(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】極端紫外光生成装置及びターゲット供給装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221020BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
(21)【出願番号】P 2019546504
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2017036497
(87)【国際公開番号】W WO2019069454
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】中野 真生
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130443(WO,A1)
【文献】特開2015-062202(JP,A)
【文献】特開2008-094019(JP,A)
【文献】特開平08-126626(JP,A)
【文献】国際公開第2017/102931(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0193997(US,A1)
【文献】特開2008-173909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
41/00
H05G 1/00
2/00
B41J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
液状の前記ターゲット物質を前記チャンバ内に出力するノズルを備えたターゲット供給部と、
前記ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的に前記ターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応する前記ピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、前記探索処理の結果に基づいて、前記極端紫外光の生成に用いる前記ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記探索処理を実施する前に前記ピエゾ素子を事前駆動させ、前記事前駆動を実施した後に前記探索処理を開始
し、
前記事前駆動は、前記極端紫外光を発生させている極端紫外光発生工程中に前記ピエゾ素子に印加する定格電圧かつ定格周波数の電圧波形と比較して、印加電圧及び周波数のうち少なくとも一方が大きい電圧波形を前記ピエゾ素子に印加することにより、前記ピエゾ素子を駆動する高負荷運転である極端紫外光生成装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記事前駆動の際に前記ピエゾ素子に印加する電圧波形の印加電圧は、前記定格電圧よりも20V以上大きい電圧である極端紫外光生成装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記事前駆動の際に前記ピエゾ素子に印加する電圧波形の周波数は、前記定格周波数よりも30kHz以上大きい周波数である極端紫外光生成装置。
【請求項4】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
液状の前記ターゲット物質を前記チャンバ内に出力するノズルを備えたターゲット供給部と、
前記ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的に前記ターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応する前記ピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、前記探索処理の結果に基づいて、前記極端紫外光の生成に用いる前記ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記探索処理を実施する前に前記ピエゾ素子を事前駆動させ、前記事前駆動を実施した後に前記探索処理を開始し、
前記事前駆動は、前記極端紫外光を発生させている極端紫外光発生工程中に前記ピエゾ素子に印加される定格電圧かつ定格周波数の電圧波形と同じ印加電圧かつ同じ周波数の電圧波形を前記ピエゾ素子に印加することにより、前記ピエゾ素子を駆動する定格運転である極端紫外光生成装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記制御部は、
前記事前駆動を、予め設定された規定時間以上実施した後に、前記探索処理を開始する極端紫外光生成装置。
【請求項6】
請求項
4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記事前駆動の動作時間を計測するタイマを備え、
前記制御部は、
予め設定された規定時間以上の前記事前駆動を実施した後に、前記探索処理を開始する極端紫外光生成装置。
【請求項7】
請求項
5に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記規定時間は、3分以上に設定されている極端紫外光生成装置。
【請求項8】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
液状の前記ターゲット物質を前記チャンバ内に出力するノズルを備えたターゲット供給部と、
前記ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的に前記ターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応する前記ピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、前記探索処理の結果に基づいて、前記極端紫外光の生成に用いる前記ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、
前記ピエゾ素子の温度を計測する温度センサと、
前記ピエゾ素子の温度が予め規定された規定条件に合致するか否かを判定する温度判定部と、
を備え、
前記制御部は、
前記探索処理を実施する前に前記ピエゾ素子を事前駆動させ、前記事前駆動を実施した後に前記探索処理を開始し、
前記事前駆動の実施によって前記ピエゾ素子の温度が前記規定条件に合致した場合に、前記探索処理を開始する極端紫外光生成装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記規定条件は、予め定められた時間範囲内に計測された前記ピエゾ素子の温度の最大値と最小値の差が0.2℃以下という条件である極端紫外光生成装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記規定条件は、前記ピエゾ素子の温度が、予め定められた規定温度の±0.1℃の範囲内であり、
前記規定温度は、前記極端紫外光を発生している極端紫外光発生工程中における前記ピエゾ素子の温度より高い温度であり、かつ、40.0℃から70.0℃の範囲内に規定された温度である極端紫外光生成装置。
【請求項11】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
液状の前記ターゲット物質を前記チャンバ内に出力するノズルを備えたターゲット供給部と、
前記ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的に前記ターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応する前記ピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、前記探索処理の結果に基づいて、前記極端紫外光の生成に用いる前記ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記探索処理を実施する前に前記ピエゾ素子を事前駆動させ、前記事前駆動を実施した後に前記探索処理を開始し、
前記極端紫外光を発生させている極端紫外光発生工程中の前記ピエゾ素子の温度上昇が飽和した状態における前記ピエゾ素子の温度の許容範囲を基準温度範囲とする場合に、
前記制御部は、前記事前駆動を実施することによって前記ピエゾ素子の温度を前記基準温度範囲内の温度、又は、前記基準温度範囲を超える温度に上昇させた後に、前記探索処理を開始する極端紫外光生成装置。
【請求項12】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
液状の前記ターゲット物質を前記チャンバ内に出力するノズルを備えたターゲット供給部と、
前記ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的に前記ターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応する前記ピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、前記探索処理の結果に基づいて、前記極端紫外光の生成に用いる前記ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記探索処理を実施する前に前記ピエゾ素子を事前駆動させ、前記事前駆動を実施することよって前記ピエゾ素子の温度上昇が飽和した状態に達した後に、前記探索処理を開始する極端紫外光生成装置。
【請求項13】
請求項
4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記制御部は、前記事前駆動を終了してから6秒以内に前記探索処理を開始する極端紫外光生成装置。
【請求項14】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
液状の前記ターゲット物質を前記チャンバ内に出力するノズルを備えたターゲット供給部と、
前記ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的に前記ターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応する前記ピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、前記探索処理の結果に基づいて、前記極端紫外光の生成に用いる前記ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記探索処理を実施する前に前記ピエゾ素子を事前駆動させ、前記事前駆動を実施した後に前記探索処理を開始し、
前記極端紫外光を発生させている極端紫外光発生工程中の前記ピエゾ素子の温度上昇が飽和した状態における前記ピエゾ素子の温度範囲を基準温度範囲とする場合に、
前記制御部は、前記事前駆動を終了後、前記ピエゾ素子の温度が、前記基準温度範囲よりも低い温度に低下する以前に、前記探索処理を開始する極端紫外光生成装置。
【請求項15】
請求項
4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ピエゾ素子は、矩形波の電圧波形が印加されることによって駆動され、
前記ピエゾ素子の駆動条件には、前記矩形波のデューティ値が含まれる極端紫外光生成装置。
【請求項16】
請求項
15に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記探索処理の際に前記ピエゾ素子に印加される電圧波形は、前記極端紫外光を発生させている極端紫外光発生工程中に前記ピエゾ素子に印加する定格電圧かつ定格周波数の電圧波形と同じ印加電圧かつ同じ周波数の電圧波形であり、
前記制御部は、前記探索処理において、前記矩形波のデューティ値を順次変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応するデューティ値を探索する極端紫外光生成装置。
【請求項17】
請求項
4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ノズルには、前記ピエゾ素子を第1部品と第2部品とで挟んで構成されたピエゾユニットが配置されており、
前記第1部品は、前記ピエゾ素子の振動を前記ノズルに伝達する部品であり、
前記第2部品は、前記ピエゾ素子を前記第1部品に押し付ける部品であり、
前記第1部品には、前記第1部品の内部の温度を計測する温度センサが配置されており、
前記温度センサから得られる温度情報が前記ピエゾ素子の温度を示す情報として用いられる極端紫外光生成装置。
【請求項18】
請求項
17に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記第1部品には、冷却水を流すための冷却水路が設けられている極端紫外光生成装置。
【請求項19】
液状のターゲット物質を収容するタンクと、
前記タンクに連通し、前記ターゲット物質を出力するノズルと、
前記ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的に前記ターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、前記ドロップレット結合条件に対応する前記ピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、前記探索処理の結果に基づいて、前記ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記探索処理を実施する前に前記ピエゾ素子を事前駆動させ、前記事前駆動を実施した後に前記探索処理を開始し、
前記事前駆動は
、極端紫外光を発生させている極端紫外光発生工程中に前記ピエゾ素子に印加される定格電圧かつ定格周波数の電圧波形と同じ印加電圧かつ同じ周波数の電圧波形を前記ピエゾ素子に印加することにより、前記ピエゾ素子を駆動する定格運転であるターゲット供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成装置及びターゲット供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、20nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長13nm程度の極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-62202号公報
【文献】特表2014-517980号公報
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、ターゲット物質にレーザ光を照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、極端紫外光の生成が行われるチャンバと、液状のターゲット物質をチャンバ内に出力するノズルを備えたターゲット供給部と、ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的にターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、ドロップレット結合条件に対応するピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、探索処理の結果に基づいて、極端紫外光の生成に用いるピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、を備え、制御部は、探索処理を実施する前にピエゾ素子を事前駆動させ、事前駆動を実施した後に探索処理を開始する。
【0006】
本開示の他の1つの観点に係るターゲット供給装置は、液状のターゲット物質を収容するタンクと、タンクに連通し、ターゲット物質を出力するノズルと、ノズルをドロップレット結合条件で振動させることにより、規則的にターゲット物質のドロップレットを生成させるピエゾ素子と、ピエゾ素子の駆動条件を変化させて、ドロップレット結合条件に対応するピエゾ素子の駆動条件を探索する探索処理を行い、探索処理の結果に基づいて、ピエゾ素子の駆動条件を設定する制御部と、を備え、制御部は、探索処理を実施する前にピエゾ素子を事前駆動させ、事前駆動を実施した後に探索処理を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、矩形波の電圧波形の例を示す波形図である。
【
図3】
図3は、ターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、ピエゾユニットの構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したピエゾユニットの5-5線に沿う断面図である。
【
図6】
図6は、デューティ調整を含むピエゾ調整の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ピエゾユニットの温度の変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は、デューティ調整工程の前に定格事前駆動を実施した場合のピエゾユニットの温度変化の概要を示すグラフである。
【
図9】
図9は、デューティ調整工程の前に定格事前駆動を実施した場合に実際に計測されたピエゾユニットの温度変化を示すグラフである。
【
図10】
図10は、
図9に示したグラフの一部分について時間軸の目盛りを変えて詳細に示したグラフである。
【
図11】
図11は、デューティ調整工程の前に高負荷事前駆動を実施した場合のピエゾユニットの温度変化の概要を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施形態1に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態1に係るEUV光生成装置におけるピエゾ素子の駆動条件を調整する手順を示したフローチャートである。
【
図14】
図14は、デューティ調整処理の例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態2に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係るEUV光生成装置におけるピエゾ素子の駆動条件を調整する手順を示したフローチャートである。
【
図18】
図18は、定格運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例を示す波形図である。
【
図19】
図19は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例1を示す波形図である。
【
図20】
図20は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例2を示す波形図である。
【
図21】
図21は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例3を示す波形図である。
【
図22】
図22は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例4を示す波形図である。
【
図23】
図23は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例5を示す波形図である。
【
図24】
図24は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例6を示す波形図である。
【
図25】
図25は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例7を示す波形図である。
【実施形態】
【0008】
-目次-
1.極端紫外光生成システムの全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.用語の説明
3.ターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の説明
3.1 構成
3.2 ピエゾユニットの構成
3.3 動作
3.4 ピエゾ調整のフロー
4.課題
5.実施形態1
5.1 ピエゾ素子の事前駆動
5.1.1 定格事前駆動
5.1.2 高負荷事前駆動
5.2 構成
5.3 動作
5.4 デューティ調整処理の例
5.5 作用・効果
6. 実施形態2
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
7.実施形態3
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
8.実施形態4
8.1 構成
8.2 動作
8.3 作用・効果
9.ピエゾ素子の定格運転条件の例
10.ピエゾ素子の高負荷運転条件の例
10.1 定格運転条件よりも印加電圧が大きい高負荷運転条件の具体例
10.2 定格運転条件よりも周波数が大きい高負荷運転条件の具体例
10.3 定格運転条件よりも印加電圧及び周波数が大きい高負荷運転条件の具体例
11.レーザ装置について
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
1.極端紫外光生成システムの全体説明
1.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成システム10の構成を概略的に示す。EUV光生成装置12は、少なくとも1つのレーザ装置14と共に用いられる場合がある。本願においては、EUV光生成装置12及びレーザ装置14を含むシステムを、EUV光生成システム10と称する。
図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置12は、チャンバ16と、ターゲット供給部18とを含む。
【0010】
チャンバ16は、密閉可能な容器である。ターゲット供給部18は、ターゲット物質をチャンバ16内部に供給するよう構成され、例えば、チャンバ16の壁を貫通するように取り付けられる。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0011】
チャンバ16の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。その貫通孔は、ウインドウ20によって塞がれ、ウインドウ20をレーザ装置14から出力されるパルスレーザ光22が透過する。チャンバ16の内部には、例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV光集光ミラー24が配置される。EUV光集光ミラー24は、第1の焦点及び第2の焦点を有する。EUV光集光ミラー24の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV光集光ミラー24は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域26に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF:Intermediate Focusing point)28に位置するように配置される。EUV光集光ミラー24の中央部には貫通孔30が設けられ、貫通孔30をパルスレーザ光23が通過する。
【0012】
EUV光生成装置12は、EUV光生成制御部40と、ターゲットセンサ42等を含む。ターゲットセンサ42は、ターゲット44の存在、軌跡、位置、及び速度のうちいずれか、又は複数を検出するよう構成される。ターゲットセンサ42は、撮像機能を備えてもよい。
【0013】
また、EUV光生成装置12は、チャンバ16の内部と露光装置46の内部とを連通させる接続部48を含む。接続部48内部には、アパーチャ50が形成された壁52が設けられる。壁52は、そのアパーチャ50がEUV光集光ミラー24の第2の焦点位置に位置するように配置される。
【0014】
さらに、EUV光生成装置12は、レーザ光伝送装置54、レーザ光集光ミラー56、ターゲット44を回収するためのターゲット回収部58等を含む。レーザ光伝送装置54は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。ターゲット回収部58は、チャンバ16内に出力されたターゲット44が進行する方向の延長線上に配置される。
【0015】
レーザ装置14は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)システムであってよい。レーザ装置14は、図示せぬマスターオシレータと、図示せぬ光アイソレータと、複数台の図示せぬCO2レーザ増幅器とを含んで構成され得る。マスターオシレータには固体レーザを採用することができる。マスターオシレータが出力するレーザ光の波長は、例えば10.59μmであり、パルス発振の繰り返し周波数は、例えば100kHzである。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、例示的なLPP式のEUV光生成システム10の動作を説明する。チャンバ16内は大気圧よりも低圧に保持され、好ましくは真空であってよい。あるいは、チャンバ16の内部にはEUV光の透過率が高いガスが存在する。
【0017】
レーザ装置14から出力されたパルスレーザ光21は、レーザ光伝送装置54を経て、パルスレーザ光22としてウインドウ20を透過してチャンバ16内に入射する。パルスレーザ光22は、少なくとも1つのレーザ光路に沿ってチャンバ16内を進み、レーザ光集光ミラー56で反射されて、パルスレーザ光23として少なくとも1つのターゲット44に照射される。
【0018】
ターゲット供給部18は、ターゲット物質によって形成されたターゲット44をチャンバ16内部のプラズマ生成領域26に向けて出力するよう構成される。ターゲット供給部18は、例えば、コンティニュアスジェット方式によりドロップレットを形成する。コンティニュアスジェット方式では、ノズルを振動させて、ノズル穴からジェット状に噴出したターゲット物質の流れに定在波を与え、ターゲット物質を周期的に分離する。分離されたターゲット物質は、自己の表面張力によって自由界面を形成してドロップレットを形成し得る。
【0019】
ターゲット44には、パルスレーザ光23に含まれる少なくとも1つのパルスが照射される。パルスレーザ光が照射されたターゲット44はプラズマ化し、そのプラズマから放射光60が放射される。放射光60に含まれるEUV光62は、EUV光集光ミラー24によって選択的に反射される。EUV光集光ミラー24によって反射されたEUV光62は、中間集光点28で集光され、露光装置46に出力される。なお、1つのターゲット44に、パルスレーザ光23に含まれる複数のパルスが照射される。
【0020】
EUV光生成制御部40は、EUV光生成システム10全体の制御を統括するよう構成される。EUV光生成制御部40は、ターゲットセンサ42の検出結果を処理するよう構成される。ターゲットセンサ42の検出結果に基づいて、EUV光生成制御部40は、例えば、ターゲット44が出力されるタイミング、ターゲット44の出力方向等を制御するよう構成される。さらに、EUV光生成制御部40は、例えば、レーザ装置14の発振タイミング、パルスレーザ光22の進行方向、パルスレーザ光23の集光位置等を制御するよう構成される。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加される。
【0021】
2.用語の説明
「ターゲット」は、チャンバに導入されたレーザ光の被照射物である。レーザ光が照射されたターゲットは、プラズマ化してEUV光を放射する。ターゲットは、プラズマの発生源となる。
【0022】
「ドロップレット」は、チャンバ内へ供給されたターゲットの一形態である。ドロップレットは、溶融したターゲット物質の表面張力によってほぼ球状となったターゲットを意味し得る。
【0023】
「パルスレーザ光」は、複数のパルスを含むレーザ光を意味し得る。
【0024】
「レーザ光」は、パルスレーザ光に限らずレーザ光一般を意味し得る。
【0025】
「レーザ光路」は、レーザ光の光路を意味する。
【0026】
「CO2」は、二酸化炭素を表す。
【0027】
「プラズマ光」は、プラズマ化したターゲットから放射された放射光である。当該放射光にはEUV光が含まれる。
【0028】
「EUV光」という表記は、「極端紫外光」の略語表記である。
【0029】
「ピエゾ素子」は、圧電素子と同義である。ピエソ素子を単に「ピエゾ」と表記する場合がある。
【0030】
「デューティ」は、ピエゾ素子に印加する矩形波の電圧波形において、1パルス周期(T)に占める高電位側電圧時間(Th)の割合をいう。デューティは百分率(%)で表記する。デューティの数値をデューティ値という。
【0031】
図2に、矩形波の電圧波形の例を示す。横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。デューティ(%)は、(Th/T)*100である。
【0032】
図2中の「Vpp」は、高電位側電圧と低電位側電圧の電圧差である。Vppを印加電圧という。
【0033】
周波数(Hz)は、1/Tである。
【0034】
3.ターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の説明
3.1 構成
図3に、ターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の構成を概略的に示す。EUV光生成装置12は、制御部70と、遅延回路72と、ターゲット供給部18と、不活性ガス供給部74と、ドロップレット検出装置76とを含む。
【0035】
ターゲット供給部18は、ターゲット物質を出力するノズル80と、ターゲット物質を貯蔵するタンク82と、ヒータ84と、温度センサ86と、ピエゾユニット88と、圧力調節器90と、を含む。
【0036】
ターゲット供給装置78は、制御部70、ターゲット供給部18、ヒータ電源92、温度制御部94、及びピエゾ電源96を含む。また、ターゲット供給装置78は、ドロップレット検出装置76を含んでもよい。
【0037】
タンク82は、中空の筒形状に形成されている。中空のタンク82の内部には、ターゲット物質が収容される。タンク82の少なくとも内部は、ターゲット物質と反応し難い材料で構成される。ターゲット物質の一例であるスズと反応し難い材料は、例えば、SiC、SiO2、Al2O3、モリブデン、タングステン、及びタンタルのいずれかである。
【0038】
タンク82には、ヒータ84と温度センサ86が固定されている。ヒータ84は、筒形状のタンク82の外側側面部に固定される。タンク82に固定されたヒータ84は、タンク82を加熱する。ヒータ84は、ヒータ電源92と接続される。
【0039】
ヒータ電源92は、ヒータ84に電力を供給する。ヒータ電源92は、温度制御部94と接続される。温度制御部94は、制御部70と接続されてもよく、制御部70に含まれていてもよい。ヒータ電源92は、ヒータ84への電力供給を温度制御部94によって制御される。
【0040】
タンク82の外側側面部には、温度センサ86が固定される。温度センサ86は、温度制御部94と接続される。温度センサ86は、タンク82の温度を検出し、検出信号を温度制御部94に出力する。温度制御部94は、温度センサ86から出力された検出信号に基づいて、ヒータ84へ供給する電力を調節し得る。
【0041】
ヒータ84とヒータ電源92を含む温度調節機構は、温度制御部94の制御信号に基づいてタンク82の温度を調節し得る。
【0042】
圧力調節器90は、不活性ガス供給部74とタンク82の間の配管98に配置する。配管98は、タンク82を含むターゲット供給部18と圧力調節器90とを連通させ得る。配管98は、図示しない断熱材等で覆われてもよい。配管98には、図示しないヒータが配置される。配管98内の温度は、ターゲット供給部18のタンク82内の温度と同じ温度に保たれてもよい。
【0043】
不活性ガス供給部74は、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが充填されているガスボンベを含む。不活性ガス供給部74は、圧力調節器90を介して、タンク82内に不活性ガスを給気する。なお、本例では、不活性ガスとしてアルゴンを用いる。
【0044】
圧力調節器90は、給気及び排気用の図示しない電磁弁や圧力センサ等を内部に含んでもよい。圧力調節器90は、図示しない圧力センサを用いてタンク82内の圧力を検出する。圧力調節器90は、図示しない排気ポンプに連結される。圧力調節器90は、図示しない排気ポンプを動作させて、タンク82内のガスを排気する。
【0045】
圧力調節器90は、タンク82内にガスを給気又はタンク82内のガスを排気することによって、タンク82内の圧力を加圧又は減圧し得る。圧力調節器90は、制御部70と接続される。圧力調節器90は、検出した圧力の検出信号を制御部70に出力する。圧力調節器90は、制御部70から出力された制御信号が入力される。
【0046】
制御部70は、圧力調節器90から出力された検出信号に基づいて、タンク82内の圧力が目標とする圧力になるよう圧力調節器90の動作を制御するための制御信号を圧力調節器90に供給する。圧力調節器90は、制御部70からの制御信号に基づいてタンク82内にガスを給気又はタンク82内のガスを排気する。圧力調節器90がガスを給気又は排気することにより、タンク82内の圧力は、目標とする圧力に調節され得る。
【0047】
ノズル80は、ターゲット物質を出力するノズル孔80aを備えている。ノズル孔80aから出力させるターゲット物質の一例として、液体スズを採用し得る。
【0048】
ノズル80は、筒形状のタンク82の底面部に設けられている。ノズル80は、チャンバ16の図示しないターゲット供給孔を通してチャンバ16の内部に配置される。チャンバ16のターゲット供給孔は、ターゲット供給部18が配置されることで塞がれる。ターゲット供給部18がチャンバ16のターゲット供給孔を塞ぐように配置される構造により、チャンバ16の内部は大気と隔絶され得る。ノズル80の少なくとも内面は、ターゲット材料と反応し難い材料で構成される。
【0049】
パイプ状のノズル80の一端は、中空のタンク82に固定される。パイプ状のノズル80の他端には、ノズル孔80aが設けられている。ノズル80の一端側にあるタンク82がチャンバ16の外部に位置し、ノズル80の他端側にあるノズル孔80aがチャンバ16の内部に位置する。ノズル80の中心軸方向の延長線上には、チャンバ16の内部にあるプラズマ生成領域26が位置する。ノズル80の中心軸方向は、Y軸方向であってもよい。タンク82、ノズル80、及びチャンバ16は、その内部が互いに連通する。
【0050】
ノズル孔80aは、溶融したターゲット物質をチャンバ16内へジェット状に噴出するような形状で形成される。
【0051】
ノズル80には、ピエゾユニット88が固定されている。ピエゾユニット88は、ピエゾ素子を含む。
図3においてピエゾ素子の図示は省略され、
図4において符号202で示した。ピエゾユニット88の構成については、
図4及び
図5を用いて後述する。
【0052】
ピエゾユニット88のピエゾ素子202は、ピエゾ電源96と接続される。ピエゾユニット88は、ノズル80に振動を与える。
【0053】
ターゲット供給部18は、例えば、コンティニュアスジェット方式によりドロップレット136を形成する。コンティニュアスジェット方式では、ノズル80を振動させてジェット状に噴出したターゲット物質の流れに周期的振動(一般的には正弦波)を与え、ターゲット物質を周期的に分離する。分離されたターゲット物質は、自己の表面張力によって自由界面を形成してドロップレット136を形成し得る。
【0054】
ピエゾユニット88と、ピエゾ電源96は、ドロップレット136の形成に必要な振動をノズル80に与えるドロップレット形成機構を構成する要素となり得る。
【0055】
ピエゾ電源96は、ピエゾ素子202に電力を供給する。ピエゾ電源96は、制御部70と接続される。ピエゾ電源96によるピエゾ素子202への電力供給は、制御部70によって制御される。
【0056】
ドロップレット検出装置76は、
図1で説明したターゲットセンサ42の一部又は全部であってもよい。ドロップレット検出装置76は、チャンバ16内に出力されたドロップレット136を検出する。
【0057】
ドロップレット検出装置76は、光源部100と受光部120とを含む。光源部100は、光源102と照明光学系104を含む。光源部100は、ターゲット供給部18のノズル80とプラズマ生成領域26の間の軌道上における所定位置Pのドロップレットを照明するように配置する。光源102には、CW(Continuous-Wave)レーザ光源を用いることができる。照明光学系104は、集光レンズ106とウインドウ108を含んでいる。
【0058】
ドロップレット136に照射される連続レーザ光のビーム径は、ドロップレット136の直径よりも十分に大きくてもよい。ドロップレット136の直径は、例えば20μmである。
【0059】
光源部100と受光部120とは、チャンバ16内に出力されたターゲットであるドロップレット136の進行経路であるターゲット進行経路を挟んで互いに対向配置される。光源部100と受光部120の対向方向は、ターゲット進行経路と直交する。
【0060】
ターゲット進行経路を進行するドロップレット136が所定位置Pに到達すると、光源部100から出射された照明光110が当該ドロップレット136に照射され得る。
【0061】
受光部120は、受光光学系122と光センサ124とを含む。受光部120は、光源部100から出力された照明光110を受光するように配置する。受光光学系122は、ウインドウ126と集光レンズ128を含む。受光光学系122は、コリメータ等の光学系であってもよく、レンズ等の光学素子によって構成されている。受光光学系122は、光源部100から出射された連続レーザ光を、光センサ124に導く。
【0062】
光センサ124は、1つ若しくは複数の受光面を含む受光素子である。光センサ124は、フォトダイオード、フォトダイオードアレイ、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管、マルチピクセルフォトンカウンター、及びイメージインテンシファイアのうちのいずれかによって構成することができる。光センサ124は、受光光学系122によって導かれた連続レーザ光の光強度を検出する。光センサ124は、制御部70と接続される。光センサ124は、検出した光強度の検出信号を制御部70に供給する。
【0063】
ドロップレット136がターゲット進行経路上の所定位置Pを通過すると、ドロップレット136により連続レーザ光の一部が遮蔽され、受光部120が受光する光強度は低下する。受光部120は、ドロップレット136の通過による光強度の低下に応じた検出信号を制御部70に出力し得る。ドロップレット136による光強度の低下に応じた検出信号を、「通過タイミング信号」という。
【0064】
制御部70は、ドロップレット検出装置76からの通過タイミング信号により、所定位置Pにてドロップレット136が検出されたタイミングを検出し得る。特に、制御部70は、ドロップレット136がターゲット進行経路上の所定位置Pを通過したタイミングを検出し得る。
【0065】
なお、ドロップレット検出装置76がドロップレット136を検出したタイミングを「通過タイミング」という。通過タイミングは、ドロップレット136がターゲット進行経路上の所定位置Pを通過したタイミングである。
【0066】
遅延回路72は、制御部70の一部として構成されてもよい。ドロップレット検出装置76の出力信号である通過タイミング信号は、制御部70を介して遅延回路72に入力される。遅延回路72には、制御部70から遅延回路72の遅延時間を設定するための信号ラインが接続されている。遅延回路72の出力は、発光トリガとしてレーザ装置14に入力される。
【0067】
EUV光生成装置12は、第1の高反射ミラー130と第2の高反射ミラー132と、レーザ光集光光学系134とを含む。
図1で説明したレーザ光伝送装置54は、第1の高反射ミラー130と第2の高反射ミラー132を含んで構成される。レーザ光集光光学系134は、
図1で説明したレーザ光集光ミラー56を含む。
【0068】
図3において、方向に関する説明の便宜上、XYZ直交座標軸を導入する。チャンバ16から露光装置46に向かってEUV光を導出する方向をZ軸の方向とする。X軸及びY軸は、Z軸に直交し、かつ、互いに直交する軸である。ターゲット物質を出力するノズル80の中心軸方向をY軸の方向とする。Y軸の方向は、ドロップレット136の軌道方向である。
図3の紙面に垂直な方向をZ軸の方向とする。
図4以降の図面でも
図3で導入した座標軸と同様とする。
【0069】
EUV光生成装置12のチャンバ16は、例えば、中空の球形状又は筒形状に形成される。筒形状のチャンバ16の中心軸方向は、EUV光62を露光装置46へ導出する方向、つまりZ軸方向であってもよい。チャンバ16は、図示せぬ排気装置と、圧力センサとを備えている。
【0070】
EUV光生成制御部40は、露光装置46の制御部である図示しない露光装置制御部との間で信号の送受を行う。EUV光生成制御部40は、露光装置46の指令に基づいてEUV光生成システム10全体の動作を統括的に制御する。EUV光生成制御部40は、レーザ装置14との間で制御信号の送受を行う。それにより、EUV光生成制御部40は、レーザ装置14の動作を制御する。
【0071】
EUV光生成制御部40は、レーザ光伝送装置54及びレーザ光集光光学系134のそれぞれの図示しないアクチュエータとの間で各々制御信号の送受を行う。それにより、EUV光生成制御部40は、パルスレーザ光21、22及び23の進行方向及び集光位置を調整する。
【0072】
EUV光生成制御部40は、ターゲット供給装置78の制御部70との間で制御信号の送受を行う。それにより、EUV光生成制御部40は、ターゲット供給装置78、ドロップレット検出装置76、及びレーザ装置14の動作を制御する。
【0073】
本開示において、EUV光生成制御部40及び制御部70その他の制御装置は、1台又は複数台のコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実現することが可能である。ソフトウェアはプログラムと同義である。プログラマブルコントローラはコンピュータの概念に含まれる。EUV光生成制御部40及び制御部70その他の制御装置の処理機能の一部又は全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)に代表される集積回路を用いて実現してもよい。
【0074】
また、複数の制御装置の機能を1台の制御装置で実現することも可能である。さらに本開示において、EUV光生成制御部40及び制御部70その他の制御装置は、ローカルエリアネットワークやインターネットといった通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムユニットは、ローカル及びリモート両方のメモリストレージデバイスに保存されてもよい。
【0075】
3.2 ピエゾユニットの構成
図4は、ノズル80及びピエゾユニット88をノズル80の中心軸を含む平面で切断した縦断面図である。
図5は、
図4の5-5線に沿って切断した断面図である。
図5は、ノズル80及びピエゾユニット88をノズル80の中心軸と直交する面で切断した横断面図に相当する。
【0076】
ピエゾユニット88は、ピエゾ素子202と、第1部品210と、第2部品220とを含む。ピエゾユニット88は、第1部品210と第2部品220とでピエゾ素子202を挟んで構成される。第1部品210は、ノズル80の外側側面部に固定される。第1部品210は、ピエゾ素子202の振動をノズル80に伝達させる。第2部品220は、図示せぬボルトを用いて、第1部品210に締結されている。第2部品220は、ピエゾ素子202を第1部品210に押し付けることで、ピエゾ素子202の振動を第1部品210に伝達しやすくする。
【0077】
図4の第1部品210内に二点鎖線で示した範囲は、ピエゾ素子202の振動伝達経路212である。振動伝達経路212は、ピエゾ素子202からノズル80に向かう方向にピエゾ素子202の領域を見下ろした場合にピエゾ素子202の領域と重なる領域であり、いわゆるピエゾ素子202の真下の領域である。
【0078】
第1部品210には冷却水路214が設けられている。ノズル80からの伝熱によるピエゾ素子202の加熱を抑制するために、第1部品210の冷却水路214に冷却水が流される。
図5中の白抜き矢印は、冷却水の流れを表している。
【0079】
また、第1部品210には、温度センサ216が配置されている。温度センサ216は、第1部品210の表面ではなく、第1部品210の内部の温度を計測する。第1部品210には、温度センサ216を差し込むための穴218が設けられている。穴218は、第1部品210の内部の振動伝達経路212の近くまで達している。温度センサ216は、第1部品210に設けられた穴218に差し込まれている。温度センサ216と冷却水路214は、振動伝達経路212内には配置しないことが望ましい。振動伝達を阻害しないためである。
図4のように、温度センサ216と冷却水路214は、振動伝達経路212を避けて、振動伝達経路212の外側に配置される。
【0080】
温度センサ216の温度検知部216Aは、振動伝達経路212になるべく近づけることが好ましい。ピエゾ素子202に近い振動伝達経路212の温度を計測するためである。温度センサ216によって計測されるピエゾユニット88の温度をピエゾユニット温度という。ピエゾユニット温度は、ほぼピエゾ素子202の温度と見做すことができる。つまり、温度センサ216から得られる温度情報は、ピエゾ素子202の温度を示す情報として用いことができる。本例では、ピエゾユニット温度をピエゾ素子202の温度として扱う。温度センサ216は、ピエゾ素子の温度を計測する温度センサの一例に相当する。
【0081】
ピエゾユニット88内の冷却水路214と温度センサ216の位置関係については、互いにできるだけ離れた位置に配置することが好ましい。
図4に示したように、冷却水路214は、第1部品210におけるノズル80寄りの位置に設けられてもよく、温度センサ216は、第1部品210におけるピエゾ素子202寄りの位置に設けられてもよい。
【0082】
3.3 動作
図3から
図5を用いて、EUV光生成装置12の動作について説明する。EUV光生成制御部40は、チャンバ16内が真空状態となるように、図示せぬ排気装置を制御する。EUV光生成制御部40は、図示せぬ圧力センサの検出値に基づいて、チャンバ16内の圧力が所定の範囲内に収まるように、排気装置による排気及び図示せぬガス供給装置からのガス供給を制御する。
【0083】
制御部70は、EUV光生成制御部40からターゲットの生成信号が入力されると、ターゲット供給部18内のターゲット物質が融点以上の所定の温度になるように、温度制御部94を介してヒータ84を制御する。温度制御部94は、制御部70の制御にしたがい、温度センサ86の検出値に基づいてヒータ電源92を制御する。ターゲット物質としてスズ(Sn)が用いられる場合、スズの融点は232℃である。制御部70は、ターゲット供給部18内のスズが、例えば、232℃から300℃の範囲の所定の温度になるように、ヒータ84を制御する。その結果、ターゲット供給部18に貯蔵されたスズは融解して液体となる。融解したスズは、「液状のターゲット物質」の一例である。
【0084】
制御部70は、液状のターゲット物質をノズル孔80aから吐出するために、タンク82内の圧力が所定圧力となるように圧力調節器90を制御する。圧力調節器90は、制御部70からの制御信号に基づいてタンク82内にガスを給気又はタンク82内のガスを排気してタンク82内の圧力を加圧又は減圧し得る。すなわち、圧力調節器90は、制御部70からの指示に応じて、ドロップレット136が所定の目標速度及び所定の目標軌道でプラズマ生成領域26に到達するように、タンク82内の圧力を所定値に調節する。
【0085】
ドロップレット136の所定の目標速度は、例えば、60m/sから120m/sの範囲の速度であってよい。タンク82の圧力の所定値は、例えば、数MPaから40MPaの範囲の圧力であってよい。その結果、
図4に示したように、ノズル80内に液体スズ230が供給され、ノズル孔80aから所定の速度で液体スズ230のジェット232が噴出される。
【0086】
制御部70は、ピエゾ素子202にピエゾ電源96からの電気信号を送信し、ノズル80から出力された液体スズ230が所定のピエゾ駆動周波数で規則的にドロップレット136を生成するように、デューティ調整を行う。デューティ調整の内容については後に詳述する(
図6)。デューティ調整を実施することによって設定した適切なデューティ値の矩形波の電気信号をピエゾ素子202に送信することにより、ノズル80はピエゾ素子202によって振動する。
【0087】
制御部70は、ノズル80から出力された液体スズがドロップレット136を生成するよう、ピエゾ素子202にピエゾ電源96を介して所定のピエゾ駆動周波数及び所定デューティの電気信号を送る。
【0088】
ピエゾ電源96は、制御部70からの指示にしたがい、ピエゾ素子202に対し駆動用の電力を供給する。その結果、ノズル80はピエゾ素子202によって振動する。ノズル孔80aから出力される液体スズ230のジェット232に、ドロップレット結合を促進する規則的な振動が与えられることにより、周期的にほぼ同じ体積のドロップレット136が生成される。そして、プラズマ生成領域26にドロップレット136を供給し得る。
【0089】
ドロップレット136が、ノズル孔80aとプラズマ生成領域26の間の軌道上の所定位置Pを通過すると、受光部120の光センサ124に入射する照明光量が低下する。受光部120は、光センサ124の受光光量に応じた検出信号を生成する。
【0090】
受光部120から出力された検出信号は、制御部70に送られる。制御部70は、光センサ124によって受光した光量が所定の閾値以下である期間にHighレベルとなるドロップレット検出信号を生成する。ドロップレット検出信号は、制御部70から遅延回路72に入力される。
【0091】
遅延回路72は、ドロップレット検出信号に遅延時間を付加して発光トリガを生成し、発光トリガをレーザ装置14に入力する。遅延回路72の遅延時間は、ドロップレット136が所定位置Pを通過して、プラズマ生成領域26に到達する前に、レーザ装置14に発光トリガ信号が入力されるように設定する。つまり、遅延時間は、ドロップレット136がプラズマ生成領域26に到達した時に、レーザ装置14から出力されたパルスレーザ光がドロップレット136に照射されるように設定する。
【0092】
レーザ装置14から出力されたパルスレーザ光は、第1の高反射ミラー130、第2の高反射ミラー132及びレーザ光集光光学系134を介してプラズマ生成領域26に導かれ、ドロップレット136に照射される。プラズマ生成領域26は、パルスレーザ光の集光位置に相当し得る。
【0093】
3.4 ピエゾ調整フロー
図6は、ピエゾ素子の駆動条件を調整するために行われるピエゾ調整の手順を示すフローチャートである。
【0094】
ステップS11において、制御部70は、ピエゾユニット88への冷却水の供給を開始する。
【0095】
ステップS12において、制御部70は、チャンバ16を真空引きする。「真空引き」は、チャンバ16内が真空状態となるように、チャンバ16内のガスを排気することを指す。
【0096】
EUV光生成制御部40から、制御部70にターゲット生成信号が入ると、ステップS13において、制御部70は、ターゲット供給部18のタンク82の昇温を開始する。制御部70は、タンク82をスズの融点以上の所定温度になるよう加熱する。タンク82の温度は温度センサ86で検知され、温度制御部94により制御される。なお、タンク82の温度は、ターゲット供給部18の温度と言い換えてもよい。
【0097】
その後、ステップS14において、制御部70は、圧力調節器90を制御してタンク82に所定のアルゴン圧を印加し、ノズル80からターゲット物質のスズ(Sn)を吐出させる。
【0098】
ステップS15において、制御部70は、タンク82の温度が安定するまで待機する。
【0099】
ステップS16において、制御部70は、タンク温度が安定したか否かを判定する。制御部70は、ステップS16にてNo判定の場合、つまり、タンク温度が安定していないと判定した場合、ステップS15に戻る。
【0100】
制御部70は、ステップS16にてYes判定の場合、つまり、タンク温度が安定していると判定した場合、ステップS17に進む。
【0101】
ステップS17において、制御部70は、ピエゾ素子202を駆動する際に印加する電圧波形のデューティ調整を実施する。デューティ調整は、ピエゾ素子202に定格周波数、かつ、定格電圧の矩形波を印加し、この矩形波のデューティ値を所定の範囲内にて、所定のステップで順次変化させ、ドロップレットが結合するデューティ値を探索する工程を含む。デューティ調整は、ドロップレット結合条件に対応する駆動条件としてのデューティ値を探索する処理であり、「探索処理」の一例である。
【0102】
ステップS18において、制御部70は、ドロップレット結合を促進するデューティ値が得られたか否かを判定する。制御部70は、ステップS18にてNo判定の場合、ステップS17に戻り、デューティ値の探索を続ける。ステップS17のデューティ調整を実施することによって、ドロップレット結合を促進するデューティ値が求まると、ステップS18にてYes判定となり、
図6のフローチャートを終了する。すなわち、制御部70は、デューティ調整を実施することによって、最も安定的にドロップレットが結合するデューティ値を求め、この最適なデューティ値をEUV光発生工程のときのピエゾ素子の駆動条件として設定する。その後のEUV光発生工程では、デューティ調整によって決定された最適なデューティ値の矩形波を用いて、連続的にピエゾ素子を駆動する。
【0103】
4.課題
ピエゾ素子に電圧を繰り返し印加すると、自己発熱によりピエゾ素子の温度が上昇する。ピエゾ素子からノズルに伝搬する振動の特性はピエゾ素子自身の温度や、ピエゾ素子からノズルに至る経路の温度に影響を受ける。「振動の特性」には、周波数、強度、及び位相のうち少なくとも1つが含まれる。
【0104】
EUV光生成装置12では、EUV光発生工程に先立ち、ターゲット供給部18のピエゾ素子202の駆動条件を決定するために、デューティ調整工程においてドロップレット結合が促進されるデューティ値を探索して、適切なデューティ値を選定する必要がある。ドロップレット結合が促進されるデューティ値とは、規則的にドロップレット136が生成されるドロップレット結合条件に対応するデューティ値を指す。
【0105】
しかしながら、従来のデューティ調整工程では、その工程中にピエゾユニット88の温度が3℃ほど上昇する(
図7参照)。そのため、デューティ調整工程中にドロップレット結合が促進して、デューティ値が選定された際のピエゾユニット温度と、実際にそのデューティ値の波形を用いて実施されるEUV光発生工程中のピエゾユニット温度が乖離する。この温度条件の乖離により、デューティ調整工程にて選定されたデューティ値では、EUV光発生工程においてドロップレット結合の促進が困難になるという問題があった。
【0106】
図7は、ピエゾユニット温度の変化を示すグラフである。ピエゾ素子202を駆動させてデューティ調整を行う際、ピエゾ素子202が自己発熱によって温度上昇する。そのため、EUV光発生工程中のピエゾユニット温度がデューティ調整中、又は、デューティ調整終了時のピエゾユニット温度に対して乖離し、ピエゾ素子の振動特性が変化してドロップレット結合を維持することが困難になり得る。なお、デューティ調整終了時とは、デューティ調整にて選定したデューティ値を設定するデューティ値設定時と言い換えてもよい。
【0107】
EUV光発生工程にて安定したドロップレット結合を維持するためには、デューティ調整中のピエゾユニット温度と、EUV光発生工程中のピエゾユニット温度が同一、若しくは、概ね同一となるようにすることが望まれる。
【0108】
5.実施形態1
5.1 ピエゾ素子の事前駆動
本開示のEUV光生成装置では、デューティ調整工程の前に、ピエゾ素子を事前駆動させ、ピエゾユニット温度を、予めEUV光発生工程中のピエゾユニット温度と同様の温度、又は、EUV光発生工程中のピエゾユニット温度よりも高い温度に上昇させておく。EUV光発生工程は、EUV光を発生させている運転期間である。EUV光発生工程中のピエゾユニット温度とは、EUV光発生工程中におけるピエゾユニットの温度上昇が飽和した状態でのピエゾユニット温度を指す。ピエゾ素子を事前駆動する態様として、定格事前駆動と高負荷事前駆動とがあり得る。
【0109】
5.1.1 定格事前駆動
定格事前駆動は、デューティ調整工程前に、EUV光発生工程中のピエゾユニット温度と同様の温度になるように、EUV光発生工程中のピエゾ素子の駆動条件と同様の定格電圧かつ定格周波数の電圧波形を用いてピエゾ素子を事前駆動させることをいう。EUV光発生工程中のピエゾ素子に印加する矩形波の印加電圧と周波数は、EUV光の生成に適した定格の条件が予め定められている。この定格の印加電圧を「定格電圧」といい、定格の周波数を「定格周波数」という。ピエゾ素子に定格電圧かつ定格周波数の電圧波形を印加してピエゾ素子を駆動する運転条件を定格運転条件という。また、定格運転条件にてピエゾ素子を駆動することを定格運転という。定格事前駆動は、定格運転と言い換えてもよい。なお、EUV光発生工程中のピエゾ素子に印加する矩形波のデューティについては、デューティ調整工程を経て決定されるため、定格運転条件及び定格運転には、デューティ値について任意性がある。事前駆動に用いる矩形波のデューティと、EUV光発生工程中の定格運転に用いる矩形波のデューティは、同じ値であってもよいし、異なる値であってよい。
【0110】
デューティ調整を開始する前に、定格事前駆動を行うことにより、ピエゾユニットの温度を予めEUV光発生工程中と略等しい温度に上昇させておく。定格事前駆動を実施した後にデューティ調整を行うことにより、デューティ調整工程中とEUV光発生工程中のピエゾ素子の温度差を小さくすることができる。
【0111】
しかし、この定格事前駆動の場合、「事前駆動」から「デューティ調整」に切り替わるときに、短時間でピエゾユニット温度が1℃ほど低下するため、デューティ調整工程中とEUV光発生工程中のピエゾ素子の温度差は完全には解消されない。
【0112】
図8は、デューティ調整工程前に定格事前駆動を実施した場合のピエゾユニット温度の変化の概要を示すグラフである。
図8において、EUV光発生工程中のピエゾユニットの温度上昇が飽和した状態におけるピエゾユニット温度は、概ね53.0℃である。
図8中の破線で示した温度範囲は、EUV光発生工程中のピエゾユニットの温度上昇が飽和した状態におけるピエゾユニット温度の許容範囲を示している。この許容範囲は、基準温度範囲の一例である。
【0113】
デューティ調整工程前の事前駆動として定格事前駆動を実施することにより、定格事前駆動中のピエゾユニット温度は、基準温度範囲内に収まる温度になり得る。定格事前駆動からデューティ調整に切り替えると、ピエゾユニット温度は、1℃ほど低下し、デューティ調整工程中のピエゾ素子の駆動によってピエゾユニット温度は次第に上昇していく。デューティ調整終了時のピエゾユニット温度は、基準温度範囲よりも低い温度となっている。
【0114】
図9は、デューティ調整工程前に定格事前駆動を実施した場合に実際に計測されたピエゾユニット温度の変化を示すグラフである。
図10は、
図9に示したグラフの一部分であるデューティ調整工程の初期の時間範囲について時間軸の目盛りの単位を変えて示したグラフである。
【0115】
図9及び
図10のグラフに示したとおり、定格事前駆動実施後のデューティ調整工程の初期の温度低下は、デューティ調整工程の開始後4~6秒で生じる。
【0116】
5.1.2 高負荷事前駆動
定格事前駆動よりもさらに効果的な方法として、高負荷事前駆動がある。高負荷事前駆動とは、デューティ調整工程前に、定格運転条件よりもピエゾ素子の駆動負荷が高い条件でピエゾ素子を事前駆動させることをいう。デューティ調整を開始する前に、高負荷事前駆動を行うことにより、ピエゾユニット温度を予めEUV光発生工程中の温度よりも高い温度に上昇させておく。これにより、ピエゾデューティ調整工程中とEUV光発生工程中のピエゾ素子の温度差をさらに小さくすることができる。
【0117】
なお、定格運転条件よりもピエゾ素子の駆動負荷が高い条件とは、印加電圧及び周波数のうち少なくとも一方が、定格運転条件よりも高い条件をいう。定格運転条件よりもピエゾ素子の駆動負荷が高い条件でピエゾ素子を駆動する運転を「高負荷運転」という。
【0118】
図11は、デューティ調整工程前に高負荷事前駆動を実施した場合のピエゾユニット温度の変化の概要を示すグラフである。
図11には、
図8に示した定格事前駆動を実施した場合のグラフも合わせて示した。
【0119】
図11の例では、デューティ調整工程前の事前駆動として高負荷定格事前駆動を実施することにより、高負荷事前駆動中のピエゾユニット温度は、基準温度範囲を超える温度になり得る。高負荷事前駆動からデューティ調整に切り替えると、ピエゾユニット温度は、1℃ほど低下するものの、デューティ調整工程中のピエゾユニット温度は、基準温度範囲内に収まっている。
【0120】
5.2 構成
図12は、実施形態1に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
図12について、
図3との相違点を説明する。
【0121】
実施形態1に係るEUV光生成装置12は、タイマ272と、時間判定部274とを備える。タイマ272は、事前駆動の動作時間を計測する。本例の場合、タイマ272は、高負荷運転の動作時間を計測する。時間判定部274は、事前駆動の動作時間が、予め設定された規定時間以上か否かを判定する。本例の時間判定部274は、タイマ272によって計測された高負荷運転の動作時間が、予め設定された規定時間以上か否かを判定する。
【0122】
タイマ272と時間判定部274の各々は、制御部70の内部又は外部に配置される。
図12では、制御部70がタイマ272と時間判定部274を備える例を示した。タイマ272と時間判定部274の各々は、ハードウェアを用いて構成されてもよいし、ソフトウェアを用いて構成されてよい。
【0123】
5.3 動作
実施形態1に係るEUV光生成装置12は、デューティ調整を実施する前に、高負荷運転を実施する。時間判定部274は、タイマ272から得られる時間情報を基に高負荷運転の動作時間が規定時間以上か否かの判定を実施する。EUV光生成装置12は、高負荷運転の動作時間が規定時間以上となった場合に、デューティ調整を実施し得る。
【0124】
図13は、実施形態1に係るEUV光生成装置におけるピエゾ素子の駆動条件を調整する手順を示したフローチャートである。
図13において、
図6に示したフローチャートと共通するステップには同一のステップ番号を付した。
図6に示したフローチャートとの相違点を説明する。
【0125】
図13に示したフローチャートは、デューティ調整工程(ステップS17)の前段に、ステップS21~S24の各ステップが追加されている。
【0126】
ステップS21において、制御部70は、ピエゾ素子の高負荷運転を開始する。また、制御部70は、タイマ272に計測開始指令を出す。
【0127】
ステップS22において、タイマ272は、計測開始指令に従い、時間の計測を開始する。タイマ272は、高負荷運転の動作時間を計測する。また、制御部70は、時間判定部274に判定命令を出す。
【0128】
ステップS23において、時間判定部274は、タイマ272の時間が規定時間以上か否かを判定し、制御部70に判定結果を渡す。規定時間は、例えば、3分以上、望ましくは5分以上、さらに望ましくは10分以上である。規定時間は、ピエゾ素子202の駆動によってピエゾユニットの温度上昇が飽和する時間を予め予備実験等によって把握しておき、ピエゾユニット温度の飽和に要する時間以上の動作時間を規定時間として設定しておくことが望ましい。
【0129】
ステップS24において、制御部70は、時間判定部274からの判定結果を基に、タイマの時間が規定時間以上か否かを判定する。ステップS24において、No判定の場合、すなわち、タイマ272の計測時間が規定時間に満たない場合、制御部70は、高負荷運転を継続して、ステップS23に戻る。
【0130】
ステップS24において、Yes判定の場合、すなわち、タイマ272の計測時間が規定時間以上であれば、制御部70は、ステップS17のデューティ調整工程に移行し得る。
【0131】
ステップS23とステップS24を含むタイマの時間判定処理の工程は、デューティ調整(ステップS17)の直前に実施することが望ましい。つまり、事前駆動である高負荷運転を規定時間以上実施した直後に、デューティ調整が開始されること望ましい。ここでいう「直後」とは、例えば、高負荷運転終了後の6秒以内、望ましくは4秒以内、若しくは、ピエゾユニット温度が、EUV光発生工程中におけるピエゾユニット温度の基準温度範囲よりも低い温度に低下する以前をいう。
【0132】
その一方で、ステップS21の「高負荷運転開始」のステップと、ステップS22の「タイマ計測開始」のステップは、ステップS23の「タイマ時間判定」のステップ以前に開始されればよい。ステップS21とステップS22は、ステップS16の後に限らず、ステップS16よりも前の適宜のタイミングで開始されてもよい。例えば、ステップS13の「タンク昇温開始」の前から高負荷運転を開始してもよい。また、例えば、ステップS12の「チャンバ真空引き」の前から高負運転を開始してもよい。
【0133】
5.4 デューティ調整処理の具体例
図14は、デューティ調整処理の一例を示すフローチャートである。
図14に示すデューティ調整処理は、デューティの可変範囲のほぼ全体にわたって所定の変更単位量の刻みでデューティ値を振り、各デューティ値でのドロップレット間隔のデータを取得し、その計測結果から最適な動作デューティ値を求める処理である。例えば、デューティ調整では、デューティ1%から99%までの範囲を、0.2%の刻みでデューティ値を順次変更し、各デューティ値でのドロップレット間隔の計測結果を基に、最適なデューティ値を決定する。
【0134】
制御部70は、デューティ調整部を含む。デューティ調整部は、制御部70が指定するデューティ値に基づいてピエゾ電源96に信号を出力する回路であってよい。或いは、デューティ調整部は、制御部70が指定するデューティ値に基づいてピエゾ電源96に信号波形を供給することができる外部装置、例えばファンクションジェネレータ等によって構成してもよい。
【0135】
図14に示すデューティ調整処理が開始されると、制御部70は、ステップS41において、ピエゾ素子202の駆動周波数からドロップレットの予測通過タイミング間隔を算出する。「予測通過タイミング間隔」とは、ピエゾ素子の駆動周波数から計算上、予測されるドロップレットの通過タイミングの時間間隔を意味する。予測通過タイミング間隔は、ドロップレットの適正な通過時間間隔の目安となり得る。
【0136】
ステップS42において、制御部70は、ドロップレットの適正な通過タイミング間隔の上限値及び下限値を設定してもよい。制御部70は、例えば、ステップS41で算出した予測通過タイミング間隔の「±15%」の値を上限値及び下限値と設定してもよい。つまり、制御部70は、予測通過タイミング間隔±15%の範囲を、ドロップレット通過タイミング間隔の適正レンジとして設定してもよい。ドロップレット通過タイミング間隔の適正レンジは、ドロップレットの適正な通過時間間隔として許容される範囲となり得る。
【0137】
ステップS43において、制御部70は、デューティ調整部のデューティ値をA[%]に設定する。ここでの「A」はデューティの値を表す変数パラメータである。制御部70は、例えば、初期値としてA=1[%]を設定してもよい。
【0138】
ステップS44において、デューティ調整部は、設定されたデューティA[%]に基づいてピエゾ電源96を駆動し得る。デューティA[%]の設定に基づきピエゾ電源96を駆動することにより、ドロップレットが生成され、ドロップレット検出装置76から通過タイミング信号が出力される。
【0139】
制御部70は、通過タイミング信号が入力されると、ドロップレットの各々の通過タイミング間隔T(1)、T(2)、・・・T(N)を計測する。Nは、通過タイミング間隔を計測する回数を表し、予め定めておくことができる任意の整数である。例えば、Nは、3以上50以下とすることができる。一例として、N=10でもよい。1以上の整数kについて、通過タイミング間隔T(k)は、k番目のドロップレットの通過タイミングt(k)とk+1番目のドロップレットの通過タイミングt(k+1)の時間間隔t(k+1)-t(k)で定義することができる。
【0140】
ステップS45において、制御部70は、計測された通過タイミング間隔T(1)、T(2)、・・・T(N)を記憶する。また、制御部70は各々の通過タイミング間隔T(1)、T(2)、・・・T(N)から、最大通過タイミング間隔Tmax、最小通過タイミング間隔Tmin、通過タイミング間隔の平均値Tav、及び通過タイミング間隔のばらつきTsigmaを算出する。Tsigmaは、標準偏差の3σ値としてもよい。標準偏差の3σ値とは、標準偏差をσとする場合の「3×σ」の値を指す。
【0141】
ステップS45において、制御部70は、算出したTmax、Tmin、Tav 及びTsigmaのそれぞれをデューティA[%]に対応付けて、Tmax(A)、Tmin(A)、Tav(A)及びTsigma(A)として記憶する。ステップS45に係る処理については、
図15を用いて後述する。
【0142】
制御部70は、例えばA=1~99[%]まで、変更単位量a=0.2[%]の刻みで順次にデューティAの設定を変更して、各デューティ値について、ステップS44及びステップS45の処理を実施する。
【0143】
すなわち、ステップS46において、制御部70は、ピエゾ素子202を駆動するピエゾ電源96のデューティAをA+aに変更する。ステップS46により、A+aの値が新たにデューティAとしてセットされる。ステップS46の後、制御部70はステップS47に移行する。
【0144】
ステップS47において、制御部70は、デューティAが99[%]を超えたか否かを判定してもよい。制御部70は、ステップS47においてデューティAが99[%]以下であると判定した場合は、ステップS44に戻る。デューティAが99[%]を超えるまで、ステップS44からステップS47の処理が繰り返される。
【0145】
制御部70は、ステップS47においてデューティAが99[%]を超えたと判定した場合は、ステップS48に移行する。
【0146】
ステップS48において、制御部70は、各デューティA[%]に対応付けて記憶したデータを基に、デューティの最適値を決定し、この決定した最適値を最適デューティ値としてデューティ調整部に設定する。
【0147】
制御部70は、記憶したデータの中で、Tmax(A)、Tmin(A)及びTav(A)がドロップレット通過タイミング間隔の適正レンジ内にあるデータ群を抽出して、抽出したデータ群の中で最小のTsigma(A)であるデューティAを最適値に決定する。ドロップレット通過タイミング間隔の適正レンジは、ステップS42にて定められた上限値と下限値で規定される範囲とすることができる。
【0148】
ステップS48において、最適デューティ値が設定されると、制御部70は、
図14のデューティ調整処理を終了する。
【0149】
その後、デューティ調整部は、設定されたデューティに基づいてピエゾ電源96を駆動し得る。
【0150】
上述のように、制御部70は、ステップS46によってデューティ値を変えながら、複数のデューティ値の各々において、ステップS45の処理を行う。
【0151】
図15は、
図14のステップS45における処理の例を示すフローチャートである。
図15のステップS51において、制御部70は、パラメータNを初期値であるN=1に設定してもよい。
【0152】
ステップS52において、制御部70は、通過タイミング間隔T(N)の計測値を記憶する。
【0153】
ステップS53において、制御部70は、Nの値を「+1」インクリメントし、N+1の値を新たにパラメータNの値とする。
【0154】
ステップS54において、制御部70はNの値が、予め定められている規定値であるNmaxを超えたか否かを判定する。Nmaxは、通過タイミング間隔の最大計測回数より大きい任意の整数に設定することができる。例えば、Nmaxは、4から51の範囲の適宜の値に設定し得る。
【0155】
制御部70は、ステップS54において、N≦Nmaxであると判定した場合には、ステップS52に戻る。
【0156】
一方、ステップS54において、制御部70はN>Nmaxであると判定した場合に、ステップS55に移行する。
【0157】
ステップS55において、制御部70は、T(1)~T(N)のデータを使用し、Tmax(A)、Tmin(A)、Tav(A)及びTsigma(A)を算出する。制御部70は、算出したTmax(A)、Tmin(A)、Tav(A)及びTsigma(A)を記憶する。
【0158】
制御部70は、ステップS55の後、
図14のフローチャートに復帰する。
【0159】
図14及び
図15に示した例では、デューティの調整範囲を1~99%としたが、デューティの調整範囲は、この例に限らず、適宜の範囲に設定することができる。デューティ調整の調整範囲は、必ずしもデューティの可変範囲の全体、若しくは、ほぼ全体でなくてもよく、可変範囲の一部であってよい。例えば、デューティの調整範囲を50~99%とすることができる。また、デューティ値の変更単位量は、0.2%に限らず、1%など適宜の値に設定することができる。
【0160】
5.5 作用・効果
実施形態1に係るEUV光生成装置によれば、高負荷運転を規定時間以上実施した直後に、デューティ調整を実施することで、ピエゾユニット温度が十分に上がった状態で「デューティ調整」を実施することができる。その結果、デューティ調整工程中のピエゾユニット温度と、デューティ値設定後に引き続くEUV光発生工程中のピエゾユニット温度がほぼ同じになる。このため、デューティ調整の結果に基づき設定されたデューティ値の矩形波を用いてEUV光発生工程中のドロップレット結合を維持することが可能となる。
【0161】
6. 実施形態2
6.1 構成
図16は、実施形態2に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
図16について、
図12の相違点を説明する。
【0162】
EUV光生成装置12は、ピエゾユニット温度を計測する温度センサ216と、ピエゾユニット温度判定部278と、を備える。
【0163】
温度制御部94は、温度センサ216からピエゾユニット温度情報を取得し、ピエゾユニット温度判定部278に中継する。
【0164】
ピエゾユニット温度判定部278は、ピエゾ素子202の高負荷運転の終了を判断するために、温度制御部94からの渡されるピエゾユニット温度が、予め規定された規定条件に合致するか否かを判定する。
【0165】
ピエゾユニット温度判定部278は、制御部70の内部又は外部に配置される。
図16では、制御部70がピエゾユニット温度判定部278を備える例を示した。ピエゾユニット温度判定部278は、ハードウェアを用いて構成されてもよいし、ソフトウェアを用いて構成されてよい。
【0166】
6.2 動作
実施形態2に係るEUV光生成装置12は、デューティ調整を実施する前に、高負荷運転を実施する。ピエゾユニット温度判定部278は、温度センサ216から得られる温度情報を基に、ピエゾユニット温度が規定条件に合致するか否かの判定を実施する。EUV光生成装置12は、ピエゾユニット温度が規定条件に合致する場合に「デューティ調整」を実施する。
【0167】
図17は、実施形態2に係るEUV光生成装置におけるピエゾ素子の駆動条件を調整する手順を示したフローチャートである。
図17において、
図6に示したフローチャートと共通するステップには同一のステップ番号を付した。
図6との相違点を説明する。
【0168】
図17に示したフローチャートは、デューティ調整工程(ステップS17)の前段に、ステップS31~S34の各ステップが追加されている。
【0169】
ステップS31において、制御部70は、ピエゾ素子202の高負荷運転を開始する。
【0170】
ステップS32において、ピエゾユニット温度判定部278は、温度制御部94からのピエゾユニット温度情報の取得を開始する。また、制御部70はピエゾユニット温度判定部278に判定命令を出す。
【0171】
ステップS33において、ピエゾユニット温度判定部278は、ピエゾユニット温度が規定条件に合致するか否かを判定し、制御部70に判定結果を渡す。ピエゾユニット温度の規定条件は、例えば、直近の1分間のピエゾユニット温度がMax-Min≦0.2℃である。Maxは、予め定められた時間範囲内に計測されたピエゾユニット温度の最大値である。Minは、予め定められた時間範囲内に計測されたピエゾユニット温度の最小値である。「直近の1分間」は「予め定められた時間範囲」の一例である。Max-Min≦0.2℃とは、計測されたピエゾユニット温度の最大値と最小値の差が0.2℃以下であることを示している。ピエゾユニット温度の規定条件は、望ましくは、直近の3分間のピエゾユニット温度がMax-Min≦0.2℃である。ピエゾユニット温度の規定条件は、さらに望ましくは、直近の5分間のピエゾユニット温度がMax-Min≦0.2℃である。これらの条件は、ピエゾユニットの温度上昇が飽和した状態となっており、ピエゾユニット温度が概ね安定していること示すものである。
【0172】
または、ピエゾユニット温度の規定条件は、ピエゾユニット温度が、規定温度の±0.1℃の範囲内である。規定温度は、EUV光発生工程中のピエゾユニット温度より高い温度であり、40.0℃から70.0℃の範囲内にあり、小数第一位まで規定される数値である。
【0173】
ステップS34において、制御部70は、ピエゾユニット温度判定部278からの判定結果を基に、ピエゾユニット温度が規定条件に合致するか否かを判定する。ステップS34において、No判定の場合、すなわち、ピエゾユニット温度が規定条件に合致しない場合、制御部70は、高負荷運転を継続して、ステップS33に戻る。
【0174】
ステップS34において、Yes判定の場合、すなわち、ピエゾユニット温度が規定条件に合致する場合、制御部70は、ステップS17のデューティ調整工程に移行する。
【0175】
ステップS33とステップS34を含むピエゾユニット温度判定処理の工程は、デューティ調整(ステップS17)の直前に実施することが好ましい。つまり、規定条件を満たすピエゾユニット温度に達している高負荷運転を終えた直後に、デューティ調整が開始されること望ましい。ここでいう「直後」とは、実施形態1と同様に、例えば、高負荷運転終了後の6秒以内、望ましくは4秒以内、若しくは、ピエゾユニット温度が、EUV光発生工程中におけるピエゾユニット温度の基準温度範囲よりも低い温度に低下する以前をいう。
【0176】
その一方で、ステップS31の「高負荷運転開始」のステップと、ステップS32の「ピエゾユニット温度計測開始」のステップは、ステップS33の「ピエゾユニット温度判定」のステップ以前に開始されればよい。ステップS31とステップS32は、ステップS16の後に限らず、ステップS16よりも前の適宜のタイミングで開始されてもよい。例えば、ステップS13の「タンク昇温開始」の前から高負荷運転を開始してもよい。また、例えば、ステップS12の「チャンバ真空引き」の前から高負荷運転を開始してもよい。
【0177】
6.3 作用・効果
実施形態2に係るEUV光生成装置12によれば、ピエゾユニット温度が規定条件に合致するまで高負荷運転を実施して、高負荷運転を終えた直後に、デューティ調整を行う。これにより、ピエゾユニット温度が十分に上がった状態で「デューティ調整」を行うことができる。その結果、デューティ調整時のピエゾユニット温度と、デューティ値設定後に引き続くEUV光発生工程中のピエゾユニット温度がほぼ同じになる。このため、デューティ調整の結果に基づき設定されたデューティ値の矩形波を用いてEUV光発生工程中のドロップレット結合を維持することが可能となる。
【0178】
7. 実施形態3
7.1 構成
実施形態1及び実施形態2では、事前駆動としての「高負荷事前駆動」を行う例を説明したが、「高負荷事前駆動」に代えて、「定格事前駆動」を採用してもよい。すなわち、実施形態1及び実施形態2の各説明における「高負荷運転」に代えて、「定格運転」を実施してもよい。
【0179】
実施形態3に係るEUV光生成装置は、事前駆動としての定格事前駆動を実施する。実施形態3に係るEUV光生成装置の構成は、
図12に示した構成と同様である。実施形態1との相違点は次のとおりである。
【0180】
タイマ272は、定格運転の動作時間を計測する。時間判定部274は、定格運転の動作時間が、予め設定された規定時間以上か否かを判定する。
【0181】
7.2 動作
実施形態3に係るEUV光生成装置は、デューティ調整を実施する前に、定格運転を実施する。時間判定部274は、タイマ272から得られる時間情報を基に定格運転の動作時間が規定時間以上か否かの判定を実施する。EUV光生成装置は、定格運転の動作時間が規定時間以上の場合に、デューティ調整を実施する。
【0182】
図13に示したフローチャートのステップS21に代えて、「定格運転開始」のステップが採用される。その他の内容は実施形態1と同様である。
【0183】
7.3 作用・効果
実施形態3に係るEUV光生成装置によれば、デューティ調整を実施する前に定格運転を行い、規定時間以上の定格運転を実施した直後に、デューティ調整を実施することで、ピエゾユニット温度が十分に上がった状態でデューティ調整を実施することができる。その結果、デューティ調整工程中のピエゾユニット温度と、デューティ値設定後に引き続くEUV光発生工程中のピエゾユニット温度の温度差が小さくなる。このため、デューティ調整の結果に基づき設定されたデューティ値の矩形波を用いてEUV光発生工程中のドロップレット結合を維持することが可能となる。
【0184】
8. 実施形態4
8.1 構成
実施形態4に係るEUV光生成装置は、事前駆動としての定格事前駆動を実施する。実施形態4に係るEUV光生成装置の構成は、
図16と同様である。実施形態3との相違点は次のとおりである。
【0185】
ピエゾユニット温度判定部278は、ピエゾ素子202の定格運転の終了を判断するために、温度制御部94から渡されるピエゾユニット温度が、予め規定された条件に合致するか否かを判定する。
【0186】
8.2 動作
実施形態4に係るEUV光生成装置は、デューティ調整を実施する前に、定格運転を実施する。ピエゾユニット温度判定部278は、温度センサ216から得られる温度情報を基に、ピエゾユニット温度が規定条件に合致するか否かの判定を実施する。EUV光生成装置は、ピエゾユニット温度が規定条件に合致する場合に「デューティ調整」を実施する。
【0187】
図17に示したフローチャートのステップS31に代えて、「定格運転開始」のステップが採用される。その他の内容は実施形態2と同様である。
【0188】
8.3 作用・効果
実施形態4に係るEUV光生成装置によれば、デューティ調整を実施する前に定格運転を行い、規定時間以上の定格運転を実施した直後に、デューティ調整を実施することで、ピエゾユニット温度が十分に上がった状態でデューティ調整を実施することができる。その結果、デューティ調整工程中のピエゾユニット温度と、デューティ値設定後に引き続くEUV光発生工程中のピエゾユニット温度の温度差が小さくなる。このため、デューティ調整の結果に基づき設定されたデューティ値の矩形波を用いてEUV光発生工程中のドロップレット結合を維持することが可能となる。
【0189】
9. ピエゾ素子の定格運転条件の例
図18は、定格運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例を示す。ピエゾ素子の定格運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0190】
・波形:矩形波(
図18参照)
・印加電圧:Vpp=140ボルト[V]
・周波数:1/T=100キロヘルツ[kHz]
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0191】
なお、定格運転条件の印加電圧を「定格電圧」といい、定格運転条件の周波数を「定格周波数」という。
【0192】
10. ピエゾ素子の高負荷運転条件の例
高負荷運転条件は、印加電圧及び周波数のうち、少なくとも一つが、定格運転条件よりも数値的に大きい。それ以外のパラメータは、定格運転条件と同じであってよい。デューティ値については、高負荷運転条件と定格運転条件とで異なる値であってよい。
【0193】
10.1 定格運転条件よりも印加電圧が大きい高負荷運転条件の具体例
例えば、高負荷運転条件は、定格運転条件と比較して、印加電圧が、定格電圧+20ボルト[V]以上である。望ましくは、印加電圧が定格電圧+30ボルト[V]以上である。さらに望ましくは、印加電圧が定格電圧+40ボルト[V]以上である。
【0194】
図19は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例1を示す。ピエゾ素子の高負荷運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0195】
・波形:矩形波(
図19参照)
・印加電圧:Vpp=定格電圧+20ボルト[V]以上
・周波数:1/T=100キロヘルツ[kHz]
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0196】
図20は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例2を示す。望ましくは、ピエゾ素子の高負荷運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0197】
・波形:矩形波(
図20参照)
・印加電圧:Vpp=定格電圧+30ボルト[V]以上
・周波数:1/T=100キロヘルツ[kHz]
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0198】
図21は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例3を示す。さらに望ましくは、ピエゾ素子の高負荷運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0199】
・波形:矩形波(
図21参照)
・印加電圧:Vpp=定格電圧+40ボルト[V]以上
・周波数:1/T=100キロヘルツ[kHz]
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0200】
10.2 定格運転条件よりも周波数が大きい高負荷運転条件の具体例
または、例えば、高負荷運転条件は、定格運転条件と比較して、周波数が定格周波数よりも大きく、周波数が定格周波数+30キロヘルツ[kHz]以上であってもよい。望ましくは、周波数が定格周波数+50キロヘルツ[kHz]以上である。さらに望ましくは、周波数が定格周波数+70キロヘルツ[kHz]以上である。定格周波数が100キロヘルツ[kHz]である場合、高負荷運転条件は、周波数が130キロヘルツ[kHz]以上であってもよい。望ましくは、周波数が150キロヘルツ[kHz]以上である。さらに望ましくは、周波数が170キロヘルツ[kHz]以上である。
【0201】
図22は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例4を示す。ピエゾ素子の高負荷運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0202】
・波形:矩形波(
図22参照)
・印加電圧:Vpp=140ボルト[V]
・周波数:1/T=130キロヘルツ[kHz]以上
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0203】
図23は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例5を示す。望ましくは、ピエゾ素子の高負荷運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0204】
・波形:矩形波(
図23参照)
・印加電圧:Vpp=140ボルト[V]
・周波数:1/T=150キロヘルツ[kHz]以上
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0205】
図24は、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例6を示す。さらに望ましくは、ピエゾ素子の高負荷運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0206】
・波形:矩形波(
図24参照)
・印加電圧:Vpp=140ボルト[V]
・周波数:1/T=170キロヘルツ[kHz]以上
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0207】
10.3 定格運転条件よりも印加電圧及び周波数が大きい高負荷運転条件の具体例
または、例えば、高負荷運転条件は、定格運転条件と比較して、印加電圧が定格電圧より大きく、かつ、周波数が定格周波数よりも大きい電圧波形を用いてもよい。
【0208】
図25に、高負荷運転の際にピエゾ素子に印加される駆動電圧の波形の例7を示す。ピエゾ素子の高負荷運転条件は、例えば、次のとおりである。
【0209】
・波形:矩形波(
図25参照)
・印加電圧:Vpp=定格電圧より大きい電圧
・周波数:1/T=定格周波数より大きい周波数
・デューティ:1.0%以上99.0%以下。
【0210】
11.レーザ装置について
レーザ装置14は、プリパルスレーザ光を出力するよう構成されたプリパルスレーザ装置と、メインパルスレーザ光を出力するよう構成されたメインパルスレーザ装置とを含んで構成されてもよい。本実施形態におけるLPP式のEUV光生成装置12では、ドロップレット状のターゲットにプリパルスレーザ光を照射してターゲットを拡散させ、拡散ターゲットを形成した後、この拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を照射する。このように、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を照射すれば、ターゲット物質が効率良くプラズマ化され得る。これによれば、パルスレーザ光のエネルギからEUV光のエネルギへの変換効率(CE:Conversion Efficiency)が向上し得る。
【0211】
拡散ターゲットを形成するためのプリパルスレーザ光は、各パルスのパルス幅が1ナノ秒[ns]未満、好ましくは500ピコ秒[ps]未満、さらに好ましくは50ピコ秒[ps]未満の短パルスとされる。さらに、プリパルスレーザ光は、各パルスのフルーエンスが、メインパルスレーザ光の各パルスのフルーエンス以下で、かつ、6.5J/cm2以上、好ましくは30J/cm2以上、さらに好ましくは45J/cm2以上とされる。
【0212】
このような構成によれば、プリパルスレーザ光の各パルスのパルス幅を短くすることにより、ターゲットを細かい粒子状に破壊して拡散させ得る。これにより、拡散したターゲットにメインパルスレーザ光を照射したときに、ターゲットが効率良くプラズマ化され、CEが向上し得る。
【0213】
なお、メインパルスレーザ光の照射に先行して複数のプリパルスレーザ光をターゲットに照射する構成を採用することができる。
【0214】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0215】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。