(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】加熱調理用調味材、加熱調理済み食品、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20221019BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20221019BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20221019BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L27/10 C
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2018225501
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】巽 千夏
(72)【発明者】
【氏名】益山 千絵
(72)【発明者】
【氏名】仲田 弘樹
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065813(JP,A)
【文献】特開2017-000076(JP,A)
【文献】特開2013-135618(JP,A)
【文献】特開2015-000010(JP,A)
【文献】特開2017-023018(JP,A)
【文献】しろなーさん,大量消費☆切って煮るだけ簡単トマトソース,クックパッド,2016年08月02日,https://cookpad.com/recipe/3999474,[検索日2022年6月2日]
【文献】mipoooooooo,王道ラタトゥイユ,クックパッド,2017年06月12日,https://cookpad.com/recipe/4574515,[検索日2022年6月10日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状パプリカ、糖類、ペプチド含有材料、及び水を含む混合物
であって、小麦粉ルウを含まない混合物の加熱物を含む
調味材であって、
小麦粉ルウを含む加熱調理
済み食品用調味材。
【請求項2】
前記粒状パプリカの含有量が、0.5~60質量%である、請求項1に記載の調味材。
【請求項3】
前記糖類の含有量が、3~35質量%である、請求項1又は2に記載の調味材。
【請求項4】
前記ペプチド含有材料の含有量が、0.1~8質量%である、請求項1乃至3のいずれかに記載の調味材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された調味材と、
小麦粉ルウを含む他の原料とを含有する、加熱調理済み食品。
【請求項6】
加熱調理済み食品が、加熱殺菌処理済み食品である請求項
5に記載の加熱調理済み食品。
【請求項7】
粒状パプリカ、糖類、ペプチド含有材料、及び水を含む混合物
であって、小麦粉ルウを含まない混合物を加熱する工程を備える、
小麦粉ルウを含む加熱調理
済み食品用調味材の製造方法。
【請求項8】
前記加熱する工程が、品温75℃以上で前記混合物を加熱する工程を有する、請求項
7に記載された製造方法。
【請求項9】
請求項
7又は8に記載された方法により、前記調味材を製造する工程と、
前記調味材を、
小麦粉ルウを含む他の原料と混合する工程と、
前記調味材と前記他の原料との混合物を加熱調理する工程と、
を備える、
加熱調理済み食品の製造方法。
【請求項10】
更に、前記加熱調理した混合物を加熱殺菌処理する工程を備える、請求項
9に記載の加熱調理済み食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理用調味材、加熱調理済み食品、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品等の加熱調理済み食品が知られている。加熱調理済み食品としては、カレー、シチュー、ハヤシソース等、様々な種類の製品が知られている。
【0003】
加熱調理済み食品の中の一種類として、トマトの風味及び食感を付した食品が知られている。そのような食品においては、加熱調理を経てもトマトのフレッシュな風味及び食感が感じられることが求められている。
【0004】
上記に関連して、例えば、特許文献1(特開2017-76号公報)には、粒状乾燥トマト、4質量%以上の糖分、及び水を含む混合物を、品温85℃以上で加熱処理して得た調味材を配合する工程を含む、粒状トマト含有加熱殺菌処理済み食品の製造方法が開示されている。特許文献1に記載の発明によれば、粒状トマトの甘みとフレッシュな風味及び酸味を有する、粒状トマト含有加熱殺菌処理済み食品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された製造方法においては、粒状乾燥トマトとして乾燥度が強いトマトを用いた場合、加熱調理済み食品に付与される風味及び食感が、トマト本来のそれとはやや異なるものになることがあった。
本発明の課題は、加熱調理済み食品に、トマト本来の風味及び食感により近い風味及び食感を付与する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の事項を含む。
[1]
粒状パプリカ、糖類、ペプチド含有材料、及び水を含む混合物の加熱物を含む、加熱調理用調味材。
[2]
前記粒状パプリカの含有量が、0.5~60質量%である、[1]に記載の調味材。
[3]
前記糖類の含有量が、3~35質量%である、[1]又は[2]に記載の調味材。
[4]
前記ペプチド含有材料の含有量が、0.1~8質量%である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の調味材。
[5]
[1]乃至[4]のいずれかに記載された調味材と、前記他の原料とを含有する、加熱調理済み食品。
[6]
前記他の原料が、小麦粉ルウ又はトマトソースを含む、[5]に記載の加熱調理済み食品。
[7]
加熱調理済み食品が、加熱殺菌処理済み食品である[5]又は[6]に記載の加熱調理済み食品。
[8]
粒状パプリカ、糖類、ペプチド含有材料、及び水を含む混合物を加熱する工程を備える、加熱調理用調味材の製造方法。
[9]
前記加熱する工程が、品温75℃以上で前記混合物を加熱する工程を有する、[8]に記載された製造方法。
[10]
[8]又は[9]に記載された方法により、前記調味材を製造する工程と、
前記調味材を、他の原料と混合する工程と、
前記調味材と前記他の原料との混合物を加熱調理する工程と、
を備える、
加熱調理済み食品の製造方法。
[11]
更に、前記加熱調理した混合物を加熱殺菌処理する工程を備える、[10]に記載の加熱調理済み食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱調理済み食品に、トマト本来の風味及び食感により近い風味及び食感を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
1:加熱調理用調味材
まず、本実施形態に係る加熱調理用調味材について説明する。
本発明において、「加熱調理用調味材」とは、他の原料と混合され、加熱調理されるために使用される調味材を意味する。加熱調理用調味材は、加熱殺菌処理済み食品用のものであることが好ましく、レトルト食品用のものであることがさらに好ましい。
【0010】
加熱調理用調味材は、粒状パプリカ、糖類、ペプチド含有材料、及び水を加熱混合する、すなわち煮込むことにより、得ることができる。
加熱温度は、例えば75℃以上であり、好ましくは80℃~100℃である。加熱時間は、例えば10~90分、好ましくは20~60分である。
【0011】
粒状パプリカは、トマトに似た風味を付与するために使用されている。また、粒状パプリカは、最終的に得られる食品に、煮込んだトマトの外観を付与する。
粒状パプリカとしては、例えば、粒径が1~20mm、好ましくは5~15mmとなるようにパプリカを細断したものが用いられる。ダイス状、乱切り状等のものを用いることができる。
原料となるパプリカとしては、特に限定されるものでは無く、赤パプリカ及び黄パプリカのいずれも使用できる。但し、よりトマトに似た外観を得る点から、赤パプリカが好ましく用いられる。パプリカとしては、生の材料を用いてもよいし、冷凍品を用いてもよいし、乾燥品を用いてもよい。生の材料か冷凍品が好ましい。
【0012】
糖類は、加熱調理用調味材に良好なトマトに似た風味を得るために使用される。
糖類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ショ糖、ブドウ糖、ハチミツ、及び果糖等を挙げることができ、好ましくはショ糖である。
【0013】
ペプチド含有材料も、糖類と同様に、加熱調理用調味材に良好なトマトに似た風味を得るために使用される。
ペプチド含有材料としては、例えば、酵母エキス、タンパク加水分解物、及び畜肉エキス等が挙げられ、好ましくは酵母エキスである。
【0014】
加熱調理用調味材を製造する際の混合物中の粒状パプリカの含有量(調味材の原料トータルの質量に占める仕込み量)は、例えば、0.5~60質量%、好ましくは1~30質量%である。乾燥品は、水戻ししたものを前記の範囲の量含有すればよい。
また、混合物中の糖類の含有量(仕込み量)は、例えば、3~35質量%、好ましくは6~30質量%である。
また、混合物中のペプチド含有材料の含有量(仕込み量)は、例えば、0.1~8質量%、好ましくは3~7質量%である。
【0015】
加熱調理用調味材には、上述した材料に加えて、必要に応じて、他の調味材原料が含まれていてもよい。他の調味材原料としては、特に限定されないが、例えば、パプリカ以外の野菜及び果物等が挙げられる。野菜又は果物としては、例えば、トマト原料(トマト、トマトペースト、トマトソース、トマトパウダー等)及びタマネギなどが挙げられる。好ましくは、トマト原料が用いられる。
加熱調理用調味材を製造する際の混合物中のパプリカ以外の野菜又は果物の含有量は、例えば3~35質量%、より好ましくは20~30質量%である。
【0016】
本実施形態に係る加熱調理用調味材においては、粒状パプリカが、糖類、ペプチド含有材料及び水と共に、予め加熱混合されている(煮込まれている)。これにより、粒状パプリカの風味がトマトの風味により近い風味に醸成し、組織が適度に軟化する結果、当該粒状パプリカを含む加熱調理調味材を他の原料と混合し、加熱調理した場合に、本来のトマトによく似た風味・食感(煮込まれたトマトの風味・食感)を付与することができる。また、粒状パプリカが、煮溶けたトマトによく似た外観を提供し、需要者の食欲を喚起する。
【0017】
2:加熱調理済み食品
上述の加熱調理用調味材は、他の原料と混合され、加熱調理され、加熱調理済み食品として提供される。以下に、加熱調理用調味材と他の原料とを含む加熱調理済み食品について説明する。
【0018】
加熱調理済み食品中(ただし、具材を除く)における加熱調理用調味材の含有量は、例えば、5~50質量%、好ましくは10~30質量%である。
また、加熱調理用調味材は、加熱調理済み食品(ただし、具材を除く)中の粒状パブリカの含有量が例えば0.2~30質量%、好ましくは0.5~15質量%となるような量で、使用される。粒状パプリカの乾燥品は、水戻ししたものを前記の範囲の量含有すればよい。
【0019】
他の原料としては、特に限定されるものでは無いが、小麦粉ルウ、トマト原料(トマト、トマトペースト、トマトソース、トマトパウダー等)、調味料、香辛料、及び水などが挙げられる。
小麦粉ルウとしては、小麦粉及び/又は澱粉と、食用油脂とを含む原料を常法により加熱処理して得られたものを用いることができる。
調味料としては、特に限定されるものではなく、例えば、エキス類(畜肉エキス、魚介エキス、野菜エキス、酵母エキス)、食塩等の無機塩、糖類、アスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、脂肪酸等のカルボン酸等の酸、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニン等のアミノ酸系調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系調味料等が挙げられる。
香辛料としては、例えば、カルダモン、クローブ、ナツメグ、フェヌグリーク、ローレル、フェンネル、コリアンダー、クミン、キャラウェー、タイム、セージ、陳皮、胡椒、唐辛子、マスタード、ジンジャー、ターメリック、パプリカ等から選択される1種類を用いることができる。複数種の香辛料を混合した香辛料としては、例えばカレーパウダーを挙げることができ、上記の香辛料から選ばれる2種以上、好ましくは5種以上を含むものを用いることができる。
【0020】
他の原料には、更に、各種の具材が含まれていてもよい。
具材は、動物性のものであっても、植物性のものであってもよい。
動物性の具材としては、例えば、鶏肉、豚肉、牛肉、及びシーフード等が挙げられる。
植物性の具材としては、例えば、ジャガイモ、ニンジン、ゴボウ、ダイコン等の根菜類;チェーチ、枝豆等の豆類;レンコン、アスパラ等の茎菜類;ホウレンソウ、ハクサイ、キャベツ等の葉菜類;ナス、トマト(粒状乾燥トマトを含む)、オクラ等の果菜類;ブロッコリー、カリフラワー等の花菜類;ワカメ、ヒジキ、コンブ等の藻類;シメジ、マッシュルーム、マイタケ等のきのこ類;パイナップル、リンゴ等の果実類;及びアーモンド、ゴマ等の種子類;粒状パプリカ等の香辛料を挙げることができる。トマト、粒状パプリカを具材として含むのが好ましい。
【0021】
好ましくは、加熱調理済み食品は、カレー、シチュー、デミグラスソース、ハヤシ等の各種ソース(煮込み食品を含む)、又はトマトスープ等の各種スープであり、カレーソースまたはハヤシソースであることがより好ましい。また流動状食品であることが望ましく、小麦粉等で粘性を付けた食品であることが特に望ましい。加熱調理済み食品は、トマト原料を含む食品であることが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る加熱調理済み食品は、例えば、以下に説明する方法により得ることができる。
まず、加熱調理用調味材を、他の原料と混合する。
【0023】
続いて、加熱調理用調味材と他の原料との混合物を加熱調理する。これにより、本実施形態に係る加熱調理済み食品が得られる。加熱調理する際の温度は、例えば、90℃以上100℃以下である。必要に応じて、前記の混合と加熱調理を同時に実施してもよい。
【0024】
なお、好ましくは、加熱調理する工程の後に、加熱調理用調味材と他の原料との混合物を容器に充填し、密閉してから、加熱殺菌処理する工程を含む。すなわち、加熱調理済み食品は、好ましくはレトルト食品、湯殺菌した食品、ホットパック食品等の加熱殺菌処理済み食品であり、レトルト食品が望ましい。前記の加熱調理及び加熱殺菌処理は、常法に従い同時に実施することもできる。
レトルト食品等に使用する容器は、加熱殺菌処理が可能なものであれば特に限定されない。例えば、パウチ状容器、口栓付きパウチ、チューブ状容器、ボトル状容器、缶及び瓶容器等が利用できる。シールして密封できる、パウチ状容器等を用いることが好ましい。
加熱殺菌は、例えば蒸気、熱水等を用いた方法により行うことができる。その条件は、求める食品の形態に応じて、殺菌を十分なものとし、食品の保存性を十分なものとするように設定すればよく、例えば、食品の温度(中心温度)が60℃以上100℃以下となるように加熱殺菌処理を行うことができる。加熱殺菌処理がホットパック殺菌の場合には、レトルト食品用組成物を予め加熱しておき、容器に充填後に上記温度を5秒以上5分以下の間保持することが好ましい。加圧加熱殺菌を行う場合には、100℃を越える温度で3分以上60分以下加熱する。例えば、120℃以上125℃以下の温度で、3分以上60分以下加熱することにより、殺菌処理することができる。
【0025】
以上、本実施形態に係る加熱調理用調味材及び加熱調理済み食品と、これらの製造方法について説明した。
本実施形態によれば、予め、粒状パプリカが、糖類、ペプチド含有材料及び水と共に加熱混合された加熱調理用調味材が用いられているため、最終的に得られる加熱調理済み食品や加熱殺菌処理済み食品に、トマトによく似た風味及び食感を付与することが可能となる。
加えて、粒状パプリカが、加熱調理済み食品や加熱殺菌処理済み食品中においてトマトが煮溶けたような外観を形成する。このような外観が形成されていることにより、トマト感に富む外観の点から好ましい。
なお、粒状パプリカを用いた場合であっても、本実施形態とは異なり、糖類、ペプチド含有材料及び水と共に加熱混合する工程を経ることなく粒状パプリカを用いた場合、即ち、加熱調理用調味材としてではなく、粒状パプリカを直接他の原料と混合して用いた場合には、加熱調理済み食品や加熱殺菌処理済み食品において、トマトによく似た風味、食感、外観を得ることはできない。
すなわち、本実施形態においては、粒状パプリカが、予め、所定の材料と共に加熱混合されていることが、トマトによく似た風味、食感及び所望の外観を得るにあたり重要である。
【0026】
(実施例)
以下、本発明についてより詳細に説明するため、本発明者らにより行われた実施例について説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されて解釈されるべきものでは無い。
【0027】
表1に示した組成にて、加熱調理用調味材の原料を加熱釜に入れ、撹拌しながら加熱処理を行い、実施例1~3及び比較例1に係る調味材を調製した。加熱処理の温度及び時間は、表1に記載の通りとした。なお、粒状のパプリカとしては、粒径5~15mmのダイス状の赤パプリカ又は黄パプリカの冷凍品を用いた。
【0028】
続いて、表2に記載された組成で、各実施例及び比較例に係る調味材を、小麦粉ルウ、調味料、香辛料及び水と95℃にて加熱混合して加熱調理し、カレーソースを得た。得られたカレーソースをパウチに充填密閉し、120~125℃、3~60分、レトルト殺菌処理を施した。
得られたカレーソースについて、官能評価により、「トマト本来の風味」、「トマト本来の煮溶けた外観」、及び「トマト本来の煮溶けた食感」を評価した。各項目は、以下に記載の基準で評価した。なお、各試験区は、トマトペーストの添加の有無に拘らず、カレーソースに煮込んだトマトの風味、外観及び食感が付与されているかどうか、という観点から評価した。
【0029】
(トマト本来の風味)
◎:煮込んだトマト特有の甘い風味が強く感じられる。
〇:煮込んだトマト特有の甘い風味が感じられるが、当該風味が◎より弱い。
△:煮込んだトマト特有の風味が弱い。
×:煮込んだトマト特有の風味が感じられない。
【0030】
(トマト本来の煮溶けた外観)
◎:トマトの煮溶けた、細かい粒状感のある外観が表現されている。
〇:トマトの煮溶けた、細かい粒状感のある外観が表現されているが、当該粒状感が◎より荒い。
△:×より原料のダイス状は崩れているが、トマトの煮溶けた外観がない。
×:略原料のダイス状のままで、トマトの煮溶けた外観がない。
【0031】
(トマト本来の煮溶けた食感)
◎:細かい粒状感と、煮溶けた口どけのあるトマトの食感が表現されている。
〇:細かい粒状感と、煮溶けた口どけのあるトマトの食感が表現されているが、当該食感が◎より劣る。
△:×よりダイス状は崩れているが、具材の様で、トマトの煮溶けた食感がない。
×:ダイス状の具材の様で、トマトの煮溶けた食感がない。
【0032】
結果を表2に示す。表2に示されるように、粒状パプリカを含まず、砂糖、酵母エキス及び水を含む混合物の加熱物である加熱調理用調味材と、粒状パプリカとを含む材料を加熱調理して得たレトルトカレーソースでは、トマト本来の風味及び食感と、煮溶けた外観を十分に再現できないことがわかった(比較例1)。
これに対して、本発明に係る、粒状パプリカ、糖類、ペプチド含有材料、及び水を含む混合物の加熱物である加熱調理用調味材を含む材料を加熱調理して得たレトルトカレーソースでは、トマト本来の風味及び食感と、煮溶けた外観を十分に再現できた(実施例1~3)。前記の加熱調理用調味材と、さらにトマトペーストを含む材料を加熱調理して得たレトルトカレーソースでは、トマト本来の風味をより良好に付与することができた(実施例1及び2)。なお、前記の性能は、各実施例において、レトルト殺菌処理を施す前の加熱調理したカレーソースにおいても達成されていた。
【表1】
【表2】
【0033】
比較例2
粒状パプリカを、生のトマトのへたを落とし、皮つきのままダイスカットして熱風乾燥した、一辺5mm以上15mm以下程度の粒状乾燥トマトにかえたこと以外は、実施例1と同様にレトルトカレーソースを調製した。
得られたカレーソースについて、前記と同様の基準で評価した結果、「トマト本来の風味:○」、「トマト本来の煮溶けた外観:○」、及び「トマト本来の煮溶けた食感:○」の評価であった。
粒状乾燥トマトによって、トマトの風味が与えられるが、乾燥加工を経たものであることにより、煮溶けたトマト本来の風味、外観及び食感を十分に達成できないと考えられる。
これに対して、本発明の、例えば実施例1において、トマトとは種類の異なる野菜である粒状パプリカを用いることで、意外にも、前記粒状乾燥トマトを用いた場合よりも、煮溶けたトマト本来の風味、外観及び食感を、より良好に達成できたことは、格段の効果といえる。
【0034】
実施例4
加熱調理用調味材の組成において、粒状パプリカを「1」から「0.5」に、水を「36」から「36.5」に、各々の使用割合にかえたこと以外は、実施例1と同様にレトルトカレーソースを調製した。
得られたカレーソースについて、前記と同様の基準で評価した結果、カレーソース中のパプリカの量が少ない場合も、「トマト本来の風味:◎」、「トマト本来の煮溶けた外観:◎」、及び「トマト本来の煮溶けた食感:◎」の評価であった。
【0035】
実施例5
加熱調理用調味材の組成において、粒状パプリカを「1」から「60」に、砂糖を「30」から「3」に、トマトペーストを「30」から「10」に、水を「36」から「24」に、各々の使用割合にかえたこと以外は、実施例1と同様にレトルトカレーソースを調製した。
得られたカレーソースについて、前記と同様の基準で評価した結果、カレーソース中のパプリカの量が多い場合も、「トマト本来の風味:◎」、「トマト本来の煮溶けた外観:◎」、及び「トマト本来の煮溶けた食感:◎」の評価であった。
【0036】
実施例6
加熱調理済み食品の組成において、加熱調理用調味材の使用割合を「10」から「5」にかえたこと以外は、実施例1と同様にレトルトカレーソースを調製した。
得られたカレーソースについて、前記と同様の基準で評価した結果、カレーソース中のパプリカの量が少ない場合も、「トマト本来の風味:◎」、「トマト本来の煮溶けた外観:◎」、及び「トマト本来の煮溶けた食感:◎」の評価であった。
【0037】
実施例7
加熱調理済み食品の組成において、加熱調理用調味材の使用割合を「10」から「50」にかえ、水を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にレトルトカレーソースを調製した。
得られたカレーソースについて、前記と同様の基準で評価した結果、カレーソース中のパプリカの量が多い場合も、「トマト本来の風味:◎」、「トマト本来の煮溶けた外観:◎」、及び「トマト本来の煮溶けた食感:◎」の評価であった。
【0038】
他の実施例
本発明者らが、実施例1のものと同様の調味材を用いて、常法に従って、トマト原料を含む食品である「ハヤシソース」、「トマトソース」、「ミネストローネ」、「ボルシチ」及び「ビーフシチュー」と、これらのレトルト食品を製造した結果、いずれにおいても、煮溶けたトマト本来の風味、外観及び食感が良好に再現できた。