(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】硬化性エポキシ樹脂組成物、及びそれを用いた繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20221019BHJP
C08G 59/46 20060101ALI20221019BHJP
C08G 59/06 20060101ALI20221019BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221019BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08G59/46
C08G59/06
C08K7/02
C08J5/24 CFC
(21)【出願番号】P 2019545040
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2018034908
(87)【国際公開番号】W WO2019065470
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2017190417
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 康幸
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕一
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-201321(JP,A)
【文献】特開平08-020654(JP,A)
【文献】特開2017-149988(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080035(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035459(WO,A1)
【文献】特開2017-101227(JP,A)
【文献】特開2010-248479(JP,A)
【文献】特開2010-265371(JP,A)
【文献】特開2016-222935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
C08J 5/04-5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃で液状となる液状エポキシ樹脂(A)、ノボラック型エポキシ樹脂(B)、固体の重量平均分子量1万以上の高分子成分であって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるか、又はフェノキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂の両方を含む高分子成分(C)、ジシアンジアミド(D)、及びイミダゾール系硬化助剤(E)を必須成分とし、前記(A)~(E)成分の合計100質量部の内、液状エポキシ樹脂(A)が10~35質量部であり、高分子成分(C)が10~25質量部であり、硬化前のガラス転移温度が0℃以上であることを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【請求項2】
上記ノボラック型エポキシ樹脂(B)が、下記一般式(1)で表されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15~60面積%の割合で構成される請求項1に記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【化1】
(1)
(式中、mは0以上の整数である)
【請求項3】
イミダゾール系硬化助剤(E)の構造中にトリアジン環構造を有する請求項1に記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【請求項4】
90℃での粘度が1000~10,000mPa・sである請求項1に記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物に、強化繊維を配合してなることを特徴とする繊維強化複合材料。
【請求項6】
強化繊維の体積含有率が25~75%である請求項
5に記載の繊維強化複合材料。
【請求項7】
請求項
5に記載の繊維強化複合材料を、プリプレグコンプレッションモールディング法で成形及び硬化することを特徴とする成形体の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬化、低粘度かつ長時間の粘度安定性に優れる樹脂組成物であり、室温でのハンドリング時にタック性が低いため取り扱いが容易でありながら、硬化時に高い耐熱性と靱性を有する成形物が得られる、繊維強化複合材料のマトリクス樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料はガラス繊維、アラミド繊維や炭素繊維等の強化繊維と、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂等の熱硬化性マトリクス樹脂から構成され、軽量かつ、強度、耐食性や耐疲労性等の機械物性に優れることから、航空機、自動車、土木建築およびスポーツ用品等の構造材料として幅広く適応されている。
【0003】
繊維強化複合材料は、熱硬化性のマトリクス樹脂が予め強化繊維へ含浸されたプリプレグを用いるオートクレーブ成形法、強化繊維へ液状のマトリクス樹脂を含浸させる工程と熱硬化による成形工程を含むフィラメントワインディング成形法や、レジントランスファーモールディング法等の手法によって成形される。この中でオートクレーブ成形法では予め強化繊維へ樹脂が含浸されたプリプレグを積層したのち、減圧することで各層を密着させ、オートクレーブにて加圧・加熱することで高品質な成形物を得ることができる。しかしながら、この方法では減圧工程及びオートクレーブによる硬化工程が長いため生産性が低いという欠点を有している。そこで、生産性を向上させる手法として予め積層したプリプレグを金型にて加熱・加圧することで成形及び樹脂を硬化させて繊維強化複合材料を得るプリプレグコンプレッションモールディング法(PCM法)が開発されている。
【0004】
PCM法は、短時間で熱硬化する熱硬化性樹脂を炭素繊維などの強化繊維に予備含浸させたプリプレグを作成し、このプリプレグをあらかじめ成形物の形状に合わせてパターンカット、ラミネート、プリフォーム賦形を行う。その後、このプリフォームを、高出力油圧プレス機を用いて高圧高温短時間で成形することで所望の繊維強化複合材料を得ることができる。
【0005】
このPCM法に用いられるプリプレグに要求される諸特性としては一般的な機械物性に優れることはもちろんであるが、同時に取扱いを容易にするため貯蔵安定性に優れながら成形時の硬化温度において硬化時間が短いことが求められている。これは硬化時間を短くすることで限られた生産設備の中での生産性を向上させることが可能となるためである。
【0006】
PCM法ではプレス成型前に行われる作業においてプリプレグを室温にて積層する工程があるが、この工程においてプリプレグ表面にタック性(表面のべたつき)が強いと、積層時の位置あわせにおいて修正を行うことが困難となり作業性が悪化してしまう。さらにはプリプレグが意図しない部分に張り付いたりすることでしわや積層不良が発生すると、不良品となるため歩留まりが低下してしまう。このため、生産性を向上させるためにタック性の低い材料が要求されている。
【0007】
また、PCM法においてはプリプレグに樹脂を含浸させているが、この樹脂には熱硬化性の樹脂が使用されている。この熱硬化性樹脂については先に述べた貯蔵安定性と速硬化性が求められている。更には硬化時の樹脂粘度が下がりすぎないことが求められる。これはプレス成型時の温度によって樹脂粘度が低下することで成形物表面の平滑性が向上するが、粘度低下時間が長いと樹脂が金型から漏れてしまい、所望の成形物を得ることができなくなってしまうためである。また、樹脂粘度が低下しきる前に硬化反応が進行してしまうと樹脂が十分に表面に流れないため、平滑性を損なってしまうことが問題となる。このため、硬化時間を短くするには樹脂粘度と硬化速度のバランスを取ることが重要となる。
【0008】
さらに、PCM法においてはプレス成型後に金型から成形物を取り出すときに変形しないことが求められる。PCM法では140~150℃の成形温度が使用されるが、この時、金型の温度より成形物のガラス転移温度が低い場合、樹脂が軟化しているため成形物を金型から取り出す脱型時に成形物の変形を引き起こしやすくなる。このため、脱型時に成形物の変形を抑えるためには成形温度より高いガラス転移温度をもつ熱硬化性樹脂を使用することが重要となる。
【0009】
従来、金型を用いた複合材のプレス成形では、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられてきた。ラジカル重合性を有する不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂は低粘度であり速硬化性に優れるものの、成形物の耐熱性、強度や靱性等の機械物性が相対的に低いという課題がある。一方、エポキシ樹脂は耐熱性、強度や靱性の高い成形物が得られるものの、樹脂粘度が相対的に高いという課題がある。PCM法で成形をおこなうための樹脂には含浸および成形時の粘度を低くすることが重要となる。
【0010】
特許文献1にはビスフェノールA型エポキシ樹脂とウレタン変性エポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂とジシアンジアミドを含む硬化剤と、3,4-ジクロロフェニル-1,1-ジメチルウレアを含む第1硬化促進剤と、トリアジン環を含有するイミダゾール化合物を含む第2硬化促進剤とを含む1液加熱硬化型エポキシ樹脂組成物が低温短時間で硬化させることができ、貯蔵安定性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供するとされている。しかしながら、3,4-ジクロロフェニル-1,1-ジメチルウレア等のウレア構造を有する化合物を硬化促進剤として用いた場合、ガラス転移温度が低くなりやすくなる傾向にある。このため、PCM法に適用した場合、金型から成形物を脱型するときに変形を引き起こしやすくなるという欠点を有している。
【0011】
特許文献2にはテトラグリシジルアミンを添加することで高いガラス転移温度を発現するとされている。しかしながら、グリシジルアミン類は貯蔵安定性が悪いものが多いため、配合物の製造中や樹脂組成物、さらには樹脂を含浸させたプリプレグが保管中に増粘や最悪の場合、硬化反応が進行してしまい成形物が得られなくなるという欠点を有している。
【0012】
特許文献3にはエポキシ樹脂とフェノキシ樹脂を用いた炭素繊維強化複合材用エポキシ樹脂組成物が開示されている。ここで用いられているエポキシ樹脂には多核体を含むエポキシ樹脂が用いられているが、組成物中の多核体成分が多くなることから、架橋密度の向上に伴うガラス転移温度の向上が期待できる反面、粘度が高くなりやすいため、成形時の樹脂流動性が不足しやすいという欠点を有している。
【0013】
特許文献4には硬化促進剤として2,4-ジ(N,N-ジメチルウレイド)トルエンを必須成分とする樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この組成物では150℃の硬化温度に対してガラス転移温度が140℃程度であり、PCM法に適用する場合、150℃での成形温度では金型からの脱型時に変形しやすくなるという欠点を有している。
【0014】
特許文献5にはハンドリング時のタック性を調整する目的でジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を必須成分とする樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この組成物も硬化物のガラス転移温度が110~130℃のため、PCM法に適用する場合、150℃での成形温度では金型からの脱型時に変形しやすくなるという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2014-185256号公報
【文献】特表2016-504472号公報
【文献】特開2010-248479号公報
【文献】特開2003-128764号公報
【文献】特開2005-225982号公報
【発明の概要】
【0016】
本発明では速硬化性と貯蔵安定性を両立させながら、室温でのタック性が低く、特にPCM法において生産性を向上させることを可能とする繊維強化複合材料用樹脂組成物を提供するものである。
【0017】
本発明者らは、前述の課題を解決するため検討を行った結果、エポキシ系樹脂組成物において、エポキシ樹脂、分子量1万以上の高分子成分、硬化剤、及び硬化助剤を特定の配合処方とすることにより、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、23℃で液状となる液状エポキシ樹脂(A)、ノボラック型エポキシ樹脂(B)、固体の重量平均分子量(Mw)1万以上の高分子成分(C)、ジシアンジアミド(D)、及びイミダゾール系硬化助剤(E)を必須成分とし、前記(A)~(E)成分の合計100質量部の内、液状エポキシ樹脂(A)が10~35質量部であり、高分子成分(C)が10~25質量部であり、硬化前のガラス転移温度が0℃以上であることを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物である。
【0019】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、以下のいずれか1つ以上を満たすことが望ましい。
1) 上記高分子成分(C)がフェノキシ樹脂であること、又は固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂であること、又はこれらの両方を含むこと。
2) 上記ノボラック型エポキシ樹脂(B)が、下記一般式(1)で表されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15~60面積%の割合で構成されること。
【化1】
(式中、mは0以上の整数である)
3) イミダゾール系硬化助剤(E)が、その構造中にトリアジン環構造を有すること。
4) 90℃での粘度が1000~10,000mPa・sであること。
【0020】
また、本発明の他の態様は上記の繊維強化複合材料用樹脂組成物に、強化繊維を配合してなることを特徴とする繊維強化複合材料である。この繊維強化複合材料における強化繊維の体積含有率は、25~75%であることが好ましい。
【0021】
更に、本発明の他の態様は上記の繊維強化複合材料を、プリプレグコンプレッションモールディング法で成形及び硬化して得られる成形体である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、23℃で液状となるエポキシ樹脂(A)、ノボラック型エポキシ樹脂(B)、高分子成分(C)、ジシアンジアミド(D)、イミダゾール系硬化助剤(E)を必須成分とする。以下、液状エポキシ樹脂(A)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(B)、高分子成分(C)、ジシアンジアミド(D)、トリアジン環を有するイミダゾール系硬化助剤(E)を、それぞれ(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分ともいう。本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物を、本発明の樹脂組成物ともいう。
【0024】
本発明で使用する液状エポキシ樹脂(A)は、常温(23℃)で液状のエポキシ樹脂である。このようなエポキシ樹脂の例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルフェニルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。さらにはこれらのエポキシ樹脂を例えばゴムやウレタン等で変性したエポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定はされない。また、これらエポキシ樹脂を2種類以上併用しても構わない。これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。また、(A)成分の分子量は、構造により異なるが、例えばビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂の場合、200以上600未満が好ましく、500以下がより好ましい。なお、ノボラック型エポキシ樹脂については23℃で液状であっても(A)成分には含まれず、後述の(B)成分とする。
【0025】
(A)成分の配合量は(A)~(E)成分の合計100質量部の内、10~35質量部、好ましくは15~30質量部である。液状エポキシ樹脂の含有量が15質量部未満であると常温で液状の成分が少なくなるため、粘度が高くなりやすくなり、繊維への含浸性を損なう恐れがある。また、35質量部を超えると粘度が下がりすぎてしまい、成形時の樹脂漏れが起こりやすくなるのと同時に架橋密度の低下によりガラス転移温度が低くなってしまい、金型からの脱型時に成形物が変形を起こしやすくなる。
【0026】
ノボラック型エポキシ樹脂(B)の配合量は、(A)~(E)成分の合計100質量部の内、40~70質量部、好ましくは45~70質量部、より好ましくは50~70質量部であることがよい。
ノボラック型エポキシ樹脂(B)としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、好ましくは、上記一般式(1)で表されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15~60面積%の割合で構成されることがよい。ここで、二核体とは、一般式(1)においてm=0の成分、三核体とは、一般式(1)においてm=1の成分をいう。二核体含有率が15面積%超えるかまたは三核体含有率が15面積%未満であると架橋密度が低下し、ガラス転移温度が低くなりやすくなる。また、三核体含有率が60面積%超えると粘度が高くなってしまうため安定した繊維への含浸性を損なってしまう。四核体以上の多核体含有率は、60面積%以下であることが好ましい。
なお、ノボラック型エポキシ樹脂(B)は常温(23℃)において、流動性を有してもよいが、半固形または固形であることが好ましい。
【0027】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)及び(B)以外にも、これら(A)、(B)成分の合計100質量部の内、15質量部未満であれば、他の常温で非液状のエポキシ樹脂を含んでも良い。例えば1分子中に2つのエポキシ基を有するビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、イソホロンビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂や、もしくはこれらビスフェノールのハロゲン、アルキル置換体、水添品、単量体に限らず複数の繰り返し単位を有する高分子量体、アルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルや、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレ-ト、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂や、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂や、フタル酸ジグリシジルエステルや、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルや、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルや、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミン等のグリシジルアミン類等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂中、粘度増加率の観点から1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。しかし、これらのエポキシ樹脂はMwが1万以上であることはない。
【0028】
本発明の樹脂組成物では、粘度および未硬化時のガラス転移温度を調整する目的で高分子成分(C)を含んでいる。この高分子成分はGPCでの測定おいて分子量(Mw)が1万以上を示すものである。高分子成分(C)は、樹脂組成物のガラス転移温度を高め、粘度を高めるが、Mwが1万未満では未硬化樹脂組成物のガラス転移温度を0℃以上とし、必要な粘度とするために必要な配合量が増えることになる。この配合量が増えると、硬化速度が遅くなるとともに、架橋密度の低下のため、硬化物のガラス転移温度が低くなる。
高分子成分(C)は、(A)、(B)成分より、Tgが高く、タック性を有さず、溶融粘度が高いものであることが望ましい。そして、(A)、(B)成分と相溶して単一のTgを示すものであることが望ましい。
高分子成分(C)の配合量は、(A)~(E)成分を含む樹脂成分の合計100質量部の内、10~25質量部であり、好ましくは10~20質量部である。この配合量が少ないと未硬化時のガラス転移温度が0℃未満となり、タック性が強くなり、ハンドリング性の悪化につながる。
【0029】
この高分子成分(C)として、フェノキシ樹脂又はMw10,000以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂、またはこれら両方を用いることが望ましい。
このフェノキシ樹脂としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA型・F型混合型フェノキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂・フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物を含む)などのビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂のほか、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノールA型フェノキシ樹脂の市販品としては、YP-50、YP-50S、YP-55U(新日鉄住金化学(株)製)が挙げられる。ビスフェノールF型フェノキシ樹脂の市販品としては、FX-316(新日鉄住金化学(株)製)が挙げられる。ビスフェノールA型・F型混合型フェノキシ樹脂の市販品としては、YP-70、ZX-1356-2(新日鉄住金化学(株)製)が挙げられる。この中でも、液状エポキシ樹脂(A)に対して優れた相溶性とプリプレグ用樹脂として扱いやすい粘度を示すことから、ビスフェノールA型・F型混合型フェノキシ樹脂を使用することが好ましい。
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては分子量(Mw)が1万以上であれば特に限定されないが、市販品としてはYD-017、YD-019、YD-907(いずれも新日鉄住金化学(株)製)などが挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物には、硬化剤としてジシアンジアミド(D)が用いられる。ジシアンジアミドは常温で固体の硬化剤であり、室温ではエポキシ樹脂にほとんど溶解しないが、180℃以上まで加熱すると溶解し、エポキシ基と反応するという特性を有する室温での保存安定性に優れた潜在性硬化剤である。使用する量としてはエポキシ樹脂(A)、(B)を含むエポキシ樹脂のエポキシ基1当量(モル)に対しに対して0.2~0.8当量(ジシアンジアミドを4官能型の硬化剤として計算)の範囲で配合することが好ましい。0.2当量未満では硬化物の架橋密度が低くなり、ガラス転移温度が低くなりやすく、0.8当量を超えると未反応のジシアンジアミドが残りやすくなるため、機械物性が低下する傾向にある。
【0031】
本発明の樹脂組成物に含まれるイミダゾール系硬化助剤(E)の配合量は、ジシアンジアミド(D)100質量部に対し、50~250質量部、好ましくは50~100質量部であることが良い。この配合量が少ない場合は、速硬化性の発現が困難となり、多い場合は硬化物が脆くなる傾向にある。
【0032】
イミダゾール系硬化助剤(E)としては、本発明における混合時での強化繊維への含浸性、粘度増加率の抑制に加え、硬化時における耐熱性をより満足させるためには、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物を用いることが良い。更に、トリアジン環を含有するイミダゾール化合物が好ましく、このような化合物としては、例えば、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン等が挙げられる。なかでも短時間で硬化させることができるという観点から2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンを好適に用いることができる。イミダゾール化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の樹脂組成物は硬化促進剤としてフェノール系硬化促進剤を含んでいてもよい。フェノール系硬化促進剤としては、硬化時の反応性と保存時の安定性を制御するためには、例えば、以下のフェノール化合物が使用される。カテコール、4-t-ブチルカテコール、ピロガロール、レゾルシン、ハイドロキノン、フロログルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1-トリス(4-ヒドキシフェニル)エタン及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフォン等の化合物、ノボラック型あるいはレゾール型のフェノール樹脂ならびにポリビニルフェノール等のフェノール系重合体である。なかでもビスフェノールFが好適であり、その純度(二核体含有率)は90%以上が好ましい。
フェノール系硬化促進剤の配合量は、樹脂組成物全体を100質量部とした場合、0.01~10質量部、好ましくは0.1~3.0質量部である。この範囲内に硬化促進剤が含有されることでプリプレグとした時の保存安定性が確保されると同時に硬化時の硬化促進が発揮され、硬化時間を短縮することが可能となる。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、さらに他の安定剤、改質剤等を含んでいても良い。好ましい安定剤としては、B(OR)3(但し、Rは水素原子、アルキル基あるいはアリール基を表す。)で表されるホウ酸化合物が挙げられる。ホウ酸化合物の配合量は、樹脂組成物全体を100質量部に対して0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~3質量部である。
【0035】
本発明の樹脂組成物には、添加剤として表面平滑性を向上させる目的で消泡剤、レベリング剤を添加することが可能である。これら添加剤は樹脂組成物全体100質量部に対して0.01~3質量部、好ましくは0.01~1質量部を配合することができる。
【0036】
本発明の樹脂組成物では固体の高分子成分(C)を(A)成分、(B)成分を含む樹脂成分と一緒に加熱攪拌することで高分子成分(C)を溶融混合し、均一な樹脂組成物とする。この樹脂に(D)成分、(E)成分を混合することで目的とする樹脂組成物を得ることができる。得られた樹脂組成物を、示差走査熱量計を用いて-50℃から280℃まで昇温したとき、硬化前の樹脂組成物としてのガラス転移温度が観測された後、硬化反応に伴う発熱反応が観測される。ここで観測されたガラス転移温度は未硬化状態でのタック性に影響をしており、ガラス転移温度が0℃以上であると常温でのタック性が少なくなり、さらに強化繊維に含浸させたあとはタック性が極めて少なくハンドリング性が良好となる。
また、この樹脂組成物は、90℃での粘度が1000~10,000mPa・sであることがよく、この範囲であれば、良好な強化繊維への含浸性を示し、含浸後にも繊維から樹脂の液垂れが起きにくい。ここで、上記粘度はICI粘度計により測定される。90℃における粘度は、より好ましくは3000~9,000mPa・sの範囲である。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲に限り、Mwが10000未満の他の硬化性樹脂を配合することもできる。このような硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、硬化性アクリル樹脂、硬化性アミノ樹脂、硬化性メラミン樹脂、硬化性ウレア樹脂、硬化性シアネートエステル樹脂、硬化性ウレタン樹脂、硬化性オキセタン樹脂、硬化性エポキシ/オキセタン複合樹脂等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
本発明の繊維強化複合材料は、本発明の樹脂組成物に、強化繊維を配合してなる。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、PCM法によって得られる繊維強化複合材料に好適に用いられる。ここでPCM法に用いられるプリプレグの製造方法は特に限定されないが、かかる樹脂組成物をあらかじめ70~90℃程度に加温して粘度を低下させた状態で離型紙上に所定の厚みに塗布することでシート状の樹脂組成物を作成する。ここで塗布方法は特に限定されず、ナイフコーター、リバースロールコーターなどにより塗布することが可能である。この得られたシート状の樹脂組成物にて強化繊維を挟み込んだのち、ロール等で加熱・加圧(通常80~100℃)することで樹脂含浸された繊維強化複合材料としてのプリプレグを得ることができる。
【0039】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物から繊維強化複合材料を作製する方法は特に限定されないが、PCM法ではパターンカット、ラミネート、プリフォーム賦形を含むプリフォーム工程と高出力油圧プレス機を用いて高圧高温(通常140~150℃)で成形するプレス成形工程の2工程により所定の成形物を得ることができる。
本発明の繊維強化複合材料は、樹脂組成物に、強化繊維を配合したものであり、未硬化のものを言う。本発明の成形体は、この繊維強化複合材料を、PCM法で成形及び硬化して得られるものを言う。
【0040】
本発明の繊維強化複合材料に用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維等から選ばれるが、強度に優れた繊維強化複合材料を得るためには炭素繊維を使用するのが好ましい。
【0041】
繊維強化複合材料に用いられる強化繊維の引張り破断伸度は、ガラス繊維であれば3~6%、アラミド繊維であれば2~5%、炭素繊維であれば1.5~2.0%の値を一般的に示すため、マトリクス樹脂には強化繊維よりも引張り破断伸度の高い材料を適応することが、強度に優れる繊維強化複合材料を得る上で望ましい。
【0042】
本発明の繊維強化複合材料における強化繊維の体積含有率は30~75%であると良く、より好ましくは45~75%の範囲である。この範囲であると空隙が少なく、かつ強化繊維の体積含有率が高い成形体が得られるため、優れた強度の成形体となる。樹脂組成物の硬化後のガラス転移温度は150℃以上であることがよい。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。配合量を示す部は、特に断りがない限り質量部である。またエポキシ当量の単位はg/eqである。
【0044】
高分子成分の分子量測定はGPCを用いて行い、ポリスチレン標準物質を用いた検量線より分子量を計算した。測定条件は以下のとおりである。
本体:東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム:東ソー株式会社製 TSKgelGMHXL×2+TSKgelG4000HXL
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:RI(示差屈折計)検出器
【0045】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の各成分の含有率は、GPCを用いて測定を行い、二核体含有率、三核体含有率をピークの面積%から求めた。測定条件は、カラムを東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL+TSKgelG3000HXL+TSKgelG2000HXLとした他は上記と同じである。
【0046】
ガラス転移温度Tgは示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製DSC7000X)を用いて測定を実施した。測定は樹脂組成物を-50℃から280℃まで10℃/分の昇温速度にて昇温したときの熱量変化から未硬化樹脂のTgを求めた後、30℃まで一旦冷却し、再度280℃まで10℃/分で昇温した時の熱量変化から硬化物のTgを求めた。
【0047】
ICI粘度測定はコーンプレート粘度計(東亜工業社製CV-1S)を用いて90℃での粘度を測定した。
【0048】
ゲルタイムは150℃の熱板上に樹脂組成物をのせて、撹拌棒にて撹拌を連続して行った。熱板上にて樹脂の硬化反応が進行し、樹脂が糸引きしなくなり、熱板上にて塊となった時を終点とした。ゲルタイムは樹脂を熱板にのせてから終点までの時間を測定することで求めた。
【0049】
タック性は離型処理されたPETフィルム上に樹脂組成物を載せ、1mm厚のフッ素樹脂シートをスペーサーに用い、カバーフィルムとしてポリエチレンフィルムを樹脂上に載せたのち、60℃で5分間プレスすることでPETフィルム-樹脂組成物(1mm厚)-ポリエチレンフィルムに積層されたサンプルを作成した。タック性の評価は作成したサンプルを23℃の恒温室に1時間静置後、ポリエチレンフィルムを剥した際にポリエチレンフィルムが容易に剥離した場合を○、ポリエチレンフィルムの剥離が困難、又は樹脂組成物がポリエチレンフィルムに残った場合を×として評価した。
【0050】
実施例及び比較例で使用した各成分の略号は下記の通りである。
YD-128:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、エポキシ当量187、液状)
YDPN-6300:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、二核体:10面積%、三核体:36面積%、エポキシ当量173、半固形)
YD-011:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、Mw:2200、固体)
YD-017:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、Mw:11000)
YD-019:ビスフェノールA型エポキシ樹脂;新日鉄住金化学社製、Mw:21000)
YP-70:ビスフェノールA型・F型混合型フェノキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂・フェノール・ホルムアルデヒド重縮合物)(新日鉄住金化学社製、Mw:40000)
DICY:ジシアンジアミド(DICY ANEX 1400F、F&F CHEMICAL社製)
2MZA-PW:イミダゾール化合物(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、四国化成工業社製)
BPF:フェノール性硬化促進剤(ビスフェノールF、二核体純度97%)
【0051】
調製例1(主剤1)
攪拌装置、温度計を取り付けた4つ口のガラス製セパラブルフラスコにYD-128を167g、YDPN-6300を1544g入れ、150℃まで加熱後、YD-019を172g、YP-70を114g投入した。150℃にて1.5時間撹拌を行いYD-019及びYP-70が目視で溶解したのを確認後、#100メッシュの金網にてろ過することで主剤1を得た。
【0052】
調製例2~6(主剤2~6)
液状エポキシ樹脂(A)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(B)、高分子成分(C)の配合量を表1の値とした以外は調製例1と同様の手順にて主剤2~6を調製した。
表1、表2中、配合量の単位はgである。
【0053】
調製例7(硬化剤H)
DICYを503g、2MZA-PWを377g、YD-128を1120g使用し、室温にてプラネタリーミキサーをもちいて15分撹拌することで硬化剤Hを得た。分散状態は粒ゲージにて均一に分散したことを確認した。
【0054】
調製例8(硬化促進剤S)
攪拌装置、温度計を取り付けた4つ口のガラス製セパラブルフラスコにBPFを75g、YD-128を225g入れ、90℃まで昇温後、30分撹拌、BPFが溶解したことを確認後、#100メッシュの金網にてろ過することで硬化促進剤Sを得た。
【0055】
実施例1
上記硬化剤Hを382g、硬化促進剤Sを20g、安定剤としてホウ酸トリブチルを7g、そして80℃に加温した1591gの主剤1をプラネタリーミキサーに投入し、60℃に加温しながら15分間撹拌することで樹脂組成物を得た。
【0056】
実施例2~3
樹脂組成物の調製を表2の配合にて行った以外は、実施例1と同様の手順にて調製を実施した。
調製した樹脂組成物の全量を100質量部として換算した各成分の配合量を、質量部で表3に示す。
【0057】
比較例1~3
主剤の調製を表1の配合、樹脂組成物の調製を表2の配合にて行った以外は、実施例1と同様の手順にて調製を実施した。調製した樹脂組成物の全量を100質量部として換算した各成分の配合量を、質量部で表3に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
実施例1~3及び比較例1~3の樹脂組成物の各種物性を測定した結果を表4に示す。
【0062】
【0063】
表4より実施例1~3では未硬化樹脂のガラス転移温度が0℃以上であることから剥離試験において容易にポリエチレンフィルムを剥離することができた。また、硬化物のガラス転移温度も150℃以上と高い温度を示し、150℃でのゲルタイムが42秒と早い硬化速度を示した。これに対して、比較例1では高分子成分の分子量が低いため、未硬化樹脂のガラス転移温度が0℃以下となり、剥離試験においてポリエチレンフィルムを剥離することができないことからタック性が悪いことを確認した。さらに、また90℃での粘度が低いため、繊維への含浸時に流れやすいことがわかった。比較例2、3では90℃での粘度は十分なものの、未硬化樹脂のガラス転移温度が0℃以下のため、剥離試験にてポリエチレンフィルムを剥離することができず、タック性が悪いことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、プリプレグ状態での室温付近でのタック性が低く作業性に優れるとともに、含浸工程において低粘度であり、加温に伴う粘度増加が小さいことから良好な強化繊維への含浸性を有し、速硬化性に優れた成形物が得られる。特に、PCM法によって得られる繊維強化複合材料に好適に用いられる。