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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/00 20060101AFI20221018BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C25D17/00 H
C25D7/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022549277
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2022018410
【審査請求日】2022-08-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】小俣 慎司
(72)【発明者】
【氏名】富田 正輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特許第7057869(JP,B1)
【文献】米国特許第06964792(US,B1)
【文献】特開2002-275693(JP,A)
【文献】特開2002-146599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00
C25D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を収容するように構成されためっき槽と、
めっき槽内に配置されたアノードと、
前記アノードに対向するように被めっき面を下方に向けた基板を保持するように構成された基板ホルダと、
前記めっき槽内をアノード室とカソード室に区画する第1膜、および前記第1膜と前記アノードとの間に配置された第2膜、を有する膜モジュールと、
前記めっき槽内の前記アノードよりも下方の第1領域、および前記第1膜と前記第2膜との間の第2領域、を連通する管部材と、
を含む、めっき装置。
【請求項2】
前記管部材は、前記第1領域に開口する第1端部と、前記第2領域に開口する第2端部と、前記アノードを貫通して前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部材と、を有する、
請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記管部材は、前記第1領域に開口する第1端部と、前記第2領域に開口する第2端部と、前記アノードの側壁と前記めっき槽の側壁との間を通って前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部材と、を有する、
請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記アノードは、前記めっき槽の側壁に対応する形状の第1側壁と、前記第1側壁よりも前記めっき槽の側壁から距離が離れた第2側壁と、を有し、
前記管部材は、前記第1領域に開口する第1端部と、前記第2領域に開口する第2端部と、前記アノードの前記第2側壁と前記めっき槽の側壁との間を通って前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部材と、を有する、
請求項1に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記第1端部は、前記めっき槽の底壁から距離をあけて前記第1領域に配置され、前記第2端部は、前記第1膜から距離をあけて前記第2領域に配置される、
請求項から4のいずれか一項に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記第1膜は、めっき液に含まれるイオン種が通過することを許容し、めっき液に含まれるめっき添加剤が通過しないように構成された膜であり、
前記第2膜は、めっき液に含まれるイオン種が通過することを許容し、気泡が通過しないように構成された膜である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記めっき槽は、前記アノード室にめっき液を供給するためのアノード室用供給口と、前記アノード室からめっき液を前記めっき槽の外部に排出するためのアノード室用排出口と、を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき装置の一例としてカップ式の電解めっき装置が知られている。カップ式の電解めっき装置は、めっき液を収容するめっき槽と、めっき槽に配置されたアノードと、アノードに対向させて被めっき面を下方に向けた状態で基板を保持する基板ホルダと、を備える。電解めっき装置は、基板をめっき液に浸漬させ、基板とアノードとの間に電圧を印加することによって、基板の被めっき面に導電膜を析出させる。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、カップ式の電解めっき装置では、めっき槽の内部に隔膜を設けることが知られている。この隔膜は、めっき槽の内部を、アノードが配置されるアノード室と、基板が配置されるカソード室とに区画する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-19496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような隔膜を有するカップ式のめっき装置では、アノード由来の気泡が発生してめっき液中を上昇し、隔膜の下面に付着して滞留する場合がある。この場合、隔膜の下面に滞留した気泡に起因して基板のめっき品質が悪化するおそれがある。
【0006】
この点、気泡が滞留し難い膜を隔膜とアノードとの間に追加で設けることも考えられる。この場合、隔膜と追加した膜との間の領域にめっき液を満たす必要がある。これらの膜間の領域にめっき液を注入するためには、追加した膜に穴などの流路を形成することが考えられるが、この場合、この流路から膜間の領域に気泡が入り、隔膜の下面に滞留するおそれがある。
【0007】
そこで、本願は、アノード由来の気泡に起因して基板のめっき品質が悪化することを抑制できる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、めっき液を収容するように構成されためっき槽と、めっき槽内に配置されたアノードと、前記アノードに対向するように被めっき面を下方に向けた基板を保持するように構成された基板ホルダと、前記めっき槽内をアノード室とカソード室に区画する第1膜、および前記第1膜と前記アノードとの間に配置された第2膜、を有する膜モジュールと、前記めっき槽内の前記アノードよりも下方の第1領域、および前記第1膜と前記第2膜との間の第2領域、を連通する管部材と、を含む、めっき装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。
図3】本実施形態に係るめっきモジュールの構成を模式的に示す図である。
図4】本実施形態に係る供給・ドレイン口の詳細を説明するための模式図である。
図5】本実施形態に係る膜モジュールの模式的な分解斜視図である。
図6図3のA1部分の模式的な拡大断面図である。
図7】本実施形態に係る第1膜の模式的な上面図である。
図8】本実施形態に係る第1サポート部材の模式的な上面図である。
図9】本実施形態に係る第2膜及び第2サポート部材の模式的な上面図である。
図10図9のB1-B1線断面を模式的に示す断面図である。
図11】本実施形態に係る第1シール部材の模式的な上面図である。
図12】本実施形態に係る第2シール部材又は第3シール部材の模式的な上面図である。
図13図3のA2部分の模式的な拡大断面図である。
図14図13のA4部分の模式的な拡大図である。
図15】本実施形態の管部材の設置態様を模式的に示す平面図である。
図16】変形例の管部材の配置態様を模式的に示す平面図である。
図17】変形例の管部材の配置態様を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
<めっき装置の全体構成>
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。図1、2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、および、制御モジュール800を備える。
【0012】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収納された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数および配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200およびスピンリンスドライヤ60の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110および搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、図示していない仮置き台を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0013】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数および配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数および配置は任意である。
【0014】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数および配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数および配置は任意である。
【0015】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数および配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤが上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤの数および配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0016】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収納された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0017】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0018】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収納したカセットが搬出される。
【0019】
<めっきモジュールの構成>
次に、めっきモジュール400の構成を説明する。本実施形態における24台のめっきモジュール400は同一の構成であるので、1台のめっきモジュール400のみを説明する。
【0020】
図3は、本実施形態に係るめっき装置1000における一つのめっきモジュール400の構成を模式的に示す図である。本実施形態に係るめっき装置1000は、カップ式のめっき装置である。本実施形態に係るめっき装置1000のめっきモジュール400は、めっき槽10と、基板ホルダ20と、回転機構22と、昇降機構24と、電場調整ブロック30と、膜モジュール40と、を備えている。
【0021】
めっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。具体的には、めっき槽10は、底壁10aと、この底壁10aの外縁から上方に延在する側壁10bとを有しており、この側壁10bの上部が開口している。なお、めっき槽10の側壁10bの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る側壁10bは、一例として円筒形状を有している。めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。めっき槽10の側壁10bの外側には、側壁10bの上端からオーバーフローしためっき液Psを貯留するためのオーバーフロー槽19が配置されている。
【0022】
めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。
【0023】
また、本実施形態において、めっき液Psには所定のめっき添加剤が含まれている。この所定のめっき添加剤の具体例として、本実施形態では、「非イオン系のめっき添加剤」が用いられている。なお、非イオン系のめっき添加剤とは、めっき液Ps中においてイオン性を示さない添加剤を意味している。
【0024】
めっき槽10の内部には、円板形状のアノード13が配置されている。また、アノード13は、水平方向に延在するように配置されている。アノード13の具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、アノード13の一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は、特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。なお、アノード13と、後述する膜モジュール40の第2膜42との間には、アノードマスクが配置されていてもよい。
【0025】
めっき槽10の内部における後述するカソード室12には、イオン抵抗体14が配置されている。具体的には、イオン抵抗体14は、カソード室12における膜モジュール40よりも上方且つ基板Wfよりも下方の箇所に設けられている。イオン抵抗体14は、カソード室12におけるイオンの移動の抵抗となり得る部材であり、アノード13と基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている。
【0026】
イオン抵抗体14は、イオン抵抗体14の下面と上面とを貫通するように設けられた複数の貫通孔15を有する板部材によって構成されている。この複数の貫通孔15は、イオン抵抗体14のパンチングエリアPA(上面視で円形のエリアである)の部分に設けられている。イオン抵抗体14の具体的な材質は特に限定されるものではないが、本実施形態においては一例として、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂を用いている。
【0027】
めっきモジュール400がイオン抵抗体14を有することで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を図ることができる。
【0028】
電場調整ブロック30は、リング状の部材によって構成されている。また、電場調整ブロック30は、カソード室12におけるイオン抵抗体14よりも下方、且つ、膜モジュール40よりも上方に配置されている。具体的には、本実施形態に係る電場調整ブロックは、後述する第1サポート部材43の上面に配置されている。
【0029】
後述する図13に示すように、電場調整ブロック30の内周壁の内径D2は、イオン抵抗体14のパンチングエリアPAの外径D1よりも小さい値になっている。換言すると、電場調整ブロック30の内周壁は、イオン抵抗体14の径方向で最も外側に配置されている貫通孔15よりも、イオン抵抗体14の径方向で内側に位置している。
【0030】
電場調整ブロック30は、カソード室12における電場を調整する機能を有している。具体的には、電場調整ブロック30は、基板Wfの外縁に電場が集中することを抑制して、基板Wfに形成されるめっき皮膜の膜厚が均一になるように、カソード室12の電場を調整している。電場調整ブロック30の具体的な材質は特に限定されるものではないが、本実施形態においては一例として、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂を用いている。
【0031】
めっきモジュール400が電場調整ブロック30を備えることで、カソード室12における電場を調整できるので、めっき皮膜の膜厚の均一化を効果的に図ることができる。
【0032】
なお、異なる内径D2を有する複数種類の電場調整ブロック30を予め準備しておくことが好ましい。この場合、この複数種類の電場調整ブロック30の中から所望の内径D2を有する電場調整ブロック30を選択し、この選択された電場調整ブロック30をめっき槽10に配置すればよい。
【0033】
上述したイオン抵抗体14や電場調整ブロック30は、本実施形態に必須の部材ではなく、めっきモジュール400は、これらの部材を備えていない構成とすることもできる。
【0034】
図3を参照して、膜モジュール40は、めっき槽10の内部において、アノード13と基板Wf(カソード)との間の箇所(具体的には、本実施形態では、アノード13とイオン抵抗体14との間の箇所)に配置されている。めっき槽10の内部において、膜モジュール40の後述する第1膜41よりも下方の領域をアノード室11と称し、第1膜41よりも上方の領域をカソード室12と称する。前述したアノード13はアノード室11に配置されている。この膜モジュール40の詳細は後述する。
【0035】
基板ホルダ20は、カソードとしての基板Wfを、基板Wfの被めっき面(下面)がアノード13に対向するように保持している。基板ホルダ20は、回転機構22に接続されている。回転機構22は、基板ホルダ20を回転させるための機構である。回転機構22は、昇降機構24に接続されている。昇降機構24は、上下方向に延在する支柱26によって支持されている。昇降機構24は、基板ホルダ20及び回転機構22を昇降させるための機構である。なお、基板Wf及びアノード13は、通電装置(図示せず)と電気的に接続されている。通電装置は、めっき処理の実行時に、基板Wfとアノード13との間に電気を流すための装置である。
【0036】
めっき槽10には、アノード室11にめっき液Psを供給するためのアノード室用供給口16と、アノード室11からめっき液Psをめっき槽10の外部に排出するためのアノード室用排出口17と、が設けられている。本実施形態に係るアノード室用供給口16は、一例として、めっき槽10の底壁10aに配置されている。アノード室用排出口17は、一例として、めっき槽10の側壁10bに配置されている。また、アノード室用排出口17は、めっき槽10の2箇所に設けられている。なお、アノード室用排出口17の詳細は、後述する。
【0037】
アノード室用排出口17から排出されためっき液Psは、アノード室用のリザーバータンクに一時的に貯留された後に、再びアノード室用供給口16からアノード室11に供給される。
【0038】
めっき槽10には、カソード室12用の供給・ドレイン口18が設けられている。供給・ドレイン口18は、「カソード室12用のめっき液Psの供給口」と「カソード室12用のめっき液Psのドレイン口」とが合体したものである。
【0039】
すなわち、カソード室12にめっき液Psを供給する際には、この供給・ドレイン口18は「カソード室12用のめっき液Psの供給口」として機能して、この供給・ドレイン口18からめっき液Psがカソード室12に供給される。一方、カソード室12からめっき液Psを排出する際には、この供給・ドレイン口18は、「カソード室12用のめっき液Psのドレイン口」として機能して、この供給・ドレイン口18からカソード室12のめっき液Psが排出される。
【0040】
具体的には、本実施形態に係る供給・ドレイン口18には、流路切り替えバルブ(図示せず)が接続されている。この流路切り替えバルブによる流路の切り替えによって、供給・ドレイン口18は、カソード室12にめっき液Psを供給することと、カソード室12のめっき液Psをめっき槽10の外部に排出することと、を選択的に行う。
【0041】
図4は、供給・ドレイン口18の詳細を説明するための模式図である。具体的には、図4には、めっき槽10の模式的な上面図が図示されているとともに、図4の一部(A3部分)には、供給・ドレイン口18の周辺構成の模式的な正面図も図示されている。なお、図4において、イオン抵抗体14、電場調整ブロック30、後述する第1サポート部材43及び第1シール部材45の図示は省略されている。
【0042】
図4に示すように、本実施形態に係る供給・ドレイン口18は、めっき槽10の側壁10bに設けられている。また、供給・ドレイン口18は、後述する第1膜41の延在部位41aから供給・ドレイン口18までの高さ(H)が、20mm以内になるように、設けられている。すなわち、この高さ(H)は、0mmであってもよく(この場合、供給・ドレイン口18は第1膜41の延在部位41aの直上に配置される)、あるいは20mmであってもよく、あるいは0mmよりも大きく20mmよりも小さい範囲から選択された任意の値であってもよい。
【0043】
この構成によれば、カソード室12のめっき液Psをカソード室12から容易に排出できる。
【0044】
なお、供給・ドレイン口18の構成は上記の構成に限定されるものではない。他の一例を挙げると、めっきモジュール400は、供給・ドレイン口18に代えて、「カソード室12用のめっき液Psの供給口」、及び、「カソード室12用のめっき液Psのドレイン口」を、個別に備えていてもよい。
【0045】
基板Wfへのめっき処理を実行する際には、まず、回転機構22が基板ホルダ20を回転させるとともに、昇降機構24が基板ホルダ20を下方に移動させて、基板Wfをめっき槽10のめっき液Ps(カソード室12のめっき液Ps)に浸漬させる。次いで、通電装置によって、アノード13と基板Wfとの間に電気が流される。これにより、基板Wfの被めっき面に、めっき皮膜が形成される。
【0046】
なお、基板Wfへのめっき処理の実行時に、供給・ドレイン口18は「カソード室12用のめっき液Psのドレイン口」としての機能を発揮しないようになっている。具体的には、めっき処理の実行時において、カソード室12のめっき液Psは、めっき槽10の側壁10bの上端からオーバーフローしてオーバーフロー槽19に一時的に貯留される。めっき処理の終了後に、カソード室12のめっき液Psをカソード室12から排出して、カソード室12のめっき液Psを空にする場合に、供給・ドレイン口18は開弁状態になって「カソード室12用のめっき液Psのドレイン口」として機能して、めっき液Psが供給・ドレイン口18から排出される。
【0047】
ところで、本実施形態のようなカップ式のめっき装置1000において、何らかの原因により、アノード室11に気泡Bu(この符号は、後述する図13に記載されている)が発生することがある。具体的には、本実施形態のように、アノード13として不溶解アノードを用いる場合、めっき処理の実行時(通電時)に、アノード室11には以下の反応式に基づいて酸素(O)が発生する。この場合、この発生した酸素が気泡Buとなる。
【0048】
2HO→O+4H++4e-
上述したように、アノード室11に気泡Buが発生した場合において、仮に、この気泡Buが膜モジュール40の下面(具体的には、後述する第2膜42の下面)に全体的に滞留した場合、この気泡Buが電場を遮断するおそれがある。この場合、基板Wfのめっき品質が悪化するおそれがある。そこで、本実施形態では、このような問題に対処するために、以下に説明する技術を用いている。
【0049】
図5は、膜モジュール40の模式的な分解斜視図である。図6は、図3のA1部分の模式的な拡大断面図である。本実施形態に係る膜モジュール40は、第1膜41と、第2膜42と、第1サポート部材43(すなわち「第1膜用サポート部材」)と、第2サポート部材44(すなわち「第2膜用サポート部材」)と、第1シール部材45と、第2シール部材46と、第3シール部材47と、を備えている。膜モジュール40のこれらの構成部材は、ボルト等の締結部材を用いてめっき槽10の側壁10bの所定箇所(すなわち、膜モジュール40が固定される被固定箇所)に固定されている。
【0050】
図7は、第1膜41の模式的な上面図である。図8は、第1サポート部材43の模式的な上面図である。図9は、第2膜42及び第2サポート部材44の模式的な上面図である。図10は、図9のB1-B1線断面を模式的に示す断面図である。図11は、第1シール部材45の模式的な上面図である。図12は、第2シール部材46(又は第3シール部材47)の模式的な上面図である。図13は、図3のA2部分の模式的な拡大断面図である。
【0051】
第1膜41は、めっき槽10内を、アノード13が配置されるアノード室11と、基板Wfが配置されるカソード室12と、に区画する膜である。具体的には、第1膜41は、めっき液Psに含まれるイオン種(これは金属イオンを含んでいる)が第1膜41を通過することを許容しつつ、めっき液Psに含まれる非イオン系のめっき添加剤が第1膜41を通過することを抑制するように構成された膜である。具体的には、第1膜41は、複数の微細な孔(微細孔)を有している(この微細孔の図示は省略されている)。この複数の孔の平均的な直径はナノメートルサイズ(すなわち、1nm以上999nm以下のサイズ)である。これにより、金属イオンを含むイオン種(これはナノメートルサイズである)が第1膜41の複数の微細孔を通過することは許容される一方で、非イオン系のめっき添加剤(これは、ナノメートルサイズよりも大きい)が第1膜41の複数の微細孔を通過することは抑制されている。このような第1膜41としては、例えば、イオン交換膜を用いることができる。第1膜41の具体的な製品名を挙げると、例えば、ケマーズ社製のナフィオン膜(Nafion膜)等が挙げられる。
【0052】
本実施形態のように、めっきモジュール400が第1膜41を備えることで、カソード室12のめっき液Psに含まれる非イオン系のめっき添加剤がアノード室11へ移動することを抑制できる。これにより、カソード室12のめっき添加剤の消耗量の低減を図ることができる。
【0053】
図7に示すように、第1膜41は、延在部位41aと、傾斜部位41bと、を備えている。延在部位41aは、水平方向に延在している。具体的には、延在部位41aは、アノード室11の中心を通過しつつ、水平方向(一例としてY方向)に延在している。また、延在部位41aは、所定の幅(X方向の長さ)を有する面によって構成されている。
【0054】
傾斜部位41bは、延在部位41aを起点として延在部位41aから離れる方向で一方側(X方向側)及び他方側(-X方向側)に延在するとともに、延在部位41aから離れるに従って上方に位置するように傾斜している。この結果、本実施形態に係る第1膜41は、正面視で(Y方向から視認した場合に)、「V字状」の外観形状を有している。なお、本実施形態に係る傾斜部位41bの外縁は円弧状になっている。具体的には、傾斜部位41bの外縁は、この外縁の一部が延在部位41aの両端(Y方向側の端部及び-Y方向側の端部)に接続した、円弧状になっている。この結果、第1膜41は、上面視で略円形になっている。
【0055】
なお、第1膜41の傾斜部位41bの水平方向に対する傾斜角度の一例を挙げると、この傾斜角度として、例えば2度以上の値を用いることができ、具体的には、2度以上45度以下の値を用いることができる。
【0056】
図8に示すように、第1サポート部材43は、第1膜41を支持するための部材である。具体的には、第1サポート部材43は、第1膜41の延在部位41aを支持する第1部位43aと、第1膜41の傾斜部位41bの外縁を支持する第2部位43bとを備えている。第1部位43aは水平方向に延在している。具体的には、第1部位43aは、アノード室11の中心を通過しつつ、水平方向(一例としてY方向)に延在している。また、第2部位43bは、環状の部材によって構成されているとともに、第1部位43aから離れるに従って上方に位置するように傾斜している。
【0057】
また、本実施形態に係る第1部位43aは、第1膜41の上方に位置しており、第1膜41を上方側から支持している。
【0058】
図5に示すように、第1シール部材45は、第1膜41と第1サポート部材43との間に挟持されているシール部材である。このように、第1膜41と第1サポート部材43との間に第1シール部材45が配置されていることで、第1膜41と第1サポート部材43とは、互いに非接触の状態になっている。
【0059】
図11に示すように、第1シール部材45は、延在シール部位45aと、外縁シール部位45bとを備えている。延在シール部位45aは、水平方向に延在しており、第1膜41の延在部位41aと、第1サポート部材43の第1部位43aとの間に挟持される。外縁シール部位45bは、第1膜41の傾斜部位41bの外縁と第1サポート部材43の第2部位43bとの間に挟持される。
【0060】
図5及び図6を参照して、第2膜42は、第1膜41に接触しない態様で、第1膜41とアノード13との間、すなわち第1膜41よりも下方且つアノード13よりも上方の箇所に配置されている。これにより、めっき槽10内(アノード室11内)は、アノード13よりも下方の領域と、第1膜41と第2膜42との間の領域と、第2膜42とアノード13との間の領域と、に区分される。以下、アノード13よりも下方の領域を「第1領域R1」と称し、第1膜41と第2膜42との間の領域を「第2領域R2」と称し、第2膜42とアノード13との間の領域を「第3領域R3」と称する。
【0061】
図5図6図9及び図10を参照して、本実施形態に係る第2膜42は、第2サポート部材44に接合されている。具体的には、本実施形態に係る第2膜42は、一例として、第2サポート部材44の下面に接合されている。
【0062】
第2膜42は、めっき液Psに含まれるイオン種(金属イオンを含むイオン種)が第2膜42を通過することを許容しつつ、気泡Buが第2膜42を通過することを抑制するように構成された膜である。具体的には、第2膜42は、複数の微細孔を有している(この微細孔の図示は省略されている)。この複数の微細孔の平均的な直径はナノメートルサイズである。これにより、金属イオンを含むイオン種が第2膜42の微細孔を通過することは許容される一方で、気泡Bu(これは、ナノメートルサイズよりも大きい)が第2膜42の微細孔を通過することは抑制される。
【0063】
第2膜42は、第1膜41と異なる種類の膜を用いることが望ましい。たとえば、第2膜42は、材質、表面特性(疎水性、親水性など)、表面粗さ、微細孔の寸法や密度などが第1膜41と異なるものとすることができる。一実施形態として、第1膜41として、めっき液Psに含まれ得るめっき添加剤の移動を抑制する性能が優れた膜を使用し、第2膜42として、気泡Buが付着し難い気泡Buの流れ特性の優れた膜を使用することができる。なお、この第2膜42の微細孔の平均的な直径の大きさは、第1膜41の微細孔の平均的な直径よりも大きくてもよい。
【0064】
なお、第2膜42の微細孔の平均的な直径の大きさの一例を挙げると、数十nm~数百nmの範囲から選択された値(この一例を挙げると、例えば10nm~300nmの範囲から選択された値)が挙げられる。また、第2膜42の表面粗さは小さい方が、気泡Buが付着し難くなる点で好ましい。また、第2膜42の表面が親水性である場合の方が、疎水性である場合よりも、気泡Buが付着し難くなる点で好ましい(一般に、気泡Buは疎水性である)。第2膜42の具体的な製品名を挙げると、例えば、株式会社ユアサメンブレンシステム製の「めっき用電解隔膜」等が挙げられる。
【0065】
本実施形態によるめっきモジュール400は、第1膜41および第2膜42の2種類のイオン透過性の膜を使用している。膜の種類によっては、イオン透過性、添加剤の透過性、気泡の付着性などがそれぞれ異なり、1種類の膜のみではめっきモジュール400に望ましい機能を発揮することが難しい場合がある。そのため、本実施形態によるめっきモジュール400では、性質が異なる2種類のイオン透過性の膜を使うことでめっきモジュール400の全体の機能の向上を図ることができる。
【0066】
図3図9及び図10を参照して、第2膜42は、水平方向に対して傾斜するとともに、アノード室11の中央側からアノード室11の外縁側に向かうに従って上方に位置するように傾斜する傾斜部位42bを備えている。
【0067】
具体的には、本実施形態に係る第2膜42は、上記の傾斜部位42bと、水平方向に延在する延在部位42aと、を備えている。傾斜部位42bは、延在部位42aを起点として延在部位42aから離れる方向で一方側(X方向側)及び他方側(-X方向側)に延在するとともに、延在部位42aから離れるに従って上方に位置するように傾斜している。この結果、本実施形態に係る第2膜42は、正面視で(Y方向から視認した場合に)、「V字状」の外観形状を有している。
【0068】
なお、第2膜42の傾斜部位42bの水平方向に対する傾斜角度の一例を挙げると、この傾斜角度として、例えば2度以上の値を用いることができ、具体的には、2度以上45度以下の値を用いることができる。
【0069】
なお、本実施形態に係る傾斜部位42bの外縁は円弧状になっている。具体的には、傾斜部位42bの外縁は、この外縁の一部が延在部位42aの両端(Y方向側の端部及び-Y方向側の端部)に接続した、円弧状になっている。この結果、第2膜42は、上面視で略円形になっている。また、本実施形態に係る第2膜42の傾斜部位42bは、第1膜41の傾斜部位41bと略平行になっている。
【0070】
延在部位42aは、アノード室11の中心を通過しつつ、水平方向(一例としてY方向)に延在している。また、延在部位42aは、所定の幅(X方向の長さ)を有する面によって構成されている。延在部位42aは、第2サポート部材44の後述する第1部位44aの下面に接合されている。
【0071】
なお、第2膜42の傾斜部位42bの下面は、第1膜41の傾斜部位41bの下面よりも平滑であることが好ましい。換言すると、第2膜42の傾斜部位42bの下面の表面粗さ(Ra)は、第1膜41の傾斜部位41bの下面の表面粗さ(Ra)よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、気泡Buを第2膜42の傾斜部位42bの下面に沿って効果的に移動させることができる。これにより、気泡Buに起因して基板Wfのめっき品質が悪化することを効果的に抑制できる。
【0072】
第2サポート部材44は、第2膜42を支持するための部材である。具体的には、第2サポート部材44は、第2膜42の延在部位42aを支持する第1部位44aと、第2膜42の傾斜部位42bの外縁を支持する第2部位44bとを備えている。第1部位44aは、水平方向に延在している。具体的には、第1部位44aは、アノード室11の中心を通過しつつ、水平方向(一例としてY方向)に延在している。第2部位44bは、環状の部材によって構成されているとともに、第1部位44aから離れるに従って上方に位置するように傾斜している。
【0073】
図5及び図12に示すように、第2シール部材46は、第1膜41と第2サポート部材44との間に挟持されるように配置されたシール部材である。第3シール部材47は、第2サポート部材44と、めっき槽10の側壁10bの被固定箇所と、の間に挟持されるように配置されたシール部材である。
【0074】
本実施形態において、第2シール部材46及び第3シール部材47の形状は同様である。具体的には、図12に示すように、第2シール部材46及び第3シール部材47は、上面視で、全体的に円環状の形状を有している。第2シール部材46は、第1膜41の傾斜部位41bの外縁と第2サポート部材44の第2部位44bとの間に挟持される。また、第3シール部材47は、第2サポート部材44の第2部位44bとめっき槽10の側壁10bの被固定箇所との間に挟持される。
【0075】
以上説明したような本実施形態によれば、前述したような第2膜42を備えているので、図13に示すように、アノード室11に気泡Buが発生した場合であっても、この気泡Buを、浮力を利用して第2膜42の傾斜部位42bに沿って移動させて、第2膜42の外縁に移動させることができる。これにより、アノード室11に発生した気泡Buが第1膜41及び第2膜42の下面に全体的に滞留することを抑制できる。この結果、第1膜41及び第2膜42の下面に全体的に滞留した気泡Buに起因して、基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制できる。
【0076】
図14は、図13のA4部分の模式的な拡大図である。図13及び図14を参照して、めっき槽10の側壁10bには、収容溝50が設けられている。収容溝50は、第2膜42の傾斜部位42bの外縁に沿うように、めっき槽10の側壁10bに形成されている。具体的には、本実施形態に係る収容溝50は、第2膜42の傾斜部位42bの外縁に沿うように、側壁10bの周方向の全周に形成されている。
【0077】
この収容溝50は、第2膜42の傾斜部位42bの外縁に移動した気泡Buを一時的に収容するように構成されるとともに、第3領域R3のめっき液Ps及び第2領域R2のめっき液Psが収容溝50において合流するように構成されている。
【0078】
具体的には、図14に示すように、本実施形態に係る収容溝50は、上側溝壁50aが第2膜42よりも上方に位置し、上側溝壁50aに対向する下側溝壁50bが第2膜42よりも下方に位置するように形成されている。これにより、収容溝50は、第2膜42の傾斜部位42bに沿って、この傾斜部位42bの外縁に移動した気泡Buを効果的に収容することができるとともに、第3領域R3及び第2領域R2のめっき液Psを、収容溝50において合流することが容易にできる。
【0079】
なお、上側溝壁50aと下側溝壁50bとの間隔(すなわち、溝幅W1)は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、一例として、2mm以上30mm以下の範囲から選択された値になっている。
【0080】
図13を参照して、収容溝50と後述するアノード室用排出口17とは、連通路51によって連通されている。具体的には、連通路51は、収容溝50の上端とアノード室用排出口17の上流端とを連通している。
【0081】
アノード室用排出口17は、めっき槽10の側壁10bに設けられた連通路51を介して、収容溝50に連通している。アノード室用排出口17は、第3領域R3のめっき液Ps、及び、第2領域R2のめっき液Psを、収容溝50に収容された気泡Buとともに吸い込んで、めっき槽10の外部に排出するように構成されている。
【0082】
具体的には、本実施形態に係るアノード室用排出口17は、めっき槽10の側壁10bに設けられた連通路51を介して、収容溝50の最も上方に位置する部分に連通している。また、第2サポート部材44の第2部位44bの一部には、第2膜42の上面に沿って流動した第2領域R2のめっき液Psが連通路51に流入するための溝44d(又は孔でもよい)が設けられている。第3領域R3のめっき液Psと第2領域R2のめっき液Psは、第2膜42に沿って流動した後に、合流して連通路51に流入し、次いで、アノード室用排出口17から排出される。なお、本実施形態に係るアノード室用排出口17は、合計で2つ設けられている。
【0083】
本実施形態によれば、第2膜42の傾斜部位42bの外縁に移動した気泡Buを収容溝50に一時的に収容させて、この収容された気泡Buを、第3領域R3及び第2領域R2のめっき液Psとともに、アノード室用排出口17からめっき槽10の外部に排出することができる。これにより、第2膜42の下面に気泡Buが滞留することを効果的に抑制できる。
【0084】
また、本実施形態によれば、収容溝50に気泡Buが一時的に収容されることで、この収容溝50において、複数の小さな気泡Buが結合して大きな気泡Buになることができる。これにより、アノード室用排出口17から、気泡Buを排出させ易くすることができる。
【0085】
なお、図13に示すように、連通路51は、その断面積が下流側に向かうほど小さくなるように構成されていてもよい。この構成によれば、気泡Buが収容溝50に一時的に滞留し易くなるので、収容溝50において、複数の小さい気泡Buを効果的に結合させて大きな気泡Buにすることができる。これにより、アノード室用排出口17から、気泡Buを効果的に排出させることができる。
【0086】
ところで、本実施形態のように膜モジュール40が第1膜41と第2膜42とを含む場合、第2領域R2に如何にめっき液を入れるかが課題となる。以下、この点について説明する。
【0087】
図3に示すように、めっきモジュール400は、めっき槽10内のアノード13よりも下方の第1領域R1と、第1膜41と第2膜42との間の第2領域R2と、を連通する2本の管部材31を備える。具体的には、管部材31はそれぞれ、第1領域R1に開口する第1端部31aと、第2領域R2に開口する第2端部31bと、第1端部31aと第2端部31bとを連結する連結部材31cと、を有する。
【0088】
管部材31は、第1端部31aの開口と第2端部31bの開口以外には開口が形成されていない筒状の部材である。第1端部31aは、アノード室11に貯留されためっき液を管部材31内に入れることができるように、めっき槽10の底壁10aの上面から距離をあけて第1領域R1に配置される。第2端部31bは、管部材31内を通るめっき液を第2領域R2に注入することができるように、第1膜41の下面から距離をあけて第2領域R2に配置される。
【0089】
図15は、本実施形態の管部材の設置態様を模式的に示す平面図である。図15では、めっき槽10の側壁10b、管部材31、およびアノード13のみを示し、それら以外の部材の図示を省略している。図3および図15に示すように、管部材31は、アノード13の外周部に沿って相互に180°の間隔をあけて配置されている。管部材31の連結部材31cは、アノード13および第2膜42を貫通して上下方向に直線状に伸び、第1端部31aと第2端部31bとを連結する。
【0090】
管部材31を設けることによって、第1膜41と第2膜42との間の第2領域R2にめっき液を注入しつつ、第2領域R2に気泡が入るのを抑制することができる。すなわち、めっき処理を行うためには第2領域R2にめっき液を注入しなければならない。この点、例えば第2膜42に穴などの流路を形成することによって、第3領域R3から第2領域R2へめっき液を入れることも考えられる。しかしながら、この態様では、アノード13由来で発生した気泡が第3領域R3から第2膜42の流路を介して第2領域R2に入るおそれがある。第2領域R2に入った気泡は、第1膜41の下面に付着して滞留する場合がある。すると第1膜41の下面に滞留した気泡に起因して基板のめっき品質が悪化するおそれがある。
【0091】
これに対して本実施形態では、管部材31は、アノード13由来の気泡が存在し難い第1領域R1と、第2領域R2と、を連通している。したがって、アノード室用供給口16からめっき液を供給するにしたがって、第1領域R1の気泡を含まないめっき液が管部材31を通って第2領域R2に注入される。その結果、気泡を含まないめっき液で第2領域R2を満たすことができるので、アノード13由来の気泡に起因して基板のめっき品質が悪化するのを抑制することができる。
【0092】
なお、上記実施形態では、2本の管部材31を相互に180°の間隔をあけて設ける例を示したが、管部材31の本数および配置位置は任意である。また、上記実施形態では、連結部材31cがアノード13を貫通する管部材31を設ける例を示したが、これに限定されない。
【0093】
図16は、変形例の管部材の配置態様を模式的に示す平面図である。図16では、めっき槽10の側壁10b、管部材31、およびアノード13のみを示し、それら以外の部材の図示を省略している。図16に示すように、管部材31の連結部材31cは、円板形状のアノード13の側壁13bとめっき槽10の側壁10bとの間を通って第1端部31aと第2端部32aとを連結するように構成されていてもよい。本変形例によれば、アノード13を貫通させて管部材31を設置する必要がないので、めっきモジュール400の組み立てを容易に行うことができる。
【0094】
図17は、変形例の管部材の配置態様を模式的に示す平面図である。図17では、めっき槽10の側壁10b、管部材31、およびアノード13のみを示し、それら以外の部材の図示を省略している。図17に示すように、アノード13は円板形状に限定されない。具体的には、アノード13は、めっき槽10の側壁10bに対応する形状の第1側壁13cと、第1側壁13cよりもめっき槽10の側壁10bから距離が離れた第2側壁13dと、を有していてもよい。
【0095】
この変形例では、第1側壁13cは、めっき槽10の円筒形状の側壁10bに対応する円形の側壁であり、第2側壁13dは、直線状の側壁である。管部材31の連結部材31cは、アノード13の第2側壁13dとめっき槽10の側壁10bとの間を通って第1端部31aと第2端部31bとを連結するように構成されてもよい。本変形例によれば、アノード13を貫通させて管部材31を設置する必要がないので、めっきモジュール400の組み立てを容易に行うことができる。さらに、本変形例によれば、めっき槽10の側壁10bのサイズを大きくすることなく、アノード13の面積を大きくしてめっき処理を促進することができる。
【0096】
また、管部材31は、第1領域R1と第2領域R2を連通する管状の部材であれば、図16および図17に示した変形例の他にも変形は可能である。すなわち、管部材31は、第1領域R1に開口する第1端部31aと、第2領域R2に開口する第2端部31bと、第1端部31aと第2端部31bとを連結する連結部材31cと、を有していればよく、連結部材31cは、例えばめっき槽10の内部を通っていてもよいし外部を通っていてもよい。
【0097】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0098】
本願は、一実施形態として、めっき液を収容するように構成されためっき槽と、めっき槽内に配置されたアノードと、前記アノードに対向するように被めっき面を下方に向けた基板を保持するように構成された基板ホルダと、前記めっき槽内をアノード室とカソード室に区画する第1膜、および前記第1膜と前記アノードとの間に配置された第2膜、を有する膜モジュールと、前記めっき槽内の前記アノードよりも下方の第1領域、および前記第1膜と前記第2膜との間の第2領域、を連通する管部材と、を含む、めっき装置を開示する。
【0099】
さらに、本願は、一実施形態として、前記管部材は、前記第1領域に開口する第1端部と、前記第2領域に開口する第2端部と、前記アノードを貫通して前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部材と、を有する、めっき装置を開示する。
【0100】
さらに、本願は、一実施形態として、前記管部材は、前記第1領域に開口する第1端部と、前記第2領域に開口する第2端部と、前記アノードの側壁と前記めっき槽の側壁との間を通って前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部材と、を有する、めっき装置を開示する。
【0101】
さらに、本願は、一実施形態として、前記アノードは、前記めっき槽の側壁に対応する形状の第1側壁と、前記第1側壁よりも前記めっき槽の側壁から距離が離れた第2側壁と、を有し、前記管部材は、前記第1領域に開口する第1端部と、前記第2領域に開口する第2端部と、前記アノードの前記第2側壁と前記めっき槽の側壁との間を通って前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部材と、を有する、めっき装置を開示する。
【0102】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第1端部は、前記めっき槽の底壁から距離をあけて前記第1領域に配置され、前記第2端部は、前記第1膜から距離をあけて前記第2領域に配置される、めっき装置を開示する。
【0103】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第1膜は、めっき液に含まれるイオン種が通過することを許容し、めっき液に含まれるめっき添加剤が通過しないように構成された膜であり、前記第2膜は、めっき液に含まれるイオン種が通過することを許容し、気泡が通過しないように構成された膜である、めっき装置を開示する。
【0104】
さらに、本願は、一実施形態として、前記めっき槽は、前記アノード室にめっき液を供給するためのアノード室用供給口と、前記アノード室からめっき液を前記めっき槽の外部に排出するためのアノード室用排出口と、を有する、めっき装置を開示する。
【符号の説明】
【0105】
10 めっき槽
10a 底壁
10b 側壁
11 アノード室
12 カソード室
13 アノード
13b 側壁
16 アノード室用供給口
17 アノード室用排出口
20 基板ホルダ
31 管部材
31a 第1端部
31b 第2端部
31c 連結部材
40 膜モジュール
41 第1膜
42 第2膜
400 めっきモジュール
1000 めっき装置
Wf 基板
R1 第1領域
R2 第2領域
Ps めっき液
【要約】
アノード由来の気泡に起因して基板のめっき品質が悪化することを抑制できる技術を提供する。
めっきモジュール400は、めっき液を収容するように構成されためっき槽10と、めっき槽10内に配置されたアノード13と、アノード13と対向するように被めっき面を下方に向けた基板Wfを保持するように構成された基板ホルダ20と、めっき槽10内をアノード室11とカソード室12に区画する第1膜41、および第1膜41とアノード13との間に配置された第2膜42、を有する膜モジュール40と、めっき槽10内のアノード13よりも下方の第1領域R1、および第1膜41と第2膜42との間の第2領域R2を連通する管部材31と、を含む。
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