(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】具材入り食物繊維含有ソース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20221020BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20221020BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L33/21
(21)【出願番号】P 2018144598
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 まり子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 知之
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104003(JP,A)
【文献】特開2015-208315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性食物繊維を含む具材と、難消化性デキストリンとを含有し、食物繊維含量が5~30質量%であり、
該具材が、根菜類及びキノコ類からなる群から選択される1種以上であり、
前記具材と前記難消化性デキストリンとの含有質量比が、前者:後者として、1:0.2~30である具材入り食物繊維含有ソース(ただし、ニンジン及びタマネギの両方を含有するものを除く)。
【請求項2】
シチュー、ハンバーグ、パスタ料理又は米飯類用である請求項
1に記載の具材入り食物繊維含有ソース。
【請求項3】
水不溶性食物繊維を含む具材と、難消化性デキストリンとを含有し、食物繊維含量が5~30質量%であ
り、該具材が、根菜類及びキノコ類からなる群から選択される1種以上である、具材入り食物繊維含有ソース(ただし、ニンジン及びタマネギの両方を含有するものを除く)の製造方法であって、
原料ソース、前記具材及び前記難消化性デキストリンを混合する混合工程と、それらの混合物を加熱する工程とを有し、
前記混合工程において、前記具材と前記難消化性デキストリンとの配合質量比を、前者:後者として、1:0.2~30とする、具材入り食物繊維含有ソースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形の具材と食物繊維とを含有するソースに関する。
【背景技術】
【0002】
食物繊維は、野菜などの食物に含まれ、ヒトの消化酵素で消化されない成分であり、セルロースのような水不溶性食物繊維と、難消化性デキストリンのような水溶性食物繊維とが存在する。食物繊維は、便秘予防をはじめとする整腸効果だけでなく、消化管内で腸内細菌に影響を与えるなどして健康機能に調節的な役割を持つことが明らかになり、近年の健康志向の高まりを背景に、食品に食物繊維を積極的に配合し、食味食感が良好で栄養補給ができるという、従来の食品の機能のみならず、更に健康に資する機能を持った食品の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、調理処理を施した油脂を含む原料、小麦粉、高甘味度甘味料を含有する液状食品を主体とした低カロリー食品に、任意成分として食物繊維を0.1~5質量%含有させることができる旨記載され、具体例として、難消化性デキストリンを含有するカレーソースが記載されている。特許文献2には、サラダドレッシングとして使用される液状調味料に食物繊維を多量に配合すると、サラダのフレッシュな風味がぼやけるという課題に鑑みて、食物繊維を含むニンジン及びタマネギが配合された液状調味料に、難消化性デキストリンを6%以上配合することが記載されている。特許文献3には、健康志向に対応した液状調味料として、難消化性デキストリンを20~60質量%含有するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-3931号公報
【文献】特開2016-104003号公報
【文献】特開2017-216943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食物繊維のような機能性成分を食品に配合する場合、その機能性成分によって期待される効果が食品において十分に発揮されることは当然に重要であるが、食品が本来有する風味等が機能性成分の配合によって損なわれないことも重要である。例えば、水不溶性食物繊維を、液状又はペースト状の食品であるソースにそのまま配合すると、水不溶性食物繊維がソース中に均一に分散しない、水不溶性食物繊維がソースと混ざらずに分離してしまうといった問題が生じ、ソースの風味低下に繋がるおそれがある。また、難消化性デキストリンのような水溶性食物繊維のみをソースに配合すると、ソースの風味が低下するという問題がある。
【0006】
ソースは、基本的には、同じ液状又はペースト状の食品であるスープのようにそれ単独で食されるものではなく、食品全体の食味食感を調える目的で、他の食材と併用されるものであり、ソース自体が他の食材の風味を低下させることがないよう、細心の注意をもって使用する必要がある。このことは、食物繊維含有ソースにも当てはまることであるが、該ソースについては更に、食物繊維を含有することに起因して前記の問題があり、風味等の点で改良の余地がある。
【0007】
本発明の課題は、食物繊維を高含有しながらも風味に優れ、食物繊維を効率良く摂取できる具材入り食物繊維含有ソースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するべく種々検討した結果、ソースに水不溶性食物繊維を固形の具材として配合するとともに、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンを配合し、且つソース全体の食物繊維含量を特定範囲に調整することにより、ソースの風味低下などの、食物繊維の配合に起因する不都合を防止しつつ、健康に資する機能を持ったソースが得られることを知見した。
【0009】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、水不溶性食物繊維を含む具材と、難消化性デキストリンとを含有し、食物繊維含量が5~30質量%である具材入り食物繊維含有ソースである。
【0010】
また本発明は、水不溶性食物繊維を含む具材と、難消化性デキストリンとを含有し、食物繊維含量が5~30質量%である、具材入り食物繊維含有ソースの製造方法であって、原料ソース、前記具材及び前記難消化性デキストリンを混合する混合工程と、それらの混合物を加熱する工程とを有し、前記混合工程において、前記具材と前記難消化性デキストリンとの配合質量比を、前者:後者として、1:0.2~30とする、具材入り食物繊維含有ソースの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、食物繊維を高含有しながらも風味に優れ、食物繊維を効率良く摂取できる具材入り食物繊維含有ソースが提供される。本発明によって提供される具材入り食物繊維含有ソースは、具材を含有しているため、具材を含有しないソースに比して食感に優れるとともに、具材の存在による視覚的な効果が期待でき、他の食材にかけて使用した場合には、その食材の装飾性を向上させることが可能であり、併用する他の食材に対し、視覚的にも食感的にもアクセントを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の具材入り食物繊維含有ソース(以下、単に、「具材入りソース」ともいう。)は、水不溶性食物繊維を含む具材を含有する。斯かる具材は、一定の大きさ、形状を持った固形物である。斯かる具材としては、食品として喫食可能で水不溶性食物繊維を含むものを特に制限無く用いることができ、例えば、ホウレンソウ、アシタバ、シソ等の葉茎菜類;ゴボウ、ニンジン、タマネギ、カブ、ダイコン、レンコン等の根菜類;ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ等のイモ類(根菜類);シイタケ、マイタケ、エノキタケ、ナメコ、マッシュルーム、シメジ、ポルチーニ、エリンギ等のキノコ類;アズキ、インゲン豆、エンドウ豆等の豆類;アーモンド、クルミ等の木の実類;グレープフルーツ、キウイ等の果実類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性食物繊維を含む具材の中でも特に、根菜類及びキノコ類は、食物繊維含量が高く、ソースの具材としても一般的であることから、本発明で好ましく用いられる。
【0013】
本発明の具材入りソースにおいて、水不溶性食物繊維を含む具材の形状及び大きさは特に制限されず、具材の種類や使用量等によっても適宜設定することができる。具材の食感を感じやすくして具材入りソースの風味をより一層高めると共に、具材の視覚的効果を高める観点から、具材の最小差渡し長さは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上である。ここでいう「最小差渡し長さ」とは、具材の平面視における差渡し長さの最小値であり、具材を任意の方向に投影した場合の投影図における差渡し長さの最小値とも言える。つまり、本発明の具材入りソースにおいて、水不溶性食物繊維を含む具材は、その形状によらず、平面視における差渡し長さの最小値が1mm以上であることが好ましい。例えば、具材が直径10mmの球形状であれば、その球形状の具材の最小差渡し長さは10mmであり、また、具材が8mm×15mm×40mmの拍子木形状であれば、その拍子木形状の具材の最小差渡し長さは8mmである。
【0014】
また、本発明の具材入りソースにおいて、具材の最大差渡し長さは、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下である。ここでいう「最大差渡し長さ」とは、具材の平面視における差渡し長さの最大値であり、具材を任意の方向に投影した場合の投影図における差渡し長さの最大値とも言える。具材入りソース中の具材が大きすぎると、具材の風味が強くなりすぎて却ってソースの風味を損ねるおそれがある。その点を考慮すると、具材の最大差渡し長さは前記範囲が好ましい。
【0015】
本発明の具材入りソースは更に難消化性デキストリンを含有する。難消化性デキストリンには、植物から抽出された天然物と、人為的に合成された人工物とが存在するが、本発明の具材入りソースでは何れも用いることができ、水素添加により製造される還元難消化性デキストリンを用いることもできる。人工物の難消化性デキストリンは、一般に、小麦、米、豆類、イモ類、タピオカなどの植物由来の澱粉を出発原料として、これを加酸及び/又は加熱し、必要に応じ酵素処理を行うなどして製造される。
【0016】
難消化性デキストリンとしては、食物繊維含量が80質量%以上、特に85~95質量%のものが特に好ましい。ここでいう「食物繊維含量」は、AOAC 2001.3に準拠し、酵素-HPLC法で定量された値である。
【0017】
本発明の具材入りソースは、食物繊維含量が5~30質量%であり、好ましくは8~25質量%、より好ましくは10~22質量%である。ここでいう「食物繊維含量」は、本発明のソースに含有される水不溶性食物繊維及び水溶性食物繊維の総量である。ソースの食物繊維含量が5質量%未満であると、食物繊維を効率良く摂取することが困難となり、ソースの食物繊維含量が30質量%を超えると、ソース全体としての風味がバランスに欠け、喫食しづらいものとなる。
【0018】
本発明の具材入りソースにおいて、水不溶性食物繊維を含む具材の含有量は、該ソースの食物繊維含量が5~30質量%となることを前提として、該ソースの全質量に対して、好ましくは1~60質量%、より好ましくは3~40質量%である。
また、本発明の具材入りソースにおいて、難消化性デキストリンの含有量は、該ソースの食物繊維含量が5~30質量%となることを前提として、該ソースの全質量に対して、好ましくは1~30質量%、より好ましくは5~15質量%である。
【0019】
本発明の具材入りソースにおいて、水不溶性食物繊維を含む具材と難消化性デキストリンとの含有質量比は、前者:後者として、好ましくは1:0.2~15、より好ましくは1:0.3~9である。水不溶性食物繊維を含む具材が、最小差渡し長さ1mm以上且つ最大差渡し長さ100mm以下のものである場合に、水不溶性食物繊維を含む具材と難消化性デキストリンとの含有質量比が前記特定範囲にあると特に好ましい。難消化性デキストリンの量が水不溶性食物繊維を含む具材の量に対して少なすぎると、相対的に具材の量が多すぎることになり、固形物を除くソース部のコクが足りずに、ソース全体の風味のバランスが低下するおそれがある。一方、難消化性デキストリンの量が水不溶性食物繊維を含む具材の量に対して多すぎると、難消化性デキストリンに由来する甘みが強く感じられ、ソース全体の風味のバランスが低下するおそれがある。
【0020】
本発明の具材入りソースは、前記「水不溶性食物繊維を含む具材」以外の具材を含有してもよく、斯かる具材として、例えば、畜肉類、魚介類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の具材入りソースは、ソース部を含有する。ソース部は、具材入りソースにおいて常温(25℃)で流動性を有している部分であり、水分が主体の液状物又は流動物である。具材入りソースから固形物(例えば具材)を取り除くとソース部が得られる。ソース部としては、公知のソースを用いることができ、常法に従って製造することができる。ソース部として使用可能なソースとしては、例えば、ミートソース、ホワイトソース、クリームソース、カルボナーラソース、オイルソース、トマトソース、バターソース、醤油ソース等が挙げられる。また、ソース部の原材料としては、一般にソースの原材料として使用されるものを特に制限無く使用することができ、例えば、水、出汁、フォン、牛乳、塩、砂糖、卵、バター、生クリーム、肉・野菜・豆類のペースト、ピューレ状物、醤油、酢、ブイヨン、コンソメ、酸味料、乳化剤、増粘剤、安定剤、着色料等が挙げられ、ソース部を構成するソースの種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明の具材入りソースは、固形物を除いたソース部の品温20℃における粘度が、5~10000mPa・sであることが好ましく、4000~7000mPa・sであることがより好ましい。ここでいう「粘度」は、JIS Z 8803「液体の粘度-測定方法」に準拠し、B型粘度計で測定された値である。ソース部の粘度が前記特定範囲にあるソースは、ソース部と具材の一体感が高く、具材の食感も楽しめるという特長を有する。ソース部の粘度は、本発明の具材入りソースの製造時に水を添加し、あるいはソースの加熱条件を適宜調整して水分を蒸発させることで、調整することができる。
【0023】
本発明の具材入りソースは、加熱加圧処理(レトルト処理)されたレトルトソースであってもよい。特に、水不溶性食物繊維を含む具材として根菜類やキノコ類を使用した場合に、これらを含有するソースをレトルト処理すると、保存性が向上する一方で、レトルト処理に起因する不快なレトルト臭が生じ、根菜類やキノコ類の異味異臭と相俟って、該ソースの風味が著しく低下するおそれがあるところ、本発明によれば、斯かる不都合が回避され、風味及び保存性に優れる具材入りソースが得られる。その理由は定かではないが、主として難消化性デキストリンの作用によるものと推察される。
【0024】
本発明の具材入りソースは、典型的には、他の食材にかけて食され、それ自体の喫食が目的とされる「スープ」とは異なる。本発明の具材入りソースは、例えば、シチュー、ハンバーグ、パスタ料理、米飯類に適用でき、特にパスタソースとして好適である。本発明の具材入りソースをパスタソースとして用いる場合、併用されるパスタ料理としては、例えば、スパゲティ、マカロニ、グラタン等を例示できる。
【0025】
次に、本発明の具材入りソースの製造方法について説明する。本発明の具材入りソースの製造方法は、前述した本発明の具材入りソースの製造に好適であり、原料ソース、水不溶性食物繊維を含む具材及び難消化性デキストリンを混合する混合工程と、それらの混合物を加熱する工程とを有する。水不溶性食物繊維を含む具材及び難消化性デキストリンについては前述したとおりである。原料ソースは、製造結果物たるソースにおいて前記ソース部(常温で流動性を有している部分)となるものであり、前述した原材料から構成される。原料ソースは、例えば、ミートソース、ホワイトソース、クリームソース、カルボナーラソース、オイルソース、トマトソース、バターソース、醤油ソース、和風だし入りソース等であり得る。
【0026】
前記混合工程において、原料ソース、水不溶性食物繊維を含む具材及び難消化性デキストリンを混合する際の手順は特に限定されず、例えば、1)予め製造された原料ソースに、水不溶性食物繊維を含む具材及び難消化性デキストリンを配合してもよく、あるいは2)原料ソースの製造途中でその中間製造物に、水不溶性食物繊維を含む具材及び難消化性デキストリンを配合してもよい。
【0027】
前記混合工程において、水不溶性食物繊維を含む具材と難消化性デキストリンとの配合質量比は、製造結果物たる具材入りソースの食物繊維含量が前述したように5~30質量%となることを前提として、前者:後者として、1:0.2~30、好ましくは1:0.3~9である。
【0028】
また、前記混合工程において、水不溶性食物繊維を含む具材の配合量は、製造結果物たる具材入りソースの食物繊維含量が5~30質量%となることを前提として、湿重量基準で、原料ソース100質量部に対して、好ましくは1~60質量部、より好ましくは3~40質量部である。
【0029】
前記混合工程後に、原料ソース、水不溶性食物繊維を含む具材及び難消化性デキストリンの混合物を加熱する方法は特に限定されず、この種のソースを加熱するのに利用可能な公知の方法を利用することができる。斯かる混合物の加熱は通常、水不溶性食物繊維を含む具材の内部(中心部)が加熱される条件で実施される。斯かる混合物の加熱工程を経て、目的の具材入り食物繊維含有ソースが得られる。
【0030】
前記加熱工程後に、必要に応じ、具材入り食物繊維含有ソースをレトルト処理(加熱加圧処理)してもよい。レトルト処理は、常法に従って行うことができる。レトルト処理の条件は、ソースの種類、水不溶性食物繊維を含む具材の種類やサイズ等に応じて適宜決定すればよく、特に制限されないが、例えば、ソース部の品温110~130℃が5~25分間維持される条件を例示できる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。なお、実施例4は参考例である。
【0032】
〔実施例1~17及び比較例1~11〕
水不溶性食物繊維を含む具材として、根菜類のゴボウ(食物繊維含量約6g/100g)、キノコ類のシメジ(食物繊維含量約3g/100g)を用い、食物繊維非含有具材として、卵焼きを用いた。ゴボウは2mm×2mm×40mmに切りそろえ、水にさらした後用いた。シメジは軸が4mm程度のものを選び、長さ40mmに切りそろえて用いた。卵焼きは厚さ2mmの薄焼きにしたものを、幅3mm、長さ40mmに切りそろえて用いた。
市販のコンソメの素とカツオエキスで和風だしを作り、調味料で味付けし、片栗粉でとろみ付けしたもの(醤油ソースないし和風だし入りソース)を原料ソースとして用いた。この原料ソースの品温20℃における粘度は30mPa・sであった。原料ソースを鍋にいれて加熱しながら、該原料ソースに水溶性食物繊維として難消化性デキストリン(松谷化学工業製ファイバーソル2;食物繊維含量約90質量%)又はポリデキストロース(光洋商会製スターライトIII;食物繊維含量約75質量%)を所定量配合し、更に具材を所定量配合し、該具材に火が通るまでこれらの混合物を加熱し、目的のソースを得た。下記表1~表3に各原材料の配合量を示す。
得られたソースを、耐熱性の容器1個当たり100g密封し、120℃で15分間加熱加圧処理(レトルト処理)し、レトルトソースを得た。
【0033】
〔試験例〕
各実施例及び比較例のレトルトソースを、それが入った容器ごと庫内温度5℃の冷蔵庫で6時間保管した後、該容器を開封して中身のレトルトソースを耐熱性の皿に移し、電子レンジで500W、90秒間加熱してから、訓練された10名の専門パネラーに喫食してもらい、その際の風味を下記評価基準で評価してもらった。結果を10名の評価点の平均値として下記表1~表3に示す。
【0034】
<風味の評価基準>
5点:ソース部の風味と具材の風味とがよく調和しており、非常に良好。
4点:ソース部の風味と具材の風味との調和感があり、良好。
3点:具材の風味に比べてソース部の風味がやや弱いが、普通の美味しさは感じられる。
2点:具材の風味に比べてソース部の風味が弱く、不良。
1点:具材の風味に比べてソース部の風味が弱すぎるか異味があり、非常に不良。
【0035】
【0036】
表1に示すとおり、各実施例は、水不溶性食物繊維を含む具材及び難消化性デキストリンの双方を含有し且つ食物繊維含量が5~30質量%であることに起因して、これらを満たさない各比較例に比して、ソースの風味に優れていた。
比較例1は、食物繊維として水不溶性食物繊維を含む具材しか含有しないため食物繊維含量が少なく、また、食物繊維含量を増加する目的で比較例2のように該具材を増加すると、ソース全体の風味のバランスが著しく低下する結果となった。
比較例4は、具材として食物繊維を含まない卵焼きを用いたため、併用した難消化性デキストリンの影響で、ソース部の風味と具材の風味とのバランスが悪かった。一方、比較例7は、比較例4のソースから難消化性デキストリンを除いたものに相当するところ、難消化性デキストリンを含有していないためにソースの風味は良いものの、食物繊維含量がゼロであり、食物繊維を効率良く摂取するという目的に合致したものではない。
比較例5及び6は、水溶性食物繊維としてポリデキストリンを用いたため、ソース全体の風味のバランスとしては劣るものであった。
【0037】
【0038】
【0039】
表2及び表3に示すとおり、各実施例は、ソース中の食物繊維含量が5~30質量%の範囲にあることに起因して、ソース中の食物繊維含量が斯かる範囲から外れている各比較例に比して、ソースの風味に優れていた。
また、表2と表3とを対比すると、水不溶性食物繊維を含む具材の配合量が相対的に多い表2掲載のソースの方が、これが相対的に少ない表3掲載のソースに比して、ソースの風味が高評価であったことから、水不溶性食物繊維を含む具材の配合量は、湿重量基準で、原料ソース100質量部に対して、4質量部程度ではやや少なく、30質量部程度が好ましいことがわかる。