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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】冷却器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20221019BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20221019BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20221019BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
F28D15/02 101N
F28D15/02 101K
F28D15/02 104A
F28F21/06
H01L23/46 B
H05K7/20 R
H05K7/20 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018158700
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020034185
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/051001(WO,A1)
【文献】特開2012-233642(JP,A)
【文献】特許第6291000(JP,B2)
【文献】特表2017-520106(JP,A)
【文献】特開2015-053311(JP,A)
【文献】特開2004-150719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00 - 15/06
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のループ型ヒートパイプを有し、
前記複数のループ型ヒートパイプのそれぞれが、
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、
を有し、
前記複数のループ型ヒートパイプのそれぞれは、金属層が複数積層された構造を有し、
前記複数のループ型ヒートパイプの間で、前記蒸発器同士が重ね合わされており、
前記複数のループ型ヒートパイプの間で、前記流路の内部の圧力が相違することを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記複数のループ型ヒートパイプの間で、前記流路に封入される作動流体の種類が相違することを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記複数のループ型ヒートパイプの間で、前記蒸発器同士が直接接触していることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却器。
【請求項4】
前記複数のループ型ヒートパイプの間で、前記蒸発器同士がサーマルインターフェースマテリアルを介して重ね合わされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却器。
【請求項5】
前記複数のループ型ヒートパイプの間で、平面視で、前記凝縮器の位置が相違していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項6】
前記凝縮器に接触する放熱部材を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項7】
前記凝縮器の周囲に気流を生成する送風機を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却するデバイスとして、ヒートパイプが知られている。ヒートパイプは、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するデバイスである。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管で接続されたループ型ヒートパイプが挙げられる。ループ型ヒートパイプでは、作動流体はループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
また、ループ型ヒートパイプの液管内には、多孔質体が設けられており、多孔質体に生じる毛細管力で液管内の作動流体を蒸発器に誘導し、蒸発器から液管に蒸気が逆流することを抑制している。多孔質体は、多数の細孔が形成された複数の金属層を積層することで構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、複数の金属シートを重ねて構成した一つのループ型ヒートパイプで複数の発熱部品からの熱輸送を図った技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6291000号公報
【文献】特開2018-76978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金属層の積層により形成されたループ型ヒートパイプは薄型化の点で好適であるが、十分な熱輸送性能が得られないことがある。
【0008】
本発明は、熱輸送性能を向上することができる冷却器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
冷却器の一態様は、複数のループ型ヒートパイプを有する。前記複数のループ型ヒートパイプのそれぞれが、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、を有する。前記複数のループ型ヒートパイプのそれぞれは、金属層が複数積層された構造を有する。前記複数のループ型ヒートパイプの間で、前記蒸発器同士が重ね合わされており、前記複数のループ型ヒートパイプの間で、前記流路の内部の圧力が相違する。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、熱輸送性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る冷却器を例示する平面模式図である。
図2】第1の実施形態に係る冷却器を例示する斜視模式図である。
図3】第1の実施形態に係る冷却器に含まれるループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。
図4】第1の実施形態に係る冷却器の蒸発器及びその周囲の断面図である。
図5】第1の実施形態に係る冷却器を例示する断面図(その1)である。
図6】第1の実施形態に係る冷却器を例示する断面図(その2)である。
図7】種々の物質の飽和蒸気圧曲線を示す図である。
図8】第1の実施形態の変形例に係る冷却器を例示する斜視模式図である。
図9】第1の実施形態の変形例に係る冷却器を例示する断面図である。
図10】第2の実施形態に係る冷却器を例示する平面模式図である。
図11】第2の実施形態に係る冷却器を例示する斜視模式図である。
図12】第2の実施形態に係る冷却器を例示する断面図(その1)である。
図13】第2の実施形態に係る冷却器を例示する断面図(その2)である。
図14】第2の実施形態の第1の変形例に係る冷却器を例示する断面図である。
図15】第2の実施形態の第2の変形例に係る冷却器を例示する断面図である。
図16】第2の実施形態の第3の変形例に係る冷却器を例示する斜視模式図である。
図17】第3の実施形態に係る冷却器を例示する平面模式図である。
図18】第3の実施形態に係る冷却器を例示する斜視模式図である。
図19】第3の実施形態に係る冷却器に含まれるループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。
図20】第3の実施形態に係る冷却器の蒸発器及びその周囲の断面図である。
図21】第3の実施形態に係る冷却器を例示する断面図(その1)である。
図22】第3の実施形態に係る冷却器を例示する断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は二つのループ型ヒートパイプを含む冷却器に関する。図1は、第1の実施形態に係る冷却器を例示する平面模式図である。図2は、第1の実施形態に係る冷却器を例示する斜視模式図である。図3は、第1の実施形態に係る冷却器に含まれるループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。但し、図3では、一方の最外層となる金属層(図5に示す金属層151、251)の図示が省略されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る冷却器1は、ループ型ヒートパイプ100及びループ型ヒートパイプ200を有する。冷却器1は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器に収容することができる。
【0015】
図3(a)に示すように、ループ型ヒートパイプ100は、蒸発器110と、凝縮器120と、蒸気管130と、液管140とを有する。蒸発器110、凝縮器120、蒸気管130、及び液管140は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる(図5参照)。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μmとすることができる。
【0016】
なお、金属層は銅層に限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は特に限定されない。
【0017】
図3(a)に示すように、蒸発器110内には、例えば、平面形状が櫛歯形状の多孔質体150が設けられている。例えば、多孔質体150は、管壁に接触して、一体的に形成されている。また、液管140内にも多孔質体150aが設けられている。多孔質体150及び150aは、例えば、上記の複数の金属層のうち最外層となる2つの金属層151及び152の間の金属層に形成された複数の細孔(図示せず)を含む。
【0018】
ループ型ヒートパイプ100において、蒸発器110は、作動流体C1を気化させて蒸気Cv1を生成する機能を有する。凝縮器120は、作動流体C1の蒸気Cv1を液化させる機能を有する。蒸発器110と凝縮器120は、蒸気管130及び液管140により接続されており、蒸気管130及び液管140によって作動流体C1又は蒸気Cv1が流れるループ状の流路101が形成されている。
【0019】
液管140には作動流体C1を注入するための注入口(図示せず)が形成されている。注入口は作動流体C1の注入に用いられ、作動流体C1の注入後に塞がれる。
【0020】
図3(b)に示すように、ループ型ヒートパイプ200は、蒸発器210と、凝縮器220と、蒸気管230と、液管240とを有する。蒸発器210、凝縮器220、蒸気管230、及び液管240は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる(図5参照)。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μmとすることができる。
【0021】
なお、金属層は銅層に限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は特に限定されない。
【0022】
図3(b)に示すように、蒸発器210内には、例えば、平面形状が櫛歯形状の多孔質体250が設けられている。例えば、多孔質体250は、管壁に接触して、一体的に形成されている。また、液管240内にも多孔質体250aが設けられている。多孔質体250及び250aは、例えば、上記の複数の金属層のうち最外層となる2つの金属層251及び252の間の金属層に形成された複数の細孔(図示せず)を含む。
【0023】
ループ型ヒートパイプ200において、蒸発器210は、作動流体C2を気化させて蒸気Cv2を生成する機能を有する。凝縮器220は、作動流体C2の蒸気Cv2を液化させる機能を有する。蒸発器210と凝縮器220は、蒸気管230及び液管240により接続されており、蒸気管230及び液管240によって作動流体C2又は蒸気Cv2が流れるループである流路201が形成されている。
【0024】
液管240には作動流体C2を注入するための注入口(図示せず)が形成されている。注入口は作動流体C2の注入に用いられ、作動流体C2の注入後に塞がれる。
【0025】
蒸気管130及び230の幅Wは、例えば、8mm程度とすることができる。また、液管140及び240の幅Wは、例えば、6mm程度とすることができる。蒸気管130及び230の幅Wや液管140及び240の幅Wは、これに限らず、例えば互いに等しくてもよい。
【0026】
図1及び図2に示すように、冷却器1においては、蒸発器110の上面が蒸発器210の下面と直接接触し、蒸発器110及び210が互いに重ね合わされている。
【0027】
その一方で、凝縮器120及び220は、平面視でこれらの間に蒸発器110及び210が位置するようにして配置されている。すなわち、蒸発器110及び210を中心に見て、X方向で、凝縮器120と凝縮器220とが対称に位置する。
【0028】
また、蒸発器110及び210を中心に見て、X方向で、蒸気管130と液管240とが対称に位置し、液管140と蒸気管230とが対称に位置する。
【0029】
蒸発器110及び210、凝縮器120及び220、蒸気管130及び230、並びに液管140及び240の各々の位置関係は、これに限らず、適宜、設定することができる。例えば、蒸発器110及び210を中心に見て、X方向で、蒸気管130と蒸気管230とが対称に位置し、液管140と液管240とが対称に位置するように積層されていてもよい。
【0030】
なお、図1図3では、蒸発器110及び210から見て凝縮器220が位置する方向を+X方向とする。また、蒸気管130から見て液管140が位置する方向を+Y方向とし、ループ型ヒートパイプ100から見てループ型ヒートパイプ100の上面(金属層151側、図5参照)にループ型ヒートパイプ200が積層される方向を+Z方向とする。以下の図でも同様である。
【0031】
図4は、第1の実施形態に係る冷却器1の蒸発器110及び210並びにそれらの周囲の断面図である。図1図4に示すように、蒸発器110には、例えば4つの貫通孔110xが形成され、蒸発器210には、例えば4つの貫通孔210xが形成されている。蒸発器110に形成された各貫通孔110x、蒸発器210に形成された各貫通孔210x、及び回路基板10に形成された各貫通孔10xにボルト15を挿入し、回路基板10の下面側からナット16で止めることにより、蒸発器110、蒸発器210及び回路基板10を互いに固定することができる。
【0032】
回路基板10には、例えば、CPU等の発熱部品12がバンプ11により実装され、発熱部品12の上面が蒸発器110の下面と密着する。また、蒸発器110の上面が蒸発器210の下面と密着する。
【0033】
ここで、冷却器1における熱の移動について説明する。図5及び図6は、第1の実施形態に係る冷却器を例示する断面図である。図5は、図1中のI-I線に沿った断面図に相当する。図6(a)は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。図6(b)は、図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
【0034】
図5に示すように、蒸発器110には、液相の作動流体C1が浸透する多孔質体150及び気化した蒸気Cv1が蒸気管130へと流れる空間160が設けられている。同様に、蒸発器210には、液相の作動流体C2が浸透する多孔質体250及び気化した蒸気Cv2が蒸気管230へと流れる空間260が設けられている。
【0035】
図5に示すように、発熱部品12で発生した熱は、矢印17で示すように、まず、蒸発器110に伝達される。蒸発器110に熱が伝達されると、蒸発器110内で多孔質体150に浸透している作動流体C1が気化し、蒸気Cv1が生成される。
【0036】
蒸発器110に伝達された熱の一部は、蒸気Cv1の生成に用いられ、他の一部は、矢印17で示すように、蒸発器210に伝達される。蒸発器210に熱が伝達されると、蒸発器210内で多孔質体250に浸透している作動流体C2が気化し、蒸気Cv2が生成される。
【0037】
図1及び図3(a)に示すように、蒸発器110に生成された蒸気Cv1は、蒸気管130を通って凝縮器120に導かれ、凝縮器120において液化する。蒸気Cv1の液化の際に、図6(a)に示すように、蒸気Cv1が輸送してきた熱は、矢印31で示すように、凝縮器120の周辺に放出される。そして、凝縮器120で液化した作動流体C1は、液管140を通って蒸発器110に導かれる。
【0038】
図1及び図3(b)に示すように、蒸発器210に生成された蒸気Cv2は、蒸気管230を通って凝縮器220に導かれ、凝縮器220において液化する。蒸気Cv2の液化の際に、図6(b)に示すように、蒸気Cv2が輸送してきた熱は、矢印32で示すように、凝縮器220の周辺に放出される。そして、凝縮器220で液化した作動流体C2は、液管240を通って蒸発器210に導かれる。
【0039】
このように、冷却器1では、発熱部品12で発生した熱が凝縮器120だけでなく、凝縮器220にも移動する。従って、優れた熱輸送性能を得ることができる。更に、発熱部品12で発生した熱がループ型ヒートパイプ100及び200に分散されるため、例えばループ型ヒートパイプ200が設けられておらず、ループ型ヒートパイプ100のみで熱を受ける場合と比較すると、ループ型ヒートパイプ100の温度上昇が小さくなる。ループ型ヒートパイプ100の温度が過度に高くなると、流路101の内圧が高くなりすぎてループ型ヒートパイプ100が変形するおそれがあるが、冷却器1では、このような変形を抑制することができる。
【0040】
また、冷却器1では、互いに重ね合された蒸発器110及び210から見て、凝縮器120及び220が相対する方向に位置する。従って、凝縮器120に移動した熱と、凝縮器220に移動した熱とが互いに干渉しにくい。このため、凝縮器120及び220から高効率で放熱することができる。
【0041】
なお、作動流体C1及びC2の種類は特に限定されないが、蒸発潜熱によって発熱部品12を効率的に冷却するために、飽和蒸気圧が高く、かつ蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。そのような流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、及びアセトンを挙げることができる。図7は、種々の物質の飽和蒸気圧曲線を示す図である。また、水の蒸発潜熱は2257kJ/kgであり、エタノールの蒸発潜熱は918.1kJ/kgであり、メタノールの蒸発潜熱は1190kJ/kgであり、アセトンの蒸発潜熱は551.9kJ/kgである。
【0042】
作動流体C1及びC2として同一の物質、例えば水を用い、ループ型ヒートパイプ100の流路101とループ型ヒートパイプ200の流路201との間で内部の圧力を相違させると、蒸発器110と蒸発器210との間で作動温度の範囲を異ならせることができる。
【0043】
例えば、流路101に40hPaの内部圧力で水を封入し、流路201に200hPaの内部圧力で水を封入することができる。40hPaの圧力下での水の沸点は約30℃であり、200hPaの圧力下での水の沸点は約60℃であるため、この場合、蒸発器110は約30℃から作動し、蒸発器210は約60℃から作動する。従って、冷却器1は約30℃から作動し始める。また、環境温度がより高温、例えば60℃になると、流路101での作動流体C1の流動性が低下するが、蒸発器210が作動し始める。このため、冷却器1は作動を継続することができる。つまり、この組み合わせによれば、作動温度の範囲を広げることができる。
【0044】
逆に、流路101に200hPaの内部圧力で水を封入し、流路201に40hPaの内部圧力で水を封入することもできる。この場合、蒸発器110は約60℃から作動し、蒸発器210は約30℃から作動する。発熱部品12に近い蒸発器110が蒸発器210よりも高温になるため、この組み合わせによれば、ループ型ヒートパイプ100及び200の間での作動開始のタイミングのずれを小さくすることができる。特に、蒸発器110の温度が約60℃になるタイミングと、蒸発器210の温度が約30℃になるタイミングとが同程度であれば、ループ型ヒートパイプ100及び200は、ほぼ同時に作動を開始する。作動開始のタイミングのずれを小さくすることで、先に作動を開始したループ型ヒートパイプでの内圧の過剰な上昇を抑制することができる。
【0045】
また、作動流体C1及びC2の間で異なる物質を用いてもよい。
【0046】
例えば、流路201に200hPaの内部圧力で水を封入し、流路101に200hPaの内部圧力で水及びエタノールの混合液を封入することができる。水及びエタノールの混合液の沸点は水の沸点よりも低い。従って、この場合も、熱輸送性能を向上しながら、作動温度の範囲を広げることができる。また、水の蒸発潜熱はエタノールの蒸発潜熱よりも大きく、主な使用温度範囲(例えば50℃~100℃)でのエタノールの飽和蒸気圧は水の飽和蒸気圧よりも大きい。従って、速やかな作動を可能にしながら、良好な熱輸送性能を得ることができる。
【0047】
逆に、流路201に200hPaの内部圧力で水及びエタノールの混合液を封入し、流路101に200hPaの内部圧力で水を封入することもできる。この組み合わせによれば、ループ型ヒートパイプ100及び200の間での作動開始のタイミングのずれを小さくすることができ、先に作動を開始したループ型ヒートパイプでの内圧の過剰な上昇を抑制することができる。
【0048】
また、流路101及び201の間で内部の圧力が相違し、かつ作動流体C1及びC2の種類が相違していてもよい。
【0049】
そして、蒸発器110及び210が、それぞれを構成する金属層同士の直接接合によって密着していてもよい。すなわち、蒸発器110を構成する金属層のうちで最も上方に位置するものと蒸発器210を構成する金属層のうちで最も下方に位置するものとが直接接合されていてもよい。
【0050】
また、図8及び図9に示すように、蒸発器110及び210が、これらの間に高熱伝導性樹脂等のサーマルインターフェースマテリアル(Thermal Interface Material:TIM)20を介在させつつ互いに重ね合わされていてもよい。図8は、第1の実施形態の変形例に係る冷却器を例示する斜視模式図である。図9は、第1の実施形態の変形例に係る冷却器を例示する断面図である。
【0051】
図9に示すように、TIM20が介在している場合も、発熱部品12で発生した熱は、矢印17で示すように、まず、蒸発器110に伝達される。蒸発器110に熱が伝達されると、蒸発器110内で多孔質体150に浸透している作動流体C1が気化し、蒸気Cv1が生成される。蒸発器110に伝達された熱の一部は、蒸気Cv1の生成に用いられ、他の一部は、矢印17で示すように、蒸発器210に伝達される。蒸発器210に熱が伝達されると、蒸発器210内で多孔質体250に浸透している作動流体C2が気化し、蒸気Cv2が生成される。
【0052】
また、蒸発器110及び210が、これらの間にはんだを介在させつつ互いに重ね合わされていてもよい。はんだとしては、例えばPbを含む合金、SnとCuの合金、SnとSbの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金等を用いることができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は二つのループ型ヒートパイプを含む冷却器に関する。図10は、第2の実施形態に係る冷却器を例示する平面模式図である。図11は、第2の実施形態に係る冷却器を例示する斜視模式図である。但し、図10では、一方の最外層となる金属層(図12に示す金属層251)の図示が省略されている。
【0054】
図10及び図11に示すように、第2の実施形態に係る冷却器2は、ループ型ヒートパイプ100及びループ型ヒートパイプ200を有する。冷却器2は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器に収容することができる。
【0055】
図10及び図11に示すように、冷却器2においては、蒸発器110及び210が、これらの間にTIM20を介在させつつ互いに重ね合わされている。TIM20の厚さは特に限定されないが、例えば0.1mm~0.5mm程度である。また、第1の実施形態とは異なり、平面視で、凝縮器120及び220も互いに重ね合わされている。すなわち、蒸発器110及び210から見て、凝縮器120と凝縮器220とが互いに同一の方向に位置する。但し、蒸発器110及び210の間にTIM20が介在しているため、凝縮器120と凝縮器220との間には空間21が存在する。
【0056】
また、蒸気管130及び液管240が互いに重ね合わされ、液管140及び蒸気管230が互いに重ね合わされている。また、蒸気管130及び液管240との間にも空間21が存在する。また、液管140と蒸気管230との間にも空間21が存在する。
【0057】
ループ型ヒートパイプ100及びループ型ヒートパイプ200の重ね合わせの形態は、これに限らず、蒸気管130及び蒸気管230が互いに重ね合わされ、液管140及び液管240が互いに重ね合わされていてもよい。
【0058】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0059】
第2の実施形態に係る冷却器2でも、冷却器1と同様にして、蒸発器110、蒸発器210及び回路基板10を互いに固定することができる(図4参照)。
【0060】
ここで、冷却器2における熱の移動について説明する。図12及び図13は、第2の実施形態に係る冷却器を例示する断面図である。図12は、図10中のI-I線に沿った断面図に相当する。図13は、図10中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
【0061】
図12に示すように、発熱部品12で発生した熱は、矢印17で示すように、まず、蒸発器110に伝達される。蒸発器110に熱が伝達されると、蒸発器110内で多孔質体150に浸透している作動流体C1が気化し、蒸気Cv1が生成される。
【0062】
蒸発器110に伝達された熱の一部は、蒸気Cv1の生成に用いられ、他の一部は、矢印17で示すように、蒸発器210に伝達される。蒸発器210に熱が伝達されると、蒸発器210内で多孔質体250に浸透している作動流体C2が気化し、蒸気Cv2が生成される。
【0063】
図10及び図3(a)に示すように、蒸発器110に生成された蒸気Cv1は、蒸気管130を通って凝縮器120に導かれ、凝縮器120において液化する。蒸気Cv1の液化の際に、図13に示すように、蒸気Cv1が輸送してきた熱は、矢印31で示すように、凝縮器120の周辺に放出される。そして、凝縮器120で液化した作動流体C1は、液管140を通って蒸発器110に導かれる。
【0064】
図10及び図3(b)に示すように、蒸発器210に生成された蒸気Cv2は、蒸気管230を通って凝縮器220に導かれ、凝縮器220において液化する。蒸気Cv2の液化の際に、図13に示すように、蒸気Cv2が輸送してきた熱は、矢印32で示すように、凝縮器220の周辺に放出される。そして、凝縮器220で液化した作動流体C2は、液管240を通って蒸発器210に導かれる。
【0065】
このように、冷却器2でも、発熱部品12で発生した熱が凝縮器120だけでなく、凝縮器220にも移動する。従って、優れた熱輸送性能を得ることができる。更に、冷却器1と同様に、内圧の上昇に伴う変形を抑制することもできる。
【0066】
また、冷却器2では、凝縮器120及び220が互いに重なり合っているが、これらの間に空間21が存在する。従って、空間21からも熱が放出される。このため、凝縮器120及び220から高効率で放熱することができる。
【0067】
更に、冷却器1と比較して、冷却器2は省スペース化に好適である。従って、電子機器等の内部の設置スペースが狭い場合でも、冷却器2を用いることができる。
【0068】
なお、図14に示すように、凝縮器120の下面及び凝縮器220の上面を、空気よりも熱伝導率が高い筐体50に接触させてもよい。図14は、第2の実施形態の第1の変形例に係る冷却器を例示する断面図である。筐体50としては、例えばアルミニウムケースを用いることができる。空気よりも熱伝導率が高い筐体50に凝縮器120の下面及び凝縮器220の上面を接触させることで、放熱効率を向上することができる。筐体50は放熱部材の一例である。放熱部材としてヒートシンク等を用いてもよい。
【0069】
また、図15に示すように、送風機等を用いて凝縮器120及び220の周囲に気流60を生成してもよい。図15は、第2の実施形態の第2の変形例に係る冷却器を例示する断面図である。気流60を生成することで、凝縮器120及び220から放出された熱の凝縮器120及び220近傍での滞留を抑制し、放熱効率を向上することができる。
【0070】
第1の実施形態において、筐体50を設けたり、気流60を生成したりしてもよい。筐体50を設けたり、気流60を生成したりすることで、放熱効率をより一層向上することができる。
【0071】
なお、TIM20は必ずしも必要ではない。例えば、図16に示すように、ループ型ヒートパイプ200の構造を蒸発器210の下面が凝縮器220の下面よりも低くなるようにすれば、TIM20を用いずとも、凝縮器120と凝縮器220との間に空間21が形成される。言い換えれば、ループ型ヒートパイプ200の蒸発器210の厚さを凝縮器220の厚さよりも厚くする。図16は、第2の実施形態の第3の変形例に係る冷却器を例示する斜視模式図である。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は四つのループ型ヒートパイプを含む冷却器に関する。図17は、第3の実施形態に係る冷却器を例示する平面模式図である。図18は、第3の実施形態に係る冷却器を例示する斜視模式図である。図19は、第3の実施形態に係る冷却器に含まれるループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。但し、図19では、一方の最外層となる金属層(図21に示す金属層351、451)の図示が省略されている。
【0073】
図17及び図18に示すように、第3の実施形態に係る冷却器3は、ループ型ヒートパイプ100、ループ型ヒートパイプ200、ループ型ヒートパイプ300及びループ型ヒートパイプ400を有する。冷却器3は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器に収容することができる。
【0074】
図19(a)に示すように、ループ型ヒートパイプ300は、蒸発器310と、凝縮器320と、蒸気管330と、液管340とを有する。蒸発器310、凝縮器320、蒸気管330、及び液管340は、例えば、ループ型ヒートパイプ100及び200と同様に、金属層が複数積層された構造とすることができる(図21参照)。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μmとすることができる。
【0075】
なお、金属層は銅層に限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は特に限定されない。
【0076】
図19(a)に示すように、蒸発器310内には、例えば、平面形状が櫛歯形状の多孔質体350が設けられている。例えば、多孔質体350は、管壁に接触して、一体的に形成されている。また、液管340内にも多孔質体350aが設けられている。多孔質体350及び350aは、例えば、上記の複数の金属層のうち最外層となる2つの金属層351及び352の間の金属層に形成された複数の細孔(図示せず)を含む。
【0077】
ループ型ヒートパイプ300において、蒸発器310は、作動流体C3を気化させて蒸気Cv3を生成する機能を有する。凝縮器320は、作動流体C3の蒸気Cv3を液化させる機能を有する。蒸発器310と凝縮器320は、蒸気管330及び液管340により接続されており、蒸気管330及び液管340によって作動流体C3又は蒸気Cv3が流れるループである流路301が形成されている。
【0078】
液管340には作動流体C3を注入するための注入口(図示せず)が形成されている。注入口は作動流体C3の注入に用いられ、作動流体C3の注入後に塞がれる。
【0079】
図19(b)に示すように、ループ型ヒートパイプ400は、蒸発器410と、凝縮器420と、蒸気管430と、液管440とを有する。蒸発器410、凝縮器420、蒸気管430、及び液管440は、例えば、ループ型ヒートパイプ100及び200と同様に、金属層が複数積層された構造とすることができる(図21参照)。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μmとすることができる。
【0080】
なお、金属層は銅層に限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は特に限定されない。
【0081】
図19(b)に示すように、蒸発器410内には、例えば、平面形状が櫛歯形状の多孔質体450が設けられている。例えば、多孔質体450は、管壁に接触して、一体的に形成されている。また、液管440内にも多孔質体450aが設けられている。多孔質体450及び450aは、例えば、上記の複数の金属層のうち最外層となる2つの金属層451及び452の間の金属層に形成された複数の細孔(図示せず)を含む。
【0082】
ループ型ヒートパイプ400において、蒸発器410は、作動流体C4を気化させて蒸気Cv4を生成する機能を有する。凝縮器420は、作動流体C4の蒸気Cv4を液化させる機能を有する。蒸発器410と凝縮器420は、蒸気管430及び液管440により接続されており、蒸気管430及び液管440によって作動流体C4又は蒸気Cv4が流れるループである流路401が形成されている。
【0083】
液管440には作動流体C4を注入するための注入口(図示せず)が形成されている。注入口は作動流体C4の注入に用いられ、作動流体C4の注入後に塞がれる。
【0084】
蒸気管330及び430の幅Wは、例えば、8mm程度とすることができる。また、液管340及び440の幅Wは、例えば、6mm程度とすることができる。蒸気管330及び430の幅Wや液管340及び440の幅Wは、これに限らず、例えば互いに等しくてもよい。
【0085】
図17及び図18に示すように、冷却器3においては、蒸発器110の上面が蒸発器310の下面と直接接触し、蒸発器310の上面が蒸発器210の下面と直接接触し、蒸発器210の上面が蒸発器410の下面と直接接触している。そして、平面視で、蒸発器110~410が互いに重ね合わされている。
【0086】
ループ型ヒートパイプ100とループ型ヒートパイプ200との間の平面視での位置関係は、第1の実施形態のものと同様である。すなわち、凝縮器120及び220は、平面視でこれらの間に蒸発器110~410が位置するようにして配置され、蒸発器110~410を中心に見て、X方向で、凝縮器120と凝縮器220とが対称に位置する。
【0087】
また、凝縮器320及び420は、平面視でこれらの間に蒸発器110~410が位置するようにして配置されている。すなわち、蒸発器110~410を中心に見て、Y方向で、凝縮器320と凝縮器420とが対称に位置する。より具体的には、蒸発器110~410から見て、凝縮器320が+Y方向に位置し、凝縮器420が-Y方向に位置する。
【0088】
また、蒸発器110~410を中心に見て、Y方向で、蒸気管330と液管440とが対称に位置し、液管340と蒸気管430とが対称に位置する。
【0089】
蒸発器310及び410、凝縮器320及び420、蒸気管330及び430、並びに液管340及び440の各々の位置関係は、これに限らず、適宜、設定することができる。例えば、蒸発器110~410を中心に見て、Y方向で、蒸気管330と蒸気管430とが対称に位置し、液管340と液管440とが対称に位置するように積層されていてもよい。
【0090】
図20は、第3の実施形態に係る冷却器3の蒸発器110~410並びにそれらの周囲の断面図である。図17図20に示すように、蒸発器310には、例えば4つの貫通孔310xが形成され、蒸発器410には、例えば4つの貫通孔410xが形成されている。蒸発器110に形成された各貫通孔110x、蒸発器210に形成された各貫通孔210x、蒸発器310に形成された各貫通孔310x、蒸発器410に形成された各貫通孔410x、及び回路基板10に形成された各貫通孔10xにボルト15を挿入し、回路基板10の下面側からナット16で止めることにより、蒸発器110~410及び回路基板10を互いに固定することができる。
【0091】
回路基板10には、例えば、CPU等の発熱部品12がバンプ11により実装され、発熱部品12の上面が蒸発器110の下面と密着する。また、蒸発器110の上面が蒸発器310の下面と密着し、蒸発器310の上面が蒸発器210の下面と密着し、蒸発器210の上面が蒸発器410の下面と密着する。
【0092】
ここで、冷却器3における熱の移動について説明する。図21及び図22は、第3の実施形態に係る冷却器を例示する断面図である。図21は、図17中のI-I線に沿った断面図に相当する。図22(a)は、図17中のII-II線に沿った断面図に相当する。図22(b)は、図17中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
【0093】
図21に示すように、蒸発器310には、液相の作動流体C3が浸透する多孔質体350及び気化した蒸気Cv3が蒸気管330へと流れる空間360が設けられている。同様に、蒸発器410には、液相の作動流体C4が浸透する多孔質体450及び気化した蒸気Cv4が蒸気管430へと流れる空間460が設けられている。
【0094】
図21に示すように、発熱部品12で発生した熱は、矢印17で示すように、まず、蒸発器110に伝達される。蒸発器110に熱が伝達されると、蒸発器110内で多孔質体150に浸透している作動流体C1が気化し、蒸気Cv1が生成される。
【0095】
蒸発器110に伝達された熱の一部は、蒸気Cv1の生成に用いられ、他の一部は、矢印17で示すように、蒸発器310に伝達される。蒸発器310に熱が伝達されると、蒸発器310内で多孔質体350に浸透している作動流体C3が気化し、蒸気Cv3が生成される。
【0096】
蒸発器310に伝達された熱の一部は、蒸気Cv3の生成に用いられ、他の一部は、矢印17で示すように、蒸発器210に伝達される。蒸発器210に熱が伝達されると、蒸発器210内で多孔質体250に浸透している作動流体C2が気化し、蒸気Cv2が生成される。
【0097】
蒸発器210に伝達された熱の一部は、蒸気Cv2の生成に用いられ、他の一部は、矢印17で示すように、蒸発器410に伝達される。蒸発器410に熱が伝達されると、蒸発器410内で多孔質体450に浸透している作動流体C4が気化し、蒸気Cv4が生成される。
【0098】
図17及び図3(a)に示すように、蒸発器110に生成された蒸気Cv1は、蒸気管130を通って凝縮器120に導かれ、凝縮器120において液化する。蒸気Cv1の液化の際に、図6(a)に示すように、蒸気Cv1が輸送してきた熱は、矢印31で示すように、凝縮器120の周辺に放出される。そして、凝縮器120で液化した作動流体C1は、液管140を通って蒸発器110に導かれる。
【0099】
図17及び図19(a)に示すように、蒸発器310に生成された蒸気Cv3は、蒸気管330を通って凝縮器320に導かれ、凝縮器320において液化する。蒸気Cv3の液化の際に、図22(a)に示すように、蒸気Cv3が輸送してきた熱は、矢印33で示すように、凝縮器320の周辺に放出される。そして、凝縮器320で液化した作動流体C3は、液管340を通って蒸発器310に導かれる。
【0100】
図17及び図3(b)に示すように、蒸発器210に生成された蒸気Cv2は、蒸気管230を通って凝縮器220に導かれ、凝縮器220において液化する。蒸気Cv2の液化の際に、図6(b)に示すように、蒸気Cv2が輸送してきた熱は、矢印32で示すように、凝縮器220の周辺に放出される。そして、凝縮器220で液化した作動流体C2は、液管240を通って蒸発器210に導かれる。
【0101】
図17及び図19(b)に示すように、蒸発器410に生成された蒸気Cv4は、蒸気管430を通って凝縮器420に導かれ、凝縮器420において液化する。蒸気Cv4の液化の際に、図22(b)に示すように、蒸気Cv4が輸送してきた熱は、矢印34で示すように、凝縮器420の周辺に放出される。そして、凝縮器420で液化した作動流体C4は、液管440を通って蒸発器410に導かれる。
【0102】
このように、冷却器3では、発熱部品12で発生した熱が凝縮器120だけでなく、凝縮器220~420にも移動する。従って、優れた熱輸送性能を得ることができる。更に、発熱部品12で発生した熱がループ型ヒートパイプ100~400に分散されるため、冷却器1と同様に、内圧の上昇に伴う変形を抑制することもできる。
【0103】
また、冷却器3では、互いに重ね合された蒸発器110~410から見て、凝縮器120~420が四方(+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向)に位置する。従って、凝縮器120に移動した熱と、凝縮器220に移動した熱と、凝縮器320に移動した熱と、凝縮器420に移動した熱とが互いに干渉しにくい。このため、凝縮器120~420から高効率で放熱することができる。
【0104】
作動流体C1~C4の種類は特に限定されず、また、流路101~401内の圧力も特に限定されない。作動流体C1~C4として同一の物質を用いつつ、流路101~401内の圧力を相違させてもよい。この場合、流路101から流路401にかけて圧力が大きくなるようにしてもよく、小さくなるようにしてもよい。また、作動流体C1~C4として互いに異なる物質を用いてもよい。この場合、作動流体C1から作動流体C4にかけて、蒸発潜熱を大きくしてもよく、小さくしてもよい。また、作動流体C1から作動流体C4にかけて、主な使用温度範囲(例えば50℃~100℃)での飽和蒸気圧を大きくしてもよく、小さくしてもよい。流路101~401内の圧力を相違させ、かつ作動流体C1~C4として互いに異なる物質を用いてもよい。
【0105】
また、第3の実施形態において、第1の実施形態の変形例及び第2の実施形態のように蒸発器間にTIM20を設けてもよい。また、第2の実施形態のように、凝縮器120~420の間に空間を設けつつ、平面視で凝縮器120~420が重なり合うようにしてもよい。また、第2の実施形態の第1の変形例のように、凝縮器120の下面及び凝縮器420の上面を、空気よりも熱伝導率が高い筐体50に接触させてもよい。また、第2の実施形態の第2の変形例のように、送風機等を用いて凝縮器120~420の周囲に気流60を生成してもよい。
【0106】
なお、冷却器に含まれるループ型ヒートパイプの数は2又は4に限定されず、3であってもよく、5以上であってもよい。
【0107】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0108】
1、2、3 冷却器
20 サーマルインターフェースマテリアル
21 空間
50 筐体
60 気流
100、200、300、400 ループ型ヒートパイプ
110、210、310、410 蒸発器
120、220、320、420 凝縮器
130、230、330、430 蒸気管
140、240、340、440 液管
150、250、350、450 多孔質体
160、260、360、460 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22