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特許7160943半導体ドナー基板からの層移転を容易にする光アシスト板状体形成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】半導体ドナー基板からの層移転を容易にする光アシスト板状体形成
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20221018BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20221018BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20221018BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/265 Q
H01L21/265 F
H01L21/265 H
H01L21/26 J
H01L21/26 Q
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2020560242
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019026123
(87)【国際公開番号】W WO2019209492
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】62/663,357
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ガン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ロッツ
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-023990(JP,A)
【文献】特開2004-193490(JP,A)
【文献】特表2017-538297(JP,A)
【文献】特開2012-069817(JP,A)
【文献】特開2016-225537(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017369(WO,A1)
【文献】特開2010-278337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/265
H01L 21/26
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造を準備する方法であって、
水素イオン、ヘリウムイオン、または水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせを、単結晶半導体ドナー基板の表面を通って、表面から中心面に向かって測定された平均深さDまで注入する工程であって、単結晶半導体ドナー基板は、2つの主要な、一般的に平行な面であって、その一方は単結晶半導体ドナー基板の表面であり、他方は単結晶半導体ドナー基板の裏面である、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面とを結合する周方向の縁部と、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面との間の中心面と、を有する工程と、
前記単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方に、単結晶半導体ドナー基板の温度を約200℃から約450℃の間の温度まで上昇させるのに十分な強度と時間の光を照射し、これによって単結晶半導体ドナー基板に劈開面を形成する工程であって、単結晶半導体ドナー基板は、照射中に、毎分約5回転から毎分約100回転の間の速度で回転する工程と、を含む方法。
【請求項2】
単結晶半導体ドナー基板は、半導体ウエハを含む請求項1の方法。
【請求項3】
半導体ウエハは、シリコン、サファイア、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、リン化インジウム、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む請求項2の方法。
【請求項4】
半導体ウエハは、チョクラルスキー法により成長させた単結晶シリコンインゴットからスライスされたウエハを含む請求項2の方法。
【請求項5】
単結晶半導体ドナー基板の表面は、水素イオン、ヘリウムイオン、または水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせを注入する前に酸化層を含む請求項1の方法。
【請求項6】
酸化層は、約1ナノメータと約5000ナノメータの間の厚さを有する請求項5の方法。
【請求項7】
光は、紫外線、可視光、または紫外線と可視光の組み合わせである請求項1の方法。
【請求項8】
光は、紫外光、赤外光、または赤外光と可視光の組み合わせである請求項1の方法。
【請求項9】
光は、約0.3マイクロメータと約3マイクロメータの間の波長を有する請求項1の方法。
【請求項10】
光は、約0.5マイクロメータと約2マイクロメータの間の波長を有する請求項1の方法。
【請求項11】
照射時間は、約1ミリ秒から約5分の間である請求項1の方法。
【請求項12】
照射時間は、約30秒から約5分の間である請求項1の方法。
【請求項13】
照射時間は、単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方の面ヘイズを増加させるのに十分である請求項1の方法。
【請求項14】
単結晶半導体ドナー基板の温度は、約350℃まで上昇する請求項1の方法。
【請求項15】
さらに、酸素プラズマ表面活性化を介して、その中に前記劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板を活性化する工程を含む請求項1の方法。
【請求項16】
さらに、内部に前記劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板の活性化された表面をキャリア基板の表面に結合して、キャリア基板と劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板とを含む結合構造体を形成する工程を含む請求項15の方法。
【請求項17】
キャリア基板は、シリコンウエハである請求項16の方法。
【請求項18】
シリコンウエハは、SiO表面層を含む請求項17の方法。
【請求項19】
さらに前記結合構造体をアニールする工程を含む請求項17の方法。
【請求項20】
前記結合構造体は、約l50℃から約500℃の間の温度でアニールされる請求項17の方法。
【請求項21】
さらに前記結合構造体を劈開面に沿って劈開して、これによりキャリア基板と単結晶半導体ドナー基板から転写された単結晶半導体デバイス層とを含む多層構造体を形成する請求項17の方法。
【請求項22】
キャリア基板は、サファイアウエハである請求項16の方法。
【請求項23】
キャリア基板は、石英ウエハである請求項16の方法。
【請求項24】
多層構造体を準備する方法であって、
水素イオン、ヘリウムイオン、または水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせを、単結晶半導体ドナー基板の表面を通って、表面から中心面に向かって測定された平均深さDまで注入する工程であって、単結晶半導体ドナー基板は、2つの主要な、一般的に平行な面であって、その一方は単結晶半導体ドナー基板の表面であり、他方は単結晶半導体ドナー基板の裏面であり、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面とを結合する周方向の縁部と、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面との間の中心面と、を有する工程と、
前記単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方に、単結晶半導体ドナー基板の温度を約200℃から約450℃の間の温度まで上昇させるのに十分な強度と時間の光を照射し、これにより単結晶半導体ドナー基板中に劈開面を形成する工程であって、照射時間は、約1ミリ秒から約5分の間である工程と、
酸素プラズマ表面活性化により、前記劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板を活性化する工程と、
前記劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板の前記活性化された表面をキャリア基板の表面に結合して、キャリア基板と劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板とを含む結合構造体を形成する工程と、
前記結合構造体をアニールする工程と、
前記結合構造体を劈開面に沿って劈開することにより、キャリア基板と単結晶半導体ドナー基板から転写された単結晶半導体デバイス層とを含む多層構造体を形成する工程と、を含む方法。
【請求項25】
単結晶半導体ドナー基板は、半導体ウエハを含む請求項24の方法。
【請求項26】
半導体ウエハは、シリコン、サファイア、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、リン化インジウム、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む請求項25の方法。
【請求項27】
半導体ウエハは、チョクラルスキー法により成長した単結晶シリコンインゴットからスライスされたウエハを含む請求項26の方法。
【請求項28】
単結晶半導体ドナー基板の表面は、水素イオン、ヘリウムイオン、または水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせを注入する前に、酸化層を含む請求項24の方法。
【請求項29】
酸化層は、約1ナノメータと約5000ナノメータの間の厚さを有する請求項28の方法。
【請求項30】
光は、紫外光、可視光、または紫外光と可視光の組み合わせである請求項24の方法。
【請求項31】
光は、紫外光、赤外光、または赤外光と可視光の組み合わせである請求項24の方法。
【請求項32】
光は、約0.3マイクロメータから約3マイクロメータの間の波長を有する請求項24の方法。
【請求項33】
光は、約0.5マイクロメータから約2マイクロメータの間の波長を有する請求項24の方法。
【請求項34】
照射時間は、約30秒から約5分の間である請求項24の方法。
【請求項35】
単結晶半導体ドナー基板は、照射中に回転する請求項24の方法。
【請求項36】
単結晶半導体ドナー基板は、毎分約5回転から毎分約100回転の間の速度で回転する請求項35の方法。
【請求項37】
照射時間は、単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方の面ヘイズを増加させるのに十分である請求項24の方法。
【請求項38】
単結晶半導体ドナー基板の温度は、約350℃まで上昇する請求項24の方法。
【請求項39】
キャリア基板は、シリコンウエハである請求項24の方法。
【請求項40】
シリコンウエハは、SiO表面層を含む請求項39の方法。
【請求項41】
キャリア基板は、サファイアウエハである請求項24の方法。
【請求項42】
キャリア基板は、石英ウエハである請求項24の方法。
【請求項43】
結合構造体は、約l50℃から約500℃の間の温度でアニールされる請求項24の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2018年4月27日に出願された米国仮出願62/663,537の優先権の利益を請求し、その開示は、その全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、多層半導体装置を準備する方法に関する。特に、本発明は、キャリアに基板を結合する前に半導体ドナー基板を準備する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体ウエハは、一般に、その後の手順においてウエハの適切なオリエンテーションのための1つ以上の平坦部またはノッチを有するようにトリミングおよび研磨された単結晶インゴット(例えば、単結晶シリコンインゴット)から準備される。続いてインゴットは、個々のウエハにスライスされる。ここでは、シリコンから形成された半導体ウエハに言及するが、例えば、ゲルマニウム、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウムまたはリン化インジウムのようなIII族元素およびV族元素の他の合金、または硫化カドミウムまたは酸化亜鉛のようなII族元素およびVI族元素の合金のような、他の材料を半導体ウエハの準備のために使用してもよい。
【0004】
半導体ウエハ(例えば、シリコンウエハ)は、複合層構造体の準備に利用されてもよい。複合層構造(例えば、半導体・オン・インシュレータ、より具体的には、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)構造)は、一般に、ハンドルウエハまたは層、デバイス層、およびハンドル層とデバイス層との間の絶縁(すなわち、誘電体)膜(典型的には酸化物層)を含む。一般に、デバイス層の厚さは、0.01~20マイクロメータの間、例えば0.05~20マイクロメータの間である。厚膜デバイス層は、約1.5マイクロメータと約20マイクロメータの間のデバイス層の厚さを有してもよい。薄膜デバイス層は、約0.01マイクロメータから約0.20マイクロメータの間の厚さを有してもよい。一般に、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、シリコン・オン・サファイヤ(SOS)、シリコン・オン・クオーツなどの複合層構造は、2枚のウエハを親密に接触させて配置し、それによってファン・デ・ワールス力による結合を開始し、続いて、結合を強化するための熱処理を行うことによって製造される。アニールは、末端のシラノール基を2つの界面間のシロキサン結合に変換し、それによって結合を強化する。
【0005】
熱アニールの後、結合した構造体は、層転位を達成するためにドナーウエハのかなりの部分を除去するためのさらなる処理を受ける。例えば、ウエハ薄膜化技術、例えばエッチングまたは研削が使用されてもよく、バックエッチングSOI(すなわち、BESOI)と呼ばれ、シリコンウエハがハンドルウエハに結合され、続いてハンドルウエハ上にシリコンの薄層だけが残るまで、ゆっくりとエッチング除去される。例えば、米国特許第5,189,500号を参照のこと。その開示は、その全体が記載されているかのように参照によりここに組み込まれる。この方法は、時間とコストがかかり、基板の1つを無駄にし、一般に、数ミクロンよりも薄い層では適切な厚さの均一性を有さない。
【0006】
層転写を達成する他の一般的な方法は、水素注入と、それに続く熱的に誘起された層分割を利用する。粒子(原子またはイオン化された原子、例えば、水素原子または水素とヘリウム原子の組み合わせ)が、ドナーウエハの表面下に所定の深さで注入される。注入された粒子は、注入された所定の深さでドナーウエハ内に劈開面を形成する。ドナーウエハの表面は、注入プロセス中にウエハ上に堆積した有機化合物またはホウ素化合物のような他の汚染物質を除去するために洗浄される。
【0007】
続いて、ドナーウエハの表面をハンドルウエハに結合し、親水性結合プロセスを介して結合ウエハを形成する。結合に先立って、ドナーウエハおよび/またはハンドルウエハは、例えば酸素または窒素を含むプラズマにウエハの表面を曝すことによって活性化される。プラズマへの曝露は、しばしば表面活性化と呼ばれるプロセスで表面の構造を変更し、この活性化プロセスは、ドナーウエハおよびハンドルウエハの一方または両方の表面を親水性にする。ウエハの表面は、SC1クリーンまたはフッ化水素酸のような湿式処理によって、さらに化学的に活性化されてもよい。湿式処理およびプラズマ活性化は、いずれかの順序で行われてもよいし、ウエハは1つの処理のみを受けてもよい。続いて、ウエハは一緒にプレスされ、その間に結合が形成される。この結合は、ファン・デ・ワールスの力に起因する比較的弱い結合であり、さらなる処理が行われる前に強化されなければならない。
【0008】
いくつかのプロセスでは、ドナーウエハとハンドルウエハとの間の親水性結合(すなわち、結合されたウエハ)は、結合されたウエハペアを加熱またはアニールすることによって強化される。いくつかのプロセスにおいて、ウエハ結合は、約300℃~約500℃の間のような低温で行っても良い。いくつかのプロセスでは、ウエハ結合は、約800℃~約1100℃の間のような高温で行っても良い。高温になると、ドナーウエハとハンドルウエハの隣接する表面間に共有結合が形成され、ドナーウエハとハンドルウエハの間の結合が固化する。結合したウエハの加熱またはアニールと同時に、ドナーウエハに先に埋め込まれた粒子が劈開面を弱める。
【0009】
続いて、ドナーウエハの一部が、結合されたウエハから劈開面に沿って分離(すなわち、劈開)され、SOIウエハが形成される。ドナーウエハの一部を接合されたウエハから引き離すために、機械的な力が結合されたウエハの対向する側に垂直に加えられる固定具の中に接合されたウエハを置くことによって劈開が行われてもよい。いくつかの方法によれば、機械的な力を加えるために吸盤が利用される。ドナーウエハの一部の分離は、劈開面に沿ってクラックの伝播を開始するために、結合されたウエハのエッジに劈開面で機械的なくさびを適用することによって開始される。吸盤によって加えられた機械的な力は、続いて、ドナーウエハの一部を結合されたウエハから引っ張り、それによってSOIウエハを形成する。
【0010】
他の方法によれば、代わりに、結合されたペアは、結合されたウエハからドナーウエハの一部を分離するために、一定期間にわたって高温に曝されてもよい。高温に曝されることにより、劈開面に沿ったクラックの開始および伝播が生じ、これによりドナーウエハの一部が分離される。クラックは、注入されたイオンからの空隙の形成により形成され、オストワルド熟成により成長する。空隙は水素とヘリウムで満たされる。この空隙が板状体(platelet)となる。板状体内の加圧されたガスがマイクロキャビティやマイクロクラックを伝搬し、注入面のシリコンを弱める。適切な時にアニールを停止すれば、弱くなった結合されたウエハは機械的なプロセスによって劈開可能である。しかし、熱処理がより長い期間および/またはより高い温度で継続された場合、マイクロクラックの伝播は、すべてのクラックが劈開面に沿って合流するレベルに達し、それによってドナーウエハの一部が分離される。この方法は、転写された層をより均一にし、さらにドナーウエハの再利用を可能にするが、典型的には、注入および結合されたペアを500℃に近い温度に加熱することが必要になる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の態様の中で、単結晶半導体ドナー基板を準備する方法に注目することができる。この方法は、水素イオン、ヘリウムイオン、または水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせを、単結晶半導体ドナー基板の表面を通って、表面から中心面に向かって測定される平均深さDまで注入する工程を含み、単結晶半導体ドナー基板は、2つの主要な、一般的に平行な面を含み、一方の面は単結晶半導体ドナー基板の表面であり、他方の面は単結晶半導体ドナー基板の裏面であり、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面とを結合する周方向の縁部と、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面との間の中心面と、を含み、この方法はさらに、単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方に、単結晶半導体ドナー基板の温度を450℃まで上昇させるのに十分な強度と時間の光を照射し、これによって単結晶半導体ドナー基板中に劈開面を形成する工程を含む。
【0012】
他の態様では、本発明は、多層構造体を準備する方法に関する。この方法は、水素イオン、ヘリウムイオン、または水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせを、表面から中心面に向かって測定される平均深さDまで単結晶半導体ドナー基板の表面を通して注入する工程を含み、単結晶半導体ドナー基板は、2つの主要な、一般的に平行な面を含み、一方の面は単結晶半導体ドナー基板の表面であり、他方の面は単結晶半導体ドナー基板の裏面であり、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面とを結合する周方向の縁部と、単結晶半導体ドナー基板の表面と裏面との間の中心面と、を含み、この方法はさらに、単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方に、単結晶半導体ドナー基板の温度を450℃まで上昇させるのに十分な強度と時間の光を照射し、これによって単結晶半導体ドナー基板中に劈開面を形成する工程と、劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板を酸素プラズマ表面活性化により活性化する工程と、劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板の活性化された表面をキャリア基板の表面に結合し、キャリア基板と劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板とを含む結合構造体を形成する工程と、結合構造体をアニールする工程と、結合構造体を劈開面に沿って劈開して、キャリア基板と単結晶半導体ドナー基板から転写された単結晶半導体デバイス層を含む多層構造体を形成する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明にかかる方法を実施するのに適した装置の代替的な記載である。
図1B】本発明にかかる方法を実施するのに適した装置の代替的な記載である。
図2】本発明の方法により処理されたウエハの表面上のヘイズの発生を示すグラフである。
図3A】本発明の方法により処理されたウエハの原子間力顕微鏡による表面粗さ測定を示す。
図3B】本発明の方法により処理されたウエハの原子間力顕微鏡による表面粗さ測定を示す。
図4】本発明の方法により処理されたウエハで検出された欠陥の減少を示すグラフである。
図5】本発明の方法により処理されたウエハからの劈開した構造の表面上のヘイズの減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、多層構造体を準備するための方法に関する。本発明にかかる方法は、半導体ドナー構造における均一な劈開面の形成を可能にする。本発明にかかる方法は、ドナー構造体に光を照射することにより、水素注入、ヘリウム注入、または水素とヘリウムの共注入半導体ドナーウエハにおける板状体の形成を促進する。いくつかの具体例では、ドナーは、紫外線、可視光、または赤外光を照射される。いくつかの具体例では、ドナーは、0.3マイクロメータ(μM)から3マイクロメータの範囲の波長の光を照射される。注入中に生成された結晶格子および点欠陥の両方による光子の吸収は、ミリ秒から数十秒までのような短い時間スケールでの板状体の形成を促進する。光子吸収アシスト板状体形成プロセスは、それに続く層転写プロセスにおける十分に定義された劈開面の形成を促進する最小の組み込み応力(built-in stress)を有する均一に分布した板状体をもたらし、これは、有利には、最小の欠陥を有する均一な層転写を達成する。いくつかの具体例では、本発明は、完全劣化シリコン・オン・インシュレータ(FDSOI)のような非常に要求の厳しい先端製品に適した製造プロセスを提供する。
【0015】
本発明の方法のいくつかの具体例では、水素イオン、ヘリウムイオン、またはヘリウムイオンと水素イオンの組み合わせの注入は、ドナー基板内に損傷層を形成する。いくつかの具体例では、注入された半導体ドナー構造体は、光照射され、それによって、注入によって形成された損傷層の周囲にドナー構造体中に劈開面を規定する板状体を形成する。いくつかの具体例では、ドナー構造体は、その後、キャリア構造体に結合され、結合された構造体は劈開されてドナー構造体からキャリア構造体に層を移す。
【0016】
従来の層転写方法は、板状体形成の正確な制御を提供しない。板状体は、結合前のアニール中に、または結合構造のアニール中に形成されてもよい。炉アニールプロセスは比較的長いプロセスであるため、空孔および注入種の拡散によって板状体形成が促進される。熱収支の増加に伴い、注入された種の一部は外部への拡散によって失われる。アニール中のオストワルド熟成プロセスは、その後の劈開プロセスで転送される層に不均一な応力を作成した不均一な板状体につながる。大きな板状体の過成長は、劈開前または劈開中に破断することができ、これは、様々な欠陥をもたらす。層転写の欠陥は、根本的な原因と大きさに基づいて以下のように分類される。
【0017】
1.ボイド。ボイドは、直径が数百マイクロメータまたはそれ以上のオーダーである。結合界面に捕捉された粒子や結合界面の空洞により形成され、注入された種からのガスの蓄積との組み合わせで不十分な結合強度がこれが原因で発生する。
2.プルアウト。これらの欠陥は、典型的には直径がマイクロメータの範囲内にある。形成のメカニズムは、ボイドと同様である。
3.大面積の欠陥。これらの欠陥は、典型的にはサブマイクロメータの大きさである。それらの欠陥は、不均一な局所応力および層の破裂を生じさせた板状体の不均一な形成およびオストワルドの熟成プロセスによって引き起こされる。
4.光点欠陥。これらの欠陥には、ウエハ表面に垂直に保持された狭ビーム光源がウエハを照射した場合に見られる反射光の個々の微細な点が含まれる。これらの欠陥は、サイズがナノメータからマイクロメータのオーダーである。これらの欠陥は、板状体の形成や成長の過程で形成されることがほとんどである。
【0018】
これらの潜在的な欠陥の観点から、板状体形成および成長を引き起こすための従来のアニールは、転写された層を最良の品質にしない可能性がある。様々な欠陥の性質および形成機構にかかわらず、板状体の形成と同様に、結合界面の清浄度および強度を制御することは、層転写欠陥を低減または除去するために非常に重要である。
【0019】
本発明の方法によれば、光子アシストされた板状体の核生成および成長によって、均一な劈開面が形成されてもよい。このような方法は、有利には、従来の方法で起こり得る上で引用した欠陥の発生率を減少させる。いくつかの具体例では、ドナーには、紫外線、可視光、または赤外光が照射される。いくつかの具体例では、注入されたドナーウエハを処理するために、0.3マイクロメータ(mM)から3マイクロメータの範囲の波長を有する光源が使用される。使用される光源に応じて、ウエハを所定の温度まで加熱してもよい。結晶格子、自由キャリア、および点欠陥の両方の光子吸収により、板状体の均一な核生成と成長が促進され、これは、炉アニールプロセスで起こる光子(熱)アシスト板状体形成と成長の場合よりもはるかに低い温度で起きる。
【0020】
光子アシスト板状体形成プロセスは、空孔と注入された水素の両方の最小の長距離拡散を伴うので、注入された水素と空孔は、望ましくない外部拡散無しに効率的に板状体内に固定される。この光子アシスト板状体形成の全体的な利点には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
1.転写される層における板状体サイズおよび関連する応力の均一な分布。
2.注入された種により効率的な利用、それは層転写のための熱予算をさらに低下させ、板状体の成長におけるオストワルドの熟成プロセスを抑制する。
【0022】
上述の2つの複合効果は、層転写の欠陥を実質的に減少させることにつながる。例えば、これまでの経験的な結果は、特に光点欠陥が、本発明の方法によって達成されたより良い板状体形成制御のために、実質的に減少していることを示している。
【0023】
I.本発明の方法にかかる使用のための構造
本発明で使用するための基板は、単結晶半導体ドナー基板とキャリア基板とを含む。一般に、単結晶半導体ドナー基板は、2つの主要な一般的に平行な面であって、そのうちの1つは基板の表面で、他方は基板の裏面であり、さらに表面と裏面とを結合する周方向の縁と、表面と裏面との間のバルク領域と、表面と裏面との間のほぼ等距離の中心面とを含む。半導体ウエハ、例えばシリコンウエハは、典型的には、いくつかの総厚さ変動(TTV)、反り、および弓を有するので、表面上のすべての点と裏面上のすべての点との間の中点は、正確には平面内に収まらない。しかしながら、実用的な問題として、TTV、反り、および弓は、典型的には非常にわずかなものであり、近似的には、中間点は、表面と裏面との間でほぼ等距離にある架空の中心平面内にある。
【0024】
ここに記載されているような操作に先立って、単結晶半導体ドナー基板の表面および裏面は実質的に同一でもよい。面は、単に便宜上、および一般的に、本発明の方法の操作が実行される面を区別するために、「表面」または「裏面」と呼ばれる。本明細書全体に記載されているように、操作、例えば、イオン注入、照射、酸素プラズマ活性化などは、基板の表面上で行われる。この命名の規則は、ドナー基板の裏面で同一のそのような操作を行うこと、または異なる操作を行うことを排除するものではない。いくつかの具体例では、特定の操作、例えば、照射は、表面および裏面の上で起こり得る。本発明の文脈では、キャリア基板および単結晶半導体ドナー基板のいずれかまたは両方の面上に、1つまたはそれ以上の絶縁層が準備されてもよい。従来のボンディングステップおよびウエハ薄膜化ステップが完了すると、単結晶半導体ドナー基板は、半導体・オン・インシュレータ(例えば、シリコン・オン・インシュレータ)複合構造体のデバイス層を形成する。
【0025】
いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、半導体ウエハを含む。好ましい具体例では、半導体ウエハは、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、リン化インジウム、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む。本発明の単結晶半導体ドナー基板は、典型的には、少なくとも約150mm、少なくとも約200mm、少なくとも約300mm、または少なくとも約450mmの公称直径を有する。ウエハの厚さは、約250マイクロメータから約1500マイクロメータまで、例えば約300マイクロメータから約1000マイクロメータまで、好適には約500マイクロメータから約1000マイクロメータまでの範囲内で変化し得る。いくつかの特定の具体例では、ウエハの厚さは、約725マイクロメータであってもよい。いくつかの特定の具体例では、ウエハの厚さは、約775マイクロメータであってもよい。
【0026】
特に好ましい具体例では、半導体ウエハは、従来のチョクラルスキー結晶成長法により成長した単結晶インゴットからスライスされた単結晶シリコンウエハを含む。このような方法、および標準的なシリコンスライス、ラッピング、エッチング、および研磨技術は、例えば、F. Shimura, Semiconductor Silicon Crystal Technology, Academic Press, 1989、およびSilicon Chemical Etching, (J. Grabmaier ed.) Springer-Verlag, N.Y., 1982(参照によりここに組み込まれる)に開示されている。所望であれば、ウエハは、例えば、標準的なSC1/SC2溶液中で洗浄することができる。いくつかの具体例では、本発明の単結晶シリコンウエハは、従来のチョクラルスキー(「Cz」)結晶成長法により成長された単結晶インゴットからスライスされた単結晶シリコンウエハであり、典型的には、少なくとも約150mm、少なくとも約200mm、少なくとも約300mm、または少なくとも約450mmの公称直径を有する。好ましくは、単結晶シリコンハンドルウエハ、例えばドナーウエハおよびキャリアウエハは、傷、大きな粒子などの表面欠陥がない鏡面研磨された表面仕上げを有する。ウエハの厚さは、約250マイクロメータから約1500マイクロメータまで、例えば約300マイクロメータから約1000マイクロメータまで、好適には約500マイクロメータから約1000マイクロメータまでの範囲内で変化してもよい。いくつかの特定の具体例では、ウエハの厚さは、約725マイクロメータから約800マイクロメータの間、例えば約750マイクロメータから約800マイクロメータの間の範囲内であってもよい。いくつかの具体例では、ウエハの厚さは、約725マイクロメータであってもよい。いくつかの具体例では、ウエハの厚さは、約775マイクロメータであってもよい。
【0027】
いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、チョクラルスキー成長法によって一般的に達成される濃度のインタースティシャルな酸素を含む。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、約4PPMAから約18PPMAの間の濃度の酸素を含む。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、約10PPMAと約35PPMAの間の濃度の酸素を含む。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、約10PPMA未満のような約12PPMAを超えない濃度の酸素を含む。インタースティシャルな酸素は、SEMI MF 1188~1105に従って測定されてもよい。
【0028】
単結晶半導体ドナー基板は、チョクラルスキー法またはフロートゾーン法で得られる抵抗率を有してもよい。したがって、単結晶半導体ドナー基板の抵抗率は、本発明の構造の最終用途/応用の要件に基づいている。したがって、抵抗率は、ミリオーム以下からメガオーム以上まで変化し得る。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、p型またはn型ドーパントを含む。好適なドーパントとしては、ホウ素(p型)、ガリウム(p型)、アルミニウム(p型)、インジウム(p型)、リン(n型)、アンチモン(n型)、およびヒ素(n型)が挙げられる。ドーパント濃度は、ハンドルウエハの所望の抵抗率に基づいて選択される。いくつかの具体例では、単結晶半導体ハンドル基板は、p型ドーパントを含む。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、ホウ素などのp型ドーパントを含む単結晶シリコンウエハである。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、約100Ω・cm未満、約50Ω・cm未満、約1Ω・cm未満、約0.1Ω・cm未満、または約0.01Ω・cm未満などの比較的低い最小バルク抵抗率を有する。
【0029】
いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、比較的高い最小バルク抵抗率を有する。高抵抗ウエハは、一般に、チョクラルスキー法またはフロートゾーン法によって成長させた単結晶インゴットからスライスされる。高抵抗ウエハは、ボロン(p型)、ガリウム(p型)、アルミニウム(p型)、インジウム(p型)、リン(n型)、アンチモン(n型)、ヒ素(n型)などの電気的に活性なドーパントを一般的に非常に低い濃度で含んでいてもよい。Cz成長したシリコンウエハは、結晶成長中に取り込まれた酸素に起因する熱ドナーを全滅させるために、約600℃から約l000℃の温度で熱アニールを受けてもよい。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、少なくとも約100オーム・cm、さらには少なくとも約500オーム・cm、例えば約100オーム・cmと約100,000オーム・cmとの間、または約500オーム・cmと約100,000オーム・cmとの間、または約1,000オーム・cmと約100,000オーム・cmとの間、または約500オーム・cmと約10,000オーム・cmとの間、または約750オーム・cmと約10,000オーム・cmとの間、約1,000オーム・cmと約10,000オーム・cmとの間、約1,000オーム・cmと約6,000オーム・cmとの間、約2,000オーム・cmと約10,000オーム・cmとの間、約3,000オーム・cmと約10,000オーム・cmとの間、または約3,000オーム・cmと約5,000オーム・cmとの間の最小バルク抵抗率を有する。高抵抗率ウエハを準備するための方法は、この技術分野で知られており、そのような高抵抗率ウエハは、商業的な供給者、例えば、SunEdison Semiconductor Ltd.(St. Peters, MO; 以前のMEMC Electronic Materials, Inc.)から得ることができる。
【0030】
単結晶半導体ドナー基板は、単結晶シリコンを含んでもよい。単結晶半導体ドナー基板は、例えば、(100)、(110)、(110)、または(111)のいずれかの結晶オリエンテーションを有してもよく、結晶オリエンテーションの選択は、構造体の最終用途によって決定されてもよい。
【0031】
いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板の主面は、本発明の方法の操作の前に未処理であってもよい。すなわち、単結晶半導体ドナー基板は、スライスされ、研磨されてもよいが、酸化層または窒化層を有するようにさらに処理されていなくても良い。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板は、自然酸化シリコン層以外の層を含まない。いくつかの具体例では、イオン注入に先立って、単結晶半導体ドナー基板の主面のうちの1つ以上が酸化されていてもよい。好ましい具体例では、イオン注入に先立って、表面層、すなわち、水素イオンまたは水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせが注入される層が酸化されても良い。界面密度を低く抑えるためには、最表面のシリコン/BOX界面に熱界面を設けることが好ましい。また、単結晶半導体ドナー基板は、ウエハブリスタの原因となる可能性があるので、イオン注入後に酸化されないことが望ましい。いくつかの具体例では、イオン注入の前に、単結晶半導体ドナー基板の主面のうちの1つ以上を窒化してもよい。好ましい具体例では、表面層、すなわちヘリウムイオンおよび水素イオンがそこを通って注入される層は、イオン注入に先立って窒化される。
【0032】
単結晶半導体ドナー基板は、ASM A400のような炉内で熱酸化されてもよい。温度は、酸化雰囲気で750℃から1100℃の範囲でもよい。酸化性雰囲気は、ArまたはNなどの不活性ガスと、0との混合ガスであってもよい。酸素含有量は、1~10%、またはそれ以上でもよい。いくつかの具体例では、酸化性周囲雰囲気は、100%まででもよい(「乾式酸化」)。いくつかの具体例では、周囲雰囲気は、ArまたはNなどの不活性ガスと、0および水蒸気などの酸化性ガスとの混合物を含んでもよい(「湿式酸化」)。例示的な具体例では、ドナーウエハは、A400のような垂直炉に装填されてもよい。温度は、Nおよび0の混合物で酸化温度に加熱される。所望の温度で水蒸気をガス流に導入する。所望の酸化膜厚が得られた後、水蒸気と0をオフにして炉の温度を下げ、ウエハを炉から取り出す。いくつかの具体例では、酸化層は、約1ナノメータと約5000ナノメータとの間、例えば約1ナノメータと約1000ナノメータとの間、または約1ナノメータと約100ナノメータとの間、約1ナノメータと約50ナノメータとの間の厚さを有する。
【0033】
酸化後、ウエハの洗浄は任意である。所望であれば、ウエハは、例えば、標準的なSC1/SC2溶液中で洗浄することができる。
【0034】
II.イオン注入
本発明の方法によれば、エッチングされ、研磨され、任意に酸化された半導体ウエハのような単結晶半導体ドナー基板は、ドナー基板に損傷層を形成するためにイオン注入を受ける。イオン注入は、Applied Materials Quantum II、Quantum LEAP、またはQuantum Xのような市販の装置で実施してもよく、注入されたイオンは、ヘリウムイオンまたは水素イオン、またはそれらの組み合わせを含む。注入されたイオンは、He、H、H 、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの具体例では、水素イオン、ヘリウムイオン、または水素イオンとヘリウムイオンの組み合わせが、単結晶半導体ドナー基板の表面を通って中心面に向かって測定された平均深さDまで注入される。イオン注入は、半導体ドナー基板に損傷層を形成するのに十分な密度と時間で行われる。注入密度は、約1012イオン/cm~約1017イオン/cmの範囲であってもよく、例えば、約1014イオン/cm~約1017イオン/cm、約1015イオン/cm~約1016イオン/cmでも良い。注入エネルギーは、約1keVから約3,000keVまで、例えば、約10keVから約3,000keVまでの範囲でもよい。注入エネルギーは、約1keVから約3,000keVまで、例えば約5keVから約1,000keVまで、または約5keVから約200keVまで、または約5keVから約100keVまで、または約5keVから約80keVまででもよい。注入の深さDは、最終的なSOI構造における単結晶半導体デバイス層の厚さを決定する。イオンは、約100オングストロームと約30,000オングストロームの間、例えば約200オングストロームと約20,000オングストロームの間、例えば約2000オングストロームと約15,000オングストロームの間、または約15,000オングストロームと約30,000オングストロームの間の深さDに注入されてもよい。水素およびヘリウムの両方が注入される場合、好ましくは、ヘリウム注入のピーク濃度は、水素注入のピークの約±1000オングストローム以内、より好ましくは約±500オングストローム以内、さらに好ましくは約±100オングストローム以内であることが望ましい。ヘリウム注入は、水素注入の前に、同時に、または水素注入の後に行っても良い。
【0035】
いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板、例えば単結晶シリコンドナーウエハを、注入後に洗浄することが望ましい。いくつかの好ましい具体例では、洗浄は、ピラニア洗浄に続いて、DI水洗浄およびSC1/SC2洗浄を含んでも良い。いくつかの具体例では、注入後にウエハを洗浄することが望ましいかもしれない。いくつかの好ましい具体例では、洗浄は、ピラニア洗浄に続いて、DI水リンスおよびSC1/SC2洗浄を含むことができる。
【0036】
III.注入された単結晶半導体ドナー基板の照射
本発明の方法によれば、注入された単結晶半導体ドナー基板に光を照射して、それによってイオン注入によって生じた損傷層またはその近傍に劈開面を形成する。劈開面は、転写されたデバイス層上の欠陥を減少させる均一な板状体を含む。均一な板状体の核形成および成長は、結晶格子、自由キャリアおよび点欠陥の両方の光子吸収によって促進され、これは、炉アニールプロセスで起こるようなフォノン(熱)アシスト板状体の形成および成長の場合よりもはるかに低い温度で起こる。いくつかの具体例によれば、単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方に、単結晶半導体ドナー基板の温度を450℃まで上昇させるのに十分な強度および持続時間の光が照射され、それによって単結晶半導体ドナー基板に劈開面が形成される。
【0037】
いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー構造体は、急速熱処理ツールに装填される。好適な例示的なツールは、Applied Materials社のRTP Centura(登録商標)である。単結晶半導体ドナー構造体、例えば単結晶半導体ウエハは、室温でロボットによってつかまれ、反応器のチャンバ内のサセプタ、例えばSiCコーティングされたグラファイトサセプタ上に置かれる。図1Aを参照すると、サセプタ10がウエハ20を保持している状態で、ウエハ30が照射されている。図1Bを参照すると、いくつかのツールでは、多くの産業用高速熱処理ツールで典型的に使用されるように、ウエハ120は例えば3つの支持ピン100によって支持され、照射30が行われている間、シールドリング110によってシールドされていてもよい。いくつかの具体例では、光は、紫外光または可視光、または紫外光と可視光の組み合わせである。いくつかの具体例では、光は、赤外光、または紫外光と赤外光の組み合わせであり、これは、紫外ランプと赤外ランプの組み合わせを使用することによって達成される。ウエハ120がツール内に配置されると、ランプが点灯する。本発明の方法に適したランプとしては、タングステンハロゲン石英ランプ、キセノンアークプラズマランプ、二酸化炭素レーザーなどが挙げられる。タングステンハロゲンランプは、一般に約500ナノメータ(0.5マイクロメータ)以上のスペクトル、例えば約500ナノメータ(0.5マイクロメータ)~約2000ナノメータ(2.0マイクロメータ)の間、または約500ナノメータ(0.5マイクロメータ)~約1500ナノメータ(1.5マイクロメータ)の間、または約500ナノメータ(0.5マイクロメータ)~約2500ナノメータ(2.5マイクロメータ)の間のスペクトルの照射に適している。適したランプとしては、レニウム合金社、ウシオ社の石英ハロゲンIRランプが挙げられる。キセノンアークプラズマランプは、一般的に約300ナノメータ(0.3マイクロメータ)を超えるスペクトル、例えば約300ナノメータ(0.3マイクロメータ)から約1100ナノメータ(1.1マイクロメータ)の間などの照射に適している。いくつかの具体例では、光は、約0.3マイクロメータから約3マイクロメータの間の波長を有する。いくつかの具体例では、光は、約0.5マイクロメータから約2マイクロメータの間の波長を有する。
【0038】
いくつかの具体例では、照射時間は、約1ミリ秒と約5分の間、例えば約10秒と約5分の間、または約30秒と約5分の間、または約30秒と約180秒の間、または約60秒と約120秒の間である。光源の種類およびウエハ支持機構の熱質量に応じて、処理時間は適宜制御される。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー構造は、照射中に、例えばサセプタ上で回転する。単結晶半導体ドナー構造は、毎分約5回転から毎分約100回転の間の速度で回転してもよい。
【0039】
いくつかの具体例では、照射は、ウエハの温度の上昇を引き起こし、これは、ウエハの表面またはバルクで測定してもよい。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板の温度は、約200℃と約450℃の間の温度、例えば約250℃と約350℃の間の温度に上昇する。いくつかの具体例では、単結晶半導体ドナー基板の温度は、約30℃と約350℃との間、または約200℃と約350℃との間など、約350℃の温度まで上昇する。
【0040】
照射時間は、単結晶半導体ドナー基板の表面、裏面、または表面と裏面の両方のヘイズを増加させるのに十分である。表面ヘイズの顕著な増加は、ウエハ照射の終点となる可能性があります。例えば、照射中にウエハの温度が上昇するにつれてヘイズが顕著に増加する様子を描いた図2を参照すべし。表面ヘイズは、KLA-Tencor Surfe Scan(登録商標)のような市販の表面検査ツールを用いてオフラインで測定し、ヘイズ変化のオンセットを決定することができる。板状体形成のオンセットは、図3Aに示すように、AFM測定で測定することができる。直径約1マイクロメータまでの、高さ約1~約5nmの範囲のバンプが、板状体の核形成および成長の結果として見られる。例えば、観察可能なバンプの横方向の寸法は、約1~約2マイクロメータの範囲、例えば約1.6マイクロメータである。高さは、約1~約5ナノメータの範囲、例えば約4ナノメータであってもよい。表面の二乗平均平方根粗さは、約1ナノメータから約2ナノメータの範囲、例えば約1.4ナノメータであってもよい。表面の平均粗さは、約0.1ナノメータから約1ナノメータの範囲、例えば約0.4ナノメータであってもよい。20%程度のヘイズ増加の発症が照射の終点とされている。過剰に処理すると、板状体が大きく成長してブリスターを形成し、結合ボイドや層間転写不良を引き起こす。ヘイズ制御は、生産に適した非破壊的なインラインモニター方法として推奨されています。ヘイズの増加は、劈開面での均一な板状体の成長を示している。
【0041】
IV.プラズマ活性化
いくつかの具体例では、イオン注入され、任意に洗浄され、その中に劈開面を有する単結晶半導体ドナー基板を、酸素プラズマおよび/または窒素プラズマ表面活性化に供する。いくつかの具体例では、酸素プラズマ表面活性化ツールは、EVG(登録商標)8l0LT低温度プラズマ活性化システムなどのEVグループから入手可能なツールのような市販のツールである。イオン注入され、任意に洗浄された単結晶半導体ドナー基板は、チャンバに装填される。チャンバ内を真空にし、大気圧以下の圧力で0またはNを充填してプラズマを発生させる。単結晶半導体ドナー基板は、約1秒から約120秒までの範囲であってもよい所望の時間、このプラズマに曝される。酸素または窒素プラズマ表面酸化は、単結晶半導体ドナー基板の表面を親水性にして、上述の方法に従って準備された単結晶半導体ハンドル基板に結合することができるようにするために行われる。プラズマ活性化後、活性化された表面を脱イオン水でリンスする。その後、単結晶半導体ドナー基板は、結合に先立ってスピンドライされる。酸素プラズマ表面酸化は、単結晶半導体ドナー基板の表面を親水性にしてキャリア基板へのボンディングに適合するようにするために行われる。
【0042】
V.ウエハとウエハのボンディング
単結晶半導体ドナー基板の親水性表面層と、キャリア基板の親水性表面、例えば表面とは、次に親密に接触させて、それによって結合構造を形成する。
【0043】
キャリア基板は、ドナー基板と同様に、一般的に、2つの主要な、一般的に平行な面、一方が基板の表面であり、他方が基板の裏面である表面、表面と裏面を結合する周方向の縁、および前表面と裏面との間の中心面を含む。いくつかの具体例では、キャリア基板は、半導体ウエハを含む。好ましい具体例では、半導体ウエハは、シリコン、サファイア、石英、ガリウムヒ素、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む。特に好ましい具体例では、半導体ウエハは、従来のチョクラルスキー結晶成長法に従って成長された単結晶インゴットからスライスされた単結晶シリコンウエハからスライスされたウエハを含む。いくつかの好ましい具体例では、キャリア基板は、その表面に酸化層を有するシリコンウエハを含む。いくつかの好ましい具体例では、ドナー基板の表面およびキャリア基板の表面は、実質的に同一の寸法を有する。キャリア基板はまた、シリコンと実質的に異なる熱膨張係数を有する材料であってもよい。例えば、キャリア基板は、サファイアウエハまたは石英ウエハでもよい。
【0044】
いくつかの具体例では、キャリアウエハは、絶縁材料の複数の層を含んでもよい。キャリアウエハは、2つの絶縁層、3つの絶縁層、またはそれ以上の層を含んでもよい。いくつかの具体例では、各絶縁層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンオキシ窒化物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料かを含んでもよい。各絶縁層は、少なくとも約10ナノメータの厚さ、例えば約10ナノメータと約10,000ナノメータの間、約10ナノメータと約5,000ナノメータの間、約50ナノメータと約500ナノメータの間、または約100ナノメータと約400ナノメータの間、例えば約50ナノメータ、約75ナノメータ、約85ナノメータ、約100ナノメータ、約150ナノメータ、約175ナノメータ、または約200ナノメータの間の厚さを有していてもよい。
【0045】
キャリアウエハ、例えば、シリコン、サファイア、または石英は、酸化プロセスおよび酸素プラズマ活性化を受けてもよい。別の言い方をすれば、単結晶半導体ドナー基板とキャリアウエハの両方の表面は、同様の前処理を受けてもよく、両方とも活性化された酸化された表面を含んでもよい。
【0046】
機械的結合は比較的弱いので、ドナーウエハとキャリアウエハとの間の結合を固めるために、結合構造はさらにアニールされる。好適なツールの例は、BlueMモデルのような単純なボックス炉であるかもしれない。いくつかの具体例では、結合構造は、約300℃から約700℃の温度、約400℃から約600℃の温度、例えば約400℃から約450℃の間、またはさらには約450℃から約600℃の間、または約350℃から約450℃の間の温度でアニールされる。熱バジェットを増加させることは、結合強度に正の効果をもたらす。結合構造体は、約l50℃と約500℃の間の温度、または約l50℃と約350℃の間の温度、例えば約l50℃と約300℃の間の温度、好ましくは約225℃の温度でアニールされてもよい。これらの温度範囲内での熱アニールは、熱的に活性化された劈開面を形成するのに十分である。熱アニールは、約0.5時間から約10時間、例えば約30分から約5時間の間、または約30分から約3時間の間、例えば約1時間または約2時間の間行われてもよい。
【0047】
いくつかの具体例では、アニールは、約0.5MPaから約200MPaの間、約0.5MPaから約100MPaの間、約0.5MPaから約50MPaの間、または約0.5MPaから約10MPaの間、または約0.5MPaから約5MPaの間などの比較的高い圧力で行われてもよい。従来の結合方法では、「オークレリーブ」によって温度が制限されている可能性があります。これは、注入面での板状体の圧力が外部の等張圧を超えると発生する。したがって、従来のアニールでは、オートクレーブのために、約350℃から約400℃の間の結合温度に制限される可能性がある。注入後、結合後のウエハは弱く保持されている。しかし、ウエハ間の隙間は、ガスの侵入や脱出を防ぐのに十分である。弱い結合は熱処理によって強化することができるが、注入時に形成されたキャビティにはガスが充満している。加熱している間に、キャビティ内のガスが加圧される。その圧力は、注入量によっては0.2~1GPaに達すると推定される(Cherkashinら、J. Appl. Phys. 118, 245301 (2015))。圧力が臨界値を超えると、層は剥離する。これは、オートクレーブまたはサーマルクレーブと呼ばれる。これは、アニール中のより高い温度またはより長い時間を妨げる。本発明のいくつかの具体例によれば、結合は、高い圧力、例えば、約0.5MPaと約200MPaの間、例えば、約0.5MPaと約100MPaの間、例えば、約0.5MPaと約50MPaの間、または約0.5MPaと約10MPaの間、または約0.5MPaと約5MPaの間で行われ、それにより、高い温度での結合が可能となる。従来のボンディングアニールでは、ロールオフによりハンドルウエハとドナーウエハの両方の端部が離れてしまうことがある。この部分では、層転位が起こらない。これをテラスと呼ぶ。加圧ボンディングでは、このテラスを減少させ、SOI層をさらにエッジに向かって延ばすことが期待される。このメカニズムは、空気のトラップされたポケットが圧縮され、外側に「ジッパー」することに基づく。劈開面を活性化するための熱アニールの後、結合された構造は、劈開されるかもしれない。
【0048】
熱アニール後、ドナー基板とキャリア基板との間の結合は、劈開面で結合された構造を切断することを介して層転写を開始するのに十分に強い。劈開は、この技術分野で知られている技術に従って行われてもよい。いくつかの具体例では、結合されたウエハは、一方の側で静止した吸盤に貼着され、他方の側でヒンジ付きアーム上の追加の吸盤によって貼着された従来の劈開ステーション内に配置されてもよい。吸着カップの取り付け部付近でクラックが発生し、可動アームがヒンジ部を中心に回転してウエハを切断する。劈開は、単結晶半導体ドナー基板の一部を除去し、それにより、半導体・オン・絶縁体複合構造上に単結晶半導体デバイス層を残す。
【0049】
開示された技術は、低温での層転写を可能にすることが必要とされる様々な層転写アプリケーションに使用することができる。これらには、サファイア、結晶性またはガラス石英、または他の絶縁性および半導体基板などの異種基板へのシリコン層の層転写が含まれる。また、この技術は、半導体がイオン分割可能であれば、基板への他の半導体最上層の層転写を可能にするために使用されてもよい。いくつかの例は、GaAs、SiC、SiGe、またはGeであってもよい。これらの用途に適用可能な熱処理温度、時間およびドーズ範囲は、現時点では知られていない。
【0050】
劈開された多層構造は、表面から薄い熱酸化物を除去し、微粒子を洗浄するように設計された洗浄工程に供してもよい。いくつかの具体例では、転写された半導体デバイス層は、キャリアガスとしてHを使用する水平流シングルウエハエピタキシャルリアクター内で、気相HC1エッチングプロセスを受けることにより、所望の厚さおよび平滑性にしてもよい。いくつかの具体例では、半導体デバイス層は、約10ナノメータと約20マイクロメータの間、約20ナノメータと約3マイクロメータの間、例えば約20ナノメータと約2マイクロメータの間、例えば約20ナノメータと約1.5マイクロメータの間、または約1.5マイクロメータと約3マイクロメータの間の厚さを有してもよい。厚膜デバイス層は、約1.5マイクロメータと約20マイクロメータの間のデバイス層の厚さを有してもよい。薄膜デバイス層は、約0.01マイクロメータと約0.20マイクロメータの間の厚さを有してもよい。
【0051】
いくつかの具体例では、エピタキシャル層は、転写されたデバイス層上に堆積されてもよい。堆積されたエピタキシャル層は、下層のデバイス層と実質的に同じ電気的特性を含んでも良い。あるいは、エピタキシャル層は、下地デバイス層とは異なる電気的特性を含んでも良い。エピタキシャル層は、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、ヒ化インジウムガリウム、ゲルマニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含んでも良い。最終的な集積回路デバイスの所望の特性に応じて、エピタキシャル層は、ホウ素(p型)、ガリウム(p型)、アルミニウム(p型)、インジウム(p型)、リン(n型)、アンチモン(n型)、およびヒ素(n型)から選択されるドーパントを含んでもよい。エピタキシャル層の抵抗率は、1~50オーム・cm、典型的には5~25オーム・cmの範囲であってもよい。いくつかの具体例では、エピタキシャル層は、約10ナノメータと約20マイクロメータの間、約20ナノメータと約3マイクロメータの間、例えば約20ナノメータと約2マイクロメータの間、例えば約20ナノメータと約1.5マイクロメータの間、または約1.5マイクロメータと約3マイクロメータの間の厚さを有してもよい。
【0052】
本発明を詳細に説明したところで、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることが明らかになるであろう。
【0053】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【0054】
実施例
実施例1.
水素とヘリウムの共注入ドナーウエハを、アプライド・マテリアルズ社のRTPCentura(登録商標)という高速熱処理装置で処理した。リアクター内のタングステンハロゲンランプは、0.5~2μmの光スペクトルを提供した。ウエハは、室温でロボットによってつままれ、図1Aに示すように、リアクタのチャンバ内のSiCコーティングされたグラファイトサセプタ上に置かれた。ランプを点灯させた。ウエハの温度は、光吸収の結果として急速に上昇する。終点温度は、ランプ電力とプロセス時間によって350℃以下になるように制御された。総照射時間は約120秒であった。
【0055】
板状体の成長の開始は、図2に示されるような表面ヘイズの上昇によって示された。図2は、KLA-Tencor SP2によって測定されたH/He共注入後のドナーウエハの表面ヘイズを示している。板状体の成長により誘起された表面トポグラフィーは、図3A、3B、3Cに示すAFM測定によって確認された。図3Aおよび3Bは、3l5℃の温度で20秒間光照射された試料の原子間力顕微鏡による表面粗さの測定を示す。図3Aは、図3Bに示されるような2つのバンプの断面を示す。表面バンプにつながる板状体の形成と同様に、KLA-Tencor表面スキャンツールによって検出された表面ヘイズの変化を確認するためにAFMが使用される。板状体の中には、直径がマイクロメータ、高さが4nmにまで成長したものもある。
【0056】
処理されたウエハをキャリア基板に接着して劈開した。光アシスト板状体形成による転写層表面の光点欠陥の改善を、図4に示す。データは、KLA-Tencor SP2で得られ、50nmのLPDが測定された。光点欠陥は、参照と比較して、より良好に制御された板状体の形成プロセスによって実質的に減少している。図4は、50nmサイズにおける表面欠陥の分布を示す。縦軸は、ラベル付けされたヘイズはパーセンテージである。図4は、本願で開示された方法では、光アシストされた板状体の形成機構が関与しない参照プロセスと比較して、SOI処理の終了時のシリコンデバイス層の表面上の欠陥数が少ないことを示している。より少ない表面欠陥は、より良い品質のデバイス層表面をもたらす。
【0057】
実施例2.
水素とヘリウムの共注入ドナーウエハを、急速熱処理ツールで処理した。リアクタ内のタングステンハロゲンランプは、0.5~2μmの光スペクトルを提供した。ウエハは、室温でロボットによってつままれて、図1Aに示すように、リアクタのチャンバ内のSiCコーティングされたグラファイトサセプタ上に置かれた。ランプを点灯させた。ウエハの温度は、光吸収の結果として急速に上昇した。終点温度は、ランプ電力およびプロセス時間によって230℃または300℃のいずれかに制御された。全照射時間は約60秒であった。
【0058】
処理したウエハをキャリア基板に接着して劈開した。光アシスト板状体形成による転写層の表面上のヘイズの改善は、参照ウエハと比較して、図5に示されている。データはKLA-Tencor SP2によって得られた。照射されたウエハで達成されたより高い温度は、転写された層の表面上のより低いヘイズをもたらした。低いヘイズは、最終的なデバイス形成のためのより良い表面構造を示す。
【0059】
上述の視点から、本発明のいくつかの目的が達成されていることが分かるであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、上述のプロセスにおいて様々な変更がなされ得るので、上述の説明に含まれるすべての事項は、例示的なものとして解釈されることが意図されており、限定的な意味ではない。さらに、本発明の要素またはその好ましい具体例を導入する場合、「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」および「その(said)」という冠詞は、要素が1つまたは複数存在することを意味することが意図されている。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図されており、記載された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0060】
本明細書は、本発明を開示するために、そして、装置またはシステムを作製して使用すること、および組み込まれた方法を実行することを含んで、当業者であれば誰でも本発明を実施できるようにするために、例示を用いる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当技術分野に当業者に起こりうる他の例を含んでもよい。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と相違しない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言とは実質的でない相違を有して等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5