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特許7162012光学層、光学層の製造方法、光学層付き太陽電池モジュール、建築用外壁材および建造物
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  • 特許-光学層、光学層の製造方法、光学層付き太陽電池モジュール、建築用外壁材および建造物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】光学層、光学層の製造方法、光学層付き太陽電池モジュール、建築用外壁材および建造物
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20221020BHJP
   H01L 31/054 20140101ALI20221020BHJP
   H02S 40/20 20140101ALI20221020BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 620
H02S40/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019559522
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2018043281
(87)【国際公開番号】W WO2019116859
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017236991
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018045508
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018045416
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智弘
(72)【発明者】
【氏名】菅原 康夫
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 祐
(72)【発明者】
【氏名】▲萱▼▲場▼ 徳克
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 雄一
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-065201(JP,A)
【文献】特開2010-116549(JP,A)
【文献】特開2016-180041(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140331(WO,A1)
【文献】特開2013-159496(JP,A)
【文献】特開2011-258879(JP,A)
【文献】特開2012-149152(JP,A)
【文献】国際公開第2015/153129(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216718(WO,A1)
【文献】特開2015-071675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
C03C 17/02-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料と、前記無機顔料が分散しているマトリックスと、を含む機能層を有し、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配されて用いられる光学層であって、
前記光学層が有色の光学層であり、
前記無機顔料の少なくとも一部が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m/gである、有色の無機顔料であることを特徴とする光学層。
【請求項2】
前記有色の無機顔料が、L表色系におけるL値が5~100であり、a値が-60~60であり、b値が-60~60である、無機顔料である、請求項に記載の光学層。
【請求項3】
さらに、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率が40%以上である光散乱性の無機顔料(ただし、前記有色の無機顔料を除く)を含む、請求項またはに記載の光学層。
【請求項4】
前記光散乱性の無機顔料の屈折率が1.50~2.60である、請求項に記載の光学層。
【請求項5】
前記光散乱性の無機顔料が、平均粒子径が10.0~2,000nmであり、比表面積が2.0~1,000m/gである、無機顔料である、請求項またはに記載の光学層。
【請求項6】
前記有色の無機顔料が、金属酸化物または金属酸化物の水和物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学層。
【請求項7】
前記有色の無機顔料に含まれる金属元素が、Al、Ti、V、Fe、Co、Zn、Zr、In、および、Snからなる群から選択される1種以上の金属元素である、請求項6に記載の光学層。
【請求項8】
前記マトリックスが、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、および、ガラスフリット組成物を焼結してなる焼結物から選択される少なくとも一種である、請求項1~のいずれか一項に記載の光学層。
【請求項9】
波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの近赤外光透過率を単純平均して算出した値を近赤外光平均透過率としたときに、前記近赤外光平均透過率が10~100%である、請求項1~のいずれか一項に記載の光学層。
【請求項10】
前記光学層が、さらに基材層を有し、前記基材層の少なくとも一方の面上に、前記機能層が積層されている、請求項1~のいずれか一項に記載の光学層。
【請求項11】
太陽電池セルと、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学層と、を有し、前記光学層が、前記太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配されている、光学層付き太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記太陽電池セルがCIS系太陽電池セルまたはCIGS系太陽電池セルである、請求項11に記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
請求項11または12に記載の光学層付き太陽電池モジュールを有する、建築用外壁材。
【請求項14】
太陽電池モジュールと、太陽電池モジュールに対して太陽光の入射面側に配される請求項1~10に記載の光学層と、を有する建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学層、光学層の製造方法、光学層付き太陽電池モジュール、建築用外壁材および建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給におけるコスト削減およびエネルギーの有効活用の観点から、太陽電池モジュールの設置が検討されている。一般的に、太陽電池モジュールは、太陽光の透過性が高い部材を用いることで発電効率を確保している。しかしながらこの場合、太陽電池セルが視認され、外観における周囲との調和を図ることが難しい場合が多い。
この問題に対し、太陽電池モジュールの部材を部分的に着色して、意匠性を向上させる試みがなされている。特許文献1には、太陽電池モジュールに意匠性を付与し、かつこの意匠性を長期に渡って保持するために、耐候性透明樹脂層と、着色されたエチレン-酢酸ビニル樹脂とを積層一体化してなる耐候性調色フィルムに係る発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-047568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、太陽電池モジュールの部材を、着色剤等を用いて着色することによって意匠性を付与する場合、使用する着色剤によっては、太陽光の透過が低下する場合があることを、本発明者らは知見した。具体的には、上記のような場合には、部材を着色しない場合と比較して、太陽電池モジュールの発電効率が劣る問題がある。さらには、上記着色剤自体が太陽光によって劣化し、太陽電池モジュールの耐候性が低下する問題がある。したがって、意匠性と、発電効率および耐候性と、に優れた太陽電池モジュールの実現は困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、意匠性と、発電効率および耐候性と、に優れた太陽電池モジュールを形成できる光学層、光学層の製造方法、光学層付き太陽電池モジュール、建築用外壁材および建築物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の物性を有する無機顔料と、無機顔料が分散しているマトリックスと、を含む機能層を有する光学層を、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配すれば、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
[1] 無機顔料と、前記無機顔料が分散しているマトリックスと、を含む機能層を有し、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配されて用いられる光学層であって、
前記無機顔料の少なくとも一部が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m/gである、無機顔料であることを特徴とする光学層。
[2] 前記光学層が有色の光学層であり、前記特定の無機顔料が有色の無機顔料である、[1]の光学層。
[3] 前記有色の無機顔料が、L表色系におけるL値が5~100であり、a値が-60~60であり、b値が-60~60である、無機顔料である、[2]の光学層。
【0008】
[4] さらに、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率が40%以上である光散乱性の無機顔料(ただし、前記有色の無機顔料を除く)を含む、[2]または[3]の光学層。
[5] 前記光散乱性の無機顔料の屈折率が1.50~2.60である、[4]の光学層。
[6] 前記光散乱性の無機顔料が、平均粒子径が10.0~2,000nmであり、比表面積が2.0~1,000m/gである、無機顔料である、[4]または[5]の光学層。
[7] 前記マトリックスが、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、および、ガラスフリット組成物を焼結してなる焼結物から選択される少なくとも一種である、[1]~[6]のいずれかの光学層。
[8] 波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの近赤外光透過率を単純平均して算出した値を近赤外光平均透過率としたときに、前記近赤外光平均透過率が10~100%である、[1]~[7]のいずれかの光学層。
[9] 前記光学層が、さらに基材層を有し、前記基材層の少なくとも一方の面上に、前記機能層が積層されている、[1]~[8]のいずれかの光学層。
【0009】
[10] 波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m/gである、無機顔料と、
含フッ素重合体、シラン化合物、およびガラスフリット組成物から選択される少なくとも一種と、
を少なくとも含む機能層形成組成物を、基材層の少なくとも一方の面上に塗装して機能層を形成して、
基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面上に配される機能層と、を有する光学層を形成することを特徴とする光学層の製造方法。
[11] 太陽電池セルと、[1]~[9]のいずれかの光学層と、を有し、前記光学層が、前記太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配されている、光学層付き太陽電池モジュール。
[12] 前記太陽電池セルがCIS系太陽電池セルまたはCIGS系太陽電池セルである、[11]の太陽電池モジュール。
【0010】
[13] 前記[11]または[12]の光学層付き太陽電池モジュールを有する、建築用外壁材。
[14] 太陽電池モジュールと、太陽電池モジュールに対して太陽光の入射面側に配される[1]~[9]のいずれかの光学層と、を有する建造物。
[15] 無機顔料と、前記無機顔料が分散しているマトリックスと、を含む機能層と、ガラス板からなる基材層と、を有し、
前記基材層の少なくとも一方の面上に、前記機能層が積層されている光学層であって、 前記無機顔料の少なくとも一部が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m/gである、無機顔料であることを特徴とする光学層。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、意匠性と、発電効率および耐候性と、に優れた太陽電池モジュールを形成できる有色の光学層、光学層の製造方法、光学層付き太陽電池モジュール、建築用外壁材および建造物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の光学層の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の光学層付き太陽電池モジュールの一態様を示す概略断面図である。
図3】地上での太陽光スペクトルと単結晶シリコンの太陽電池の分光感度曲線を示すグラフである。
図4】本発明の光学層付き太陽電池モジュールの一態様を示す概略断面図である。
図5】本発明の光学層付き太陽電池モジュールの一態様を示す概略断面図である。
図6】本発明の光学層付き太陽電池モジュールによって構成された太陽電池アレイの一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
有色の無機顔料とは、波長400~780nmの可視光領域に吸収ピークを有する無機顔料をいう。白色の無機顔料とは、波長400~780nmの可視光領域に吸収ピークを有しない無機顔料をいう。
【0014】
無機顔料の平均粒子径は、無機顔料に超音波処理を行ったのち、粒度分布測定装置を用いて測定して得られる、体積基準の累積50%径(D50)であり、詳細な測定条件は、実施例に記載の通りである。なお、実施例においては、粒度分布測定装置としてNanotrac Wave II-EX150(マイクロトラック・ベル社製)を使用した。
無機顔料の比表面積は、比表面積測定装置を用い、200℃で20分の脱気条件下での窒素吸着BET法により得られる値である。なお、実施例においては、比表面積測定装置としてHM model-1208(マウンテック社製)を使用した。
無機顔料の密度は、ピクノメーターにより測定して得られる値である。なお、実施例においては、ULTRAPYC 1200e(カンタクローム社製)を使用した。
無機顔料の組成は、蛍光X線分析、ICP発光分光分析、原子吸光分析等により適宜分析して求められる。
無機顔料のL値、a値、およびb値は、JIS Z 8781-4:2013の記載に従い、拡散反射法により測定して得られる拡散反射スペクトルから算出される値であり、詳細な測定方法は、実施例に記載の通りである。
無機顔料における、近赤外光最大反射率および可視光最小反射率は、拡散反射法により測定して得られる拡散反射スペクトルからそれぞれ算出される、波長780~1,500nmにおける最大反射率および波長400~780nmにおける最小反射率である。
【0015】
光学層が有する各層の厚さは、厚み計、渦電流式膜厚計等を適宜用いて得られる。
光学層における可視光平均透過率および可視光平均直線透過率は、光学層の表面の法線方向から光が入射するように光学層を設置した分光光度計を用いて、波長400~780nmの可視光領域において、5nm刻みの可視光透過率を単純平均して算出した値である。
光学層における近赤外光平均透過率は、光学層の表面の法線方向から光が入射するように光学層を設置した分光光度計を用いて、波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの近赤外光透過率を単純平均して算出した値である。
光学層のL値、a値、およびb値は、JIS Z 8781-4:2013の記載に従い、光学層の表面の法線方向から光が入射するように光学層を設置した分光光度計を用いて、波長200~1,500nmにおける反射光を5nm刻みで測定して得られる反射スペクトルから算出される値である。
なお、実施例においては、分光光度計としてU-4100(日立ハイテクノロジー社製)を使用した。
【0016】
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の総称である。
加水分解性シリル基とは、加水分解によってシラノール基となる基である。
酸価および水酸基価は、それぞれ、JIS K 0070-3(1992)の記載に準じて測定される値である。
組成物等の固形分の質量とは、組成物が溶媒を含む場合に、組成物から溶媒を除去した質量である。なお、組成物の固形分の質量は、組成物を130℃で20分加熱した後に残存する質量として求められる。
【0017】
本発明の光学層を用いれば、意匠性と、発電効率および耐候性と、に優れた太陽電池モジュールを形成できる。これは、以下の理由によると推測される。
本発明の光学層は、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m/gである無機顔料(以下、特定の無機顔料ともいう。)を含む機能層を有するため、光学層における近赤外光の散乱が制御され、光学層を通過して太陽電池セルに到達しうる近赤外光を充分に確保できる。したがって、光学層に入射した太陽光のうち、近赤外光が選択的に太陽電池セルに到達しやすく、意匠性および発電効率に優れる光学層が得られると考えられる。さらに、特定の無機顔料として有色の無機顔料を含有することにより任意の着色が可能であり、意匠性に優れるとともに、耐候性にも優れる。
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の光学層および本発明の光学層付き太陽電池モジュールの一例を説明する。なお、本発明の光学層を、本光学層ともいい、本発明の光学層付き太陽電池モジュールを、本太陽電池モジュールともいう。
【0019】
図1は、本光学層の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本光学層10は、基材層110と、機能層120とを有する。
【0020】
本光学層は、特定の無機顔料を含む有色の光学層であることが好ましく、特定の無機顔料として有色の無機顔料を含む、有色の光学層であることが特に好ましい。以下、有色の無機顔料である特定の無機顔料を、特定の有色無機顔料ともいう。なお、特定の有色無機顔料は、白色の特定の無機顔料と併用してもよく、特定の無機顔料以外の白色顔料と併用してもよい。
有色の本光学層は、特定の有色無機顔料を含むため有色であり、本太陽電池モジュールの意匠性に寄与する。本光学層が有色であるとは、具体的には、可視光平均透過率が90%以下であることを意味する。
本光学層は、意匠性の点から、本光学層が有する機能層のL表色系におけるL値が5~100であり、a値が-60~60であり、b値が-60~60であるのが好ましく、L値が15~80であり、a値が3~30であり、b値が-60~60であるのがより好ましい。
本光学層としては、所望の色を呈するために、L値、a値、およびb値が、以下の組み合わせである層が特に好ましい。
・L値、a値、およびb値が、この順に、5~100、-10~10、および-15~10(より好ましくは、この順に15~60、1.5~15、および-10~10)である光学層。
・L値、a値、およびb値が、この順に、25~70、0~30、および-60~-20である光学層。
・L値、a値、およびb値が、この順に、20~70、0~40、および-20~30である光学層。
・L値、a値、およびb値が、この順に、30~80、-20~20、および0~60である光学層。
本光学層は、無機顔料およびマトリックスを含む後述の機能層を有するため、L値、a値、およびb値が上記範囲の組み合わせであると、本光学層の色味がより鮮やかであり、本太陽電池モジュールの意匠性が優れる。
【0021】
本光学層は、本太陽電池モジュールの発電効率の点から、波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの近赤外光透過率を単純平均して算出した値を近赤外光平均透過率としたときに、近赤外光平均透過率が10%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、40%以上であるのがさらに好ましく、60%以上であるのが特に好ましい。本光学層の近赤外光平均透過率は、通常100%以下である。
本光学層は、本光学層の隠蔽性の点から、波長400~780nmの可視光領域において、5nm刻みの可視光透過率を単純平均して算出した値を可視光平均透過率としたときに、可視光平均透過率が、80%以下であるのが好ましく、50%以下であるのがより好ましく、42.0%以下であるのがさらに好ましく、20%以下であるのが特に好ましい。
本光学層における上記近赤外光平均透過率および可視光平均透過率は、例えば、特定の無機顔料または後述する光散乱性の無機顔料の種類、添加量、本光学層の厚さ等によって調節できる。
本光学層の近赤外光透過率および可視光平均透過率の測定方法は、上述の通りであり、詳細な測定条件は後述の実施例に記載の通りである。
【0022】
本光学層の厚さは、本太陽電池モジュールの取り扱い容易性の点から、10μm以上であるのが好ましく、20μm~100mmであるのがより好ましく、100μm~50mmであるのが特に好ましい。
【0023】
本発明における機能層は、少なくとも一部が特定の無機顔料である無機顔料と、上記無機顔料が分散しているマトリックスと、を含む。機能層は、上記無機顔料と、上記マトリックス以外の成分を一以上含んでいてもよい。
機能層のL値、a値、およびb値、ならびにこれらの好適範囲は、上述した光学層と同様である。
機能層の近赤外光平均透過率および可視光平均透過率、ならびにこれらの好適範囲は、上述した光学層と同様である。
つまり、本光学層が、機能層と、機能層以外の層と、を有する場合、機能層以外の層は、本光学層の近赤外光平均透過率および可視光平均透過率に影響しない層であるのが好ましい。影響しないとは、具体的には、機能層以外の層を有さない光学層と、機能層以外の層を有する光学層と、の近赤外光平均透過率の差および可視光平均透過率の差が、それぞれ10%未満であり、好ましくは5%未満である。
【0024】
機能層は、機能層の耐候性の点から、厚さが1~1,000μmであるのが好ましく、10~1,000μmであるのがより好ましく、20~100μmであるのがさらに好ましく、25~60μmであるのが特に好ましい。
【0025】
本発明における特定の無機顔料は、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m/gである。
特定の無機顔料の、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率は、本光学層の近赤外光透過率の点から、50%以上であり、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。上記近赤外光最大反射率の上限は、通常100%である。
特定の無機顔料の近赤外光最大反射率は、無機顔料の種類、組成および結晶構造から適宜調整できる。
なお、本発明において、特定の有色無機顔料は、本発明における機能層を有色とするために用いられるため、単独で用いた場合に機能層が有色とならない無機顔料は有色無機顔料の範疇に含まれない。つまり、有色無機顔料の範疇には、酸化ケイ素(特に、二酸化ケイ素)等の白色無機顔料は含まれない。また、機能層が有色であるとは、機能層の可視光平均透過率が90%以下であることを意味する。
【0026】
特定の無機顔料の平均粒子径は、5.0nm以上であり、50.0nm以上が好ましく、100.0nm以上が特に好ましい。無機顔料の平均粒子径は、280.0nm以下であり、200.0nm以下が好ましく、180.0nm以下がより好ましく、160.0nm以下がさらに好ましく、140.0nm以下が特に好ましい。
特定の無機顔料の平均粒子径が280.0nm以下であると、本光学層の近赤外光透過率が高くなり、本太陽電池モジュールの発電効率に優れる。特定の無機顔料の平均粒子径が1.0nm以上であると、本光学層の隠蔽性に優れ、本太陽電池モジュールの意匠性に優れる。
【0027】
特定の無機顔料の比表面積は、5.0m/g以上であり、10.0m/g以上が好ましく、15.0m/g以上がより好ましく、40.0m/g以上が特に好ましい。無機顔料の比表面積は、1,000m/g以下であり、500m/g以下が好ましく、60.0m/g以下が特に好ましい。
特定の無機顔料の比表面積が5.0m/g以上1,000m/g以下であると、無機顔料による近赤外光の散乱が好適となり、本太陽電池モジュールの発電効率に優れる。
【0028】
特定の無機顔料として、近赤外光最大反射率、平均粒子径、および比表面積の特に好ましい組み合わせは以下である。
・近赤外光最大反射率が60%以上であり、平均粒子径が50.0~200.0nmであり、比表面積が10.0~500m/gである無機顔料。
・近赤外光最大反射率が70%以上であり、平均粒子径が100.0~180.0nmであり、比表面積が15.0~60m/gである無機顔料。
【0029】
特定の無機顔料の粒子形状は特に制限されない。特定の無機顔料の粒子形状は、たとえば、球状、楕円状、針状、板状、棒状、円すい状、円柱状、立方体状、長方体状、ダイヤモンド状、星状、鱗片状、不定形状等のいずれの形状であってもよい。また、特定の無機顔料は、中空粒子であってもよく、中実粒子であってもよい。また、特定の無機顔料は、多孔質粒子であってもよい。
特定の無機顔料の形状は、分散性の点から、球状であるのが好ましい。
【0030】
特定の無機顔料は、本光学層の意匠性および耐候性の点から、金属酸化物、金属酸化物の水和物等が好ましく、金属元素の二種以上を含む金属複合酸化物が特に好ましい。
金属元素としては、Li、Na、Mg、K、Ca、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Ta、W、Pb、Bi、La、Ce等が挙げられる。金属元素は、特定の無機顔料の近赤外光反射率、ならびに、本光学層の色調および発電効率の点から、Al、Fe、Co、Zn、Zr、Mn、Cr、Ce、Bi、Ni、Cu、Cdが好ましく、Al、Fe、Co、Zr、Ce、Mn、Bi、Cuがより好ましく、Al、Fe、Co、Zn、Zrがさらに好ましく、Al、Fe、Coが特に好ましい。
光触媒作用による劣化を抑制する点から、特定の無機顔料は、金属酸化物およびその水和物の一部または全部が、さらに同種または別種の金属酸化物およびその水和物等(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)によって表面処理されていてもよい。
特定の無機顔料は、金属酸化物のみからなっていてもよく、他の成分を含んでいてもよい。金属酸化物以外の他の成分としては、有機化合物等が挙げられる。特定の無機顔料は、本光学層の耐候性の点から、上記他の成分を含まないか、含む場合には、無機顔料の全質量に対して50質量%以下であるのが好ましい。
上記他の成分を含む特定の無機顔料としては、金属酸化物の粒子の一部または全部が有機化合物等で表面処理された無機顔料が挙げられる。
【0031】
特定の有色無機顔料の具体例としては、Co-Ni-Ti-Znの複合酸化物、Co-Liの複合酸化物、Co-Alの複合酸化物、Ti-Sb-Niの複合酸化物、Co-Zn-Siの複合酸化物、Co-Al-Crの複合酸化物、Co-Al-Cr-Znの複合酸化物、Co-Cr-Zn-Tiの複合酸化物、Ti-Fe-Znの複合酸化物、Fe-Znの複合酸化物、Fe-Crの複合酸化物、Mn-Biの複合酸化物、Cu-Biの複合酸化物、Cu-Fe-Mnの複合酸化物、各種の酸化鉄、各種の酸化鉄の水和物が挙げられる。特定の有色無機顔料は、無機顔料の分散性、近赤外光反射率、ならびに、本光学層の隠蔽性および近赤外光透過率の点から、Co-Liの複合酸化物、Co-Alの複合酸化物、Co-Al-Crの複合酸化物、Fe-Crの複合酸化物、Mn-Biの複合酸化物、Cu-Biの複合酸化物、Cu-Fe-Mnの複合酸化物、各種の酸化鉄、各種の酸化鉄の水和物が好ましく、Co-Alの複合酸化物、酸化鉄がより好ましく、Co-Alの複合酸化物、酸化鉄が特に好ましい。
特定の有色無機顔料は、市販品を用いてもよく、「Daipyroxide TM」シリーズ(大日精化社製)、「Cappoxyt」シリーズ(Cappelle社製)、「Sicotrans」シリーズ(BASF社製)、「Blue CR4」(アサヒ化成工業社製)等が挙げられる。
【0032】
白色である特定の無機顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等が挙げられ、本光学層の隠蔽性および本太陽電池モジュールの発電効率の点から、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛が好ましく、酸化ジルコニウムが特に好ましい。
光触媒作用による劣化を抑制する点から、白色である特定の無機顔料は、金属酸化物の一部または全部が、さらに同種または別種の金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)によって表面処理されていてもよい。
特定の無機顔料は、本光学層の耐候性をより向上させたい場合には、光触媒作用による劣化を防ぐために酸化チタンを含まないか、含む場合は全無機顔料中1質量%未満であることが好ましい。
白色である特定の無機顔料は、市販品を用いてもよく、「TTO」シリーズ(石原産業社製)、「MT」シリーズ(テイカ社製)、「FINEX」シリーズ(堺化学社製)、XZ-Fシリーズ(堺化学社製)、「ジルコスター」シリーズ(日本触媒社製)等が挙げられる。
【0033】
特定の有色無機顔料は、本光学層の意匠性の点から、L表色系におけるL値が5~100であり、a値が-60~60であり、b値が-60~60であるのが好ましく、L値が15~80であり、a値が0.0~30であり、b値が-60~60であるのがより好ましい。
特定の有色無機顔料としては、本光学層が所望の色を呈するために、L値、a値、およびb値が、以下の組み合わせであるのが好ましい。
・L値、a値、およびb値が、この順に、30~70、0.0~30、および-60~-20である無機顔料。
・L値、a値、およびb値が、この順に、20~70、0.0~40、および-20~30である無機顔料。
・L値、a値、およびb値が、この順に、30~80、-20~20、および0~60である無機顔料。
・L値、a値、およびb値が、この順に、80~100、-10~10、および-10~10である無機顔料。
・L値、a値、およびb値が、この順に、5~50、-10~10、および-10~10である無機顔料。
無機顔料のL値、a値、およびb値は、上述した特定の有色無機顔料の組成等によって調整できる。
【0034】
特定の有色無機顔料の密度は、無機顔料の分散性の点から、2.0~10.0g/cmであるのが好ましく、3.0~5.0g/cmであるのが特に好ましい。
白色の特定の無機顔料の密度は、無機顔料の分散性の点から、0.10~10.0g/cmであるのが好ましく、5.0~7.0g/cmであるのが特に好ましい。
特定の無機顔料の屈折率は、機能層が近赤外光をより選択的に透過しやすい点から、4.00以下であるのが好ましく、1.50以上3.00以下であるのがより好ましく、1.90以上2.60以下であるのがさらに好ましく、2.10以上2.40以下であるのが特に好ましい。
白色の特定の無機顔料の屈折率は、機能層が近赤外光をより選択的に透過しやすい点から、4.00以下であるのが好ましく、1.50~3.00であるのがより好ましく、1.90~2.60であるのがさらに好ましく、2.10~2.40であるのが特に好ましい。
なお、各無機顔料の屈折率とは、無機顔料を構成する材料(例えば材料を粉砕等によって無機顔料を得る場合には、粉砕前の材料)の屈折率を意味し、通常は上記材料の文献値である。
各無機顔料の可視光最小反射率および屈折率は、無機顔料の組成、結晶構造、平均粒子径、および比表面積から適宜調整できる。
【0035】
機能層の全質量に対する特定の無機顔料の含有量は、本光学層の意匠性の点から、5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、20質量%以上であるのが特に好ましい。機能層の全質量に対する特定の無機顔料の含有量は、本光学層の近赤外光透過率の点から、80質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましく、50質量%以下であるのが特に好ましい。
機能層が含む無機顔料の全質量に対する特定の無機顔料の割合は、意匠性および発電効率の点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
機能層は、特定の無機顔料の二種以上を含んでいてもよい。特定の有色無機顔料と白色の特定の無機顔料とを併用する場合、それら特定の無機顔料の合計に対する白色の特定の無機顔料の割合は、5~200質量%であるのが好ましく、20~150質量%であるのがより好ましく、20~40質量%であるのが特に好ましい。機能層が白色の特定の無機顔料よりも特定の有色無機顔料を多く含めば、本光学層の隠蔽性と、本太陽電池モジュールの意匠性とがよりバランスする。
特に、白色の特定の無機顔料は、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率が40%以上である光散乱性の無機顔料でもある。したがって、特定の有色無機顔料と、白色の特定の無機顔料とを混合することで、本太陽電池モジュールの隠蔽性がより優れる。
白色の特定の無機顔料は、機能層が可視光をより選択的に散乱しやすい点から、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率が40%以上であり、80%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのが特に好ましい。可視光最小反射率の上限は、通常100%である。
【0036】
本発明における特定の無機顔料は、太陽光に含まれる近赤外光が無機顔料に散乱されにくい。かつ、可視光域に十分な吸収を有するため意匠性を高くしやすい。また、有機顔料と比較して耐候性に優れるとともに、上記平均粒子径および比表面積を有するために機能層中に好適に分散しやすい。したがって、本発明における無機顔料を含む機能層を有する本光学層は、隠蔽性が高く、耐候性に優れるとともに、太陽電池モジュールに適用した場合の意匠性および発電効率にも優れると考えられる。
【0037】
機能層は、本太陽電池モジュールの意匠性の点から、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率が40%以上である光散乱性の無機顔料(ただし、特定の無機顔料以外のもの)をさらに含んでもよい。特定の無機顔料以外のこの光散乱性の無機顔料を、以下、光散乱性無機顔料ともいう。
【0038】
光散乱性無機顔料における、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率、屈折率、密度および形状ならびにそれらの好適範囲は、上述した白色の特定の無機顔料と同様である。光散乱性無機顔料は、上述した白色の特定の無機顔料と同様の金属酸化物等または構造色を有する薄片状の無機顔料から構成されればよく、白色の無機顔料が好ましい。
【0039】
光散乱性無機顔料の平均粒子径は、10.0nm以上が好ましく、50.0nm以上がより好ましく、100.0nm以上が特に好ましい。光散乱性無機顔料の平均粒子径は、2,000nm以下が好ましく、500.0nm以下がより好ましく、300.0nm以下が特に好ましい。
光散乱性無機顔料の平均粒子径が2,000nm以下であると、本光学層の近赤外光透過率が高くなり、本太陽電池モジュールの発電効率に優れる。光散乱性無機顔料の平均粒子径が10nm以上であると、可視光の散乱性に優れる。
【0040】
光散乱性無機顔料の比表面積は、2.0m/g以上が好ましく、8.0m/g以上が特に好ましい。光散乱性無機顔料の比表面積は、1,000m/g以下が好ましく、500m/g以下が特に好ましい。
光散乱性無機顔料の比表面積が1,000m/g以下であると、可視光の散乱が増加するため、本光学層の近赤外光透過率が高くなりやすい。光散乱性無機顔料の比表面積が2.0m/g以上であると、本光学層の近赤外光透過率が高くなる。
【0041】
光散乱性無機顔料は、本太陽電池モジュールの意匠性の点から、構造色を有する薄片状の無機顔料(パール顔料)であってもよい。
パール顔料とは、薄片状の粒子(例えば、最長径が2~100μm、厚さが0.01~10μmである粒子)の表面が金属またはその酸化物によって被覆されている顔料である。薄片状の粒子としては、雲母、セリサイト、タルク、カオリン、スメクタイト属粘土鉱物、マイカ、セリサイト、板状二酸化チタン、板状シリカ、板状酸化アルミニウム、窒化硼素、硫酸バリウム、板状チタニア・シリカ複合酸化物、ガラス等が挙げられる。薄片状の粒子表面を被覆する金属またはその酸化物としては、上述した無機顔料で挙げた金属またはその酸化物が挙げられる。パール顔料としては、薄片状のマイカ、ガラス、酸化アルミニウム等の粒子表面が、二酸化チタン、酸化鉄、銀等によって被覆されている粒子が好ましい。
機能層が、光散乱性無機顔料としてパール顔料を含む場合、より鮮やかで光輝感のある色調を発現でき、本太陽電池モジュールの意匠性により優れる。
【0042】
パール顔料としては、メタシャイン チタニアコートシリーズ(日本板硝子社製)、TWINCLEPEARL シルバータイプ(日本光研工業社製)等が挙げられる。
【0043】
機能層が光散乱性無機顔料を含む場合、機能層の全質量に対する光散乱性無機顔料の含有量は、機能層の近赤外光透過率の点から、1~90質量%が好ましく、3~80質量%がより好ましく、5~60質量%が特に好ましい。この場合、本光学層の隠蔽性および近赤外光透過率に特に優れる。
機能層が光散乱性無機顔料を含む場合、機能層は、光散乱性無機顔料の二種以上を含んでいてよい。
【0044】
機能層が、光散乱性無機顔料を含む場合、光散乱性無機顔料の含有量は、機能層が含む特定の無機顔料の全質量に対して、100質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。この場合、本光学層の隠蔽性と、本太陽電池モジュールの意匠性とがバランスする。
【0045】
機能層が、光散乱性無機顔料と特定の無機顔料との両方を含む場合、機能層における、光散乱性無機顔料と特定の無機顔料との含有量の合計は、機能層の全質量に対して、5質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下が特に好ましい。この場合、本光学層の隠蔽性および近赤外光透過率に特に優れる。
【0046】
本発明におけるマトリックスは、無機顔料を、分散している状態で固定する役割を果たす。マトリックスを構成する成分としては、樹脂、ガラスフリット組成物を焼結してなるガラス、シリカ等が挙げられる。マトリックスは、上記成分の二種以上から構成されていてもよい。
【0047】
マトリックスを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂の硬化物からなる。架橋性基を有する重合体の架橋物、縮重合性基を有する化合物の縮重合物、付加重合性基を有する化合物の付加重合物等も熱可塑性樹脂や硬化性樹脂の硬化物の範疇に含まれるものとする。また、ヒドロキシ基等の反応性基を有する熱可塑性樹脂が、その反応性基が反応することなくマトリックスを構成する樹脂となってもよい。
マトリックスを構成する樹脂を形成するための熱可塑性樹脂や未硬化の硬化性樹脂は、適宜マトリックス樹脂を形成するために必要な成分(たとえば硬化剤等の、後述する成分X)を含む。
【0048】
マトリックスを形成する樹脂としては、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ-ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、変性ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらのうち、硬化や架橋によりマトリックスを構成する樹脂となる樹脂は、その硬化物や架橋物がマトリックスを構成する樹脂である。マトリックスを構成する樹脂としては、耐候性の点から、含フッ素重合体や架橋性含フッ素重合体の架橋物からなるフッ素樹脂が好ましく、耐熱性の点から、縮重合性シラン化合物の縮重合物からなるシリコーン樹脂が好ましい。
マトリックスは、樹脂の二種以上から構成されていてもよい。
【0049】
本発明におけるマトリックスがフッ素樹脂を含む場合、マトリックスを形成するために使用されるフッ素樹脂は、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、単位Fともいう。)を含む含フッ素重合体と、必要に応じて含フッ素重合体以外の後述する成分Xの少なくとも一種と、を含む。
単位とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
【0050】
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンの具体例としては、CF=CF、CF=CFCl、CF=CHF、CH=CF、CF=CFCF、CF=CHCF、CFCH=CHF、CFCF=CH、CH=CXf0(CFn0f0(式中、Xf0およびYf0は、独立に水素原子またはフッ素原子であり、n0は2~10の整数である。)で表される単量体が挙げられ、機能層の耐候性に優れる点から、CF=CF、CH=CF、CF=CFCl、CFCH=CHF、CFCF=CHが好ましく、CF=CFClが特に好ましい。フルオロオレフィンは、二種以上が併用されていてもよい。
【0051】
含フッ素重合体は、単位Fのみを含んでいてもよく、単位Fおよびフルオロオレフィン以外のフッ素原子を含む単量体に基づく単位を含んでいてもよく、単位Fおよびフッ素原子を含まない単量体に基づく単位を含んでいてもよい。
【0052】
単位Fのみを含む含フッ素重合体としては、フルオロオレフィンの単独重合体、フルオロオレフィンの二種以上の共重合体等が挙げられ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド等が挙げられる。
【0053】
単位Fおよびフルオロオレフィン以外のフッ素原子を含む単量体に基づく単位を含む含フッ素重合体としては、フルオロオレフィン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられ、具体的には、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。
【0054】
含フッ素重合体は、マトリックス中における無機顔料の分散性の点から、単位Fおよびフッ素原子を含まない単量体に基づく単位を含むのが好ましい。
【0055】
単位Fと、フッ素原子を含まない単量体に基づく単位とを含む含フッ素重合体としては、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル-ビニルエステル共重合体、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエステル-アリルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニルエステル共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニルエステル-アリルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。本太陽電池モジュールの意匠性に優れる点から、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体が好ましい。
【0056】
単位Fの含有量は、機能層の耐候性の点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、20~100モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
【0057】
含フッ素重合体は、機能層の耐久性の点から、フッ素原子を含まない単量体に基づく単位として、架橋性基を有する単位(以下、単位(1)ともいう。)を含むのが好ましい。単位(1)は、架橋性基を有する単量体(以下、単量体(1)ともいう。)に基づく単位であってもよく、単位(1)を含む含フッ素重合体の架橋性基を、異なる架橋性基に変換させて得られる単位であってもよい。このような単位としては、ヒドロキシ基を有する単位を含む含フッ素重合体に、ポリカルボン酸やその酸無水物等を反応させて、ヒドロキシ基の一部または全部をカルボキシ基に変換させて得られる単位が挙げられる。上記架橋性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、加水分解性シリル基が挙げられ、機能層の強度の点から、ヒドロキシ基およびカルボキシ基が好ましい。
単位(1)が有する架橋性基は、形成するマトリックスにおいて後述する硬化剤によって架橋していてもよく、架橋せず残存していてもよく、硬化剤と架橋しているのが好ましい。単位(1)が有する架橋性基が硬化剤によって架橋していると、機能層の耐久性がより優れる。単位(1)が有する架橋性基が、架橋せず残存していると、マトリックス中における無機顔料の分散性がより優れる。
【0058】
ヒドロキシ基を有する単量体としては、ヒドロキシ基を有する、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコール等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する単量体(1)の具体例としては、CH=CHO-CH-cycloC10-CHOH、CH=CHCHO-CH-cycloC10-CHOH、CH=CHO-CH-cycloC10-CH-(OCHCH15OH、CH=CHOCHCHOH、CH=CHCHOCHCHOH、CH=CHOCHCHCHCHOH、およびCH=CHCHOCHCHCHCHOHが挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH=CHCHOCHCHOHまたはCH=CHOCHCHCHCHOHが好ましい。
なお、「-cycloC10-」はシクロへキシレン基を表し、「-cycloC10-」の結合部位は、通常1,4-である。
【0059】
カルボキシ基を有する単量体としては、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸、上記ヒドロキシ基を有する単量体のヒドロキシ基にカルボン酸無水物を反応させて得られる単量体等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、CH=CHCOOH、CH(CH)=CHCOOH、CH=C(CH)COOH、HOOCCH=CHCOOH、CH=CH(CHn11COOHで表される単量体(ただし、n11は1~10の整数を示す。)、CH=CHO(CHn12OC(O)CHCHCOOHで表される単量体(ただし、n12は1~10の整数を示す。)が挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH=CH(CHn11COOHで表される単量体またはCH=CHO(CHn12OC(O)CHCHCOOHで表される単量体が好ましい。
【0060】
単量体(1)は、二種以上が併用されていてもよい。
単位(1)の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0.5~35モル%が好ましく、3~25モル%がより好ましく、5~25モル%がさらに好ましく、5~20モル%が特に好ましい。
【0061】
含フッ素重合体は、さらに、フッ素原子を含まない単量体に基づく単位として、架橋性基を有さない単量体に基づく単位を含んでよい。架橋性基を有さない単量体に基づく単位としては、アルケン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上の単量体(以下、単量体(2)ともいう。)に基づく単位(以下、単位(2)ともいう。)が挙げられる。
【0062】
単量体(2)の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、エチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ9」)、ネオデカン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ10」)、安息香酸ビニルエステル、tert-ブチル安息香酸ビニルエステル、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体(2)は、二種以上が併用されていてもよい。
含フッ素重合体が単位(2)を含む場合、単位(2)の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、5~60モル%が好ましく、10~50モル%が特に好ましい。
【0063】
含フッ素重合体は、市販品を用いてもよく、具体例としては、「ルミフロン」シリーズ(AGC社商品名)、「Kynar」シリーズ(アルケマ社商品名)、「ゼッフル」シリーズ(ダイキン工業社商品名)、「Eterflon」シリーズ(エターナル社商品名)、「Zendura」シリーズ(Honeywell社商品名)が挙げられる。
【0064】
含フッ素重合体は、公知の方法で製造される。含フッ素重合体の製造方法としては、溶液重合、乳化重合等が挙げられる。
フッ素樹脂が含む含フッ素重合体以外の成分としては、含フッ素重合体の製造時または製造後に任意に添加される、重合安定剤、重合禁止剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
本発明におけるマトリックスがフッ素樹脂を含む場合、機能層におけるフッ素樹脂の含有量は、機能層の耐候性の点から、機能層の全質量に対して、5~95質量%が好ましく、10~90質量%が特に好ましい。
本発明におけるマトリックスがフッ素樹脂を含む場合、機能層における含フッ素重合体の含有量は、機能層の耐候性の点から、機能層の全質量に対して、5~95質量%が好ましく、10~90質量%が特に好ましい。
【0066】
本発明におけるマトリックスがフッ素樹脂を含む場合、機能層のフッ素原子含有量は、マトリックス中における無機顔料の分散性の点から、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が特に好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20%以下が最も好ましい。また、機能層のフッ素原子含有量は、機能層の耐候性の点から、機能層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が特に好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
この場合、特に、機能層のフッ素原子含有量が、好ましくは0.1~25質量%、特に好ましくは5~20質量%であれば、機能層において無機顔料が良好に分散し、本光学層における近赤外光透過率および可視光反射率が高くなるため、本太陽電池モジュールの意匠性および発電効率に優れる。
【0067】
機能層中のフッ素原子含有量とは、機能層を構成する全原子に対するフッ素原子の含有量(質量%)を意味する。機能層中のフッ素原子含有量は、自動試料燃焼装置-イオンクロマト法(AQF-IC法)によって、下記条件にて測定して得られる。
<分析条件>
・自動試料燃焼装置
装置:三菱ケミカルアナリテック社製、自動試料燃焼装置AQF-100
燃焼条件:固体試料用モード
試料量:2~20mg
・イオンクロマトグラフ
装置:Thermo Fisher SCIENTIFIC社製
カラム:IonpacAG11HC+IonpacAS11HC
溶離液:KOH10mN(0-9min)、10-16mN(9-11min)、16mN(11-15min)、16-61mN(15-20min)、60mN(20-25min)
流速:1.0mL/分
サプレッサ:ASRS
検出器:電導度検出器
注入量:5μL
【0068】
本発明におけるマトリックスがシリコーン樹脂である場合、シリコーン樹脂は、シラン化合物の加水分解縮合物と、必要に応じてシラン化合物の加水分解縮合物以外の後述する成分Xの少なくとも一種と、を含む。
【0069】
シラン化合物としては、クロロシラン、シラザン、アルコキシシラン等が挙げられ、シラン化合物の反応性の点から、アルコキシシランが好ましい。
クロロシランとしては、トリクロロシラン、トリメチルクロロシラン等が挙げられる。
シラザンとしては、ヘキサメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン等が挙げられる。
【0070】
アルコキシシランは、ケイ素原子に直接結合している一以上のアルコキシ基を有する。アルコキシシランは、アルコキシ基以外の、ケイ素原子に直接結合している一以上の基を有していてもよい。また、アルコキシシランは、水素原子を有していてもよい。
アルコキシシランは、機能層の耐久性の点から、ケイ素原子に直接結合しているアルコキシ基を4個有するテトラアルコキシシランと、ケイ素原子に直接結合しているアルコキシ基を1~3個有するアルコキシシランと、を併用するのが好ましい。
アルコキシ基以外の、ケイ素原子に直接結合している一以上の基としては、ヒドロキシ基、アルキル基、芳香族アルキル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、ウレイド基、ポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキル基等が挙げられ、シリコーン樹脂の耐クラック性の点から、アルキル基および芳香族アルキル基が好ましい。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
上記芳香族アルキル基としては、アリール基、フェニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
アルコキシ基以外の、ケイ素原子に直接結合している一以上の基としては、機能層の硬度の点から、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましい。
【0071】
アルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ペルフルオロポリエーテルトリエトキシシラン、ペルフルオロエチルトリエトキシシラン等が挙げられ、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが好ましい。シラン化合物は、機能層の耐クラック性の点から、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0072】
シラン化合物としては、さらに、ビスシランを用いてもよい。ビスシランは、加水分解性基を有するケイ素原子2個が、2価の連結基を介して結合した構造を有する化合物である。
2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等の2価の炭化水素基が挙げられる。2価の炭化水素基は、炭素原子間に-O-、-S-、-CO-および-NRS1-(ただし、RS1は水素原子または1価の炭化水素基である。)から選択される一以上の基を有していてもよい。2価の連結基は、炭素数2~8のアルキレン基が好ましく、炭素数2~6のアルキレン基が特に好ましい。
【0073】
加水分解性基としては、アルコキシ基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン原子等が挙げられ、アルコキシ基(特に、メトキシ基およびエトキシ基)、イソシアネート基、ハロゲン原子(特に、塩素原子)が好ましい。
【0074】
ビスシランが有するケイ素原子には、加水分解性基以外に、水素原子、ヒドロキシ基、1価の炭化水素基等が結合していてもよい。1価の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。ビスシランにおける、1個のケイ素原子に結合する加水分解性基の数は、1~3が好ましく、反応速度の点から、2または3が好ましく、3が特に好ましい。
シラン化合物は、二種以上を併用してもよい。
【0075】
シラン化合物の加水分解縮合物は、シラン化合物の一種以上を混合し、水と、必要に応じて後述する触媒(酸触媒、塩基触媒等)と、の存在下にて、加熱乾燥して得られる。
【0076】
本発明におけるマトリックスがシリコーン樹脂を含む場合、機能層における炭素原子含有量は、機能層の耐熱性の点から、30原子%以下が好ましく、20原子%が特に好ましい。機能層における炭素原子含有量は、シラン化合物の種類および量によって調節できる。
機能層中の炭素原子含有量とは、機能層を構成する全原子に対する炭素原子の含有量(原子%)を意味する。機能層中の炭素原子含有量は、機能層表面を加速電圧15keVで観察し、任意の3点について炭素の元素個数比率(原子%)を測定した場合の平均値として得られ、実施例においては、SEM-EDX(日立社製品名「S-4300」および堀場社製品名「EMAX」)により分析して得られる値である。
【0077】
本発明におけるマトリックスが、シリコーン樹脂である場合、機能層の耐クラック性の点、および機能層を厚くでき、機能層の隠蔽性を向上させる点から、機能層は、さらに鱗片状シリカ粒子を含むのが好ましい。
鱗片状シリカ粒子における「鱗片状」とは、扁平な形状を意味する。粒子の形状は、透過型電子顕微鏡を用いて確認できる。
【0078】
鱗片状シリカ粒子は、例えば、薄片状のシリカ1次粒子と複数枚の薄片状のシリカ1次粒子が、互いに面間が平行的に配向し重なって形成されるシリカ2次粒子からなる。シリカ2次粒子は、通常、積層構造の粒子形態を有する。鱗片状シリカ粒子はシリカ1次粒子とシリカ2次粒子のいずれか一方のみからなるものでもよい。
【0079】
シリカ1次粒子の厚さは、0.001~0.1μmが好ましい。シリカ1次粒子の厚さが上記範囲内であれば、互いに面間が平行的に配向して1枚または複数枚重なった鱗片状のシリカ2次粒子を形成できる。シリカ1次粒子の平均アスペクト比は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。
シリカ2次粒子の厚さは、0.001~3μmが好ましく、0.005~2μmが特に好ましい。シリカ2次粒子の厚さに対する平均アスペクト比は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。シリカ2次粒子は、融着することなく互いに独立に存在していることが好ましい。
【0080】
シリカ1次粒子およびシリカ2次粒子の厚さは、原子間力顕微鏡によって測定される。
シリカ1次粒子およびシリカ2次粒子の最長長さは、透過型電子顕微鏡によって測定される。
アスペクト比は、粒子の厚さに対する最長長さの比(最長長さ/厚さ)である。
平均アスペクト比は、無作為に選択された50個の粒子のアスペクト比の平均値である。
【0081】
鱗片状シリカ粒子の平均最長粒子径は、機能層を厚くしても耐クラック性に優れる点から、0.05μm以上が好ましく、0.10μm以上が特に好ましい。鱗片状シリカ粒子の平均最長粒子径は、マトリックス中における分散性の点から、3.00μm以下が好ましく、1.50μm以下が特に好ましい。
鱗片状シリカ粒子の平均最長粒子径は、透過型電子顕微鏡によって測定される、無作為に選択された50個の粒子の最長粒子径の平均値である。
【0082】
機能層が鱗片状シリカ粒子を含む場合、機能層の厚さは、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、10μm以上が特に好ましい。上記の場合の機能層の厚さは、300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。
【0083】
機能層が鱗片状シリカ粒子を含む場合、鱗片状シリカ粒子の平均最長粒子径に対する機能層の厚さの比(機能層の厚さ/平均最長粒子径)が、3以上であるのが好ましく、10以上であるのがより好ましく、20以上が特に好ましい。上記比は、500以下であるのが好ましく400以下であるのがより好ましく、300以下であるのが特に好ましい。
【0084】
機能層が鱗片状シリカ粒子を含む場合、機能層中における鱗片状シリカ粒子の体積分率は、機能層の厚さを調整する点、および、機能層の耐クラック性に優れる点から、5~100%が好ましく、10~30%が特に好ましい。
【0085】
機能層における鱗片状シリカ粒子の体積分率は、以下のように求められる。
まず、機能層の厚さ方向の断面をSEM(日立社製品名「S-4300」)を用いて観察し、得られた画像について、厚さ方向に直交する方向の任意の幅1.5μmの範囲を、付属の画像解析ソフトにより解析して、マトリックス、鱗片状シリカ粒子、無機顔料の面積分率(解析断面の全面積(厚さ×1.5μm)を100%とした場合の百分率(%))を求める。
同様に、機能層の厚さ方向の断面SEM画像について、別の任意の幅1.5μmの範囲を2箇所解析し面積分率を求める。
最後に、合計3箇所の厚さ×1.5μmの範囲についての面積分率を平均して、鱗片状シリカ粒子の体積分率とする。
【0086】
機能層が鱗片状シリカ粒子を含む場合、機能層中の無機顔料の含有量は、機能層の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が特に好ましい。機能層中の無機顔料の含有量は、機能層の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0087】
機能層が鱗片状シリカ粒子を含む場合、機能層の厚さに対する鱗片状シリカ粒子の平均最長粒子径の比が3以上500以下であると、機能層の主面の面方向に対して鱗片状シリカ粒子の面方向が平行となるように配列しやすく、機能層の耐クラック性に優れると考えられる。さらに、機能層における鱗片状シリカ粒子の体積分率が5~100%であり、かつ、機能層中の無機顔料の含有量が1~50質量%であると、鱗片状シリカ粒子の間に無機顔料が好適に配置するため、機能層における無機顔料の分散性に優れるとともに、鱗片状シリカ粒子の上記配列にもより優れ、機能層の耐クラック性および意匠性がさらに向上すると考えられる。その上、無機顔料が機能層中に均一に分散することから、本光学層の耐候性および本太陽電池モジュールの発電効率にも優れると考えられる。
【0088】
鱗片状シリカ粒子は、市販のもの、それを加工したもの等を用いてもよく、製造したものを用いてもよい。鱗片状シリカ粒子は、粉体を用いてもよく、分散媒に分散させて用いてもよい。鱗片状シリカ粒子の市販品としては、例えば、AGCエスアイテック社のサンラブリー(商品名)シリーズが挙げられる。
【0089】
マトリックスを形成する樹脂が後述する硬化剤を含む場合、機能層は、機能層の硬度および耐久性の点から、該樹脂が有する架橋性基が硬化剤と反応して形成される架橋構造を有する樹脂を含むことが好ましい。
また、マトリックスを形成する樹脂が後述する硬化剤を含む場合、本光学層は、機能層に含まれる樹脂が有する架橋性基と、硬化剤と、機能層以外の層が有する反応性基からなる群より選択される2種以上が反応して形成される架橋構造を有していてよい。この場合、機能層以外の層が有する反応性基は、架橋性基としての役割を果たす。
機能層以外の層が有する反応性基としては、機能層以外の層がガラス板からなる基材層である場合のシラノール基、機能層以外の層が、シランカップリング剤等によって表面処理されている層である場合の加水分解性シリル基等が挙げられる。
例えば、加水分解性シリル基およびシラノール基から選択される1種以上を有する硬化剤を含む樹脂から、ガラス板からなる基材層上に機能層を形成する場合、硬化剤の加水分解性シリル基等(具体的には、加水分解により生じたシラノール基)と、ガラス板の表面に存在するシラノール基と、が反応して架橋構造を形成する。そのため、基材層に対する機能層の密着性がより優れる。さらには、この場合、基材層が、シランカップリング剤等によって表面処理されたガラス板からなる層であると、ガラス板の表面に存在するシラノール基と、シランカップリング剤が有する加水分解性シリル基等と、硬化剤の加水分解性シリル基等と、が反応して架橋構造を形成する。そのため、基材層と、機能層と、の密着性が向上し、本光学層の耐久性に優れる。
【0090】
本発明におけるマトリックスが、ガラスフリット組成物を焼結してなる焼結物である場合、ガラスフリット組成物は、ガラスを粉砕して得られるガラス粉末からなり、必要に応じて、後述する成分Gの少なくとも一種を含む。
【0091】
ガラス粉末の50%粒子径(D50)は、1.0~10.0μmであるのが好ましく、3.0~8.0μmであるのが好ましい。
ガラス粉末の90%粒子径(D90)は、5.0~30.0μmであるのが好ましく、8.0~16.0μmであるのが好ましい。50%粒子径(D50)および90%粒子径(D90)は、粒子径の累積分布(体積基準)において累積量50%および90%に対応する粒子径である。50%粒子径(D50)および90%粒子径(D90)は、レーザ回折式粒子径分布測定機により測定される。
【0092】
ガラス粉末は、Li、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Mn、Cu、Zn、Sr、Ag、Ba、Bi、Fe、Co、Ce、Nb、Ta、Sb、Cs、P、Zr、La、Snから選択される元素の少なくとも一種を含むのが好ましく、Ba、B、Al、Cu、Zn、Bi、Fe、Ceから選択される元素の少なくとも一種を含むのがより好ましく、Ba、B、Znから選択される元素の少なくとも一種を含むのが特に好ましい。
【0093】
ガラス粉末の組成および各元素の含有量は、ガラス粉末の軟化点が好適となるように適宜調節されればよい。
ガラスフリット組成物が含むガラス粉末の量は、ガラスフリット組成物を焼結してなる焼結体の熱膨張係数が好適となるように、後述する熱膨張係数調整剤の量とともに適宜調節されればよい。
【0094】
ガラス粉末の軟化点は、本光学層がガラス板からなる基材層を有し、基材層の少なくとも一方の面上に、ガラスフリット焼結物を含む機能層が直接積層されている場合、焼結時における基材層の軟化変形を防ぐため、基材層の軟化点未満である必要がある。特に基材層としてソーダライムシリケートガラスを用いた場合、ガラス粉末の軟化点は、450~700℃であるのが好ましく、500~600℃であるのが特に好ましい。
【0095】
ガラス粉末としては、特に限定されないが、例えば環境負荷低減の観点から、鉛を含まないガラスからなるガラス粉末が好ましく、特に、バリウムホウ酸亜鉛系のガラスからなるガラス粉末が好ましい。バリウムホウ酸亜鉛系ガラスは、例えば、ガラスが含む金属元素の酸化物とした場合の質量%表示において、BaOを20~50%、Bを10~35%、ZnOを5~25%含むガラスであるのが好ましい。特に、本光学層がガラス板からなる基材層を有し、基材層の少なくとも一方の面上に、ガラスフリット組成物からなる焼結物を含む機能層が直接積層されている場合、本光学層の硬度の点から、ガラス粉末は、ガラスが含む金属元素の酸化物とした場合の質量%表示において、BaOを28~43%、Bを13~28%、ZnOを10~20%含むのが好ましい。
【0096】
成分Gとしては、熱膨張係数調整剤、離型剤、還元剤等が挙げられる。成分G以外にガラスフリット焼結物には含まれないバインダーや有機溶媒を用いて焼結体が製造される。
バインダーは、ガラスフリット組成物を焼結する前において、ガラスフリット組成物中のガラス粉末を固定するものであり、ガラスフリット組成物を焼結する際の加熱によって除去される。したがって、ガラスフリット焼結物には、バインダーは含まれない。
ガラスフリット組成物がバインダーおよび有機溶剤を含むと、ガラスフリット組成物がペースト状となるため、容易に塗布できる。バインダーとしては、有機バインダーが好ましく、エチルセルロース、ポリプロピレンカーボネートアクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられ、印刷性の点から、エチルセルロースが好ましい。
【0097】
有機溶剤は、バインダーを溶解させるものであり、バインダーの種類に応じて選定される。有機溶剤は、ガラスフリット組成物の加熱乾燥および焼結する際の加熱によって除去される。したがって、ガラスフリット焼結物には、有機溶剤は含まれない。
有機溶剤としては、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、α-テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、フタル酸エステル等が挙げられ、印刷性の点から、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルが好ましい。
【0098】
熱膨張係数調整剤は、ガラスフリット組成物と、無機顔料と、を少なくとも含む機能層の熱膨張係数を調整するものである。機能層と基材(ガラス板等)との熱膨張係数が適合していない場合、ガラスフリット組成物を焼結して焼結物を得る際に、機能層や基材に反りやクラックが発生する。したがって、機能層形成時の反りやクラックを防ぐために、例えば基材層上に機能層を形成する場合、機能層の熱膨張係数を、熱膨張係数調整剤によって基材層の熱膨張係数に近くなるよう調整するのが好ましい。
熱膨張係数調整剤としては、コージェライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、ムライト、シリカ、酸化錫系セラミック、β-ユークリプタイト、β-スポジュメン、リン酸ジルコニウム系セラミックおよびβ-石英固溶体から選ばれる少なくとも一種が好ましく、これらの粉末であるのがより好ましい。
熱膨張係数調整剤が粉末である場合、熱膨張係数調整剤の50%粒子径(D50)は、1.0~10.0μmであるのが好ましく、1.5~5.0μmであるのが好ましい。熱膨張係数調整剤の90%粒子径(D90)は、1.0~10.0μmであるのが好ましく、3.0~8.0μmであるのが好ましい。熱膨張係数調整剤の種類および量は、ガラスフリット組成物を所望の熱膨張係数とするように、適宜選択される。
【0099】
例えば、基材層としてソーダライムシリケートガラスを用いる場合、ガラスフリット組成物として、バリウムホウ酸亜鉛系ガラス粉末、熱膨張係数調整剤としてコージェライト、無機顔料としてCo-Alの複合酸化物の組み合わせが好適である。
【0100】
マトリックス中における、ガラスフリット焼結物と、熱膨張係数調整剤と、無機顔料と、の含有量は、マトリックスの全質量に対してこの順にそれぞれ、50~85質量%、10~30質量%、1~20質量%であるのが好ましく、60~80質量%、15~25質量%、5~10質量%であるのが特に好ましい。
上記の場合、基材層と機能層との密着性が良好になり、本光学層の強度に優れる。さらには、マトリックス中に無機顔料が良好に分散するため、本太陽電池モジュールの意匠性および発電効率に優れる。
【0101】
本発明における機能層の一形態としては、重合体(特に、含フッ素重合体)と、無機顔料と、を少なくとも含む機能層形成組成物(以下、組成物(1)という。)を用いて形成される層である。組成物(1)は、重合体の二種以上を含んでいてよい。また、組成物(1)は、無機顔料の二種以上を含んでいてよい。
重合体としては、上述したマトリックスを構成する樹脂に含まれる重合体が挙げられ、含フッ素重合体が好ましい。
組成物(1)における無機顔料は、上述した本発明における無機顔料と同様であるので、詳細を省略する。
【0102】
組成物(1)が、重合体として含フッ素重合体を含む機能層形成組成物(以下、組成物(1F)という。)である場合、組成物(1F)中の含フッ素重合体は、以下の物性を有するのが好ましい。
含フッ素重合体が、カルボキシ基を有する含フッ素重合体である場合、含フッ素重合体の酸価は、機能層の強度の点から、1~200mgKOH/gが好ましく、1~150mgKOH/gが好ましく、3~100mgKOH/gがより好ましく、5~50mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体が、ヒドロキシ基を含む含フッ素重合体である場合、含フッ素重合体の水酸基価は、機能層の強度の点から、1~200mgKOH/gが好ましく、1~150mgKOH/gが好ましく、3~100mgKOH/gがより好ましく、10~60mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体は、酸価または水酸基価のどちらか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。
【0103】
含フッ素重合体のフッ素原子含有量は、マトリックス中における無機顔料の分散性の点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましく、28質量%以下が最も好ましい。また、含フッ素重合体のフッ素原子含有量は、機能層の耐候性の点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上が特に好ましい。
特に、含フッ素重合体のフッ素原子含有量が、好ましくは15~30質量%、特に好ましくは15~28質量%であれば、機能層において無機顔料が良好に分散し、本光学層における近赤外光透過率および可視光反射率が高くなるため、本太陽電池モジュールの意匠性および発電効率に優れる。
含フッ素重合体のフッ素原子含有量とは、含フッ素重合体を構成する全原子に対するフッ素原子の割合(質量%)を意味する。フッ素原子含有量は、含フッ素重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
【0104】
上記以外に関しては、上述したマトリックス中における含フッ素重合体と同様であるので、詳細を省略する。
【0105】
組成物(1F)中の含フッ素重合体の含有量は、組成物(1F)中における無機顔料の分散性の点から、組成物(1F)の全質量に対して、10~90質量%が好ましく、20~40質量%が特に好ましい。
組成物(1F)の固形分中の含フッ素重合体の含有量は、組成物(1F)中における無機顔料の分散性の点から、組成物(1F)の全固形分質量に対して、10~90質量%が好ましく、40~70質量%が特に好ましい。
組成物(1F)の固形分中の無機顔料の含有量は、組成物(1F)中における無機顔料の分散性の点から、組成物(1F)の全固形分質量に対して、5~80質量%が好ましく、20~50質量%が特に好ましい。
【0106】
組成物(1)は、無機顔料および重合体以外にそれら以外の成分である成分Xの少なくとも一種を含んでよい。このような成分Xとしては、硬化剤、触媒、フィラー(樹脂ビーズ等の有機フィラー等)、有機顔料(カーボンブラック(黒色)、銅フタロシアニン(青色、緑色)、ペリレン(赤色)等)、有機系光安定剤、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、つや消し剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、表面調整剤、脱ガス剤、充填剤、熱安定剤、増粘剤、界面活性剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤、可塑剤、接着剤等が挙げられる。
ただし、機能層の耐候性の点からは、有機顔料を含まないか、含む場合は全顔料中1質量%未満であることが好ましい。
組成物(1)には、機能層に含まれない成分を必要により含んでもよい。そのような成分としては液状媒体等が挙げられる。水、有機溶媒等液状媒体は、マトリックス形成時に蒸発除去等により除去される成分であり、コーティング等の手段で機能層を形成する場合に、組成物(1)に含まれる。
組成物(1F)の固形分濃度は、上記液状媒体によって、組成物(1F)の全質量に対して好ましくは10~90質量%、より好ましくは40~70質量%に調整されていることが好ましい。
【0107】
組成物(1)に硬化性の樹脂や架橋性の重合体が含まれる場合は、成分Xの中でも、上述した機能層において架橋構造を構成する硬化剤を含むのが特に好ましい。
組成物(1)中の重合体が架橋性基を含む場合、重合体の架橋性基と、硬化剤とを架橋させることで、機能層を硬化させることができる。この場合、機能層は、重合体と硬化剤との架橋構造体を有する。
また、組成物(1)中の硬化剤が加水分解性シリル基およびシラノール基から選択される1種以上を有する場合、硬化剤と、基材層として酸化ケイ素を含むガラス板と、場合に応じて重合体と、が反応して、硬化剤と、ガラス板と、場合に応じて重合体と、の架橋構造を有する機能層が形成されると考えられる。
組成物(1)が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、組成物(1)中の重合体100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下が好ましく、10質量部以上150質量部以下が特に好ましい。
【0108】
重合体がヒドロキシ基を有する場合の硬化剤は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
重合体がカルボキシ基を有する場合の硬化剤は、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を、1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
重合体がヒドロキシ基およびカルボキシ基の両方を有する場合は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物と、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を1分子中に2以上有する化合物と、の併用が好ましい。
また、本光学層がガラス板からなる基材層を有する場合は、硬化剤は、機能層と基材層との密着性がより向上する点から、加水分解性シリル基およびシラノール基から選択される少なくとも1種を有する硬化剤が好ましい。
【0109】
組成物(1)は、無機顔料の分散性の点から、分散剤を含むのが好ましい。分散剤としては、脂肪酸アミド、酸性ポリアミドのエステル塩、アクリル樹脂、酸化ポリオレフィン、その他無機顔料に親和性のある重合体等が挙げられる。分散剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、「ディスパロン」シリーズ(楠本化成社商品名)、「DISPERBYK」シリーズ(ビックケミー社商品名)等が挙げられる。
【0110】
本発明における機能層の一形態としては、シラン化合物と、鱗片状シリカ粒子と、無機顔料と、を少なくとも含む機能層形成組成物(以下、組成物(2)という。)を用いて形成される層である。組成物(2)は、シラン化合物および鱗片状シリカ粒子の二種以上を含んでいてよい。また、組成物(2)は、無機顔料の二種以上を含んでいてよい。
【0111】
組成物(2)における、シラン化合物、鱗片状シリカ粒子、無機顔料、およびそれらの含有量は、上述した本発明におけるシリコーン樹脂で説明したシラン化合物、鱗片状シリカ粒子、および上述した本発明における無機顔料と同様であるので、詳細を省略する。
組成物(2)は、シラン化合物、鱗片状シリカ粒子、および無機顔料以外の成分を含んでよく、このような成分としては、上述した成分Xが挙げられる。
【0112】
組成物(2)は、成分Xの中でも、シラン化合物の加水分解を促進する触媒を含むのが好ましい。上記触媒としては、酸触媒、アルカリ触媒等が挙げられ、シラン化合物が加水分解縮合した後の長期保存性の点から、酸触媒が好ましい。
酸触媒としては、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)、有機酸(ギ酸、シュウ酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸等)等が挙げられる。
アルカリ触媒としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、pH10.5~12の電解還元水等が挙げられる。
【0113】
組成物(2)は、少なくとも媒体(特に、液状媒体)を含み、液状媒体中に、シラン化合物と、鱗片状シリカ粒子と、無機顔料と、が分散しているのが好ましい。液状媒体としては、水、有機溶剤、およびこれらの混合物が挙げられ、少なくとも水を含むのが好ましい。
【0114】
組成物(2)中の、シラン化合物および鱗片状シリカ粒子の含有量の合計は、組成物(2)中における分散性の点から、組成物(2)の全質量に対して、1~99質量%が好ましく、30~90質量%が特に好ましい。
組成物(2)中の無機顔料の含有量は、組成物(2)中における無機顔料の分散性の点から、組成物(2)の全質量に対して、0.01~50質量%が好ましく、1~30質量%が特に好ましい。
【0115】
本発明における機能層の一形態としては、ガラスフリット組成物と、無機顔料と、を少なくとも含む機能層形成組成物(以下、組成物(3)という。)を用いて形成される層である。組成物(3)は、無機顔料の二種以上を含んでいてよい。
【0116】
組成物(3)における、ガラスフリット組成物および無機顔料は、上述した本発明におけるガラスフリット組成物、および上述した本発明における無機顔料と同様であるので、詳細を省略する。
組成物(3)は、ガラスフリットを含む組成物および無機顔料以外の成分を含んでよく、このような成分としては、上述した成分Gが挙げられ、成分Gのうち、熱膨張係数調整剤を含むのが好ましい。
組成物(3)には、前記のように焼結体には含まれない成分である、バインダーや有機溶媒が含まれてもよい。この場合、組成物(3)がペースト状となり、組成物(3)の塗布および機能層の形成が容易になる。また、組成物(3)中に無機顔料が好適に分散し、本太陽電池モジュールの意匠性に優れる。
【0117】
機能層が、組成物(1)を用いて形成される層である場合、機能層は、組成物(1)を成形して製造してもよく、組成物(1)を、本光学層が有する機能層以外の層(例えば、基材層)上に塗装し、加熱乾燥して製造してもよい。機能層は、マトリックス中における無機顔料の分散性の点から、組成物(1)を、本光学層が有する機能層以外の層上に塗装して製造するのが好ましい。つまり、組成物(1)は、含フッ素重合体を含む塗料であることが好ましい。
本太陽電池モジュールを製造する場合、好ましくは基材層上に上記塗料を塗装して光学層を製造し、得られた光学層を後述する封止層と圧着する。したがって、光学層における機能層が塗料を塗装して形成される層であれば、機能層がフィルムである場合と比較して、封止層との圧着時に端面において機能層がはみ出さない点でも好ましい。
【0118】
組成物(1)を成形して機能層を製造する場合、成形方法としては、押出成形、射出成形、ブロー成形等が挙げられる。この場合、本光学層が有する機能層以外の層上にラミネート成形してもよい。
【0119】
組成物(1)が液状媒体を含み、媒体中に組成物(1)の固形分が分散または溶解している塗料(水系塗料、溶剤型塗料等)である場合、塗装方法の具体例としては、スプレーコート法、スキージコート法、フローコート法、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ダイコート法、インクジェット法、カーテンコート法、はけやへらを用いる方法が挙げられる。組成物(1)は、マトリックス中における分散性が良好である機能層を形成できる点から、含フッ素重合体が溶剤中に溶解または分散している溶剤型塗料であることが好ましい。
組成物(1)が液状媒体を含まない塗料(粉体塗料等)である場合、塗装方法の具体例としては、静電塗装法、静電吹付法、静電浸漬法、噴霧法、流動浸漬法、吹付法、スプレー法、溶射法、プラズマ溶射法等が挙げられる。
組成物(1)を本光学層が有する機能層以外の層上に塗装して機能層を製造する場合、塗装後は、組成物(1)を塗装してなる塗装層を、加熱乾燥させて形成するのが好ましい。上記塗装層の加熱乾燥温度は、通常0℃~300℃であり、加熱乾燥時間は、通常1分~2週間である。
【0120】
機能層が、組成物(1)を用いて形成される層である場合、本光学層は、基材層と、基材層の少なくとも一方の面上に直接積層された機能層とを有し、基材層が表面処理されたガラス板からなる層であるのが好ましい。つまり、上記の場合、ガラス板の少なくとも一方の面上を、公知の表面処理方法によって表面処理して基材層を得て、得られた基材層の少なくとも一方の面上に組成物(1)を直接塗装して機能層を形成して、本光学層を得るのが好ましい。特に、上記表面処理がシランカップリング剤の塗布等である場合、基材層においてガラス板が有する-Si-OH基と、シランカップリング剤が有する-Si-OH基とが相互作用するとともに、表面処理された基材層と機能層とが密着するため、本光学層の耐久性に優れる。
【0121】
機能層が、組成物(2)を用いて形成される層である場合、機能層は、組成物(2)を、本光学層が有する機能層以外の層(例えば、基材層)上に塗装し、加熱乾燥して製造するのが好ましい。この場合、塗装方法としては、上述した組成物(1)で記載した塗装方法が挙げられ、スプレーコート法が好ましい。
【0122】
組成物(2)をスプレーコート法によって塗装する場合、例えば、回転霧化頭を備える公知の静電塗装ガンを有する公知の静電塗装装置を用いて、組成物(2)を帯電させ、基材層(好ましくは、ガラス板からなる基材層)の主面上に噴霧することにより塗装できる。塗装後は、組成物(2)を塗装してなる塗装層を加熱乾燥して硬化させて、機能層を形成するのが好ましい。上記塗装層を加熱乾燥することで、シロキサン結合等を有するシラン化合物の加水分解縮合物が形成される。上記塗装層の加熱乾燥温度は、通常30℃~700℃であり、加熱乾燥時間は、通常1分~30分である。
【0123】
機能層が、組成物(2)を用いて形成される層である場合、本光学層は、ガラス板と、ガラス板の少なくとも一方の面上に直接積層された機能層と、を有するのが好ましい。つまり、上記の場合の本光学層は、ガラス板からなる基材層の少なくとも一方の面上に、組成物(2)を直接塗布して機能層を形成して得るのが好ましい。この場合、ガラス板が有する-Si-OH基と、シラン化合物が有する-Si-OH基と、が相互作用し、一部がSi-O-Si結合を形成すると考えられるため、基材層と機能層との密着性に特に優れ、本光学層の耐久性に優れる。
【0124】
機能層が、組成物(3)を用いて形成される層である場合、機能層は、組成物(3)を、本光学層が有する機能層以外の層(例えば、基材層)上に塗装し、加熱乾燥し、焼結させて製造してもよく、組成物(3)を、樹脂フィルム等に塗装し、加熱乾燥したのち、樹脂フィルム等を取り除いて、得られた加熱乾燥物を焼結させて製造してもよい。
【0125】
塗装方法としては、上述した組成物(1)で記載した塗装方法が挙げられ、カーテンコート法、スクリーン印刷法またはインクジェット法が好ましい。
組成物(3)が、バインダーおよび有機溶剤を含む場合、第一の加熱乾燥において有機溶剤が除去され、次いで第二の加熱乾燥によりバインダーが除去され、さらに第三の加熱乾燥において焼結が起こり、組成物(3)が含むガラス粉末が結合する。
上記第一の加熱乾燥における温度は、100~150℃が好ましい。上記第二の加熱乾燥における温度は、300~450℃が好ましく、350~400℃が特に好ましい。上記第三の加熱乾燥における温度は、450~700℃が好ましく、550~650℃が特に好ましい。加熱乾燥および焼結の温度は、基材層の種類、ガラスフリット組成物の軟化点、および熱膨張係数等によって適宜調節される。
【0126】
基材層は、本光学層の近赤外光透過率を低下させない材料からなる。基材層は、具体的には、波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの近赤外光透過率を単純平均して算出した値を近赤外光平均透過率としたときに、前記近赤外光平均透過率が10%以上であり、好ましくは100%である。
基材層としては、有機材料および無機材料が挙げられ、近赤外光透過率の点から、ガラス板または樹脂成形物が好ましく、ガラス板が特に好ましい。
【0127】
ガラス板としては、ソーダライムシリケートガラス、石英ガラス、クリスタルガラス、無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられ、近赤外光透過率が高い点から、ソーダライムシリケートガラスが好ましい。
ソーダライムシリケートガラスの具体例としては、酸化物換算で、60~75質量%のSiO、0~3質量%のAl、0超15質量%以下のCaO、0~12質量%のMgO、および、5~20質量%のNaOの組成を持つガラスが挙げられる。ここで、SiOは、ソーダライムシリケートガラスの主成分である。
ソーダライムシリケートガラスは、上記材料の他に、KO、TiO、ZrOおよびLiOからなる群より選択される少なくとも1種の材料をさらに含んでいてもよい。
また、ソーダライムシリケートガラスは、清澄剤(例えば、SO、SnO、Sb)をさらに含んでいてもよい。
【0128】
ガラス板は、強化処理が施された強化ガラス板であってもよい。強化ガラス板は、強化処理が施されていないガラス板と比較して割れ難くなるので好ましい。強化ガラス板には、例えば、残留圧縮応力を有する表面層と、残留圧縮応力を有する裏面層と、表面層と裏面層との間に形成され残留引張応力を有する中間層と、を有するガラス板が用いられる。 強化処理の具体例としては、公知のイオン交換法等によって行われる化学強化処理、および、公知の風冷強化法等によって行われる物理強化処理が挙げられる。化学強化処理したガラス板は、板厚が薄い場合であっても、表面層または裏面層の残留圧縮応力の値を大きくできるので、十分な強度を有する。
【0129】
樹脂成形物は、板状、フィルム状等に成形された樹脂である。樹脂としては、フッ素樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、変性ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。樹脂成型物としては、耐候性および近赤外光透過率の点から、フッ素樹脂フィルムが好ましい。
【0130】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド、フルオロオレフィン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等を含む樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、加工性および近赤外光透過率の点から、ポリビニリデンフルオリドおよびエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体を含む樹脂が好ましい。
フッ素樹脂としては、市販品を用いてよく、「Fluon」シリーズ(AGC社商品名)、「Kynar」シリーズ(Arkema社商品名)等が挙げられる。
【0131】
基材層の平均厚さは、建造物の設計風圧等から任意に設定できる。基材層の平均厚さは、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が特に好ましい。基材層の平均厚さは、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、15mm以下が特に好ましい。平均厚さが1mm以上であれば、耐久性が高く、本光学層が割れにくくなる。平均厚さが30mm以下であれば、本光学層が軽量になるため、本太陽電池モジュールがビルの壁面や窓により好適に用いられる。
基材層の平均厚さは、厚み計を用いて測定される厚さの算術平均値である。
【0132】
基材層は、基材層以外の層との密着性の点から、上記材料を表面処理して得られる層であってよい。表面処理方法は、公知の方法を使用でき、活性化処理(プラズマ法、蒸着法、酸処理、塩基処理等)、化成処理、材料表面の研磨、サンダー処理、封孔処理、ブラスト処理、プライマー処理等が挙げられる。
基材層は、特に、表面処理されたガラス板からなる層であるのが好ましい。この場合の表面処理方法は、プライマー処理(特に、プライマー剤の塗布)が好ましい。
プライマー剤としては、シランカップリング剤(特に、アルコキシシラン等)、チタンカップリング剤、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、被表面処理材料がガラス板である場合、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、機能層が組成物(1)を用いて形成される層である場合、基材層との密着性及び耐久性の観点から、加水分解性基としてアルコキシ基またはイソシアネート基の3~4個と非加水分解性基の0~1個とがケイ素原子に結合した化合物が好ましい。非加水分解性基としては官能性基を有していてもよいアルキル基が好ましく、官能性基としては、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等が挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、3-イソシアネートプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、メチルトリイソシアネートシラン、テトライソシアネートシランが挙げられ、市販品としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスSI-310、SI-400等が使用できる。
チタンカップリング剤としては、機能層が組成物(1)を用いて形成される層である場合、基材層との密着性及び耐久性の観の点から、アルコキシチタニウムエステル、チタニウムキレートおよびチタニウムアシレートが好ましく、チタンオリゴマーを含むアルコキシチタニウムエステル誘導体がより好ましい。チタンカップリング剤としては、(RO)(TiO)y/2で表される化合物(XおよびYはそれぞれ独立に正の整数である。)が特に好ましい。市販品としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスPC-620、PC-601等が使用できる。
シランカップリング剤またはチタンカップリング剤を塗布したガラス板を基材層として用いると、基材層の少なくとも一方の面上に組成物(1)(特に、フッ素樹脂を含む組成物(1))を直接塗装する場合でも、基材層と機能層との密着性に優れる。さらには、本光学層を水に浸漬した場合の基材層と機能層との密着性も向上するため、屋外で用いられる太陽電池モジュールとして好適である。
【0133】
以上、図1に従って本光学層を説明した。本光学層は、上述したように、機能層を有していればよいので、基材層を有さなくてもよい。本光学層は、本光学層の強度の点から、基材層を有するのが好ましい。
【0134】
本光学層は、機能層のみからなっていてよい。また、本光学層は、本発明の効果を損なわない範囲で、機能層以外の層を有してよい。機能層以外の層としては、基材層、接着層、空気層等が挙げられる。また、本光学層は、機能層を複数有していてもよく、機能層以外の層を複数有していてもよい。本光学層は、機能層を有していればよいため、本光学層が有する各層の配置順は適宜選択できる。
接着層は、例えば、本光学層が有する2以上の層を接着させる層である。
空気層は、例えば、本光学層が袋状のフィルムである場合に、本光学層をクッション状に膨らんだ状態で維持する層である。この際、太陽電池セルは、本光学層の内部に設置されていてよい。
【0135】
本光学層は、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配されて用いられる。通常、太陽電池セルは、一枚単独で用いられることはなく、複数枚の太陽電池セルが隣り合うように並べられ、かつ、各々が直列または並列に電気接続されて用いられる。したがって、典型的には、本光学層は、これら複数の太陽電池セルに対して連続的な面として配され、かつ、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に存在することとなる。
【0136】
本光学層は、典型的には、太陽電池セルを封止する封止層は含まない。本光学層は、本発明の効果により優れる点から、封止層上(封止層よりも太陽光の照射側)に積層されるのが好ましい。
【0137】
本光学層は、本発明の効果を損なわない程度に、空気側の表面に凹凸を有していてもよい。本光学層が、空気側の表面に凹凸を有する態様としては、例えば、本光学層が空気側の最外層として機能層を有し、かつ機能層がつや消し剤を含む態様、および、本光学層が空気側の最外層として基材層を有し、かつ基材層が研磨等により適当な表面処理がなされている態様等が挙げられる。
【0138】
図2は、本太陽電池モジュール20の一態様(以下、態様1ともいう。)における断面図である。態様1は、基材層が最外層となるため、基材の質感を生かしつつ本太陽電池モジュールに意匠性を付与できる点で好ましい。
図2に示すように、太陽電池モジュール20は、基材層110および機能層120を有する光学層10と、複数の太陽電池セル14と、封止層16と、裏面保護層18と、を有する。光学層10は、封止層16上に積層されており、かつ、太陽電池セル14に対して、太陽光40の入射面側に配されている。複数の太陽電池セル14はいずれも、封止層16によって封止されている。
【0139】
光学層10は、太陽電池モジュール用の光学層として用いられ、太陽電池モジュール20に意匠性および耐候性を付与できる。
態様1において、機能層としては、マトリックスがフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ガラスフリットを含む組成物を焼結してなる焼結物から選択される少なくとも一種である機能層が好ましく、封止層との接着性の点からは、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂が特に好ましい。
態様1において、基材層としては、光学層の耐久性の点から、ガラス板が好ましい。
【0140】
太陽電池セル14は、第1受光面14Aと、第1受光面14Aと対向する第2受光面14Bと、を有する。太陽電池セル14は、第1受光面14Aおよび第2受光面14Bで受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を持つ。太陽電池セルは、第1受光面のみに該機能を有してもよく、第1受光面および第2受光面に有してもよい。
本発明における太陽電池セルは、近赤外領域に分光感度を有する材料であることが好ましい。具体的には、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等により構成されるシリコン系太陽電池セル、GaAs、CIS、CIGS、CdTe、InP、ZnまたはCuS等により構成される化合物系太陽電池セルが挙げられる。太陽電池セルとしては、配線がないために本太陽電池モジュールの意匠性により優れ、外壁材として好適に使用できる点、および近赤外光領域における発電により優れる点から、CIS系太陽電池セルまたはCIGS系太陽電池セルが特に好ましい。また、太陽電池セルが配線を有する場合は、本太陽電池モジュールの意匠性の点から、配線は着色されていることが好ましく、黒色に着色されていることが特に好ましい。
ここで、図3は、地上での太陽光スペクトル(日射エネルギー)と単結晶シリコン系太陽電池の分光感度曲線を示すグラフである。
図3に示す通り、単結晶シリコン系太陽電池は波長780nmよりも長波長領域にも高い分光感度を有する。つまり、長波長領域で高い透過率を示す本光学層を用いることで、意匠性と発電効率を具備できる太陽電池モジュールが得られることを意味する。
【0141】
封止層16は、太陽電池セル14を封止する役割を果たす。
本発明における封止層を構成する材料の具体例としては、エチレン-酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。封止層は、太陽電池セルに対する密着性および保護効果が求められるため、典型的には、本発明における無機顔料等を含まないか、含む場合は樹脂に対し1質量%未満であることが好ましい。
【0142】
裏面保護層18は、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側と対向する面側に配されている。
本発明における裏面保護層は、太陽電池モジュールに強度および耐光性を向上させる層であるのが好ましい。裏面保護層を構成する材料の具体例としては、上述した基材層を構成する材料と同様の材料が挙げられる。
裏面保護層は、本太陽電池モジュールの意匠性の点から、黒色であることが好ましい。具体的には、裏面保護層は、黒色のガラス板または黒色のコーティングが施されたガラス板が好ましい。
【0143】
図4は、本太陽電池モジュール20の一態様(以下、態様2ともいう。)における断面図である。態様2は、機能層が最外層となるため、機能層の質感を生かすことができる点で好ましい。
図4に示すように、太陽電池モジュール20は、基材層110および機能層120を有する光学層10と、複数の太陽電池セル14と、封止層16と、裏面保護層18と、を有する。光学層10は、封止層16上に積層されており、かつ、太陽電池セル14に対して、太陽光40の入射面側に配されている。複数の太陽電池セル14はいずれも、封止層16によって封止されている。
態様2において、機能層としては、マトリックスがフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ガラスフリットを含む組成物を焼結してなる焼結物から選択される少なくとも一種である機能層が好ましい。
態様2における各層の詳細は、態様1と同様であるので、その説明を省略する。
【0144】
図5は、本太陽電池モジュール20の一態様(以下、態様3ともいう。)における断面図である。態様3は、例えばフェンス等の、いずれの面からも太陽光が入射する場合において好適に用いられる点で好ましい。
図5に示すように、太陽電池モジュール20は、第一光学層10Aと、複数の太陽電池セル14と、第一封止層16Aと、第二封止層16Bと、第二光学層10Bと、を有する。以下の説明において、第1光学層10Aおよび第2光学層10Bを総称して、光学層10という場合がある。また、第一封止層16Aおよび第二封止層16Bを総称して、封止層16という場合がある。光学層10は、封止層16上に積層されており、かつ、太陽電池セル14に対して、太陽光40Aおよび40Bの入射面側に配されている。複数の太陽電池セル14はいずれも、封止層16Aおよび16Bによって封止されている。 第1光学層10Aは、基材層110Aと、基材層110A上に配された機能層120Aと、を有する。
第1光学層10Aは、太陽電池セル14の第1受光面14A側かつ太陽光40Aの入射面側に配され、封止層16A上に貼着されている。また、第2光学層10Bは、太陽電池セル14の第2受光面14B側に配され、封止層16B上に貼着されている。
第2光学層10Bは、基材層110Bと、基材層110B上に配された機能層120Bと、を有する。基材層110Bおよび機能層120Bはそれぞれ、上述の基材層110Aおよび機能層120Aと同様であるので、その説明を省略する。
態様3において、機能層としては、マトリックスがフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ガラスフリットを含む組成物を焼結してなる焼結物である機能層が好ましい。
態様3における各層の詳細は、態様1と同様であるので、その説明を省略する。
【0145】
以上、図2図4および図5に従って、本太陽電池モジュールを説明した。本太陽電池モジュールは、上述の態様に限定されない。つまり、本太陽電池モジュールは、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の層(接着層、空気層等)の少なくとも一種を有してよい。また、本太陽電池モジュールは、本光学層が、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配されていればよく、それ以外の積層順は制限されない。
例えば、本太陽電池モジュールは、本光学層と封止層との間に任意の層を有することができる。また、本太陽電池モジュールは、太陽電池セルが封止層によって封止されていなくてもよい。
基材層としてガラス板を用いる場合は、本太陽電池モジュールの意匠性の点、および封止層と光学層との接着性の点から、態様1が特に好ましい。
【0146】
図6は、本太陽電池モジュールによって構成された太陽電池アレイの一例を示す概略平面図である。
図6に示すように、太陽電池アレイ30は、複数枚の矩形状の太陽電池モジュール20を平面的に配列し、直並列に接続して構成される。
本発明における太陽電池アレイの設置場所の具体例としては、ビルの屋上、屋根、外壁(例えば、壁面、窓)が挙げられる。
本発明の太陽電池アレイは、意匠性および耐候性に優れるため、建築用外壁材(例えば、ビルの壁面、窓)に用いるのが好ましい。図6では、本発明の太陽電池アレイが矩形状である態様を示したが、本発明の太陽電池アレイの形状は、特に制限されない。
【0147】
本発明の建築用外壁材は、上述した本太陽電池モジュールを有する。したがって、本発明の建築用外壁材は、耐候性、意匠性および発電効率に優れる。建築用外壁材の具体例としては、カーテンウォール、壁材、窓が挙げられる。
【0148】
本発明の建造物は、太陽電池モジュールと、太陽電池モジュールに対して太陽光の入射面側に配された光学層と、を有する。
本発明の建造物における太陽電池モジュールには制限がなく、本光学層付き太陽電池モジュールであってもよく、本光学層を有さない標準太陽電池モジュールであってもよい。本発明の建造物における太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールの発電効率の点から、標準太陽電池モジュールであるのが好ましい。標準太陽電池モジュールとは、典型的には、太陽電池セルと、太陽電池セルを封止する封止層と、太陽電池セルに対して太陽光の入射面側に配された表面保護層と、太陽電池セルに対して太陽光の入射面と反対側に配された裏面保護層と、を有する太陽電池モジュールである。標準太陽電池モジュールは、片面受光型であってもよく、両面受光型であってもよい。
【0149】
本発明の建造物は、具体的には、太陽電池モジュールを有する建築用外壁材の太陽光の入射面側に、任意に中間気層等を介して本光学層を有する。つまり、本発明の建造物は、ダブルスキンシステムを有する建造物であって、アウタースキンとして本光学層が用いられている。
本発明の建造物は、意匠性に優れるとともに、耐候性に優れるため建造物の意匠性が持続する。さらに、太陽光発電によって電力を供給できるため、省エネルギー化を促進できる。
本発明の建造物における光学層は、上述した本発明の光学層と同様であるので、詳細を省略する。
【0150】
本発明の光学層の一形態としては、無機顔料の少なくとも一種と、無機顔料が分散しているマトリックスと、を含む機能層と、ガラス板からなる基材層と、を有し、基材層の少なくとも一方の面上に、機能層が積層されてなる光学層であって、無機顔料が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m/gである。
本発明の光学層は、近赤外光を選択的に透過しやすい点から、赤外線センサーを有する機器の保護層、LiDER(Light Detection And Rancing)システムを導入するための部材の構成要素等としても有用である。
【0151】
本発明によれば、後述する実施例に示す評価方法で得られる発電効率が25%以上(より好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上)であり、かつ後述する実施例で示す意匠性および耐候性に優れる光学層が得られる。
【実施例
【0152】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されない。例1~8、14、15、17~25は実施例であり、例9~13、16は比較例である。
【0153】
[例1]
<組成物(1)の製造>
重合体溶液F(クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体のキシレン溶液(AGC社製「LF-200」、重合体濃度60質量%、重合体のフッ素原子含有量27質量%、水酸基価52mgKOH/g)(7.32g)、キシレン(3g)、ジブチルスズジラウレートの1ppmキシレン溶液(0.31g)、および無機顔料(1.9g)を加え、さらに直径1mmのガラスビーズ13gを加えて、混練機(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、2,000rpmで20分間撹拌した。その後、硬化剤(コロネートHX、東ソー社製)(0.81g)を加えて、さらに2,000rpmで1分間攪拌し、ガラスビーズを取り除いて、組成物(1-1)を得た。
【0154】
<光学層の製造>
平均板厚3.2mmのソーダライムシリケートガラス板(AGC社製、縦100mm×横100mm)の一方の面上に、アプリケーターを用いて組成物(1-1)を塗装した。その後、25℃の恒温室中で1週間加熱乾燥して硬化させて、ガラス板からなる基材層と、基材層上に積層された機能層(平均厚さ:46μm、マトリックス:フッ素樹脂)と、からなる光学層(1-1)を得た。
【0155】
[例2~13]
顔料の種類を表1に示すように変更した以外は例1と同様にして、機能層形成組成物(1-2)~(1-13)および光学層(1-2)~(1-13)を得た。
例6は、無機顔料としてCo-Alの複合酸化物(1.9g)および酸化チタン(0.57g)を用いた。例7は、無機顔料としてCo-Alの複合酸化物(1.9g)および酸化ジルコニウム(0.57g)とを用いた。酸化チタンおよび酸化ジルコニウムは、可視光最小反射率が40%以上の、白色の無機顔料である。
例13は、顔料を添加しなかった。
【0156】
[例14]
白色の無機顔料を、表2に示す含有量となるよう添加した以外は例5と同様にして、組成物(1-14)および光学層(1-14)を得た。
【0157】
[例15]
白色の無機顔料の種類を表2に示すように変更した以外は例14と同様にして、組成物(1-15)および光学層(1-15)を得た。
【0158】
表2中、無機顔料Aは有色無機顔料であり、無機顔料Bは白色の無機顔料である。表2における「含有量」は、特定の無機顔料における、有色無機顔料の全質量に対する白色の無機顔料の割合(質量%)である。
【0159】
[例16]
無機顔料を、表1に示すように有機顔料に変更した以外は例1と同様にして、組成物(1-16)および光学層(1-16)を得た。
【0160】
[例17]
<組成物(2)の製造>
変性エタノール(日本アルコール販売社製、ソルミックス(登録商標)AP-11、エタノールを主剤とした混合溶媒)(0.20g)、蒸留水(18.7g)、フェニルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製、KBE-103)(11.5g)、メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM-13)(26.1g)、鱗片状シリカ粒子を含むゾル(AGCエスアイテック社製、サンラブリーLFS-HN050。鱗片状シリカ粒子の濃度:15質量%、鱗片状シリカ粒子の平均最長粒子径:0.5μm、シリカ1次粒子の厚さ:2.5nm、シリカ1次粒子のアスペクト比:200)(38.9g)、無機顔料(3.84g)をこの順に混合し、30分間撹拌した。得られた溶液に、硝酸水溶液(硝酸濃度:10質量%)(0.72g)を添加して60分間撹拌し、組成物(2-1)を得た。
<光学層の形成>
平均板厚5.0mmのソーダライムシリケートガラス板(AGC社製、縦100mm×横100mm)の一方の面上に、アプリケーターを用いて組成物(2-1)を塗布した。その後、150℃で10分間加熱乾燥して硬化させて、ガラス板からなる基材層と、基材層上に積層された機能層(平均厚さ:60μm、マトリックス:シリコーン樹脂、機能層中における鱗片状シリカ粒子の体積分率:24%)と、からなる光学層(2-1)を得た。
【0161】
[例18]
<組成物(3)の製造>
酸化物に換算してBaO(31%)、B(25%)、ZnO(13%)を含むガラス粉末(熱膨張係数:105×10-7/℃、50%粒子径(D50):4.7μm、軟化点:530℃)(22.5g)と、熱膨張係数調製剤としてコージェライト(50%粒子径(D50):2.5μm、90%粒子径(D90):4.6μm)(6.8g)と、バインダーとしてエチルセルロース(1.2g)と、有機溶剤として2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート(6.3g)およびエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(2.5g)と、無機顔料(2.7g)と、を混練機(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて混合し、3本ロールミルにて分散して、組成物(3-1)を得た。
<光学層の形成>
平均板厚3.2mmのソーダライムシリケートガラス板(AGC社製、縦100mm×横100mm)の一方の面上に、アプリケーターを用いて組成物(3-1)を塗布した。塗布後、120℃にて25分加熱乾燥して有機溶剤を除去し、次いで370℃にて30分間加熱乾燥してバインダーを除去し、さらに600℃にて10分間加熱乾燥して焼結して、ガラス板からなる基材層と、基材層上に積層された機能層(平均厚さ:50μm、マトリックス:ガラスフリット組成物を焼結してなる焼結物)と、からなる光学層(3-1)を得た。
【0162】
[各例で使用した顔料]
例1:「Daipyroxide TM ブルー#3490E」(大日精化社商品、有色無機顔料)
例2:「Daipyroxide TM レッド#8270」(大日精化社商品、有色無機顔料)
例3:「Cappoxyt Yellow 4214X」(Cappelle社商品、有色無機顔料)
例4:「Sicotrans Red L2817」(BASF社商品、有色無機顔料)
例5:「Blue CR4」(アサヒ化成工業社商品、有色無機顔料)
例6:「Blue CR4」(アサヒ化成工業社商品、有色無機顔料)および酸化チタン(シーアイ化成社製、白色の無機顔料)
例7:「Blue CR4」(アサヒ化成工業社商品、有色無機顔料)および酸化ジルコニウム(アルドリッチ社製、白色の無機顔料)
例8:酸化ジルコニウム(アルドリッチ社商品、白色の無機顔料)
例9:「Daipyroxide TM ブラック#3550」(大日精化社商品、有色無機顔料)
例10:「42-250A」(東罐マテリアル社商品、有色無機顔料)
例11:酸化鉄(純正化学社商品、有色無機顔料)
例12:黄色三二酸化鉄(純正化学社商品、有色無機顔料)
例14:「Blue CR4」(アサヒ化成工業社商品、有色無機顔料)および酸化亜鉛(堺化学社製、白色の無機顔料)
例15:「Blue CR4」(アサヒ化成工業社商品、有色無機顔料)および「ミズカシルP-526」(水澤化学工業社商品、白色の無機顔料)
例16:有機顔料
例17:「Blue CR4」(アサヒ化成工業社商品、有色無機顔料)
例18:「Blue CR4」(アサヒ化成工業社商品、有色無機顔料)
【0163】
[評価方法]
各物性の測定方法は、上述した通りである。以下、さらに詳細な測定方法および条件を記載する。
【0164】
(無機顔料)
<平均粒子径>
測定対象試料(無機顔料等)を0.1質量%となるように蒸留水に投入し、さらに分散剤(Poiz532A、花王社製)を固形分に対して1質量%添加してスラリーを得た。得られたスラリーに、卓上型超音波洗浄機(1510J-MT、BRANSON社製)にて6時間の超音波処理を行い、超音波処理開始から10分後、30分後、その後は30分毎に、粒度分布測定装置(Nanotrac Wave II-EX150、マイクロトラック・ベル社製)にて体積基準の累積50%径(D50)を測定した。得られた13点の累積50%径(D50)のうち、最も小さい値を平均粒子径として採用した。
【0165】
<L値、a値、およびb値>
無機顔料における、L値、a値、およびb値は、JIS Z 8781-4:2013の記載に従い、拡散反射法により測定して得られる拡散反射スペクトルから算出した。
拡散反射スペクトルは、拡散反射法により、分光光度計(U-4100、日立ハイテクノロジー社製)を用い、測定対象の試料(無機顔料等)を深さ0.5mmのガラスホルダーに充填し、石英カバーで押さえ、波長200~1,500nmの範囲における拡散反射光を5nm刻みで測定して得た。リファレンスには、硫酸バリウム(試薬、関東化学社製)を用いた。
【0166】
<近赤外光最大反射率および可視光最小反射率>
無機顔料における、近赤外光最大透過率および可視光最小反射率は、上述した拡散反射スペクトルから、波長780~1,500nmにおける最大反射率および波長400~780nmにおける最小反射率をそれぞれ算出した。
【0167】
(光学層の可視光平均透過率、可視光平均直線透過率および近赤外光平均透過率)
分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 製品名:U-4100)を用いて、波長380~1,500nmの範囲を5nm刻みで、1,200nm/minのスキャン速度で光学層の全光透過率を測定した。
光学層は積分球の受光部に接触させるように設置し、光学層の表面から光が入射するように設定した。
光源切り替えは自動、切り替え波長は340.0nm、スリットは固定8nm、サンプリング間隔は5nmとした。
また、検知器切り替え補正なし、検知器切り替え波長850.0nm、スキャンスピード750nm/min、スリットは自動制御、Pbs感度は2、光量制御モード固定とした。
【0168】
可視光平均直線透過率は、上記測定で得られる全光透過率のうち、波長400~780nmの可視光領域において、5nm刻みの直線透過率を算術平均して求めた。
近赤外光平均透過率は、上記測定で得られる全光透過率のうち、波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの透過率を算術平均して求めた。
【0169】
(発電効率1)
単結晶シリコンセルの可視光(400~780nm)と、近赤外光(780~1,500nm)との発電寄与度をそれぞれ30%、70%として、可視光平均透過率および近赤外光平均透過率を乗算したものを合計し、平均板厚3.2mmのソーダライムシリケートガラス板(AGC社製)を用いた単結晶シリコンセルに対する発電効率を算出した。
【0170】
(意匠性)
上記各例で得られた光学層について、上述の方法に従って可視光平均直線透過率を求め、以下の基準で評価した。可視光平均直線透過率が低いほど、隠蔽性に優れ、意匠性に優れる。
<評価基準>
A:可視光平均直線透過率が20%未満である。
B:可視光平均直線透過率が20%以上40%未満である。
C:可視光平均直線透過率が40%以上である。
【0171】
(耐候性)
Accelerated Weather Tester(Q-PANEL LAB PRODUCT社製、モデルQUV/SE)を用い、JIS K 5600-7-7に準拠して促進耐候性試験を行った。光学層における機能層面に紫外線を照射し、試験前の光学層と、試験開始から2000時間後における光学層について、下式(1)で求められる色差を算出し、以下の基準で評価した。
式(1) 色差=[(ΔL+(Δa+(Δb]1/2
式中の記号は、以下の意味を示す。
ΔLは、試験前の光学層のL値と、試験後の光学層のL値の差の絶対値である。
Δaは、試験前の光学層のa値と、試験後の光学層のa値の差の絶対値である。
Δbは、試験前の光学層のb値と、試験後の光学層のb値の差の絶対値である。
<評価基準>
A:式(1)で求められる色差が1.0未満である。
B:式(1)で求められる色差が1.0以上1.30未満である。
C:式(1)で求められる色差が1.30以上である。
【0172】
得られた結果を表1~3に示す。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
【表3】
【0176】
表1~3より、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0nm以上280.0nm以下であり、比表面積が5.0m/g以上1,000m/g以下である無機顔料と、無機顔料が分散しているマトリックスと、を含む機能層を有する光学層は、意匠性と、発電効率および耐候性と、に優れた太陽電池モジュールを形成できることが示された。
【0177】
[例21]
<光学層の製造>
平均板厚3.2mmのソーダライムシリケートガラス板(AGC社製、縦100mm×横100mm)の一方の面上に、アプリケーターを用いてシランカップリング剤(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)を塗装し、120℃で12時間乾燥させて、プライマー層を形成した。次いで、プライマー層上に例5で調製した組成物(1-5)を塗装し、25℃の恒温室中で1週間加熱乾燥して硬化させて、ガラス板からなる基材層と、プライマー層と、機能層(平均厚さ:46μm、マトリックス:フッ素樹脂)とをこの順に有する光学層(1-5A)を得た。
【0178】
[例22]
例21において、シランカップリング剤をメチルトリイソシアネートシランに変更する以外は同様にして、光学層(1-5B)を得た。
【0179】
(耐温水性)
光学層(1-5)、(1-5A)、および(1-5B)を、80℃の温水に100時間浸漬した後に、基材層からの機能層の剥離の有無を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
S:剥離なし。
A:剥離面積5%以下。
B:剥離面積5%以上。
【0180】
【表4】
【0181】
表4に示すように、特定のシランカップリング剤をプライマーとして用いることで、ガラス板からなる基材に対する機能層の密着性が向上した。
【0182】
[例23]
<太陽電池モジュールの製造>
黒色バックガラス、中間膜(エチレン-酢酸ビニル樹脂、ブリジストン社製EVASKY S88)、光学層(1-3)および太陽電池セル(NSP社製5BB PERC)を積層後に真空加熱圧着して、バックガラスと、中間膜(封止層)に内包された太陽電池セルと、光学層(1-3)とをこの順に有し、光学層における基材層が太陽電池セルの最外層に配されている太陽電池モジュール(1-3)を得た。
太陽電池モジュール(1-3)は、黄色であり、光学層側から目視した際に太陽電池セルが視認されない、優れた意匠性を有することを確認した。
【0183】
[例24、25]
光学層(1-3)から変更して光学層(1-4)または(1-5)を用いる以外は同様にして、太陽電池モジュール(1-4)(赤色)および(1-5)(青色)を得た。
【0184】
(発電効率2)
ソーラーシミュレーターを用いて、太陽電池モジュール(1-3)~(1-5)および高透過ガラスについて、短絡電流(Isc)、解放電力(Voc)、および最大出力(Pmax)を求めた。高透過ガラスのPmaxに対する太陽電池モジュールのPmaxの割合(太陽電池モジュールのPmax/高透過ガラスのPmax×100(%))を発電効率2とした。
【0185】
(セル視認性)
1m離れた位置から太陽電池モジュール(1-3)~(1-5)を観察した場合に、太陽電池セルが視認できるかどうかを目視判断した。視認された場合をB、視認されなかった場合をAとした。
その他の分析項目に関しては、上述した方法と同様である。また、例23~25で用いた光学層の詳細は、例3~5と同様である。結果を表5に示す。
【0186】
【表5】
【0187】
表5より、本発明の光学層を有する太陽電池モジュールは、意匠性および発電効率に優れることが示された。
なお、2017年12月11日に出願された日本特許出願2017-236991号、2018年03月13日に出願された日本特許出願2018-045508号、および2018年03月13日に出願された日本特許出願2018-045416号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0188】
10 光学層
10A 第1光学層
10B 第2光学層
110 基材層
110A 第1基材層
110B 第2基材層
120 機能層
120A 第1機能層
120B 第2機能層
14 太陽電池セル
14A 第1受光面
14B 第2受光面
16 封止層
18 裏面保護層
20 光学層付き太陽電池モジュール
30 太陽電池アレイ
40、40、40B 太陽光
図1
図2
図3
図4
図5
図6