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特許7161622撮像機構並びに撮像機構を備えた試料分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】撮像機構並びに撮像機構を備えた試料分析装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/24 20060101AFI20221019BHJP
   G02B 21/28 20060101ALI20221019BHJP
   G02B 21/30 20060101ALI20221019BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20221019BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G02B21/24
G02B21/28
G02B21/30
G02B21/26
G01N21/64 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021532634
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2019028208
(87)【国際公開番号】W WO2021009892
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三山 敏史
(72)【発明者】
【氏名】土居 昭
(72)【発明者】
【氏名】宮田 仁史
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智広
【審査官】小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-090458(JP,A)
【文献】特開2011-234681(JP,A)
【文献】特開2017-183533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/24
G02B 21/28
G02B 21/30
G02B 21/26
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を光学的に観察する光学計測部と、支持部材によりテーブルに搭載され前記試料を加熱・冷却するための温調ユニットと、前記試料の全領域を撮影するため前記テーブルを移動させる移動機構を備えた撮像機構であって、
前記温調ユニットは、ペルチェ素子の一面に当接され、前記試料を加熱・冷却するための温調部と、前記ペルチェ素子の他面に当接された熱伝導部材と、前記温調部と前記熱伝導部材を保持して前記テーブルに固定するための、溝形状部を有する支持部材とを備えて、前記溝形状部に前記熱伝導部材が備えられ、冷却手段に接続されているとともに、前記支持部材の熱伝導率は前記熱伝導部材に対して相対的に低い熱伝導率とされていることを特徴とする撮像機構。
【請求項2】
請求項1記載の撮像機構であって、
前記支持部材は、前記熱伝導部材に比べ、低い線膨張率を有する材質で構成されることを特徴とする撮像機構。
【請求項3】
試料を光学的に観察する光学計測部と、支持部材によりテーブルに搭載され前記試料を加熱・冷却するための温調ユニットと、前記試料の全領域を撮影するため前記テーブルを移動させる移動機構を備えた撮像機構であって、
前記温調ユニットは、ペルチェ素子の一面に当接され、前記試料を加熱・冷却するための温調部と、前記ペルチェ素子の他面に当接された熱伝導部材と、前記温調部と前記熱伝導部材を保持して前記テーブルに固定するための、穴形状部を有する支持部材とを備えて、少なくとも前記穴形状部に前記熱伝導部材が通過するように備えられ、冷却手段に接続されているとともに、前記支持部材の熱伝導率は前記熱伝導部材に対して相対的に低い熱伝導率とされていることを特徴とする撮像機構。
【請求項4】
請求項3記載の撮像機構であって、
前記支持部材は、前記熱伝導部材に比べ、低い線膨張率を有する材質で構成されることを特徴とする撮像機構。
【請求項5】
請求項3記載の撮像機構であって、
前記ペルチェ素子は、前記温調部と前記熱伝導部材とによって挟持されて固定されており、前記支持部材は前記温調部と連結されており、且つ前記ペルチェ素子および記熱伝導部材と接触することが無く、取り付けられていることを特徴とする撮像機構。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の撮像機構を備えた試料分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像機構並びに撮像機構を備えた試料分析装置に係り、特にDNA等の生体物質を分析するに好適な撮像機構並びに撮像機構を備えた試料分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DNAやRNAの塩基配列を決定する新しい技術が開発されてきている。基板に分析対象となるDNA断片を数多く固定して、これら数多くのDNA断片の塩基配列をパラレルに決定する方法が提案されている。こうした方式によりDNAの塩基配列を決定する装置は、次世代シーケンサと呼ばれている。
【0003】
次世代DNAシーケンサは、広視野蛍光顕微鏡を基礎として作られる。蛍光体が取り込まれたDNA断片を高い認識精度で、より多く検出するためには、フォーカスずれによる像ボケや収差の少ない蛍光像を取得する必要がある。
【0004】
この蛍光標識のためには、観察サンプルであるDNA断片に専用の試薬を投入し、加熱するプロセスが必要となる。そして、この蛍光標識プロセスが完了した後に、光学的な計測(以下、撮像と呼ぶ)を行う。この撮像では、撮像手段と観察サンプルの距離が所定範囲内に収まっていないと、フォーカスずれが発生し、像ボケや蛍光像の収差が大きくなるといった問題が発生する。
【0005】
また、次世代DNAシーケンサでは、撮像のため、フローセルを対物レンズ直下のXYステージに固定配置する。ここでフローセルとは、その内部にDNA断片を固定した多数のビーズを配置し、試薬を流すための流路が形成されたものである。
【0006】
そして、XYステージを計測視野の大きさだけ逐次移動させることにより、フローセル上の観察サンプルと試薬の反応状態を撮像して、光学的に塩基配列情報を検出する。
【0007】
次発明に係る世代DNAシーケンサでは、試薬の化学反応を促すため観察サンプルを加熱、冷却など温度調整をする手段が上述のステージ上に備えられている。この温度調整をする手段として、一般的にピエゾ素子が使われる。
【0008】
このように装置内に組み込まれ、化学反応を促進させるための温調手段として、ペルチェ素子を使用するものとしては例えば、特許文献1や特許文献2記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7081600号
【文献】特開2006-090749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の装置においてはペルチェ素子に電流を印加することで、ペルチェ素子の両面に温度差が発生する。その一方の面(温調面と呼ぶ)に板状の温調部材を取付け、その温調部材上に測定サンプルを当接させた状態で搭載する。そして、温調部材に内蔵したサーミスタ等の温度計測手段により、温度を測定しながらペルチェ素子の印加電流を制御することで、測定サンプルに対し所定温度を付与することができる。
【0011】
その一方で、温調面と逆側の面(放熱面と呼ぶ)では、温調面を加熱する際は吸熱、温調面を冷却する際は発熱が起こる。特に、発熱時は、放熱が不十分であると素子自体が破損し、あるいはペルチェ素子取付面の温度が上昇し、取付部材の熱変形が発生することがある。
【0012】
そのため、一般的にペルチェ素子の放熱面側には、ヒートシンク等の熱容量が大きい部材を取付け、且つその部材を冷却する手段を有している。
【0013】
しかし、上記冷却手段を有する場合でも、冷却には一定の時間が必要とされる。十分な冷却時間を確保しないと、装置の温度変化による熱変形によって、観察サンプルを支持する構造が熱変形し、撮像中に撮像手段と観察サンプルの距離が変化することによって、フォーカスずれが発生し、像ボケや蛍光像の収差が大きくなるといった問題が発生する。
【0014】
その一方で十分な冷却時間を確保すると、撮像開始までの時間を長くとる必要があるので、装置スループットが著しく低下するといった問題がある。
【0015】
以上のことから本発明においては、撮像中にペルチェ素子の放熱面で発生した熱が試料サンプルを保持する支持部材に伝わり難くするに好適な撮像機構並びに撮像機構を備えた試料分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上のことから、本発明は試料を光学的に観察する光学計測部と、支持部材によりテーブルに搭載され試料を加熱・冷却するための温調ユニットと、試料の全領域を撮影するためテーブルを移動させる移動機構を備えた撮像機構であって、温調ユニットは、ペルチェ素子の一面に当接され、試料を加熱・冷却するための温調部と、ペルチェ素子の他面に当接された熱伝導部材と、温調部と熱伝導部材を保持してテーブルに固定するための支持部材とを備えて、少なくとも熱伝導部材が冷却手段に接続されているともに、支持部材の熱伝導率は熱伝導部材に対して相対的に低い熱伝導率とされていることを特徴とする撮像機構またはこれを用いる試料分析装置としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、撮像中にペルチェ素子の放熱面で発生した熱を試料サンプルを保持する支持部材に伝わり難くすることが可能であり、支持部材の熱変形を抑えることで、撮像時のフォーカスずれが発生し、像ボケや蛍光像の収差が大きくなるといった問題を軽減することが可能となる。これにより、長い冷却時間確保する必要が無く、また装置の温度変化による熱変形が抑制されるため、より高い認識精度で高い装置スループットを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係る試料分析装置における撮像機構1の外観を示す図。
図2】実施例1における温調ユニットの上面図である。
図3】実施例1における温調ユニットの側面図。
図4】実施例1における温調ユニットのA-A断面図。
図5】実施例1における温調ユニットのB-B断面図。
図6】従来の温調装置の外観を示した図。
図7】実施例2における温調ユニットの上面図。
図8】実施例2における温調ユニットの側面図。
図9】実施例2における温調ユニットのB-B断面図。
図10】実施例3における温調ユニットの上面図。
図11】実施例3における温調ユニットの側面図。
図12】実施例3における温調ユニットのA-A断面。
図13】実施例3における温調ユニットのB-B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る試料分析装置における撮像機構1の外観である。
【0021】
本撮像機構1では、試料7を光学的に観察する光学計測部2と、テーブル6F上に搭載され、試料7の蛍光標識反応のため加熱・冷却するための温調ユニット10と、試料7の全領域を撮影するためテーブル6Fを逐次移動させるX移動機構5と、Y移動機構6と、それらを支持するためのベースフレーム3、外部からの振動を遮断するための除振部材4によって構成される。
【0022】
X移動機構5は、ステッピングモータ5Mと、ボールねじ5Sによって、図示せぬリニアガイドに取り付けられたxフレーム5F、およびY移動機構6、温調ユニット10を、図中X方向へ移動させるための機構である。
【0023】
Y移動機構6は、図示せぬステッピングモータおよびボールねじによって、リニアガイド6Gに取り付けられたテーブル6F、および温調ユニット10を、図中Y方向へ移動させるための機構である。
【0024】
光学計測部2は、図示せぬ撮像素子と、対物レンズ等の撮像手段2Aなどで構成される。本構成での撮像範囲は微小であるため、試料7全体を観察するために、上述のX移動機構5、およびY移動機構6を微小量動かし、局所的に撮像する動作を繰り返すことで、試料7全領域を観察することが可能となっている。
【0025】
ここで試料7は、フローセルと呼ばれる、その内部にDNA断片を固定した多数のビーズを配置し、試薬を流すための流路が形成されたものである。
【0026】
蛍光標識をする際は、図示せぬ試薬保管庫より、試薬を吸引し試料7の内部に注入する。そして、温調機能で温調しながら、反応が完了するまで待つ。複数の反応工程が必要な場合は、前述の工程を繰り返す。
【0027】
撮像機構1では、温調ユニット10によって、試料7に2段階の温度を付与する。その一つは、試料7に送られた蛍光標識のための試薬の化学反応を促すための温度である。もう一つは、光学計測部2によって、光学観察する際に、温調ユニット10の熱変形を抑制するため、一定の温度条件にするための撮像時温度である。
【0028】
まず、撮像前に資料7を蛍光標識するために温度を上げ、反応に必要な時間が経過した後、撮像温度まで下げ、観察を行う。
【0029】
次に図2から図5を用いて図1の温調ユニット10の具体的な構成について説明する。図2は、実施例1における温調ユニット10の上面図、図3は、側面図である。また、図4は、図3のA-A断面、図5図2のB-B断面を示している。
【0030】
図3図5に明確に開示されているように、実施例1の温調ユニット10は、計測対象である試料7を加熱・冷却するためのペルチェ素子103を有している。ペルチェ素子103の一面(温調面側)に温調部材101が取付けられており、その上面に、試料7が密着された状態で固定されている。
【0031】
ここで温調部材101には、自身の温度を測定するため、サーミスタ106が内蔵されている。このサーミスタ106で温調部材101の温度を計測し、図示せぬ電流調整手段により、ペルチェ素子103の温度を制御することで、試料7に所定の温度を付与することが可能となっている。
【0032】
また図5から明らかなように、ペルチェ素子103の下面(放熱面)側に接触するように熱伝導部材104が取付けられている。更に、熱伝導部材104の端部には、ヒートシンク105が取り付けられている。このヒートシンク105は、図示せぬ冷却手段によって冷却される。
【0033】
温調ユニット10には、温調部材101、ペルチェ素子103および熱伝導部材104を支持し、撮像手段2Aと試料7との距離を調整する支持部材102が設けられている。ここで、支持部材102は、取付ねじ108により、ペルチェ素子103および温調部材101を固定し、支持する。
【0034】
以上、図3の側面図と図5の断面図を参照して述べたように、温調ユニット10は、光学計測部2の撮像手段2Aに対向して配置されている。また温調ユニット10は上部から下部に向かって順次試料7、温調部材101、ペルチェ素子103、支持部材102、熱伝導部材104、ヒートシンク105を配置することで形成されている。
【0035】
図2によれば支持部材102と温調部材101の間の支持構造、図4によれば支持部材102と熱伝導部材104の間の支持構造が具体的に例示されている。
【0036】
図2図4によれば、支持部材102は、調整ねじ107によってテーブル6Fに対して固定されるように3か所取付けられている。この3か所のねじの取付高さをそれぞれ調整することで、支持部材102の面角度を変更することが可能である。そして、撮像時にテーブル6Fを図中X,Y方向へ移動した際に、試料7の計測位置と撮像手段2Aの距離Dが、フォーカスずれが発生しない範囲に収まるように調整することが可能となっている。
【0037】
この構造は、試料7を光学的に観察する光学計測部2と、支持部材102によりテーブル6F上に搭載され試料7の蛍光標識反応のため加熱・冷却するための温調ユニット10と、試料7の全領域を撮影するためテーブル6Fを移動させる移動機構を備えた撮像機構であって、温調ユニット10は、ペルチェ素子103の一面に当接され、試料7を加熱・冷却するための温調部101と、ペルチェ素子103の他面に当接された熱伝導部材104と、温調部101と連結される支持部材102とを備え、少なくとも熱伝導部材104が冷却手段(ヒートシンク105)に接続されている。
【0038】
本発明においては、熱伝導部材104は、支持部材102よりも高い熱伝導率を有する素材で構成される。また、支持部材102は、熱伝導部材104よりも低い線膨張係数の材料が使用される。ここで、支持部材102には鉄系の合金、例えばFe-Ni36%合金(熱伝導率13[Wm-1-1]、線膨張係数1.7×10-6[K-1])を使用し、熱伝導部材には、Al合金A6063(熱伝導率220[Wm-1-1]、線膨張係数23×10-6[K-1])を使用している。
【0039】
この結果実施例1の温調ユニット10では、温調部材101を冷却した場合に、ペルチェ素子103の放熱側の発熱の大部分は熱伝導部材104を介して放熱部材(ヒートシンク105)により伝播される。
【0040】
また図4に明らかなように、熱伝導部材104は、固定ねじ109によって支持部材102に短手方向(図中Y方向)中央2か所で固定されている。中央部で固定されることにより、熱伝導部材104の長手方向(図中X方向)への変形は、固定ねじ109によって阻害されることはなく、支持部材102への熱応力は作用しない。
【0041】
更に図2図4に明らかなように、支持部材102は、中央部に熱伝導部材104と接触しないよう、熱伝導部材104の外形よりも大きい貫通穴が開いている。更に、熱伝導部材104は、その自重が支えられるように重力方向(図中Z方向)に一部接触する面があるが、その面積は、熱伝導部材104がペルチェ素子103と接触している面の面積に比べ十分小さくなっている。また、支持部材102には、溝形状部が存在し、その溝形状部内に熱伝導部材104を配置し、支持部材102と熱伝導部材104との間には図中X方向に隙間を設けることで、熱伝導部材104の熱変形が、支持部材102には伝わらない構成となっている。
【0042】
温調ユニット10では、試料7に2段階の温度を付与する。一つは、試料7に蛍光標識反応を促すための温度であり、ここでは該温度をT1とする。もう一つは、温調装置10の熱変形を抑制するために、撮像中に温調部材101の一定に保つ際の温度(以下、撮像温度とする)であり、この温度をT2とする。
【0043】
まず、撮像前に、試料7に注入された試薬による蛍光標識反応を促進するために、温調部材102を加熱し、温度T1に上げる。そして、反応に必要な時間が経過した後、温調部材101を撮像温度T2に下げた後、撮像を行う。
【0044】
ここで、ペルチェ素子103の温調面側に取付られている温調部材101はペルチェ素子103の温度制御により、その温度は一定となる。
【0045】
温調部材101を撮像温度T2へ冷却する際に、ペルチェ素子103の放熱面側の温度が上昇する。ここで発生した熱は、熱伝導部材104を経由して、ヒートシンク105に伝わる。そして、ヒートシンク105は図示せぬ冷却手段(例えばファンなど)により冷却される。
【0046】
ここで、支持部材102は、その一部が熱伝導部材104と接触している。しかし、上述のように、熱伝導部材104は、支持部材102よりも高い熱伝導率を有する素材で構成されているため、ペルチェ素子103で発生した熱の大部分は伝熱部104へ伝播することになる。
【0047】
そのため、支持部材102に伝わる熱量が低減され、その温度変化を少なくすることができ、それにより熱変形量が少なくなる。
【0048】
また、支持部材102は上述のように、線膨張係数が低い鉄系の合金、例えばFe-Ni36%合金(線膨張係数1.7×10-6[K-1])を使用している、熱変形量が従来の構成に比べ少ない。
【0049】
本発明と対比すべく参考的に記載する図6は、従来の温調装置90の外観を示したものである。従来の温調装置90は、本発明の構成と同様に、試料7を加熱・冷却するためのペルチェ素子903、温調部材901、支持部材902が取付けられている。そして、この支持部材902の底面に熱伝導部材904とヒートシンク905が取り付けられている。
【0050】
然しながらこの構成では、支持部材902を経由して熱の移動がなされるため、支持部材902自身の熱伝導率も十分高い必要がある。そのため、一般的に支持部材902、熱伝導部材904ともにAl合金A6063(熱伝導率220[Wm-1-1]、線膨張係数23×10-6[K-1])などが使われている。
【0051】
図6の従来構成では、ペルチェ素子103の放熱側で発生した熱はすべて支持部材902へ伝達され、その分、温度上昇する。また、支持部材902は、上述のようにAl合金で構成されているため、本発明で使用しているFe-Ni36%合金に比べ、線膨張係数が低く、熱変形量が大きい。そのため、熱変形により、試料7の計測箇所と撮像手段2Aの距離Dが変化するため、撮像時に像がぶれ、検査性能が悪化するという課題がある。
【0052】
これに対し以上説明した、実施例1による温調機構10を有する試料分析装置1では、温調部を冷却した場合に、ペルチェ素子放熱側の発熱の大部分は上記放熱部材により伝播されるため、支持部の温度変化を少なくすることができ、熱変形量を小さくすることが可能となる。
【実施例2】
【0053】
実施例2では、基本的に実施例1の構成を踏襲しながら、支持部材の支持の仕方を変更することでテーブル側への伝熱をより効率的に抑止することについて説明する。
【0054】
図7は、本発明の実施例2に係る温調ユニット10の上面図、図8は、実施例2における温調ユニット10の側面図である。また、図9は、図7中B-B断面を示したものである。
【0055】
本実施例における温調ユニット10は、計測対象である試料7を加熱・冷却するためのペルチェ素子103を有している。試料7は、ペルチェ素子103の一面に取り付けられた温調部材101に当接する状態で搭載されている。
【0056】
ここで温調部材101には、その温度を測定するための、サーミスタ106が取り付けられている。このサーミスタ106により、温調部材101の温度を計測する。そして、図示せぬ電流調整手段により、ペルチェ素子103の温度を制御することで、温調部材101を所定の温度に変化させ、試料7を一加熱、冷却することが可能となっている。
【0057】
温調部材101は調整ねじ107によって指示部材102に取り付けられている。この調整ねじ107は温調部材101に対し3か所備えられている。このねじの取付高さを変更することで、ステージを移動した際に試料7の面が光学観察系2Aに対し、その測定範囲に収まるようにその距離が一定になるように調整することが可能となっている。
【0058】
さらに熱伝導部材104は、ペルチェ素子103に直接接触する位置に設けられており、ペルチェ素子103は、取付ねじ108を締め付けることにより、温調部材101と熱伝導部材104によって挟まれ、固定される。
【0059】
支持部材102は、中央部に穴が開いており、そこを貫通する形で熱伝導部材104が取り付けられる。
【0060】
ペルチェ素子で発生した熱は熱伝導部材104を経由して、ヒートシンク105に伝わる。ヒートシンク105は図示せぬ冷却手段(例えばファンなど)により冷却される。熱伝導部材104と支持部材102の間には隙間があり、熱伝導部材104の熱変形は、支持部材102には伝わらない。
【0061】
ここで、熱伝導部材104は、支持部材102よりも高い熱伝導率を有する素材で構成される。また、支持部材102は、熱伝導部材104よりも低い線膨張係数の材料が使用される。ここで、支持部材102には鉄系の合金、例えばFe-Ni36%合金(熱伝導率13[Wm-1-1]、線膨張係数1.7×10-6[K-1])を使用し、熱伝導部材には、Al合金A6063(熱伝導率210[Wm-1-1]、線膨張係数23×10-6[K-1])を使用している。
【0062】
また、支持部材102は、図示せぬねじによってテーブル6Fに対して固定される。
【0063】
温調部材101を冷却する際に、ペルチェ素子103の放熱面側の温度が上昇する。ここで発生した熱は、熱伝導部材104を経由して、ヒートシンク105に伝わる。そして、ヒートシンク105は図示せぬ冷却手段(例えばファンなど)により冷却される。
【0064】
ここで、支持部材102は、熱伝導部材104と接触していないため、ペルチェ素子103の放熱面で発生した熱はすべて伝熱部104へ伝播され、支持部材102には伝わらない。そのため、支持部材102に伝わる熱量が低減され、その温度変化を少なくすることができ、それにより熱変形量が少なくなる。
【実施例3】
【0065】
実施例3は、支持部材の剛性を高めることに関する。
【0066】
図10は、実施例3における温調ユニット10の上面図、図11は、側面図である。ここで、図12は、図11中A-A断面を示したもの、図13図10中B-B断面を示したものである。
【0067】
実施例3における温調ユニット10は、計測対象である試料7を加熱・冷却するためのペルチェ素子103を有している。ペルチェ素子103の一面(温調面側)に温調部材101が取付けられており、その上面に、試料7が密着された状態で固定されている。
【0068】
ここで温調部材101には、自身の温度を測定するため、サーミスタ106が内蔵されている。このサーミスタ106で温調部材101の温度を計測し、図示せぬ電流調整手段により、ペルチェ素子103の温度を制御することで、試料7に所定の温度を付与することが可能となっている。
【0069】
また、ペルチェ素子103の下面(放熱面)側に接触するように熱伝導部材104が取付けられている。更に、熱伝導部材104は、複数の伝達経路104Cを有しており、その端部には、ヒートシンク105が取り付けられている。このヒートシンク105は、図示せぬ冷却手段によって冷却される。
【0070】
本温調ユニット10には、温調部材101、ペルチェ素子103および熱伝導部材104を支持し、撮像手段2Aと試料7との距離を調整する支持部材102がある。ここで、支持部材102は、取付ねじ108により、ペルチェ素子103および温調部材101を固定し、支持する。支持部材102は、調整ねじ107によってテーブル6Fに対して固定されるように3か所取付けられている。この3か所のねじの取付高さをそれぞれ調整することで、支持部材102の面角度を変更することが可能である。そして、撮像時にテーブル6Fを図中X,Y方向へ移動した際に、試料7の計測位置と撮像手段2Aの距離Dが、フォーカスずれが発生しない範囲に収まるように調整することが可能となっている。
【0071】
ここで、熱伝導部材104は、支持部材102よりも高い熱伝導率を有する素材で構成される。また、支持部材102は、熱伝導部材104よりも低い線膨張係数の材料が使用される。ここで、支持部材102には鉄系の合金、例えばFe-Ni36%合金(熱伝導率13[Wm-1-1]、線膨張係数1.7×10-6[K-1])を使用し、熱伝導部材には、Al合金A6063(熱伝導率210[Wm-1-1]、線膨張係数23×10-6[K-1])を使用している。
【0072】
実施例3の効果は実施例1などと同じであり、異なる部分は、ペルチェ素子103の放熱側に複数の熱伝導部材104Cを有する点である。複数の熱伝導部材104Cの端部にはヒートシンク105が取り付けられている。
【0073】
本構成によれば、複数の伝達経路104Cに分割することで、支持部材102の貫通穴の一つずつの大きさを小さくすることができ、支持部材102の剛性を維持することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:撮像機構、2:光学計測部、2A:撮像手段、3:ベースフレーム、4:除振部、5:X移動機構、6:Y移動機構、7:試料、10:温調ユニット、90:従来の温調ユニット、101:温調部材、102:支持部材、103:ペルチェ素子、104:熱伝導部材、105:ヒートシンク、106:サーミスタ、107:調整ねじ、108:取付ねじ、109:固定ねじ
図1
図2
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図11
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図13