(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】磁気構造およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 43/10 20060101AFI20221019BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20221019BHJP
H01L 43/12 20060101ALI20221019BHJP
H01L 21/8239 20060101ALI20221019BHJP
H01L 27/105 20060101ALI20221019BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20221019BHJP
G11B 5/31 20060101ALI20221019BHJP
H01F 10/16 20060101ALI20221019BHJP
H01F 10/32 20060101ALI20221019BHJP
H01F 10/30 20060101ALI20221019BHJP
H01F 10/14 20060101ALI20221019BHJP
H01F 10/28 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H01L43/10
H01L43/08 Z
H01L43/12
H01L27/105 447
G11B5/39
G11B5/31 A
H01F10/16
H01F10/32
H01F10/30
H01F10/14
H01F10/28
(21)【出願番号】P 2017127602
(22)【出願日】2017-06-29
【審査請求日】2020-06-11
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500262038
【氏名又は名称】台湾積體電路製造股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Taiwan Semiconductor Manufacturing Company,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.8, Li-Hsin Rd.6, Hsinchu Science Park, Hsinchu, TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュック トマス
(72)【発明者】
【氏名】ゲノル ジャン
(72)【発明者】
【氏名】童 茹瑛
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/151098(WO,A1)
【文献】特開2013-115401(JP,A)
【文献】特開2005-116025(JP,A)
【文献】特開2011-119755(JP,A)
【文献】特開2015-061056(JP,A)
【文献】特開2008-283207(JP,A)
【文献】特開2008-124486(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/10
H01L 43/08
H01L 43/12
H01L 21/8239
G11B 5/39
G11B 5/31
H01F 10/16
H01F 10/32
H01F 10/30
H01F 10/14
H01F 10/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1の酸化物層と、
垂直磁気異方性を有していて前記基板と前記第1の酸化物層との間に形成されている強磁性層と、
を備え、
前記強磁性層は、
(a)第1の強磁性副層と、
(b)SrおよびBaのうちの少なくとも1つを含む第1の非磁性層と、
(c)第2の強磁性副層と
、
(d)SrおよびBaのうちの少なくとも1つを含む第2の非磁性層と、
(e)第3の強磁性副層と、
が順に積層された構造を有し、
前記第1の酸化物層と接して前記強磁性層に垂直磁気異方性をもたらす、
磁気構造。
【請求項2】
前記基板は、前記第1の強磁性副層の底面と接する第2の酸化物層であり、
前記第1の酸化物層は、異方性磁場改善層であり、
前記第2の酸化物層は、トンネルバリア層であり、
前記強磁性層は、ボトムスピンバルブ構造におけるフリー層であり、またはトップスピンバルブ構造におけるリファレンス層である
請求項
1記載の磁気構造。
【請求項3】
前記第1の強磁性副層および前記第2の強磁性副層は、それぞれ、Fe,Co,Ni,CoFe,CoFeB,CoB,FeBおよびCoFeNiB、並びに、これらの組み合わせからなる群から選択される
請求項1記載の磁気構造。
【請求項4】
前記第1の酸化物層は、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrのうちの1つ以上からなる
請求項1に記載の磁気構造。
【請求項5】
前記基板は、前記第1の強磁性副層の底面と接する第2の酸化物層であり、
前記第1の酸化物層および前記第2の酸化物層は、それぞれ、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrのうちの1つ以上からなる
請求項
1に記載の磁気構造。
【請求項6】
前記第1の強磁性副層および前記第2の強磁性副層は、それぞれ、4オングストローム以上14オングストローム以下の厚さを有する
請求項1記載の磁気構造。
【請求項7】
前記第1の非磁性層は、3オングストローム以上5オングストローム以下の厚さを有する
請求項1記載の磁気構造。
【請求項8】
前記基板は、前記第1の強磁性副層の底面と接する第2の酸化物層であり、
前記第1の酸化物層は、前記第3の強磁性副層の垂直磁気異方性を向上させる
請求項
1記載の磁気構造。
【請求項9】
前記強磁性層は、第4の強磁性副層と第3の非磁性層とをさらに有し、
または、
前記強磁性層は、第4の強磁性副層および第5の強磁性副層と、第3の非磁性層および第4の非磁性層とをさらに有する
請求項
1記載の磁気構造。
【請求項10】
基板の上に形成されている磁気構造であって、
非磁性金属層と、
第1の酸化物層と、
垂直磁気異方性を有していて前記非磁性金属層と前記第1の酸化物層との間に形成されている強磁性層と、
を備え、
前記強磁性層は、
(a)第1の強磁性副層と、
(b)SrおよびBaのうちの少なくとも1つを含む第1の非磁性層と、
(c)第2の強磁性副層と
、
(d)SrおよびBaのうちの少なくとも1つを含む第2の非磁性層と、
(e)第3の強磁性副層と、
が順に積層された構造を有し、
前記第1の酸化物層と接して前記強磁性層に垂直磁気異方性をもたらす、
磁気構造。
【請求項11】
前記第1の酸化物層は、前記第1の強磁性副層の底面と接し、
前記非磁性金属層は、前記第
3の強磁性副層の上面と接するキャップ層である、
請求項
10記載の磁気構造。
【請求項12】
基板と第1の酸化物層との間に設けられた強磁性層を備え、
前記強磁性層は、SrおよびBaのうちの少なくとも1つを含む非磁性元素がドープまたは埋設されて
おり、
前記強磁性層は、
(a)第1の強磁性副層と、
(b)SrおよびBaのうちの少なくとも1つを含む第1の非磁性層と、
(c)第2の強磁性副層と、
(d)SrおよびBaのうちの少なくとも1つを含む第2の非磁性層と、
(e)第3の強磁性副層と、
が順に積層された構造を有し、
前記第1の酸化物層と接して前記強磁性層に垂直磁気異方性をもたらす、
垂直磁気異方性を伴う磁気構造。
【請求項13】
前記強磁性層は、Fe,Co,NiおよびそれらのB合金のうちの1以上を含んでなる
請求項
12記載の磁気構造。
【請求項14】
前記強磁性層に対する前記非磁性元素の含有率は、0.1以上30原子%以下である
請求項
12記載の磁気構造。
【請求項15】
前記第1の酸化物層は、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrの1つ以上からなる
請求項
10記載の磁気構造。
【請求項16】
(a)トンネルバリア層の上に第1の強磁性層を形成することと、
(b)前記第1の強磁性層の上に第1の再スパッタリングレートで、SrおよびBaのうちの1つである非磁性層を形成することと、
(c)前記非磁性層の上に、第2の強磁性層を形成することと、
(d)前記第2の強磁性層の上面に、キャップ層を形成することと
を含み、
前記第2の強磁性層は、前記第2の強磁性層の上面が平滑になるように前記第1の再スパッタリングレートよりも遅い第2の再スパッタリングレートで形成する
垂直磁気異方性を伴う磁気構造の形成方法。
【請求項17】
(a)前記キャップ層の上面をフォトレジスト層で被覆すると共に、前記フォトレジスト層のパターニングを行い、前記フォトレジスト層の側壁を形成することと、
(b)前記磁気構造のうち前記フォトレジスト層によって保護されていない部分を除去するようにイオンビームエッチングまたは反応性イオンエッチングを行い、前記磁気構造の側壁を形成することと、
(c)前記磁気構造の側壁と隣接し、前記キャップ層と同じ高さを有する誘電体層を形成することと、
(d)パターニングされた前記フォトレジスト層を除去すると共に前記誘電体層の上面を研磨するように化学機械研磨を行い、前記キャップ層の上面と前記誘電体層の上面とが共通の平面に含まれるようにすることと
をさらに含む
請求項
16記載の磁気構造の形成方法。
【請求項18】
前記誘電体層は、アルミナ,二酸化ケイ素または窒化ケイ素である
請求項
17記載の磁気構造の形成方法。
【請求項19】
前記キャップ層は、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrのうちの1つ以上からなる酸化物層である
請求項
16記載の磁気構造の形成方法。
【請求項20】
(a)基板の上に第1の強磁性層を形成することと、
(b)前記第1の強磁性層の上に第1の再スパッタリングレートで、SrおよびBaのうちの1つである非磁性層を形成することと、
(c)前記非磁性層の上に、第2の強磁性層を形成することと、
(d)前記第2の強磁性層の上面に、トンネルバリア層を形成することと
(e)磁気構造の最上層としてキャップ層を形成することと
を含み、
前記第2の強磁性層は、前記第2の強磁性層の上面が平滑になるように前記第1の再スパッタリングレートよりも遅い第2の再スパッタリングレートで形成する
垂直磁気異方性を伴う磁気構造の形成方法。
【請求項21】
(a)前記キャップ層の上面をフォトレジスト層で被覆すると共に、前記フォトレジスト層のパターニングを行い、前記フォトレジスト層の側壁を形成することと、
(b)前記磁気構造のうち前記フォトレジスト層によって保護されていない部分を除去するようにイオンビームエッチングまたは反応性イオンエッチングを行い、前記磁気構造の側壁を形成することと、
(c)前記磁気構造の側壁と隣接し、前記キャップ層と同じ高さを有する誘電体層を形成することと、
(d)パターニングされた前記フォトレジスト層を除去すると共に前記誘電体層の上面を研磨するように化学機械研磨を行い、前記キャップ層の上面と前記誘電体層の上面とが共通の平面に含まれるようにすることと
をさらに含む
請求項
20記載の磁気構造の形成方法。
【請求項22】
前記誘電体層は、アルミナまたは二酸化ケイ素である
請求項
21記載の磁気構造の形成方法。
【請求項23】
前記キャップ層は、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrのうちの1つ以上からなる酸化物層である
請求項
20記載の磁気構造の形成方法。
【請求項24】
前記基板はシード層である
請求項
20記載の磁気構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物層、強磁性槽、および非磁性層の組み合わせ(積層体)を有する複合磁気構造、およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような積層体は、磁性薄膜に使用されて垂直磁化を改善し、その結果、垂直磁気異方性を有するデバイスのモーメント、体積、または結晶異方性に関係なく熱的安定性が改善される。膜面に対し垂直に磁化された磁気薄膜は、メモリおよびデータストレージ技術のための多くの用途を有する。例えば、磁気ハードディスクドライブ、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)または磁気ドメインウォールデバイスなどである。垂直磁化は、静磁場形状異方性、薄膜形状における好ましい面内磁化を克服するために、垂直磁気異方性(PMA)に依存する。いくつかの物理的現象は、結晶磁気異方性、表面(または界面)異方性、および磁気弾性異方性などの垂直磁気異方性(PMA)を誘導することができる。界面異方性は、例えばMgOなどの酸化物層OLと、Fe,Co,CoFe,もしくはCoFeBなどを含む強磁性層FMLとの界面において発生し、特に技術的に重要である。実際、この界面構造はMRAMデバイスにおいて広く使用されている。MRAMデバイスにおいて、メモリ素子は磁気トンネル接合に基づいている。メモリ素子は、シリコンウェハの面に対し垂直に磁化されると共に1つの酸化トンネルバリアにより分離された2つの磁気電極を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、上記の酸化物槽および強磁性層に加え、磁気トンネル接合(MTJ)構造は非磁性金属層MLやシード層を積層構造に含んでいてもよい。磁気トンネル接合の2つの磁気電極のうちの1つにおいて垂直磁気異方性(PMA)を生じる最も単純な積層体は、単一の強磁性層を1つの金属層の上に形成し、その強磁性層を覆うように1つの酸化物層を付着させたものである。これにより得られる積層体は、下部から上部に向かってML/FML/OL、あるいは反対に上部から下部に向かってOL/FML/MLの順に積層されたものである。
【0005】
半導体業界で使用されている標準的なプロセスでは、アニーリングプロセスで数時間もの長い間、400℃の高温で維持する必要がある。したがって、磁気トンネル接合素子は、半導体プロセスの間、磁気特性および磁化遷移特性の低下を招来することなく、その高温に耐えなければならない。
【0006】
ボルツマン因子は、熱揺らぎによって、MTJ内のメモリビットが論理「0」および「1」に対応する2つの安定状態間を反転するという式(1)で表される確率(p)である。式(1)においてΔは熱安定性因子である。熱安定性は、2つの状態間におけるエネルギー障壁に関連する。熱安定性因子Δは式(2)によって表される。式(2)において、kBはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
【0007】
ボルツマン因子p(E)=e-Δ ……(1)
熱安定性因子Δ=E/(kB・T) ……(2)
【0008】
PMAの場合、エネルギー障壁Eは、ストレージ(例えばフリー層)の磁気異方性に依存する。均一な磁化反転メカニズムの場合、エネルギー障壁Eは、KeffとtFMLとの積に比例する。ここで、tFMLは、強磁性層の厚さである。Keffは、実効異方性定数である(単位体積あたりのエネルギーの次元を有する)。下記の式(3)に表したように、Keffは界面異方性と形状異方性との合計としてモデル化することができる。
【0009】
(実効異方性定数Keff) =(界面異方性)+(形状異方性) ……(3)
【0010】
界面異方性は、材料特性固有のものであり、定数Ki(単位面積あたりのエネルギー)を強磁性層の膜厚で割ることによって表される。形状異方性は、熱安定性を低下させる。形状異方性は下記の式(4)によりモデル化される。
【0011】
形状異方性=-2π*Ms
2 ……(4)
【0012】
式(4)において、Msは、飽和磁化である。界面異方性は、垂直磁気異方性PMAを発生させ、形状異方性は垂直磁気異方性を低下させる。要するに、現象は下記の式(5)のように表される。
【0013】
Keff=Ki/tFML-2π*Ms
2 ……(5)
【0014】
式(5)によれば、熱安定性は強磁性層の厚さtFMLが薄くなるほど向上する。しかしながら、このモデルは厚さtFMLが臨界厚さを下回るときには適用されない。実験により、臨界厚さを下回ったときには、強磁性層は、欠陥や隣り合う非磁性元素との相互拡散に起因して、自らの磁化を失うことがわかっている。したがって、熱安定性は、シンプルなML/FML/OL積層体における強磁性層の臨界厚さで最大値に達する。
【0015】
単純なPMAスタックは1つのOL/FML界面を含んでいるので、弱い垂直磁気異方性PMAをもたらしている。界面異方性(Ki)は、約15オングストロームよりも厚い強磁性層の垂直磁気異方性PMAを維持するのに十分な強度を有しない。さらに、強磁性層と例えばタンタルであるベース金属層との間には重要な相互拡散が存在する。その相互拡散は、強磁性層と金属層との間の界面を磁気的に「死んだ」層にする可能性がある。結果として、強磁性層の磁気特性は、強磁性層の厚さtFMLがオングストローム以下の場合に劣化することがわかった。 この単純なスタック界面構造の場合、強磁性層の臨界厚さでの熱安定性はわずか0.2エルグ/cm2 であり、実用的には小さすぎる。
【0016】
改良された界面構造は、OL/FML/OLにおける2つのOL/FML界面によってもたらされる。これにより、より高い垂直磁気異方性PMAがもたらされ、より厚い強磁性層の使用が可能になる。しかしながら、強磁性層を酸化させることなく酸化を用いて第2の酸化物層を形成することは困難である。これは、厚い磁気的に死んだ層、磁化の損失、および磁気トンネル接合の抵抗面積積の増加をもたらす。
【0017】
したがって、基準層およびフリー層に高PMAを提供するために、2つのOL(酸化物層)/FML(強磁性層)界面で改善された磁気トンネル接合素子が必要とされる。さらに、上部(第2)OLを形成するための酸化は、強磁性層FMLの望ましくない酸化および垂直磁気異方性PMAの損失を防ぐために、より良好に制御されなければならない。
【0018】
本開示の第1の目的は、積層体における垂直磁気異方性の特性の強化により強固の磁気トンネル接合を有する磁気構造を提供することにある。
【0019】
本開示の第2の目的は、上記第1の目的の磁気トンネル接合を有する磁気構造の形成方法をもたらすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示の一態様によれば、磁気トンネル接合は、OL1/FML/OL2スキーム、すなわち、2つの酸化物層の間に1つの強磁性層FMLが設けられた構造を有している。強磁性層FMLは、例えばFML1/NML/FML2のように2つの強磁性副層FM1,FM2を含んでいる。NMLは非磁性層である。強磁性層FMLはフリー層やリファレンス層として機能するものである。
【0021】
本開示が従来技術に比べて磁気トンネル接合および熱安定性を改善する3つの方法がある。
【0022】
第1に、FML2の堆積中に比較的高い再スパッタリング速度を有するNMLの再スパッタリングにより、より平滑な強磁性層を得る。同様の概念が、高い再スパッタリング速度を有する第1のシード層上に低い再スパッタリング速度を有する第2のシード層を堆積することに関連する事項が米国特許出願第14/939,232号に開示されている。
【0023】
第2に、NMLの存在は、FML2の結晶化を阻害する。その結果、FML2は、より小さな粒子とより薄い粒界とを有する。これにより、上部酸化物層OL2からその下のFML2への酸素の拡散が低減される。
【0024】
第3に、非磁性層NMLは、強磁性副層FML1,FML2と比較して、より高い反応性を有する材料からなる。したがって、非磁性層NMLは、酸化物層OL2から強磁性副層FML2へ拡散した酸素を引き付ける。
【0025】
別の実施態様として、強磁性スタックが、OL/FML1/NML/FML2/NML/FML3/OLのような、強磁性副層と非磁性層とが交互配置されたスキーム(下から上またはその逆)である場合が挙げられる(ここでは3つの強磁性副層および2つの非磁性層からなる強磁性スタックを例示する。)
【0026】
第3の実施形態は、多数の交互の「n+1」個の強磁性副層と「n」個の非磁性層とからなる強磁性スタックである。下から上へ、またはその逆に、このスタックはOL / FML1 / NML1 / ... / FMLn / NMLn / FMLn + 1 / OLの形式で表される。第1、第2および第3の実施形態の変形例では、またはスタックの底部は、タンタル、タングステン、モリブデン、ルテニウム、またはニッケル-クロム合金のようなMLで置き換えてもよい。ML/FML層は、界面垂直磁気異方性PMAを有する。
【0027】
本開示の第1の磁気構造は、基板と、第1の酸化物層と、基板と第1の酸化物層との間に設けられた強磁性層とを備え、垂直磁気異方性を伴うものである。強磁性層は、 (a)第1の強磁性副層(FML1)と、(b)Mg,Al,Si,C,Ca,Sr,BaおよびBのうちの少なくとも1つを含む第1の非磁性層(NML1)と、(c)第2の強磁性副層(FML2)とが順に積層された構造を有する。
【0028】
本開示の第1の磁気構造では、基板は、第1の強磁性副層(FML1)の底面と接する第2の酸化物層(OL2)であり、第1の酸化物層は、第2の強磁性副層(FML2)の上面と接するようにしてもよい。
【0029】
本開示の第1の磁気構造では、第1の酸化物層は異方性磁場Hk改善層であり、第2の酸化物層はトンネルバリア層であり、強磁性層は、ボトムスピンバルブ構造におけるフリー層であり、またはトップスピンバルブ構造におけるリファレンス層であってもよい。
【0030】
本開示の第1の磁気構造では、第1の強磁性副層および第2の強磁性副層は、それぞれ、Fe,CoおよびNiのうちの1の元素、もしくはCoFe,CoFeB,CoB,FeBおよびCoFeNiBのうちの1種の合金、または、これらの元素および合金のうちの1以上を含むものであってもよい。
【0031】
本開示の第1の磁気構造では、第1の酸化物層は、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrのうちの1つ以上からなるものであってもよい。
【0032】
本開示の第1の磁気構造では、第1の酸化物層および第2の酸化物層は、それぞれ、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrを含むものであってもよい。
【0033】
本開示の第1の磁気構造では、第1の強磁性副層および第2の強磁性副層は、それぞれ、4オングストローム以上14オングストローム以下の厚さを有するものであってもよい。
【0034】
本開示の第1の磁気構造では、第1の非磁性層は、3オングストローム以上5オングストローム以下の厚さを有するものであってもよい。
【0035】
本開示の第1の磁気構造では、強磁性層は、第2の非磁性層(NML2)および第3の強磁性副層(FML3)をさらに有するものであってもよい。
【0036】
本開示の第1の磁気構造では、基板は、第1の強磁性副層の底面と接する第2の酸化物層であり、第1の酸化物層は、第3の強磁性副層の垂直磁気異方性を向上させるものであってもよい。
【0037】
本開示の第1の磁気構造では、強磁性層は、第4の強磁性副層と第3の非磁性層とをさらに有し、または、強磁性層は、第4の強磁性副層および第5の強磁性副層と、第3の非磁性層および第4の非磁性層とをさらに有するものであってもよい。
【0038】
本開示の第2の磁気構造は、非磁性金属層と、第1の酸化物層(OL1)と、非磁性金属層と第1の酸化物層との間に設けられた強磁性層とを備え、垂直磁気異方性を伴うものである。強磁性層は、(a)第1の強磁性副層(FML1)と、(b)Mg,Al,Si,C,Ca,Sr,BaおよびBのうちの少なくとも1つを含む第1の非磁性層(NML1)と、(c)第2の強磁性副層(FML2)とが順に積層された構造を有する。
【0039】
本開示の第2の磁気構造では、第1の強磁性副層の底面と接する酸化物層と、第2の強磁性副層の上面と接する非磁性金属キャップ層とをさらに備えるようにしてもよい。
【0040】
本開示の第3の磁気構造は、基板と第1の酸化物層(OL1)との間に設けられた強磁性層(FML)を備え、強磁性層が、Mg,Al,Si,C,Ca,Sr,BaおよびBのうちの少なくとも1つを含む非磁性元素がドープまたは埋設されているものである。
【0041】
本開示の第3の磁気構造では、基板は、強磁性層の底面と接する第2の酸化物層(OL2)であり、第2の酸化物層(OL2)は、強磁性層の上面と接するようにしてもよい。
【0042】
本開示の第3の磁気構造では、強磁性層は、Fe,Co,NiおよびBのうちの1以上を含んでなるものであってもよい。
【0043】
本開示の第3の磁気構造では、強磁性層に対する非磁性元素の含有率は、1以上30原子%以下であってもよい。
【0044】
本開示の第3の磁気構造では、第1の酸化物層(OL1)および第2の酸化物層(OL2)は、それぞれ、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrからなる群から選択される材料からなるものであってもよい。
【0045】
本開示の第1の磁気構造の形成方法は、垂直磁気異方性を伴う磁気構造の形成方法であって、(a)トンネルバリア層の上に第1の強磁性層(FML1)を形成することと、(b)第1の強磁性層の上に第1の再スパッタリングレートで非磁性層(NML)を形成することと、(c)非磁性層の上に、第2の強磁性層(FML2)を形成することと、(d)第2の強磁性層の上に、キャップ層を形成することとを含む。第2の強磁性層は、第2の強磁性層の上面が平滑になるように第1の再スパッタリングレートよりも遅い第2の再スパッタリングレートで形成する。
【0046】
本開示の第1の磁気構造の形成方法では、(a)キャップ層の上面をフォトレジスト層で被覆すると共に、フォトレジスト層のパターニングを行い、フォトレジスト層の側壁を形成することと、(b)磁気構造のうちフォトレジスト層によって保護されていない部分を除去するようにイオンビームエッチングまたは反応性イオンエッチングを行い、磁気構造の側壁を形成することと、(c)磁気構造の側壁と隣接し、キャップ層と同じ高さを有する誘電体層を形成することと、(d)パターニングされた前記フォトレジスト層を除去すると共に前記誘電体層の上面を研磨するように化学機械研磨を行い、キャップ層の上面と誘電体層の上面とが共通の平面に含まれるようにすることとをさらに含むものであってもよい。
【0047】
本開示の第1の磁気構造の形成方法では、誘電体層は、アルミナ,二酸化ケイ素または窒化ケイ素であってもよい
【0048】
本開示の第1の磁気構造の形成方法では、キャップ層が、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrのうちの1つ以上からなる酸化物層であってもよい。
【0049】
本開示の第1の磁気構造の形成方法では、非磁性層は、Mg,Al,Si,C,Ca,Sr,BaおよびBのうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0050】
本開示の第2の磁気構造の形成方法は、垂直磁気異方性を伴う磁気構造の形成方法であって、(a)基板の上に第1の強磁性層(FML1)を形成することと、(b)第1の強磁性層の上に第1の再スパッタリングレートで非磁性層(NML)を形成することと、(c)非磁性層の上に、第2の強磁性層(FML2)を形成することと、(d)第2の強磁性層の上面に、トンネルバリア層を形成することと、(e)磁気構造の最上層としてキャップ層を形成することとを含むものである。ここで、第2の強磁性層は、第2の強磁性層の上面が平滑になるように第1の再スパッタリングレートよりも遅い第2の再スパッタリングレートで形成する。
【0051】
本開示の第2の磁気構造の形成方法では、(a)キャップ層の上面をフォトレジスト層で被覆すると共に、フォトレジスト層のパターニングを行い、フォトレジスト層の側壁を形成することと、(b)磁気構造のうちフォトレジスト層によって保護されていない部分を除去するようにイオンビームエッチングまたは反応性イオンエッチングを行い、磁気構造の側壁を形成することと、(c)磁気構造の側壁と隣接し、キャップ層と同じ高さを有する誘電体層を形成することと、(d)パターニングされたフォトレジスト層を除去すると共に誘電体層の上面を研磨するように化学機械研磨を行い、前記キャップ層の上面と誘電体層の上面とが共通の平面に含まれるようにすることとをさらに含むようにしてもよい。
【0052】
本開示の第2の磁気構造の形成方法では、誘電体層がアルミナまたは二酸化ケイ素であってもよい。
【0053】
本開示の第2の磁気構造の形成方法では、キャップ層は、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,CuおよびCrのうちの1つ以上からなる酸化物層であってもよい。
【0054】
本開示の第2の磁気構造の形成方法では、非磁性層は、Mg,Al,Si,C,Ca,Sr,BaおよびBのうちの少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0055】
本開示の第2の磁気構造の形成方法では、基板はシード層であってもよい。
【0056】
本開示の磁気構造およびその形成方法によれば、強磁性層FMLの両面と接するように2つの酸化物層OLを設け、強磁性層FMLと酸化物層OLとの界面を2つ含むようにしたので、強磁性層FMLにおいてより高い垂直磁気異方性PMAをもたらすことができる。また、本開示の新規なスタック構造は、上部酸化物層の酸化中の改善された制御を可能にする。これは、1つ以上の非磁性層と交互に配置された多数の強磁性副層を有する強磁性スタックである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】MRAM、スピントランスファ発振器(STO)、または読出し/書込みヘッドで利用されるボトムスピンバルブ構成を有する従来技術の磁気トンネル接合の概念図である。
【
図2】リファレンス層がトンネルバリアの上にあり、
図1と機能的に同等である従来のトップスピンバルブ構成のMTJを表している。
【
図3A】本開示の第1の実施態様としての下部スピンバルブ構造を有するMTJのトンネルバリアと酸化物キャッピング層との間に形成されたフリー層の断面図である。
【
図3B】本開示の第2の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJのシード層とトンネルバリアとの間に形成されたリファレンス層の断面図である。
【
図4A】本開示の第3の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図4B】本開示の第4の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図5A】本開示の第5の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図5B】本開示の第6の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図6】本開示の第7の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図7】本開示の第8の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図8】本開示の第9の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図9】本開示の第10の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図10】本開示の第11の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図11】本開示の第12の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図12】本開示の第13の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図13】本開示の第14の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図14】本開示の第15の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図15】本開示の第16の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図16】本開示の第17の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図17】本開示の第18の実施態様としてのスピンバルブ構造を有するMTJの要部断面図である。
【
図18】本開示のMTJの形成方法の一工程を表す要部断面図である。
【
図21】
図1に示した従来のOL/FML/OLスタック構造のフリー層の厚さtについてのヒステリシス曲線である。
【
図22】本開示のOL/FML1(t1)/NML/FML2(t2)/OLスタックにおけるフリー層の厚さtについてのヒステリシス曲線である。但し、t1=t2、t=t1+t2となる。
【
図23】本開示のOL/FML1(4オングストローム)/NML1/FML2(t1)/NML2/FML3(t2)/OLスタックにおけるフリー層の厚さtについてのヒステリシス曲線である。但し、t1/t2=3/4であり、t=(4+t1+t2)である。
【
図24】400℃で5時間アニールされた非磁性層(NML)を有さないフリー層についてのヒステリシス曲線である。
【
図25】400℃で5時間アニールされた2つの非磁性層(NML)を有するフリー層についてのヒステリシス曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
<実施の形態および変形例>
本開示はフリー層、リファレンス層、または双極子層のうちの少なくとも1つが垂直磁気異方性を有するMTJに関する。垂直磁気異方性は、埋め込み型のMRAMやSTT-RAMのような磁気デバイス、マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)およびスピントルク発振器(STO)などのスピントロニクスデバイス、ならびに再生ヘッドセンサにみられる様々なスピンバルブデザインにおける400℃での製造過程において維持される。
【0059】
関連する米国特許第8592927号明細書に開示されているように、MTJは、ピン層、トンネルバリア層、および磁気要素からなる。磁気要素は、2つの強磁性副層(FM1,FM2)の間に形成された飽和磁化低減(モーメント希釈)層を有する複合フリー層を含む。FM1は、トンネルバリア層との間に第1の界面を形成する表面を有する。FM2は、トンネルバリア層から離れた、垂直Hkエンハンス層との間に第2の界面を形成する表面を有する。垂直Hkエンハンス層は、FM2内部の垂直異方性磁場を増強するために用いられている。
【0060】
関連する米国特許出願第14/939232号では、改良されたシード層スタックが開示されている。CoFeBのような非晶質特性を有する低い再スパッタリングレート層は、例えばMgのような高い再スパッタリングレート層の上に堆積される。改良されたシード層スタックでは、上記の構成により「平滑化効果」がもたらされており、Mg/CoFeB/NiCrスタック構造における最上層のNiCrシード層の上面におけるピーク・トゥ・ピークの粗さを低減することができる。このように、改良されたNiCrシード層は、100nmの範囲にわたって約0.5nmのピーク・トゥ・ピークの厚さ変動を有する平滑な上面を有する。一方、従来技術のシード層の100nmの範囲にわたるピーク・トゥ・ピークの厚さ変動は約2nmである。これらのピーク・トゥ・ピークの厚さ変動は、透過型電子顕微鏡(TEM)測定によって決定される。
【0061】
我々は、上述の関連出願において開示されたMTJ構造がさらに後述の具体例のようにさらなる改良がなされることを見出した。本開示のMTJは、例えば、フリー層やリファレンス層の上方に位置する酸化物層の酸化の制御の改良を伴うスタック構造からなる。フリー層やリファレンス層は、高い再スパッタリングレート層および低い磁気希釈効果を有する(n-1)個のNMLと、多数の薄い強磁性層(Fe,Co,CoFeもしくはCoFeB、またはそれらの組合せからなる)とが交互に堆積されたものである。一実施形態によれば、MTJは、FMLが2つの酸化物層間に形成された構造、すなわち「OL1/FML/OL2」スキームを有する。ここで、FMLは、「FML1/NML/FML2」スキームを有する。NMLは3つの役割を担っており、それにより
図1および
図2に示した従来技術の磁気トンネル接合と比較して3つの利点が得られる。
【0062】
第1に、「FML1/NML/FML2」スキームにおけるFML2の堆積中に比較的高い再スパッタリングレートを有するNMLの再スパッタリングは、より平滑なFML2強磁性層をもたらす。他の実施形態では、FMLn層がNMLn-1層上に堆積される場合、同様の平滑化効果がFMLn層の上面に対して実現される。
【0063】
第2に、NML層の存在は、FML2層の結晶化を阻害する。より一般的には、NMLn-1層は、その上のFMLn層における結晶化を阻害する。その結果、FML2層(およびFMLn層)は、より小さな粒子およびより薄い粒界を有する。これにより、上部酸化物層OL2からその下に位置するFML2層への酸素の拡散が低減される。
【0064】
第3に、NMLは、FMLサブ層より高い反応性材料からなる。したがって、OL2からFML2へ拡散した酸素がNMLへ引き込まれる。その結果、n個のFMLサブ層およびn-1個のNML層を有するスタックにおけるFML強磁性サブ層、特に上部のFMLnサブ層は、従来技術に比べて酸化されにくくなり、 より良好な磁気抵抗変化率およびより大きなFML熱安定性をもたらす。
【0065】
図3Aは、本開示の一実施形態としての下部スピンバルブ構成の一部を表した断面図である。
図3Aの構成では、フリー層20-1が、酸化物トンネルバリア層(以下、トンネルバリア19という。)上に成膜されている。トンネルバリアは、Si,Ba,Ca,La,Mn,V,Al,Ti,Zn,Hf,Mg,Ta,B,Cu,Crからなる群から選択される1以上の元素を含む1以上の酸化物層または酸窒化物層からなる金属酸化物または酸窒化物である。
【0066】
フリー層20-1は、「強磁性層(FML1)20a/非磁性層(NML1)20b/強磁性層(FML2)20c」構造を有している。ここで強磁性層(FML1)は、Fe,Co,Ni,CoFe,CoB,FeB,CoFeBもしくはCoFeNiB、またはこれらの組み合わせからなるものである。強磁性層(FML1)20aの上に堆積される非磁性層(NML1)20bは、例えば0.5~10Å(オングストローム)の厚さを有する。非磁性層(NML1)20bは比較的高い再スパッタリングレートを有する高反応性金属であり、典型的にはMg,Al,B,Ca,Ba,Sr,SiまたはCのような金属である。非磁性層(NML1)20bの上に堆積される強磁性層(FML2)20cは、Fe,Co,Ni,CoFe,CoB,FeB,CoFeB,CoFeNiBまたはこれらの組み合わせのうちの1つから選択される材料からなる。非磁性層(NML1)20bと比較して再スパッタレートが低い強磁性層(FML2)20cの堆積は、非磁性層(NML1)20bの一部を再スパッタリングすることで、非磁性層(NML1)20bおよび強磁性層(FML2)20cの両方の表面がより滑らかにする効果をもたらす。本開示に関連する米国特許出願14/939,232に記載されているように、材料A対材料Bの高い再スパッタリングレートは、材料Bのより高い結合エネルギーおよびより高い原子番号の一方または両方に起因するものである。
【0067】
強磁性層(FML2)20cの蒸着前の非磁性層(NML1)20bの存在は、強磁性層(FML2)20cの結晶化を阻害する。その結果、強磁性層(FML2)20cは、より小さな粒子とより薄い粒界とを有することとなる。このことは、続いて堆積されるキャップ(酸化物)層40からその下にある強磁性層(FML2)20cへの酸素の拡散を低減する。さらに、非磁性層(NML1)20bは、強磁性層(FML2)20cよりも反応性が高い材料からなる。その結果、非磁性層(NML1)20bは、上層であるキャップ層40から強磁性層(FML2)20cに拡散した酸素を引き付け、強磁性層(FML2)20cの酸化を抑制する。
【0068】
図3Bを参照すると、「FML1/NML1/FML2」スキームを有するリファレンス層10-1が、シード層2とトンネルバリア19との間に形成された、本開示の代替実施形態が示されている。シード層2の構成材料としては、関連する米国特許出願14/939,232に開示されているような合金、または当技術分野で使用される他の材料が挙げられる。強磁性層(FML1)10a,非磁性層(NML1)10b、および強磁性層(FML2)10cの各組成は先に記載された強磁性層(FML1)20a,非磁性層(NML1)20b、および強磁性層(FML2)20cの各組成と同様である。この場合、非磁性層(NML1)10bは、トンネルバリア19から強磁性層(FML2)10cに拡散する酸素を引き寄せることにより、強磁性層(FML2)10cの酸化を防止する役割を果たす。よって、FML1/NML1/FML2スタックを形成することで以前に説明された
図3Aのフリー層20-1の構成の利点の全てがリファレンス層10-1に適用される。
【0069】
図4Aに示した他の形態としてのフリー層20-2は、先に説明したフリー層20-1を修正し、さらに非磁性層(NML2)20dと強磁性層(FML3)20eと順次堆積することで「FML1/NML1/FML2/NML2/FML3」スキームを実現したものである。非磁性層(NML2)20dは、Mg,Al,B,Ca,Ba,Sr,SiまたはCからなる。強磁性層(FML3)20eは、Fe,Co,Ni,CoFe,CoFeB,CoB,FeBおよびCoFeNiBのうちの1つ以上からなる。キャップ層40は、強磁性層(FML3)20eの上面と接している。キャップ層40が酸化物層である場合、キャップ層(酸化物層)40と強磁性層(FML3)20eとの界面は、強磁性層(FML3)20e内の垂直磁気異方性PMAを誘導、または向上させる。
【0070】
図4Bは、シード層2とトンネルバリア19との間にリファレンス層10-2が形成された他の実施態様を表している。
図4bのリファレンス層10-2は、
図3bに示したリファレンス層10-1が改良されたものであり、「FML1/NML1/FML2/NML2/FML3」スタック構造を有する。換言すれば、
図4Bのリファレンス層10-2は、リファレンス層10-1に非磁性層(NML2)10dと強磁性層(FML3)10eとが強磁性層(FML2)10c上に順次堆積された構造であり、リファレンス層10-1と同様の利点を有する。さらに、強磁性層(FML3)10eの上面に隣接する酸化物トンネルバリア19の存在は、強磁性層(FML3)10e内の垂直磁気異方性PMAを誘導、または向上させる。
【0071】
図5Aに、トンネルバリア19とキャップ層15との間に、上述のフリー層20-1に改良を加えたフリー層20-3を設けるようにした、本開示の他の形態を示す。ここでは、フリー層20-3は、(n-1)個の非磁性層20b,20n-1とn個の強磁性副層20a,20c,20nとが交互に積層された構造「FML1/NML1...FMLn-1/NMLn-1/FMLn」を有する。各非磁性層は、Mg,Al,B,Ca,Ba,Sr,SiまたはCのいずれかから選択され、各強磁性副層は、Fe,Co,Ni,CoFe,CoFeB,CoB,FeBおよびCoFeNiBを含む。キャップ層40は、FMLn20nの上面に接触し、キャップ層(酸化物層)40と強磁性層FMLnとの界面を形成することによって強磁性層FMLn20nの中の垂直磁気異方性PMAを強化することができる。
【0072】
図5Bに、リファレンス層10-1(
図3B)を改良したリファレンス層10-3を示す。リファレンス層10-3は、シード層2の上に設けられ、(n-1)個の非磁性(NML)層10b,10n-1とn個の強磁性副層10a,10c,10nとが交互に積層された構造「FML1/NML1...FMLn-1/NMLn-1/FMLn」を有する。各非磁性層は、Mg,Al,B,Ca,Ba,Sr,SiまたはCのいずれかから選択され、各強磁性副層は、Fe,Co,Ni,CoFe,CoFeB,CoB,FeBおよびCoFeNiBのうちの1以上を含む。トンネルバリア19は、強磁性層FMLn10nの上面に接触し、トンネルバリア19(酸化物層)と強磁性層FMLnとの界面を形成することによって強磁性層FMLn10nの中の垂直磁気異方性PMAを増強または誘導する。
【0073】
このように、非磁性層上に強磁性副層を堆積させるプロセスは複数回繰り返して行われ、各連続非磁性層における結晶化を低減し、各強磁性副層の上面に平滑化効果を与え、トンネルバリアから強磁性層FMLnに拡散し得る酸素と反応することによって強磁性層FMLnの酸化を防止する。
【0074】
前述の実施形態のすべてにおいて、本開示は、強磁性副層(FMLn)の1つまたは複数が、(Co/X)mまたは(X/Co)mのようなスタックにより構成されうるものである。ここで、mは1~30であり、XはPt,Pd,Ni,NiCo,Ni/PtまたはNiFeである。別の態様では、上記スタック中のCoをCoFeまたはCoFeRに置き換えることができる。ここで、Rは、Mo,Mg,Ta,WまたはCrのうちの1つである。
【0075】
図6を参照すると、本開示はまた、2つの酸化物層の間に形成されたフリー層20-1,20-2または20-3を含むMTJの実施態様を包含する。例示的な実施態様では、フリー層20-1,20-2または20-3は、トンネルバリア19の上面に接触すると共に、酸化物キャップ層40aの底面にも隣接する。酸化キャップ層40aは、先に述べたトンネルバリア19と関連した材料から選択される1以上の酸化物層からなるようにしてもよい。
【0076】
下部スピンバルブ構造では、シード層2、リファレンス層11、トンネルバリア19、フリー層および酸化物キャップ層40aが順に基板1(MRAMにおける下部電極、再生ヘッドセンサにおける下部シールド、STOデバイスにおける主磁極である)の上に形成される。
【0077】
リファレンス層11は、シード層2と接する下部反平行強磁性層(AP2層)と、トンネルバリア19と接する上部反平行強磁性層(AP1層)との間にRu(ルテニウム)などの反強磁性結合層が形成されたシンセティック反平行(SyAP)構造を有していてもよい。下部反平行強磁性層(AP2層)および上部反平行強磁性層(AP1層)のうちの少なくとも一方は、Co,Fe,Ni,CoB,FeB,CoFe,CoFeBまたはCoFeNiBの1種または2種以上であってもよいし、または上述の(Co/X)mまたは(X/Co)mであってもよい。上部電極50はキャップ層40aの上に形成される。また、キャップ層40aと上部電極50との間に、MnPtのようなオプションのハードマスク(図示せず)が設けられていてもよい。他の実施形態では、上部電極50は、再生ヘッドセンサにおける上部シールドまたはSTOデバイスにおけるトレーリングシールドである。
【0078】
図7に示したボトムスピンバルブ型MTJは、酸化物のキャップ層40aを非磁性金属のキャップ層40bに置き換えたことを除き、他は
図6に示した構造を維持している。いくつかの形態では、キャップ層40bは、Ru,W,Mo,NiCr,およびTaのうちの少なくとも1種を含み、例えばRu/TaおよびRu/Ta/Ruを含む構成を有する。
【0079】
図8を参照すると、本開示の一実施形態によるトップスピンバルブ構成を有するMTJが示されている。全ての層は
図7から保持される。但し、
図8では、フリー層20-1(または20-2もしくは20-3)とリファレンス層11との位置を入れ替えて、シード層2、フリー層20-1(または20-2もしくは20-3)、トンネルバリア19、リファレンス層11およびキャップ層40bが順に積層されている。 シード層2は、W,Ru,Ta,Mo,NiCrのうちの1つ以上であってもよい。
【0080】
図9を参照すると、本開示の別のトップスピンバルブ構成が示されている。フリー層20-1(または20-2もしくは20-3)、トンネルバリア19、リファレンス層11およびキャップ層40bは、基板1上の任意のシード層2上の酸化物層15上に順次形成される。酸化物層15は、酸化物キャップ層40aについて挙げた酸化物材料の1つから選択することができる。その結果、酸化物層とフリー層との間に2つの界面、すなわち、フリー層20-1の上面とトンネルバリア19との界面、およびフリー層20-1の下面と酸化物層15との界面が存在することとなり、フリー層内の垂直磁気異方性PMAが強化される。
【0081】
図10を参照すると、本開示はまた、トップスピンバルブMTJ内の2つの酸化物層の間にリファレンス層10-1(または10-2もしくは10-3)が形成される形態が想定される。例示的な実施形態では、シード層2、フリー層21、トンネルバリア19、リファレンス層10-1、および酸化物キャップ層40aが、基板1上に順次形成される。フリー層21は、先にリファレンス層11に関して述べたような材料と同じ材料から選択されるものでもよい。この場合、リファレンス層11は、そのリファレンス層11内の垂直磁気異方性PMAを強化するため、トンネルバリア19との第1の界面と、酸化キャップ層40aとの第2の界面とを有している。
【0082】
図11には、酸化キャップ層40aが非磁性キャップ層40bに置換されている点を除き、先に説明した
図10のトップスピンバルブMTJと実質的に同じ構造を有する他のトップスピンバルブMTJが示されている。
【0083】
図12には、
図11に示された全ての層を有するボトムスピンバルブMTJが示されている。しかし、
図12のボトムスピンバルブMTJは、フリー層21とリファレンス層10-1(または10-2もしくは10-3)との位置が
図11の構成と逆の位置となっている。すなわち、非磁性金属からなるシード層2の上に、リファレンス層10-1(または10-2もしくは10-3)、トンネルバリア19、フリー層21、およびキャップ層40bが順に形成されている。
【0084】
図13は、
図12に示されたボトムスピンバルブMTJを改良した別のボトムスピンバルブの実施形態を示している。
図13は、
図12におけるシード層2を酸化物層15に置換したものである。これにより、リファレンス層10-1(または10-2もしくは10-3)が酸化物トンネルバリア19との界面および酸化物層(非磁性金属キャップ層)15との界面をそれぞれ有することとなり、リファレンス層10-1(または10-2もしくは10-3)内の垂直磁気異方性PMAが強化される。
【0085】
図14は、他の形態を示している。
図14では、先の形態のようにn個の強磁性副層と(n-1)個の非磁性層(NML)とのスタックを形成するのではなく、強磁性層(FML)から酸素原子を引きつける非磁性材料が強磁性層(FML)22内に埋設され、あるいは添加されている。強磁性層(FML)中における添加密度に依存して、隣接する酸化物層から強磁性層(FML)中に拡散し得る酸素と反応する非磁性材料の反応効率は、先の形態のn個の強磁性副層と(n-1)個の非磁性層(NML)とのスタックよりも低くなる可能性がある。さらに、強磁性層(FML)における結晶化抑制の利点は、先の形態に比べて低くなる可能性がある。なぜなら、この形態では、高い再スパッタリングレートの材料の上に低い再スパッタリングレートの材料が蒸着されていないので、先に述べたような、非磁性層(NML)の上に強磁性層(FML)を形成することの円滑化効果はここでは得られないからである。
【0086】
フリー層22は、Mg,Al,Si,Ca,Sr,Ba,C,およびBのうちの1以上の非磁性元素が0.1から30原子%の濃度で添加または埋設されている。これらの非磁性元素は、共蒸着プロセスによりフリー層22内に埋め込まれる。非磁性元素は磁気希釈効果(magnetic dilution effect)を有する。これは、非磁性元素の濃度がフリー層21内で増加すると、フリー層21の磁気モーメントが減少することを意味する。例示的な実施形態では、任意のシード層2と、リファレンス層11と、トンネルバリア19と、フリー層22と、キャップ層40とが基板1上に順に形成される。キャップ層40は、例えばキャップ層40bのような1以上の非磁性金属からなるものであり、またはキャップ層40aのような酸化物材料からなるものである。
【0087】
図15に示したように、本開示は、酸化物層15、フリー層22、トンネルバリア19、リファレンス層11、およびキャッピング層40bが基板1上に連続的に形成される上部スピンバルブ構造を包含するものである。
【0088】
図16は、
図15に示したトップスピンバルブMTJの変形例である。
図16の構成では、非磁性元素がドープされたフリー層22は先に説明したフリー層21で置き換えられている。一方、Mg,Al,Si,Ca,Sr,C,BaおよびBのうちの1以上の元素がドープされたリファレンス層12を有している。したがって、
図16のトップスピンバルブ構造では、「シード層2/フリー層21/トンネルバリア19/リファレンス層12/キャップ層40」を有する。
【0089】
図17は、ボトムスピンバルブMTJを示している。ここでは、酸化物層15と、リファレンス層12と、トンネルバリア19と、フリー層21とキャップ層40(非磁性金属キャップ層40b)とが順に積層されている。
【0090】
本開示は、
図3A~5Bに示した強磁性副層と非磁性層との積層体を含む強磁性層を有するMTJの形成方法をも包含するものである。
【0091】
図18では、MTJ60の形成における中間工程が示されている。MTJ60は、シード層2、リファレンス層11、トンネルバリア19、フリー層20-1(または20-2もしくは20-3)および酸化物キャップ層40aが基板1の上に順に形成されたものである。従来の方法によるMTJにおける全ての層の形成ののち、フォトレジスト層55をキャップ層40aの上面に被覆すると共にそのフォトレジスト層55をパターニングする。これにより、側壁55sが形成される。その後のイオンビームエッチングにより、MTJ60に側壁60sが形成される。
【0092】
図19は、誘電体層70が側壁60sと接するように、基板1の表面から酸化物キャップ層40の上面に至るまで形成された様子を示している。誘電体層70は、例えば酸化シリコン、窒化シリコンまたはアルミナなどからなる。ここでは、それらの材料を、キャップ層40aを覆うように堆積させ、化学機械研磨(CMP)処理を行ってフォトレジスト層を除去し、キャッピング層40aの上面40tと同一平面上にある上面70tを有するように誘電体層70を形成する。
【0093】
次に
図20に示したように、上部電極50が、当業者に周知の方法によって誘電体層70およびキャップ層40aの上に形成される。
【0094】
<実験例>
図21から
図23は、カー磁気測定を用いて測定した、330℃の温度で30分間に亘ってアニールされた様々な積層体における磁気ヒステリシス曲線を示している。磁化は、-1500Oeから+1500Oeの範囲の磁場において測定されたものである。各ヒステリシス曲線のうち、増大する磁場中での磁化が破線で表され、減少する磁場中での磁化が実線で表されている。カー(Kerr)磁化信号は垂直磁化に正比例する。厚さtは、1以上の強磁性層(FML)の総厚を示す。これらの測定の利点は、ヒステリシス曲線における直角の程度(角型比)および保磁力の値である。
【0095】
これらのデータは、1つの非磁性層(NML)(
図22)の追加または2つの非磁性層(NML)(
図23)の追加が、厚さtのより広い範囲にわたって改善された保磁力をもたらすことを示している。特に、改善された垂直磁気異方性PMAは、12オングストロームより薄い層まで達成される。これに対し、
図21に示した、非磁性層(NML)を有さずに強磁性層(FML)が不連続になった従来技術の構成では、12オングストローム未満の垂直磁気異方性PMAを失う。
【0096】
他の利点として、フリー層を含むMTJにおける熱履歴(thermal budget)の改善がある。
図24~
図25は、非磁性層(NML)を含まない積層体、および2つの非磁性層(NML)を含む積層体についてのヒステリシス曲線を示している。いずれの積層体についても、400°℃で5時間に亘るアニールを実施した。非磁性層(NML)のない積層体の磁気特性は、角型比の減少および保磁力の減少によって示されるように、大きく低下する。磁気信号は強く減少し、14オングストロームより薄い層では消滅する。より厚い層は、垂直磁化に特徴的な正方形のループを示さない。 対照的に、2つの非磁性層(NML)を有する積層体は、角型ループおよび0ではない保磁力を保持する。これは、この2つの非磁性層(NML)を有する積層体が400℃で5時間に亘るアニーリングののちに良好な垂直磁気異方性PMAを保持することを示している。
【0097】
このように、本開示によれば、強磁性層(FML)の両側に2つの酸化物界面を有する改善された磁気トンネル接合(MTJ)を有するようにしたので、強磁性層(FML)においてより高い垂直磁気異方性PMAをもたらす。新規なスタック構造は、上部酸化物層の酸化中の改善された制御を可能にする。これは、1つ以上の非磁性層と交互に配置された多数の強磁性副層を有する強磁性層の使用によって達成される。0.5~10オングストロームの厚さおよび高い再スパッタリングレートを有する非磁性層(NML)の使用は、より滑らかな強磁性層(FML)上面を提供し、強磁性副層の結晶化を抑制し、酸素と反応して、隣接する強磁性体の有害な酸化を防止する。強磁性層(FML)は、例えば磁気トンネル接合(MTJ)のフリー層またはリファレンス層として機能する。代替的な実施形態では、Mg,Al,Si,Ca,Sr,BaおよびBなどの非磁性材料が、共蒸着によって強磁性層(FML)に埋め込まれ、または強磁性層(FML)にドープされる。