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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021126505
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2021-09-24
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 清孝
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138958(JP,A)
【文献】特開2010-145525(JP,A)
【文献】特開2020-126226(JP,A)
【文献】特開2015-036729(JP,A)
【文献】特開2011-002816(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114871(WO,A1)
【文献】特開2015-180910(JP,A)
【文献】特開2021-099479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向している偏光子、第1粘着剤層、及び位相差層がこの順に積層された光学積層体であって、
前記偏光子の前記第1粘着剤層側とは反対側に保護フィルムを有し、
前記偏光子と前記第1粘着剤層とは直接接しており、
前記第1粘着剤層と前記位相差層とは直接接しており、
前記保護フィルムは、環状ポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂から形成されており、
前記位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層を含み、
前記位相差層の厚みは、10μm以下であり、
前記偏光子は、下記[a]及び[b]のうちの少なくとも一方を満たす、光学積層体。
[a]波長295nmにおける吸光度A(295)が0.70以下である、
[b]波長360nmにおける吸光度A(360)が0.45以下である。
【請求項2】
前記偏光子は、上記[a]及び[b]を満たす、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記位相差層は、λ/4位相差層である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
さらに、前記位相差層の前記第1粘着剤層側とは反対側に第2粘着剤層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記保護フィルムは、貼合層を介して前記偏光子に貼合されており、
前記貼合層は、水系接着剤を用いて形成された接着剤層である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向した偏光子は、有機EL表示装置や液晶表示装置を構成する光学部材として広く用いられている。有機EL表示装置には通常、偏光子と位相差層とを積層した円偏光板が用いられることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-126226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにヨウ素を含む偏光子を備えた円偏光板は、高温高湿環境下で保持すると位相差値の変化が大きくなり、反射色相が大きく変化することを本発明者らは見出した。
【0005】
本発明は、高温高湿環境下での保持の前後における反射色相の変化量を低減することができる光学積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の光学積層体を提供する。
〔1〕 ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向している偏光子、第1粘着剤層、及び位相差層がこの順に積層された光学積層体であって、
前記位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層を含み、
前記偏光子は、下記[a]及び[b]のうちの少なくとも一方を満たす、光学積層体。
[a]波長295nmにおける吸光度A(295)が0.85以下である、
[b]波長360nmにおける吸光度A(360)が0.55以下である。
〔2〕 前記偏光子は、上記[a]及び[b]を満たす、〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕 さらに、前記偏光子の前記第1粘着剤層側とは反対側に保護フィルムを有する、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記偏光子と前記第1粘着剤層とは直接接している、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔5〕 前記第1粘着剤層と前記位相差層とは直接接している、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔6〕 前記位相差層は、λ/4位相差層である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔7〕 さらに、前記位相差層の前記第1粘着剤層側とは反対側に第2粘着剤層を有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の光学積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学積層体によれば、高温高湿環境下での保持の前後における反射色相の変化量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の光学積層体が有する偏光体の製造方法の一例を説明するための断面図である。
図3】本実施形態の光学積層体が有する偏光子の製造方法の他の例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して光学積層体の好ましい実施形態について説明する。
(光学積層体)
図1は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す光学積層体1は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向している偏光子12、第1粘着剤層31、及び、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層15がこの順に積層されている。
【0010】
光学積層体1は、さらに、偏光子12の片面又は両面に保護フィルム11を有していてもよい。この場合、保護フィルム11は、貼合層(接着剤層又は粘着剤層)13を介して偏光子12に貼合することができる。貼合層13は、ポリビニルアルコール系接着剤等の水系接着剤によって形成された接着剤層であることが好ましい。図1に示すように、光学積層体1が偏光子12に貼合層13を介して貼合された保護フィルム11を含む場合、偏光子12、貼合層13、及び保護フィルム11は、偏光板10を構成する。図1に示す光学積層体1では、偏光子12の第1粘着剤層31側とは反対側にのみ保護フィルム11を有する場合を示しているが、光学積層体は、偏光子12の第1粘着剤層31側にのみ保護フィルムを有していてもよく、偏光子12の両面に保護フィルムを有していてもよい。
【0011】
光学積層体1において、偏光子12と第1粘着剤層31とは、直接接するように積層されていてもよく、例えば偏光子12の片面又は両面に設けられる保護フィルムを介して積層されていてもよい。光学積層体1が偏光子12の片面又は両面に保護フィルムを有する偏光板を備えている場合、当該偏光板と第1粘着剤層31とが直接接するように積層されていることが好ましい。
【0012】
光学積層体1において、第1粘着剤層31と位相差層15とは、直接接するように積層されていてもよく、第1粘着剤層31と位相差層15との間に、例えば位相差層15を形成する際に重合性液晶化合物の塗布層等を支持するための支持フィルム等が設けられていてもよい。
【0013】
光学積層体1は、さらに、位相差層15の第1粘着剤層31側とは反対側に第2粘着剤層32を有していてもよく、第2粘着剤層32の表面を被覆保護するための剥離フィルム33を有していてもよい。剥離フィルム33は、第2粘着剤層32を介して、有機EL表示装置等の表示装置の画像表示素子に光学積層体1を貼合する際に剥離除去される。
【0014】
光学積層体1は、位相差層15と第2粘着剤層32との間に、位相差層15とは別の他の位相差層を1以上有していてもよい。他の位相差層は、例えば、貼合層(接着剤層又は粘着剤層)を介して位相差層15等に積層することができる。
【0015】
(偏光子)
光学積層体1において、偏光子12は、下記[a]及び[b]のうちの少なくとも一方を満たす。偏光子12は、下記[a]及び[b]の両方を満たすことが好ましい。
[a]波長295nmにおける吸光度A(295)が0.85以下である、
[b]波長360nmにおける吸光度A(360)が0.55以下である。
【0016】
偏光子12の吸光度A(295)は、0.80以下であってもよく、0.75以下であってもよく、0.70以下であってもよく、0.60以下であってもよく、0.55以下であってもよく、通常0.3以上である。偏光子12の吸光度A(360)は、0.50以下であってもよく、0.46以下であってもよく、0.45以下であってもよく、0.44以下であってもよく、通常0.3以上である。偏光子12の吸光度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0017】
偏光子12の吸光度A(295)及びA(360)は、偏光子12中のヨウ素イオンI の含有量を示し、吸光度の値が大きいほど偏光子12に含まれるヨウ素イオンI 量が大きいことを表す。偏光子12中のヨウ素成分には、例えばI、I、I 、I 、I -PVA錯体、及び、I -PVA錯体等があり、偏光子12中には、通常I、I、I 、I -PVA錯体、及び、I -PVA錯体等が存在すると考えられる。本発明者らは、これらのヨウ素成分のうちのヨウ素イオンI が、高温高湿環境下において偏光子12から位相差層15へ移行しやすく、光学積層体1の位相差値及び反射色相に影響を及ぼすことを見出した。光学積層体1に含まれる偏光子12は、吸光度A(295)及び吸光度A(360)のうちの少なくとも一方が小さいため、偏光子12中のヨウ素イオンI 量が小さい。そのため、光学積層体1を高温高湿環境下に保持した場合(例えば、温度65℃、相対湿度90%RHの高温高湿環境下で168時間保持した場合)でも、偏光子12から位相差層15へのヨウ素イオンI の移行量を抑制することができる。これにより、光学積層体1を高温高湿環境下で保持した場合に、当該保持の前後において位相差値が変化することを抑制して、反射色相が変化することを抑制することができるため、上記保持の前後における反射色相の変化量を低減することができる。
【0018】
偏光子12の波長295nmにおける光線透過率Tr(295)は、例えば13.5以上であってもよく、16.0以上であってもよく、18.0以上であってもよく、20.0以上であってもよく、24.0以上であってもよく、通常56.0以下である。偏光子12の波長360nmにおける光線透過率Tr(360)は、例えば28.5以上であってもよく、30.0以上であってもよく、32.0以上であってもよく、33.0以上であってもよく、通常56.0以下である。偏光子12の光線透過率は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0019】
偏光子の単体色相である単体bは、例えば2.0以上であってもよく、2.3以上であってもよく、また、4.5以下であってもよく、4.3以下であってもよく、4.0以下であってもよい。偏光子の単体bは、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0020】
偏光子12の厚みは特に限定されないが、好ましくは25μm以下であり、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、通常5μm以上であり、7μm以上であってもよい。
【0021】
図2及び図3は、本実施形態の光学積層体1が有する偏光子12の製造方法の一例を説明するための断面図である。上記した吸光度及び光線透過率を有する偏光子12は、例えば、[i]原料偏光子22に、貼合剤(接着剤又は粘着剤)23を介して保護フィルム11を貼合した状態(図2)で行う乾燥処理の乾燥条件を調整する、あるいは、[ii]原料偏光子22にプロテクトフィルム40を貼合した状態(図3)で湿熱処理を行い、湿熱処理後にプロテクトフィルム40を剥離することによって得ることができる。プロテクトフィルム40は、基材フィルム43上に第3粘着剤層42が形成されたものであり、第3粘着剤層42によって原料偏光子22に貼合される。
【0022】
上記[i]の場合、図2に示すように原料偏光子22の片面に貼合剤23を介して保護フィルム11を貼合したものに乾燥処理を行ってもよく、原料偏光子22の両面に貼合剤を介して保護フィルムを貼合したものに乾燥処理を行ってもよい。貼合剤23は、その種類に応じて、そのままで若しくは乾燥処理又は硬化処理等の処理を行うことにより、貼合層13を形成することができる。そのため、貼合剤23から貼合層13を形成する際に乾燥処理又は硬化処理を要する場合、上記[i]で行う乾燥処理は、貼合剤23から貼合層13を形成するための上記処理にもなり得る。上記[i]のように乾燥処理を行うことにより、上記した吸光度を有する偏光子12を得ることができる。原料偏光子22に貼合された保護フィルム11は、光学積層体1にそのまま組み入れることができる。
【0023】
上記[i]の場合、乾燥処理は1段階又は2段階以上で行うことができ、2段階で行うことが好ましい。乾燥処理の1段階目の乾燥条件は、貼合剤23の種類及び厚み等にもよるが、例えば温度を50±10℃とし、乾燥時間を75±20秒とすることができ、乾燥処理の2段階目の乾燥条件は、例えば温度を80±10℃とし、乾燥時間を75±20秒とすることができる。1段階目の乾燥条件は、温度を50±5℃とし、乾燥時間を75±10秒としてもよく、2段階目の乾燥条件は、温度を80±5℃とし、乾燥時間を75±10秒としてもよい。2段階目の乾燥温度は、1段階目の乾燥温度よりも高いことが好ましく、例えば2段階目の乾燥温度は、1段階目の乾燥温度よりも10℃以上30℃以下高くするとよい。2段階目の乾燥時間は、1段階目の乾燥時間と同じであってもよく、短くてもよく、長くてもよい。
【0024】
上記[ii]の場合、図3に示すように原料偏光子22の一方の表面に貼合層13を介して保護フィルム11が貼合された原料偏光板20を用意し、この原料偏光板20の原料偏光子22側にプロテクトフィルム40を貼合した積層体に湿熱処理を行ってもよく、原料偏光板20ではなく、原料偏光子22にプロテクトフィルム40を貼合した積層体に湿熱処理を行ってもよい。原料偏光板20に含まれる原料偏光子22は、通常、上記[a]及び[b]の範囲の吸光度を有していない。
【0025】
湿熱処理後に行うプロテクトフィルム40の剥離は、湿熱処理を行った積層体を冷却した後に行うことが好ましい。原料偏光子22にプロテクトフィルム40を貼合して湿熱処理を行うことにより、原料偏光子22中のヨウ素イオンI をプロテクトフィルム40の第3粘着剤層42に移行させることができる。これにより、原料偏光子22中のヨウ素イオンI が低減されるため、上記した吸光度を有する偏光子12を得ることができる。原料偏光子22に貼合された保護フィルム11は、光学積層体1にそのまま組み入れることができる。
【0026】
上記[ii]の場合の湿熱処理条件は、例えば温度を65±10℃とし、相対湿度を90±5%RHとし、処理時間を50±5時間とすることができる。上記温度は、65±7℃であってもよく、65±5℃であってもよい。上記相対湿度は、90±3%RHであってもよい。処理時間は、50±3時間であってもよい。
【0027】
(位相差層)
位相差層15は、重合性液晶化合物の硬化物層であってもよく、当該硬化物層に加えて、重合性液晶化合物を配向を制御するための配向膜を含んでいてもよい。配向膜は、重合性液晶化合物の配向方向にもよるが、例えば、水平配向膜又は垂直配向膜である。位相差層15が配向膜を含む場合、位相差層15の硬化物層側を第1粘着剤層31側に配置してもよく、位相差層15の配向膜側を第1粘着剤層31側に配置してもよい。
【0028】
位相差層15は、λ/4位相差層であってもよい。この場合、光学積層体1は円偏光板として機能することができる。位相差層15がλ/4位相差層である場合、光学積層体1において、偏光子12の吸収軸と位相差層15の遅相軸とは、45±10°又は135°±10°の角度をなすように積層することが好ましい。上記角度は、45°±5°又は135°±5°の範囲内であってもよく、45°±3°又は135°±3°の範囲内であってもよく、45°又は135°であってもよい。
【0029】
位相差層15の厚みは、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、また、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0030】
位相差層15がλ/4位相差層である場合、光学積層体1は、例えば位相差層15の第1粘着剤層31とは反対側に他の位相差層を備えることができる。この場合、他の位相差層は、例えばλ/2位相差層又はポジティブC層であってもよい。
【0031】
光学積層体1が円偏光板である場合、位相差層15がλ/2位相差層又はポジティブC層であって、他の位相差層がλ/4位相差層であってもよい。
【0032】
他の位相差層は、延伸フィルムであってもよく、重合性液晶化合物が重合硬化した硬化物層を含むものであってもよい。他の位相差層が上記硬化物層を含む場合、他の位相差層は、重合性液晶化合物を配向させるための配向膜を含んでいてもよい。
【0033】
他の位相差層が延伸フィルムである場合、その厚みは、例えば5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、また、50μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。他の位相差層が上記硬化物層を含む場合、他の位相差層の厚みは、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、また、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0034】
以下、光学積層体を構成する各部材、光学積層体を製造するために用いる部材の詳細について説明する。
(原料偏光子)
原料偏光子は、偏光子に乾燥処理又は湿熱処理等を施す前のものである。原料偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系フィルム」ということがある。)にヨウ素が吸着配向しているものである。原料偏光子の吸光度A(295)及びA(360)のうちの少なくとも一方は、通常、偏光子の吸光度A(295)及び/又はA(360)よりも大きい。
【0035】
原料偏光子は、PVA系フィルムを一軸延伸する工程、PVA系フィルムを染色液であるヨウ素水溶液で染色することにより、ヨウ素を吸着させる工程、ヨウ素が吸着されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0036】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0037】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度及び平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。
【0038】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、原料偏光子の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0039】
PVA系フィルムの一軸延伸は、吸収異方性を有する色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶媒を用い、PVA系フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0040】
PVA系フィルムのヨウ素による染色は、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有するヨウ素水溶液に、PVA系フィルムを浸漬する方法によって行われる。ヨウ素水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。また、ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。ヨウ素水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、ヨウ素水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0041】
ヨウ素水溶液による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0042】
ホウ酸処理後のPVA系フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたPVA系フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0043】
水洗後に乾燥処理が施されて、原料偏光フィルムが得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、原料偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20重量%程度であり、好ましくは8~15重量%である。
【0044】
(偏光板)
図1に示すように、偏光子12は、その片面又は両面に保護フィルム11を積層した偏光板10として、光学積層体1に組み込まれてもよい。保護フィルムは、反射防止特性、防眩特性、ハードコート特性等を有するものであってもよい(以下、当該特性を有する保護フィルムを「機能性保護フィルム」ということがある。)。保護フィルムが機能性保護フィルムではない場合、偏光板の片面には、反射防止層、防眩層、ハードコート層等の表面機能層が設けられていてもよい。偏光板が偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する場合、表面機能層は、当該保護フィルム上に設けられてもよく、偏光子上に設けられてもよい。
【0045】
(保護フィルム)
保護フィルムは、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムが用いられる。
【0046】
このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう。);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。偏光フィルムの両面に保護フィルムが積層されている場合、二つの保護フィルムの樹脂組成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルのいずれでもよいことを意味する。(メタ)アクリレート等の「(メタ)」も同様の意味である。
【0047】
保護フィルムの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、保護フィルムの厚みは、通常100μm以下であり、70μm以下であってもよく、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0048】
また、保護フィルムとして、紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物である硬化物層も挙げられる。硬化物層の厚みは、通常1μm以上10μm以下である。
【0049】
反射色相の変化量をより低減できるという観点から、保護フィルムはセルロース樹脂から形成されていることが好ましい。ただし、本実施形態の光学積層体によれば、反射色相の変化量が大きくなりやすい傾向にある、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、又は活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物層である保護フィルムを用いた場合にも、反射色相の変化量を効果的に抑制することができる。
【0050】
(プロテクトフィルム)
プロテクトフィルム40は、図3に示すように、基材フィルム43上に第3粘着剤層42が設けられたものである。基材フィルムは、例えば、上記した保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂から形成することができる。第3粘着剤層は、後述する材料によって形成することができる。
【0051】
(第1粘着剤層、第2粘着剤層、第3粘着剤層、貼合層(粘着剤層))
第1粘着剤層、第2粘着剤層、第3粘着剤層、及び貼合層としての粘着剤層(以下、これらをまとめて「粘着剤層」ということがある。)は、粘着剤を用いて形成された層である。本明細書において粘着剤とは、それ自体を被着体に張り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。粘着剤としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等のベースポリマーを有する粘着剤を用いることができる。粘着剤層の厚みは3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、7μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、また、35μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。
【0052】
粘着剤層は、紫外線吸収剤、イオン性化合物等を用いた帯電防止剤、溶媒、架橋触媒、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0053】
(貼合層(接着剤層))
貼合層としての接着剤層は、接着剤中の硬化性成分を硬化させることによって形成することができる。接着剤層を形成するための接着剤としては、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤であって、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤等の水系接着剤、紫外線硬化型接着剤等の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。接着剤層の厚みは、接着剤の種類に応じて選定されるが、例えば0.05μm以上であり、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、通常20μm以下であり、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよい。
【0054】
(剥離フィルム)
図1に示す剥離フィルム33は、第2粘着剤層32に対して剥離可能に設けられ、第2粘着剤層32の表面を被覆保護するために用いられる。剥離フィルムとしては、樹脂を用いて形成された基材フィルムに離型処理が施されたフィルムを挙げることができる。基材フィルムをなす樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等を挙げることができる。また、基材フィルムに施される離型処理としては、公知の離型処理を行えばよいが、フッ素化合物やシリコーン化合物等の離型剤を基材フィルムにコーティングする方法が好ましい。
【実施例
【0055】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0056】
[湿熱耐久試験]
実施例及び比較例で得た光学積層体を、スーパーカッターを用いて30mm×30mmの大きさに切り出し、光学積層体の第2粘着剤層を介してガラス板に貼合して、評価用サンプル(1)を作製した。評価用サンプル(1)を、温度65℃、相対湿度90%RHのオーブンに168時間投入して、光学積層体の湿熱耐久試験を行った。
【0057】
また、実施例1で用いた位相差層の硬化物層側を、アクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介してガラス板に貼合し、続いて、位相差層の水平配向膜側にアクリル系粘着剤層(厚み25μm)及びシクロオレフィン(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製、ZF-14、厚み13μm)をこの順に貼合して、評価用サンプル(2)を作製した。この評価用サンプル(2)に対し、温度65℃、相対湿度90%RHのオーブンに168時間投入して、位相差層の湿熱耐久試験を行った。
【0058】
[面内位相差値の測定]
湿熱耐久試験の前後における評価用サンプル(1)の位相差値、及び、湿熱耐久試験の前後における評価用サンプル(2)の位相差値を、位相差測定装置(王子計測機器株式会社製 KOBRA-WPR)を用いて測定した。
【0059】
[反射色相の測定]
湿熱耐久試験の前後における評価用サンプル(1)の反射色相(a)を次の手順で測定した。反射板(ALANOD社製のMIRO(5011GP))上に、評価用サンプル(1)を載置し、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製 CM-2600d)を用いて、光源がD65であるときの反射色相をSCI方式(正反射光含む)で測定した。反射板は、蒸着によって形成された反射面を有する鏡面反射板であった。
【0060】
[吸光度及び光線透過率の測定]
実施例及び比較例で得た偏光板を、分光光度計UV-2450(株式会社島津製作所製)にセットし、シングルビーム法により1nmステップ250~800nmの波長範囲で吸光度及び光線透過率を測定した。偏光子に貼合されたCOPフィルムの波長295nmの吸光度は0.06、光線透過率は87%であり、波長360nmの吸光度は0.03、光線透過率は93%であった。そのため、偏光子の波長295nmの吸光度A(295)及び光線透過率Tr(295)、並びに、波長360nmの吸光度A(360)及び光線透過率Tr(360)は、各波長での偏光板の吸光度及び光線透過率の値を、各波長でのCOPフィルムの吸光度及び光線透過率の値に基づいて補正することにより、決定した。
【0061】
[単体bの測定]
実施例及び比較例で得た偏光板の単体色相である単体bを、積分球付き分光光度計V7100(日本分光(株)製)を用いて測定した。偏光子に貼合されたCOPフィルムは無色透明であるため、偏光板について測定された単体bは、偏光子の単体bと考えることができる。
【0062】
〔実施例1〕(比較)
(偏光子の作製)
厚み20μm、重合度2,400、ケン化度99.9%以上のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、乾式で延伸倍率4.5倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100重量部あたりヨウ素0.05重量部及びヨウ化カリウム5重量部を含有する染色浴に、温度28℃で60秒間浸漬した。
【0063】
次いで、水100重量部あたりホウ酸5.5重量部及びヨウ化カリウム15重量部を含有するホウ酸水溶液(1)に、温度64℃で110秒間浸漬した。次いで、水100重量部あたりホウ酸5.5重量部及びヨウ化カリウム15重量部を含有するホウ酸水溶液(2)に、温度67℃で30秒間浸漬した。その後、温度3℃の純水を用いて水洗し、乾燥して、偏光子を得た。
【0064】
(偏光板の作製)
上記で得た偏光子の一方の面に、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製、ZF-14、厚み13μm)を、水系接着剤を介してニップロールを用いて貼合して貼合物を得た。この貼合物の張力を240N/mに保ちながら、温度50℃で75秒間、その後、温度80℃で75秒間の乾燥条件で乾燥させ、偏光板を得た。上記水系接着剤は、水100重量部に、カルボキシ基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製 クラレポバール KL318)3重量部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業株式会社製 スミレーズレジン650 固形分濃度30%の水溶液)1.5重量部を添加して調製したポリビニルアルコール系接着剤であった。調製したポリビニルアルコール系接着剤は無色透明であり、その乾燥物も無色透明であった。
【0065】
上記で得た偏光板の層構成は、COPフィルム/水系接着剤層/偏光子であり、水系接着剤層の厚みは1μm未満である。得られた偏光板について、単体b、吸光度、及び光線透過率を測定し、COPフィルムの吸光度及び透過率に基づいて補正することにより、偏光子の吸光度A(295)及びA(360)、並びに、光線透過率Tr(295)及びTr(360)を求めた。なお、水系接着剤層の吸光度は0(ゼロ)と近似し、水系接着剤層の光線透過率は100%と近似した。結果を表1に示す。
【0066】
(光学積層体の作製)
上記で得た偏光板の偏光子側と位相差層とを第1粘着剤層(アクリル系粘着剤層、厚み5μm)を介して貼合し、さらに位相差層上に第2粘着剤層(アクリル系粘着剤層、厚み15μm)を積層して、光学積層体を得た。位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層と水平配向膜との積層体であり、硬化物層側を偏光板側に配置した。位相差層は、λ/4位相差層であった。光学積層体の層構造は、COPフィルム/水系接着剤層/偏光子/第1粘着剤層/水平配向膜/重合性液晶化合物の硬化物層/第2粘着剤層であり、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とのなす角度は45°であった。得られた光学積層体を用いて湿熱耐久試験を行い、光学積層体の湿熱耐久試験前後の反射色相値から、下記式にしたがって、湿熱耐久試験の前後における光学積層体の反射色相の変化量Δaを算出した。
Δa=(Δa*2+Δb*21/2
[式中、Δa*2=(a -a であり、Δb*2=(b -b である。
及びはa それぞれ、湿熱耐久試験の前及び後のaを表し、
及びはb それぞれ、湿熱耐久試験の前及び後のbを表す。]
【0067】
また、光学積層体の湿熱耐久試験後の波長550nmにおける位相差値から、湿熱耐久試験前の波長550nmにおける位相差値を差し引いた値を、湿熱耐久試験の前後での光学積層体の波長550nmにおける位相差値の変化量ΔRe(550)として算出した。結果を表1に示す。
【0068】
〔比較例1〕
貼合物の乾燥条件を、温度50℃で75秒間、その後、温度100℃で75秒間としたこと以外は、実施例1と同様の手順で偏光板を作製し、この偏光板を用いて光学積層体を作製した。得られた偏光板の単体b、吸光度A(295)及びA(360)、並びに、光線透過率Tr(295)及びTr(360)を測定し、湿熱耐久試験の前後での光学積層体の反射色相の変化量Δa及び位相差値の変化量ΔRe(550)を算出した。結果を表1に示す。
【0069】
〔比較例2〕
貼合物の乾燥条件を、温度50℃で75秒間、その後、温度110℃で75秒間としたこと以外は、実施例1と同様の手順で偏光板を作製し、この偏光板を用いて光学積層体を作製した。得られた偏光板の単体b、吸光度A(295)及びA(360)、並びに、光線透過率Tr(295)及びTr(360)を測定し、湿熱耐久試験の前後での光学積層体の反射色相の変化量Δa及び位相差値の変化量ΔRe(550)を算出した。結果を表1に示す。
【0070】
〔参考例1〕
実施例1で用いた位相差層について、上記で説明した手順で評価用サンプル(2)の湿熱耐久試験を行い、湿熱耐久試験の前後での位相差層の位相差値の変化量ΔRe(550)を算出した。結果を表1に示す。
【0071】
〔実施例2〕
比較例2で得た偏光板の偏光子側に、プロテクトフィルムの第3粘着剤層側を貼合し、PF付き偏光板を得た。プロテクトフィルムは、基材フィルムと第3粘着剤層との積層構造を有するものであった。PF付き偏光板の層構造は、COPフィルム/水系接着剤層/偏光子/第3粘着剤層/基材フィルムであった。PF付き偏光板を、温度65℃、相対湿度90%RHのオーブンに50時間投入した後、冷却し、プロテクトフィルムを剥離した。
【0072】
プロテクトフィルム剥離後の偏光板を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で光学積層体を作製した。得られた偏光板の単体b、吸光度A(295)及びA(360)、並びに、光線透過率Tr(295)及びTr(360)を測定し、湿熱耐久試験の前後での光学積層体の反射色相の変化Δa及び位相差値の変化量ΔRe(550)を算出した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【符号の説明】
【0074】
1 光学積層体、10 偏光板、11 保護フィルム、12 偏光子、13 貼合層、15 位相差層、20 原料偏光板、22 原料偏光子、23 貼合剤、31 第1粘着剤層、32 第2粘着剤層、33 剥離フィルム、40 プロテクトフィルム、42 第3粘着剤層、43 基材フィルム。
【要約】
【課題】高温高湿環境下での保持の前後における反射色相の変化量を低減することができる光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体は、偏光子、第1粘着剤層、及び位相差層がこの順に積層されている。位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層を含む。偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向しているものであり、下記[a]及び[b]のうちの少なくとも一方を満たす。
[a]波長295nmにおける吸光度A(295)が0.85以下である、
[b]波長360nmにおける吸光度A(360)が0.55以下である。
【選択図】図1
図1
図2
図3