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特許7161406ホタテ貝柱様繊維状カマボコと包装体及びそれらの製造方法
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  • 特許-ホタテ貝柱様繊維状カマボコと包装体及びそれらの製造方法 図1
  • 特許-ホタテ貝柱様繊維状カマボコと包装体及びそれらの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ホタテ貝柱様繊維状カマボコと包装体及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20221019BHJP
【FI】
A23L17/00 101A
A23L17/00 101B
A23L17/00 101C
A23L17/00 101E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018550199
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2017040016
(87)【国際公開番号】W WO2018088376
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2016219528
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004189
【氏名又は名称】日本水産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】村田 篤海
(72)【発明者】
【氏名】石原 邦昭
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-175054(JP,A)
【文献】特開昭58-028248(JP,A)
【文献】今日のお弁当[ニッスイの焼ホタテ弁],2016年4月25日, [検索日:2018年1月31日],<URL: http://blog.livedoor.jp/pihttp://willesdeng.exblog.jp/25157579>
【文献】ほぼホタテ…かねてつ,2015年9月23日 (水), [検索日:2018年1月31日],<URL: http://osaka.way-nifty.com/blog/2015/09/post-0987.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な溝を有する複数のシート状カマボコが巻き込まれた、繊維状カマボコであって、直径が2~5cm、高さが直径以下であり、外側に位置するシート状カマボコの厚みが0.7~1.2mmであって内側のシート状カマボコよりも薄いことを特徴とする、ホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
【請求項2】
さらに、外側のシートの外側に着色層を有する請求項1記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
【請求項3】
前記着色層は、焦がし醤油、メイラード反応の反応物、色素から選択される少なくとも一つを含有する請求項1または2記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
【請求項4】
カマボコの原料が、魚肉すり身、澱粉、食塩、糖、及び、遊離アミノ酸を含む調味料を含有するものである請求項1ないし3いずれか記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
【請求項5】
糖としてキシロース又はグルコースを含み、遊離アミノ酸としてグリシンを含むことを特徴とする請求項4記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかの項記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコが充填されている深絞り包装体。
【請求項7】
一つの包装体内に複数のホタテ貝柱様繊維状カマボコが互いに付着しない態様で充填されていることを特徴とする請求項6の深絞り包装体。
【請求項8】
平行な溝を有する複数のシート状カマボコを順次巻き込む、ホタテ貝柱様繊維状カマボコの製造方法であって、内側のシートとして0.8~1.7mmの厚さのシートを少なくとも2枚、外側のシートとして0.7~1.2mmの厚さであって内側のシートよりも薄いシートを順次巻き込み、直径が2~5cmの棒状の繊維状カマボコを製造し、そのさらに外側に着色層を付着させた後、長さを直径の長さ以下にカットすることを特徴とするホタテ貝柱様繊維状カマボコの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホタテ貝柱様繊維状カマボコに関し、詳しくは、風味、外観、食感ともにホタテ貝柱に酷似したホタテ貝柱様繊維状カマボコに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維状にしたカマボコを棒状に収束した製品が多く市販され、カニ足風カマボコ、カニカマなどと呼ばれている。薄いカマボコのシートに、食べたときにバラける程度の多数の平行な溝を付け、これを棒状にまきつけ製造する(特許文献1)。多くは、カニ風味がつけられ、表面を赤色に着色したカニ様の食品であるが、カニ以外にもホタテ風味の製品も提案されているが(特許文献2)、カニ風味のもののように商品として定着していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-28248号
【文献】特開2007-175054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その理由として、外観、特に本物のホタテの貝柱の色と同じ色調もさることながら、貝柱が口の中でほどよく繊維を感じるようにバラける感覚、そして焼き立ての香ばしさのような風味が不足していることがわかった。
本発明は上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、下記(1)~(9)によって本発明の目的が達成できることを見出した。
(1)平行な溝を有する複数のシート状カマボコが巻き込まれた、繊維状カマボコであって、直径が2~5cm、高さが直径以下であり、外側に位置するシート状カマボコの厚みが0.7~1.2mmであることを特徴とする、ホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
(2)さらに、外側のシートの外側に着色層を有する(1)記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
【0006】
(3)前記着色層は、焦がし醤油、メイラード反応の反応物、色素から選択される少なくとも一つを含有する(1)または(2)記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
(4)カマボコの原料が、魚肉すり身、澱粉、食塩、糖、及び、遊離アミノ酸を含む調味料を含有するものである(1)ないし(3)いずれか記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
(5)糖としてキシロース又はグルコースを含み、遊離アミノ酸としてグリシンを含むことを特徴とする(4)記載のホタテ貝柱様繊維状カマボコ。
(6)(1)ないし(5)いずれかのホタテ貝柱様繊維状カマボコが充填されている深絞り包装体。
【0007】
(7)一つの包装体内に複数のホタテ貝柱様繊維状カマボコが互いに付着しない態様で充填されていることを特徴とする(6)の深絞り包装体。
(8)平行な溝を有する複数のシート状カマボコを順次巻き込む、ホタテ貝柱様繊維状カマボコの製造方法であって、内側のシートとして0.8~1.7mmの厚さのシートを少なくとも2枚、外側のシートとして0.7~1.2mmの厚さのシートを順次巻き込み、直径が2~5cmの棒状の繊維状カマボコを製造し、そのさらに外側に着色層を付着させた後、長さを直径と同じか直径よりも短くカットすることを特徴とするホタテ貝柱様繊維状カマボコの製造方法。
(9)深絞り包装により一つの包装体内に複数のホタテ貝柱様繊維状カマボコを充填するホタテ貝柱様繊維状カマボコ包装体の製造方法において、深絞り包装体製造のための成形金型は複数の区分けを有し、該区分けのための壁高さが、深絞り包装体の深さよりも低いホタテ貝柱様繊維状カマボコ包装体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、繊維状カマボコに、本物のホタテの貝柱の色と同じ色調だけでなく、貝柱が口の中でほどよくほぐれるような繊維を感じるバラける食感、さらに、焼き立ての香ばしさを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は包装体を製造する概略図である。
図2】成形金型の1態様を上から見た概略図である。
図3】成形金型の1態様の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコは、平行な溝を有する複数のシート状カマボコを順次巻き込んだ、所定の直径と高さを有するホタテ貝柱様繊維状カマボコであって、外側に位置するシート状カマボコの厚みが、内側のシート状カマボコよりも薄いホタテ貝柱様繊維状カマボコであることを特徴とする。
【0011】
通常カニ脚用カマボコはカニ脚を模しているので直径に対して長さが長い形状となるが、ホタテ貝柱を模して製造されるホタテ貝柱様繊維状カマボコは高さが直径と同じかむしろ低い形状となる。そのため、カニ脚用と同じように製造すると、繊維状カマボコがほぐれやすく、崩れやすいものとなる。さらにホタテ貝柱に要求される食感はカニ脚とは異なる。
最後に巻く外側のシートの厚さを薄くすることにより、くずれにくく、形状を保持することができ、かつ、その存在感は薄いので、中心部のシートによる食感を邪魔しないものとなる。
【0012】
本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコは、基本的には通常のカニカマと同様の方法で製造することができる。すなわち、魚肉すり身を主原料とし、それに澱粉、塩、その他調味料を添加したカマボコ原料を混練した練肉をシート状に成形し、ドラムにて加熱した後に、繊維状にするための切れ目を入れ、棒状に巻いて成型、加熱、包装、加熱殺菌するという製造工程である。
【0013】
<ホタテ貝柱様繊維状カマボコの配合>
主原料は魚肉すり身である。カマボコ、竹輪などの原料として用いられる、白身魚のすり身であれば魚種は問わない。具体的には、スケトウダラ、パシフィックホワイティング、ホキ、ホッケ、ミナミダラ、ノーザンブルーホワイティング、タチウオ、エソ、グチ、イトヨリ、キンメダイなどが例示される。これらの魚肉を水晒しし、冷凍変性防止剤として糖などを添加した冷凍すり身は汎用性が高く、広く用いられている。
ホタテ貝柱様という特徴を出すために、原料に遊離アミノ酸と糖類を一定量添加するのが好ましい。魚肉すり身を主原料とし、味をホタテ貝柱に似せるために、ホタテ貝柱が含有する遊離アミノ酸量および組成に類似した遊離アミノ酸含量となるように調味料を添加するのが好ましい。
【0014】
ホタテ貝柱は3000mg/100g超の遊離アミノ酸を含有し、そのうちの約2/3はグリシンであるとの報告があることから、すなわち、ホタテ貝柱様繊維状カマボコを製造するに際しては、調味料として遊離アミノ酸を添加することが望ましく、ホタテ貝柱に実際に含まれる含量と同等又はそれ以上の遊離アミノ酸の含有量となるように添加するのが望ましい。
【0015】
更にはホタテ貝柱のアミノ酸組成から、添加する遊離アミノ酸の少なくとも半量以上にグリシンを使用することによりホタテ貝柱の味に近付けることができる。グリシンはアミノ酸を混合したアミノ酸調味料やホタテエキス等の風味調味料として添加することが可能である。
【0016】
冷凍魚肉すり身には、保存のためにある程度の糖類が含まれている。また、調味のために糖類、みりん類を使用することもある、これらの糖類と遊離アミノ酸がメイラード反応し、ホタテらしい色調を与える。メイラード反応による本物のホタテ貝柱との類似性はキシロースを使用した場合が最も高く、グルコースがそれに次ぐ。その他の糖類による着色への影響は大きくはないので、キシロースとグルコースの添加量を適正に調節すれば、好ましい色調をえることができる。
【0017】
キシロースを用いる場合、着色性がよいので原料の合計湿質量の0.05~1.0質量%、好ましくは、0.1~0.5質量%、特に好ましくは0.2~0.3質量%を添加する。グルコースを用いる場合は原料の合計湿質量の0.2~5.0質量%、好ましくは、0.5~2.5質量%を添加する。その他の糖類でもメイラード反応を起こす糖であれば使用できる。糖類はカマボコの原料と一緒に混合すればよい。
【0018】
メイラード反応は、通常の92℃50分というような殺菌工程を通すことによっても起こすことができる。最終製品となる前のいずれかの段階で、80~100℃、30~60分間の加熱工程を経ることによって、メイラード反応を生じさせることができる。本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコの殺菌工程としてはボイル殺菌が好ましい。
原料として用いる魚肉すり身の種類によって色が異なる場合もあり、そのような微妙な色調の調整に、適宜色素を使用することができる。
【0019】
<ホタテ貝柱様繊維状カマボコの製造>
本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコは、前記原材料を含有する練肉を、平行な溝を有する複数のシート状に形成し、順次巻き込んで、所定の太さ直径2~5cmの棒状に形成される。カニカマの製造において用いられる、通常の装置、方法を使用することができる。
【0020】
最初に、練肉をシート状に押し出し、ドラム上で加熱する。次いでシート状に加工した後のシート状カマボコに、溝付きロール等により平行な溝を付与させる。その溝の幅は、0.4~1.2mmであることが好ましく、0.6~1.0mmであることがさらに好ましい。この溝の深さは、シートが完全に裁断されない程度の切れ目であることが好ましく、食した時に口の中でバラける程度の深さである。最外層のシート状カマボコの切れ目は、形状を保持するため、内層よりも浅いのが好ましい。
【0021】
ホタテ貝柱様繊維状カマボコの直径は、巻き込むシート状カマボコであるシート状カマボコの幅と厚みによって適宜調整することができ、複数のシート状カマボコを順次巻き取ることにより、棒状の中央部まで均等に身を詰めることができる。
【0022】
本発明では、棒状に形成された時の最外層に位置するシート状カマボコの厚みが0.7~1.2mm、好ましくは0.8~1.1mm、さらに好ましくは、0.8~1.05mmであることを特徴とする。内側のシート状カマボコの厚みは0.8~1.7mm、好ましくは1.1~1.5mm、さらに好ましくは1.15~1.3mm程度が好ましい。最外層に位置するシート状カマボコの厚みは内側のシート状カマボコの厚みよりも薄くするのが好ましい。
【0023】
内側のシート状カマボコの枚数は、2~5枚であり、2~3枚が好ましい。それぞれのシート状カマボコの幅は、50~500mmの範囲で適宜選択することができ、100~300mmが好ましい。同じでも異なっても良い。最外層に位置するシート状カマボコの幅は目的とする製品の円周の1.5~2.5倍の幅が好ましい。
【0024】
本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコは、ホタテ貝柱に形状を酷似させるため、シート状カマボコを巻きこんだ長尺の棒状カマボコを、ホタテ貝柱様の所定の長さ(製品の高さに該当する)に切断する。その長さは直径と同じか、直径よりも短い。具体的には、10~30mmの範囲であることが好ましいが、直径との関係で適宜設定することができる。本物のホタテ貝柱の比率に似た比率が好ましい。
【0025】
<着色層>
本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコでは、最外層にホタテ様を醸し出すための着色層を設けることが好ましい。着色層は、ホタテ貝柱様繊維状カマボコと同様の配合の練肉に、焦がし醤油、「アミノ酸及び糖」(メイラード反応により褐色となる)、色素から選択される少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0026】
特に、焦がし醤油パウダー、焦がし醤油フレーバーの少なくともいずれかを原材料の0.1~5質量%添加することが好ましく、メイラード反応を起こすためにアミノ酸及び糖を併用するのが好ましい。焦がし醤油パウダー、焦がし醤油フレーバーは、市販のものを適宜使用することができる。メイラード反応を起こすための糖としては、キシロース、グルコース等の糖類、みりん等の調味料を用いるのが好ましい。
【0027】
本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコの着色層は、焼き目風に付着させるのが好ましい。具体的には、一面に着色層が均一に付着しているのではなく、多少のムラがあるように着色していることが好ましいため、ホタテ貝柱様繊維状カマボコの質量に対して、1~15質量%の範囲の着色した練肉を薄い層としてホタテ貝柱様繊維状カマボコに付着させ、着色させることが好ましい。特にホタテ貝柱様繊維状カマボコの質量の3~8質量%の着色練肉を用いるのが好ましい。
【0028】
付着させる方法としては、直接貼り付ける方法、合成樹脂シートに着色層を薄く塗りつけ、その合成樹脂シートで被着色体を包むことにより転写する方法等、カニカマの製造で用いられている、種々の方法を採用することができる。
【0029】
<深絞り包装>
上記の条件により製造したホタテ貝柱様繊維状カマボコは、大きさ、色、食感等がホタテ貝柱に非常に似ている。さらに深絞り包装することにより、より締まった食感にすることができる。しかしながら、複数のホタテ貝柱様繊維状カマボコを一緒に深絞り包装すると包装によりかかる圧力により、ホタテ貝柱様繊維状カマボコが相互に付着してしまう。そうすると、包装から取り出す時にうまく1個ずつ取り分けることができず、分けようとすると崩れてしまうことが起きる。
【0030】
そこで、相互の付着を予防する包装方法を検討したところ、深絞りの金型にホタテ貝柱様繊維状カマボコ同士が完全に付着しないよう分離する壁を設けて、その中にいれた状態で深絞り包装することにより、部分的には隣同士付着しても、壁がある部分は付着しないために、容易に1個ずつ取り分けることができることを見出した。
【0031】
本発明では、複数のホタテ貝柱様繊維状カマボコを充填する深絞り包装体の製造方法において、深絞り包装体製造のための成形金型に、図2及び3に示すような区分けを設け、該区分けのための壁高さが、深絞り包装体の深さよりも低いことを特徴とする。区分けの数は包装するホタテ貝柱様繊維状カマボコの数に応じて調節する。
【0032】
こうすることによって、包装体内でぴったり接触することもなく適度の間隔で収まるため、包装体を開封しホタテ貝柱様繊維状カマボコを取り出す際、相互に付着して崩れることなく、1つずつ取り出すことができる。また、深絞り包装により、より締まった食感となるため、食したときにも、ホタテ貝柱らしい、身のほぐれ感を出すことができる。
【0033】
成形金型の区分けは、包装する個数により設計する。図2は6つの区分けを設けた例である。例えば、直径25mm、高さ25mmのホタテ貝柱様繊維状カマボコを包装する場合、直径は70~100mm程度、中央の円形の直径は25~30mm程度であり、中央部の円形は5角形でもよい。区分けのための壁の高さは、充填するホタテ貝柱様繊維状カマボコの高さより小さいことが好ましく、高さの1/3~1/2が適当である。具体的には5~15mmである。壁の厚みA(図2)は、0.5~3mmであり、0.7~2.5mmが好ましい。
【0034】
深絞りに使用する包装用フィルムとしては、食用に用いることができるものであればよく、通常のポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物の積層体を使用することができ、無延伸ポリプロプレン、ナイロン、低密度ポリエチレンの積層体が好ましい。
【0035】
厚みは、80~200μmの範囲で適宜選択することができる。金型により成形するボトムフィルムと封止するためのトップフィルムは、同じでも異なっても良い。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
スケソウダラの冷凍すり身90kgに澱粉9kg、みりん1kg、食塩2.6kg、砂糖1kg、キシロース0.32kg、ホタテエキス他調味料7.76kg、水45kgを添加し均等に撹拌して練肉を調製後、A(厚さ1.2mm、幅170mm)2枚,B(厚さ1.0mm、幅130mm)1枚のシート状、に成型し、そのシート状練肉をそれぞれドラム加熱した。加熱したシート状カマボコに溝ロールによって溝(幅0.8mm)を入れ、溝を入れたシート状カマボコの繊維が縦方向に並ぶ方向であって、シート状カマボコBが外側になるように、径約25mmの棒状に巻き、棒状のカマボコを製造した。
【0037】
ついで、前記練肉に、さらに焦がし醤油パウダー600g、焦がし醤油フレーバー300gを添加した着色層用練肉を作製し、棒状カマボコ全質量の5質量%となる量を、合成樹脂シート状に塗り、その合成樹脂シートで棒状カマボコを包む方法で、棒状カマボコのほぼ全面に貼り付け、その後さらに加熱した。着色後の棒状カマボコの合成樹脂シートを剥がし、定寸(25mm)の長さにカットした。
【0038】
ついで図2、3に示すような成形金型(直径95mm、中央円形27mm、壁の高さ10mm、壁の厚さ2mm、深絞りの深さ30mm)を使用し、100μmのムルチ用低密度ポリエチレン/ナイロン/無延伸ポリプロピレン積層シートをボトムフィルムとし深絞り包装後、同じトップフィルムで真空封止、加熱殺菌(92℃ 50分)、冷却して、ホタテ貝柱様繊維状カマボコ包装体を得た。
【0039】
この包装されたホタテ貝柱様繊維状カマボコは、6個が適度に一体化し、かつ、圧力によりつぶれることなくボリューム感が維持され、また、容易に分離することができるものであった。さらに、ホタテ貝柱様繊維状カマボコについて食感の官能評価を行ったところ、焼き立ての香ばしさ、口の中でほどよく繊維状を感じるようにバラける感覚が、従来品よりも向上していることを確認した。
【0040】
<比較例1>
実施例1と同様の配合と方法で、シート状カマボコAを(厚さ1.2mm、幅170mm)1枚,Bを(厚さ1.2mm、幅160mm)1枚に調製し、ホタテ貝柱様繊維状カマボコを製造した。内側のシートを幅広の1枚にするとホタテ貝柱様に太く巻くため、中央に隙間ができてしまう。複数のシートに置き換えることにより、この隙間の問題が解決することがわかった。また、外側のシートの厚みを内側と同じにすると外側のシートの溝の深さが内側のシートと比べてわずかに浅いだけで、食感の差が大きく感じられた。外側のシートを薄くすることにより、全体として違和感のない食感が得られることがわかった。
【0041】
<比較例2>
実施例1と同様にホタテ貝柱様繊維状カマボコを深絞り包装する際に、区分けの壁がない金型で深絞り包装したところ、ホタテ貝柱様繊維状カマボコが相互に付着し、一つずつ分けようとしても、繊維状カマボコがくずれてしまい、うまく分離することができなかった。一つずつ完全に区分けした金型を用いたところ、一つずつが圧力により小さく締まってしまい、見栄えの悪いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のホタテ貝柱様繊維状カマボコは、ホタテ貝柱のほぐれ感を再現しており、焼きホタテの香ばしさ有するものであり、おつまみとして、またはサラダをはじめ各種料理素材として使用できる食品素材を提供することができる。
図1
図2
図3