(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/06 20060101AFI20221020BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221020BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221020BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20221020BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20221020BHJP
C08F 20/12 20060101ALI20221020BHJP
C08F 20/04 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C09J4/06
C09J11/06
C09J163/00
C09J163/02
C09J11/08
C08F20/12
C08F20/04
(21)【出願番号】P 2019556876
(86)(22)【出願日】2018-04-21
(86)【国際出願番号】 US2018028749
(87)【国際公開番号】W WO2018195524
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-20
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ハールバート、 リネット
(72)【発明者】
【氏名】メッサーナ、 アンドリュー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ、 ケヴィン ジェイ.
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0235758(US,A1)
【文献】特表2016-500741(JP,A)
【文献】特表2012-525417(JP,A)
【文献】特開昭60-032868(JP,A)
【文献】国際公開第2016/054124(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0127680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、
(a)パートAであって、
(i)(メタ)アクリル成分;
(ii)構造Aに包含される硬化促進剤:
【化1】
(式中、
Xは、
H、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル、またはC
7-20
アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2
、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく、
Yは、C
1-20
アルキル、C
2-20
アルケニル、またはC
7-20
アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2
、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく、
あるいは、XとYが一緒になって、5~7個の環原子を有する炭素環式環を形成しており;
Zは、O、S、またはNX’(式中、X’は、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていてもよく、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよい。)であり;
Rは、任意の基であるが存在する場合は、芳香環上に3回まで出現してもよく、また存在する場合は、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていてもよく、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく;
nは、0または1であり;
zは、1~3であ
り、ただし、XがHである場合、zは2ではない。)
(iii)熱可塑性エラストマー;および
(iv)反応性酸/エステル成分
を含むパートA;
ならびに
(b)パートBであって、
(i)エポキシ樹脂成分;
(ii)酸化剤;
(iii)可塑剤;および
(v)任意に、ブロックコポリマー
を含むパートB
を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
パートAの(メタ)アクリル成分が、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ
)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル-2-ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロメチル-2-ペルフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,2-ブチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硬化促進剤が以下から選択される、請求項1に記載の組成物。
【化2】
【請求項4】
反応性酸/エステル成分が、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体、スルホン酸またはスルホン酸誘導体、リン酸、リン酸誘導体、
またはリン酸エステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
反応性酸/エステル成分が、以下の式の化合物を含むリン酸エステルである、請求項1に記載の組成物。
【化3】
(式中、R
1は、HまたはCH
3であり、R
2は、Hまたは:
【化4】
である。)
【請求項6】
反応性酸/エステル成分が、ヒドロキシルエチルメタクリレートリン酸エステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
組成物がさらにフリーラジカル阻害剤を含み、該フリーラジカル阻害剤が、キノン、ヒドロキノン、ヒドロキシルアミン、ニトロキシル、フェノール、アミン
、キノリン、フェノチアジン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
組成物がさらにフリーラジカル阻害剤を含み、該フリーラジカル阻害剤が、ヒドロキノン、ターシャリーブチルヒドロキノン、フェノチアジン、メチルヒドロキノン、ヒドロキシエチルヒドロキノン、N-アルキル置換p-フェニレンジアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
パートBのエポキシ樹脂成分が、脂環式エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールAエピクロロヒドリン系エポキシ樹脂、アルキルエポキシド、二酸化リモネン、多官能性エポキシ樹脂、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
パートBのエポキシ樹脂成分がビスフェノールAエピクロロヒドリンエポキシ樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
パートBの酸化剤が過酸化ベンゾイルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
第1の表面を第2の表面に接合する方法であって、
請求項1に記載の2パート組成物を、接合しようとする第1の表面および第2の表面の少なくとも一方に塗布する工程;
第1の表面と第2の表面を、該2パート組成物
が硬化する条件下で合わせ、合わせた表面間に接着結合を形成させる工程
を含む、方法。
【請求項13】
パートAとパートBを混合して少なくとも一方の基材に塗布すると、組成物は最大5分のオープンタイムを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
基材を合わせると、組成物は60℃未満の温度で90秒未満の固定時間を示す、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル成分、および第2パートのエポキシ樹脂成分のための硬化系を含む第1パートと、エポキシ樹脂成分、および第1パートの(メタ)アクリル成分のための硬化促進剤を含む第2パートとを含む2パート(two part)接着剤組成物を提供する。硬化促進剤は以下の構造Aに包含される。
【0002】
【化1】
(式中、
Xは、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく、Yは、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく、あるいは、XとYが一緒になって、5~7個の環原子を有する炭素環を形成しており;
Zは、O、S、またはNX’(式中、X’は、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく;
Rは、任意の基であるが存在する場合は、芳香環上に3回まで出現してもよく、また存在する場合は、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく;
nは、0または1であり;
zは、1~3であり、
ただし、XがHである場合、zは2ではなく、かつ好ましくは1である。)
【背景技術】
【0003】
関連技術の簡単な説明
アクリル系接着剤組成物はよく知られている。例えば、米国特許第4,536,546号(Briggs)を参照されたい。この技術に基づいた接着剤は、PLEXUS MA 300および310の商品名でIllinois Tool Works Inc.,Chicago,ILから販売されているようであるが、これらの接着剤は、不快な臭気を示し、取り扱うのに毒性があり、これらのことはその使用にとって深刻な欠点である。
【0004】
また、一方のパートがアクリル系接着剤を含む2パートエポキシ樹脂組成物も知られている。例えば、米国特許第4,426,243号(Briggs)には、その一方はエポキシ樹脂であり、もう一方がアクリレート系接着剤である2つの異なる接着剤材料から調製され、これらが、官能基の一方としてエポキシ、もう一方としてアクリレートを有する二官能性成分によって化学的に結合される、接着剤組成物が記載されている。英国特許第2166447号明細書も参照されたい。
【0005】
米国特許出願公開第2010/0065210号は、(a)(i)(メタ)アクリル成分、(ii)アミン触媒、(iii)任意の第2触媒;(iv)反応性酸成分、および(v)フリーラジカル阻害剤を含む第1パート;ならびに、(b)(i)エポキシ基を含む樹脂成分、(ii)ペルオキシド、および(iii)強酸成分と錯体を形成し、かつペルオキシドと実質的に反応しない金属化合物を含む第2パートを含む、たわみ抵抗性(sag resistant)組成物を提供している。第1パートおよび第2パートは、ポンプ装置で容易に分配できる程十分に低い粘度を有する。この接着剤を形成するために第1パートと第2パートを混合し(ここで混合直後は混合物の粘度が高いため、表面への塗布後、混合物のオープンタイムの間は、接着剤が垂れたり、滴ったり、移行したりしない。)、混合した第1パートと第2パートが硬化する。「オープンタイム」という用語は、接着剤の混合から硬化までの間の経過時間を意味する。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0235758号は、接着剤組成物であって、
(a)(i)その少なくとも一部にイソボルニル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート成分;
(ii)アミン触媒;
(iii)室温で液状のビニル末端ポリブタジエン;
(iv)反応性酸成分;
(v)固体の亜鉛(メタ)アクリレート塩;
(vi)亜鉛および/またはビスマス錯体;および
(vii)フリーラジカル阻害剤
を含む第1パート;
ならびに
(b)(i)エポキシ基を含む樹脂成分;
(ii)過酸化ベンゾイル;
(iii)可塑剤;および
(vi)任意に、ブロックコポリマー
を含む第2パート
を含み、ただし、第1パートと第2パートを混合して少なくとも1つの基材に塗布すると、該組成物は最大5分間のオープンタイムを有することとなり、基材を合わせると、120℃未満の温度で90秒未満の固定時間を示し、この時点で、合わせられたアセンブリは3kgの荷重を支持することができる、接着剤組成物を提供している。
【0007】
嫌気性接着剤組成物との関連で、米国特許第8,481,659号は、以下の構造に包含される硬化促進剤を提供している。
【0008】
【化2】
(式中、
Xは、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていてもよく、または-OH、-NH
2もしくはSHから選択される1個以上の基で官能化されていてもよく、Yは、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていてもよく、または-OH、-NH
2もしくはSHから選択される1個以上の基で官能化されていてもよく、あるいは、XとYが一緒になって、5~7個の環原子を有する炭素環を形成しており;
Zは、O、S、またはNX’(式中、X’は、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていてもよく、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよい。)であり;
Rは、任意の基であるが存在する場合は、芳香環上に3回まで出現してもよく、また存在する場合は、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていてもよく、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく;
nは、0または1であり;
zは、1~3であり;
ただし、XがHである場合、zは2ではなく、かつ好ましくは1である。)
【0009】
それでもなお、2パート接着剤組成物に関して、既存の2パート接着剤組成物より優れていないまでも匹敵し得る性能に寄与し得、かつ、ラベル表示の要件がそのような既存の組成物よりも好ましい、あるいは少なくとも同等であるかより厳格ではない代替の構成成分を提供できることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
接着剤組成物であって、
(a)第1パートであって、
(i)(メタ)アクリル成分;
(ii)構造Aに包含される硬化促進剤:
【0011】
【化3】
(式中、
Xは、-OH、-NH
2またはSHから選択される1個以上の基で官能化されているC
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり;
Yは、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2、もしくはSHから選択される1個以上の基で官能化されていてもよく、あるいは、
XとYが一緒になって、5~7個の環原子を有する炭素環を形成しており;
Zは、O、S、またはNX’(式中、X’は、H、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよい。)であり;
Rは、任意の基であるが存在する場合は、芳香環上に3回まで出現してもよく、また存在する場合は、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、またはC
7-20アルカリールであり、後者の3つはいずれも、1個以上のヘテロ原子が挿入されていても、または-OH、-NH
2、もしくは-SHから選択される1個以上の基により官能化されていてもよく;
nは、0または1であり;
zは、1~3である。);
(iii)熱可塑性エラストマー;および
(iv)反応性酸成分
を含む、第1パート;
ならびに、
(b)第2パートであって、
(i)エポキシ樹脂成分;
(ii)過酸化ベンゾイル;
(iii)可塑剤;および
(iv)任意に、ブロックコポリマー
を含む、第2パート
を含む、接着剤組成物が提供される。
【0012】
第1パートと第2パートを混合して少なくとも1つの基材に塗布すると、組成物は最大5分間のオープンタイムを有することになり、基材を合わせると、60℃未満の温度において90秒未満の固定時間(fixture time)を示すことになる。
【0013】
別の態様では、本発明は、本発明の2パート接着剤組成物を使用して、2つの表面を接合する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】Kalix基材でのクロスボンド強度を測定する棒グラフを示す。
【
図2】スチール基材での引張モードでの接合強度を測定する棒グラフを示す。
【
図3】ステンレススチール基材での引張モードでの接合強度を測定する棒グラフを示す。
【
図4】アルミニウム基材での引張モードでの接合強度を測定する棒グラフを示す。
【
図5】Kalix基材での引張モードでの接合強度を測定する棒グラフを示す。
【
図6】スチール基材での引張剥離モードでの接合強度を測定する棒グラフを示す。
【
図7】スチール基材でのくさび衝撃モードでの接合強度を測定する棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明の2パート接着剤組成物は、様々な用途に有用であり、その1つは、携帯型ディスプレイデバイスアセンブリに使用するための金属および/またはポリマー材料の積層である。
【0016】
したがって、本発明は、アクリル成分、および第2パートのエポキシ樹脂成分のための硬化系を含む第1パートと、エポキシ樹脂成分、および第1パートのアクリル成分のための硬化系を含む第2パートとを含む2パート接着剤組成物を提供する。パートAとパートBの組み合わせは、硬化して、積層体の製造に使用するのに適した材料を形成する組成物をもたらす。したがって、パートAとパートBの組み合わせを積層しようとする表面に塗布することができ、そしてその表面を第2の表面に合わせて積層体を形成することができる。硬化後、組成物は2つの表面の間に接着接合を形成する。
【0017】
<パートA>
・(メタ)アクリル成分
以下の式を有する少なくとも1つの基を含む任意の好適な材料を使用してよい。
【0018】
【化4】
(式中、Rは、H、ハロゲン、またはC
1~C
10ヒドロカルビルから選択される。)
【0019】
有利には、この基は(メタ)アクリロキシ基である。「(メタ)アクリロキシ」という用語は、RがそれぞれHまたはメチルである、アクリレートおよびメタクリレートの両方を指すことが意図される。(メタ)アクリル成分の有用な量は、典型的には、総組成物の約20重量%~約80重量%の範囲である。望ましくは、本発明の組成物は、約50重量%から約70重量%の(メタ)アクリル成分を含む。
【0020】
(メタ)アクリル成分は、ポリマー、モノマー、またはそれらの組み合わせの形態で存在し得る。ポリマーの形態で存在する場合、(メタ)アクリル成分は、上記の基の少なくとも1つが結合しているポリマー鎖であってよい。該基は、主鎖のペンダント位もしくは末端位、またはそれらの組み合わせに位置し得る。有利には、少なくとも2つのそのような基が存在し得、これらは末端位に位置し得る。(メタ)アクリル成分は、当業者によく知られているように、(メタ)アクリレート官能基を有するポリビニル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ、ビニルエステル、フェノール系、アミノ樹脂、油系樹脂などから構成されるポリマー鎖を有し得る。ポリマー鎖は、ランダム構造でも、ブロック構造でも、またはグラフト構造でもよい。
【0021】
ポリマー鎖は、ビニルモノマーの重合により形成され得る。そのようなビニルモノマーの例には、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ))アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル-2-ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロメチル-2-ペルフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,2-ブチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびエトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートがある。これらのモノマーは、間接的に使用しても、また複数を使用してもよく、場合によっては重合または共重合されていてもよい。
【0022】
特に望ましいビニルモノマーは(メタ)アクリレートエステルモノマーであり、エステル基のアルコール部分が1~8個の炭素原子を含むものが挙げられる。例えば、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチルメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート(「BDMA」)、ブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート(「MMA」)の例がある。
【0023】
・硬化促進剤
本発明の組成物は、硬化促進剤を含み、該硬化促進剤は、約0.01重量%~約5重量%、望ましくは約0.05重量%~約2重量%、より望ましくは、約0.3重量%~約0.7重量%の量で存在し得る。
【0024】
硬化促進剤は、本発明の文脈において、構造Aに包含される付加物などの様々な形態を取り得る。これらの付加物は、以下のように調製され得る。
【0025】
【0026】
THQ-D(またはTHQジオール(THQ-Diol))およびInd-D(またはIndジオール(Ind-Diol))は、それぞれ以下のように表される異性体混合物である。
【0027】
【0028】
構造Aに包含される硬化促進剤は、以下:
(a)構造Iで表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物:
【0029】
【化7】
(式中、R、Y、Z、n、およびzは、上に定義されるとおりである。)、例えば、
【0030】
【化8】
(式中、Rおよびzは、上に定義されるとおりである。)、および、
(b)構造IIで表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物:
【0031】
【化9】
(式中、Z”は、-O-、-S-、または-NH-から選択され;qは、1~2であり;R
6は、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはチオアルキルから独立して選択され;nは、少なくとも1である。)
を含む反応物から調製することができ、ただし、反応生成物は、-OH、-NH
2、または-SHから独立して選択される少なくとも2個のペンダント官能基を含む。
【0032】
また、構造IまたはIAに包含される化合物としては、適宜、以下の化合物を挙げることができる。
【0033】
【0034】
上記の構造IIの化合物において、Z”は、望ましくは、-O-、-S-、または-NH-から選択され;qは、1~4であってよく;R6は、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはチオアルキルから独立して選択されてよく;nは、少なくとも1である。望ましくは、構造IIによって表される反応物は、下記に示すようなグリシドールである。
【0035】
【0036】
上述のように、反応生成物は、-OH、-NH2または-SHから独立して選択される少なくとも2個のペンダント官能基を含む。反応生成物は、ヒドロキシ官能基などの2個または3個のペンダント官能基を含む。
【0037】
望ましくは、構造Iの化合物は、THQ、インドリンまたはインドールに基づく。したがって、THQ、インドリンまたはインドールに基づく場合、構造Aの化合物は、THQ、インドリンまたはインドールの官能化アルキル、官能化アルケニルまたは官能化アルカリール付加物である。
【0038】
・熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーは、約20重量%まで、例えば約5重量%~約15重量%などの量で存在すべきである。
【0039】
ビニル末端ポリブタジエンは、室温で液状であるべきである。ビニル末端ポリブタジエンのガラス転移温度は0℃未満であるべきである。ビニル末端は(メタ)アクリレート末端の形態であってよく、例えば、HYCAR VTBNなどの(メタ)アクリレート末端ポリブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、またはHYCAR VTBなどの(メタ)アクリレート末端ポリブタジエン(いずれもBF Goodrich製)である。ビニル末端ポリブタジエンは、約20重量%まで、例えば約5重量%~約15重量%などの量で存在するべきである。
【0040】
・反応性酸/エステル成分
本発明の組成物は、酸または酸エステルを含む。好適な酸または酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸または誘導体、リン酸または誘導体、リン酸エステル、およびスルホン酸または誘導体が挙げられる。
【0041】
反応性酸成分は、エチレン性不飽和モノまたはポリカルボン酸、マレイン酸、およびクロトン酸など、フリーラジカル重合性酸モノマーから選択される。望ましいものとしては、メタクリル酸(「MAA」)およびアクリル酸が挙げられる。反応性酸成分はまた、熱硬化性組成物の硬化時間を調整しおよび減速させる。パートAの硬化促進剤は、パートBのエポキシ樹脂を硬化させるが、反応性エステル成分がないと、硬化促進剤硬化プロセスは一般に、非常に大きな部品または積層体にとっては速すぎるため、積層体の製造が困難となる。さらに、硬化が過度に速いと、発熱硬化反応に由来する過剰な熱など、硬化中に問題を引き起こし、一貫性のないまたは不均一な硬化をもたらし、結果として生じる生成物が、発泡、脆さ、あるいは、硬化がより慎重な速度で行われる場合に達成し得る引張強度と比べて引張強度が低いなど、望ましくない物理的特性を有する場合がある。
【0042】
好適なリン酸エステルとしては、以下の式によって表されるものが挙げられる:
【0043】
【化12】
(式中、R
1は、HまたはCH
3であり、R
2は、H、または以下の構造により表される基である:
【0044】
【化13】
(式中、R
1は、HまたはCH
3である。))
【0045】
特に有用なリン酸エステルは、T-MULZ 1228またはHARCRYL 1228もしくは1228の商品名で販売されているヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)リン酸エステルであり、各々Harcross Chemicals,Kansas City,KSから入手可能である。また、少なくとも1つの強酸「活性水素」基を有するか、もしくは少なくとも1つのホスホン酸活性水素基(R1R2POOH)を有する構造、例えば、ヒドロキシルエチルジホスホン酸、ホスホン酸、及び誘導体など、あるいはホスホン酸官能基または同様の酸強度の官能基を有するオリゴマーまたはポリマー構造も挙げられる。
【0046】
反応性酸成分は、組成物の約0.25重量%~約15重量%存在する。望ましくは、反応性酸成分がリン酸エステルである場合、該成分は、組成物の約1.0~4.0重量%存在する。
【0047】
・フリーラジカル阻害剤
通常、パートAはまた、パートBと混合する前の早期反応を抑制するためのフリーラジカル重合阻害剤を含む。
【0048】
数多くの好適なフリーラジカル重合阻害剤が知られており、キノン、ヒドロキノン、ヒドロキシルアミン、ニトロキシル化合物、フェノール、アミン、アリールアミン、キノリン、フェノチアジン等が挙げられる。特に有用なフリーラジカル阻害剤としては、ヒドロキノン、ターシャリーブチルヒドロキノン(「TBHQ」)、メチルヒドロキノン、ヒドロキシエチルヒドロキノン、フェノチアジン、およびNAUGARD-R(Addivant,Danbury,CTからのN-アルキル置換p-フェニレンジアミンのブレンド)が挙げられる。また1または複数の個々のフリーラジカル阻害剤成分を組み合わせてもよい。
【0049】
・その他の添加剤
パートAは、フィラー、コアシェルポリマー、潤滑剤、増粘剤、および着色剤などの追加の添加剤をも含んでもよい。フィラーは、接着剤の強度を犠牲にすることなく嵩を与えることができ、高密度フィラーまたは低密度フィラーから選択することができる。また、シリカなど特定のフィラーは、レオロジー改質または微粒子強化をもたらすことができる。市販の例としては、Cab-O-Sil 610およびAEROSIL R8200が挙げられる。
【0050】
特に重要なのは低密度フィラーであり、これは、得られる最終生成物がフィラーを含まない生成物よりも低い密度を有するが、それでもなおフィラーが存在しなかった場合と本質的に同じ強度特性を有するためである。
【0051】
コアシェルポリマーは、望ましくは「コアシェル」型のグラフトコポリマーであり、あるいはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(「ABS」)、メタクリレート-ブタジエン-スチレンスチレン(「MBS」)、およびメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(「MABS」)など、「シェルなし(shell-less)」の架橋されたゴム状粒子であってもよい。BLENDEX 338は、GE Plastics製のABS粉末である。
【0052】
<パートB>
・エポキシ樹脂
パートBはエポキシ樹脂成分を含む。エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールAエピクロロヒドリン系エポキシ樹脂、アルキルエポキシド、二酸化リモネン、およびポリエポキシドが挙げられ得る。
【0053】
望ましいエポキシ樹脂成分は、CYRACURE UVR-6110の商品名でDow Chemicalから市販されている脂環式成分である。UVR-6110は以下の構造を有する:
【0054】
【0055】
本明細書で使用するための別の好適なエポキシ樹脂は、Dow Chemicalから「D.E.R.」の商品名で市販されているものなどのビスフェノール系液体エポキシ樹脂である。そのようなD.E.R.ブランド製品の例としては、D.E.R.332(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル);D.E.R.330(低粘度、未希釈、ビスフェノールA液体エポキシ樹脂);D.E.R.383(低粘度、未希釈、ビスフェノールA液体エポキシ樹脂);D.E.R.354(標準、ビスフェノールF系液体エポキシ樹脂);D.E.R.351(低粘度、液体ビスフェノールA/F樹脂ブレンド);D.E.R.352(低粘度、液体ビスフェノールA/F樹脂ブレンド);D.E.R.324(脂肪族グリシジルエーテル反応性希釈剤、変性液体エポキシ樹脂);D.E.R.323(脂肪族グリシジルエーテル反応性希釈剤、変性液体エポキシ樹脂);D.E.R.325(脂肪族グリシジルエーテル反応性希釈剤、変性液体エポキシ樹脂);およびD.E.R.353(脂肪族グリシジルエーテル反応性希釈剤、変性液体エポキシ樹脂)が挙げられる。本明細書での使用に適したビスフェノール系液体エポキシ樹脂の異なるブランドは、ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンから誘導され、Hexion Speciality Chemicalsから市販されているEPON樹脂828など、商品名EPONで販売されている。
【0056】
別の好適なエポキシ樹脂成分は、エポキシノボラック樹脂である。エポキシノボラック樹脂はエピクロロヒドリンとフェノールホルムアルデヒドノボラックの生成物である。多くは、Dow ChemicalからD.E.Nという商品名で市販されている。好適なD.E.Nブランド製品の例としては、D.E.N.431(低粘度半固体エポキシノボラック樹脂)およびD.E.N.438(半固体エポキシノボラック樹脂)が挙げられる。
【0057】
他の好適なエポキシ樹脂としては、周囲温度または適切な高温で触媒または硬化剤を用いて硬化可能なポリエポキシドが挙げられる。これらのポリエポキシドの例としては、アルカリ条件下で、または酸性触媒の存在下およびそれに続くアルカリ処理により、分子あたり少なくとも2つの遊離アルコール性ヒドロキシル基および/またはフェノール性ヒドロキシル基を含む化合物と適切なエピクロロヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテルおよびポリ(β-メチルグリシジル)エーテルが挙げられる。これらのエーテルは、非環式アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン-1,2-ジオールおよびポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびポリ(エピクロロヒドリン)などから;脂環式アルコール、例えばレゾルシノール、キニトール、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、および1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサ-3-エンなどから;および芳香核を有するアルコール、例えばN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリンおよびp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンから生成することができる。または、これらは、単核フェノール、例えばレゾルシノールおよびヒドロキノン、ならびに多核フェノール、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1,2,2-テトラビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2,-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンから、ならびにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロラール、フルフルアルデヒドなどのアルデヒドから形成されるノボラックと、フェノール自体、および塩素原子または9個までの炭素原子を含むアルキル基によって環が置換されたフェノール、例えば4-クロロフェノール、2-メチルフェノール、および4-t-ブチルフェノールなどのフェノールから生成することができる。
【0058】
ポリ(N-グリシジル)化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンと、少なくとも2つのアミノ水素原子を含むアミン(アニリン、n-ブチルアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、ビス(4-メチルアミノフェニル)メタンなど)との反応生成物の脱塩化水素によって得られるもの;トリグリシジルイソシアヌレート;および、環状アルキレン尿素(エチレン尿素および1,3-プロピレン尿素、およびヒダントイン(5,5-ジメチルヒダントインなど)など)のN,N’-ジグリシジル誘導体が挙げられる。
【0059】
エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油などの油由来のエポキシ樹脂もまた、本明細書における使用に適している。
【0060】
・酸化剤
酸化剤としては、ペルオキシドおよびペルエステルが有用である。過酸化ベンゾイル自体は、パートBの酸化剤として使用するのに望ましい選択肢である。また市販の過酸化ベンゾイル含有組成物を使用してもよい。Benox-50 210 Blue(Syrgis Performance Initiators,Inc.,Helena,AR製)、すなわち49~50%の過酸化ベンゾイルを含むと考えられるペルオキシドペーストは1つの望ましい選択肢である。Benox-55 108 White、すなわち54~56%の過酸化ベンゾイルを含むと考えられるペルオキシドペーストも別の望ましい選択肢である。さらに別の望ましい選択肢としては、Varox ASNS(R.T.Vanderbilt,Norwalk,CT製)、すなわち55%の過酸化ベンゾイルを含むと考えられるペルオキシドペーストである。
【0061】
・可塑剤
可塑剤は、2パート接着剤組成物のパートBで使用される。また可塑剤をパートAにも使用してもよい。可塑剤は、組成物の反応性部分の柔軟性を補助し、かつ/または組成物の他の成分のための担体ビヒクルとして作用し得る、任意の液体または可溶性化合物であってよい。例としては、芳香族スルホンアミド、芳香族リン酸エステル、アルキルリン酸エステル、ジアルキルエーテル芳香族エステル、高分子可塑剤、ジアルキルエーテルジエステル、ポリグリコールジエステル、トリカルボン酸エステル、ポリエステル樹脂、芳香族ジエステル、芳香族トリエステル(トリメリテート)、脂肪族ジエステル、エポキシ化エステル、塩素化炭化水素、芳香族オイル、アルキルエーテルモノエステル、ナフテン系オイル、アルキルモノエステル、パラフィン系オイル、シリコーンオイル、ジ-n-ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ-n-ヘキシルフタレート、ジ-n-ヘプチルフタレート、ジ-2-エチルへキシルフタレート、7c9c-フタレート(直鎖および分岐)、ジイソオクチルフタレート、直鎖6c,8c,10cフタレート、ジイソノニルフタレート、直鎖8c-10cフタレート、直鎖7c-11cフタレート、ジイソデシルフタレート、直鎖9c-11cフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジ-n-ブチルセバケート、ジイソデシルアジペート、トリエチレングリコールカプレート-カプリレート、トリエチレングリコール2-エチルヘキサノエート、ジブトキシエチルアジペート、ジブトキシエトキシエチルアジペート、ジブトキシエトキシエチルホルマール、ジブトキシエトキシエチルセバケート、トリ-2-エチルへキシルトリメリテート、トリ-(7c-9c(直鎖))トリメリテート、トリ-(8c-10c(直鎖))トリメリテート、トリエチルホスフェート、トリイソプロピルフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、2-エチルへキシルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリアリールホスフェート(合成)、トリブトキシエチルホスフェート、トリ(-クロロエチル)ホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、塩素化有機ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリ(ジクロロプロピル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェートが挙げられる。
【0062】
・ブロックコポリマー
使用される場合、ブロックコポリマーは、検討中の組成物にとって望ましい物理的特性に寄与することが可能な任意のブロックコポリマーであってよい。
【0063】
ブロックコポリマーゴムは、ブタジエンまたはイソプレンのいずれかとスチレンのブロック(例えば、SBS、SIS、SEBS、およびSB)を使用して構築することができ、その市販例には、Shell Chemical Co.からKRATON D-1116として入手可能であり、また他のKRATON DグレードエラストマーはDexcoからVEXOR 2411 IPとして入手可能である。
【0064】
ガラス転移温度(「Tg」)が約25℃未満で、メタクリレート/アクリレートモノマーに可溶性の他のエラストマーを、ポリクロロプレンおよび/またはブロックコポリマーゴムに代えて使用することができる。そのような例には、エピクロロヒドリンのホモポリマー、およびそのエチレンオキシドとのコポリマー(Zeon ChemicalsからHYDRINとして入手可能)、アクリレートゴムペレット(ZeonからHYTEMPとして入手可能)、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム、およびSBRゴム(ブタジエンとスチレンのランダムコポリマー)がある。
【0065】
さらに他のブロックコポリマーは、以下の式で表されるスチレン無水マレイン酸コポリマーであってもよい:
【0066】
【化15】
(式中、vは1~12であり;wは1~6であり;nは1~50である。)
【0067】
スチレン無水マレイン酸コポリマーはよく知られており、そのいくつかは、例えばSartomer Company,Inc.,Exton,PAからSMA EF80の商品名で市販されている。スチレン無水マレイン酸コポリマーは、スチレンと無水マレイン酸との共重合生成物を表し、スチレン部分構造と無水マレイン酸部分構造の交互ブロックを特徴とする。
【0068】
両親媒性ブロックコポリマーが特に望ましい場合もある。ArkemaはNANOSTRENGTHの商標で両親媒性ブロックコポリマーを市販している。そのようなブロックコポリマーは、現在、SBMおよびMAMの2つのタイプが入手可能である。SBMコポリマーは、報告によれば、ポリスチレン、1,4-ポリブタジエン、およびシンジオタクチックポリ(メチルメタクリレート)でできている。
【0069】
さらに、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)とポリブチルアクリレート(「PB」)とから構成されたポリマー材料を使用してもよい。この種に含まれるポリマー材料は、ポリメチルメタクリレート-ブロック-ポリブチルアクリレート-ブロックポリメチルメタクリレートコポリマー(「MAM」)と呼ばれる。
【0070】
Arkemaによって報告されているように、MAMは約70%のPMMAと30%のPBからなるトリブロックコポリマーである。MAMは別々のセグメントから構成され、それにより分子スケールで自己集合する能力を提供する。すなわち、Mはポリマーに硬度を付与し、Aはポリマーにエラストマー特性を付与する。
【0071】
硬質ポリマーセグメントは、(メタ)アクリレートに可溶性である傾向にあるが、一方エラストマーセグメントは硬化時に形成されるポリマー(メタ)アクリレートに靭性をもたらす。MAMはまた、本来の物性を損なうことなく、機械的特性を強化する。MAMは、NANOSTRENGTHの商品名で、現在のところいくつかの異なるグレード(すなわちE-21およびM-52N)で市販されている。
【0072】
Arkemaは、様々なポリマー(その大部分は、製造業者によれば、主要な工業用エポキシ樹脂である)と混和性のあるアクリルブロックコポリマーとしてNANOSTRENGTH製品ラインを推奨している。また米国特許第6,894,113号(‘113特許の要約では、耐衝撃性が向上した熱硬化性材料が論じられている)も参照されたい。耐衝撃性は、S-B-M、B-M、およびM-B-Mブロックを含む少なくとも1つのコポリマーを含む1~80%の耐衝撃性改良剤に由来し、ここで、各ブロックは、他のブロックに共有結合によって連結されているか、あるいは、中間で、ブロックのうちの一方に共有結合で、かつ他方のブロックに別の共有結合で連結されており、MはPMMAホモポリマーまたは少なくとも50重量%のメチルメタクリレートを含むコポリマーであり、Bは熱硬化性樹脂およびMブロックと非相溶性であり、そのガラス転移温度(「Tg」)は熱硬化性材料の作業温度よりも低く、そしてSは熱硬化性樹脂、Bブロック、およびMブロックと非相溶性であり、そのTgまたはその溶融温度はBのTgよりも高い。
【0073】
両親媒性ブロックコポリマーの別の市販の例は、Dow Chemical Co.製のFORTEGRA 100として商業的に知られているポリエーテルブロックコポリマーである。Dowは、FORTEGRA 100を、アミン硬化エポキシ系において高効率の第2相として使用するために設計された低粘度強靭化剤と説明している。FORTEGRA 100は、最終コーティングまたは組成物の粘度、ガラス転移温度、耐腐食性、硬化速度、または化学的耐性に著しい影響を及ぼすことなく、靱性の向上をもたらすと報告されている。FORTEGRA 100はまた、エポキシ硬化反応に関与しないので、標準的なビスフェノールAおよびビスフェノールFエポキシ系への配合に有用であるとも報告されている。第2相強靭化剤として、FORTEGRA 100は、仕上げフィルムまたは部品に特定の体積分率で配合された場合に効果的であるとして推奨されており、典型的には乾燥体積で3%~8%が強靭化効果を達成すると言われている。
【0074】
追加のブロックコポリマーとしては、以下の一般式の疎水性セグメントまたは部分と親水性セグメントまたは部分の両方を含むものが挙げられる:
【0075】
【化16】
(式中、R
1は独立して、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、もしくは4-メチル-1-ペンテンなどの疎水性オレフィン、またはスチレンなどの重合可能な疎水性芳香族炭化水素であり;各R
2は、無水マレイン酸などの親水性酸無水物であり;vは1~12であり;wは1~6であり;nは1~50である。)
【0076】
スチレン無水マレイン酸ブロックコポリマーにおいて、疎水性セグメントの親水性セグメントに対する比率は、少なくとも2:1、例えば3:1~12:1であってよい。ブロックコポリマーの親水性セグメントは、無水マレイン酸などの無水物を含むべきである。ブロックコポリマーの疎水性セグメントは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、またはスチレンの少なくとも1つを含むべきである。望ましくは、ブロックコポリマーは、無水マレイン酸を含む親水性セグメントと、スチレンを含む疎水性セグメントを用いて調製されるべきである。
【0077】
以下の米国特許文献を参照すると、本明細書での使用に好適な両親媒性ブロックコポリマーが示されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第7,745,535は、両親媒性マルチブロックコポリマーに関し、これを特許請求しており、ここで、その少なくとも1つのブロックは、a)アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの塩、エステル、無水物、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸のアミド;ジカルボン酸無水物;カルボキシエチルアクリレート;ならびにアクリルアミドから選択される1または複数のモノマー単位からできている親水性ミドルブロックと、b)疎水性末端ブロックとからなる特性が明らかなブロックであり、ここで該マルチブロックコポリマーは、不水溶性、不水分散性であり、かつ、C1-3アルコールに可溶性でも分散性でもない。
【0078】
米国特許第7,820,760号は、硬化性接着剤エポキシ樹脂組成物に関し、これを特許請求しており、ここで該組成物は、(a)エポキシ樹脂と;(b)少なくとも1つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントおよび少なくとも1つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマー(ここで、非混和性ブロックセグメントは少なくとも1つのポリエーテル構造を含み、ただし該非混和性ブロックセグメントのポリエーテル構造は少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1または複数のアルキレンオキシドモノマー単位を含む)と;(c)少なくとも1種の硬化剤を含む。‘760特許における両親媒性ブロックコポリマーは、PEO-PBOジブロックコポリマーまたはPEO-PBO-PEOトリブロックコポリマーなどのオールポリエーテルブロックコポリマーである。両親媒性ブロックコポリマーは、‘760特許においてエポキシ樹脂組成物が硬化すると、得られる硬化エポキシ接着剤樹脂組成物の接合強度が、該両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを含まないエポキシ樹脂組成物と比較して向上するような量で存在する。
【0079】
米国特許第7,670,649号は、硬化性室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物に関し、これを特許請求しており、ここで、該組成物は、(a)エポキシ樹脂と;(b)少なくとも1つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメント(ここで、非混和性ブロックセグメントは少なくとも1つのポリエーテル構造を含み、ただし該非混和性ブロックセグメントのポリエーテル構造は少なくとも1またはそれ以上のアルキレンオキシドモノマー単位を含む)、および少なくとも1つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーと;(c)約60℃未満の周囲温度でコーティング組成物を硬化させるのに十分な量の窒素含有硬化剤と、を含む。エポキシ樹脂組成物を硬化させると、得られる硬化したエポキシ樹脂組成物の靱性が向上する。
【0080】
米国特許第6,887,574号は、(a)少なくとも1種の難燃性エポキシ樹脂;(b)少なくとも1種の両親媒性ブロックコポリマー;および(c)硬化剤を含む硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物に関し、これを特許請求している。このような成分は、硬化すると、ブロックコポリマーが、ひも状ミセル(worm-like micelle)形態などのナノ構造形態へと自己集合するように、適切な量および比率で硬化性組成物中に存在する。得られる硬化生成物は、著しく高い耐破壊性を有することが報告されており、耐破壊性が課題である用途における難燃性エポキシの使用を可能にする。
【0081】
米国特許出願公開第2008/0287595号は、(1)エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、またはそれらの混合物から選択される熱硬化性樹脂、および(2)該熱硬化性樹脂中に分散されている両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物に関する。さらに、該組成物から調製された繊維強化プラスチック(FRP)、コーティング、および複合材も提供される。
【0082】
国際公開第WO2010/008931号は、ブロックコポリマー強靭化剤を使用して構造用複合材の耐破壊性(靭性)を高めた構造用複合材に関する。構造用複合材は、(i)炭素繊維強化材、および(ii)熱硬化性樹脂組成物を含み、ここで熱硬化性樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂、および(b)少なくとも1種のブロックコポリマー強靭化剤を含む。
【0083】
国際公開第WO2009/018193号は、エポキシ樹脂、硬化剤、両親媒性強靭化剤、および無機ナノフィラーを含み、ここで強靭化剤は、少なくとも1つの次元がナノメートルスケールである第2相を形成している、硬化性組成物、硬化した組成物、およびそれらを形成する方法に関する。
【0084】
本明細書では、ブロックコポリマーは、接着剤組成物の総重量に基づいて約50重量%まで、望ましくは5~40重量%の量で使用され得る。
【0085】
ブロックコポリマーのTgは、約40℃を超えるべきであり、例えば約40℃から約155℃などである。
【0086】
ポリマーのTgは、ポリマーが冷却時に脆性となる、または加熱時に軟化する温度である。より具体的には、Tgは、ポリマーが、冷却時に結晶性材料と同様の特性を有するガラス状構造を生成する、擬2次相転移(pseudo second order phase transition)を規定する。Tgを超えると、ポリマーは軟化し、破損することなく塑性変形することが可能となる。Tgは時にポリマーの「軟化温度」と記載されることもあるが、ポリマーがTgより低い温度で軟化し始めることは珍しくない。これは、多くの非結晶性ポリマーの性質によって、ポリマーの軟化が、単一の温度値で突然に起こるのではなく、ある温度範囲にわたって起こる場合があるからである。ポリマーは異なる温度で軟化し始め得るが、Tgは、一般的にこの範囲の中点を指す。本出願の目的上、ポリマーのTgは、ASTM E-1356によって決定される値を指す。
【0087】
Tgより低い温度で脆性となることに加えて、ポリマーはまた、一般に、同じポリマーがそのTgを超える温度に加熱された場合に比べてより乾燥し、粘着性が低くなる。粘着性ポリマーは、非粘着性ポリマーに比べると、圧力の印加のみでより容易に表面に接着する。40℃を超えるTgを有し、そのためこの40℃の時点で乾燥しているか、粘着性がわずかであるコポリマーを組み込むことの重要性が、以下の考察によってより明らかになるであろう。
【0088】
・他の添加物
パートBは、フィラー、潤滑剤、増粘剤、着色剤などの追加の添加剤を含んでもよい。フィラーは、接着剤の強度を犠牲にすることなく嵩高さをもたらし、高密度フィラーまたは低密度フィラーから選択することができる。
【0089】
低密度フィラーが特に興味深く、これは、結果として得られる最終生成物が、フィラーを含まない生成物よりも低い密度を有しているが、それでもなおフィラーが存在しない場合と本質的に同じ強度特性を有しているためである。
【0090】
・パッケージングおよび混合
パートAおよびパートBはそれぞれ、ボトル、缶、チューブ、ドラム缶などの別々の容器にパッケージされる。
【0091】
パートAとパートBは、パートBが1に対してパートAが約3~50の比率で混合される。好ましくは、パートBに対するパートAの比率は、パートBが1に対してパートAが約5~20である。
【0092】
2つのパートの混合には、2成分用の流体入口を有し、好適な混合操作を行い、接合しようとする表面上に接着剤混合物を直接ディスペンスする混合ノズルを用いることができる。市販の混合および分注装置の一例は、ConProTec,Salem,NHから入手可能なMIXPAC(登録商標)である。2つのパートはまた、ボウル、バケツ等において手動で混合することもできるが、作業者は確実に混合を完了する必要がある。確実に混合を完了するのを助けるために、各パートに染料または顔料を配合して、混合後に第3の色が形成されるようにすることもできる。例えば、一方のパートが黄色染料を有してよく、他方のパートが青色染料を有してよく、その結果、混合後、完全な接着剤組成物は緑色となる。
【0093】
本発明の組成物は優れた接着剤およびシーラントである。積層材中に組み込むことができる布のシートなどの第1表面に塗布して、第2表面を第1表面に合わせると、接着剤が硬化するにつれて2つの表面が接合される。さらなる利点は、清浄な基材を接合するための表面処理が必要ないことである。
【0094】
「硬化する」という用語は、流体混合物を本発明の固体接合に変換する化学反応を意味する。アクリルエポキシ接着剤の硬化プロセスは当技術分野で良く知られている。例えば、米国特許第4,426,243号(Briggs)を参照されたい。硬化プロセスは、アクリレートとエポキシ系ポリマーとの間の化学反応であり、アクリル-エポキシ接着剤を形成する。
【0095】
混合後、組成物は室温で約15~1000分、約60℃の温度で約30秒~120秒で硬化する。当然ながら、適度に高い温度条件ではより短い硬化時間が達成され得る。望ましくは、組成物は約80℃で約200分、続いて室温で24時間で硬化する。
【実施例】
【0096】
<合成>
THQ-グリシドール付加物(略してTHQ-DまたはTHQ-ジオール(THQ-Diol)と称する。)を、下記に示す合成スキームに従って調製した。
【0097】
【0098】
凝縮器、添加漏斗、窒素パージ、磁気撹拌棒、およびサーモプローブを備えた500mlの4口丸底フラスコに、グリシドール[8グラム;108ミリモル]およびTHQ[14グラム;108ミリモル]を添加した。フラスコを60℃に維持したホットプレート上に9時間置き、その間撹拌を継続した。反応混合物を室温で一晩放置した。脱イオン水100mlを添加し、反応混合物を再び60℃に加熱した。
【0099】
混合物をイソプロピルアルコール/水の組み合わせ、続いて脱イオン水を用いて再結晶させたところ、固体が再形成するのが観察された。次いで、混合物を濾過し、固体を収集し、50℃のオーブンで減圧乾燥した。
【0100】
<配合物>
表1Aおよび1Bに、パートAおよびパートBのそれぞれにおいて使用する一般的な配合パラメーターおよび成分候補を示す。
【0101】
【0102】
【0103】
パートA配合物およびパートB配合物のより具体的な例を下記に示す。
【0104】
・パートA
容器にまずKRATONブランドのブロックポリマーおよびMMA(それぞれ記録した量)を投入し、室温で約24時間放置した。次いで、AEROSILブランドのシリカを除き、下表に列挙した残りの構成成分を記録した量で容器に投入した。混合物をオーガーで3500rpmで3分間ブレンドした。次いで、AEROSILブランドのシリカを添加し、その速度で2分間混合を継続した。
【0105】
【0106】
最終的に得られたパートAを、計量混合装置で使用するためにナイロンカートリッジに詰めた。
【0107】
・パートB
容器に20.4gのBENZOFLEX 2088、37gの過酸化ジベンゾイル、10gのPLURACOL V 10、21gのビスフェノールAエピクロロヒドリン、および11.5gのECONOPOLY 2 N 1を投入した。混合物をオーガーで1000rpmで30分間ブレンドした。最終的に得られたパートBを、計量混合装置で使用するためにナイロンカートリッジに詰めた。
【0108】
・混合
パートAとパートBを、2つのパートの10:1混合物となるように設定したMIXPACノズルを用いて混合した。混合後、組成物は5分未満の加工時間(またはオープンタイム)を示した。
【0109】
・性能
混合したパートA/パートB配合物を、クロスボンド接着性、引張接合強度、T剥離接合強度、および/またはくさび衝撃接合強度について、スチール、ステンレススチール、アルミニウム、およびKalixで構成された基材上で評価した。
【0110】
試片を1インチ×0.5インチ、30ミルのボンドラインで接合し、表面処理は行わなかった。
【0111】
所望の基材に一旦塗布した混合組成物の硬化プロファイルは、80℃の温度に20分間ばく露し、続いて室温に約24時間ばく露したものである。
【0112】
Kalix基材への接着クロスボンド強度を
図1に示し、以下の表Aに記録する。これらの評価では、p-TDEAを対照として使用し、表においてもそのように称する。
【0113】
【0114】
スチール基材への引張モードでの接着接合強度を
図2に示し、また以下の表Bに記録する。
【0115】
【0116】
ステンレススチール基材への引張モードでの接着接合強度を
図3に示し、また以下の表Cに記録する。
【0117】
【0118】
アルミニウム基材への引張モードでの接着接合強度を
図4に示し、また下記表Dに記録する。
【0119】
【0120】
Kalix基材への引張モードでの接着接合強度を
図5に示し、また以下の表Eに記録する。
【0121】
【0122】
スチール基材への引張剥離モードでの接着接合強度を
図6に示し、また以下の表Fに記録する。
【0123】
【0124】
スチール基材へのくさび衝撃モードでの接着接合強度を
図7に示し、また以下の表Gに記録する。
【0125】
【0126】
ここでは、さまざまな促進剤を、パートA配合物中で上記の例のような量で評価した。パートB配合物は上記の例で説明したとおり使用した。下表の表Hに、各パートB配合物、およびそれぞれ異なる促進剤を用いた各パートA配合物について観察された色、ならびにパートA配合物をパートB配合物と混合した後に観察された色を示す。興味深いことに、それぞれの場合において、混合したパートAとパートBの色は変化するが、1つを除くすべての場合で変化は予測可能なものであった(例えば、黄色の溶液に青色の溶液を添加すれば緑色の生成物が得られる。)。THQジオール含有パートBでは、混合したパートAとパートBの色の変化により、暗赤色が生じた。
【0127】
【0128】
下記表Iでは、パートB配合物と混合したパートA配合物に使用した促進剤を、そのゲルタイムおよび発熱に至る時間(それぞれ、分で示す)と共に示し、発熱中に到達した最高温度を記録する。ここでは、THQジオールを含むパートA配合物のみが、パートBと混合したときに、5分以上のゲルタイムを示し、かつ発熱時間までの時間が4分以下であり、そしてゲルタイムおよび発熱時間を達成した評価したすべての促進剤の中で最も低い最高温度を示したことがわかる。ゲルタイムはオープンタイムとみなすことができ、これは、エンドユーザーにとっては長いことが望ましく、これは、場合により寸法が大きく、あるいはまた設計が複雑なアセンブリをエンドユーザーが製造する際に、エンドユーザーにより高い柔軟性をもたらすためである。一旦硬化が開始したらすぐに発熱が起こるように、発熱に到達するまでの時間はより短い方が望ましい。この時間を固定までの時間と見なしても、その時間内で適切なレベルの接合強度が発現した時間と見なしたとしても、エンドユーザーはアセンブリ製造のスループットを高めることができる。最後に、発熱の間に到達される最高温度が低い程、エンドユーザーが作業を行う環境をより安全に変え、また接合した基材が損傷する可能性を低減できる。
【0129】