(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20221020BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221020BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2019556948
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(86)【国際出願番号】 US2018027907
(87)【国際公開番号】W WO2018195038
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー、 ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】ディーガン、 ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ハールバート、 リネット
(72)【発明者】
【氏名】メッサーナ、 アンドリュー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ギャリガン、 マーク
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0004354(US,A1)
【文献】特開2011-241342(JP,A)
【文献】米国特許第05872158(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0101689(US,A1)
【文献】国際公開第2009/070172(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0171817(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液型の構成の接着剤組成物であって、
(a)(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含むパート(A);ならびに
(b)(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含むパート(B)
を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
アセタール含有フリーラジカル硬化性成分が、下記の一般構造に包含される化合物によって表される、請求項1に記載の接着剤組成物:
【化1】
(式中、R
1は、H、CH
3またはCNであり;
R
2は、多価のC
1~C
8アルキル鎖、C
6~C
12アリール基、またはC
3~C
8シクロアルキル基であり;
nは、1~4である。)
【請求項3】
アセタール含有フリーラジカル硬化性成分が、下記の一般構造に包含される化合物によって表される、請求項1に記載の組成物:
【化2】
(式中、R
1は、C
1~C
30アルキル、C
6~C
30アリール、エステル、またはカルバメートであり;
R
2は、二価の不飽和C
2~C
40結
合である。)
【請求項4】
アセタール含有フリーラジカル硬化性成分が、下記の一般構造に包含される化合物によって表される、請求項1に記載の組成物:
【化3】
(式中、R
1は、C
1~C
8アルキル、C
6~C
12アリール、またはC
3~C
8シクロアルキルであり;
R
2は、
三価の不飽和C
2~C
60結合である。)
【請求項5】
アセタール含有フリーラジカル硬化性成分のR
2が、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリメシン酸から選択されるトリカルボン酸に由来する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
アセタール含有フリーラジカル硬化性成分が、以下よりなる群から選択される化合物によって表される、請求項1に記載の組成物:
【請求項7】
パート(A)またはパート(B)の少なくとも一方の(メタ)アクリレート成分が、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ
)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル-2-ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロメチル-2-ペルフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,2-ブチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体が、下記の一般構造に包含される化合物によって表される、請求項1に記載の組成物:
【化4】
(式中、Zは、OまたはN-R(式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボニル、アルキレン、(メタ)アクリレート、カルボキシル、またはスルホナトから選択される。)であるか、またはR’がフェニル環に結合している直接結合であり;R’は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルキレン-もしくはアルケニレン-エーテル、カルボニル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボキシル、ニトロソ、またはスルホナトから選択され;Xは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルコキシ、アミノ、カルボキシル、ニトロソ、スルホネート、ヒドロキシルまたはハロアルキルであり;Yは、-SO
2NH-、-CONH-、-NH-、
または-PO(NHCONHCSNH
2)NH-であり;nは、0または1であり、mは、1または2である。)、または、
【化5】
(式中、RおよびR’は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、またはスルホナトから独立して選択されるか、またはRとR’が一緒になって、炭素環またはヘテロ原子含有環を形成しているか、またはR’がフェニル環に結合している直接結合であり;Xは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルコキシ、アミノ、アルキレン-またはアルケニレン-エーテル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、ニトロソ、スルホネート、ヒドロキシルまたはハロアルキルであり;Yは、-SO
2NH-、-CONH-、-NH-、
または-PO(NHCONHCSNH
2)NH-であり;nは、0または1であり、mは、1または2である。)
【請求項9】
ベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体が、下記の一般構造に包含される化合物によって表される、請求項
8に記載の組成物:
【化6】
(式
III中、X、Y、
Z、およびnは
式Iに定義されるとおりであり、X’は
式Iに定義されるXとして定義され
、式IIIA中、R、X、Y、およびnは式IAに定義されるとおりであり、X’は式IAに定義されるXとして定義される。)
【請求項10】
ベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体が、下記の一般構造に包含される化合物により表される、請求項
8に記載の組成物:
【化7】
(式中、R、R’、X、Y、およびnは
式IAに定義されるとおりであり、mは2である。)
【請求項11】
ブロックコポリマーをさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
2パート接着剤組成物を調製する方法であって、
(a)(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含むパート(A)を形成する工程;および
(b)(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含むパート(B)を形成する工程
を含む方法。
【請求項13】
第1の表面を第2の表面に接合させる方法であって、
(a)(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含むパート(A);ならびに
(b)(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含むパート(B)
を含む、2パート組成物を提供することを含む方法。
【請求項14】
パート(A)とパート(B)を混合して少なくとも一方の基材に塗布すると、組成物のオープンタイムは最大5分となり、基材を合わせると、硬化時間は80℃
で20分以下となり、接合が3Kgを支持するようになる固定時間は5分未満となる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
パート(A)とパート(B)が、体積で1:10から10:1のパート(A) 対 パート(B)の比で混合される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
(a)(メタ)アクリレート成分;
(b)有機ペルオキシド、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む硬化パッケージ;ならびに
(c)アセタール含有フリーラジカル硬化性成分
を含む、接着剤組成物。
【請求項17】
反応性酸成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
反応性酸成分が(メタ)アクリル酸である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
反応性酸成分が、スルホン酸
もしくはスルホン酸誘導体、リン酸、リン酸誘導体、
もしくはリン酸エステル、またはアクリル酸である、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含む第1パートと、(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む第2パートとを含む、場合により二液型(two part)の構成の接着剤組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の簡単な説明
アクリル系接着剤組成物はよく知られている。例えば、米国特許第4,536,546号(Briggs)を参照されたい。この技術に基づいた接着剤は、PLEXUS MA 300および310の商品名でIllinois Tool Works Inc.,Chicago,ILから販売されているようであるが、これらの接着剤は、不快な臭気を示し、取り扱うのに有毒があり、これらのことはその使用にとって深刻な欠点である。
【0003】
第1パートおよび第2パートは、ポンプ装置で容易に分注できるほど十分に低い粘度を有する。この接着剤を形成するために第1パートと第2パートを混合するが、混合直後は混合物の粘度が高いため、表面への塗布後、混合物のオープンタイムの間は、接着剤が垂れたり、滴ったり、移行したりせず、そして、混合した第1パートと第2パートが硬化する。「オープンタイム」という用語は、接着剤の混合から硬化までの間の経過時間を意味する。
【0004】
近年、ヘンケルの研究者は、ベンゾイルチオ尿素またはベンゾイルチオウレタン誘導体に基づいた硬化促進剤技術を発明および開発した。米国特許出願公開第2014/0004354号は、その目的のために、2パート硬化性組成物を提供しており、ここで、該2パート硬化性組成物は、
パートA:下記構造IまたはIAに包含される1種以上の化合物:
【0005】
【化1】
(式中、Zは、OまたはN-R(式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルキレン、(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、またはスルホナトから選択される。)であり、R’は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、またはスルホナトから選択されるか、あるいは、RとR’が一緒になって炭素環またはヘテロ原子含有環を形成しているか、あるいは、R’がフェニル環に結合している直接結合であり;Xは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルコキシ、アミノ、アルキレン-またはアルケニレン-エーテル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、ニトロソ、スルホネート、ヒドロキシルまたはハロアルキルであり;Yは、-SO
2NH-、-CONH-、-NH-、および-PO(NHCONHCSNH
2)NH-であり;nは、0または1であり、mは、1または2である。)、または
【0006】
【化2】
(式中、RおよびR’は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、またはスルホナトから独立して選択されるか、またはRとR’が一緒になって炭素環またはヘテロ原子含有環を形成しているか、またはR’がフェニル環に結合している直接結合であり;Xは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルコキシ、アミノ、アルキレン-またはアルケニレン-エーテル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、スルホネート、ヒドロキシルまたはハロアルキルであり;Yは、-SO
2NH-、-CONH-、-NH-、および-PO(NHCONHCSNH
2)NH-であり;nは、0または1であり、mは1または2である。)、ならびに
パートB:酸化剤
を含み、
ただし、パートAまたはパートBの少なくとも一方が(メタ)アクリレート成分を含む。
【0007】
しかし、既存の組成物は、携帯型ディスプレイデバイスなどの積層体のアセンブリに望まれる迅速な固定および良好な接着特性に組み合わせて、その間の接着剤によって貼り合わされた基材を剥離できる能力を有していない。そのような組成物の必要性が存在する。
【0008】
また、インクコートガラス、複合プラスチックおよびエンジニアリングプラスチックなどの様々な基材上に、および/または基材間に、強固な接合を形成することができ、かつ、必要に応じて剥離できる能力も有する接着剤組成物への必要性もある。このように、エンドユーザーが部品を再利用、リサイクル、または除去する必要がある場合、そのような必要性があり得る。熱活性化剥離には、基材を損傷しないように100℃未満の温度が好ましい。
【0009】
最新技術は、そのような接着剤組成物を提供していないようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、その必要性に対する解決策などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の接着剤組成物は、場合により二液型の構成であり、(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有(メタ)アクリレート成分を含む第1パート(A)と、(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む第2パート(B)とを含む。
【0012】
第1パートと第2パートを混合して、貼り合わせようとする少なくとも1つの基材に塗布すると、該組成物は最大5分間のオープンタイムを有し、そして基材を合わせると、およそ室温(23℃)で約5分の固定時間(fixture time)を示すこととなる。
【0013】
より具体的には、2パート(two part)接着剤組成物が提供され、ここで該組成物は、
(a)(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含む第1パート、ならびに
(b)(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む第2パート
を含む。
【0014】
本発明の別の態様では、2パート接着剤組成物の調製方法が提供され、ここで該方法は、
(a)(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含む第1パートを形成する工程、
(b)(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む第2パートを形成する工程
を含む。
【0015】
さらに別の態様では、第1の表面を第2の表面に接合する方法が提供され、ここで該方法は、
(a)(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含む第1パート、ならびに
(b)(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む第2パート
を含む2パート組成物を提供する工程を含み、
ここで、第1パートと第2パートを混合して、少なくとも1つの基材に塗布すると、該組成物は最大約5分間のオープンタイムを有し、また、基材を合わせると、80℃で約20分以下の硬化時間、および5分未満の固定時間を有することとなる。
【0016】
本発明の別の態様では、接着剤組成物が提供され、ここで該組成物は、
(a)(メタ)アクリレート成分、
(b)有機ペルオキシド、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む硬化性パッケージ;ならびに
(c)アセタール含有フリーラジカル硬化性成分
を含む。
【0017】
詳細な説明
本発明の接着剤組成物は、その多くが金属である様々な材料から構築された基材表面への強化された接着を提供する。
【0018】
したがって、本発明は、(メタ)アクリレート成分、有機ペルオキシド、およびアセタール含有フリーラジカル硬化性成分を含む第1パートと、(メタ)アクリレート成分、およびベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体を含む第2パートとを含む接着剤組成物を、場合により二液型の構成で提供する。
【0019】
強化された接着力と結合強度が達成される基材の中には、例えば軟鋼、ステンレススチール、およびアルミニウムなどの金属基材、ガラス基材(インクコートガラス基板など)、および様々なプラスチック基材(アクリル、ポリカーボネート、ポリカーボネート-ABSおよびナイロンなど)がある。
【0020】
パート(A)組成物とパート(B)組成物の組み合わせは、1つの基材表面を別の基材表面に貼り合わせるのに使用するのに適した硬化性組成物をもたらす。1つ以上の基材は、接着性接合部または積層体を形成するように構築され得る。硬化後の組成物の反応生成物は、2つの基材表面間の接着結合である。
【0021】
2パート組成物は、様々な商業的用途で使用され得るが、携帯電話およびコンピューターデバイスなどの電子ディスプレイデバイスのアセンブリに特に有用である。
【0022】
<パート(A)>
・(メタ)アクリレート成分
以下の式を有する少なくとも1つの基を含む任意の好適な材料が使用され得る。
【0023】
【化3】
(式中、Rは、H、ハロゲン、またはC
1~C
10ヒドロカルビルから選択される。)
【0024】
有利には、該基は(メタ)アクリロキシ基である。「(メタ)アクリロキシ」という用語は、式中のRがそれぞれHまたはメチルである、アクリレートとメタクリレートの両方を指すことが意図される。(メタ)アクリレート成分の有用な量は、典型的には、総組成物の約20重量パーセント~約80重量パーセントの範囲である。望ましくは、本発明の組成物は、約50重量パーセント~約70重量パーセントの(メタ)アクリレート成分を含む。
【0025】
(メタ)アクリレート成分は、ポリマー、モノマー、またはそれらの組み合わせの形態で存在し得る。ポリマーの形態で存在する場合、(メタ)アクリレート成分は、上記の基の少なくとも1つが結合しているポリマー鎖であってよい。該基は、主鎖のペンダント位もしくは末端位、またはそれらの組み合わせに位置し得る。有利には、少なくとも2つのそのような基が存在し得、これらは末端位に位置し得る。(メタ)アクリレート成分は、当業者によく知られているように、ポリビニル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ、ビニルエステル、フェノール系、アミノ樹脂、油系樹脂など、またはそのランダムもしくはブロックの組み合わせから構成されるポリマー鎖を有し得る。
【0026】
ポリマー鎖は、ビニルモノマーの重合により形成され得る。そのようなビニルモノマーの例には、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ))アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル-2-ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロメチル-2-ペルフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,2-ブチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびエトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートがある。これらのモノマーは、各々単独で使用してもよく、または複数のものを共重合してもよい。特に望ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーとしては、エステル基のアルコール部分が1~8個の炭素原子を含むものが挙げられる。例えば、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、エチルメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート(BDMA)、ブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート(MMA)の例がある。
【0027】
しかしながら、特に望ましいのは、(メタ)アクリレートの少なくとも一部としてのテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートである。
【0028】
パート(A)組成物に使用される(メタ)アクリレート成分の量は、約20~約95重量パーセント、例えば約40~約75重量パーセントなどであってよい。
【0029】
・アセタール含有フリーラジカル硬化性成分
アセタール含有フリーラジカル硬化性成分としては、下記一般構造に包含される化合物が使用され得る:
【0030】
【化4】
(式中、R
1は、H、CH
3またはCNであり;
R
2は、多価のC
1~C
8アルキル鎖、C
6~C
12アリール基、またはC
3~C
8シクロアルキル基であり;
nは、1~4である。)
【0031】
【化5】
(R
2は、二価の不飽和C
2~C
40結合(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、トラウマチン酸、グルチン酸およびメサコン酸から選択されるジカルボン酸から誘導され得るものなど)である。)
【0032】
【化6】
(式中、R
1は、C
1~C
8アルキル、C
6~C
12アリール、またはC
3~C
8シクロアルキルであり、
R
2は、二価の不飽和C
2~C
60結合(クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリメシン酸から選択されるトリカルボン酸から誘導され得るものなど)である。)
【0033】
アセタール含有(メタ)アクリレート化合物の特定の例としては、下記に列挙されるものが挙げられる:
【0034】
【0035】
パート(A)組成物において使用されるアセタール含有(メタ)アクリレート化合物の量は、約1~約20重量パーセント、例えば約2.5~約10重量パーセントであってよい。
【0036】
・ペルオキシ開始剤
本発明に特に好適なペルオキシ開始剤の部類は、ヒドロペルオキシ開始剤である。これらの中でも、有機ヒドロペルオキシドが特に好適である。特に好ましい有機ヒドロペルオキシドとしては、p-メタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ピネンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンヒドロペルオキシド、t-ブチル-2-ヒドロキシエチルペルオキシド、t-ブチルペルオキシマレイン酸、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、ターシャリー-ブチルヒドロペルオキシド(TBH)、および過酸化ベンゾイル(BP)が挙げられる。さらに、無機ペルオキシド、ならびに、たとえばt-ブチルペルベンゾエート、ベンゾフォンペルオキシエステルおよびフルオレノンペルオキシエステルなどのペルオキシエステル、ペルオキシカーボネート、およびフリーラジカル形成を促進する電子構造を有するハロゲン含有化合物、分解してフリーラジカルを形成するエステルなどの組成物も有用である。「ペルオキシ」という用語は、嫌気硬化系の調製に好適なペルオキシド、ヒドロペルオキシド、およびペルエステルを意味することが意図される。
【0037】
ペルオキシ重合開始剤は、その開始機能を果たすのに十分な量でパート(A)組成物中で使用してよい。有用な非限定的な量としては、総組成物を基準として約0.25重量パーセント~約10重量パーセント、望ましくは総組成物を基準として約1重量パーセント~約3重量パーセントが挙げられる。
【0038】
・フリーラジカル阻害剤
本発明では、フリーラジカル重合阻害剤を使用して、混合前の早期反応を防止してもよい。
【0039】
当該技術分野では多数の好適なフリーラジカル重合阻害剤が知られており、キノン、ヒドロキノン、ヒドロキシルアミン、ニトロキシル化合物、フェノール、アミン、アリールアミン、キノリン、フェノチアジンなどが挙げられる。特に有用なフリーラジカル阻害剤としては、ヒドロキノン、ターシャリーブチルヒドロキノン(「TBHQ」)、メチルヒドロキノン、ヒドロキシエチルヒドロキノン、フェノチアジン、およびNAUGARD-R(Crompton Corp.からのN-アルキル置換p-フェニレンジアミンのブレンド)が挙げられる。また、1種以上の個々のフリーラジカル成分を組み合わせてもよい。
【0040】
パート(A)組成物において使用されるフリーラジカル阻害剤成分の量は、0~約1重量パーセント、例えば約0.05~0.2重量パーセントであってよい。
【0041】
<パート(B)>
・(メタ)アクリレート成分
パート(B)で使用される(メタ)アクリレート成分は、パート(A)で使用される(メタ)アクリレートのうちの任意の1種以上であってもよい。
【0042】
パート(B)組成物において使用される(メタ)アクリレート成分の量は、約20~約95重量パーセント、例えば約40~約75重量パーセントであってよい。
【0043】
・反応性酸成分
本発明の組成物は、酸または酸エステルを含む。望ましくは、この成分はパート(B)組成物中にのみ含まれる。好適な酸または酸エステルとしては、リン酸または誘導体、リン酸エステル、およびスルホン酸または誘導体が挙げられる。好ましい反応性酸成分はリン酸エステルである。
【0044】
酸モノマーは、エチレン性不飽和モノまたはポリカルボン酸、マレイン酸、またはクロトン酸などのフリーラジカル重合性酸モノマーが挙げられる。望ましいものとしては、メタクリル酸(「MAA」)及びアクリル酸が挙げられる。反応性酸成分はまた、熱硬化性組成物の硬化時間を調節および減速する。
【0045】
好適なリン酸エステルとしては、以下の式により表される化合物が挙げられる:
【0046】
【化8】
(式中、R
1は、HまたはC
3であり、R
2は、H、または以下の構造によって表されるラジカルである:
【0047】
【化9】
(式中、R
1は、HまたはCH
3である。)) 特に有用なリン酸エステルは、ヒドロキシエチルメタクリレート(“ΗΕΜA”)リン酸エステルであり、商品名T-MULZ 1228またはHARCRYL 1228または1228Mとして販売されており、それぞれHarcross Chemicals,Kansas City,KSから入手できる。また、少なくとも1つの強酸「活性水素」基、または少なくとも1つのホスホン酸活性水素基(R
1R
2POOH)を有する構造、例えば、ヒドロキシルエチルジホスホン酸、ホスホン酸、および誘導体など、あるいは、ホスホン酸官能基もしくは同様の酸強度の官能基を有するオリゴマーまたはポリマー構造も挙げられる。
【0048】
反応性酸成分は、総組成物の約0.25重量パーセントから約15重量パーセントで存在してよい。
【0049】
・ベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体
ベンゾイルチオ尿素誘導体またはベンゾイルチオウレタン誘導体は、以下の一般構造Iに包含され得る。
【0050】
【化10】
(式中、Zは、OまたはN-R(式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボニル、アルキレン、(メタ)アクリレート、カルボキシル、またはスルホナトから選択される。)であるか、またはR’がフェニル環に結合している直接結合であり;R’は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルキレン-またはアルケニレン-エーテル、カルボニル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボキシル、ニトロソまたはスルホナトから選択され;Xは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルコキシ、アミノ、カルボキシル、ニトロソ、スルホネート、ヒドロキシルまたはハロアルキルであり;Yは、-SO
2NH-、-CONH-、-NH-、および-PO(NHCONHCSNH
2)NH-であり;nは、0または1であり、mは、1または2である。)
【0051】
より具体的な一般構造を下記に示す。
【0052】
【化11】
(式中、RおよびR’は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルキレン、(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、またはスルホナトから独立して選択されるか、あるいはRとR’が一緒になって炭素環またはヘテロ原子含有環を形成しているか、あるいはR’がフェニル環に結合している直接結合であり;Xは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、アルコキシ、アミノ、アルキレン-またはアルケニレン-エーテル、アルキレン(メタ)アクリレート、カルボニル、カルボキシル、ニトロソ、スルホネート、ヒドロキシルまたはハロアルキルであり;Yは、-SO
2NH-、-CONH-、-NH-、および-PO(NHCONHCSNH
2)NH-であり;nは、0または1であり、mは、1または2である。)
【0053】
より具体的には、ベンゾイルチオ尿素またはベンゾイルチオウレタン誘導体は、それぞれ構造IIまたはIIAに包含され得る。
【0054】
【化12】
(式中、R、R’、Z、X、Y、およびnは、上に定義されるとおりである。)
【0055】
構造IIおよびIIAに包含されるベンゾイルチオ尿素またはベンゾイルチオウレタン誘導体のより具体的な例をそれぞれ下記に示す。
【0056】
【化13】
(式中、R、X、Y、およびnは、上に定義されるとおりであり、X’は、Xとして定義される。)
【0057】
あるいは、構造Iに包含されるベンゾイルチオ尿素またはベンゾイルチオウレタン誘導体は、R’がリンカーであるビス型であってもよい。すなわち以下である。
【0058】
【化14】
(式中、R、R’、X、Y、およびnは、上に定義されるとおりであり、mは、2である。)
【0059】
さらにより具体的には、ベンゾイルチオ尿素またはベンゾイルチオウレタン誘導体は、以下の化合物であってよい。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
ベンゾイルチオ尿素またはベンゾイルチオウレタン誘導体は、組成物の接着特性を高めるのに有用な量で接着剤組成物に使用してよい。例えば、総組成物の約0.25重量パーセント~約10重量パーセント、例えば約1重量パーセント~約5重量パーセントなどの量で存在してよい。
【0067】
<パート(A)またはパート(B)のいずれかまたは両方で使用される構成成分>
・可塑剤
可塑剤は、2パート組成物のいずれかのパートで使用しても両方のパートで使用してもよい。可塑剤は、組成物の反応性部分の柔軟性を補助し、かつ/または組成物の他の成分のための担体ビヒクルとして作用し得る、任意の液体または可溶性化合物であってよい。例としては、芳香族スルホンアミド、芳香族リン酸エステル、アルキルリン酸エステル、ジアルキルエーテル芳香族エステル、高分子可塑剤、ジアルキルエーテルジエステル、ポリグリコールジエステル、トリカルボン酸エステル、ポリエステル樹脂、芳香族ジエステル、芳香族トリエステル(トリメリテート)、脂肪族ジエステル、エポキシ化エステル、塩素化炭化水素、芳香族オイル、アルキルエーテルモノエステル、ナフテン系オイル、アルキルモノエステル、パラフィン系オイル、シリコーンオイル、ジ-n-ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ-n-ヘキシルフタレート、ジ-n-ヘプチルフタレート、ジ-2-エチルへキシルフタレート、7c,9c-フタレート(直鎖および分岐)、ジイソオクチルフタレート、直鎖6c,8c,10cフタレート、ジイソノニルフタレート、直鎖8c-10cフタレート、直鎖7c-11cフタレート、ジイソデシルフタレート、直鎖9c-11cフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジ-n-ブチルセバケート、ジイソデシルアジペート、トリエチレングリコールカプレート-カプリレート、トリエチレングリコール2-エチルヘキサノエート、ジブトキシエチルアジペート、ジブトキシエトキシエチルアジペート、ジブトキシエトキシエチルホルマール、ジブトキシエトキシエチルセバケート、トリ-2-エチルへキシルトリメリテート、トリ-(7c-9c(直鎖))トリメリテート、トリ-(8c-10c(直鎖))トリメリテート、トリエチルホスフェート、トリイソプロピルフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、2-エチルへキシルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリアリールホスフェート(合成)、トリブトキシエチルホスフェート、トリ(-クロロエチル)ホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、塩素化有機ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリ(ジクロロプロピル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェートが挙げられる。可塑剤の組み合わせが有用である。
【0068】
組成物全体における使用される可塑剤の量は、総組成物の0~約5重量パーセント、例えば約0.1~約1重量パーセントであってよい。
【0069】
・ブロックコポリマー
使用する場合、ブロックコポリマーは、開示された組成物に望まれる物理的特性に寄与することができる任意のブロックコポリマーであってよい。ブロックコポリマーは、2パート組成物のいずれか一方のパートに存在しても、両方のパートに存在してもよい。
【0070】
ブロックコポリマーゴムは、ブタジエンまたはイソプレンのいずれかおよびスチレンのブロック(例えば、SBS、SIS、SEBS、およびSB)を使用して構築することができ、その市販例は、Shell Chemical Co.からKRATON D-1116として入手可能であり、また他のKRATON DグレードエラストマーはDexcoからVEXOR 2411 IPとして入手可能である。
【0071】
Tgが約25℃未満で、メタクリレート/アクリレートモノマーに可溶性の他のエラストマーを、ブロックコポリマーゴムに代えて使用することができる。そのような例には、エピクロロヒドリンのホモポリマー、およびそのエチレンオキシドとのコポリマー(Zeon ChemicalsからHYDRINとして入手可能)、アクリレートゴムペレット(ZeonからHYTEMPとして入手可能)、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム、およびSBRゴム(ブタジエンとスチレンのランダムコポリマー)がある。
【0072】
さらに他のブロックコポリマーは、以下の式で表されるスチレン無水マレイン酸コポリマーであってもよい。
【化21】
(式中、vは、1~12であり;wは、1~6であり;nは、1~50である。)
【0073】
スチレン無水マレイン酸コポリマーはよく知られており、そのいくつかは、例えばSartomer Company,Inc.,Exton,PAからSMA EF80の商品名で市販されている。スチレン無水マレイン酸コポリマーは、スチレンと無水マレイン酸との共重合生成物を表し、スチレン部分構造と無水マレイン酸部分構造の交互ブロックを特徴とする。
【0074】
両親媒性ブロックコポリマーが特に望ましい場合もある。ArkemaはNANOSTRENGTHの商標で両親媒性ブロックコポリマーを市販している。そのようなブロックコポリマーは、現在、SBMおよびMAMの2つのタイプが入手可能である。SBMコポリマーは、報告によれば、ポリスチレン、1,4-ポリブタジエン、およびシンジオタクチックポリ(メチルメタクリレート)でできている。
【0075】
さらに、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)とポリブチルアクリレート(「PB」)とから構成されたポリマー材料を使用してもよい。この部類に含まれるポリマー材料は、ポリメチルメタクリレート-ブロック-ポリブチルアクリレート-ブロックポリメチルメタクリレートコポリマー(「MAM」)と呼ばれる。
【0076】
Arkemaによって報告されているように、MAMは約70%のPMMAと30%のPBからなるトリブロックコポリマーである。MAMは別々のセグメントから構成され、それにより分子スケールで自己集合する能力を提供する。すなわち、Mはポリマーに硬度を付与し、Aはポリマーにエラストマー特性を付与する。
【0077】
硬質ポリマーセグメントは、(メタ)アクリレートに可溶性の傾向にあるが、一方エラストマーセグメントは硬化時に形成されるポリマー(メタ)アクリレートに靭性をもたらす。MAMはまた、本来の物性を損なうことなく、機械的特性を強化する。MAMは、NANOSTRENGTHの商品名で、現在のところいくつかの異なるグレード(すなわちE-21およびM-52N)で市販されている。
【0078】
Arkemaは、様々なポリマー(その大部分は、製造業者によれば、主要な工業用エポキシ樹脂である)と混和性のあるアクリルブロックコポリマーとしてNANOSTRENGTH製品ラインを推奨している。また米国特許第6,894,113号(Court)(‘113特許の要約では、耐衝撃性が向上した熱硬化性材料が論じられている)も参照されたい。耐衝撃性は、S-B-M、B-M、およびM-B-Mブロックを含む少なくとも1つのコポリマーを含む1~80%の耐衝撃性改良剤に由来し、ここで、各ブロックは、他のブロックに共有結合によって連結されているか、あるいは、中間で、ブロックのうちの一方に共有結合で、かつ他方のブロックに別の共有結合で連結されており、MはPMMAホモポリマーまたは少なくとも50重量%のメチルメタクリレートを含むコポリマーであり、Bは熱硬化性樹脂およびMブロックと非相溶性であり、そのガラス転移温度Tgは熱硬化性材料の作業温度よりも低く、そしてSは熱硬化性樹脂、Bブロック、およびMブロックと非相溶性であり、そのTgまたはその溶融温度はBのTgよりも高い。
【0079】
両親媒性ブロックコポリマーの別の市販の例は、Dow Chemical Co.製のFORTEGRA 100として商業的に知られているポリエーテルブロックコポリマーである。Dowは、FORTEGRA 100を、アミン硬化エポキシ系において高効率の第2相として使用するために設計された低粘度強靭化剤と説明している。FORTEGRA 100は、最終コーティングまたは組成物の粘度、ガラス転移温度、耐腐食性、硬化速度、または化学的耐性に著しい影響を及ぼすことなく、靱性の向上をもたらすと報告されている。FORTEGRA 100はまた、エポキシ硬化反応に関与しないので、標準的なビスフェノールAおよびビスフェノールFエポキシ系への配合に有用であるとも報告されている。第2相強靭化剤として、FORTEGRA 100は、仕上げフィルムまたは部品に特定の体積分率で配合された場合に効果的であるとして推奨されており、典型的には乾燥体積で3%~8%が強靭化効果を達成すると言われている。
【0080】
追加のブロックコポリマーとしては、以下の一般式の疎水性セグメントまたは部分と親水性セグメントまたは部分の両方を含むものが挙げられる:
【0081】
【化22】
(式中、R
1は独立して、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、もしくは4-メチル-1-ペンテンなどの疎水性オレフィン、またはスチレンなどの重合可能な疎水性芳香族炭化水素であり;各R
2は、無水マレイン酸などの親水性酸無水物であり;vは1~12であり;wは1~6であり;nは1~50である。)
【0082】
スチレン無水マレイン酸ブロックコポリマーにおいて、疎水性セグメントの親水性セグメントに対する比率は、少なくとも2:1、例えば3:1~12:1であってよい。ブロックコポリマーの親水性セグメントは、無水マレイン酸などの無水物を含むべきである。ブロックコポリマーの疎水性セグメントは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、またはスチレンの少なくとも1つを含むべきである。望ましくは、ブロックコポリマーは、無水マレイン酸を含む親水性セグメントと、スチレンを含む疎水性セグメントを用いて調製されるべきである。
【0083】
以下の米国特許文献を参照すると、本明細書での使用に好適な両親媒性ブロックコポリマーが示されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第7,745,535(Schmidt)は、両親媒性マルチブロックコポリマーに関し、これを特許請求しており、ここで、その少なくとも1つのブロックは、a)アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの塩、エステル、無水物、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸のアミド;ジカルボン酸無水物;カルボキシエチルアクリレート;ならびにアクリルアミドから選択される1または複数のモノマー単位からできている親水性ミドルブロックと、b)疎水性末端ブロックとからなる特性が明らかなブロックであり、ここで該マルチブロックコポリマーは、不水溶性、不水分散性であり、かつ、C1-3アルコールに可溶性でも分散性でもない。
【0084】
米国特許第7,820,760(Pham)号は、硬化性接着剤エポキシ樹脂組成物に関し、これを特許請求しており、ここで該組成物は、(a)エポキシ樹脂と;(b)少なくとも1つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントおよび少なくとも1つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマー(ここで、非混和性ブロックセグメントは少なくとも1つのポリエーテル構造を含み、ただし該非混和性ブロックセグメントのポリエーテル構造は少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1または複数のアルキレンオキシドモノマー単位を含む)と;(c)少なくとも1種の硬化剤を含む。‘760特許における両親媒性ブロックコポリマーは、PEO-PBOジブロックコポリマーまたはPEO-PBO-PEOトリブロックコポリマーなどのオールポリエーテルブロックコポリマーである。両親媒性ブロックコポリマーは、‘760特許においてエポキシ樹脂組成物が硬化すると、得られる硬化エポキシ接着剤樹脂組成物の接合強度が、該両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを含まないエポキシ樹脂組成物と比較して向上するような量で存在する。
【0085】
米国特許第7,670,649(Hoyles)号は、硬化性室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物に関し、これを特許請求しており、ここで、該組成物は、(a)エポキシ樹脂と;(b)少なくとも1つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメント(ここで、非混和性ブロックセグメントは少なくとも1つのポリエーテル構造を含み、ただし該非混和性ブロックセグメントのポリエーテル構造は少なくとも1またはそれ以上のアルキレンオキシドモノマー単位を含む)、および少なくとも1つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーと;(c)約60℃未満の周囲温度でコーティング組成物を硬化させるのに十分な量の窒素含有硬化剤と、を含む。エポキシ樹脂組成物を硬化させると、得られる硬化したエポキシ樹脂組成物の靱性が向上する。
【0086】
米国特許第6,887,574(Dean)号は、(a)少なくとも1種の難燃性エポキシ樹脂;(b)少なくとも1種の両親媒性ブロックコポリマー;および(c)硬化剤を含む硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物に関し、これを特許請求している。このような成分は、硬化すると、ブロックコポリマーが、ひも状ミセル(worm-like micelle)形態などのナノ構造形態へと自己集合するように、適切な量および比率で硬化性組成物中に存在する。得られる硬化生成物は、著しく高い耐破壊性を有することが報告されており、耐破壊性が課題である用途における難燃性エポキシの使用を可能にする。
【0087】
米国特許出願公開第2008/0287595(Verghese)号は、(1)エポキシ樹脂、エポキシビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、またはそれらの混合物から選択される熱硬化性樹脂、および(2)該熱硬化性樹脂中に分散されている両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物に関する。さらに、該組成物から調製された繊維強化プラスチック(FRP)、コーティング、および複合材も提供される。
【0088】
国際公開第WO2010/008931(Turakhia)号は、ブロックコポリマー強靭化剤を使用して構造用複合材の耐破壊性(靭性)を高めた構造用複合材に関する。構造用複合材は、(i)炭素繊維強化材、および(ii)熱硬化性樹脂組成物を含み、ここで熱硬化性樹脂組成物は、(a)熱硬化性樹脂、および(b)少なくとも1種のブロックコポリマー強靭化剤を含む。
【0089】
国際公開第WO2009/018193(Verghese)号は、エポキシ樹脂、硬化剤、両親媒性強靭化剤、および無機ナノフィラーを含み、ここで強靭化剤は、少なくとも1つの次元がナノメートルスケールである第2相を形成している、硬化性組成物、硬化した組成物、およびそれらを形成する方法に関する。
【0090】
本明細書では、ブロックコポリマーは、接着剤組成物の総重量を基準として約50重量%まで、望ましくは5~40重量%の量で使用され得る。
【0091】
ブロックコポリマーのガラス転移温度(「Tg」)は約40℃を超えるべきである。一実施形態では、ブロックコポリマーのTgは約40℃から約155℃の間である。
【0092】
ポリマーのTgは、ポリマーが冷却時に脆性となる、または加熱時に軟化する温度である。より具体的には、Tgは、ポリマーが、冷却時に結晶性材料と同様の特性を有するガラス状構造を生成する、擬2次相転移(pseudo second order phase transition)を規定する。Tgを超えると、ポリマーは軟化し、破損することなく塑性変形することが可能となる。Tgは時にポリマーの「軟化温度」と記載されることもあるが、ポリマーがTgより低い温度で軟化し始めることは珍しくない。これは、多くの非結晶性ポリマーの性質によって、ポリマーの軟化が、単一の温度値で突然に起こるのではなく、ある温度範囲にわたって起こる場合があるからである。ポリマーは異なる温度で軟化し始め得るが、Tgは、一般的にこの範囲の中点を指す。本出願の目的上、ポリマーのTgは、ASTM E-1356によって決定される値を指す。
【0093】
組成物中の使用されるブロックコポリマーの量は、全体で、総組成物の約5重量パーセント~約75重量パーセント、例えば約10重量パーセント~約50重量パーセントであってよい。
【0094】
・他の添加物
どちらか一方または両方のパートに、フィラー、潤滑剤、増粘剤、着色剤などの追加の添加剤を含めてもよい。フィラーは、接着剤の強度を犠牲にすることなく嵩高さをもたらすことができ、高密度フィラーまたは低密度フィラーから選択することができる。また、シリカなど特定のフィラーは、レオロジー改質または微粒子強化をもたらすことができる。市販の例としては、Cab-O-Sil 610およびAEROSIL R8200が挙げられる。
【0095】
低密度フィラーが特に興味深く、これは、結果として得られる最終生成物が、フィラーを含まない生成物よりも低い密度を有しているが、それでもなおフィラーが存在しない場合と本質的に同等の強度特性を有しているためである。
【0096】
また、コアシェルポリマーが望ましい場合もある。コアシェルポリマーは、望ましくは「コアシェル」型のグラフトコポリマーであるか、またはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(「ABS」)、メタクリレート-ブタジエン-スチレン(「MBS」)、およびメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(「MABS」)など、「シェルなし(shell-less)」の架橋されたゴム状粒子であってもよい。BLENDEX 338は、GE Plastics製のABS粉末である。
【0097】
・パッケージおよび混合
二液型の形式で調製する場合、パート(A)およびパート(B)の各々は、ボトル、缶、チューブ、またはドラムなどの個別の容器に梱包される。
【0098】
パート(A)とパート(B)は、約1~約10のパート(a) 対 約10~約1のパート(b)の比率で混合される。望ましくは、パート(A)のパート(B)に対する比率は、約1のパート(A) 対 約1のパート(B)である。
【0099】
2つのパートの混合には、2成分用の流体入口を有し、好適な混合操作を行い、接着剤混合物を接合しようとする表面上に直接ディスペンスする混合ノズルを用いることができる。市販の混合および分注装置の一例は、ConProTec,Salem,NHから入手可能なMIXPAC(登録商標)である。2つのパートはまた、ボウル、バケツ等において手動で混合することもできるが、作業者は確実に混合を完了する必要がある。確実に混合を完了するのを助けるために、各パートに染料または顔料を配合して、混合後に第3の色が形成されるようにすることもできる。例えば、一方のパートが黄色染料を有してよく、他方のパートが青色染料を有してよく、その結果、混合後、完全な接着剤組成物は緑色となる。
【0100】
本発明の組成物は優れた接着剤およびシーラントである。積層材中に組み込むことができる金属、布、またはプラスチックのシートなどの第1表面に塗布して、第2表面を第1表面に合わせると、接着剤が硬化するにつれて2つの表面が接合される。さらなる利点は、清浄な基材を接合するための表面処理が必要ないことである。
【0101】
「硬化」という用語は、流体混合物を本発明の固体接合に変換する化学反応を意味する。この組成物の硬化プロセスは発熱性であり、接着剤の大きなビーズが使用される場合、約120℃程度の温度に達することがある。
【0102】
混合後、接着剤組成物は、約80℃で約20分で、および室温で約24時間以内に完全に硬化する。固定時間は約7~約10分の範囲であり、この時間で接合は3Kgの荷重を支持するようになる。
【実施例】
【0103】
最初に、特定のアセタール含有(メタ)アクリレートを以下のとおり合成した。
【0104】
例A:1-[4-[1-(プロパ-2-エノイルオキシ)エトキシ]ブトキシ}エチルプロパ-2-エノエート[ブタンジオールジアセタールジアクリレート(「BDDA」)]の調製
250mlの3口丸底フラスコに、1,4ブタンジオールジビニルエーテル(50ml、0.32mol)とメチルエーテルヒドロキノン(0.302g、0.0024mol)、撹拌子を投入し、還流冷却器、接触温度計、および滴下漏斗を取り付けた。反応容器を80℃の温度に加熱し、反応温度を80℃に5時間維持しながら、撹拌しながらアクリル酸(46.1g、0.64mol)を滴下した。溶液を放冷し、次いで炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、続いてブライン溶液で洗浄した。残った有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で乾燥させて無色の油状物を残した。収量:63.47g。IR分析は、アクリル酸の-OHピークがもはや存在しないことを示した。
【0105】
例B:1-[4-[1-(メチルプロパ-2-エノイルオキシ)エトキシ]ブトキシ]エチルメチルプロパ-2-エノエート[ブタンジオールジアセタールジメタクリレート(「BDDMA」)]の調製
250mlの3口丸底フラスコに、1,4ブタンジオールジビニルエーテル(50ml、0.32mol)およびメチルエーテルヒドロキノン(0.302g、0.0024mol)、撹拌子を投入し、還流冷却器、接触温度計、および滴下漏斗を取り付けた。反応容器を80℃に加熱し、溶液を撹拌しながらメタクリル酸(55.1g、0.64mol)を滴下した。反応容器を80℃の温度で5時間維持し、その後、反応混合物を室温まで放冷した。その後、反応混合物を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、続いてブライン溶液で洗浄した。残った有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で乾燥させて無色の油状物を残した。収量:67.23g。IR分析は、アクリル酸の-OHピークがもはや存在しないことを示した。
【0106】
例C:1,4-ビス(1-プロポキシエチル)(2Z)-ブタ-2-エンジオエート[マレイン酸ジブチルアセタール(「MADBA」)]の調製
250mlの3口丸底フラスコに、ブタンビニルエーテル(50ml、0.39mol)およびメチルエーテルヒドロキノン(0.302g、0.0024mol)、撹拌子を投入し、還流冷却器、接触温度計および滴下漏斗を取り付けた。反応混合物を40℃に加熱し、メタノール(200ml)に溶解したマレイン酸(68.44g、0.64mol)を溶液を撹拌しながら滴下した。反応容器の温度を80℃に5時間維持した。溶液を放冷し、次いで炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、続いてブライン溶液で洗浄した。残った有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で乾燥させて無色の油状物を残した。収量は生成物が99.66gであった。IR分析は、アクリル酸の-OHピークがもはや存在しないことを示した。
【0107】
例D:1-プロポキシエチルプロパ-2-エノエート[ブチルアセタールアクリレート(「BAA」)]の調製
250mlの3口丸底フラスコに、ブタンビニルエーテル(50ml、0.39mol)およびメチルエーテルヒドロキノン(0.302g、0.0024mol)、撹拌子を投入し、還流冷却器、接触温度計および滴下漏斗を取り付けた。フラスコの内容物を40℃に加熱し、アクリル酸(28.1g、0.39mol)を溶液を撹拌しながら滴下した。容器の内容物の温度を40℃に5時間維持した。溶液を放冷し、次いで炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、続いてブライン溶液で洗浄した。残った有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で乾燥させて無色の油状物を残した。収量は生成物が50.46gであった。生成物のIR分析は、アクリル酸の-OHピークがもはや存在しないことを示した。
【0108】
<2パート(メタ)アクリレート組成物>
以下の2パート接着剤組成物を、下記表Iに示すように調製した。パート(A)組成物は、約2~3分間、約2500RPMの混合速度を使用して、リストされた量(phr)の成分を混ぜ合わせて均質なブレンドを形成することにより調製した。パート(B)組成物も同様にして別途形成した。パート(A)組成物は、実施例を通して変更することなく使用した。
【0109】
【0110】
下記表2にパートB組成物のリストを示すが、これらは、選択したアセタール含有(メタ)アクリレート化合物、および、そのような化合物を含まない対照配合物(パート(B1))を除いて同じである。
【0111】
【0112】
・物理的特性/性能
下記表3に、上記表2のパート(B)組成物を含む接着剤配合物を使用した場合に、ASTM D3163に従って得られた引張せん断値について観察および記録された結果を示す。これらのパート(B)組成物は、表1のパート(A)組成物と等重量部で混合した。
【0113】
上で混合したパート(A)/パート(B)の組み合わせを用いてインク付きガラス基板をPC-ABSに接合した。
【0114】
剥離を開始するために、室温で24時間硬化させた後、接合した重ねせん断(lap shear)基板を80℃の温度のオーブンに10分間入れた。オーブンから取り出した後、試料を周囲条件下で5分間冷却してから、接合強度を評価した。
【0115】
【0116】
表3に示す結果は、対照と比較すると、アセタール含有(メタ)アシレートの含有により、オーブンで80℃で10分間加熱後、これらの接合基板の剥離が可能となることを示す。
【0117】
・環境耐性
上記のパート(A)/パート(B)の組み合わせを使用して、インクコートガラス基板をPC-ABS基板に接合させた。室温で24時間硬化させた後、接合した重ねせん断基板を、湿度チャンバーに85℃/95%相対湿度の環境で10日間保管した。試料を、周囲条件下で1時間コンディショニングした後に評価した。下記表4は、加熱/湿度コンディショニング後の接合強度を、24時間の室温硬化後の接合強度と比較して示す。
【0118】
【0119】
表4に記録した観察された結果は、対照(B1)、ならびにBDDA含有組成物およびBDDMA含有組成物(それぞれB2およびB3)の引張せん断強度性能が同等であることを示す。しかしながら、他のアセタール含有(メタ)アクリレートを含む残りの組成物(B4およびB5)では、湿気/熱老化試験後に引張せん断強度の低下がある。
【0120】
BDDA含有組成物は、厳しい環境条件下で良好な性能を示した。例えば、PC-ABSに接合したインク付きガラスの重ねせん断基板の熱サイクルの結果を表5に示す。
【0121】
熱サイクルチャンバーパラメーター:25°/95%RHで1.5時間、65°/95%RHまでの温度勾配で4時間、その後30℃/95%RHまでの温度勾配1.5時間、そして30℃/95%RHに1時間放置を20サイクル。次に、重ねせん断試験片を取り出し、室温で24時間放置した。
【0122】
【0123】
結果は、剥離可能な配合物が良好な熱サイクル耐性を示すことを示す。