(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】有機膜形成用組成物、半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20221019BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20221019BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20221019BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
G03F7/039 601
G03F7/26 511
H01L21/30 573
(21)【出願番号】P 2019125740
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】澤村 昂志
(72)【発明者】
【氏名】新井田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044022(JP,A)
【文献】特開2019-041059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
H01L 21/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される部分構造を繰り返し単位として有する重合体および有機溶剤を含有
し、前記一般式(1)中のW
2
で表される2価の有機基が下記のいずれかのものであることを特徴とする有機膜形成用組成物。
【化1】
(前記一般式(1)中、AR1、AR2は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、W
1は下記一般式(2)、(4)、(6)のいずれかのものであり、2種以上のW
1を組み合わせて用いてよく、W
2は
下記のいずれかのものである。)
【化2】
(前記一般式(2)中、AR3、AR4、AR5は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、AR3とAR4またはAR4とAR5の芳香環上の水素原子が結合した炭素原子同士を介して芳香環同士で橋かけ構造を形成してもよい。Yは下記一般式(3)で表される置換基である。)
【化3】
(R
3は単結合、または炭素数が20個以下の2価の有機基であり、R
4は水素または炭素数20個以下の1価の有機基である。)
【化4】
(前記一般式(4)中、AR
6、AR
7は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、n1は0または1であり、n1=0のときAR
6、AR
7はZを介して芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、n1=1のときAR
6、AR
7はZを介して橋かけ構造を形成し、Zは単結合または下記一般式(5)のいずれかである。Yは前記一般式(3)で表される置換基である。)
【化5】
【化6】
(前記一般式(6)中のAR
8はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環であり、Yは前記一般式(3)で表される置換基であり、n2、n3は、0≦n2≦4、0≦n3≦4、1≦n2+n3≦4の関係を満たす整数である。)
【化7】
【請求項2】
前記重合体が重量平均分子量1000~5000のものであることを特徴とする請求項
1に記載の有機膜形成用組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤は、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の有機膜形成用組成物。
【請求項4】
前記有機膜形成用組成物が更に界面活性剤および可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物。
【請求項5】
基板上に、請求項1から
4のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物が硬化した有機膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板。
【請求項6】
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、
被加工基板上に請求項1から
4のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物を回転塗布する工程、
前記有機膜形成用組成物が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る工程、
を含むことを特徴とする有機膜の形成方法。
【請求項7】
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、
被加工基板上に請求項1から
4のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物を回転塗布する工程、
前記有機膜形成用組成物が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上250℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成する工程、
不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る工程、
を含むことを特徴とする有機膜の形成方法。
【請求項8】
前記不活性ガス中の酸素濃度を1%以下とすることを特徴とする請求項
6又は
7に記載の有機膜の形成方法。
【請求項9】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることを特徴とする請求項
6から
8のいずれか一項に記載の有機膜の形成方法。
【請求項10】
被加工体上に請求項1~
4のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、
前記有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
前記ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを形成する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
被加工体上に請求項1~
4のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、
前記有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
前記ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成する工程、
前記BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARCと前記ケイ素含有レジスト中間膜に順次エッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
被加工体上に請求項1~
4のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、
前記有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
前記無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクをエッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
被加工体上に請求項1~
4のいずれか一項に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、
前記有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
前記無機ハードマスクの上にBARCを形成する工程、
前記BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARCと前記無機ハードマスクに順次エッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、
前記パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
前記無機ハードマスクをCVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項
12又は
13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせを用いることを特徴とする請求項
10~
14のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いることを特徴とする請求項
10~
15のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項
10~
16のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることを特徴とする請求項
17に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造工程で使用される有機膜形成用組成物、前記組成物を用いた半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、多層レジスト法によるパターン形成方法、及び前記組成物に好適に用いられる重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の高集積化と高速度化は、汎用技術として光露光を用いたリソグラフィー技術(光リソグラフィー)における光源の短波長化によるパターン寸法の微細化によって達成されてきた。このような微細な回路パターンを半導体装置基板(被加工基板)上に形成するためには、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板を加工する方法が用いられる。しかしながら、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しないため、近年では多層レジスト法による基板加工が一般化している。この方法は、フォトレジスト膜(以下、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0003】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この方法は、被加工基板上に有機樹脂含有組成物からなる有機膜材料を用いて塗布、焼成することにより有機膜(以下、有機膜)を成膜し、その上にケイ素含有樹脂含有組成物からなるレジスト中間膜材料を用いて塗布、焼成することによりケイ素含有膜(以下、ケイ素含有レジスト中間膜)として成膜し、その上に一般的な有機系フォトレジスト膜を形成する。当該レジスト上層膜をパターニングした後、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行うと、有機系のレジスト上層膜はケイ素中間膜に対して良好なエッチング選択比を取ることが出来るため、レジスト上層膜パターンをケイ素中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持たないレジスト上層膜や、被加工基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト上層膜を用いても、通常、ケイ素中間膜はレジスト上層膜に比べて同等以下の膜厚であるため、容易にケイ素中間膜にパターンを転写することができる。続いてパターン転写されたケイ素中間膜をドライエッチングマスクとして酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングで有機膜にパターン転写すれば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つ有機膜にパターン転写することができる。このパターン転写された有機膜パターンをフッ素系ガスや塩素系ガスなどを用いてドライエッチングで基板にパターン転写することが出来る。
【0004】
一方、半導体装置の製造工程における微細化は、光リソグラフィー用光源の波長に由来する本質的な限界に近づきつつある。そのため、近年においては微細化に頼らない半導体装置の高集積化が検討されており、その方法の一つとしてマルチゲート構造等の複雑な構造を有する半導体装置が検討されており、一部は既に実用化されている。このような構造を多層レジスト法で形成する場合、被加工基板上で形成されたホール、トレンチ、フィン等の微小パターンを空隙なく膜で埋め込んだり、段差やパターン密集部分とパターンのない領域を膜で埋め込んで平坦化(planarization)可能な有機膜材料を適用することが出来る。このような有機膜材料を用いて段差基板上に平坦な有機膜表面を形成することによって、その上に成膜するケイ素中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、光リソグラフィーの焦点裕度やその後の被加工基板の加工工程におけるマージン低下を抑制することが出来る。これにより、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。一方、単層レジスト法では、段差やパターンのある被加工基板を埋めるためには、上層レジスト膜の膜厚が厚くなり、それによる露光現像後のパターン倒れや、露光時の基板からの反射によりパターン形状劣化など、露光時のパターン形成裕度が狭くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが困難である。
【0005】
更に次世代の半導体装置の高速度化の手法として、例えば、歪シリコンやガリウムヒ素などを用いた電子移動度の高い新規材料やオングストローム単位で制御された超薄膜ポリシリコン等の精密材料の適用も検討され始めている。しかしながら、このような新規精密材料が適用されている被加工基板では、上記のような有機膜材料による平坦化膜形成時の条件、例えば空気中、300℃以上の成膜条件においては、空気中の酸素によって当該材料が腐食され、半導体装置の高速度化が材料設計どおりの性能を発揮することが出来ず、工業的な生産として成り立つ歩留まりに達成しない可能性がある。そこで、このような高温条件下の空気による基板の腐食に起因する歩留まりの低下を避けるため、不活性ガス中で成膜出来る有機膜材料が期待されている。
【0006】
従来、フェノール系やナフトール系化合物に対して縮合剤としてケトン類やアルデヒド類などのカルボニル化合物や芳香族アルコール類を用いた縮合樹脂類が多層レジスト法用の有機膜形成用材料として知られている。例えば、特許文献1に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特許文献2に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特許文献3に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特許文献4に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂などが例示できる。このような材料は、架橋剤としてのメチロール化合物による架橋や、空気中の酸素の作用による芳香環のα位での酸化とその後の縮合による架橋反応による硬化作用により、次工程で使用される塗布膜材料に対する溶剤耐性を持つ膜として成膜されているため、不活性ガス中での硬化膜が形成できず、高温条件下の熱分解による膜厚変動、埋め込み特性や平坦化特性の劣化などを抑制させることができなかった。
【0007】
更に、三重結合を硬化性樹脂の分子間架橋基として適用している材料が知られている。例えば、特許文献5~10などが知られている。これらの材料では、前述のメチロール由来の架橋だけでなく三重結合の重合による架橋により、溶剤耐性を有する硬化膜が形成されている。しかしながら、これらの有機膜形成用材料は、基板に形成されたパターンの埋め込み特性や平坦化特性が十分ではなかった。
【0008】
また、含窒素型重合体を含有する材料の例として複素環を含む共重合樹脂(特許文献11、12)、カルバゾール型樹脂(特許文献13、14)、第二アミノ基を有するノボラック(特許文献15)、ジアリールアミンノボラック(特許文献16)、インドロカルバゾールノボラック(特許文献17)などが知られている。しかしながら、これらの材料について窒素原子上の三重結合を有する置換基に関する例はなく、不活性ガス中での硬化膜の形成、高温条件下の熱分解による膜厚変動、埋め込み特性や平坦化特性などについては知られていない。
【0009】
さらに含窒素化合物として特許文献18、19のような単分子化合物を用いた中間膜材料も例示されるが、単分子化合物を用いているため複雑な形状を持つ基板上への塗布性やベーク時に生じる低分子起因の昇華物の問題などが硬化後の有機膜の耐熱性やエッチング耐性の諸特性に課題を残すものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-128509号公報
【文献】特開2006-293298号公報
【文献】特開2006-285095号公報
【文献】特開2010-122656号公報
【文献】特開2010-181605号公報
【文献】国際公開第2014-208324号パンフレット
【文献】特開2012-215842号公報
【文献】特開2016-044272号公報
【文献】特開2016-060886号公報
【文献】特開2017-119671号公報
【文献】特開2013-137334号公報
【文献】国際公開第2018-212116号パンフレット
【文献】国際公開第2010-147155号パンフレット
【文献】国際公開第2013-005797号パンフレット
【文献】国際公開第2015-098594号パンフレット
【文献】国際公開第2013-047516号パンフレット
【文献】国際公開第2017-094780号パンフレット
【文献】国際公開第2016-147989号パンフレット
【文献】国際公開第2018-164267号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、昇華物が少なく基板への成膜性が良好な有機膜を形成できる重合体、及び前記重合体を含有する有機膜形成用組成物を提供することを目的とする。更に、本発明は前記組成物を用いた半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、及びパターン形成方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するために、本発明では、下記一般式(1)で示される部分構造を繰り返し単位として有する重合体および有機溶剤を含有する有機膜形成用組成物を提供する。
【化1】
(前記一般式(1)中、AR1、AR2は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、W
1は下記一般式(2)、(4)、(6)のいずれかのものであり、2種以上のW
1を組み合わせて用いてよく、W
2は少なくとも1つ以上の芳香環を有する炭素数6~80の2価の有機基である。)
【化2】
(前記一般式(2)中、AR3、AR4、AR5は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、AR3とAR4またはAR4とAR5の芳香環上の水素原子が結合した炭素原子同士を介して芳香環同士で橋かけ構造を形成してもよい。Yは下記一般式(3)で表される置換基である。)
【化3】
(R
3は単結合、または炭素数が20個以下の2価の有機基であり、R
4は水素または炭素数20個以下の1価の有機基である。)
【化4】
(前記一般式(4)中、AR
6、AR
7は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、n1は0または1であり、n1=0のときAR
6、AR
7はZを介して芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、n1=1のときAR
6、AR
7はZを介して橋かけ構造を形成し、Zは単結合または下記一般式(5)のいずれかである。Yは前記一般式(3)で表される置換基である。)
【化5】
【化6】
(前記一般式(6)中のAR
8はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環であり、Yは前記一般式(3)で表される置換基であり、n2、n3は、0≦n2≦4、0≦n3≦4、1≦n2+n3≦4の関係を満たす整数である。)
【0013】
このような有機膜形成用組成物であれば、空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、成膜性に優れ、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜形成用組成物となる。
【0014】
前記一般式(1)中のW
2で表される2価の有機基が下記のいずれかのものであることが好ましい。
【化7】
【0015】
このような部分構造をW2に導入することで耐熱性が向上するとともにエッチング耐性、よれ耐性が優れた有機膜形成に好適な重合体となる。
【0016】
前記重合体は重量平均分子量1000~5000のものであることが好ましい。
【0017】
Mwがこのような範囲の重合体を含む有機膜形成用組成物であれば、有機溶剤への溶解性を損なわず、ベーク時のアウトガスを抑制できる。
【0018】
前記有機溶剤は、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0019】
このような有機膜形成用組成物であれば、前記重合体に高沸点溶剤の添加による膜の熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
【0020】
前記有機膜形成用組成物が更に界面活性剤および可塑剤のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0021】
このような成分を含む有機膜形成用組成物であれば、塗布性、又は埋め込み/平坦化特性のより優れた有機膜形成用組成物とすることができる。
【0022】
また、本発明では、基板上に前記有機膜形成用組成物が硬化した有機膜が形成された半導体装置製造用基板を提供する。
【0023】
本発明の有機膜形成用組成物から形成された有機膜であれば、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦性不足による有機膜表面の凹凸のない有機膜となる。前記有機膜で平坦化された本発明の半導体装置基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。
【0024】
本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に前記有機膜形成用組成物を回転塗布する工程、前記有機膜形成用組成物が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る工程を含む有機膜の形成方法を提供する。
【0025】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に前記有機膜形成用組成物を回転塗布する工程、前記有機膜形成用組成物が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上250℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成する工程、不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る工程を含む有機膜の形成方法を提供する。
【0026】
本発明の有機膜の形成方法で形成された半導体装置の製造工程で適用される有機膜は、高い耐熱性と高度な埋め込み/平坦化特性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0027】
このとき、前記不活性ガス中の酸素濃度を1%以下とすることが好ましい。
【0028】
本発明の有機膜形成用組成物であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱しても、昇華物を発生することなく十分に硬化し、また、基板への密着性に優れる有機膜を形成することができる。
【0029】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の有機膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0031】
本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、前記ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0032】
本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、前記ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成する工程、前記BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARCと前記ケイ素含有レジスト中間膜に順次エッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0033】
本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、前記無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクをエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0034】
本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、前記無機ハードマスクの上にBARCを形成する工程、前記BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARCと前記無機ハードマスクに順次エッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0035】
本発明の有機膜形成用組成物は、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができる。半導体装置の製造工程において、このような本発明のパターン形成方法で回路パターンを形成すれば、歩留まり良く半導体装置を製造できる。
【0036】
このとき、前記無機ハードマスクをCVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0037】
本発明のパターン形成方法では、例えばこのような方法で無機ハードマスクを形成することができる。
【0038】
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。
【0039】
本発明のパターン形成方法では、現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いることが好ましい。
【0040】
本発明のパターン形成方法では、このような回路パターンの形成手段及び現像手段を好適に用いることができる。
【0041】
前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0042】
前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることが好ましい。
【0043】
本発明のパターン形成方法であれば、前記被加工体を加工してパターンを形成することができる。
【0044】
さらに、本発明では、下記一般式(1)で示される部分構造を繰り返し単位として有する重合体を提供する。
【化8】
(前記一般式(1)中、AR1、AR2は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、W
1は下記一般式(2)、(4)、(6)のいずれかのものであり、2種以上のW
1を組み合わせて用いてよく、W
2は少なくとも1つ以上の芳香環を有する炭素数6~80の2価の有機基である。)
【化9】
(前記一般式(2)中、AR3、AR4、AR5は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、AR3とAR4またはAR4とAR5の芳香環上の水素原子が結合した炭素原子同士を介して芳香環同士で橋かけ構造を形成してもよい。Yは下記一般式(3)で表される置換基である。)
【化10】
(R
3は単結合、または炭素数が20個以下の2価の有機基であり、R
4は水素または炭素数20個以下の1価の有機基である。)
【化11】
(前記一般式(4)中、AR
6、AR
7は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、n1は0または1であり、n1=0のときAR
6、AR
7はZを介して芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、n1=1のときAR
6、AR
7はZを介して橋かけ構造を形成し、Zは単結合または下記一般式(5)のいずれかである。Yは前記一般式(3)で表される置換基である。)
【化12】
【化13】
(前記一般式(6)中のAR
8はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環であり、Yは前記一般式(3)で表される置換基であり、n2、n3は、0≦n2≦4、0≦n3≦4、1≦n2+n3≦4の関係を満たす整数である。)
【0045】
このような重合体であれば、W1部位に導入された三重結合を有す置換基の作用により空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、成膜性に優れ、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる重合体となる。また、繰り返し単位に含まれるカルド構造に起因する立体障害により結晶化を防ぐため成膜性が向上するとともに熱流動性を損なわずに耐熱性、エッチング耐性を付与することができる。
【0046】
前記一般式(1)中のW
2で表される2価の有機基が下記のいずれかのものであることが好ましい。
【化14】
【0047】
このような重合体であればエッチング耐性、よれ耐性を両立した有機膜形成に有用な重合体となる。さらに硬化時の膜シュリンクが抑制することにより、優れた埋め込み/平坦化特性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本発明の重合体は、W1で示される部分構造に導入された三重結合を有する置換基の作用により基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても硬化し、高度な埋め込みおよび平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するために有用な重合体となる。また、この重合体を含む有機膜形成用組成物は、優れた埋め込み/平坦化特性、塗布性を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性等の諸特性を兼ね備えた有機膜を形成する材料となる。そのため、例えば、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法といった多層レジスト法における有機膜材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用組成物から形成される有機膜は、耐熱性に優れるため、前記有機膜上にCVDハードマスクを形成する場合でも熱分解による膜厚変動が無く、パターン形成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図2】本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例の説明図である。
【
図3】実施例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
【
図4】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
上述のように、基板の腐食を防止するため、不活性ガス中の成膜条件、例えば、300℃以上においても昇華物が発生することなく、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機膜を形成できるとともに、当該有機膜上にCVDハードマスクを形成する場合においても、熱分解による有機膜の膜厚変動のない有機膜形成材料、前記材料を用いたパターン形成方法に有用な化合物の開発が求められていた。
【0051】
通常、有機膜を形成する際には、有機膜形成に有用な化合物を有機溶剤で溶解して組成物とし、これを半導体装置の構造や配線等が形成されている基板上に塗布して、焼成することで有機膜を形成する。前記組成物の塗布直後は基板上の段差構造の形状に沿った塗布膜が形成されるが、前記塗布膜を焼成すると、硬化するまでの間に有機溶剤の殆どが蒸発し、基板上に残った前記化合物によって有機膜が形成される。本発明者らは、このとき基板上に残った前記化合物が十分な熱流動性を有するものであれば、熱流動によって塗布直後の段差形状を平坦化し、平坦な膜を形成することが可能であることに想到した。
【0052】
本発明者らは、更に鋭意検討を重ね、下記一般式(1)で示される重合体であれば、W1で示される部分構造に導入された三重結合を有す置換基の作用により、空気中のみならず、不活性ガス中においても従来の下層膜材料と同等の熱硬化性を有し、かつ、架橋基である三重結合による硬化反応の際に副生物が発生せず、また、熱流動性が良好であるため、高度な埋め込み/平坦化特性を有し、良好なドライエッチング耐性とCVDハードマスクを形成する場合においても熱分解による塗布膜厚変動の無い耐熱性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えるものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0053】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示される部分構造を繰り返し単位として有する重合体および有機溶剤を含有する有機膜形成用組成物である。
【化15】
(前記一般式(1)中、AR1、AR2は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、W
1は下記一般式(2)、(4)、(6)のいずれかのものであり、2種以上のW
1を組み合わせて用いてよく、W
2は少なくとも1つ以上の芳香環を有する炭素数6~80の2価の有機基である。)
【化16】
(前記一般式(2)中、AR3、AR4、AR5は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、AR3とAR4またはAR4とAR5の芳香環上の水素原子が結合した炭素原子同士を介して芳香環同士で橋かけ構造を形成してもよい。Yは下記一般式(3)で表される置換基である。)
【化17】
(R
3は単結合、または炭素数が20個以下の2価の有機基であり、R
4は水素または炭素数20個以下の1価の有機基である。)
【化18】
(前記一般式(4)中、AR
6、AR
7は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、n1は0または1であり、n1=0のときAR
6、AR
7はZを介して芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、n1=1のときAR
6、AR
7はZを介して橋かけ構造を形成し、Zは単結合または下記一般式(5)のいずれかである。Yは前記一般式(3)で表される置換基である。)
【化19】
【化20】
(前記一般式(6)中のAR
8はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環であり、Yは前記一般式(3)で表される置換基であり、n2、n3は、0≦n2≦4、0≦n3≦4、1≦n2+n3≦4の関係を満たす整数である。)
【0054】
さらに、本発明は、下記一般式(1)で示される部分構造を繰り返し単位として有する重合体である。
【化21】
(前記一般式(1)中、AR1、AR2は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、W
1は下記一般式(2)、(4)、(6)のいずれかのものであり、2種以上のW
1を組み合わせて用いてよく、W
2は少なくとも1つ以上の芳香環を有する炭素数6~80の2価の有機基である。)
【化22】
(前記一般式(2)中、AR3、AR4、AR5は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、AR3とAR4またはAR4とAR5の芳香環上の水素原子が結合した炭素原子同士を介して芳香環同士で橋かけ構造を形成してもよい。Yは下記一般式(3)で表される置換基である。)
【化23】
(R
3は単結合、または炭素数が20個以下の2価の有機基であり、R
4は水素または炭素数20個以下の1価の有機基である。)
【化24】
(前記一般式(4)中、AR
6、AR
7は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、n1は0または1であり、n1=0のときAR
6、AR
7はZを介して芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、n1=1のときAR
6、AR
7はZを介して橋かけ構造を形成し、Zは単結合または下記一般式(5)のいずれかである。Yは前記一般式(3)で表される置換基である。)
【化25】
【化26】
(前記一般式(6)中のAR
8はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環であり、Yは前記一般式(3)で表される置換基であり、n2、n3は、0≦n2≦4、0≦n3≦4、1≦n2+n3≦4の関係を満たす整数である。)
【0055】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
[重合体]
本発明の有機膜形成用組成物は下記一般式(1)で示される部分構造を繰り返し単位とする重合体を含有するものである。
【化27】
(前記一般式(1)中、AR1、AR2は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、W
1は下記一般式(2)、(4)、(6)のいずれかのものであり、2種以上のW
1を組み合わせて用いてよく、W
2は少なくとも1つ以上の芳香環を有する炭素数6~80の2価の有機基である。)
【化28】
(前記一般式(2)中、AR3、AR4、AR5は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、AR3とAR4またはAR4とAR5の芳香環上の水素原子が結合した炭素原子同士を介して芳香環同士で橋かけ構造を形成してもよい。Yは下記一般式(3)で表される置換基である。)
【化29】
(R
3は単結合、または炭素数が20個以下の2価の有機基であり、R
4は水素または炭素数20個以下の1価の有機基である。)
【化30】
(前記一般式(4)中、AR
6、AR
7は置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、n1は0または1であり、n1=0のときAR
6、AR
7はZを介して芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、n1=1のときAR
6、AR
7はZを介して橋かけ構造を形成し、Zは単結合または下記一般式(5)のいずれかである。Yは前記一般式(3)で表される置換基である。)
【化31】
【化32】
(前記一般式(6)中のAR
8はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環であり、Yは前記一般式(3)で表される置換基であり、n2、n3は、0≦n2≦4、0≦n3≦4、1≦n2+n3≦4の関係を満たす整数である。)
【0057】
前記一般式(2)式で示される部分構造としては下記のものを具体的に例示することができる。これらの芳香環上に置換基を有してもよく、置換基としては、水酸基、トリフルオロメチル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基およびアルケニル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数3~10のアルキニルオキシ基、アルケニルオキシ基、炭素数6~10のアリール基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、スルホン酸基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。この中でもインデノフルオレンが耐熱性、エッチング耐性付与の観点から好ましい。
【0058】
【0059】
また、前記一般式(3)で示される置換基Yとしては具体的に下記のものを例示することができる。下記式中の*は(2)式中のN原子への結合部位を示す。これらの中で中間体合成の容易さ、工業原料の入手の容易さからプロパルギル基、ブチニル基が好ましい。
【0060】
【0061】
前記一般式(4)で示される部分構造として下記のものを具体的に例示することができる。これらの芳香環上に置換基を有してもよく、置換基としては、水酸基、トリフルオロメチル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基およびアルケニル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数3~10のアルキニルオキシ基、アルケニルオキシ基、炭素数6~10のアリール基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、スルホン酸基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。この中でもフェニルナフチルアミン、カルバゾールを部分構造として持つものが工業原料の入手性、耐熱性、溶剤溶解性の観点から好ましい。下記式中のYは前記と同じである。
【化35】
【0062】
前記一般式(6)で示される部分構造として下記のものを具体的に例示することができる。これらの芳香環上に置換基を有してもよく、置換基としては水酸基、トリフルオロメチル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数6~10のアリール基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、スルホン酸基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。この中でも原料入手の容易さ、耐熱性の観点からナフタレン環を有するものが好ましい。
【0063】
【0064】
【0065】
また、前記一般式(1)で示される重合体中のW
2で表される2価の有機基が下記のいずれかのものであることが好ましい。
【化38】
【0066】
前記一般式(1)としては下記構造式で示されるものなどを例示することができ、これらの芳香環上に置換基を有してもよい。置換基としては、水酸基、トリフルオロメチル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基、アルケニル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数3~10のアルキニルオキシ基、アルケニルオキシ基、炭素数6~10のアリール基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、スルホン酸基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。下記式中のn4は1~10の整数である。
【0067】
【0068】
【0069】
さらに、前記重合体のMw(重量平均分子量)が1000~5000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0070】
このような分子量であれば、有機溶剤への溶解性を確保でき、ベーク時に生じる昇華物を抑制することができる。また重合体の熱流動性が良好なものとなるため、組成物に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となる有機膜を形成することができる。
さらに本発明の重合体は下記一般式で示されるいずれかの部分構造を繰り返し単位として有していてもよい。本発明の重合体がこれらの部分構造を有することにより炭素密度が高められ優れたよれ耐性、エッチング耐性を付与することができる。
【化41】
【0071】
[重合体の製造方法1]
本発明の重合体は、下記に示す3級アルコールまたはアルキルエーテル化合物を用いた重縮合により合成することができ、重縮合にはW1またはW2を連結基としてもつ3級アルコールまたはアルキルエーテルを単独または2種以上用いることもできる。これらは要求される特性に応じて適宜選択し組み合わせることができる。下記式中のAR1、AR2、W1、W2は前記と同じであり、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0072】
【0073】
前記重合体は、通常、有機溶媒中で酸触媒の存在下、室温または必要に応じて冷却または加熱下で得ることが出来る。用いられる酸触媒として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類を用いることができる。
【0074】
用いられる溶媒としては、特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0075】
反応方法としては、前記AR1、AR2およびW1で構成される化合物およびアルデヒド、3級アルコールなどをモノマーとして用い、触媒である酸触媒を一括で仕込む方法、モノマーを分散または溶解後、触媒を一括または分割により添加する方法や溶剤で希釈し滴下する方法、触媒を分散後または溶解後、モノマーを一括または分割により添加する方法や、溶剤で希釈し滴下する方法がある。反応終了後、反応に使用した触媒を除去するために有機溶剤で希釈後、分液洗浄を行い、目的物を回収できる。
【0076】
さらにこれらの反応には前記以外のモノマーとは別の重縮合可能な化合物を用いて共重縮合することも可能である。共重縮合可能な化合物としては下記のものを例示することができる。これらの芳香環上にはビニル基、アリル基、プロパルギル基、アリール基、アリルオキシ基などの置換基を有してもよい。エッチング耐性、溶剤溶解性付与の観点からナフタレン環、フルオレン構造、カルバゾール構造を有すものが好ましく、これらは前記方法で重縮合を行う際に同時または別途添加し共重縮合することができる。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
分液洗浄を行う際に使用する有機溶剤としては、目的物を溶解でき、水と混合しても2層分離するものであれば特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物などを挙げることが出来る。この際に使用する洗浄水は、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1~5回程度である。
【0081】
分液洗浄の際に系内の酸性成分を除去するため、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0082】
更に、分液洗浄の際に系内の金属不純物または塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0083】
前記塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0084】
前記塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。洗浄回数は1回以上行えばよいが、好ましくは1~5回程度である。中性水としては、前記脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0085】
更に、分液操作後の反応生成物は減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜形成用組成物を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30質量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
【0086】
このときの溶剤としては、重合体を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0087】
[重合体の製造方法2(別法)]
更に、(2)、(4)で表される部分構造を有す重合体は、下記に示す窒素上に水素を置換基として有する化合物と3級アルコールまたはアルキルエーテル化合物を用いて前記重合体の製造方法1と同様に重縮合により中間体を得た後(Step1)、窒素上の水素原子をYに変換する(Step2)方法で得ることも可能である。AR1、AR2、AR3、AR4、AR5、AR6、AR7、W2、R、Yは前記と同じである。
【0088】
【0089】
Step2は、Yの構造を窒素原子上に導入できる反応であれば特に限定は無いが、前記式のように、Yのハロゲン化物又はトシレート、メシレートと塩基触媒を用いたN-アルキル化反応、遷移金属触媒を用いたカップリング反応等を例示できる。前記式中のXはハロゲン、トシル基又はメシル基である。
【0090】
置換反応に用いられる塩基触媒としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合等が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、遷移金属触媒を用いる場合は銅粉末、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酢酸銅、水酸化銅、硝酸銅等の銅触媒、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム触媒等を用いることができ、これらを前述の塩基触媒と組み合わせることもできる。
【0091】
別法で用いられる溶媒としては、前記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、水等が挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。
【0092】
反応方法及び化合物の回収方法については重合体の製造方法1と同様の方法によって回収することができる。
【0093】
さらに前記一般式(6)で表される部分構造を有する重合体のうちOYを置換基として有する重合体は、下記に示す水酸基を置換基として有する化合物と3級アルコールまたはアルキルエーテル化合物を用いて前述の重合体の製造方法1、2と同様に重縮合により中間体を得た(Step1)後、水酸基を置換反応によりYを導入する(Step2)方法でも得ることも可能である。
【0094】
【0095】
Step2は、Yを導入できる反応であれば特に限定は無いが、例えばYのハロゲン化物またはトシレート、メシレートと塩基触媒を用いた置換反応などが例示できる。前記式中のXはハロゲン、トシル基またはメシル基を表す。
【0096】
前記置換反応に用いられる塩基触媒としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合等が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
このときに用いられる溶媒としては、前記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、水等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0098】
反応方法及び化合物の回収方法については、重合体の製造方法1、2と同様の方法によって回収することができる。
【0099】
前記重合体の調製には、2種以上のY-XやY-Xとは異なるハロゲン化物やトシレート及びメシレートを要求性能に合わせて組み合わせることが可能である。平坦化特性の向上に寄与する側鎖構造、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造を含む化合物を任意の割合で組み合わせることができる。これらの化合物を用いて製造した重合体を用いた有機膜形成用組成物は埋め込み/平坦化特性とエッチング耐性を高い次元で両立することが可能となる。
【0100】
以上のように、本発明の重合体であれば、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えるものとなる。
【0101】
なお、本発明において、平坦化特性とは、基板の表面を平坦化する性能のことである。本発明の重合体を含有する有機膜形成用組成物であれば、例えば、
図1に示されるように、基板1上に有機膜形成用組成物3’を塗布し、加熱して有機膜3を形成することによって、基板1における100nmの段差を30nm以下まで低減することが可能である。なお、
図1に示される段差形状は、半導体装置製造用基板における段差形状の典型例を示すものであって、本発明の重合体を含有する有機膜形成用組成物によって平坦化することのできる基板の段差形状は、もちろんこれに限定されるものではない。
【0102】
[有機膜形成用組成物]
また、本発明では、有機膜形成用組成物であって、(A)上述の本発明の重合体及び(B)有機溶剤を含有する有機膜形成用組成物を提供する。なお、本発明の有機膜形成用組成物において、上述の本発明の重合体は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
本発明の有機膜形成用組成物において使用可能な有機溶剤としては、前記重合体、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等の材料に含まれる構成成分が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0091)~(0092)段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0104】
このような有機膜形成用組成物であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の重合体を含有するため、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えるものとなる。
【0105】
更に、本発明の有機膜形成用組成物には有機溶剤として、前記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤の混合物)。高沸点有機溶剤としては、本発明の重合体を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコール、モノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0106】
前記高沸点溶剤の沸点は、有機膜形成用組成物を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、更に好ましくは200℃~300℃である。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば沸点が高いためベーク後も膜中に揮発せずに残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0107】
また、前記高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性の劣化につながったりする恐れがない。
【0108】
このような有機膜形成用組成物であれば、本発明の重合体に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えるものとなる。
【0109】
本発明の有機膜形成用組成物においては、硬化反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加することができる。酸発生剤には熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0061)~(0085)段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0110】
前記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、本発明の重合体100質量部に対して好ましくは0.05~50質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0111】
本発明の有機膜形成用組成物には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の(0142)~(0147)記載のものを用いることができる。
【0112】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、(E)架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0113】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0114】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。
【0115】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0116】
【化48】
(式中、R
6は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Y
1は炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0117】
【化49】
(式中、R
6aは炭素数1~4のアルキル基である。Y
aは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0118】
以上のように、本発明の有機膜形成用組成物であれば、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。従って、本発明の有機膜形成用組成物は、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスクを用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスク及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法等といった多層レジスト法の有機膜材料として極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用組成物は、不活性ガス中における成膜においても副生物が発生することなく、優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、多層レジスト法以外の半導体装置製造工程における平坦化材料としても好適に用いることができる。
【0119】
[半導体装置製造用基板]
また本発明では、基板上に、前記有機膜形成用組成物が硬化した有機膜が形成されたものである半導体装置製造用基板を提供する。
【0120】
本発明の有機膜形成用組成物から形成された有機膜であれば、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦性不足による有機膜表面の凹凸のない有機膜となる。前記有機膜で平坦化された半導体装置基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。
【0121】
[有機膜の形成方法]
有機膜を形成するための加熱成膜工程は1段ベーク、2段ベークまたは3段以上の多段ベークを適用することが出来るが、1段ベークまたは2段ベークが経済的に好ましい。1段ベークによる成膜は、例えば、50℃以上600℃以下の温度で5~7200秒間の範囲で行うが、150℃以上500℃以下の温度で10~3600秒間の範囲で行うのが好ましい。このような条件で熱処理することで、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させることが出来る。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素中間膜を適用する場合は、ケイ素中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機膜を成膜すると、ケイ素中間膜形成用組成物による有機膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない有機膜を形成することができる。
【0122】
CVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0123】
一方、2段ベークによる成膜は、一段目のベークとして、空気中の酸素による基板の腐食の影響を考えると、空気中での処理温度の上限は、例えば、250℃以下好ましくは200℃以下50℃以上で5~600秒間の範囲で行う。2段目のベーク温度としては、1段目のベーク温度より高く、600℃以下好ましくは500℃以下200℃以上の温度で、10~7200秒間の範囲で行う。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素中間膜を適用する場合は、ケイ素中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機膜を成膜すると、ケイ素中間膜形成用組成物による有機膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない有機膜を形成することができる。
【0124】
2段ベークでCVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0125】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板の腐食を防止するため、被加工基板を酸素濃度1%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜の形成方法を提供する。
【0126】
この有機膜の形成方法では、例えば、まず、上述の本発明の有機膜形成用組成物を、被加工基板上に回転塗布する。回転塗布後、2段ベークでは、まず、空気中、50℃以上250℃以下でベークした後、好ましくは酸素濃度1%以下の雰囲気で2段目のベークをする。1段ベークの場合は、初めの空気中での1段目のベークをスキップすればよい。なお、ベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示出来る。本発明の有機膜形成用組成物であれば、このような不活性ガス雰囲気中で焼成しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。
【0127】
また、本発明の有機膜の形成方法では、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが出来る。上述のように、本発明の有機膜形成用組成物は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。つまり、本発明の有機膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0128】
なお、形成される有機膜の厚さは適宜選定されるが、30~20,000nmとすることが好ましく、50~15,000nmとすることがより好ましい。
【0129】
また、前記有機膜の形成方法は、本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜用の有機膜を形成する場合と、平坦化膜用の有機膜を形成する場合の両方に適用可能である。
【0130】
本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に前記有機膜形成用組成物を回転塗布し、前記有機膜形成用組成物が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る有機膜の形成方法を提供する。
【0131】
さらに本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に前記有機膜形成用組成物を回転塗布し、前記有機膜形成用組成物が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上250℃以下の温度で5秒~600秒、好ましくは10~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下、好ましくは250℃以上の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る有機膜の形成方法を提供する。
【0132】
本発明の有機膜の形成方法で形成された、半導体装置の製造工程で適用される有機膜は、高い耐熱性と高度な埋め込み/平坦化特性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0133】
この有機膜の形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用組成物を、被加工基板上に回転塗布(スピンコート)する。スピンコート法を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。回転塗布後、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。なお、このベークにより、有機膜形成用組成物中の溶媒を蒸発させることができるため、有機膜上にレジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜を形成する場合にも、ミキシングを防止することができる。
【0134】
[パターン形成方法]
<ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法>
本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、前記ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0135】
被加工体としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、前記基板上に被加工層として前記金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0136】
被加工層としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0137】
なお、被加工体を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金であることが好ましい。
【0138】
また、被加工体として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0139】
被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する際には、上述の本発明の有機膜の形成方法を適用すればよい。
【0140】
次に、有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成する。ケイ素含有レジスト中間膜材料としては、ポリシロキサンベースの中間膜材料が好ましい。ケイ素含レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜形成用材料として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダント構造またはポリシロキサン構造中に有し、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0141】
次に、ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成する。レジスト上層膜材料としては、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。レジスト上層膜材料をスピンコート後、60~180℃で10~300秒間の範囲でプリベークを行うのが好ましい。その後常法に従い、露光を行い、更に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0142】
次に、レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0143】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。また、ナノインプリント、これらの組み合わせを用いることができる。
【0144】
また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0145】
次に、回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する。レジスト上層膜パターンをマスクにして行うケイ素含有レジスト中間膜のエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて行うことが好ましい。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを形成する。
【0146】
次に、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして有機膜にエッチングでパターンを転写する。ケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスに対して有機物に比較して高いエッチング耐性を示すため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンをマスクにして行う有機膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。これにより、有機膜パターンを形成出来る。
【0147】
次に、パターンが転写された有機膜をマスクにして被加工体にエッチングでパターンを転写する。次の被加工体(被加工層)のエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工体がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスによるエッチングで行った場合、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。一方、基板加工を塩素系、臭素系ガスによるエッチングで行った場合は、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを剥離するために、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0148】
本発明の有機膜形成用組成物を用いて得られる有機膜は、上記のような被加工体のエッチング時のエッチング耐性に優れたものとすることができる。
【0149】
[ケイ素含有レジスト中間膜と有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、前記ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成する工程、前記BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARCと前記ケイ素含有レジスト中間膜に順次エッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0150】
なお、この方法は、ケイ素含有レジスト中間膜とレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0151】
有機反射防止膜(BARC)は、公知の有機反射防止膜材料を用いてスピンコートで形成することができる。
【0152】
[無機ハードマスクを用いた3層レジスト法]
また本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、前記無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクをエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0153】
なお、この方法は、有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成する以外は、前記ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0154】
ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)から選ばれる無機ハードマスクは、CVD法やALD法等で形成することができる。ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号パンフレット等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nmである。無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成するときの基板温度は300~500℃となるために、下層膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明の有機膜形成用組成物を用いて形成される有機膜は高い耐熱性を有しており、300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
【0155】
[無機ハードマスクと有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する工程、前記有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、前記無機ハードマスクの上にBARCを形成する工程、前記BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARCと前記無機ハードマスクに順次エッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程、前記パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして前記被加工体にパターンを形成する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【0156】
なお、この方法は、無機ハードマスクとレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記の無機ハードマスクを用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0157】
特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0158】
ここで、本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例を
図2(A)~(F)に示す。3層レジスト法の場合、
図2(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、
図2(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、
図2(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、
図2(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてケイ素含有レジスト中間膜4をドライエッチング加工し、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを形成する。次いで、
図2(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aをマスクとして、有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する。更に、
図2(F)に示されるように、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。
【0159】
無機ハードマスクを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4を無機ハードマスクに変更すればよく、BARCを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARCを形成すればよい。BARCのエッチングは、ケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングを行ってもよい。
【0160】
以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法によって、被加工体に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例】
【0161】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn、分子量分布とも称される。)を求めた。
【0162】
合成例 重合体の合成
重合体(A1)~(A18)の合成には、下記に示す化合物群B:(B1)~(B16)、化合物群C:(C1)~(C4)を用いた。
【0163】
【0164】
【0165】
[合成例1]化合物(A1)の合成
化合物(B1)を50.5g、化合物(C1)50.0g及び1,2-ジクロロエタン400gを窒素雰囲気下内温50℃で懸濁液とした。メタンスルホン酸20.0gをゆっくりと加え、発熱が止むのを確認した後、内温70℃に昇温し8時間反応を行った。室温まで冷却後、トルエン1000gを加え、有機層を純水300gで6回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え均一溶液とした後、メタノール1000gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール600gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2320、Mw/Mn=1.85であった。
【0166】
【0167】
[合成例2~18]重合体(A2)~(A18)の合成
表1に示される化合物群B、化合物群Cを用いた以外は、合成例1と同じ反応条件で、表2に示されるような重合体(A2)~(A18)を生成物として得た。
【0168】
【0169】
[合成例19]化合物(A19)の合成
5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾール32.4g、化合物(C2)50.0g及び1,2-ジクロロエタン400gを窒素雰囲気下内温50℃で懸濁液とした。メタンスルホン酸20.0gをゆっくりと加え、発熱が止むのを確認した後、内温70℃に昇温し8時間反応を行った。室温まで冷却後、トルエン1000gを加え、有機層を純水300gで6回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え均一溶液とした後、メタノール1000gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール600gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A19)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2430、Mw/Mn=1.65であった。
【0170】
【0171】
[合成例20]化合物(A20)の合成
カルバゾール22.3g、化合物(C3)50.0g及び1,2-ジクロロエタン400gを窒素雰囲気下内温50℃で懸濁液とした。メタンスルホン酸20.0gをゆっくりと加え、発熱が止むのを確認した後、内温70℃に昇温し8時間反応を行った。室温まで冷却後、トルエン1000gを加え、有機層を純水300gで6回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え均一溶液とした後、メタノール1000gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール600gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A20)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2270、Mw/Mn=1.68であった。
【0172】
【0173】
[合成例21]化合物(A21)の合成
合成例20で合成した重合体(A20)を20.0g、テトラブチルアンモニウムヨージド0.5g、25%水酸化ナトリウム水溶液8.4g、及びトルエン100gを窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。分散液にブチルブロマイド1.3gとプロパルギルブロマイド2.6gの混合液をゆっくりと滴下し、内温50℃で24時間反応を行った。室温まで冷却後、トルエン200gを加え、水層を除去した。さらに有機層を3.0%硝酸水溶液60gで2回、純水60gで5回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え、メタノール400gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール300gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A21)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2670、Mw/Mn=1.74であった。
【0174】
【0175】
[合成例22]化合物(A22)の合成
合成例20で合成した重合体(A20)を20.0g、テトラブチルアンモニウムヨージド0.5g、25%水酸化ナトリウム水溶液8.4g、及びトルエン100gを窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。分散液にブチルブロマイド4.3gをゆっくりと滴下し、内温50℃で24時間反応を行った。室温まで冷却後、トルエン200gを加え、水層を除去した。さらに有機層を3.0%硝酸水溶液60gで2回、純水60gで5回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え、メタノール400gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール300gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A22)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2650、Mw/Mn=1.77であった。
【0176】
【0177】
[合成例23]化合物(A23)の合成
2,7-ジヒドロキシナフタレン21.0g、化合物(C2)50.0g及び1,2-ジクロロエタン400gを窒素雰囲気下内温50℃で懸濁液とした。メタンスルホン酸20.0gをゆっくりと加え、発熱が止むのを確認した後、内温70℃に昇温し8時間反応を行った。室温まで冷却後、トルエン1000gを加え、有機層を純水300gで6回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル800gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、ジイソプロピルエーテル500gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A23)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2370、Mw/Mn=1.82であった。
【0178】
【0179】
[合成例24]化合物(A24)の合成
化合物(A23)を20.00g、炭酸カリウム8.7g、及びジメチルホルムアミド80gを窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした。プロパルギルブロミド5.2gをゆっくり滴下し、内温50℃で16時間反応を行った。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン200g、純水100gを加え均一化した後、水層を除去した。更に有機層を3.0%硝酸水溶液60gで2回、純水60gで5回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え、メタノール400gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール300gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A24)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2580、Mw/Mn=1.89であった。
【0180】
【0181】
[合成例25]化合物(A25)の合成
カルバゾールを60.0g、9-フルオレノン40.0g、3-メルカプトプロピオン酸5ml、及び1,2-ジクロロエタン300mlを窒素雰囲気下内温70℃で均一溶液とした後、メタンスルホン酸10mlをゆっくりと加え、内温70℃で24時間反応を行った。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水100gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF200gを加え均一溶液とした後、メタノール1000gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別、メタノール600gで2回洗浄を行い回収した。回収したポリマーを70℃で真空乾燥することで(A25)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2880、Mw/Mn=2.29であった。
【0182】
【0183】
[合成例26]化合物(A26)の合成
窒素雰囲気下、2-アセチル-9-エチルカルバゾール15.0g、塩化チオニル14.9gおよびエタノール2.8gを加え、80℃で8時間反応を行った。室温まで冷却後、反応溶液に純水50gおよびジクロロメタン50gを加え、分液水洗を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF50gを加え均一溶液とした後、メタノール200gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A26)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=690、Mw/Mn=1.03であった。
【0184】
【0185】
[合成例27]化合物(A27)の合成
窒素雰囲気下、N-エチルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒド17.8g、2,6-ジヒドロキシナフタレン25.6g、p-トルエンスルホン酸3.9gおよび1,4-ジオキサン100gを加え、90℃で6時間反応を行った。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン200gを加え、有機層を純水50gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘプタン400gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘプタン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A27)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=540、Mw/Mn=1.02であった。
【0186】
【0187】
上記で得られた重合体および化合物の構造式、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を表2に一覧にして示す。
【表2】
【0188】
有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL1~14)の調製
前記重合体または化合物(A1)~(A27)、添加剤として架橋剤(CR1、CR2)、酸発生剤(AG1)、高沸点溶剤として(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃、(S2)γ-ブチロラクトン:沸点204℃および(S3)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃を用い、FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及び/又はシクロヘキサノン(CyHO)溶媒中に表3に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-1~14)をそれぞれ調製した。
【0189】
【0190】
以下に用いた架橋剤(CR1)、(CR2)および酸発生剤(AG1)を示す。
【化62】
【0191】
実施例1 溶媒耐性測定(実施例1-1~1-23、比較例1-1~1-14)
上記で調製した有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-1~14)をシリコン基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下400℃で60秒間焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。
【0192】
【0193】
表4に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例1-1~1-23)は、PGMEA処理後の残膜率が99%以上あり、窒素雰囲気下においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。それに対して比較例1-1~1-14において、架橋剤と熱酸発生剤が添加されていない比較例1-1~1-7ではPGMEA処理後の残膜率がすべて50%未満となり十分な溶剤耐性が発現せず、比較例1-8~1-14のように溶剤耐性を発現させるためには架橋剤および熱酸発生剤の添加が必要となった。この結果より、本発明の重合体の三重結合を含む置換基により熱硬化反応が起き、溶剤耐性が発現し硬化膜が形成されていることがわかる。
【0194】
実施例2 耐熱特性評価(実施例2-1~2-23、比較例2-1~2-14)
前記有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-1~14)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、180℃で60秒間、焼成して200nmの塗布膜を形成し、膜厚を測定した。この基板を更に酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃でさらに10分間焼成して膜厚を測定した。これらの結果を表5に示す。
【0195】
【0196】
表5に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物を使用した実施例2-1~2-23は、450℃での焼成後も膜厚減少が1%未満であり、450℃の焼成後でも膜厚を保持していることから高い耐熱性を有していることがわかる。それに対して比較例2-1~2-14では本発明の有機膜形成用組成物に比べて大きな膜厚減少が起きており、特に単分子化合物を用いた比較例2-6、2-7については昇華物起因のため膜厚減少がさらに大きい結果となった。また、架橋剤を添加し硬化させた比較例2-8~2-14においても熱分解による膜厚減少を抑制することができず10%以上の膜厚減少が起きている。本発明の有機膜形成用組成物を使用した実施例2-1~2-23は、窒素雰囲気下で450℃焼成後において180℃焼成後の膜厚を維持しており、不活性ガス下において優れた耐熱性を示すことがわかる。
【0197】
実施例3 埋め込み特性評価(実施例3-1~3-23、比較例3-1~3-14)
図3のように、前記有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-1~14)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成し、有機膜8を形成した。使用した基板は
図3(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiO
2ウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表6に示す。埋め込み特性に劣る有機膜材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な有機膜形成用組成物を用いた場合は、本評価において、
図3(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜8が充填される。
【0198】
【0199】
表6に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例3-1~3-23)は、ボイドを発生すること無くホールパターンを充填することが可能であり、良好な埋め込み特性を有することを確認出来た。一方、比較例3-1~3-14では、ボイドが発生し埋め込み特性が不良であることが確認された。この結果から、本発明の有機膜形成用組成物は、三重結合を含む置換基の作用により熱硬化反応により耐熱性が確保され、ボイドの発生が無く埋め込みを行うことができた。一方、比較例3-1~3-14においては、架橋剤を用いて硬化膜を形成したものであっても窒素雰囲気下では耐熱性が不足しているためボイドが発生し、良好な埋め込み特性が得られなかった。
【0200】
実施例4 平坦化特性評価(実施例4-1~4-23、比較例4-1~4-12)
有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-1~5、8~14)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(
図4(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有する下地基板9(SiO
2ウエハー基板)上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差(
図4(K)中のdelta10)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表7に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを、通常膜厚約0.2μmの有機膜形成用組成物を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。なお、比較UDL―6および7についてはベーク後の膜厚減少が大きすぎるため平坦化特性の評価を行うことができなかった。
【0201】
【0202】
表7に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例4-1~4-23)は、比較例4-1~4-12に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。比較例4-1~4-12においては高温ベークにより生じる膜減りが大きいため、段差上部と段差下部の膜厚差が強調され平坦性が悪化するため上記のような結果となった。また、比較例4-11、4-12においては単分子化合物であっても架橋剤を添加することにより熱流動性が阻害され平坦化特性が良い結果とならなかった。高沸点溶剤を添加した実施例4-21~4-23と添加していない実施例4-5、4-9、4-15をそれぞれ比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることがわかる。
【0203】
実施例5 パターン形成試験(実施例5-1~5-23、比較例5-1~5-7)
前記有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-8~14)を、それぞれ、300nmのSiO2膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒焼成し、有機膜(レジスト中間膜)を形成した。その上にCVD-SiONハードマスクを形成し、更に有機反射防止膜材料(ARC-29A:日産化学社製)を塗布して210℃で60秒間ベークして膜厚80nmの有機反射防止膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。なお、比較UDL―1~UDL-7については溶剤耐性を確保できなかったため以後のパターン形成試験に進むことはできなかった。
【0204】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、下記式で示されるポリマー(RP1)100質量部、下記式で示される酸発生剤(PAG1)6.6質量部、下記式で示される塩基性化合物(Amine1)0.8質量部を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含むPGMEA2500質量部中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0205】
【0206】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、下記式で示される保護膜ポリマー(PP1)100質量部を、ジイソアミルエーテル2700質量部及び2-メチル-1-ブタノール270質量部からなる有機溶剤中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0207】
【0208】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C、NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光量を変えながら露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、ラインアンドスペースパターンを得た。
その後、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにして有機反射防止膜とCVD-SiONハードマスクをエッチング加工してハードマスクパターンを形成し、得られたハードマスクパターンをマスクにして有機膜をエッチングして有機膜パターンを形成し、得られた有機膜パターンをマスクにしてSiO2膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0209】
レジストパターンのSiONハードマスクへの転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CF4ガス流量 75sccm
O2ガス流量 15sccm
時間 15sec
【0210】
ハードマスクパターンの有機膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
O2ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0211】
有機膜パターンのSiO2膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
C5F12ガス流量 20sccm
C2F6ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
O2
ガス流量 60sccm
時間 90sec
【0212】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察した結果を表8に示す。
【表8】
【0213】
表8に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例5-1~5-23)の結果より、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。比較例5-1~5-7においては耐熱性が不足するもののパターンを形成することはできた。
【0214】
実施例6 パターン形成試験(実施例6-1~6-23、比較例6-1~6-7)
前記有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-8~14)を、それぞれ、トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiO2ウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒焼成した以外は、実施例5と同じ方法で塗布膜を形成し、パターニング、ドライエッチングを行ない、出来上がったパターンの形状を観察した。結果を表9に示す。
【0215】
【0216】
表9に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例6-1~6-23)のいずれもレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例6-1~6-7においては架橋剤の添加により溶剤耐性が得られて硬化膜となっているが、耐熱性が不足しているためパターンの埋め込みが不良を起こしているため、パターン加工時にパターン倒れが発生し、最終的に良好なパターンを得ることが出来なかった
【0217】
実施例8 塗布性試験(実施例7-1~7-23、比較例7-1~7-4)
前記有機膜形成用組成物(UDL-1~23、比較UDL-6、7、13、14)を表10に示すBare-Si基板、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理をした基板、SiON処理をした基板上にそれぞれ塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下400℃で60秒焼成し膜厚200nmの有機膜を形成した。形成後の有機膜を光学顕微鏡(Nikon社製ECLIPSE L200)を用いて塗布異常がないか観察を行った。確認結果を表10に示す。
【0218】
【0219】
表10に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例7-1~7-23)で形成した有機膜は基板依存性がなく、塗布異常がない均一な有機膜を形成できた。それに対して単分子化合物を用いて有機膜を形成した比較例7-1~7-4においては単分子化合物を用いているため基板によっては凝集がおきやすく、ハジケとみられるピンホール状の塗布欠陥が多数観察された。本発明の重合体を用いることで基板依存性なく均一な塗布膜が形成可能となり、基板依存性なく良好な有機膜を形成可能なことがわかる。
【0220】
以上のことから、本発明の重合体を含有する本発明の有機膜形成用組成物であれば、酸素を含まない不活性ガス下においても400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つため、多層レジスト法に用いる有機膜材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0221】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0222】
1…基板、 2…被加工層、 2a…パターン(被加工層に形成されるパターン)、
3…有機膜、 3’…有機膜形成用組成物、 3a…有機膜パターン、
4…ケイ素含有レジスト中間膜、 4a…ケイ素含有レジスト中間膜パターン、
5…レジスト上層膜、 5a…レジスト上層膜パターン、 6…露光部分、
7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…有機膜、
9…巨大孤立トレンチパターンを有する下地基板、 10…有機膜、
delta10…トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差。