(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ポジ型レジスト組成物およびそれを用いたレジストパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20221018BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20221018BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2021539069
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2020058495
(87)【国際公開番号】W WO2020193686
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2019063192
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】明石 一通
(72)【発明者】
【氏名】浦部 慈子
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】片山 朋英
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程:
(1)基板の上方にポジ型レジストリフトオフ組成物を適用すること;
(2)前記組成物を加熱し、レジスト層を形成すること;
(3)前記レジスト層を露光すること;
(4)前記レジスト層を露光後加熱すること;
(5)前記レジスト層を現像すること;
(6)レジストパターンをマスクとして、基板の上方に金属を蒸着させること;および
(7)レジストパターンを剥離液で除去すること
を含んでなる、金属パターンの製造方法:
ここで、前記ポジ型レジストリフトオフ組成物は以下の成分を含んでなる:
(A)式(P-1)~(P-4):
【化1】
(式中、
R
p1、R
p3、R
p5、およびR
p8は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、
R
p2、R
p4、およびR
p7は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、
R
p6、およびR
p9は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、
x1は0~4であり、x2は1~2であり、ただし、x1+x2≦5であり、
x3は0~5であり、
x4は1~2であり、x5は0~4であり、ただし、x4+x5≦5である)からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなるポリマーP、および
式(Q-1a)~(Q-1d):
【化2】
からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなり、
(Q-1a)の繰り返し単位数N
qa、(Q-1b)繰り返し単位数N
qb、(Q-1c)繰り返し単位数N
qc、および(Q-1d)繰り返し単位数N
qdが、以下の式:
30%≦N
qa/(N
qa+N
qb+N
qc+N
qd)≦100%;
0%≦N
qb/(N
qa+N
qb+N
qc+N
qd)≦70%;
0%≦N
qc/(N
qa+N
qb+N
qc+N
qd)≦50%;および
0%≦N
qd/(N
qa+N
qb+N
qc+N
qd)≦70%をみたすものであるポリマーQ
からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーであって、
ただし、組成物中の、ポリマーPの総質量M
pおよびポリマーQの総質量M
qが、式:
0<M
p/(M
p+M
q)≦100%、および0≦M
q/(M
p+M
q)<70%をみたすものである、ポリマー;
(B)イミド基を有する酸発生剤;
(C)2以上のフェノール構造が、オキシで置換されていてもよい炭化水素基によって結合されている化合物である、溶解速度調整剤;および
(D)溶媒
。
【請求項2】
10≦M
q/(M
p+M
q)≦60%である、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記組成物が(E)塩基性化合物をさらに含んでなり、
任意に前記組成物が(F)可塑剤をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の
方法。
【請求項4】
(B)酸発生剤の含有量が、(A)ポリマーの総質量を基準として、0.1~10.0質量%であり、
任意に、(A)ポリマーの含有量が、組成物の総質量を基準として、10~50質量%であり、
任意に、(C)溶解速度調整剤の含有量が、(A)ポリマーの総質量を基準として、0.1~20質量%であり、
任意に、(D)溶媒の含有量が、組成物の総質量を基準として、40~90質量%であり、
任意に、(E)塩基性化合物の含有量が、(A)ポリマーの総質量を基準として、0~1.0質量%であり、
任意に、(F)可塑剤の含有量が、(A)ポリマーの総質量を基準として、0~30質量%である、請求項
1~3の少なくともいずれか一項に記載の
方法。
【請求項5】
(B)酸発生剤が、式(b):
【化3】
(式中、
R
b1は、それぞれ独立に、C
3-10のアルケニルもしくはアルキニル(ここで、アルケニルおよびアルキニル中のCH
3-がフェニルによって置換されていてもよく、アルケニルおよびアルキニル中の-CH
2-が-C(=O)-、-O-またはフェニレンの少なくともいずれか一つによって置き換えられていてもよい)、C
2-10のチオアルキル、C
5-10の飽和複素環であり、
nbは、0、1または2であり、かつ
R
b2は、C
1-5のフッ素置換されたアルキルである)
で表されるものであり、
および/または
(C)溶解速度調整剤が、式(c):
【化4】
(式中、
nc1は、それぞれ独立に、1、2または3であり、
nc2は、それぞれ独立に、0、1、2または3であり、
R
c1は、それぞれ独立に、C
1-7アルキルであり、
L
cは、C
1-15の2価のアルキレン(これは、ヒドロキシ置換されていてもよいアリールによって置換されていてもよく、L
c以外の置換基と環を形成していてもよい)である)
で表されるものであ
る、請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(E)塩基性化合物が、アンモニア、C
1-16
の第一級脂肪族アミン、C
2-32
の第二級脂肪族アミン、C
3-48
の三級脂肪族アミン、C
6-30
の芳香族アミン、およびC
5-30
のヘテロ環アミン、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択されるものであり、および/または
(F)可塑剤が、式(f-1):
【化5】
(式中、
R
f1
は、それぞれ独立に、水素、またはC
1-5
のアルキルであり、かつ
R
f2
は、それぞれ独立に、水素、またはC
1-5
のアルキルであり、)で表される構成単位、および/または
式(f-2):
【化6】
(式中、
R
f3
は、それぞれ独立に、水素、またはC
1-5
のアルキルであり、
R
f4
は、水素、またはC
1-5
のアルキルであり、かつ
R
f5
は、C
1-5
のアルキルである)
で表される構成単位を含んでなる化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
(D)溶媒が、低沸点溶媒を含んでなり、低沸点溶媒の沸点が80~140℃であり、
任意に、(D)溶媒が、(D)溶媒の総質量を基準として、低沸点溶媒を60%以上含む、請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物の粘度が、25℃で50~2,000cPである、請求項1~
7の少なくともいずれか一項に記載の
方法。
【請求項9】
ポジ型レジストリフトオフ組成物が、逆テーパー形状形成ポジ型レジスト組成物である、請求項1~8の少なくともいずれか一項に記載の
方法。
【請求項10】
前記レジストパターンの膜厚が、1~50μmである、請求項1~
9の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レジストパターンが、逆テーパー形状である、請求項
1~10の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記レジストパターンがオーバーハング形状であり、
任意に、レジストパターンの断面図において、開口点と底点を結ぶテーパーラインの内側にあるが、レジストパターンではない部分の面積をS
in
とし、テーパーラインの外側にあるが、レジストパターンである部分の面積をS
out
とすると、S
out
/(S
in
+S
out
)が、0~0.45であり、
任意に、(S
in
-S
out
)/(S
in
+S
out
)が、0~1である、請求項1~11の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属パターンの膜厚が、0.01~40μmである、請求
項1~12の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項
1~13の少なくともいずれか一項に記載の方法を含んでなる、デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や半導体集積回路などの製造に用いられる、ポジ型レジスト組成物およびそれを用いたレジストパターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体等のデバイスの製造過程において、フォトレジストを用いたリソグラフィー技術による微細加工が一般的に行われている。微細加工の工程は、シリコンウェハ等の半導体基板上に薄いフォトレジスト層を形成し、その層を目的とするデバイスのパターンに対応するマスクパターンで覆い、その層をマスクパターンを介して紫外線等の活性光線で露光し、露光された層を現像することでフォトレジストパターンを得て、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板を加工処理することを含み、それにより上述のパターンに対応する微細凹凸を形成する。
【0003】
ポジ型レジスト組成物を用いる場合、塗布により形成されたレジスト膜の露光部が、露光により発生した酸により、アルカリ溶解性が増加し、現像液に溶解され、パターンが形成される。一般に、露光による光は、レジスト膜の下部に十分に届かず、レジスト膜の下部では酸の発生が抑えられ、また、レジスト膜の下部では発生した酸が基板の影響により失活してしまう。よって、ポジ型レジスト組成物を用いて形成されたレジストパターンは、テーパー形状(フッティング形状)になる傾向にある(特許文献1)。
【0004】
形成されたレジストパターン上に、金属等の材料を蒸着等により成膜し、レジストを溶媒により除去すると、レジストパターン上に乗った材料が除去され、レジストパターンが形成されていなかった部分にのみ、金属等の材料が残るというリフトオフ法が知られている。
リフトオフ法を行うには、逆テーパー形状のレジストパターンであることが好ましいため、ネガ型レジスト組成物が用いられることが多い。特許文献2では、半導体ではなくEL表示素子の隔壁を作成するために、プロセスが異なり求められる精度や感度も異なるが、逆テーパー形状の形成が試みられた。しかし、用いられた全てのレジスト組成はネガ型であり、さらに逆テーパーを実現したのはその一部であった。
一方、ポジ型レジスト組成から得たレジストパターンのボトムにアンダーカットを発生させ、T型を形成させることが検討されている(例えば、特許文献3~5)。これらの組成物は、特殊なポリマーを必要としたり、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤を必須とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2011/102064
【文献】特開2005-148391A
【文献】特開2012-108415A
【文献】特開2001-235872A
【文献】特開平8-69111A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、レジスト組成物およびその使用について、いまだに改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる:リフトオフに適したレジストパターン形状を形成できない;レジスト組成物の感度が不充分である;充分な解像度を得ることができない;レジストパターン製造工程で環境影響を受ける;厚膜のレジストパターンが製造できない;固形成分の溶媒への溶解性が悪い;T型のレジストパターンでは、蒸着した金属が厚かった場合に、剥離液がレジスト側壁に侵入できない;剥離液への溶解性が低い;アスペクト比が高いレジストパターンを形成できない;レジスト膜のクラックが多い;欠陥数が多い;保存安定性が悪い。
本発明は、上述のような課題を解決すべくなされたものであり、ポジ型レジスト組成物およびそれを用いたレジストパターンの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるポジ型厚膜レジスト組成物は
(A)式(P-1)~(P-4):
【化1】
(式中、
R
p1、R
p3、R
p5、およびR
p8は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、
R
p2、R
p4、およびR
p7は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、
R
p6、およびR
p9は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、
x1は0~4であり、x2は1~2であり、ただし、x1+x2≦5であり、
x3は0~5であり、
x4は1~2であり、x5は0~4であり、ただし、x4+x5≦5である)からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなるポリマーP、および
式(Q-1):
【化2】
(式中、
R
q1は、それぞれ独立に、C
1-5アルキルであり、
y1は1~2であり、y2は0~3であり、ただし、y1+y2≦4である)
で表される繰り返し単位を含んでなるポリマーQ
からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーであって、
ただし、組成物中の、ポリマーPの総質量M
pおよびポリマーQの総質量M
qが、式: 0<M
p/(M
p+M
q)≦100%、および0≦M
q/(M
p+M
q)<70%をみたすものである、ポリマー;
(B)イミド基を有する酸発生剤;
(C)2以上のフェノール構造が、オキシで置換されていてもよい炭化水素基によって結合されている化合物である、溶解速度調整剤;および
(D)溶媒
を含んでなる。
【0008】
また、本発明によるレジストパターンの製造方法は、下記工程:
(1)基板の上方に上記の組成物を適用すること;
(2)前記組成物を加熱し、レジスト層を形成すること;
(3)前記レジスト層を露光すること;
(4)前記レジスト層を露光後加熱すること;および
(5)前記レジスト層を現像すること
を含んでなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポジ型レジスト組成物を用いることで、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。
リフトオフに適したレジストパターン形状を形成できる。レジスト組成物の感度が充分である。充分な解像度を得ることができる。レジストパターン製造時に環境の影響を低減できる。厚膜のレジストパターンが製造できる。固形成分の溶媒への溶解性が良い。蒸着した金属が厚くても、剥離液がレジスト側壁に侵入できるレジストパターン形状を得ることができる。剥離液への溶解性が高い。アスペクト比が高いレジストパターンを形成できる。レジスト膜のクラックを抑制できる。欠陥数を低減できる。保存安定性が良い。
剥離液への溶解性が高く、さらにレジストパターンの形状が好適であることが、本発明の有利な点である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】逆テーパー形状のレジストパターン、オーバーハング形状のレジストパターン、およびオーバーハング形状のレジストパターンの変形例を説明するための概念断面図。
【
図2】逆テーパー形状のレジストパターンの顕微鏡写真とその模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本「定義」パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0013】
<ポジ型レジスト組成物>
本発明によるポジ型レジスト組成物(以下、組成物ということがある)は、(A)特定のポリマー、(B)イミド基を有する酸発生剤、(C)溶解速度調整剤、および(D)溶媒を含んでなる。
本発明による組成物の粘度は、好ましくは50~2,000cPであり、より好ましくは200~1,500cPである。ここで粘度は、細管粘度計により25℃で測定したものである。
本発明による組成物は、厚膜レジスト形成組成物であることが好ましい。ここで、本発明において、厚膜とは、1~50μm、好ましくは5~15μmの膜厚をいい、薄膜とは、1μm未満の膜厚を意味する。
本発明による組成物は、好ましくは、後に行われる露光に、波長190~440nm、好ましくは240~440nm、さらに好ましくは360~440nm、よりさらに好ましくは365nmの光が用いられる。
本発明による組成物は、好ましくは逆テーパー形状形成ポジ型レジスト組成物である。本発明において、「逆テーパー形状」は以降に説明する。
本発明による組成物は、好ましくはポジ型レジストリフトオフ組成物である。
【0014】
(A)ポリマー
(A)ポリマーは、ポリマーP、またはポリマーPおよびポリマーQの組み合わせを含んでなる。記載するまでもないが、ポリマーPとポリマーQを共に含む場合、これらは共重合しない。
【0015】
[ポリマーP]
本発明において用いられるポリマーPは、酸と反応してアルカリ性水溶液に対する溶解度が増加するものである。このようなポリマーは、例えば保護基によって保護された酸基を有しており、外部から酸を添加されると、その保護基が脱離して、アルカリ性水溶液に対する溶解度が増加するものである。
【0016】
ポリマーPは、式(P-1)~(P-4)からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなる。
【化3】
(式中、
R
p1、R
p3、R
p5、およびR
p8は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、
R
p2、R
p4、およびR
p7は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、 R
p6、およびR
p9は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、
x1は0~4であり、x2は1~2であり、ただし、x1+x2≦5であり、
x3は0~5であり、
x4は1~2であり、x5は0~4であり、ただし、x4+x5≦5である。
本発明のポリマーPの一形態として、(P-1)のみを構成単位として有し、x2=1の(P-1)とx2=2の(P-1)が1:1の割合であることも有り得る。この場合、x2=1.5となる。ポリマーについて、特に言及されない場合、以降同様である。
【0017】
式(P-1)において、
Rp1は、好ましくは、水素、メチルであり、より好ましくは水素である。 Rp2は、好ましくは、メチル、エチル、t-ブチルまたはメトキシであり、より好ましくはメチルまたはt-ブチルである。
x2は、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
x1は、好ましくは0、1、2または3であり、より好ましくは0である。
【0018】
【0019】
式(P-2)において、
Rp3は、好ましくは水素、またはメチルであり、より好ましくは水素である。 Rp4は、好ましくは、メチル、エチル、t-ブチルまたはメトキシであり、より好ましくはメチルまたはt-ブチルである。
x3は、好ましくは0、1、2または3であり、より好ましくは0である。
【0020】
【0021】
式(P-3)において、
Rp5は、好ましくは、水素、またはメチルであり、より好ましくは水素である。 Rp6は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル、-CH(CH3)-O-C2H5、または-CH(CH3)-O-CH3であり、より好ましくはメチル、-ブチル、-CH(CH3)-O-C2H5、または-CH(CH3)-O-CH3であり、さらに好ましくはt-ブチル、または-CH(CH3)-O-C2H5である。 Rp7は、好ましくは、メチル、エチル、t-ブチルまたはメトキシであり、より好ましくはメチルまたはt-ブチルである。
x4は好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
x5は、好ましくは0、1、2または3であり、より好ましくは0である。
【0022】
【0023】
式(P-4)において、
Rp8は、好ましくは水素、またはメチルであり、より好ましくは水素である。 Rp9は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、またはt-ブチルであり、より好ましくはt-ブチルである。
【0024】
【0025】
これらの構成単位は、目的に応じて適切に配合されるので、それらの配合比は特に限定されないが、酸によってアルカリ性水溶液に対する溶解度の増加割合が適当になるように配合されるのが好ましい。
好ましくは、(A)ポリマーにおいて、式(P-1)、(P-2)、(P-3)、および(P-4)の繰り返し単位数である、それぞれnp1、np2、np3、およびnp4が、以下の式:
30%≦np1/(np1+np2+np3+np4)≦90%、
0%≦np2/(np1+np2+np3+np4)≦40%、
0%≦np3/(np1+np2+np3+np4)≦40%、および
0%≦np4/(np1+np2+np3+np4)≦40%を満たすことが好ましい。
np1/(np1+np2+np3+np4)は、より好ましくは40~80%、さらに好ましくは40~70%である。
np2/(np1+np2+np3+np4)は、より好ましくは0~30%、さらに好ましくは10~30%である。
np3/(np1+np2+np3+np4)は、より好ましくは0~30%、さらに好ましくは10~30%である。np3/(np1+np2+np3+np4)が0%も好適な一態様である。
np4/(np1+np2+np3+np4)は、より好ましくは10~40%、さらに好ましくは10~30%である。
また、(np3+np4)/(np1+np2+np3+np4)、好ましくは0~40%、より好ましくは0~30%、さらに好ましくは10~30%である。ポリマーPにおいて、式(P-3)および(P-4)の繰り返し単位のいずれ一方が存在し、他方が存在しない態様も好適である。
【0026】
ポリマーPは、(P-1)~(P-4)以外の構成単位を含むこともできる。ここでポリマーPに含まれる全ての繰り返し単位の総数ntotalが、以下の式: 80%≦(np1+np2+np3+np4)/ntotal≦100%を満たすことが好ましい。
(np1+np2+np3+np4)/ntotalは、より好ましくは90~100%であり、さらに好ましくは95~100%である。(np1+np2+np3+np4)/ntotal=100%であること、つまり、(P-1)~(P-4)以外の構成単位を含まないことも、本発明の好ましい一態様である。
【0027】
【0028】
ポリマーPの質量平均分子量(以下、Mwということがある)は、好ましくは5,000~50,000、より好ましくは7,000~30,000であり、さらに好ましくは10,000~15,000である。
本発明において、Mwはゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)にて測定することが可能である。同測定では、GPCカラムを摂氏40度、溶出溶媒テトラヒドロフランを0.6mL/分、単分散ポリスチレンを標準として用いることが好適な1例である。以下においても同じである。
【0029】
[ポリマーQ]
本発明において用いられるポリマーQは、リソグラフィーにおいて一般に用いられる、ノボラックポリマーであり、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。
ポリマーQは、式(Q-1)で表される繰り返し単位を含んでなる。
【化9】
式中、
R
q1は、それぞれ独立に、C
1-5アルキルであり、
y1は1~2であり、
y2は0~3であり、ただし、y1+y2≦4である。
y1は、好ましくは1または2、より好ましくは1である。
y2は、好ましくは0~2であり、より好ましくは0.5~1.5である。
【0030】
ポリマーQは、好ましくは、式(Q-1a)~(Q-1d):
【化10】
からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなる。
【0031】
(Q-1a)の繰り返し単位数Nqa、(Q-1b)繰り返し単位数Nqb、(Q-1c)繰り返し単位数Nqc、および(Q-1d)繰り返し単位数Nqdが、以下の式:
30%≦Nqa/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦100%、
0%≦Nqb/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦70%、
0%≦Nqc/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦50%、および 0%≦Nqd/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)≦70%をみたすことが好ましい。
Nqa/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは30~80%、さらに好ましくは30~70%、よりさらに好ましくは40~60%である。
Nqb/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは10~60%、さらに好ましくは20~50%、よりさらに好ましくは30~50%である。
Nqc/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは0~40%、さらに好ましくは10~30%である。Nqc/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)が0%であることも、好適な一形態である。
Nqd/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)は、より好ましくは0~40%、さらに好ましくは10~30%である。Nqd/(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)が0%であることも、好適な一形態である。ポリマーQにおいて、式(Q-1c)および(Q-1d)の繰返し単位のいずれか一方が存在し、他方が存在しない態様も好適である。
【0032】
ポリマーQは、(Q-1a)~(Q-1d)以外の構成単位を含むこともできる。ここで、ポリマーQに含まれる全ての繰り返し単位の総数Ntotalが、以下の式:
80%≦(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)/Ntotal≦100%を満たすことが好ましい。
(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)/Ntotalは、より好ましくは90~100%、さらに好ましくは95~100%である。(Nqa+Nqb+Nqc+Nqd)/Ntotal=100%であること、つまり、(Q-1a)~(Q-1d)以外の構成単位を含まないことも、本発明の好ましい一態様である。
【0033】
ポリマーQの質量平均分子量(以下、Mwということがある)は、好ましくは1,000~50,000、より好ましくは2,000~30,000であり、さらに好ましくは3,000~10,000である。
【0034】
組成物中の、ポリマーPの総質量MpおよびポリマーQの総質量Mqが、式:0<Mp/(Mp+Mq)≦100%をみたすことが好ましく、40≦Mp/(Mp+Mq)≦90%をみたすことがより好ましい。
また、0≦Mq/(Mp+Mq)<70%をみたすことが好ましく、10≦Mq/(Mp+Mq)≦60%をみたすことがより好ましい。
【0035】
ポリマーQは、ポリマーPと比較すると、アルカリ溶解が高いポリマーである。ポリマー(A)において、ポリマーQは含まれていなくてもよいが、含まれていることで、レジストパターンが、後述する
図1(B)のようなオーバーハング形状になりやすい傾向にある。ただし、ポリマーQはアルカリ溶解性が高いため、ポリマーPおよびQの総質量に対する、ポリマーQの含有量が7割以上になると、レジストパターンの断面形状がテーパー形状に近づく傾向があり、注意が必要である。
【0036】
(A)ポリマーは、ポリマーPおよびポリマーQ以外のポリマーを含むことができる。ポリマーPおよびQ以外のポリマーの含有量は、好ましくは(A)ポリマーの総質量を基準として、60%以下であり、より好ましくは30%以下である。ポリマーPおよびポリマーQ以外のポリマーは、ポリマーPともポリマーQとも共重合しない。
ポリマーPおよびポリマーQ以外のポリマーとは、上述の式(P-1)~(P-4)からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなるポリマーの条件を満たさず、さらに上記の式(Q-1)で表される繰り返し単位を含んでなるポリマーの条件を満たさない。
ポリマーPおよびポリマーQ以外のポリマーを含まないことも、本発明の好適な一態様である。
【0037】
(A)ポリマーの含有量は、好ましくは、組成物の総質量を基準として、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは30~40質量%である。
【0038】
(B)イミド基を有する酸発生剤
本発明による組成物は、(B)イミド基を有する酸発生剤(以下、(B)酸発生剤ということがある)を含んでなる。この(B)酸発生剤は、光の照射によって酸を放出し、その酸がポリマーPに作用して、ポリマーのアルカリ性水溶液に対する溶解度を増加させる役割を果たす。例えばポリマーが保護基によって保護された酸基を有している場合に、酸によって、その保護基を脱離させる。
本発明において、(B)酸発生剤とは、上記の機能を有する化合物そのものをいう。その化合物が溶媒に溶解または分散されて、組成物に含有される場合もあるが、このような溶媒は(D)溶媒またはその他の成分として組成物に含有されることが好ましい。以降、組成物に含まれうる各種添加剤に対しても同様とする。
なお、本発明におけるイミド基は-N<の構造を有するものを意味するが、二つのカルボニルの間に窒素原子が存在する構造-C(=O)-N(-Z)-C(=O)-(ここで、Zは有機基)を有することが好ましい。
【0039】
なお、本発明による組成物は、ノボラックポリマーの感光剤として通常用いられるジアゾナフトキノン誘導体およびキノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤(以下、本段落においてジアゾナフトキノン誘導体等とする)は、実質的に含まないことが好ましい。特許文献1~3等の先行文献において、ジアゾナフトキノン誘導体等は、露光によりカルボン酸になり、露光部のアルカリ溶解性を上げるために使用される。一方、未露光部(露光されない部分)でジアゾナフトキノン誘導体等はノボラックポリマーを高分子量化させて溶解阻害に寄与すると考えられる。
本発明による組成物は、ジアゾナフトキノン誘導体等を含むと、レジストパターンの断面形状がテーパー形状に近づく傾向にある。このため、本発明による組成物はジアゾナフトキノン誘導体等を全く含まないことが、好適な一形態である。
【0040】
(B)酸発生剤は、好ましくは、式(b)で表される。
【化11】
式中、
R
b1は、それぞれ独立に、C
3-10アルケニルもしくはアルキニル(ここで、アルケニルおよびアルキニル中のCH
3-がフェニルによって置換されていてもよく、アルケニルおよびアルキニル中の-CH
2-が-C(=O)-、-O-またはフェニレンの少なくともいずれか一つによって置き換えられていてもよい)、C
2-10チオアルキル、C
5-10飽和複素環でありであり、
nbは、0、1または2であり、かつ
R
b2は、C
1-5のフッ素置換されたアルキルである。ここで、フッ素置換は、少なくとも1つの水素原子がフッ素によって置きかえられていればよいが、好ましくは、全ての水素がフッ素に置換されている。
ここで、本発明において、アルケニルとは、1以上の二重結合(好ましくは1つ)を有する1価基を意味するものとする。同様に、アルキニルとは、1以上の三重結合(好ましくは1つ)を有する1価基を意味するものとする。
【0041】
Rb1は、好ましくは、C3-12アルケニルもしくはアルキニル(ここで、アルケニルおよびアルキニル中のCH3-がフェニルによって置換されていてもよく、アルケニルおよびアルキニル中の-CH2-が-C(=O)-、-O-またはフェニレンの少なくともいずれか一つによって置き換えられていてもよい)、C3-5のチオアルキル、C5-6の飽和複素環である。
Rb1の具体例として、-C≡C-CH2-CH2-CH2-CH3、-CH=CH-C(=O)-O-tBu、-CH=CH-Ph、-S-CH(CH3)2、-CH=CH-Ph-O-CH(CH3)(CH2CH3)およびピぺリジンが挙げられる。ここで、tBuはt-ブチルを意味し、Phはフェニレンまたはフェニルを意味する。以降、特に言及しない限り同様である。
nbは、0または1であることが好ましく、nb=0がより好ましい。nb=1であることも、好適な一態様である。
Rb2は、好ましくは、C1-4の、全ての水素がフッ素置換されているアルキルであり、より好ましくはC1またはC4の全ての水素がフッ素置換されているアルキルである。Rb2のアルキルは直鎖であることが好ましい。
【0042】
【0043】
例えば、下記具体例は式(b)で表され得る。R
b1はC
8アルケニルであり、-CH=CH-CH
2-CH
2-CH(CH
3)(CH
2CH
3)であったものであり、1つの-CH
2-がフェニレンに、1つの-CH
2-が-O-に置き換えられたものである。nb=1である。R
b2は-CF
3である。
【化13】
【0044】
(B)酸発生剤の分子量は、好ましくは400~1,500であり、より好ましくは400~700である。
(B)酸発生剤の含有量が、(A)ポリマーの総質量を基準として、0.1~10.0質量%であり、より好ましくは0.5~1.0質量%である。
【0045】
(C)溶解速度調整剤
本発明による組成物は、2以上のフェノール構造が、オキシで置換されていてもよい炭化水素基によって結合されている化合物である、溶解速度調整剤を含んでなる。
(C)溶解速度調整剤は、ポリマーの現像液への溶解性を調整する機能がある。理論に拘束されないが、(C)溶解速度調整剤が存在することにより、以下のようなメカニズムによって好ましいパターン形状が形成されると考えられる。(C)溶解速度調整剤は、フェノール構造を有し、アルカリ現像液への溶解性が高いものである。現像時、現像液は、まず、膜の上部にまず接触する。このときに、膜中の表面近くに存在する(C)溶解速度調整剤のみが、現像液に溶解する。これにより、未露光部の膜の表面付近は、(C)溶解速度調整剤が失われ、ポリマーが高分子量化し、アルカリ現像液に対する溶解性が低下する。一方、形成されたレジストパターンの側面は溶解が促進される傾向にあり、レジストパターンの断面形状が逆テーパー形状となる。このようなメカニズムにより、溶解速度調整剤が逆テーパー形状形成に寄与する。このように、(C)溶解速度調整剤は溶解を抑止したり、促進したりと、速度調整を行う機能を有するのである。
【0046】
(C)溶解速度調整剤は、好ましくは、式(c)で表される化合物である。
【化14】
式中、
nc1は、それぞれ独立に、1、2、または3であり、
nc2は、それぞれ独立に、0、1、2、または3であり、
R
c1は、それぞれ独立に、C
1-7のアルキルであり、
L
cは、C
1-15の2価のアルキレン(これは、ヒドロキシ置換されていてもよいアリールによって置換されていてもよく、L
c以外の置換基と環を形成していてもよい)である。
【0047】
nc1は、好ましくは、それぞれ独立に、1または2であり、より好ましくは1である。
nc2は、好ましくは、それぞれ独立に、0、2、または3である。好ましい態様として、2つのnc2は同一である。nc2が0であることも、好適な一態様である。
R
c1は、好ましくは、それぞれ独立に、メチル、エチル、またはシクロヘキシルであり、より好ましくはメチルまたはシクロヘキシルである。
L
cは、好ましくはC
2-12の2価のアルキレンであり、より好ましくはC
2-7の2価のアルキレンである。このアルキレンを置換しうるアリールは、1価のアリールでも2価のアリーレンでも良い。このアリールは、好適にはフェニルまたはフェニレンである。このアリールはヒドロキシ置換され得るが、好適には1つのアリールが1または2つヒドロキシ置換され、より好適には1つヒドロキシ置換される。L
cのアルキレンは、直鎖、分岐、環形(好適にはシクロヘキサレン)およびこれらいずれの結合であっても良い。
L
c以外の置換基と環を形成の一例として、例えばR
c1、またはR
c1が結合するフェニルに結合するOHと環を形成したものが挙げられる。後者の環の形成の一例として、下記具体例が挙げられる。
【化15】
L
cは、好ましくは、-CR
c2R
c3-(ここで、R
c2は、水素またはメチルであり、かつR
c3は、アリールまたはアリール置換されたアルキルであり、ここでアリールはヒドロキシ置換されていてもよい)である。
【0048】
(C)溶解速度調整剤の具体例は以下である。
【化16】
【0049】
例えば、下記具体例は式(c)で表され得る。2つのnc1は共に1であり、2つのnc2は共に2である。R
c1は全てメチルである。L
cは、C
7の2価のアルキレンであったものが、1つの-CH
3がフェニルに置換され、他の1つのイソプロピルの第3級炭素原子部分がヒドロキシ置換されたフェニルで置換されたものである。
【化17】
【0050】
(C)溶解速度調整剤の分子量は、好ましくは90~1,500であり、より好ましくは200~900である。
【0051】
(C)溶解速度調整剤の含有量が、(A)ポリマーの総質量を基準として、好ましくは0.1~20質量%であり、より好ましくは2~5質量%である。
【0052】
(D)溶媒
本発明による組成物は、(D)溶媒を含んでなる。溶媒は、配合される各成分を溶解することができるものであれば特に限定されない。(D)溶媒は、好ましくは、水、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらいずれの組合せである。
溶媒の具体例としては、例えば、水、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン、エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル(ジブチルエーテル、DBE)、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル(ノルマルブチルアセテート、nBA)、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、γ-ブチロラクトン、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、および1,3-プロパンスルトンが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
(D)溶媒は、低沸点溶媒を含んでなることが好ましく、より好ましくは低沸点溶媒を(D)溶媒の総質量を基準として、60%以上含む。
本発明において、低沸点溶媒は、沸点が80~140℃であること、より好ましくは110~130℃である溶媒のことをいう。沸点は大気圧下で測定する。低沸点溶媒としては、PGMEやnBAが挙げられる。
【0054】
(D)溶媒として、好ましくは、PGME、EL、PGMEA、nBA、DBEまたはこれらのいずれかの混合物である。2種を混合する場合、第1の溶媒と第2の溶媒の質量比が95:5~5:95であることが好適である(より好適には90:10~10:90)。(D)溶媒は、PGMEとELとの混合物であることが好適な一形態である。
【0055】
(D)溶媒が少なくとも1つの低沸点溶媒を含むことが、本発明による組成物が逆テーパー形状形成に寄与すると考えられる。理論に拘束されないが、以下のメカニズムであると考えられる。(D)溶媒が、低沸点溶媒を含むことで、本発明による組成物を基板に適用し、加熱した際に、(D)溶媒がより多く揮発し、形成される膜中に、溶媒の含有量が少なくなる。つまり、密度の高い膜となる。膜の密度が高いために、露光部で(B)酸発生剤から発生する酸の密度が上がり、酸の拡散の頻度が上がる。上述のように表面付近がより高分子量化しているため拡散された酸の影響が抑制されるが、パターンの側面や下部では拡散された酸の影響を受けやすくなる。これによって、逆テーパー形状形成に寄与するのである。さらに、(E)の塩基性化合物を含む場合には、後述するように、未露光部の上部には、酸の拡散抑止をする効果があり、下部には拡散抑止効果がより少ないため、さらに、逆テーパー形状が形成されやすくなる。
【0056】
他の層や膜との関係で、(D)溶媒が水を含まないことも一態様である。例えば、(D)溶媒全体に占める水の量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下である。
【0057】
(D)溶媒の含有量は、組成物の総質量を基準として、40~90質量%であり、より好ましくは30~50質量%である。組成物全体に占める溶媒の量を増減させることで、成膜後の膜厚を制御できる。
【0058】
(E)塩基性化合物
本発明による組成物は、(E)塩基性化合物をさらに含むことができる。
(E)塩基性化合物は、露光部で発生した酸の拡散を抑える効果を有する。そして、本発明において、(E)塩基性化合物は、逆テーパー形状形成に寄与する役割を果たすと考えられる。理論に拘束されないが、以下のようなメカニズムであると考えられる。本発明による組成物を基板上に適用し、膜化する時点では、(E)塩基性化合物は、膜中に均一に存在する。その後、加熱をすると、(E)塩基性化合物のうちの膜中の上方に存在していたうちの一部が、溶剤とともに、大気中に揮発し、揮発していない分も上方に移動する。これにより、膜中の(E)塩基性化合物の分布は、上方には多く、下方には少なく偏在する。露光により、酸発生剤から酸が放出され、露光後加熱等によりこの酸が未露光部に拡散すると、この(E)塩基性化合物と中和反応が起こることにより、未露光部への酸の拡散が抑えられるのであるが、このとき、膜中の(E)塩基性化合物の偏在により、未露光部において、膜の上方では、酸の拡散が抑える効果が高いが、膜の下方では酸の拡散を抑える効果が低くなる。つまり、酸の分布が上方よりも下方の方が高くなるのである。これによって、アルカリ現像液で現像した際に、逆テーパー形状形成に寄与する。
塩基性化合物は、上記の効果の他に、空気中に含まれるアミン成分によるレジスト膜表面の酸の失活を抑える効果も有する。
【0059】
(E)塩基性化合物は、好ましくは、アンモニア、C1-16の第一級脂肪族アミン、C2-32の第二級脂肪族アミン、C3-48の三級脂肪族アミン、C6-30の芳香族アミン、およびC5-30のヘテロ環アミン、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0060】
塩基性化合物の具体例としては、アンモニア、エチルアミン、n-オクチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン‐5、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが挙げられる。
【0061】
(E)塩基性化合物の分子量は、好ましくは17~500であり、より好ましくは100~350である。
【0062】
(E)塩基性化合物の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、好ましくは0~1.0質量%であり、より好ましくは0.05~0.3質量%である。組成物の保存安定性を考慮すると、(E)塩基性化合物を含まないことも、好適な一形態である。
【0063】
(F)可塑剤
本発明による組成物は、(F)可塑剤をさらに含むことができる。可塑剤を添加することにより、レジストパターンのクラック発生を抑えることができる。
【0064】
可塑剤の例としてアルカリ可溶性ビニルポリマーや酸解離性基含有ビニルポリマーを挙げることができる。より具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、マレイン酸ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリルニトリル、ポリビニルフェノール、ノボラックおよびそれらのコポリマーなどが挙げられ、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリエーテルエステルがより好ましい。
【0065】
(F)可塑剤は、好ましくは、式(f-1)で表される構成単位、および/または式(f-2)で表される構成単位を含んでなる。
【0066】
式(f-1)は、以下で表される。
【化18】
式中、
R
f1は、それぞれ独立に、水素、またはC
1-5のアルキルであり、かつ
R
f2は、それぞれ独立に、水素、またはC
1-5のアルキルである。
【0067】
Rf1は、好ましくは、それぞれ独立に、水素、またはメチルである。
Rf2は、好ましくは、それぞれ独立に、水素、またはメチルである。
より好ましくは、2つのRf1および2つのRf2のうちの1つがメチルであり、残りの3つは水素である。
【0068】
式(f-2)は、以下で表される。
【化19】
式中、
R
f3は、それぞれ独立に、水素、またはC
1-5のアルキルであり、 R
f4は、水素、またはC
1-5のアルキルであり、かつ
R
f5は、C
1-5のアルキルである。
【0069】
Rf3は、好ましくは、それぞれ独立に、水素、またはメチルであり、より好ましくは、どちらも水素である。
Rf4は、好ましくは、水素、またはメチルであり、より好ましくは水素である。
Rf5は、好ましくは、メチルまたはエチルであり、より好ましくは、メチルである。
【0070】
【0071】
(F)可塑剤の質量平均分子量は、好ましくは1,000~50,000であり、より好ましくは1,500~30,000であり、さらに好ましくは2,000~21,000であり、よりさらに好ましくは3,000~21,000である。
【0072】
(F)可塑剤の含有量は、好ましくは、(A)ポリマーの総質量を基準として、0~30質量%であり、より好ましくは1~10質量%である。可塑剤を含まないことも、本発明の好適な一態様である。
【0073】
(G)添加物
本発明による組成物は、(A)~(F)以外の、(G)添加物を含むことができる。
(G)添加物は特に限定されないが、好ましくは、界面活性剤、酸、および基板密着増強剤からなる群の少なくとも1つから選択される。
(G)添加物の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、0~20質量%であり、より好ましくは0~11質量%である。(G)添加剤を含まない(0質量%)ことも、本発明による組成物の好適な一例である。
【0074】
界面活性剤を含むことで、塗布性を向上させることができる。本発明に用いることができる界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテルが好ましい。
【0075】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、2質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下とすることがより好ましい。
【0076】
酸は、組成物のpH値の調整や添加剤成分の溶解性を向上させるために使用することができる。使用される酸は特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、およびこれらの組み合わせが挙げられる。酸の含有量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~0.1質量%(50~1,000ppm)である。
【0077】
基板密着増強剤を用いることで、成膜時にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐことができる。基板密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましく、イミダゾール類では、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシエチルベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-アミノイミダゾールが好ましく、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾールがより好ましく用いられる。基板密着増強剤の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0.01~5質量%、よりさらに好ましくは0.1~3質量%である。
【0078】
<レジストパターンの製造方法>
本発明によるレジストパターンの製造方法は、
(1)基板の上方に本発明による組成物を適用すること;
(2)組成物を加熱し、レジスト層を形成すること;
(3)レジスト層を露光すること;
(4)レジスト層を露光後加熱すること;および
(5)レジスト層を現像すること
を含んでなる。
明確性のために記載すると、()の中の数字は、順番を意味する。例えば、(2)工程の前に、(1)の工程が行われる。
【0079】
以下、本発明による製造方法の一態様について説明する。
基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、シリコンウェハ基板、ガラス基板およびITO基板等)の上方に、適当な方法により本発明による組成物を適用する。ここで、本発明において、上方とは、直上に形成される場合および他の層を介して形成される場合を含む。例えば、基板の直上に、平坦化膜やレジスト下層膜を形成し、その直上に本発明による組成物が適用されていてもよい。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられる。塗布後、加熱することによりレジスト層が形成される。(2)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは60~140℃、より好ましくは90~110℃、である。ここでの温度は加熱雰囲気、例えばホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~900秒間、より好ましくは60~300秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【0080】
レジスト層の膜厚は、目的に応じて選択されるが、本発明による組成物を用いた場合、膜厚の厚い塗膜を形成させた場合に、より優れた形状のパターンを形成できる。このため、レジスト膜の厚さは厚いことが好ましく、例えば1μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましい。
【0081】
レジスト層に、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光に用いられる光の波長は特に限定されないが、波長が190~440nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)等を使用することができる。波長は、より好ましくは240~440nm、さらに好ましくは360~440nmであり、よりさらに好ましくは365nmである。これらの波長は±1%の範囲が許容される。
【0082】
露光後、露光後加熱(post exposure bake、以下PEBということがある)が行われる。(4)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。露光後加熱の温度は好ましくは80~160℃、より好ましくは105~115℃であり、加熱時間は30~600秒間、好ましくは60~200秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【0083】
PEB後、現像液を用いて現像が行なわれる。現像法としては、パドル現像法、浸漬現像法、揺動浸漬現像法など従来フォトレジストの現像の際用いられている方法を用いることができる。また現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどの無機アルカリ、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミンなどの有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などの第四級アミンなどを含む水溶液が用いられ、好ましくは2.38質量%TMAH水溶液である。現像液に、さらに界面活性剤を加えることもできる。現像液の温度は好ましくは5~50℃、より好ましくは25~40℃、現像時間は好ましくは10~300秒、より好ましくは30~60秒である。現像後、必要に応じて、水洗またはリンス処理を行うこともできる。ポジ型レジスト組成物を用いているため、露光された部分が現像によって除去され、レジストパターンが形成される。このレジストパターンに、例えばシュリンク材料を用いることでさらに微細化することも可能である。
【0084】
現像によって、未露光部は現像液にほとんど溶解しないため、形成されたレジストパターンと、上記のレジスト層の厚さは、同一とみなせる。
本発明の組成を用いることで、逆テーパー形状のレジストパターンを形成できる。ここで、本発明において、逆テーパー形状とは、
図1(A)の断面図に示すように、基板11上に、レジストパターン12が形成されている場合、開口点(レジスト表面とレジストパターン側面との境界)13と底点(基板表面とレジストパターン側面との境界)14を結ぶ直線(テーパーライン)と、基板表面とがなす角度が90度より大きく、かつテーパーラインよりもレジストパターンが実質的に外側にはみ出さない、すなわち実質的にレジストパターンが太っていないことをいう。ここで、この角度をテーパー角度15という。このようなレジストパターンを逆テーパー形状のレジストパターン12という。なお、本発明において逆テーパー形状とは、逆円錐台形状(reverse truncated cone)だけを意味するのでは無く、ライン状のパターンにおいて、表面部のライン幅が、基板近傍のライン幅に比べて広い場合なども包含する。
本発明による逆テーパー形状のレジストパターンには、
図1(B)の断面図に示すように、開口点22と底点23を結ぶ直線(テーパーライン24)よりも、レジストパターンが内側にえぐれている、即ち、レジストパターンが痩せている場合も含まれる。ここでのテーパー角度は、テーパー角度25である。このようなレジストパターンをオーバーハング形状のレジストパターン21という。基板から、レジストパターンの膜厚26の半分の長さ27の高さの位置で、基板表面と並行に直線をひき、その直線上で、レジストパターンとの交点と、テーパーラインとの交点との距離を食い込み幅28とする。同じくその直線上で、レジストパターンとの交点と、開口点から基板に垂直にひいた直線との交点との距離をテーパー幅29という。食い込み幅/テーパー幅が0より大きい場合が
図1(B)であり、0である場合が
図1(A)である。
オーバーハング形状である場合、金属蒸着後のレジスト剥離時に、剥離液が入り込みやすい傾向にあるため、好ましい。
なお、オーバーハング形状の変形例として、
図1(C)のように、レジストパターン31の端が丸みを帯びるケースも考えられる。この場合、開口点32は、レジスト表面とレジストパターン側面との境界であって、底面と平行なレジスト表面の平面を想定し、その平面から、レジストパターンが離れる点とする。底点33が基板表面とレジストパターン側面との境界である。開口点32と底点33を結ぶ直線がテーパーライン34であり、ここでのテーパー角度は、テーパー角度35である。
テーパーラインの内側にあるが、レジストパターンではない部分の面積をS
in36とし、テーパーラインの外側にあるが、レジストパターンである部分の面積をS
out37とする。複数の場合は、面積の和を用いる。
S
out/(S
in+S
out)は、0~0.45であることが好ましく、0~0.1であることがより好ましく、0~0.05であることがさらに好ましく、0~0.01であることがよりさらに好ましい。S
out/(S
in+S
out)が小さい形状は、金属を厚くレジストパターン上に蒸着しても剥離液がレジスト側壁に侵入しやすく有利である。なお、特許文献3に記載のT型のレジストパターンは、S
out/(S
in+S
out)が約0.5である。
(S
in-S
out)/(S
in+S
out)は、0~1であることが好ましく、0.55~1であることがより好ましく、0.9~1であることがさらに好ましく、0.99~1であることがよりさらに好ましい。0<(S
in-S
out)/(S
in+S
out)であることも、本発明の好適な一態様である。(S
in-S
out)/(S
in+S
out)が大きいと、全体としてレジストパターンがテーパーラインより内側にくぼんだ形状となり、金属を厚くレジストパターン上に蒸着しても剥離液がレジスト側壁に侵入しやすく有利である。
図1(A)および(B)の形状の場合にあてはめると、どちらも、S
out/(S
in+S
out)=0であり、どちらも(S
in-S
out)/(S
in+S
out)=1である。
【0085】
化学増幅型レジストを用いてレジストパターンを形成した場合に、露光から、PEBまでの放置時間(PED:Post Exposure Delay)が長くなると、レジストパターンの形状が変化する現象が知られている。この現象は、空気中の塩基性化合物(例えば、アミン成分)によって、レジストの露光部に発生した酸が中和され、露光部のレジスト膜表面の溶解性が下がることによるものと考えられる。レジスト膜の頂部はこの影響を受けやすく、頂部の露光部の一部が現像されずに残ることがある。
本発明による組成物は、従来知られている組成物に対して、上記したような形状変化の影響を受けにくい。すなわち、環境影響に強いという特徴を有している。
【0086】
さらに、
(6)レジストパターンをマスクとして、基板の上方に金属を蒸着させること;
(7)レジストパターンを剥離液で除去すること
を含んでなる方法により、金属パターンを製造することができる。
レジストパターンをマスクとして、基板の上方に、金、銅、等の金属(金属酸化物等であってもよい)を蒸着させる。なお、蒸着の他に、スパッタリングであってもよい。
その後、レジストパターンをその上部に形成された金属とともに、剥離液を用いて除去することで、金属パターンを形成することができる。剥離液は、レジストの剥離液として用いられているものであれば、特に限定されないが、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、アルカリ溶液が使用される。本発明によるレジストパターンは逆テーパー形状であるため、レジストパターン上の金属と、レジストパターンが形成されていない部分に形成された金属との間が、隔たっているため、容易に剥離ができる。また、形成される金属パターンの膜厚も厚くすることができ、好ましくは膜厚0.01~40μm、より好ましくは1~5μmの金属パターンが形成される。
【0087】
本発明の別の一形態として、(5)工程までで形成されたレジストパターンをマスクとして、下地となる各種基板をパターニングすることもできる。レジストパターンをマスクとして直接基板を加工しても良いし、中間層を介して加工しても良い。例えば、レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をパターニングし、レジスト下層膜パターンをマスクとして基板をパターニングしても良い。加工には、公知の方法が使用できるが、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などが使用できる。パターニングされた基板に、電極等を配線することも可能である。
【0088】
その後、必要に応じて、基板にさらに加工がされ、デバイスが形成される。これらのさらなる加工は、公知の方法を適用することができる。デバイス形成後、必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続され、樹脂でパッケージングされる。本発明では、このパッケージングされたものをデバイスという。デバイスとしては、半導体素子、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられる。デバイスとは、好ましくは半導体である。
【実施例】
【0089】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0090】
実施例1:組成物1の調製
PGME:EL=85:15(質量比)の混合溶媒170質量部に、ポリマーPとして、下記P1を50質量部、ポリマーQとして、下記Q1を50質量部添加する。これに、組成物全体の総質量を基準として、酸発生剤として下記B1を1.6質量%、溶解速度調整剤として下記C1を2.5質量%、塩基性化合物としてトリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミンを0.1質量%、可塑剤として下記F1を5.0質量%、界面活性剤として、KF-53(信越化学工業)を0.1質量%、それぞれ添加する。これを室温で5時間、攪拌する。添加物が溶解していることを目視で確認する。これを1.0μmフィルターでろ過する。これによって組成物1を得る。組成物1の粘度は、キャノンフェンスケ法により25℃で測定したところ、600cPである。
【化21】
(P1)ヒドロキシスチレン:スチレン:t-ブチルアクリレート共重合体、東邦化学、モル比でそれぞれ60:20:20、Mw約12,000
【化22】
(Q1)(Q-1a):(Q-1b):(Q-1c):(Q-1d)=60:40:0:0であるポリマー、住友ベークライト、Mw約5,000
【化23】
(B1)NIT、ヘレウス
【化24】
(C1)TPPA-MF、本州化学
【化25】
(F1)Lutonal、BASF
【0091】
実施例2~10、および比較例1~3:組成物2~10、比較組成物1~2の調製
ポリマーおよび溶解速度調整剤を表1に記載のように変更する以外は、組成物1と同様に調製して、組成物2~10、および比較組成物1~3を得る。
【表1】
【0092】
レジストパターンの形成
上記で得られる組成物を用いて以下の操作を行い、レジストパターンを得る。
LITHOTRAC(Litho Tech Japan)を用いて各組成物を6インチシリコンウェハに滴下し、回転塗布し、レジスト層を形成する。このレジスト層が形成されたウェハをホットプレートを用いて100℃180秒間ベークする。ベーク後に、レジスト層の膜厚を光干渉式膜厚測定装置ラムダエースVM-12010(SCREEN)を用いて測定する。膜厚は、ウェハ上で、中心部を除く8点で膜厚を測定し、その平均値を用いる。得られた膜厚を表1に記載する。
【0093】
そして、Suss Aligner(Suss Micro Tec)を用いてi線(365nm)で露光する。露光後、このウェハをホットプレート上で120℃120秒間露光後加熱する。これを2.38%TMAH水溶液で60秒間パドル現像する。これによりLine=10μm、Space(トレンチ)=10μm(Line:Space=1:1)のレジストパターンを得る。
マスクサイズとパターンサイズとが1:1になるときの露光エネルギー(mJ/cm2)は、実施例1の場合は、120mJ/cm2である。
【0094】
テーパー角度の評価
得られるレジストパターンの断面形状を走査電子顕微鏡SU8230(日立テクノロジー)を用いて、観察し、上記に定義したテーパー角度を測定する。なお、実施例組成物5で形成されたレジストパターンの断面形状を
図2(A)に示す。なお、
図2(B)はその断面図を模式的に示したものである。得られた結果を表1に記載する。
実施例組成物5で形成されたレジストパターンの断面形状の、上記に定義されたS
out/(S
in+S
out)=0、(S
in-S
out)/(S
in+S
out)=1である。
【0095】
クラック耐性の評価
実施例組成物1の組成(これは、可塑剤を5質量%含む)に対して、可塑剤を含まないもの、可塑剤を2.5質量%含むもの、7.5質量%含むもの、10.0質量%含むものを調製し、上記と同様にレジストパターンを形成し、スパッタ装置で金を蒸着させる。その後、クラックの有無を光学顕微鏡目視で確認する。可塑剤を含まないものは、クラックがわずかに確認されたが、可塑剤を2.5質量%含むものでは、可塑剤を含まないものよりもクラックが減少する。可塑剤を、5質量%、7.5質量%、10.0質量%含むものは、クラックが全く確認されない。
【符号の説明】
【0096】
11.基板
12.逆テーパー形状のレジストパターン
13.開口点
14.底点
15.テーパー角度
21.オーバーハング形状のレジストパターン
22.開口点
23.底点
24.テーパーライン
25.テーパー角度
26.レジストパターンの膜厚
27.レジストパターンの膜厚の半分の長さ
28.食い込み幅
29.テーパー幅
31.レジストパターン
32.開口点
33.底点
34.テーパーライン
35.テーパー角度
36.Sin
37.Sout
51.基板
52.レジストパターン