の出力を制限することが好ましい。内部電源101の特性とは、内部電源101の起電力「E」及び/または内部抵抗「R」である。
【0062】
内部電源101の起電力「E」は、通常、図13に示すように、内部電源101の残量(%)によって変化する。例えば、残量がS1(%)の場合の内部電源101の起電力はE1(V)であり、残量がS2(%)の場合の内部電源101の起電力はE2(V)である。そして、内部電源101の起電力「E」が変化すると、放射線の出力にさらに制限が必要になる場合がある。例えば、実線Ia(W3)の範囲で補えない程度に内部電源101の起電力「E」が低下している場合、外部電源102はW3ワットの放射線の出力に耐えないので、放射線出力制限部105は、W3ワットの放射線の出力を制限(禁止)する必要がある。
【0063】
このため、図14に示すように、給電制御部103は、内部電源101の残量を検出する残量検出部130を備えることが好ましい。この場合、放射線出力制限部105は、残量検出部130の出力結果である内部電源101の残量を用いて、より適正に放射線の出力を制限することができる。この結果、内部電源101の残量によらず、安全に放射線撮影を継続できる。残量検出部130は、内部電源101の残量を検出するセンサまたは回路等である。
【0064】
また、内部電源101の内部抵抗「R」は、繰り返しの使用により、経時的に劣化する(内部抵抗[R]が大きくなる)。内部抵抗「R」が変化すると、図12におけるグラフ110の傾きが変化するので、放射線出力制限部105が制限すべき放射線の出力の範囲が変化する。このため、図15に示すように、給電制御部103は、内部電源101の内部抵抗「R」を計測する内部抵抗計測部140を備え、放射線出力制限部105は、内部抵抗計測部140の計測結果である内部抵抗「R」を用いてより適正に放射線の出力を制限することが好ましい。こうすれば、内部抵抗「R」の増加、すなわち内部電源101の経時劣化によらず、安全に放射線撮影を継続できる。内部抵抗計測部140は、内部電源101の内部抵抗を計測するセンサまたは回路等である。
【0065】
なお、給電制御部103は、残量検出部130と内部抵抗計測部140を両方備えることができる。この場合、放射線出力制限部105は放射線の出力の制限に内部電源101の残量と内部抵抗「R」の両方を考慮することができるので、さらに適正かつ安全に放射線の出力を制限できる。
【0066】
[第2実施形態]
上記第1実施形態においては、給電制御部103は、内部電源101及び外部電源102を用いて駆動回路71に給電するが、給電制御部103は、駆動回路71に給電する電源を内部電源101と外部電源102とで切り替えることができる。すなわち、給電制御部103は、内部電源101または外部電源102のいずれか一方を選択的に使用して駆動回路71に給電できる。例えば、給電制御部103は、図16に示すように、駆動回路71に接続する電源を、内部電源101と外部電源102とで切り替えるスイッチング回路で構成する。そして、放射線出力制限部105は、給電制御部103が内部電源101から外部電源102に切り替えた場合に、外部電源102で電力を供給可能な範囲内に、放射線の出力を制限する。
【0067】
このように、内部電源101と外部電源102を切り替える場合、内部電源101が残量不足等に陥っても、放射線出力制限部105による制限の下で、外部電源102を用いて最低限の放射線撮影を実施できる。
【0068】
上記のように内部電源101と外部電源102の切り替えを行う場合、給電制御部103は、例えば、内部電源101の残量について設定する閾値を用いて、内部電源101と外部電源102を切り替えることができる。内部電源101の残量不足によって、放射線撮影が正常に完了できないケースを回避するためである。
【0069】
上記のように、内部電源101の残量について設定する閾値を用いて切り替えを行う場合、給電制御部103は、放射線を用いて静止画を撮影する静止画撮影モードの場合と、放射線を用いて動画を撮影する動画撮影モードの場合とで異なる閾値を設定することが好ましい。例えば、図17に示すように、静止画撮影モードにおける内部電源101と外部電源102の切り替えの閾値を「Th1」とし、動画撮影モードにおける内部電源101と外部電源102の切り替えの閾値を上記静止画撮影モードの場合の閾値Th1よりも大きい閾値Th2に設定する(Th2>Th1)。動画の撮影は静止画の撮影に比べて曝射時間が長いので、動画撮影の途中において内部電源101の残量が不足する不具合を起きにくくするためである。また、静止画の撮影は動画の撮影に比べて曝射時間が短いので、内部電源101の残量を限界まで有効に利用して、放射線出力制限部105による制限を受けない放射線撮影を数多く実施できる。
【0070】
なお、上記第2実施形態においては、給電制御部103は、内部電源101の残量について閾値を設定しているが、この代わりに、または、これに加えて、内部電源101の内部抵抗「R」について閾値を設定し、内部抵抗「R」に係る閾値を用いて内部電源101と外部電源102を切り替えることができる。内部抵抗「R」について閾値を設定し、かつ、静止画撮影モードと動画撮影モードで閾値を異なる値にする場合には、図18に示すように、静止画撮影モードの閾値Th3は、動画撮影モードにおける閾値Th4よりも小さい値を設定すればよい。静止画の撮影においては内部電源101の電力を有効活用し、かつ、動画の撮影においては曝射途中の残量不足を起こりにくくするためである。
【0071】
また、上記第2実施形態においては、内部電源101の残量等について設定する閾値を用いて内部電源101と外部電源102の切り替えを行うが、内部電源101の残量等について設定する閾値は、内部電源101から外部電源102に切り替える場合と、外部電源102から内部電源101に切り替える場合と、で値が異なる閾値を用いることが好ましい。すなわち、内部電源101の残量等について設定する閾値にはヒステリシスをもたせることが好ましい。例えば、図19に示すように、内部電源101から外部電源102に切り替える場合の閾値ThA(図19(A))と、外部電源102から内部電源101に切り替える場合の閾値ThB(図19(B))と、を異なる値にする(ThA≠ThB)。閾値ThA及び閾値ThBが、内部電源101の残量について設定する閾値である場合には、ThA<ThBとする(図19)。閾値ThA及び閾値ThBが、内部電源101の内部抵抗について設定する閾値である場合には、ThA>ThBとする(図示しない)。このように、内部電源101と外部電源102の切り替えにヒステリシスを持たせると、頻繁な切り替えを防止できる。この結果、安定した放射線撮影を継続できる。
【0072】
また、放射線が発生中(曝射中)である場合、図20に示すように、給電制御部103は、電源の切り替えを延期する。適切な放射線撮影を完了するためである。ただし、内部電源101の残量がゼロになる場合等、やむを得ない場合がある。このため、図21に示すように、制御部91は、曝射時間算出部210と報知部211を備えることが好ましい。曝射時間算出部210は、内部電源101を用いて駆動回路71に電力を供給できる時間を計測する。そして、報知部211は、モニタ37への表示、または音声の発報等によって、内部電源101を用いて駆動回路71に電力を供給できる時間を報知する。これにより、ユーザは内部電源101を用いて継続して放射線撮影を行うことができる時間を認識でき、結果として、放射線の発生中の電源の切り替わりによる撮影失敗を避けることができる。
【0073】
上記第1実施形態及び第2実施形態等においては、放射線撮影装置10について説明したが、放射線発生部22が、内部電源101、外部電源102、及び、放射線出力制限部105を有する場合には、この放射線発生部22は上記第1実施形態及び/または第2実施形態の放射線撮影装置10と同様の効果を奏する。すなわち、上記第1実施形態及び第2実施形態等は、放射線を発生する放射線源と、放射線源を駆動する駆動回路と、第1電圧で駆動回路に電流を流す内部電源と、第1電圧とは異なる第2電圧で駆動回路に電流を流す外部電源と、内部電源及び/または外部電源を用いて、駆動回路に給電する給電制御部と、給電制御部が駆動回路への給電に使用する電源によって、放射線の出力を制御する放射線出力制限部と、を備える放射線発生装置を含む。
【0074】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態等は、放射線を発生する放射線源と、放射線源を駆動する駆動回路と、第1電圧で駆動回路に電流を流す内部電源と、第1電圧とは異なる第2電圧で駆動回路に電流を流す外部電源と、内部電源及び/または外部電源を用いて、駆動回路に給電する給電制御部と、を備える放射線撮影装置(または放射線発生装置)の駆動方法において、放射線出力制限部が、給電制御部が駆動回路への給電に使用する電源によって、放射線の出力を制御するステップを有する放射線撮影装置(または放射線発生装置)の駆動方法も含む。
【0075】
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態においては、内部電源101と外部電源102の2種類の電源を備えるが、本発明は、出力する電圧及び/または電流のプロファイルが異なる第1電源及び第2電源を備える放射線撮影装置に適用できる。例えば、出力する電圧及び/または電流のプロファイルが異なる2種類のバッテリ(内部電源)を搭載する放射線撮影装置及び放射線発生装置にも本発明を好適に適用できる。また、出力する電圧及び/または電流のプロファイルが異なる3以上の電源を有する放射線撮影装置及び放射線発生装置にも本発明を好適に適用できる。
【0076】
上記実施形態において、制御部91、画像処理部93、給電制御部103、放射線出力制限部105、曝射時間算出部210、及び、報知部211等といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0077】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGA、CPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0078】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。
【符号の説明】
【0079】
10 放射線撮影装置
11 撮影ユニット
12 表示ユニット
15 被写体
21 撮影ユニット本体
22 放射線発生部
23 放射線撮影部
25 Cアーム
27 キャスター
31 ケーブル
36 表示ユニット本体
37 モニタ
41 第1操作部
42 着脱検知部
51 スライド機構
52 昇降機構
61 第2操作部
71 駆動回路
72 放射線源
73 コリメータ
74 照射範囲表示部
75 モノタンク
81 放射線撮影パネル
82 グリッド
83 バッテリ
91 制御部
92 電源ユニット
93 画像処理部
101 内部電源
102 外部電源
103 給電制御部
105 放射線出力制限部
109 ダイオード
110 グラフ
130 残量検出部
140 内部抵抗計測部
210 曝射時間算出部
211 報知部
A1 電流
A2 電流
I 消費電流
E、E1、E2 起電力
Ia(W1) 実線
Ia(W2) 実線
Ia(W3) 実線
P0 点
T1 時刻
T2 時刻
Th1 閾値
Th2 閾値
Th3 閾値
Th4 閾値
ThA 閾値
ThB 閾値
Va 第2電圧
Vb 第1電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21