(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】導電性ペースト、硬化物、導電性パターン、衣服及びストレッチャブルペースト
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20221020BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20221020BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20221020BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B1/00 C
H01B1/00 H
H01B5/14 B
H05K1/09 A
(21)【出願番号】P 2018021179
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友之
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/102490(WO,A1)
【文献】特開2012-116699(JP,A)
【文献】特開2015-160759(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174505(WO,A1)
【文献】特開2017-101124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 1/00
H01B 5/14
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化チタンに表面に金属被覆層を有する金属被覆粒子と、
(B)樹脂と
を含む導電性ペーストであって、
酸化チタンが、粒子長と粒子短径を有する柱状形状であり、酸化チタンの粒子長が、粒子短径より長く、
金属被覆粒子が、粒子長と粒子短径を有する柱状形状であり、金属被覆粒子の粒子長が、粒子短径より長く、
(A)金属被覆粒子の粒子長が、
2~
6μmであり、
(A)金属被覆粒子の、金属被覆層の重量と、酸化チタンの重量との重量比(金属被覆層の重量:酸化チタンの重量)が、
75:25~95:5の範囲である、導電性ペースト。
【請求項2】
(A)金属被覆粒子の金属被覆層の材料が、Ag、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sn及びPbからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
(A)金属被覆粒子の粒子短径が、0.1~10μmである、請求項1
又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
(A)金属被覆粒子の比表面積が、0.2~20m
2/gである、請求項1から
3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
(A)金属被覆粒子の粒子長と粒子短径との比(粒子長/粒子短径)が、3~300である、請求項1から
4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
(B)樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂である、請求項1から
5のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
(B)樹脂が、熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び熱可塑エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含み、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が25℃以下であり、熱可塑性樹脂が液体状又は有機溶媒に溶解してなる液体状である、請求項1から
6のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
(B)樹脂が、熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1から
6のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の導電性ペーストの硬化物。
【請求項10】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の導電性ペーストを含む導電性パターン。
【請求項11】
請求項
9に記載の導電性ペーストの硬化物、又は請求項10に記載の導電性パターンを含む衣服。
【請求項12】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の導電ペーストを用いたストレッチャブルペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品及び電子部品に使用する導電性ペースト、導電性ペーストの硬化物及び導電性パターン、硬化物及び導電性パターンを含む衣服に関する。また、本発明は、電気部品及び電子部品に使用するストレッチャブルペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタ、スイツチ及びセンサなどの電子部品の材料として、ポリウレタン、シリコーンゴムなどのマトリツクスに金属粉、炭素繊維、カーボン粉、黒鉛粉などの導電性材料を添加した導電性エラストマーが使われている。このような導電性エラストマーとして、特許文献1には、シリコーンゴムをマトリツクスとし、無機繊維の表面を銀で被覆してなる導電性繊維を含む導電性エラストマー組成物が記載されている。
【0003】
無機繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維として、特許文献2には、繊維物質表面が貴金属及びその酸化物の1種又は2種以上の混合物で被覆された導電性繊維が記載されている。
【0004】
特許文献3には、チタン酸カリウム繊維の表面にPt、Au、Ru、Rh、Pd、Ni、Co、Cu、Cr、Sn及びAgよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の付着層を有する導電性組成物が記載されている。
【0005】
特許文献4には、所定の還元形のチタネート結晶と、その表面に付着したNi、Cu、Ag、Au及びPdよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属とからなる金属被膜を有するチタネートが記載されている。
【0006】
特許文献5には、テキスタイル用ストレッチャブル導電性フィルムが記載されている。具体的は、特許文献5には、ストレッチャブル導電性フィルムが、伸縮性を有するストレッチャブル導電層と、ストレッチャブル導電層の一表面に形成されたホットメルト接着剤層とを含むことが記載されている。また、ストレッチャブル導電層は、エラストマーと、エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されていることが記載されている。
【0007】
特許文献6には、ストレッチャブル導電回路が記載されている。具体的は、特許文献6には、ストレッチャブル導電回路が、エラストマーシートと、導電性繊維材料とを備えることが記載されている。エラストマーシートの表面に、所定のパターンを備えた配線領域に対応して粘着層が形成される。導電性繊維材料は、所定の径及び長さを有する。導電性繊維材料は、粘着層に貼着され、配線領域に沿って、互いに電気的に導通するよう接触している。また、特許文献6には、エラストマーシートが伸縮あるいは屈曲したときに、導電性繊維材料が互いに電気的導通を維持しながら相対移動し、配線領域における電気的導通を維持することが記載されている。
【0008】
特許文献7には、粒子表面に導電性被覆を有する導電性酸化チタンが記載されている。
【0009】
特許文献8には、金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法が記載され、金属塩を還元して金属被覆層を形成することが記載されている。また、特許文献8には、金属酸化物微粒子としてルチル型酸化チタン微粒子を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平5-194856号公報
【文献】特開昭63-85171号公報
【文献】特開昭57-103204号公報
【文献】特開昭58-20722号公報
【文献】特開2017-101124号公報
【文献】国際公開第2015/174505号
【文献】国際公開第2007/102490号
【文献】特開2012-116699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電気部品及び電子部品の製造の際、導電性ペーストを所定の形状に印刷し、焼成することにより、電気回路及び/又は電子回路の配線及び電極等の導電部(総称して単に「配線」ともいう。)を形成することができる。導電性ペーストに含まれる導電性粒子は、球状やそれを加工したフレーク粉などの金属粒子を用いることが一般的である。
【0012】
近年、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することが試みられている。このような素材に形成された配線の場合、素材の屈曲及び/又は伸縮により配線が断線する恐れがある。
【0013】
そこで、本発明は、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを提供することを目的とする。具体的には、本発明は、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低く、電気抵抗の変化が比較的小さい電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線として用いることのできる、硬化物及び導電性パターンを提供することを目的とする。また、本発明は、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を含む衣服を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、電気部品及び電子部品に、伸縮が可能な電極を形成すために使用することのできるストレッチャブルペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0017】
(構成1)
本発明の構成1は、(A)酸化チタンに表面に金属被覆層を有する金属被覆粒子と、(B)樹脂とを含む導電性ペーストであって、酸化チタンが、粒子長と粒子短径を有する柱状形状であり、酸化チタンの粒子長が、粒子短径より長く、金属被覆粒子が、粒子長と粒子短径を有する柱状形状であり、金属被覆粒子の粒子長が、粒子短径より長い、導電性ペーストである。
【0018】
本発明の構成1によれば、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることができる。具体的には、本発明の構成1によれば、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低く、電気抵抗の変化が比較的小さい電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることができる。
【0019】
(構成2)
本発明の構成2は、(A)金属被覆粒子の金属層の材料が、Ag、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sn及びPbからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、構成1の導電性ペーストである。
【0020】
本発明の構成2によれば、金属被覆層が所定の金属を含むことにより、低い電気抵抗の電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。
【0021】
(構成3)
本発明の構成3は、(A)金属被覆粒子の粒子長が、1.5~30μmである、構成1又は2の導電性ペーストである。
【0022】
本発明の構成3によれば、所定の粒子長の金属被覆粒子を用いることにより、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることを確実にできる。具体的には、本発明の構成3によれば、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることを確実にできる。
【0023】
(構成4)
本発明の構成4は、(A)金属被覆粒子の粒子短径が、0.1~10μmである、構成1から3のいずれかの導電性ペーストである。
【0024】
本発明の構成4によれば、所定の粒子短径の金属被覆粒子を用いることにより、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることをより確実にできる。具体的には、本発明の構成4によれば、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることをより確実にできる。
【0025】
(構成5)
本発明の構成5は、(A)金属被覆粒子の比表面積が、0.2~20m2/gである、構成1から4のいずれかの導電性ペーストである。
【0026】
本発明の構成5によれば、金属被覆粒子が所定の比表面積を有することにより、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成するための、適切な大きさの金属被覆粒子を含む導電性ペーストを得ることができる。
【0027】
(構成6)
本発明の構成6は、(A)金属被覆粒子の粒子長と粒子短径との比(粒子長/粒子短径)が、3~300である、構成1から5のいずれかの導電性ペーストである。所定のアスペクト比(粒子長と粒子短径との比)の酸化チタンを用いることにより、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することをより確実にできる。
【0028】
(構成7)
本発明の構成6は、(A)金属被覆粒子の、金属被覆層の重量と、酸化チタンの重量との重量比(金属被覆層の重量:酸化チタンの重量)が、10:90~95:5の範囲である、構成1から6のいずれかの導電性ペーストである。
【0029】
本発明の構成7によれば、金属被覆粒子の酸化チタン:金属被覆層の重量比が、所定の範囲であることにより、適切な電気伝導率を有する金属被覆粒子を得ることができる。
【0030】
(構成8)
本発明の構成8は、(B)樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂である、構成1から7のいずれかの導電性ペーストである。
【0031】
本発明の構成8によれば、(B)樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂であることにより、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成する対象物に対して、高すぎる温度での加熱による損傷を与えることなく、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。
【0032】
(構成9)
本発明の構成9は、(B)樹脂が、熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び熱可塑エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含み、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が25℃以下であり、熱可塑性樹脂が液体状又は有機溶媒に溶解してなる液体状である、構成1から8のいずれかの導電性ペーストである。
【0033】
本発明の構成9によれば、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成する対象物が伸縮する材料からなる場合であっても、対象物の伸縮に追随することのできる電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。その結果、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を対象物に対して形成することができる。
【0034】
(構成10)
本発明の構成10は、(B)樹脂が、熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、構成1から8のいずれかの導電性ペーストである。
【0035】
本発明の構成10によれば、所定の(B)樹脂を用いることにより、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成する対象物が伸縮する材料からなる場合であっても、対象物の伸縮に追随することのできる電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することを確実にできる。その結果、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を対象物に対して形成することを確実にできる。
【0036】
(構成11)
本発明の構成11は、構成1から10のいずれかの導電性ペーストの硬化物である。
【0037】
本発明の導電性ペーストを、スクリーン印刷等の手段によって電気回路及び/又は電子回路の配線の形状に形成し、硬化することにより、伸縮及び/又は屈曲が可能な基材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。
【0038】
(構成12)
本発明の構成12は、構成1から10のいずれかの導電性ペーストを含む導電性パターンである。
【0039】
本発明の導電性パターンを、伸縮及び/又は屈曲が可能な基材の表面に形成して、電気回路及び/又は電子回路の配線とするならば、断線の可能性が低い配線を得ることができる。
【0040】
(構成13)
本発明の構成13は、構成11の導電性ペーストの硬化物、又は構成12の導電性パターンを含む衣服である。
【0041】
本発明の導電性ペーストを用いるならば、伸縮及び/又は屈曲が可能な衣服に、導電性ペースト硬化物、又は導電性膜若しくは導電性パターンとして配線を形成することができる。
【0042】
(構成14)
本発明の構成14は、構成1から10のいずれかの導電ペーストを用いたストレッチャブルペーストである。
【0043】
本発明の導電性ペーストは、伸縮した場合でも断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成するために好適に用いることができる、ストレッチャブルペーストである。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを提供することができる。具体的には、本発明によれば、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低く、電気抵抗の変化が比較的小さい電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを提供することができる。
【0045】
また、本発明によれば、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線として用いることのできる、硬化物及び導電性パターンを提供することができる。また、本発明によれば、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を含む衣服を提供することができる。
【0046】
また、本発明によれば、電気部品及び電子部品に、伸縮が可能な電極を形成すために使用することのできるストレッチャブルペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】参考例1の金属被覆粒子の走査型電子顕微鏡写真(10000倍)である。
【
図2】参考例1の金属被覆粒子の走査型電子顕微鏡写真(5000倍)である。
【
図3】参考例1の金属被覆粒子の製造に用いたTiO
2粒子の走査型電子顕微鏡写真(10000倍)である。
【
図4】参考例1の金属被覆粒子の製造に用いたTiO
2粒子の走査型電子顕微鏡写真(5000倍)である。
【
図5】本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子の粒子長L及び粒子短径Dを説明するための模式図である。
【
図6】複数の本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子を含む電極が、屈曲性及び/又は伸縮性の素材に形成された場合、(a)隣り合う金属被覆粒子と接触している様子、及び(b)素材が屈曲及び/又は伸縮した場合でも、隣り合う金属被覆粒子との接触を保つことができることを説明するための模式図である。
【
図7】複数の従来の球状の導電性粒子を含む電極が、屈曲性及び/又は伸縮性の素材に形成された場合、(a)隣り合う導電性粒子と接触している様子、及び(b)素材が屈曲及び/又は伸縮した場合に、隣り合う導電性粒子との接触を保つことができないことを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、(A)金属被覆粒子及び(B)樹脂を含む導電性ペーストである。本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子(単に、「金属被覆粒子」という場合がある。)は、酸化チタンに表面に金属被覆層を有する。金属被覆粒子の材料である酸化チタンは、粒子長と粒子短径を有する柱状形状であり、酸化チタンの粒子長が、粒子短径より長い。金属被覆粒子は、粒子長と粒子短径を有する柱状形状である。金属被覆粒子の粒子長は、粒子短径より長い。
【0049】
本明細書において、「粒子長」とは、粒子の表面の任意の二点の距離うち、最も長い距離(最大寸法)をいう。なお、多数の金属被覆粒子を含む粉末の電子顕微鏡写真(SEM写真)を撮影した場合、粒子長は、SEM写真の各粒子の輪郭の任意の二点の距離うち、最も長い距離(最大寸法)で近似できる。したがって、多数の金属被覆粒子を含む粉末の電子顕微鏡写真(SEM写真)を撮影し、SEM写真に投影された各粒子の輪郭の最大寸法を測定し、その平均値を算出することにより、金属被覆粒子の粒子長の値を得ることができる。また、SEM写真に投影された各粒子の輪郭を、公知の画像処理技術を用いて画像処理することにより、各粒子の輪郭の最大寸法を測定することができる。
【0050】
本明細書において、「粒子短径」とは、粒子長を示す二点を結ぶ直線に垂直な粒子の断面のうち最も断面積の大きい断面において、その断面の輪郭の任意の二点の距離うち、最も長い距離(最大寸法)をいう。なお、多数の金属被覆粒子を含む粉末の電子顕微鏡写真(SEM写真)を撮影した場合、粒子短径は、粒子長を示す二点を結ぶ直線に垂直な任意の直線の、各粒子の輪郭の内側部分の線分の長さのうち、最長の長さにより近似できる。したがって、多数の金属被覆粒子を含む粉末の電子顕微鏡写真(SEM写真)を撮影し、SEM写真に投影された各粒子の輪郭から、粒子長を示す二点を結ぶ直線に垂直な任意の直線の、各粒子の輪郭の内側部分の線分の長さのうち最長の長さを測定し、その平均値を算出することにより、金属被覆粒子の粒子短径の値を得ることができる。また、SEM写真に投影された各粒子の輪郭を、公知の画像処理技術を用いて画像処理することにより、各粒子の輪郭から、粒子短径を測定することができる。
【0051】
図5の模式図を用いて、SEM写真により得られた金属被覆粒子10の粒子長L及び粒子短径Dを測定する場合について説明する。粒子長Lは、SEM写真の金属被覆粒子10の輪郭の任意の二点の距離うち、最も長い距離(a点とb点との間の距離L)である。また、粒子短径Dは、粒子長Lを示す二点(a点及びb点)を結ぶ直線に垂直な任意の直線(例えば、c点及びd点を通る直線)の、各粒子の輪郭の内側部分の線分の長さのうち最長の長さ(c点とd点とを結ぶ線分の長さD)である。SEM写真中の各粒子の粒子長L及び粒子短径Dを測定し、その平均値を算出することにより、金属被覆粒子の粒子短径の値を得ることができる。なお、SEM写真の倍率は、所定の測定数の金属被覆粒子の全体像が画像中に存在するように適宜選択することができる。また、平均値を算出するための所定の測定数は、5以上であることが好ましく、10~100の範囲、好ましくは20~50である。
【0052】
本明細書において、「柱状形状」とは、粒子長が、粒子短径より長い形状のものをいう。
【0053】
一般的に、導電性ペーストに含まれる導電性粒子は、球状又はフレーク状の形状である(
図7(a)参照)。このような形状の導電性粒子を用いて屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に電気回路及び/又は電子回路の配線を形成する場合、素材の屈曲及び/又は伸縮により、隣り合う導電性粒子との接触が断たれることがある(
図7(b)参照)。この場合、電気的接触も断たれ、断線の原因となる。一方、
図6(a)に示すように、所定の柱状形状の導電性粒子(本発明の金属被覆粒子)を用いた場合、隣り合う導電性粒子との接触において、長細い柱状形状の側面部分がずれながら接触することができるため、
図6(b)に示すように、素材の多少の屈曲及び/又は伸縮が生じても、隣り合う導電性粒子との接触を保つことができる。そのため、柱状形状の導電性粒子を用いた場合には、断線の可能性が低くなる。
【0054】
通常、導電性粒子の形状は、球状又はフレーク状なので、従来の導電性粒子を含む導電性ペーストを用いた場合、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に電気回路及び/又は電子回路の配線を形成すると、断線の可能性が高い。しかしながら、柱状形状の導電性粒子を製造することは容易ではない。
【0055】
本発明者らは、粒子形状の絶縁性物質、具体的には酸化チタンの粒子を用意し、その表面に導電性の金属の被覆をすることにより、柱状形状の導電性の粒子を得ることができることを見出した。所定の柱状形状の酸化チタンの粒子は比較的容易に製造することが可能である。したがって、柱状形状の導電性の粒子として、酸化チタン(TiO2)の粒子が最適である。なお、本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子と比べて、金属単体の粒子の方が高い導電性を有する。しかしながら、一般的に、銀等の高い導電性を示す金属粒子は、本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子より高価である。また、微小な所定の柱状構造の金属粒子を製造することは容易ではない。したがって、本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子は、低コストで所望の導電性を有する配線等を形成するために最適である。また、酸化チタンの安定性は高いため、本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子を用いるならば、長寿命の配線等を得ることができる。
【0056】
また絶縁性物質としてアルカリ塩、例えばチタン酸カリウムなどを用いた場合、アルカリ塩不純物が電子部品に対して悪影響を及ぼす可能性がある。このような悪影響を防止するため、絶縁性物質として酸化チタンを用いることにより、電子部品に対して悪影響を及ぼすことなく電極を形成することができる。なお、酸化チタンの場合、所定の柱状形状の粒子を得ることは、比較的容易である。
【0057】
所定の柱状形状の酸化チタンを核とする本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子を用いるならば、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることができる。具体的には、金属被覆粒子を用いるならば、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低く、電気抵抗の変化が比較的小さい電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得ることができる。したがって、所定の金属被覆粒子を含む導電性ペーストを用いるならば、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材に対して電気回路及び/又は電子回路の配線を形成した場合でも、配線の電気抵抗の変化が比較的小さく、回路の断線の可能性が低いと考えられる。
【0058】
本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子において、金属被覆粒子の粒子長は、1.5~30μmであることが好ましく、より好ましくは1.8~15μm、さらに好ましくは2~6μmである。所定の粒子長の金属被覆粒子を含む導電性ペーストを用いて、所定の素材に電気回路及び/又は電子回路の配線を形成した場合、所定の素材の屈曲及び/又は伸縮によって、隣り合う導電性粒子との接触が断たれる可能性を減少させることができる。そのため、所定の粒子長の金属被覆粒子を含む導電性ペーストを用いることにより、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。
【0059】
本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子において、金属被覆粒子の粒子短径は、0.1~10μmであることが好ましく、より好ましくは0.15~5μmであり、さらに好ましくは0.2~0.3μmである。所定の粒子短径の金属被覆粒子を含む導電性ペーストを用いて、所定の素材に電気回路及び/又は電子回路の配線を形成した場合、所定の素材の屈曲及び/又は伸縮によって、隣り合う導電性粒子との接触が断たれる可能性をさらに減少させることができる。そのため、所定の粒子長であるとともに、所定の粒子短径である金属被覆粒子を含む導電性ペーストを用いることにより、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することをより確実にできる。
【0060】
本発明の導電性ペーストは、金属被覆粒子の比表面積が、0.2~20m2/gであることが好ましく、より好ましくは0.3~15m2/g、さらに好ましくは0.4~5m2/g、特に好ましくは0.5~3m2/gである。金属被覆粒子が所定の比表面積であることにより、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成するための導電性ペーストに、適切な大きさ(寸法)の金属被覆粒子を用いることができる。なお、金属被覆粒子の原料である酸化チタンの寸法は、金属被覆層の分だけ金属被覆粒子よりも小さい。
【0061】
本発明の導電性ペーストは、金属被覆粒子の長径と短径のアスペクト比が、3~300であることが好ましく、より好ましくは10~150、さらに好ましくは15~20である。所定のアスペクト比である金属被覆粒子を含む導電性ペーストを用いることにより、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することをより確実にできる。
【0062】
本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子において、原料となる酸化チタンの粒子長は、上述の金属被覆粒子の寸法となるように、適宜選択することができる。具体的には、原料となる酸化チタンの粒子長は、1~25μmであることができ、1~10μmであることが好ましく、より好ましくは1.5~6.0μm、さらに好ましくは1.5~5.2μmである。酸化チタンの粒子長を所定の範囲とすることにより、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成するための導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子を得ることができる。
【0063】
本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子において、原料となる酸化チタンの粒子短径は、上述の金属被覆粒子の寸法となるように、適宜選択することができる。具体的には、原料となる酸化チタンの粒子短径は、0.05~8μmであることができ、0.05~1μmであることが好ましく、より好ましくは0.1~0.3μmである。酸化チタンの粒子短径を所定の範囲とすることにより、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。また、上述の粒子長の範囲と、粒子短径の範囲とを組み合わせた酸化チタンを用いることにより、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる導電性ペーストを得るための金属被覆粒子を得ることができる。
【0064】
本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子において、原料となる酸化チタンの比表面積が、2~20m2/gであることが好ましく、より好ましくは3~15m2/g、さらに好ましくは5~10m2/g、特に好ましくは5~7m2/gである。酸化チタンが所定の比表面積であることにより、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成するための導電性ペーストのために、適切な寸法の金属被覆粒子を用いることができる。なお、金属被覆粒子の寸法は、金属被覆層の分だけ金属被覆粒子よりも大きい。
【0065】
本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子の金属層の材料は、Ag、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sn及びPbからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。金属被覆層が所定の金属を含むことにより、低い電気抵抗の電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。特に銀(Ag)は電気伝導率が高い。そのため、金属被覆層は、銀を含むことが好ましく、実質的に銀からなることが好ましい。「金属被覆層が実質的に銀からなる」とは、不可避的に混入する不純物を除き、金属被覆層が銀のみからなることを意味する。
【0066】
本発明の導電性ペースト組成物は、(A)金属被覆粒子の、金属被覆層の重量と、酸化チタンの重量との重量比(金属被覆層の重量:酸化チタンの重量)が、10:90~95:5の範囲であることが好ましく、20:80~95:5あるいは10:90~90:10の範囲であることがより好ましく、25:75~90:10の範囲が更に好ましい。
【0067】
金属被覆粒子の酸化チタン:金属被覆層の重量比が、所定の範囲であることにより、適切な電気伝導率を有する金属被覆粒子を得ることができる。酸化チタンの粒子寸法及び金属被覆層の厚さを制御することにより、酸化チタンと、金属被覆層との重量比を制御することができる。酸化チタンと、金属被覆層との重量比は、用途によって適宜選定することができる。高い電気伝導度を得る点から、金属被覆層の重量比が大きいことが好ましい。ただし、核となる酸化チタンの重量比が5重量%より小さいと、金属被覆層を形成することより所定の柱状形状を得ることが困難になる。金属被覆粒子の酸化チタンと金属被覆層との重量比が、所定の範囲であることにより、適切な電気伝導率を有する金属被覆粒子を得ることができる。
【0068】
金属被覆粒子は、その表面を、表面処理剤で処理することが好ましい。表面処理剤としては、脂肪酸及びその塩を好ましく用いることができる。金属被覆粒子の表面を表面処理剤で処理することにより、樹脂成分との湿潤性が増し、高い分散性が得られる。
【0069】
次に、本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子の製造方法を説明する。
【0070】
まず、上述の所定の形状の所定の柱状形状の酸化チタン(TiO2)を用意する。金属被覆粒子に用いることのできる所定の柱状形状の酸化チタン(TiO2)は、公知であり、商業的に入手可能である。所定の柱状形状の酸化チタンとして、例えば、石原産業株式会社製針状酸化チタン(FTLシリーズ、例えばFTL-300)を用いることができる。酸化チタンの結晶構造として、ルチル型の結晶を用いることができる。
【0071】
次に、所定の柱状形状の酸化チタンに金属を被覆する。酸化チタンに対する金属の被覆は、めっき法、真空蒸着法、及びCVD法などの公知の成膜方法により行うことができる。真空装置を用いずに比較的低コストに成膜できることから、被覆方法としては、めっき法(無電解めっき法)を用いることが好ましい。被覆方法の一例として、所定の柱状形状の酸化チタンに対して、めっき法により銀を被覆する場合について説明する。
【0072】
まず、所定の柱状形状の酸化チタンに対してセンシタイジング処理をする。具体的には、センシタイジング処理では、センシタイジング液に酸化チタンの粒子を浸漬し、酸化チタンの粒子に、金属化合物、例えばSn化合物を吸着させる。センシタイジング液としては、Sn化合物を含む溶媒を用いることができる。Sn化合物としては、例えば、塩化スズ(II)(SnCl2)、酢酸第一錫(Sn(CH3COCHCOCH3)2)、臭化第一錫(SnBr2)、ヨウ化第一錫(SnI2)、及び硫酸第一錫(SnSO4)等から選択して用いることができる。溶媒としては、例えば、アルコール、アルコール水溶液及び塩酸の希釈水溶液等から選択したものを用いることができる。
【0073】
センシタイジング処理後、酸化チタン粒子をろ過し、脱水洗浄することが好ましい。
【0074】
次に、センシタイジング処理をした酸化チタンに対して、アクチベーティング処理(活性化処理)を行う。具体的には、アクチベーティング処理では、アクチベーティング液にセンシタイジング処理をした酸化チタンの粒子を浸漬し、酸化チタンの粒子に、めっき触媒を吸着させる。めっき触媒としては、Pd、Ag又はCuを好ましく用いることができる。めっき法により銀を被覆する場合、めっき触媒としてはAgを用いることが好ましい。めっき触媒としてはAgを用いる場合、アクチベーティング液としては、硝酸銀及びアンモニア水を含む水溶液を用いることができる。
【0075】
アクチベーティング処理後、酸化チタン粒子をろ過し、脱水洗浄し、乾燥することが好ましい。乾燥は、例えば30~100℃の温度で、1~20時間程度、行うことができる。ろ過、脱水洗浄及び乾燥をすることにより、酸化チタン粒子と金属被覆層との密着性を高めることができる。
【0076】
なお、センシタイジング処理及びアクチベーティング処理は、数回、例えば、2~5回程度、繰り返し行うことができる。センシタイジング処理及びアクチベーティング処を複数回、繰り返して行うことにより、めっき触媒の吸着むらを低下させることができる。
【0077】
次に、センシタイジング処理及びアクチベーティング処理をした酸化チタンに対して、めっき処理を行う。具体的には、めっき処理では、めっき液にセンシタイジング処理及びアクチベーティング処理をした酸化チタン粒子を浸漬し、無電解めっきにより、酸化チタン粒子の表面に銀の金属被覆層を形成する。めっき液としては、例えば、硝酸銀及びアンモニア水を含む水溶液を用いることができる。
【0078】
無電解めっきによる銀の金属被覆層の形成の際には、めっき液の種類(配合する還元剤の種類)、濃度及び量、並びに無電解めっきの際の時間及び温度等の無電解めっきの条件を適切にすることにより、めっき液に含まれる銀のほぼ全部を金属被覆層として析出させることができる。無電解めっきの条件を適切にすることは、公知である。したがって、めっき液中に含まれる銀の量(例えば硝酸銀の量)を調節することにより、金属被覆層(銀)の重量と、酸化チタンの重量との重量比を制御することができる。また、金属の析出速度を測定し、無電解めっきの時間を調節することにより、金属被覆層(銀)の重量と、酸化チタンの重量との重量比を制御することもできる。
【0079】
以上、銀の金属被覆層を形成する場合を例に説明した。めっき処理において用いるめっき液を変更することにより、他の金属の金属被覆層を形成することができる。無電解めっき法により、Ag以外に、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sn及びPbなどの金属の金属被覆層を形成する方法は公知である。また、Co、Rh、In等の無電解めっきを行うことも可能である。したがって、無電解めっき法を用いて、これらの金属を材料とした金属被覆層を有する金属被覆粒子を製造することができる。
【0080】
以上の例のようにして、本発明の導電性ペーストに含まれる金属被覆粒子を製造することができる。
【0081】
次に、本発明の導電性ペーストについて説明する。本発明は、上述の金属被覆粒子と、樹脂とを含む導電性ペーストである。
【0082】
本発明の導電性ペーストは、導電性粒子として、上述の本発明の金属被覆粒子を含む。なお、本発明の導電性ペーストは、導電性粒子として、本発明の柱状形状の金属被覆粒子以外の導電性粒子を含むことができる。本発明の金属被覆粒子以外の導電性粒子としては、球状及び/又はフレーク粉導電性粒子を含むことができる。なお、本発明の導電性ペーストに含まれる導電性粒子は、本発明の金属被覆粒子と、本発明の金属被覆粒子以外の導電性粒子との重量割合(金属被覆粒子:その他の導電性粒子)が、98:2~70:30であることが好ましく、95:5~90:10であることが好ましい。本発明の金属被覆粒子以外の導電性粒子の材料としては、本発明の金属被覆粒子の金属被覆層に用いる金属材料と同様の材料を用いることができる。
【0083】
本発明の導電性ペーストは、(B)樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0084】
本発明の導電性ペーストに含まれる樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂であることにより、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成する対象物に対して、加熱による損傷を与えることなく、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。
【0085】
本発明の導電性ペーストに含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂から選択して用いることできる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、ポリイミド等が例示される。熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂のようなアミノ樹脂;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、脂環式等のエポキシ樹脂;オキセタン樹脂;レゾール型、ノボラック型のようなフェノール樹脂;シリコーンエポキシ、シリコーンポリエステルのようなシリコーン変性有機樹脂等が好ましい。光硬化性樹脂としては、UV硬化型アクリル樹脂、UV硬化型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
本発明の導電性ペーストに含まれる(B)樹脂が、熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び熱可塑エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。また、その熱可塑性樹脂のガラス転移温度が25℃以下であることが好ましく、その熱可塑性樹脂が液体状又は有機溶媒に溶解してなる液体状であることが好ましい。
【0087】
本発明の導電性ペーストに含まれる(B)樹脂が、熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂は、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0088】
本発明の導電性ペーストに含まれる(B)樹脂として、所定の樹脂を用いることにより、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成する対象物が伸縮する材料からなる場合であっても、対象物の伸縮に追随することのできる電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することを確実にできる。その結果、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を対象物に対して形成することを確実にできる。
【0089】
本発明の導電性ペーストは、金属被覆粒子と樹脂との重量比が、好ましくは90:10~70:30である。金属被覆粒子を含む導電性ペーストを基板に適用して塗膜又は配線を形成する場合、金属粒子と樹脂との重量比が上記範囲内であると、この塗膜又は配線を加熱して得られた導電膜又は配線は、望ましい比抵抗値を維持することができる。なお、導電性ペーストが、本発明の金属被覆粒子以外の導電性粒子を含む場合には、導電性粒子全体の重量比が上述の範囲であることが好ましい。
【0090】
本発明の導電性ペーストは、さらに溶媒を含むことができる。溶媒として、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びそれらに対応する酢酸エステルのようなエステル類、テルピネオール等が挙げられる。溶媒は、金属粒子及び樹脂の合計100質量部に対して、2~10質量部で配合することが好ましい。
【0091】
本発明の導電性ペーストの粘度は、スクリーン印刷等の所定の塗膜又は配線形成方法に適切に用いることのできる粘度に調整することができる。粘度の調整は、溶媒の量を適切に制御することにより行うことができる。具体的には、導電性ペーストの粘度が1~200Pa・sec、好ましくは2~150Pa・sec、より好ましくは5~120Pa・secとなるように、溶媒の配合量を調節することができる。導電性ペーストの粘度は、ブルックフィールド社製(B型)粘度計を用いて25℃の温度で、10rpmの回転速度で測定することができる。
【0092】
本発明の導電性ペーストは、さらに、無機顔料、有機顔料、シランカップリング剤、レベリング剤、チキソトロピック剤及び消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
【0093】
本発明の導電性ペーストは、上述の本発明の金属被覆粒子と、樹脂と、場合によりその他の成分とを、流星型撹拌機、ディソルバー、ビーズミル、ライカイ機、三本ロールミル、回転式混合機、又は二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合して製造することができる。このようにしてスクリーン印刷、浸漬、他の所望の塗膜又は配線形成方法に適する粘度を有する導電性ペーストに調製することができる。
【0094】
本発明は、上述の本発明の導電性ペーストを硬化させた硬化物である。硬化物が所定の導電性パターンとなるように、スクリーン印刷等により所定の素材の表面に印刷し、熱処理をすることにより、電気回路及び/又は電子回路の配線等を形成することができる。このようにして形成した導電性パターンは、導電性ペーストを含むことになる。本発明の導電性ペーストを用いて硬化物を形成することにより、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低い電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。
【0095】
本発明の導電性ペーストを用いて硬化物(電気回路及び/又は電子回路の配線等)を形成するための熱処理の温度・条件には特別な規定はないが、溶媒が十分に除去され、熱硬化性樹脂の場合には有機成分の架橋反応が生じる温度にすることが必要である。さらに、コストを低くするためには、低温かつ短時間の処置が好ましい。具体的には、熱処理の温度が25℃以上300℃以下であることが好ましく、50℃以上180℃以下であることがより好ましく、80℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。熱処理の時間は、5~120分であることが好ましく、10~60分であることがより好ましく、20~40分であることがさらに好ましい。なお、熱可塑性樹脂の場合には、低温での硬化が可能であるが、低コストの点から、硬化時間を短くすることが好ましい。そのため、熱可塑性樹脂を用いる場合であっても、上述のように室温より高い温度で熱処理することがより好ましい。
【0096】
本発明の導電性ペーストは、上述の導電性ペーストの硬化物、又は上述の導電性パターンを含む衣服である。衣服に機能性を持たせるために、電気回路及び/又は電子回路の配線を形成する場合がある。このような場合、本発明の導電性ペーストは、衣服に電気回路及び/又は電子回路の配線を形成するために、好適に用いることができる。本発明の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷等により素材となる布地に所定の配線パターンを形成し、熱処理を行うことにより、所定の電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができる。
【0097】
本発明は、上述の導電ペーストを用いたストレッチャブルペーストである。ストレッチャブルペーストとは、屈曲性及び/又は伸縮性を有する電極を形成するための導電性ペーストのことである。本発明の導電性ペーストは、ストレッチャブルペーストとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
<導電性ペーストの材料及び調製割合>
表1に、実施例及び比較例の導電性ペーストの組成を示す。なお、表1に示す配合量は、導電性粒子及び樹脂成分の合計重量を100重量部としたときの重量部である。実施例及び比較例の導電性ペーストは、導電性粒子(金属被覆粒子又は銀粒子)、樹脂成分等及び溶媒(希釈溶剤)からなる導電性ペーストである。実施例の導電性ペーストの導電性粒子として、金属被覆粒子を用いた。また、比較例の導電性ペーストの導電性粒子として、従来の銀粒子を用いた。
【0100】
<参考例1の金属被覆粒子>
金属被覆粒子の金属は、銀を主材料とした。例えば、参考例1の金属被覆粒子は、次のようにして製造することができる。参考例1の金属被覆粒子は、酸化チタン:金属(銀)被覆層の重量比が、50:50である。
【0101】
金属被覆粒子の原料となる酸化チタン(TiO
2)粉末として、石原産業株式会社製針状酸化チタン(FTL-300)を用いた。なお、FTL-300は、粒子長が5.15μm、及び粒子短径が0.27μmのルチル型TiO
2粉末であり、真比重が4.2、比表面積が5~7
m
2
/gである。
図3及び
図4に、原料となる酸化チタン粉末の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0102】
酸化チタンへの金属の被覆は次のようにして行った。まず、酸化チタン粉末に対して、センシタイジング処理を行った。具体的には、800gのイオン交換水に50gの酸化チタン粉末を分散させ、2.5gの塩化スズ(II)及び0.5gの塩酸を含むイオン交換水(20g)のセンシタイジング液を用いて、10分間、センシタイジング処理を行った。その後、酸化チタン粉末をろ過し、脱水洗浄を行った。
【0103】
次に、センシタイジング処理をした酸化チタン粉末に対して、アクチベーティング処理を行った。具体的には、900gのイオン交換水に上述のセンシタイジング処理をした酸化チタン粉末を分散させ、5gの硝酸銀及び10mlのアンモニア水(濃度25%)を含むイオン交換水(100g)のアクチベーティング液を用いて、10分間、センシタイジング処理を行った。その後、酸化チタン粉末をろ過し、脱水洗浄を行った。得られた酸化チタン粉末を、60℃で12時間、乾燥した。
【0104】
センシタイジング処理及びアクチベーティング処理をした酸化チタン粉末に対して、酸化チタン粒子の表面に銀の金属被覆層をめっき処理(無電解めっき)により形成した。具体的には、690gのイオン交換水に上述の処理をした酸化チタン粉末のうち20gを分散させ、32gの硝酸銀及び50mlのアンモニア水(濃度25%)を含むイオン交換水(50g)を添加した。その後、さらに10mlの硫酸を添加し、200mlのアンモニア水(濃度25%)をさらに添加した。このようにして得られた溶液(めっき液)に、11gのヒドラジン一水和物の水溶液(イオン交換水50g)を7分間かけて添加することにより、酸化チタン粒子の表面に銀の金属被覆層を形成し、金属被覆粒子を得た。なお、ヒドラジン一水和物の水溶液の添加は、撹拌しながら行った。ヒドラジン一水和物の水溶液の添加の終了後、15分以上撹拌を継続した。その後、金属被覆粒子をろ過し、脱水洗浄を行った。得られた金属被覆粒子を、60℃で12時間、乾燥した。以上のようにして、酸化チタン:金属(銀)被覆層の重量比が、50:50の参考例1の金属被覆粒子を製造することができる。
【0105】
図1及び
図2に、上述の方法により製造された参考例1の金属被覆粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。参考例1の金属被覆粒子の酸化チタン:金属被覆層の重量比は、50:50である。なお、酸化チタン粉末及び金属被覆粒子のBET比表面積を測定したところ、酸化チタン粉末のBET比表面積は2.80m
2/g、金属被覆粒子のBET比表面積は1.83m
2/gだった。金属被覆粒子の粒子長及び粒子短径の平均値を測定したところ、繊維長は5.25μm、繊維径は0.37μmだった。以上のことから、上述の製造方法により、所定の柱状形状の金属被覆粒子を得ることができることが明らかになった。
【0106】
図1及び
図2に示す金属被覆粒子は細長い柱状形状である。この金属被覆粒子により配線及び/又は電極を伸縮可能な素材表面に形成した場合には、金属被覆粒子の側面が互いに接触することになるで、素材が伸縮した場合にも、金属被覆粒子間の接触を保つことができ、断線を低減できる。また、この金属被覆粒子の細長い柱状形状は絡み合っているので、この金属被覆粒子により配線及び/又は電極を屈曲可能な素材表面に形成した場合にも、断線を低減できる。
【0107】
<金属被覆粒子A>
実施例1、2及び4の導電性ペーストのために用いた金属被覆粒子Aの、金属被覆層(銀)の重量と、酸化チタンの重量との重量比(金属被覆層の重量:酸化チタンの重量)は、90:10である。金属被覆粒子Aは、上述の参考例1の金属被覆粒子と同様に製造した。ただし、金属被覆層(銀):酸化チタンの重量比を90:10にするために、めっき処理(無電解めっき)の際のセンシタイジング処理及びアクチベーティング処理をした酸化チタン粉末の添加量を2.22gに変更して、金属被覆粒子Aを得た。金属被覆粒子Aのその他の製造条件は、参考例1の金属被覆粒子の製造条件と同様だった。金属被覆粒子Aの平均粒子径(D50)は22.6μm、比表面積は0.88m2/gだった。
【0108】
<金属被覆粒子B>
実施例3の導電性ペーストのために用いた金属被覆粒子Bの、金属被覆層(銀)の重量と、酸化チタンの重量との重量比(金属被覆層の重量:酸化チタンの重量)は、75:25である。金属被覆粒子Bは、上述の参考例1の金属被覆粒子と同様に、製造した。ただし、金属被覆層(銀):酸化チタンの重量比を75:25にするために、めっき処理(無電解めっき)の際のセンシタイジング処理及びアクチベーティング処理をした酸化チタン粉末の添加量を6.67gに変更して、金属被覆粒子Bを得た。金属被覆粒子Bのその他の製造条件は、参考例1の金属被覆粒子の製造条件と同様だった。金属被覆粒子Bの平均粒子径(D50)は16.0μm、比表面積は0.95m2/gだった。
【0109】
<銀粒子>
比較例1~3の導電性ペーストの導電性粒子として、銀粒子を用いた。比較例に用いた銀粒子は、下記の通りである。表1に、銀粒子の配合量を示す。なお、表1に示すの配合量は、導電性粒子及び樹脂成分の合計重量を100重量部としたときの重量部である。
銀粒子A:AA-40719(Metalor社製)。粒子形状は、鱗片状である。平均粒子径(D50)は2.1μm、比表面積は1.11m2/gである。
銀粒子B:SF7A(Ames Goldsmith社製)。粒子形状は、鱗片状である。平均粒子径(D50)は1.7μm、比表面積は0.87m2/gである。
銀粒子C:SFR-AG5(日本アトマイズ社製)。粒子形状は、球状である。平均粒子径(D50)は4.8μm、比表面積は0.23m2/gである。
【0110】
<樹脂成分>
表1に、実施例及び比較例に用いた樹脂成分の配合量を示す。なお、表1に示す配合量は、導電性粒子及び樹脂成分の合計重量を100重量部としたときの重量部である。実施例1~3及び比較例1~3に用いた樹脂成分は、ポリウレタン樹脂(Desmocoll406、Covestro社製)である。樹脂成分を、後述する溶媒に溶解させることにより、導電性ペーストの原料とした。
【0111】
実施例4に用いた樹脂成分は、下記の通りである。表1に示すイソシアネートの配合量は、溶媒を除いたイソシアネートの配合量である。7.2重量部のイソシアネートは、5.3重量部の有機溶媒(酢酸ブチルブタノール)に溶解された液体状のものを用いた。ポリオール及びアルミキレートは、液体状のものを用いた。実施例4に用いた樹脂成分は、導電性ペーストの加熱硬化の際に重合して、ポリウレタンになったものと考えられる。したがって、実施例4に用いた樹脂成分は、熱硬化性樹脂成分である。
イソシアネート:デュラネートMF-K60B(旭化成株式会社製)
ポリオール:デュラノールT5650E(旭化成株式会社製)
アルミキレート:プレンアクトAL-M(味の素株式会社製)
【0112】
<溶媒>
実施例及び比較例に用いた樹脂成分は、表1に示す配合量の溶媒(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、和光純薬工業株式会社製)に溶解させた樹脂溶液として用いた。なお、表1に示すの配合量は、導電性粒子及び樹脂成分の合計重量を100重量部としたときの重量部である。なお、実施例2及び比較例1及び2溶媒の配合量は、実施例1のスクリーン印刷と同程度の印刷状態となるように調節した結果、表1に示す配合量に決定した。具体的には、実施例1の導電性ペーストと同程度の粘度になるように、実施例2及び比較例1及び2の溶媒の配合量を調節した。比較例4については、球状の粒子形状の銀粒子Cを用いたため、導電性ペーストを低粘度化すると銀粒子の沈降分離が生じてしまう。そのため、比較例4の場合には、銀粒子の沈降分離が生じない程度の粘度とするために、溶媒の配合量を調節した。
【0113】
<導電性ペーストを調製>
表1に示す割合の所定の材料を、プラネタリーミキサーで混合し、さらに三本ロールミルで分散し、ペースト化することによって導電性ペーストを調製した。
【0114】
<粘度の測定方法>
実施例及び比較例の導電性ペーストの粘度は、ブルックフィールド社製(B型)粘度計を用いて25℃の温度で測定した。粘度の測定は、実施例及び比較例のそれぞれの導電性ペーストに対して、10rpmの回転速度で行った。
【0115】
<比抵抗の測定方法>
アルミナ基板上に、実施例及び比較例の導電性ペースト(樹脂組成物)を、スクリーン印刷機で、幅:1mm、長さ:71mmの、比抵抗測定用の配線パターンを印刷し、定温乾燥機で、120℃で30分間、加熱硬化させた。得られた配線パターンの硬化物(単に「配線パターン」という。)の膜厚を、(株)東京精密製表面粗さ形状測定機(型番:サーフコム1500SD-2)を用いて測定した。配線パターンの電気抵抗値を、(株)TFFケースレーインスツルメンツ製デジタルマルチメーター(型番:2001)を用いて測定した。電気抵抗値及び配線パターンの寸法から、比抵抗を算出した。表2に、実施例及び比較例の比抵抗を示す。
【0116】
<配線抵抗の測定方法>
次に、寸法が40mm×140mmのポリウレタンシート上に、実施例及び比較例の導電性ペースト(樹脂組成物)を、スクリーン印刷機で、幅:1mm、長さ:90mmの、配線抵抗測定用の配線パターン(単に「配線パターン」という。)を印刷し、定温乾燥機で、120℃で30分間、加熱硬化させた。得られた配線パターンの硬化物(単に「配線パターン」という。)の電気抵抗値(「配線抵抗」という。)を、(株)TFFケースレーインスツルメンツ製デジタルマルチメーター(型番:2001)を用いて測定した。表2に、伸縮ストレスを与える前の、実施例及び比較例の配線抵抗(初期配線抵抗)を示す。
【0117】
次に、配線パターンが形成させたウレタンシートの長さ方向に、伸縮ストレスを5サイクル与えた後、配線抵抗を測定した。具体的には、配線パターンを形成したウレタンシートを、所定の長さになるまで長さ方向に引張力を加えて伸張させた後に、所定の長さで15分間保持した。その後、伸張のための引張力を解放した。引張力の解放によりウレタンシート(及び配線パターン)が縮んだ後に、再度、ウレタンシートを所定の長さになるまで引張力を加えて伸張させ、15分保持した。このようなウレタンシートの伸張、保持及び引張力の解放を5サイクル繰り返した後に、配線抵抗を測定した。なお、ウレタンシートの伸張は、伸張しない状態(初期の状態)を1倍として、配線パターンの長さ方向の長さが1.3倍の長さになるまで伸張させることにより行った。
【0118】
表2に、配線パターンが形成させたウレタンシートに伸縮ストレスを5サイクル与えた後の、配線抵抗の測定結果を示す。表1において、「伸長」とは、5回目の伸長状態で15分保持した後の、伸長状態の配線パターンの配線抵抗である。表1において、「解放」とは、5回目の伸長をして15分保持した後に、伸張のための引張力を解放して、配線パターンが縮んだ後の配線パターンの配線抵抗である。また、「抵抗変化率」とは、初期配線抵抗と、5サイクル後の配線抵抗との比(5サイクル後の配線抵抗/初期配線抵抗)である。
【0119】
<測定結果>
表2から明らかなように、本発明の導電性ペーストを用いて製造された実施例1~4の配線パターンは、伸縮ストレスを5サイクル与えた後の配線抵抗が、伸長後の場合で159.2Ω(実施例3)以下、伸長ストレスの解放後で88.4Ω(実施例3)以下という低い値だった。また、実施例1~4の初期配線抵抗との比は、伸長後の場合で9.6(実施例2)以下、伸長ストレスの解放後で4.6(実施例2)以下という低い値だった。これに対して、従来の銀粒子を含む比較例1及び2の配線パターンは、伸縮ストレスを5サイクル与えた後の配線抵抗が、伸長後の場合で509.8Ω(比較例2)以上、伸長ストレスの解放後で115.4Ω(比較例2)以上という高い値だった。また、比較例1及び2の初期配線抵抗との比は、伸長後の場合で42.1(比較例1)以上、伸長ストレスの解放後で10.6(比較例2)以上という高い値だった。比較例3の導電性ペーストで形成した配線パターンは、初期状態において、電気的導通を示さず、比抵抗及び初期配線抵抗の測定が不可能だった。そのため、表中の比較例3の該当箇所には「N/A」と記載した。
【0120】
以上の結果から、本発明の導電性ペーストを用いるならば、屈曲及び/又は伸縮が可能な素材の表面に、断線の可能性が低く、電気抵抗の変化が比較的小さい電気回路及び/又は電子回路の配線を形成することができるといえる。
【0121】
【0122】
【符号の説明】
【0123】
10 金属被覆粒子
L 金属被覆粒子の粒子長
D 金属被覆粒子の粒子短径