(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】薬液揮散器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20221020BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B65D83/00 F
A61L9/12
(21)【出願番号】P 2021066692
(22)【出願日】2021-04-09
(62)【分割の表示】P 2016256266の分割
【原出願日】2016-12-28
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】森本 祐輔
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/080036(WO,A1)
【文献】特開2016-124603(JP,A)
【文献】特開2005-323901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する容器と、
前記容器内に収容される薬液と、
前記薬液を前記容器内から吸い上げ、外部空間に揮散させるべく、前記容器外へ一部が露出するように前記開口を介して前記容器内に挿入される棒状の
複数の揮散体と
を備え、
前記容器は、前記開口を囲んで前記開口を画定する周縁部を含み、
前記周縁部は、前記開口に面する第1内面と、前記開口に面し、前記第1内面よりも前記開口の径方向内側に位置するとともに、前記第1内面よりも下方に位置する第2内面と、前記第1内面の上端に連続し且つ水平方向に平行である上面と、を有し、
前記第1内面は、前記第2内面に対して折れ曲がっており、
前記揮散体は、全体が前記容器に対して傾くように前記容器内に挿入可能であり、
前記容器内に挿入された前記揮散体は、前記第1内面との間に空間が形成されるように、前記第2内面と接触
し、
前記容器の開口は、前記複数の揮散体を放射状に配置可能な形状である
薬液揮散器。
【請求項2】
前記容器は、その全体が一体的に構成されている
請求項1に記載の薬液揮散器。
【請求項3】
前記容器内に挿入された全ての前記揮散体は、前記第1内面との間に空間が形成されるように、前記第2内面と接触する
請求項1または2に記載の薬液揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薬液が収容された容器内に、棒状の揮散体を容器内から突出するような態様で挿入して使用する薬液揮散器が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の薬液揮散器では、容器内の薬液が揮散体に吸い上げられて外部空間に揮散することで、薬液の有する芳香効果等の効果が外部空間に付与される。
【0003】
薬液を吸い上げる揮散体としては、様々なタイプのものがあるが、一例を挙げると、ラタン製のものが広く用いられている。ラタン製の揮散体は、内部の微細孔を介して毛細管現象により薬液を吸い上げ、このとき、薬液が内部の微細孔から外表面に染み出す。揮散体は、薬液を吸い上げて外部空間へ揮散させる役割を担うため、多くの場合、使用中、その外表面には薬液が付着する。なお、このことは、ラタン製の揮散体に限られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、特許文献1に記載の薬液揮散器の容器の上部の開口付近を拡大した側方断面図である。同図に示すとおり、容器内に挿入された揮散体は、容器の開口を囲む周縁部と接触する。そのため、揮散体の外表面に付着した薬液は、しばしばこの揮散体と周縁部との接点付近に溜まり、その後、容器の外壁面を伝って流れ落ちることがある。その場合、容器に触れた人の手や壁や家財等が薬液で汚されてしまうことになりかねない。
【0006】
本発明は、揮散体に吸い上げられた薬液が容器の外壁面を汚すことを防止することができる薬液揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係る薬液揮散器は、上部に開口を有する容器と、前記容器内に収容される薬液と、棒状の揮散体とを備える。前記揮散体は、前記薬液を前記容器内から吸い上げ、外部空間に揮散させるべく、前記容器外へ一部が露出するように前記開口を介して前記容器内に挿入される。前記容器は、前記開口を囲んで前記開口を画定する周縁部を含む。前記周縁部は、前記開口に面する第1内面と、前記開口に面する第2内面とを有する。前記第2内面は、前記第1内面よりも前記開口の径方向内側に位置するとともに、前記第1内面よりも下方に位置する。前記第1内面と前記第2内面とは、滑らかに連続しておらず、前記容器内に挿入された前記揮散体は、前記第1内面と距離を保ちつつ、前記第2内面と接触する。
【0008】
本発明の第2観点に係る薬液揮散器は、第1観点に係る薬液揮散器であって、前記揮散体が前記容器内において上下方向に対し最も傾斜しているとき、前記揮散体が前記第2内面と接触し、前記揮散体に対し前記開口の径方向外側に前記第1内面が位置する。
【0009】
本発明の第3観点に係る薬液揮散器は、第1観点又は第2観点に係る薬液揮散器であって、前記第1内面は、上に向かう程、前記開口の径方向外側に向かうように傾斜する傾斜面を形成している。
【0010】
本発明の第4観点に係る薬液揮散器は、第3観点に係る薬液揮散器であって、前記第1内面と前記第2内面とは、連続している。
【0011】
本発明の第5観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第3観点のいずれかに係る薬液揮
散器であって、前記第1内面と前記第2内面とは、段差を形成している。
【0012】
本発明の第6観点に係る薬液揮散器は、第1観点から第5観点のいずれかに係る薬液揮散器であって、前記第1内面の上端と前記第2内面の上端との間の上下方向の長さは、0.5mm以上である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器の上部の開口を画定する周縁部に、共に開口に面する第1内面及び第2内面が形成されている。第2内面は、第1内面よりも内側かつ下方に位置する。そして、容器内に挿入された揮散体は、第2内面に接触するが、この第2内面が障壁となって、第1内面と距離を保つ。その結果、揮散体と第1内面との間に空間が形成され、揮散体の外表面に付着した薬液は、容器の外壁面に達することができない。これにより、揮散体に吸い上げられた薬液が容器の外壁面を汚すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来技術に係る薬液揮散器の容器の上部の開口付近を拡大した側方断面図。
【
図3】第1実施形態に係る薬液揮散器の容器の平面図。
【
図4】第1実施形態に係る薬液揮散器の容器の首部付近を拡大した側方断面図。
【
図6】第2実施形態に係る薬液揮散器の容器の平面図。
【
図7】第2実施形態に係る薬液揮散器の容器の首部付近を拡大した側方断面図。
【
図8】変形例に係る薬液揮散器の容器の首部付近を拡大した側方断面図。
【
図9】別の変形例に係る薬液揮散器の容器の首部付近を拡大した側方断面図。
【
図10】さらに別の変形例に係る薬液揮散器の容器の首部付近を拡大した側方断面図。
【
図11】さらに別の変形例に係る薬液揮散器の容器の首部付近を拡大した側方断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の幾つかの実施形態に係る薬液揮散器について説明する。
【0016】
<1.第1実施形態>
<1-1.薬液揮散器の全体構成>
図2に、第1実施形態に係る薬液揮散器1の外観図を示す。同図に示すように、薬液揮散器1は、薬液が収容される容器2と、容器2内に挿入される複数本の棒状の揮散体3とを備える。容器2は、上部に開口S1を有し、この開口S1を介して薬液を内部空間S2内に収容することができる。なお、本明細書でいう「上」「下」は、特に断らない限り、
図2に示す使用状態を基準に定義される。
【0017】
棒状の揮散体3は、容器2内から突出するような態様で容器2内に挿入される。すなわち、揮散体3は、容器2の高さに対し十分な長さを有しており、下端部3aが容器2内に配置され、上端部3bが容器2外に露出するような態様で、開口S1を介して容器2の内部空間S2内に挿入される。また、揮散体3は、後述されるように、薬液を毛細管現象により重力に逆らって吸い上げることが可能な構造を有している。その結果、容器2内の薬液は、揮散体3を伝って下端部3aから上端部3bまで上昇することができ、揮散体3の外表面から外部空間へと揮散(自然蒸散)する。これにより、薬液は、薬液揮散器1の置かれた周囲の空間へ拡散される。
【0018】
ここで使用される薬液は、特にその種類は限定されないが、典型的には芳香剤、消臭剤又は防虫剤、或いはこれらの混合物であり、使用目的に応じて、香料、消臭成分、防虫成分、着色料等の添加剤が含有される。薬液に含まれる溶媒は、使用される添加剤の種類に応じて適宜選択され、親水性溶媒又は親油性溶媒、或いはこれらの混合物とすることができる。薬液が香料を含む場合には、その香り強度を高めるために、溶媒として少なくとも親油性溶媒を含むことが好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水又はエタノール、或いはこれらの混合物を使用することができる。親油性溶媒としては、例えば、グリコールエーテル又はイソパラフィン系溶媒、或いはこれらの混合物を使用することができる。また、薬液には、香料、消臭成分、防虫成分、着色料等の機能性成分を可溶化させるために、溶解剤が含まれていてもよい。
【0019】
揮散体3の形状及び材質は、薬液を吸い上げて外部に揮散させることができる限り、特に限定されない。揮散体3は、典型的には、内部に微細孔を有する細長い略円柱形状を有しており、ラタン等の天然素材から構成することもできるし、ポリエチレン、ポリアセタール等の合成樹脂から構成することもできる。本実施形態に係る揮散体3は、
図5に示す横断面形状を有する。この例では、揮散体3は、ポリエチレンテレフタレートとポリウレタンから構成され、内部に多数の不定形の微細孔31を有する。また、この揮散体3は、外表面が凹凸形状を有しており、外表面には、多数の溝32が形成されている。これらの溝32は、揮散体3の軸方向に沿って下端部3aから上端部3bまで筋状に延びている。また、これらの溝32は、揮散体3の周方向に沿って概ね等間隔に配置されている。従って、薬液は毛細管現象により、微細孔31だけでなく、溝32に沿っても吸い上げられる。そのため、本実施形態の揮散体3の外表面には、薬液が多量に付着し易くなっている。
【0020】
<1-2.容器の詳細>
容器2は、内部空間S2を画定する底部10及び周壁部20を有する。本実施形態では、底部10は、中央部11がその外周部12よりもやや上方に隆起した形状を有している。従って、容器2内の薬液は、残量が少なくなると、底部10の周縁に溜まることになる。一方で、棒状の揮散体3の下端部3aは、通常、底部10の傾斜に沿って下降し、底部10の周縁に配置される。従って、揮散体3と薬液とが接触し易い構成となっているため、薬液を最後まで使い切ることができる。
【0021】
周壁部20は、筒状の胴部21と、胴部21の上端に連続する肩部22と、さらに肩部22の上端に連続する首部23(周縁部)とを有している。首部23は、容器2の上部の開口S1を囲む筒状の部位であり、胴部21よりも幅狭である。これにより、薬液揮散器1の転倒時には肩部22が壁となり、薬液が開口S1を介してこぼれにくくなっている。特に本実施形態では、首部23が胴部21と同軸に配置されているため、薬液揮散器1がどの方向に転倒したとしても肩部22が壁となり、薬液のこぼれを抑制することができる。また、開口S1の横断面の面積が胴部21の横断面の面積(内部空間S2の横断面の面積)よりも狭いため、容器2内に収容される薬液の量に対し、開口S1を介して容器2内から自然蒸散する薬液の量を抑制することができる。
【0022】
上記のとおり、開口S1を画定する首部23内には、複数本の揮散体3が差し込まれる。このとき、揮散体3により開口S1全体が塞がれてしまわない程度の余裕を持って、揮散体3を開口S1内に挿入することが好ましい。この場合、揮散体3を容器2内で傾斜させて配置することができ、美観を向上させることができるからである。また、美観をさらに向上させる観点からは、
図2に示すように、複数本の揮散体3を様々な方向に放射状に延びるように配置することがより好ましい。
【0023】
容器2の材質は特に限定されないが、例えば、ガラス製やプラスチック製とすることができる。薬液の残量を外部から視認できるようにする観点からは、容器2は、透明(半透明を含む)に形成されていることが好ましい。
【0024】
図3は、容器2の平面図であり、
図4は、薬液揮散器1の容器2の首部23付近を拡大した側方断面図である。これらの図に示されるように、本実施形態では、首部23の上部が径方向内側において傾斜面を形成している。この傾斜面は、
図4の例では側面視において直線状であるが、側面視において湾曲していてもよい。なお、本明細書における径方向とは、特に断らない限り、開口S1の中心軸を基準として定義される。また、本実施形態では、開口S1、内部空間S2、首部23、肩部22及び胴部21の中心軸は、同軸である。
【0025】
首部23は、共に開口S1に面する第1内面41及び第2内面42を有しており、第1内面41と第2内面42とは、互いに連続している。ただし、第1内面41と第2内面42とは、お互いの境界となる点P2において滑らかに連続していない。言い換えると、第1内面41及び第2内面42は、各々滑らかな連続面を形成しているが、お互いの境界となる点P2において折れ曲がっている。なお、P1は、第1内面41の上端の点を表し、P2は、第2内面42の上端の点を表すものとする。本実施形態では、点P2は、第1内面41の下端の点に連続している。
【0026】
第2内面42は、第1内面41よりも径方向内側に位置しており、さらに第1内面41よりも下方に位置している。本実施形態では、第1内面41は、上に向かう程、径方向外側に向かうように傾斜する傾斜面を形成している。第2内面42は、上下方向に略平行に延びている。
【0027】
図4は、容器2内に挿入された揮散体3が上下方向に対して最も傾斜した状態(以下、最傾状態という)を示している。最傾状態では、揮散体3は、下端部3aが底部10の外周部12に接触するとともに、第2内面42の上端の点P2に接触する。このとき、揮散体3は、第1内面41と距離を保ちつつ、第2内面42の上端の点P2に接触する。つまり、最傾状態では、第2内面42が第1内面41と揮散体3とを離間させるため、揮散体3は第1内面41には接触せず、揮散体3と第1内面41との間には空間S3が形成される。従って、最傾状態の第1内面41は、揮散体3に対して径方向外側に配置される。
【0028】
揮散体3の軸方向が上下方向と為す角度をθ1とする。また、側面視において第1内面41と上下方向との為す角をθ2とする。このとき、最傾状態においても、θ2>θ1となる。
【0029】
また、首部23は、第1内面41の上端の点P1に連続する上面44を有しており、さらに上面44の径方向の最外点P4から連続する外壁面45を有している。上面44及び外壁面45は、共に容器2の外部空間に面している。上面44は、水平方向に平行であり、外壁面45は、容器2の側方の外部空間に面している。本実施形態に係る外壁面45の上部は、
図4に示すとおり、側面視において径方向外側に凸形状の丸味を帯びている。なお、上面44は、水平面に対して傾斜していてもよい。また、上面44は、省略可能である。
【0030】
以上の構成より、揮散体3の外表面に付着した薬液は、当該外表面に沿って滴り落ち、しばしば揮散体3と首部23との接点、本実施形態では、揮散体3と第2内面42との接点となる点P2付近に溜まることがある。しかしながら、この薬液が容器2の外壁面45に達することはない。すなわち、第1内面41が上下方向に延びているため、これが空間S3の外壁となって、空間S3が「薬液のプール」となる。そのため、薬液が、第1内面41及び上面44を超えて外壁面45に達することがない。その結果、容器2の外壁面45に沿って薬液が滴り落ち、薬液で外壁面45が汚れてしまうことが防止される。ひいては、容器2の外壁面45に触れる人の手や壁や家財等が薬液で汚れることもない。また、本実施形態では、空間S3の底面ともなる第1内面41が径方向内側に向かう程、下に向かうように傾斜しているため、空間S3内に漏れ出た薬液は重力により、第1内面41に沿って容器2の内部空間S2内に戻される。そのため、益々、薬液が外壁面45を汚す虞が低減される。
【0031】
以上のとおり、薬液が外壁面45を汚さないようにする観点からは、第1内面41の上端の点P1と第2内面42の上端の点P2との間の上下方向の長さw1は、0.5mm≦w1であることが好ましく、1.0mm≦w1であることがより好ましく、2.0mm≦w1であることがさらに好ましい。また、w1≦30mmであることが好ましく、w1≦20mmであることがより好ましく、w1≦10mmであることがさらに好ましい。また、同様の観点から、第1内面41の上端の点P1と第2内面42の上端の点P2との間の水平方向の長さw2は、1.0mm≦w2であることが好ましく、2.0mm≦w2であることがより好ましく、3.0mm≦w2であることがさらに好ましい。また、w2≦45mmであることが好ましく、w2≦30mmであることがより好ましく、w2≦15mmであることがさらに好ましい。
【0032】
また、揮散体3の水平面に対する角度が大きい程、薬液が揮散体3から空間S3内へ滴り落ちにくくなる。従って、最傾状態での揮散体3の水平面に対する角度θ3(=90°-θ1)は、45°≦θ3であることが好ましく、60°≦θ3であることがより好ましい。
【0033】
<2.第2実施形態>
次に、
図6及び
図7を参照しつつ、第2実施形態に係る薬液揮散器について説明する。なお、第1実施形態と第2実施形態とは、容器の構造が異なるものの、両者は多くの点で共通する。従って、以下では、主として両者の相違点について説明し、共通の要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0034】
図6は、本実施形態に係る容器102の平面図であり、
図7は、容器102の首部23付近を拡大した側方断面図である。これらの図に示されるように、本実施形態では、首部23の上部が径方向内側において段差D1を形成している。
【0035】
首部23は、共に開口S1に面する第1内面41及び第2内面42を有しており、さらにこれらの内面41,42の間に同じく開口S1に面する第3内面43を有している。第1内面41、第3内面43及び第2内面42は、この順番に互いに連続しているが、お互いの境界となる点P3,P2において滑らかに連続していない。言い換えると、第1内面41、第3内面43及び第2内面42は、各々滑らかな連続面を形成しているが、お互いの境界となる点P3,P2において折れ曲がっている。なお、P3とは、第3内面43の上端の点を表すものとする。本実施形態では、点P3は、第1内面41の下端の点に連続しており、点P2は、第3内面43の下端の点に連続している。
【0036】
第2内面42は、第1内面41よりも径方向内側に位置しており、さらに第1内面41よりも下方に位置している。本実施形態では、第1内面41及び第3内面43は、上に向かう程、径方向外側に向かうように傾斜する傾斜面を形成しており、第1内面41が構成する傾斜面の方が、第3内面43が構成する傾斜面よりも上下方向に対し急峻に傾斜している。第2内面42は、上下方向に略平行に延びている。第1内面41と第2内面42とは、第3内面43を介して段差D1を形成している。なお、第1内面41及び第3内面43が形成する傾斜面は、
図7の例では側面視において直線状であるが、側面視において湾曲していてもよい。
【0037】
図7は、容器102内に挿入された揮散体3が上下方向に対して最も傾斜した状態(以下、最傾状態という)を示している。最傾状態では、揮散体3は、下端部3aが底部10の外周部12に接触するとともに、第2内面42の上端の点P2に接触する。このとき、揮散体3は、第1内面41と距離を保ちつつ、第2内面42の上端の点P2に接触する。つまり、最傾状態では、第2内面42が第1内面41と揮散体3とを離間させるため、揮散体3は第1内面41には接触せず、揮散体3と第1内面41との間には空間S3が形成される。従って、最傾状態の第1内面41は、揮散体3に対して径方向外側に配置される。
【0038】
揮散体3の軸方向が上下方向と為す角度をθ1とし、(開口S1の周方向に同じ位置にある)点P1と点P2とを結ぶ直線と上下方向との為す角をθ2とする。このとき、最傾状態においても、θ2>θ1となる。
【0039】
また、首部23は、第1内面41の上端の点P1に連続する上面44を有しており、さらに上面44の径方向の最外点P4から連続する外壁面45を有している。上面44及び外壁面45は、共に容器102の外部空間に面している。上面44は、水平方向に平行であり、外壁面45は、容器102の側方の外部空間に面している。本実施形態に係る外壁面45の上部は、
図7に示すとおり、側面視において径方向外側に凸形状の丸味を帯びている。なお、上面44は、水平面に対して傾斜していてもよい。また、上面44は、省略可能である。
【0040】
以上の構成より、揮散体3の外表面に付着した薬液は、当該外表面に沿って滴り落ち、しばしば揮散体3と首部23との接点、本実施形態では、揮散体3と第2内面42との接点となる点P2付近に溜まることがある。しかしながら、この薬液が容器102の外壁面45に達することはない。すなわち、第1内面41が上下方向に延びているため、これが空間S3の外壁となって、空間S3が「薬液のプール」となる。そのため、薬液が、第1内面41及び上面44を超えて外壁面45に達することがない。その結果、容器102の外壁面45に沿って薬液が滴り落ち、薬液で外壁面45が汚れてしまうことが防止される。ひいては、容器102の外壁面45に触れる人の手や壁や家財等が薬液で汚れることもない。また、本実施形態では、空間S3の底面を構成する第3内面43が径方向内側に向かう程、下に向かうように傾斜しているため、空間S3内に漏れ出た薬液は重力により、第3内面43に沿って容器102の内部空間S2内に戻される。なお、このことは、同じく径方向内側に向かう程、下に向かうように傾斜している第1内面41についても同様である。そのため、益々、薬液が外壁面45を汚す虞が低減される。
【0041】
以上のとおり、薬液が外壁面45を汚さないようにする観点からは、第1内面41の上端の点P1と第2内面42の上端の点P2との間の上下方向の長さw1は、0.5mm≦w1であることが好ましく、1.0mm≦w1であることがより好ましく、2.0mm≦w1であることがさらに好ましい。また、w1≦30mmであることが好ましく、w1≦20mmであることがより好ましく、w1≦10mmであることがさらに好ましい。また、同様の観点から、第1内面41の上端の点P1と第2内面42の上端の点P2との間の水平方向の長さw2は、1.0mm≦w2であることが好ましく、2.0mm≦w2であることがより好ましく、3.0mm≦w2であることがさらに好ましい。また、w2≦45mmであることが好ましく、w2≦30mmであることがより好ましく、w2≦15mmであることがさらに好ましい。
【0042】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0043】
<3-1>
図8に示すように、外壁面45は、側面視において点P4から下方へ略真っ直ぐに延びていてもよい。
【0044】
<3-2>
第2実施形態では、首部23の第1内面41は、上に向かう程、径方向外側に向かうように傾斜していたが、上下方向に平行に延びていてもよいし、
図9に示すように上に向かう程、径方向内側に向かうように傾斜していてもよい。第3内面43についても、同様であり、水平方向に平行に延びていてもよいし、
図9に示すように上に向かう程、径方向内側に向かうように傾斜していてもよい。また、第1及び第2実施形態において、第2内面42が上下方向に延びている必要はなく、上に向かう程、径方向外側又は内側に向かうように傾斜していてもよい。
【0045】
<3-3>
図10に示すように、第2内面42の上部及び第1内面41が丸みを帯びていてもよい。すなわち、第2内面42の上部及び第1内面41が、側面視において湾曲していてもよい。
【0046】
<3-4>
上記実施形態の容器2,102は、その全体が一体的に構成されていた。しかしながら、
図11に示すように、第1内面41を構成する部分と、第2内面42を構成する部分とが別体であってもよい。例えば、第1内面41を含む本体部41aをガラスで構成し、本体部41aに第2内面42を含む部材42aを取り付けることができる。このとき、第2内面42を含む部材42aは、第1内面41を含む本体部41aに取り付けやすいよう、ゴムや樹脂等の弾性材料から構成し、嵌め込み式とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 薬液揮散器
2,102 容器
3 揮散体
3a 下端部
3b 上端部
32 首部(周縁部)
41 第1内面
42 第2内面
D1 段差
S1 開口